説明

トラックシャ−シフレ−ムおよびフレ−ム用アルミニウム合金材

【課題】 シャーシフレームとして必要な曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性を確保した上で、フロントサイドレール部分の三次元方向の屈曲形状を成形可能なアルミニウム合金を用いた、軽量なトラックシャ−シフレ−ム構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 アルミニウム合金を用いたトラックシャ−シフレ−ム1の構造を、互いに剛的に接合されている、車体後部側のリアサイドレール2、2と、車体前部側のフロントサイドレール5、5とに、分割して構成し、フロントサイドレール5、5を構成する中空部材をアルミニウム合金成形板とするか、リアサイドレール2、2をアルミニウム合金押出形材とするか、あるいは、フロントサイドレール5、5とリアサイドレール2、2ともに、各々前記アルミニウム合金材として、これら両者を剛的に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金を用いたトラックシャーシフレーム構造に係わり、特にキャブオーバ車のように、フレーム前部に上下方向へ屈曲した折点が車体の前後方向に複数あるオフセットのシャーシフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャブオーバ車のトラックシャーシフレームは、図5に示すシャーシフレーム40のように、車体後部側(荷台側)のリアサイドレール(リアサイドフレ−ム)40bと、車体前部側(運転席キャビン側)のフロントサイドレール(フロントサイドフレ−ム)40aとが、単一の(一体の)鋼製チャンネル部材によって構成されている。
【0003】
鋼製チャンネル部材は、図5のA−A矢視に示す通り、コの字状の二つのチャンネル部材41aと41bとをフランジ部で結合したボックス型(中空型)の閉じ断面形状で構成されている。そして、シャーシフレーム40の軸心は、車両後部側のリアサイドレール41bのZ1より、車両前部側のフロントサイドレール40aのZ2へと、下方にオフセットされている。
【0004】
このように、フロントサイドレール40aは、上下方向に屈曲するとともに、運転席キャビンやフロントタイヤの設置用に、車体幅を確保するために、左右方向にも屈曲している。このため、フロントサイドレール40a部分の鋼製チャネル部材は、上下方向に屈曲するとともに、左右方向にも屈曲した、三次元方向の屈曲形状に成形されている。
【0005】
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。この事情は、キャブオーバ車などのトラックでも同様であり、トラックの車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材など、より軽量なアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。
【0006】
しかし、このようなトラックの車体に対するアルミニウム合金材の適用は、トラックの荷台やトラックのドアフレームなどに限定されている(例えば、特許文献1や2参照)。言い換えると、上記シャーシフレーム40などのトラック車体本体への実用化(適用)は遅れているのが実情である。
【特許文献1】特開2004−189125号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−84235公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記シャーシフレーム40などのトラック車体本体へのアルミニウム合金材の実用化(適用)が遅れている理由は、鋼材に比して、アルミニウム合金材が成形しにくいことが挙げられる。即ち、前記車両前部側のフロントサイドレール40a部分を構成する、従来の鋼製チャンネル部材に比して、圧延板や押出形材などのアルミニウム合金材は、前記三次元方向の屈曲形状に成形しにくい。
【0008】
即ち、前記フロントサイドレール40aとして、三次元方向の屈曲形状に成形しやすいアルミニウム合金材を選択する場合には、アルミニウム合金材の強度なり耐力なりが低い材料を選択せざるを得ない。この場合、リアサイドレール41b部分も含めて単一の(一体の)構造である限り、アルミニウム合金製のシャーシフレームは、シャーシフレーム40として必要な、曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性が不足して、実用化できない。
