説明

トリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物とハロゲン置換された芳香族化合物とのカップリング方法

本発明は、ハロゲン置換された芳香族化合物をトリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物で変換することにより、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の製造方法に関する。本発明によれば、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の中でも、アリール基が、ヘテロ原子、特にNまたはOに直接結合した化合物であると特に認められ、該ヘテロ原子は該ヘテロ原子を含む有機基側の一部である。
【背景技術】
【0002】
アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物は、有機合成用の重要な出発物質である。それらは、農薬および除草剤と同様に、薬剤活性成分の合成に特に重要な前駆体を作り出す。
【0003】
かかる化合物の従来の合成は、組み合わせのストラテジーに基づき、部分的に複雑な保護基のストラテジーまたは遷移金属による触媒段階を伴う、適切なカップリング方法を必要とする。保護基の使用は、カップリング前の保護基の導入およびそれに続く保護基の分離が、余分な反応段階と結びつくという欠点と結びつき、これにより、プロセス管理の複雑さをかなり高めることから、よりコスト高となり、より合成経路の影響を受けやすくなる。それに加えて、その都度保護されるべき官能基および反応混合物中に存在する他の物質についての保護基のストラテジーを調整しなければならないことから、このタイプの種々の変換に使用可能である、汎用の使用可能な方法スキームはない。
【0004】
遷移金属触媒の使用は、有機合成において広く普及している。しかしながら、かかる遷移金属触媒は、一方で度々極めて高価であり、他方では有毒な重金属化合物で変換された生成物を汚染し得るという欠点と結びつく。特に薬剤活性成分の合成用前駆体として物質を使用する際に、手間がかかり、高コストな精製段階が必須となるという重大な欠点である。
【0005】
例えば、バックワルド−ハートヴィッククロスカップリングにおいて、以下の反応スキームにより示す、アリールアミンのパラジウム触媒による合成である:
【化1】

【0006】
先行技術文献により、このタイプの反応の既知の例は:
【化2】

【0007】
【化3】

【0008】
総合的に、保護基の使用により、従来のクロスカップリングによるアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の製造方法では余分な手間を生じ、これによりコスト高になることが認められる。それに加えて、これらの方法で得られる収量は通常比較的低い。遷移金属による触媒反応は、有毒な重金属による最終生成物の汚染という欠点に結びつく。
【0009】
有機合成における置換基としてのトリアルキルシリル団(gruppierung)の使用は、近年ある程度の重要性を占めてきた。典型的には、保護基としてトリアルキルシリル基が用いられ、これにより一連の多段階の合成において、存在する官能基が用いる試薬と反応することを防がなければならない。しかしながら、トリアルキルシリル置換基が直接変換に関与する幾つかの合成もまた記載されてきた。
【0010】
このタイプの反応の一例は檜山カップリングであり、ここにおいて、パラジウム触媒による、アリール、アルケニル、またはハロゲン化アルキルあるいは擬ハロゲン化物およびオルガノシラン間でのC−C結合の形成が、以下の反応スキームに従って起こる:
【化4】

