説明

トレイ積層移載装置

【課題】簡単な構成で容易に確実に段積みされたトレイを保持することができ、汎用性も高いトレイ積層移載装置を提供する。
【解決手段】複数のトレイ12が積み重ねられた段積みトレイ14の側縁部に当接し押圧するとともに、押圧時の力により各トレイ12の側縁部13が食い込み可能な弾力性を有した押圧体16を備える。押圧体16は複数の側縁部13に亘って当接し、段積みトレイ14の両側に位置して一対設けられている。押圧体16は、段積みトレイ14の側方に位置した板状のゴム部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶ディスプレイなどに用いられるガラス基板等を搬送するためのトレイを積み重ねて移送・載置を行うトレイ積層移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイに用いられるガラス基板は、一枚の大型のガラス基板から個々のディスプレイ用に複数のガラス基板に分割して用いられ、大型のガラス基板や分割後のガラス基板を次の処理工程へ搬送する際に、所定のトレイに入れて搬送する場合がある。この場合、薄いトレイであるため、搬送効率を上げるために、多数のトレイを積層した段積み状態で搬送している。
【0003】
そして、搬送により次の工程に送るために、最下層のトレイからガラス基板を取り出す場合は、特許文献4や図4に示すように、最下層のトレイ2aを残して、上方のトレイ2を、保持ツメ4を備えた一対の側方クランプ6により、各トレイ2の側縁部3を両側から支持して持ち上げていた。これにより、段積みされたトレイ2の最下層のトレイ2aのみが載置台等に残され、ガラス基板が次工程に移送される。
【0004】
また、特許文献1〜3に開示されているように、段積みされたトレイの側方に位置して、レバーやツメを用いたリンク機構等の機械的な位置決め機構や保持機構により、段積みされたトレイの一部を分離したり持ち上げたりする装置も提案されている。
【特許文献1】特開平5−338804号公報
【特許文献2】特開平6−255790号公報
【特許文献3】特開2003−252436号公報
【特許文献4】特開2004−186249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術の図5に示す構造の場合、図6に示すように、側方クランプ6は下降端の規準位置Lから各トレイ2の側縁部3に平行移動して係合し、各トレイ2を持ち上げるものである。しかしながら、トレイ2の段数が多くなりトレイ2が空の場合と基板等の収納時では全体重量に大きな差があり、トレイ2を支持した装置の支持部材のたわみ量の違いや各トレイ2の寸法誤差の多段積みによる累積により、トレイ位置が僅かながら上下にずれる場合がある。このような場合、通常は図6(a)、(b)に示すように、側方クランプ6が各トレイ2の側縁部3の間に進入して持ち上げ可能となるものが、多段のトレイ2に基板を収納している場合、図6(c)、(d)に示すように、各トレイ2の側縁部3の間の位置が下方に下がり、側方クランプ6の保持ツメ4が各トレイ2の側縁部3間に挿入できないという問題が発生していた。また、逆に図6(e)、(f)に示すように、トレイ2が空の場合、規準位置Lよりもトレイ2の側縁部3の位置が上方にある場合もあり、このような場合も側方クランプ6が各トレイ2の側縁部3の間に挿入できない事態が生じていた。また、トレイ2の種類が変わり厚みが異なると側方クランプ6も交換しなければならず、装置の汎用性が低いものであった。
【0006】
その他、特許文献1〜3に開示された装置の場合も上記と同様の問題点を有し、複雑な位置決め機構を設けて位置決めを行っているものであり、装置のコストがかかる上メンテナンスにも工数及びコストがかかるものである。
【0007】
この発明は、上記従来技術の問題に鑑みて成されたもので、簡単な構成で容易且つ確実に段積みされたトレイを保持することができ、汎用性も高いトレイ積層移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、複数のトレイが積み重ねられた段積みトレイを保持して移載するトレイ積層移載装置であって、前記段積みトレイの各側縁部に当接し押圧するとともに、押圧時の力により前記側縁部が食い込み可能な弾力性を有した押圧体を備え、この押圧体は複数の側縁部に亘って当接し、前記段積みトレイの両側に位置して一対設けられているトレイ積層移載装置である。
【0009】
前記押圧体は、前記段積みトレイ側方に位置し、前記複数のトレイの側縁部に跨って当接する弾性部材が複数接続されて成る。前記押圧体は、板状またはブロック状のゴム部材や、柔軟な樹脂、発泡樹脂等から成る。
【0010】