【0009】
一方、シャーシフレーム40として必要な曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性を確保するために、高強度や高耐力のアルミニウム合金材を選択する場合には、リアサイドレール41b部分も含めて単一の(一体の)構造である限り、前記フロントサイドレール40a部分を三次元方向の屈曲形状に成形した場合に、割れなどが生じやすく、成形できないという矛盾が生じる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、シャーシフレームとして必要な曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性を確保した上で、フロントサイドレール部分の三次元方向の屈曲形状を成形可能なアルミニウム合金を用いたトラックシャ−シフレ−ム構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明のアルミニウム合金を用いたトラックのシャ−シフレ−ム構造の第一の要旨は、車体幅方向の両側で各々車体前後方向に沿って延びるように配設された左右一対のシャ−シフレ−ムは、車体後部側のリアサイドレールと、車体前部側のフロントサイドレールとから分割して構成され、フロントサイドレールは、フロントサイドレールの軸心がリアサイドレールの軸心よりも下方へオフセットされた上下方向および左右方向に屈曲した中空部材からなり、この中空部材は、コの字状アルミニウム合金成形板同士を互いに向き合わせて溶接接合してなる一方、前記リアサイドレールは略直線状の形材からなり、これらフロントサイドレールとリアサイドレール同士が、互いに接合されていることである。
【0012】
また、この目的を達成するために、本発明のアルミニウム合金を用いたトラックのシャ−シフレ−ム構造の第二の要旨は、車体幅方向の両側で各々車体前後方向に沿って延びるように配設された左右一対のシャ−シフレ−ムは、車体後部側のリアサイドレールと、車体前部側のフロントサイドレールとから分割して構成され、フロントサイドレールは、フロントサイドレールの軸心がリアサイドレールの軸心よりも下方へオフセットされた上下方向および左右方向に屈曲した中空部材からなり、この中空部材は、コの字状成形板同士を互いに向き合わせて溶接接合してなる一方、前記リアサイドレールは、略直線状のアルミニウム合金押出形材からなり、これらフロントサイドレールとリアサイドレール同士が、互いに接合されていることである。
【0013】
更に、この目的を達成するために、より好ましい、本発明のアルミニウム合金を用いたトラックのシャ−シフレ−ム構造の第三の要旨は、前記フロントサイドレールを構成する中空部材はアルミニウム合金成形板からなるとともに、前記リアサイドレールはアルミニウム合金押出形材からなるように、前記フロントサイドレールと前記リアサイドレールともに、アルミニウム合金材からなることである。
【発明の効果】
【0014】
本発明第一および第二の要旨では、先ず、アルミニウム合金を用いたトラックシャ−シフレ−ム構造を、従来のようなフロントサイドレールとリアサイドレールとを単一の(一体の)鋼構造では無く、互いに剛的に接合されている、車体後部側のリアサイドレールと、車体前部側のフロントサイドレールとに、分割して構成する。
【0015】
その上で、本発明第一の要旨のように、前記フロントサイドレールを構成する中空部材をアルミニウム合金成形板とするか、本発明第二の要旨のように、前記リアサイドレールをアルミニウム合金押出形材とする。あるいは、本発明第三の要旨のように、前記フロントサイドレール(中空部材)と前記リアサイドレールともに、アルミニウム合金材とする。そして、これらフロントサイドレール(後端部)とリアサイドレール(先端部)とを剛的に接合する。
【0016】
本発明第一の要旨の場合、前記フロントサイドレールとして三次元方向の屈曲形状に成形しやすい、強度なり耐力なりが低いアルミニウム合金成形板を選択しても、前記リアサイドレールを、強度なり耐力なりが高いアルミニウム合金押出形材や鋼製部材とすることによって、シャーシフレーム全体として必要な、曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性が確保できる。