【0011】
先行技術文献により、このタイプの反応の例は:
【化5】

【0012】
DE 37 38 276には、ポリアリーレンスルフィドの製造方法が記載され、ここにおいて、ポリアリーレンスルフィドを溶融重合によりハロゲンアリールチオシランから製造している。変換は、触媒として、少なくとも1種のハロゲン化アルカリおよび/またはハロゲン化アルカリ土類あるいはハロゲン化アンモニウムの存在下で行われる。
【0013】
US 2008-0042127には、電子部品の製造用に適した化合物の調製のために、フッ素イオンを使用して、パーフルオロ化された芳香族化合物に架橋されたシリル化合物のカップリングが記載されている。
【0014】
US 5523384には、シラノラートおよび銅触媒を使用した、ポリエーテルケトンの調製が記載されている。
【0015】
上記のとおり、特に反応管理の複雑さ、達成可能な収量および場合によっては最終生成物において存在する有毒な汚染を鑑みると、従来のあらゆる公知のアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の製造方法には、明らかな欠点による問題がある。
【発明の概要】
【0016】
上記に対し、従来の方法に対してより簡単に、より速く、およびより費用がかからずに実行し、高収量をもたらし、有毒な重金属による最終生成物の汚染を回避する方法を可能にする、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の製造方法を提供するという課題が本願発明の基礎となった。
【0017】
上記の目的は、ハロゲン置換された芳香族化合物をトリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物で変換することを特徴とする方法により解決される。
【0018】
驚くべきことに、これらの合成ストラテジーにより、以前は入手困難であったアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物を、一段階合成において高い収量で得ることができることが明らかとなった。反応は、穏やかな条件下で、遷移金属を含む触媒の使用を必要とせずに進む。
【0019】
好ましい態様において、ハロゲン置換された芳香族化合物として、モノまたはジハロゲン置換された芳香族化合物が使用される。
【0020】
ハロゲン置換された芳香族化合物として、フッ素置換された芳香族化合物が使用される場合には、特に良好な結果が得られる。
【0021】
さらに、好ましい態様において、トリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物として、トリメチルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物が使用される。
【0022】
本方法は、基本的には、種々の構造のアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の調製に適している。容易に入手可能なトリアルキルシリルにより活性化されたヘテロ原子を含む有機化合物の使用により、一反応段階において高収量が得られる、膨大な数の様々なアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物が入手可能となる。
【0023】
特に、トリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物の中で、脱離基としてのトリアルキルシリル基が架橋するためのヘテロ原子に結合した化合物に関する。
【0024】
特に好ましい態様において、トリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物の中で、ホスファン、ピリミジン、ピラゾール、ピロール、オキサゾール、ピロリジン、イミダゾールおよび/またはトリアゾールのクラスからの1種の化合物に関する。
【0025】
本発明の別の態様において、トリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物の中で、NまたはOを介したカップリングを可能にする非環式化合物に関する。
【0026】
本発明の方法の重要な利点の一つは、遷移金属を含む触媒の使用をせずに済むことにある。しかしながら、アルカリ金属のまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物あるいはハロゲン化アンモニウムからなる群からの物質の使用において、特に良好な結果が達成される。これらの物質は、上記の反応の触媒として作用するため、通常は少量のみが使用される。
【0027】
典型的には、これらの物質は、ハロゲン置換された芳香族化合物に基づき、0.1〜100モル%の量で、特に5〜50モル%の量で使用される。したがって、好ましい態様において、変換は、アルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物あるいはハロゲン化アンモニウムの少なくとも触媒量の存在下で行われる。触媒として使用されるハロゲン化物の中で、フッ化物の場合に、特に良好な結果が得られる。
【0028】
フッ化セシウムの少なくとも触媒量の存在下で変換が行われる場合に、特に良好な結果が得られることが明らかとなった。特に好ましい態様において、フッ化セシウムは、ハロゲン置換された芳香族化合物に基づき、0.1〜100モル%の量で、特に5〜50モル%の量で使用される。
【0029】
上記でさらに議論したように、本発明の方法により、重金属触媒の使用を必要とせずにアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物を製造することも可能となる一方で、本発明の方法の一変形において、重金属触媒の使用もなお有利であり得る。よって、本発明の方法の一態様は重金属触媒の使用である。
【0030】
特に好ましくは、上記において、パラジウム触媒からなる群からの重金属触媒が使用される。本発明の方法の特に好ましいのは、極めて速く、完全な変換が、極めて少量の遷移金属触媒の使用によりすでに達成され得ることにまさに存することが明らかとなった。したがって、特に好ましい態様において、本発明の方法は、ハロゲン置換された芳香族化合物の使用モル量に基づき、1モル%より少ないモル分率の、例えばパラジウム触媒の形態での遷移金属触媒量で実行される。
【0031】
それだけではなく、遷移金属触媒の本質的に少量のモル分率の使用でもなお、極めて良好な結果をもたらすことも明らかとなった。したがって、本発明の方法の特に好ましい態様において、各場合におけるハロゲン置換された芳香族化合物の使用モル量に基づき、好ましくは0.8モル%より少ないモル分率、より好ましくは0.5モル%より少ないモル分率、より好ましくは0.25モル%より少ないモル分率、より好ましくは0.1モル%より少ないモル分率、より好ましくは0.05モル%より少ないモル分率およびさらにより好ましくは0.01モル%より少ないモル分率の、例えばパラジウム触媒の形態での遷移金属触媒にある。
【0032】
これらの特に好ましい態様のうち、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物におけるヘテロ原子の中で、N、O、S、Pからなる群から選択される少なくとも1種から選択されるヘテロ原子に関する。
【0033】
本発明の方法の別の重要な利点は、特に穏やかな条件下で行えることにある。特に、比較的短い反応時間で高い収量を得るために、高温を全く必要としない。好ましい態様において、変換は、0〜120℃、特に40〜90℃の温度範囲において行われる。室温においてもしばしば行われ、本方法をさらに容易にする。
【0034】
変換用の溶媒としては、種々の有機合成において使用可能な溶媒を使用することができる。DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、N−メチルピロリジンおよびTHF(テトラヒドロフラン)からなる群から選択される溶媒中で変換が行われる場合に、特に良好な結果が得られる。
本発明はまた、上記の方法により製造されたアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物に関する。
【0035】
したがって、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物は、有機合成用の重要な出発物質を作り出す。それらは、種々の種類の活性物質の合成用の出発物質として特に重要である。したがって、本発明はまた、薬剤活性成分、農薬および/または除草剤の群からの化合物の製造のための、本発明の方法により製造されるアリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の使用に関する。
【0036】
要するに、本発明の方法により、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物を、穏やかな条件下でより簡単に、より速く、およびより費用がかからない方法で合成することおよびそこにおける遷移金属触媒の使用を回避することが可能となることが認められる。
上記の発明を、より詳細な態様の例を参照して、以下に説明する:
【0037】
例1:
4−イミダゾール−1−イルベンゾニトリルの合成
【化6】