前記トレイは、基板を水平状態で収納可能に設けられ、底面には複数の透孔部が設けられ、搬入される前記トレイ底部の各透孔部に各々挿通可能であるとともに各上端部によって前記基板を水平状態で支持可能に配置された複数の支持ピンを備え、各支持ピンは、この支持ピン突出方向に積み重ねられた前記段積みトレイの前記各透孔部を上下方向に挿通可能な長さを有する。
【発明の効果】
【0011】
この発明のトレイ積層移載装置によれば、トレイの位置や厚みに関わりなく確実に段積みされたトレイを保持することができ、極めて汎用性が高いものである。これにより、細かい位置調整やトレイ毎の装置の切り替えが不要となり、コストダウンにも寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明のトレイ積層移載装置の一実施形態について、図1〜図4を基にして説明する。この実施形態のトレイ積層移載装置10は、例えば液晶ディスプレイに使用されるガラス基板をトレイ12に収容して次工程へ搬送するための装置であって、トレイ12が多数積み重ねられた段積みトレイ14を、持ち上げ、搬送、または一部分離する装置である。
【0013】
トレイ12は、発泡ポリエチレン樹脂等によって、薄い直方体状に一体的に成形されており、搬送するガラス基板20が水平状態で載置される長方形状の底部15と、底部15の全周にわたり側縁部上方に起立した枠部17とから成る。底部15は、収容されるガラス基板20よりも一回り大きな長方形状であって、例えば、15mm程度の厚さに形成されており、底部15の上面にガラス基板20が載置される。底部15には、透孔部15aが所定間隔で、角部及び中央部に複数形成されている。透孔部15aは、例えば9個の透孔部15aが、3行×3列のマトリクス状に設けられている。底部15に設けられた各透孔部15aは、底部15上に収納されたガラス基板20をトレイ12から取り出すため、支持部材としての後述する支持ピン24がそれぞれ挿入されるために設けられている。
【0014】
トレイ12の枠部17は、例えば、底部15の側縁部から30mm程度の幅寸法で全周にわたって設けられており、底部15上に載置されたガラス基板20を水平方向に僅かな間隔をあけた状態で、全周にわたって取り囲むように形成されている。
【0015】
枠部17の上部には、例えば30mm程度の幅寸法で外側に水平状態でフランジ状に突出する側縁部13が、全周にわたって設けられている。この測縁部13は、断面長方形状に構成されている。
【0016】
トレイ12は、それぞれにガラス基板20が収納された状態で、例えば数10個程度が上下方向に積み重ねられて搬送される。これにより、搬送および保管に際してのスペース効率が著しく向上し、多量のガラス基板20を効率よく取り扱うことができる。なお、上側に積み重ねられたトレイ12は、底部15の下端部が、下側の基板収納用トレイ12の上端部に設けられた図示しない位置決め部に係合している。
【0017】
この実施形態のトレイ積層移載装置10は、このトレイ12に収納されたガラス基板20を取り出して、次の工程に移すために使用される。
【0018】
この実施形態のトレイ積層移載装置10は、図示しない保持機構の端部に、ゴムまたは柔軟な合成樹脂や発泡樹脂等の軟質弾性材の押圧体16を備えたものである。押圧体16は、板状またはブロック状に形成され、段積みトレイ14の両側に位置して一対設けられ、図示しない保持機構により、互いに離間または近接し、上下に昇降可能に設けられている。押圧体16は、各トレイ12の側縁部13との摩擦が十分に得られるもので、トレイ12を保持した状態で圧縮変形し各トレイ12の側縁部13が押圧体16内に食い込み可能な弾力性を有するものである。また、押圧体16は、段積みトレイ14の側方に位置して、図2に示すように、複数のトレイ12の側縁部に跨って当接する弾性部材16aが複数連続して設けられたものである。
【0019】
さらに、このトレイ積層移載装置10は、上下方向に積み重ねられた複数のトレイ12の保持が解除された際に、トレイ12が載置され昇降可能に設けられた昇降台22を備えている。また、トレイ積層移載装置10は、昇降台22を上下方向にそれぞれ貫通するとともに、この昇降台22上に載置された1または複数のトレイ12の各透孔部15aに挿通するとともに、垂直方向に延出た支持ピン24を複数備えている。
【0020】
この実施形態のトレイ積層移載装置10の動作は、図2,図3に示すように、段積みトレイ14の側方から一対の押圧体16が各トレイ12の側縁部13に当接し、トレイ12の側縁部13が押圧体16内に食い込むまで一対の押圧体16を段積みトレイ14の中心側に押し込む。この状態で図3(a)に示すように、各トレイ12の側縁部13は確実に押圧体16に保持される。この後、押圧体16が取り付けられた保持機構により、押圧体16が上昇すると、押圧体16に保持された部分より上の段積みトレイ14が同時に持ち上げられる。