【0017】
しかも、フロントサイドレールとして、アルミニウム合金成形板を選択することによって、従来のフロントサイドレールとリアサイドレールとが単一の鋼構造に比して、フロントサイドレールの、トラック車体衝突時の衝撃力吸収能を高めることができる。即ち、トラック車体衝突時に、強度なり耐力なりが低いアルミニウム合金成形板である、フロントサイドレールの先端部分のみが座屈変形して、衝突時の衝撃力(衝突エネルギ)を吸収する。
【0018】
本発明第二の要旨の場合、前記リアサイドレールとして、強度なり耐力なりが高いアルミニウム合金押出形材を選択しても、前記フロントサイドレールは、三次元方向の屈曲形状に成形しやすい、強度なり耐力なりが低いアルミニウム合金成形板、あるいは鋼材とすることによって、前記フロントサイドレールとして必要な、成形性が確保できる。
【0019】
本発明第三の要旨の場合は、トラックシャ−シフレ−ムに軽量化に最も効果がある。前記フロントサイドレールとして三次元方向の屈曲形状に成形しやすい、強度なり耐力なりが低いアルミニウム合金成形板を選択しても、前記リアサイドレールを、強度なり耐力なりが高いアルミニウム合金押出形材とすることで、シャーシフレーム全体として必要な、曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性が確保できる。
【0020】
この結果、トラックシャ−シフレ−ムを、シャーシフレームとして必要な曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性を確保した上で、フロントサイドレールとしての三次元方向の屈曲形状に成形可能とでき、トラックシャ−シフレ−ムにアルミニウム合金を用いて軽量化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図を用いて、以下に詳細に説明する。
図1に、キャブオーバトラック車のメインフレームである、シャーシフレーム1の全体構造を斜視図で示す。図1において、シャ−シフレ−ム1は、車体幅方向の両側で各々車体前後方向に沿って延びる、左右一対のリアサイドレール2、2とフロントサイドレール5、5、および、リアサイドレール2、2を車体幅方向に繋ぐクロスメンバー6〜8等によって、一体に形成されている。なお、図1では、シャ−シフレ−ム1の細部は省略して、要部のみ記載している。
【0022】
(分割構成)
本発明のシャ−シフレ−ム1において、左右一対のリアサイドレールとフロントサイドレールとは、各々、図1に示すように、車体後部側のリアサイドレール2、2と、車体前部側のフロントサイドレール5、5とから分割して構成されている。そして、これら左右のリアサイドレール2、2と、フロントサイドレール5、5とは、互いの端部同士が、後述する通り、各々互いに剛的に接合されている。
【0023】
従来のような、シャ−シフレ−ム1が、鋼型材などによるフロントサイドレールとリアサイドレールとが単一の構造をしていては、前記した通り、シャ−シフレ−ム1に対してアルミニウム合金を適用できない。即ち、シャーシフレーム1として必要な曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性の確保と、フロントサイドレール5、5の三次元方向の屈曲形状への成形性とが矛盾する。このために、シャ−シフレ−ム1に対してアルミニウム合金を用いて軽量化することができない。
【0024】
これに対して、本発明のように、フロントサイドレール5、5(フロントサイドレールを構成する中空部材を)アルミニウム合金成形板とするか、リアサイドレール2、2をアルミニウム合金押出形材とすることによって、フロントサイドレール5、5の三次元方向の屈曲形状への成形性とシャーシフレーム1として必要な曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性の確保との矛盾を解消できる。
【0025】
(接合)
リアサイドレール2と、フロントサイドレール5との接合は、フロントサイドレール5の後端部5cの形成する、閉断面あるいは開断面の空間内に、リアサイドレール先端部2aが嵌合されて、機械的あるいは溶接により接合されていることが好ましい。これによって、フロントサイドレール5かリアサイドレール2のいずれかがアルミニウム合金材の場合だけでなく、フロントサイドレール5とリアサイドレール2の両者がアルミニウム合金材の場合にも、シャ−シフレ−ム1として必要な強度・剛性が確保される。