窒素雰囲気下で、予めNaOHにより活性化させた、362mg(2.38mmol)のCsFを5mlのDMF中に懸濁させ、30分間撹拌した。次いで、1.00g(8.26mmol)の4−フルオロベンゾニトリルを添加した。10分後、1.20ml(8.18mmol)のN−トリメチルシリルイミダゾールを加え、混合物を60℃にて20時間撹拌した。ワークアップ(Aufarbeitung)のため、オイルポンプによる真空中で溶媒の大部分(weitgehend)を除去し、次いで反応混合物を5mlの水および5mlのCH2Cl2と混合した。
【0038】
有機相を分離し、水相をCH2Cl2で抽出し、有機相を合わせて水で数回洗浄し、MgSOで乾燥した。溶媒を真空中で除去し、残った固体をペンタンで2回洗浄した。
収量:1.07g(6.31mmol、77%)、形態:無色の固体。
【化7】

【0039】
例2:
4−ピロリジン−1−イルベンゾニトリルの合成
【化8】

窒素雰囲気下で、320mg(2.11mmol)のCsFを5mlのDMF中に懸濁させ、30分間撹拌した。次いで、1.00g(8.26mmol)の4−フルオロベンゾニトリルを添加した。10分後、1.44ml(8.25mmol)のN−トリメチルシリルピロリジンを加え、混合物を室温にて6日間撹拌した。
【0040】
ワークアップのため、反応混合物を5mlの水および5mlのCH2Cl2と混合した。有機相を分離し、水相をCH2Cl2で抽出し、有機相を合わせて水で数回洗浄し、MgSOで乾燥し、溶媒を真空中で除去した。
収量:1.01g(5.87mmol、71%)、形態:明るい黄色の固体。
【化9】

【0041】
例3:
4−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)ベンゾニトリルの合成
【化10】

0.36g(2.14mmol)の1−トリメチルシリル−3,5−ジメチルピラゾールに、5.0mlの乾燥DMF、0.26g(2.15mmol)の4−フルオロベンゾニトリルおよび0.07g(0.46mmol)のCsFを加えた。黄色の混合物は、続いて(im Folgenden)緑色になる。
【0042】
20時間後、25mlのCH2Cl2および20mlの水を加え、水相を、各回10mlのCH2Cl2で3回抽出する。合わせた有機抽出物を、各回25mlの水で3回洗浄し、MgSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで揮発性成分を除去する。
収量:0.26g(1.32mmol、62%)
【化11】