【0026】
より具体的には、フロントサイドレール5の後端部5bの断面積(中空部面積)を、リアサイドレール3の先端部2aの断面積よりも大きくし、フロントサイドレール5の後端部5bに、リアサイドレール先端部2aを挿入、嵌合、固定する。そして、これらリアサイドレール2とフロントサイドレール5との互いの端部同士を、ボルト、ブラインドボルトなどで機械的に、あるいは重ね隅肉などの溶接、更には、これらの組み合わせにより、接合する。
【0027】
リアサイドレール2とフロントサイドレール5との互いの端部同士の接合を、互いの端部同士の突き合わせにて行なった場合には、接合方法にもよるが、上記嵌合方式よりも、溶接時の溶け落ち等が起こりやすくなるので、接合強度が低くなる可能性がある。
【0028】
また、フロントサイドレール5の後端部5bに、リアサイドレール先端部2aを挿入、嵌合しても、互いの端部同士の接合を、溶接のみにて行なった場合には、アルミニウム合金材同士の接合強度は良いものの、アルミニウム合金材と鋼材との異材接合の場合には、接合強度が不足しやすい。
【0029】
更に、前記本発明第二の要旨のように、リアサイドレール3として、強度なり耐力なりが高いアルミニウム合金押出形材を選択しても、前記フロントサイドレールは、三次元方向の屈曲形状に成形しやすい、強度なり耐力なりが低いアルミニウム合金成形板、あるいは鋼材とすることによって、前記フロントサイドレールとして必要な、成形性が確保できる。
【0030】
(リアサイドレール)
左右のリアサイドレール2、2は、図1のB−B矢視である図3の断面図に示す通り、基本的には、左右の縦壁3と上面壁4(および下面壁)を有する、例えば口型の略矩形断面形状からなる。このリアサイドレール2、2の断面形状は、口型以外にも、口型に補強のための横方向の中リブを一本加えた日型、二本加えた目型、あるいは三本以上加えた型、口型に中リブを十字に加えた田型、などの略矩形断面形状の中空形材か、あるいはC型、コの字型などの断面形状の形材、が適宜選択される。このリアサイドレール2の上面壁4側の上には、図示しないトラックの荷台が載置される。
【0031】
リアサイドレール2は、従来と同様に、複数個のクロスメンバー6〜8等によって、車体幅方向に接続され、シャ−シフレ−ム1の荷台側の曲げ強度・剛性やねじり強度・剛性が確保されている。これらクロスメンバー6〜8は、鋼形材であっても、アルミニウム合金形材であっても良い。
【0032】
この際、リアサイドレール2、2を鋼形材で構成する場合には、クロスメンバー6〜8等との接合は溶接や機械的な接合が適宜選択される。しかし、リアサイドレール2、2をアルミニウム合金形材で構成する場合、特に、クロスメンバー6〜8が鋼材の場合には、クロスメンバー6〜8のリアサイドレール2、2への接合は、溶接ではなく、機械的な接合で行なうことが好ましい。この理由は、6000系アルミニウム合金押出形材など、高強度のアルミニウム合金材からリアサイドレール2、2を構成する場合、異材接合の溶接による熱影響によって、アルミニウム合金形材が軟化して、溶接熱影響部の強度が低下する可能性があるからである。
【0033】
左右のリアサイドレール2、2を複数個のクロスメンバー6〜10等によって接続する場合、各々ブラケットを介して、機械的に接合する方が、高い接合強度と剛性が得られる。即ち、図1では、クロスメンバー6〜10のリアサイドレール22、22側の両端部に、各々コの字状のブラケット11a、11b、11cを配置し、これらのブラケットを各々介して機械的に接合している。
【0034】
リアサイドレール2、2を鋼材で構成する場合には、従来と同様のC型チャネル材などが適宜使用できる。リアサイドレール2、2をアルミニウム合金材から構成する場合には、前記した種々の断面形状の中空形材や、C型チャネル材などの形材等、長手方向に亙って断面が略同じ押出形材の使用が好適である。
【0035】
(リアサイドレール用アルミニウム合金材)
リアサイドレール2、2をアルミニウム合金から構成する場合、比較的強度が高い合金種としては、5000系や7000系なども使用可であるが、Al−Mg−Si系の6000系押出形材からなる、前記した種々の断面形状の中空形材や、C型チャネル材などの形材等が好適である。6000系アルミニウム合金は、成形が容易な5000系などの他の合金系に比して、強度が高いという特徴を有する。また、7000系に比して、強度は低いが押出性や成形性が良いという特徴を有する。この6000系アルミニウム合金の中でも、比較的強度が高いものを選択することが好ましい。また、6000系アルミニウム合金押出形材は、熱間押出によって製造される。このため、アルミニウム合金の組織として、リアサイドレール2、2の長手方向(軸方向)に伸びる微細な繊維状組織を形成しているため、リアサイドレール2、2の強度・剛性を高めることができる特性を有する。
【0036】
より具体的には、リアサイドレール2、2を構成する、6000系などのアルミニウム合金押出形材の厚みは3〜6mm、0.2%耐力が200MPa以上であることが好ましい。0.2%耐力が200MPa未満では、シャーシフレームの必要剛性を確保するためには、厚みを6mmを超えて厚くする必要があり、重量が増加するため、アルミニウム合金を使用する意味が失われる。一方、アルミニウム合金押出形材の厚みが3mm未満では、厚みが薄過ぎ、アルミニウム合金押出形材の耐力を高くしても、シャーシフレームの必要強度・剛性を確保できない。
【0037】
なお、リアサイドレール2、2を鋼材にて構成する場合、通常の軟鋼やハイテン(高張力鋼)が適宜選択される。
【0038】
(フロントサイドレール)
フロントサイドレール5、5は、それぞれ一対のコの字状のチャネル部材5a5bからなる。また、図2により詳細に斜視図で示すように、フロントサイドレール5、5は、フロントサイドレールの軸心Z2 が、リアサイドレール2、2の軸心Z1 よりも下方へオフセットされた上下方向に屈曲成形されている。そして更に、運転席キャビンやフロントタイヤの設置用に、車体幅を確保するために、フロントサイドレール5、5の中央部が車体幅方向である左右の外側方向に円弧状に膨らみ、前記上下方向の屈曲と合わせて、三次元方向に屈曲成形された中空部材からなっている。
【0039】
フロントサイドレール5、5の前後方向に垂直な面における断面は略矩形であり、後端部5c、5cは、リアサイドレール2、2の先端部2a、2aが嵌入するサイズに成形されている。また、前端部5dは、必要により、縦フレーム4を設ける際の、縦フレーム4の後端が嵌入するサイズに成形されている。
【0040】
フロントサイドレール5、5の中空部材は、図1のA−A矢視である図2の断面図に示す通り、二つのコの字状チャンネル部材5a、5b同士を、互いに向き合わせて(向かい合わせて)、コの字における開口部同士を衝合させ、ボックス型(中空型)の閉じ断面形状とし、長手方向の衝合ライン(溶接ライン)9で溶接接合してなる。
【0041】
二つのチャンネル部材5a、5bは、好ましくは、各々コの字状アルミニウム合金成形板からなる。また、鋼成形板でも良い。なお、フロントサイドレールへの中空部材の三次元方向への屈曲成形(プレス成形)は、アルミニウム合金成形板の場合は、二つのチャンネル部材5a、5b各形状へのプレス成形を溶接接合前に予め行なって、その後溶接接合する方が好ましい。鋼成形板の場合は、予め接合した電縫管などを成形して、三次元方向への屈曲成形しても良い。このように、フロントサイドレール5、5の中空部材を、アルミニウム合金成形板や鋼成形板から構成することによって、三次元方向への屈曲成形を、プレス成形によって簡便に行なうことが可能となる利点もある。
【0042】
図2(a)の態様は、二つのチャンネル部材5a、5bを対向して突き合わせて構成している。この場合、衝合ライン9は突き合わせ溶接される。図2(b)の態様は、二つのチャンネル部材5a、5bを対向させるとともに、チャンネル部材5aに対してチャンネル部材5bを嵌合(挿入)する形で、互いに端部で重ね合わせて構成している。この場合、衝合ライン9は重ね隅肉溶接される。なお、図2(a)、(b)の態様では、二つのチャンネル部材5a、5bを左右方向から対向させているが、対向は上下方向から対向させても良い。例えば、チャンネル部材5aを下向きに、チャンネル部材5bを上向きに対向させ、図2(a)、(b)の態様と同様に接合しても良い。
【0043】
フロントサイドレール5、5の先端部には、従来通り、フロントクロスメンバ(フロントメンバ)10が設けられ、シャ−シフレ−ム1の先端側の曲げ強度・強度・剛性やねじり強度・剛性が確保されている。これらフロントクロスメンバ10は、鋼形材であっても、アルミニウム合金形材であっても良い。
【0044】