【0043】
例4:
1−(4−ニトロフェニル)ピロリジンの合成
【化12】

窒素雰囲気下で、予め水酸化ナトリウムにより活性化させた、368mg(2.42mmol)のフッ化セシウムを5mlのDMF中に懸濁させ、30分間撹拌した。次いで、1.14g(8.08mmol)の4−フルオロニトロベンゼンを添加した。10分後、1.44ml(8.25mmol)のN−トリメチルシリルピロリジンを加え、混合物を60℃にて6時間撹拌した。
【0044】
ワークアップのため、オイルポンプによる真空中でDMFの大部分を除去し、次いで反応混合物を15mlの水および20mlのジクロロメタンと混合した。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を合わせて水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空中で除去した。
収量:1.37g(7.14mmol、88%)、形態:橙色の結晶性固体。
【化13】

【0045】
例5:
4−ピロリジン−1−イル−安息香酸メチルエステルの合成
【化14】

窒素雰囲気下で、予め水酸化ナトリウムにより活性化させた、368mg(2.42mmol)のフッ化セシウムを5mlのDMF中に懸濁させ、30分間撹拌した。次いで、1.25g(8.11mmol)の4−フルオロ安息香酸メチルエステルを添加した。10分後、1.44ml(8.25mmol)のN−トリメチルシリルピロリジンを加え、混合物を60℃にて110時間撹拌した。
【0046】
ワークアップのため、オイルポンプによる真空中でDMFの大部分を除去し、次いで反応混合物を15mlの水および25mlのジクロロメタンと混合した。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を合わせて水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空中で除去した。
収量:1.19g(5.80mmol、72%)、形態:無色の結晶性固体。
【化15】

【0047】
例6:
4−フェノキシベンゾニトリルの合成
【化16】

窒素雰囲気下で、予め水酸化ナトリウムにより活性化させた、370mg(2.42mmol)のフッ化セシウムを5mlのDMF中に懸濁させ、30分間撹拌した。次いで、1.01g(8.34mmol)の4−フルオロベンゾニトリルを添加した。10分後、1.50ml(8.34mmol)のフェノキシトリメチルシランを加え、混合物を室温にて42時間撹拌した。ワークアップのため、オイルポンプによる真空中でDMFの大部分を除去し、次いで反応混合物を15mlの水および25mlのジエチルエーテルと混合した。
【0048】
有機相を分離し、水相をジエチルエーテルで抽出し、有機相を合わせて水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空中で除去した。無色針状の生成物が結晶化する赤色油を得る。
収量:1.27g(6.51mmol、78%)、形態:無色の結晶性固体。
【化17】

【0049】
例7:
4−ニトロフェニルプロピルエーテルの合成
4−ニトロフェニルプロピルエーテル:窒素雰囲気下で、予め水溶液のエバポレーション(A. Reisの論文を参照)により活性化させた、370mg(2.42mmol)のフッ化セシウムを5mlのDMF中に懸濁させ、30分間撹拌した。次いで、1.00g(7.09mmol)の4−フルオロニトロベンゼンを添加した。10分後、1.00g(7.55mmol)のプロポキシトリメチルシランを加え、混合物を95℃にて40時間撹拌した。
【0050】
ワークアップのため、反応混合物を30mlの水および25mlのジクロロメタンと混合した。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を合わせて水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空中で除去した。無色針状の生成物が結晶化する赤色油を得る。収量:0.76g(4.19mmol、59%)、赤色の液体。
【化18】

【0051】
例8:
ニランドロンの合成
【化19】

10g(78.05mmol)の5,5−ジメチルヒダントインを、12.58g(78.05mmol)のヘキサメチルジシラザンと共に、20時間80℃まで加熱した。過剰のヘキサメチルジシラザンをオイルポンプによる真空中で除去し、H−NMRにより数種の異性化合物を含む粗生成物を、さらなる生成を必要とせずに次の合成段階において用いる。収量:ほぼ定量的である。
【0052】
代替手段:317mg(2.40mmol)の5,5−ジメチルヒダントインおよび0.39gのヘキサメチルジシラザン(0.50ml、2.40mmol)を、一緒に電子レンジ中で(出力は機器により自動的に指定される)、まず100℃にて5分間、次にさらに120℃にて15分間反応させた。全ての揮発性成分を、オイルポンプによる真空中で除去した。収量:0.33g(1.65mmol、69%)、無色の固体(異性体混合物)。
【化20】