なお、前記リアサイドレール2、2の場合と同様に、フロントサイドレール5、5を鋼材で構成する場合には、フロントクロスメンバ10との接合は溶接や機械的な接合が適宜選択される。しかし、フロントサイドレール5、5をアルミニウム合金成形板で構成する場合には、特に、フロントクロスメンバ10が鋼材の場合には、この接合は、溶接ではなく、機械的な接合で行なうことが好ましい。この理由は、前記リアサイドレール2、2の場合と同様に、異材接合の溶接による熱影響によって、アルミニウム合金形材が軟化して、溶接熱影響部の強度が低下する可能性があるからである。
【0045】
(フロントサイドレール用アルミニウム合金材)
フロントサイドレール5、5をアルミニウム合金成形板から構成する場合、アルミニウム合金種の中でも、プレス成形性に比較的優れた、5000系、6000系などが使用できるが、Al−Mg系の5000系圧延板材が好適である。5000系アルミニウム合金は、6000系アルミニウム合金系などに比して、強度は低いが、フロントサイドレール5、5の前記三次元方向への屈曲成形がしやすいという特徴を有する。
【0046】
この点、フロントサイドレール5、5を構成する5000系などのアルミニウム合金圧延板材の板厚は4〜8mm、0.2%耐力は100MPa以上、より高強度化のためには120MPa以上であることが好ましい。0.2%耐力が100MPa未満、より厳しくは120MPa未満では、シャーシフレームの必要強度・剛性を確保するためには、板厚を8mmを超えて厚くする必要があり、前記三次元方向への屈曲成形が困難となる。また、重量が増加するため、アルミニウム合金を使用する意味が失われる。一方、5000系などのアルミニウム合金圧延板材の板厚が4mm未満では、厚みが薄過ぎ、5000系圧延板材の耐力を高くしても、シャーシフレームの必要強度・剛性を確保できない。
【0047】
フロントサイドレール5、5を鋼材にて構成する場合、通常の軟鋼やハイテン(高張力鋼)が適宜選択される。
【0048】
図3にフロントサイドレールの詳細構造を斜視図で示す。フロントサイドレール5、5は、前記した通り、軸心Z2 が、リアサイドレール2、2の軸心Z1 よりも下方へオフセットされた上下方向に屈曲成形されている。そして更に、フロントサイドレール5、5の中央部が、矢印で示すように、車体幅方向である左右の外側方向に、各々円弧状に膨らみ、前記上下方向の屈曲と合わせて、三次元方向に屈曲成形されている。
【0049】
フロントサイドレール2、2のそれぞれ上方側には開口20、下方側に開口21、22が形成され、外側壁に周囲がくぼんだ開口23が形成され、内外側壁の略対称位置に開口24〜26が形成されている。これらは穴開け加工により適宜形成される。開口20は、独立懸架式のサスペンションに対応した図示しないサブフレームを装着するブラケットが嵌入する穴である。開口21、22はサブフレーム部材が嵌入する穴、開口23は上記ブラケットを固定する穴、開口24〜26は軽量化のための抜き穴である。
【0050】
また、これらフロントサイドレール2、2の中空部には、図示はしないが、実際の仕様に応じて、補強用のリインフォースメントなどが適宜配置される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、シャーシフレームとして必要な曲げ強度・剛性やねじり強度・強度・剛性を確保した上で、フロントサイドレール部分の三次元方向の屈曲形状を成形可能なアルミニウム合金を用いた、軽量なトラックシャ−シフレ−ム構造を提供することができる。したがって、本発明は、キャブオーバ車などのトラックのシャ−シフレ−ムに適用されて、トラックの軽量化が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明シャーシフレームの全体構造を示す斜視図である。
【図2】図1のフロントサイドレールのA−A矢視を示す断面図である。
【図3】図1のリアサイドレールのB−B矢視を示す断面図である。
【図4】図1のフロントサイドレールを拡大して示す斜視図である。
【図5】従来のシャーシフレームを示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1:シャーシフレーム、2:リアサイドレール、3、4:リアサイドレール壁
5:フロントサイドレール、6〜8:クロスメンバ、9:衝合線(溶接線)
10:フロントクロスメンバ、11:ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金を用いたトラックシャ−シフレ−ム構造であって、車体幅方向の両側で各々車体前後方向に沿って延びるように配設された左右一対のシャ−シフレ−ムは、車体後部側のリアサイドレールと、車体前部側のフロントサイドレールとから分割して構成され、フロントサイドレールは、フロントサイドレールの軸心がリアサイドレールの軸心よりも下方へオフセットされた上下方向および左右方向に屈曲した中空部材からなり、この中空部材は、コの字状アルミニウム合金成形板同士を互いに向き合わせて溶接接合してなる一方、前記リアサイドレールは略直線状の形材からなり、これらフロントサイドレールとリアサイドレール同士が、互いに接合されていることを特徴とするトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項2】
アルミニウム合金を用いたトラックのシャ−シフレ−ム構造であって、車体幅方向の両側で各々車体前後方向に沿って延びるように配設された左右一対のシャ−シフレ−ムは、車体後部側のリアサイドレールと、車体前部側のフロントサイドレールとから分割して構成され、フロントサイドレールは、フロントサイドレールの軸心がリアサイドレールの軸心よりも下方へオフセットされた上下方向および左右方向に屈曲した中空部材からなり、この中空部材は、コの字状成形板同士を互いに向き合わせて溶接接合してなる一方、前記リアサイドレールは、略直線状のアルミニウム合金押出形材からなり、これらフロントサイドレールとリアサイドレール同士が、互いに接合されていることを特徴とするトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項3】
前記フロントサイドレールを構成する中空部材はアルミニウム合金成形板からなるとともに、前記リアサイドレールはアルミニウム合金押出材からなる、請求項1または2に記載のトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項4】
前記フロントサイドレールを構成するアルミニウム合金成形板が5000系アルミニウム合金からなる、請求項3に記載のトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項5】
前記フロントサイドレールを構成するアルミニウム合金成形板の板厚が4〜8mm、0.2%耐力が100MPa以上である、請求項3または4に記載のトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項6】
前記リアサイドレールを構成するアルミニウム合金材が6000系アルミニウム合金押出形材からなる、請求項3に記載のトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項7】
前記リアサイドレールを構成するアルミニウム合金押出形材の厚みが3〜6mm、0.2%耐力が200MPa以上である、請求項3または6に記載のトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項8】
前記フロントサイドレールとリアサイドレール同士が、互いに機械的に接合されている請求項1乃至7のいずれかに記載のトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項9】
前記フロントサイドレール後端部内に、前記リアサイドレール先端部が嵌合されて、機械的に接合されている請求項1乃至8のいずれかに記載のトラックシャ−シフレ−ム。
【請求項10】
板厚が4〜8mm、0.2%耐力が100MPa以上である、5000系アルミニウム合金板からなるトラックのシャ−シフレ−ムにおけるフロントサイドレール用アルミニウム合金材。
【請求項11】
板厚が3〜6mm、0.2%耐力が200MPa以上である、6000系アルミニウム合金押出形材からなるトラックのシャ−シフレ−ムにおけるリアサイドレール用アルミニウム合金材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111228(P2006−111228A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303344(P2004−303344)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】