【0053】
窒素雰囲気下で、予め水酸化ナトリウムにより活性化させた、128mg(0.84mmol)のフッ化セシウムを3mlのDMF中に懸濁させ、室温にて30分間撹拌する。次いで、0.74g(3.49mmol)の4−ニトロ−3−トリフルオロメチルフルオロベンゼンを添加する。10分後、異性体混合物である0.70g(3.49mmol)の5,5−ジメチル(トリメチルシリル)ヒダントインを加え、混合物を60℃にて16時間撹拌する。ワークアップのため、オイルポンプによる真空中でDMFの大部分を除去し、次いで反応混合物を15mlの水および25mlのジエチルエーテルと混合する。
【0054】
有機相を分離し、水相をジエチルエーテルで抽出し、有機相を合わせて水で数回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空中で除去する。黄色油を得る。収量:0.80g。C1210:計算値(ber.)C 45.43, H 3.18, N 13.25;実測値(gef.): C 45.21, H 3.41, N 12.69。
【化21】

【0055】
例9:
2−(3−N,N−ジメチルアミノ−プロパ−2−エン−1−オンイル)フェニルジフェニルホスファン
窒素との接続(Stickstoffanschluss)、滴下漏斗および接続された冷却トラップ(氷冷却)(einer angeschlossenen Kuehlfalle)を備えた2Lの三つ首フラスコ中に、700mlの乾燥DMF、171.58g(888.00mmol)の1−(2−フルオロフェニル)−3−(N,N−ジメチルアミノ)プロパ−2−エン−1−オンおよび117.94g(776.32mmol)のCsFを、窒素雰囲気下で入れる。この混合物に237.00mL(889.05mmol)のジフェニル(トリメチルシリル)ホスフィンを、毎秒約1滴の速度で滴加する。添加完了後、不活性ガス下でさらに48時間撹拌する。その後、800mLのCHClおよび700mLの水を加え、2つの相を激しく撹拌し、相分離後に水相をデカンテーションする。
【0056】
水相を、200mLのCHClで抽出し、有機相を400mLの水で洗浄し、合わせた有機相をMgSOで乾燥する。溶媒の除去後、400mLのジエチルエーテルで洗浄される淡黄色の固体が残る。乾燥後、224.55g(理論値の70.28%)の生成物が得られる。分析。C2322NOPの計算値:C, 76.86; H, 6.17; N, 3.90。実測値: C, 76.30; H, 6.22; N, 3.95%。
【化22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリール基が、ヘテロ原子を含む有機基側の一部であるヘテロ原子に直接結合した、アリール−ヘテロ原子間が架橋された化合物の製造方法において、ハロゲン置換された芳香族化合物がトリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物であって、ホスファン、ピリミジン、ピラゾール、ピロール、オキサゾール、ピロリジン、イミダゾールおよび/またはトリアゾールのクラスからの1種の化合物と反応することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
ハロゲン置換された芳香族化合物として、モノまたはジハロゲン置換された芳香族化合物を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン置換された芳香族化合物として、フッ素置換された芳香族化合物を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
トリアルキルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物として、トリメチルシリル置換されたヘテロ原子を含む有機化合物を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ金属のまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物あるいはハロゲン化アンモニウムの少なくとも触媒量の存在下で、変換を行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ハロゲン化物がフッ化物であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
フッ化セシウムの少なくとも触媒量の存在下で、変換を行うことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
出発物質として使用されるハロゲン置換された芳香族化合物のモル量に基づき、1モル%より少ないモル分率の遷移金属触媒の存在下で、変換を行うことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ヘテロ原子が、N、O、SおよびPからの少なくとも1種を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
変換が、0〜120℃、特に40〜90℃の温度範囲において行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
変換が、DMF、DMSO、N−メチルピロリジンおよびTHFからなる群から選択される溶媒中で行われることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−520341(P2012−520341A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500225(P2012−500225)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053413
【国際公開番号】WO2010/106078
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508335624)ツィルム・ベタイリグングスゲゼルシャフト・エムベーハー・ウント・コ・パテンテ・ツヴァイ・カーゲー (4)
【Fターム(参考)】