【0021】
ここで、段積みトレイ14の各トレイ12内に基板等が収納され、重量が大きい場合、図2(b)に示すように、段積みトレイ14の位置が全体的に規準位置Lよりも下方にずれる場合がある。この場合でも、図3(b)に示すように、押圧体16はトレイ12の側縁部13の位置ずれに関係なく確実な保持が可能である。同様にトレイ12が空で軽く、図2(c)に示すように、トレイ12の位置が規準位置Lよりも上方にずれていても、図3(c)に示すように、押圧体16は確実にトレイ12を保持し、持ち上げまたは搬送することができる。
【0022】
次に、トレイ12中のガラス基板20を取り出す際は、最下部のトレイ12aより上方のトレイ12を、保持機構の押圧体16により保持する。このとき、最下部のトレイ12aは、押圧体16によって保持されることなく、昇降台22上に載置された状態となる。この後、昇降台22が下降すると、図4に示すように、最下部のトレイ12aも一体となって下降する。そして、昇降台22の下降に伴って、各支持ピン24が昇降台22を挿通しトレイ12aの各透孔部15a内に挿入される。さらに昇降台22が下降すると、各支持ピン24の上端部が、トレイ12a内に収納されたガラス基板20の裏面にそれぞれ当接し、昇降台22の下降に伴って、そのガラス基板20は、各支持ピン24によって、トレイ12aの底部15から相対的に持ち上げられる。この状態で、各支持ピン24は、トレイ12aからガラス基板20を相対的に上方に位置させ、所定の高さで水平に保持した状態となる。
【0023】
そして、各支持ピン24上で水平状態に保持されたガラス基板20は、吸着ハンド等の搬送手段によって、ガラス基板20が各支持ピン24上から取り上げられ、所定の位置に搬送される。
【0024】
この実施形態のトレイ積層移載装置10によれば、トレイ12の位置や厚みに関わりなく押圧体16により保持可能な位置の範囲内であれば、確実に段積みトレイ14を保持することができる。従って、トレイ12の深さや厚み、側縁部13の厚み等が変更された場合や、収納物の有無や種類によりトレイ12の設置位置が僅かにずれても、確実にトレイ12の保持が可能なものである。これにより、保持装置の細かい位置調整やトレイ種毎の装置の切り替えが不要となり、製品製造時のコストダウンにも寄与するものである。
【0025】
なお、この発明のトレイ積層移載装置は上記実施形態に限定されるものではなく、押圧体は、複数に分割された状態で複数のトレイを各押圧体の対毎に保持するものでも良く、押圧体の形状や構造、材質は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態のトレイ積層移載装置の段積みされたトレイを示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態のトレイ積層移載装置の段積みトレイを保持する状態を示す概略側面図である。
【図3】この発明の一実施形態のトレイ積層移載装置の押圧体による段積みトレイの各保持状態を示す概略側面図である。
【図4】この発明の一実施形態のトレイ積層移載装置の移載動作を示す縦断面図である。
【図5】従来のトレイ積層移載装置による段積みトレイを保持する状態を示す概略側面図である。
【図6】従来のトレイ積層移載装置による段積みトレイの各保持状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 トレイ積層移載装置
12 トレイ
13 側縁部
14 段積みトレイ
15 底部
15a 透孔部
16 押圧体
20 ガラス基板
22 昇降台
24 支持ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトレイが積み重ねられた段積みトレイを保持して移載するトレイ積層移載装置において、前記段積みトレイの各側縁部に当接し押圧するとともに、押圧時の力により前記側縁部が食い込み可能な弾力性を有した押圧体を備え、この押圧体は複数の側縁部に亘って当接し、前記段積みトレイの両側に位置して一対設けられていることを特徴とするトレイ積層移載装置。
【請求項2】
前記押圧体は、前記段積みトレイ側方に位置し、前記複数のトレイの側縁部に跨って当接する弾性部材が複数接続されて成る請求項1記載のトレイ積層移載装置。
【請求項3】
前記トレイは、基板を水平状態で収納可能に設けられ、底面には複数の透孔部が設けられ、搬入される前記トレイ底部の各透孔部に各々挿通可能であるとともに各上端部によって前記基板を水平状態で支持可能に配置された複数の支持ピンを備え、各支持ピンは、この支持ピン突出方向に積み重ねられた前記段積みトレイの前記各透孔部を上下方向に挿通可能な長さを有するものである請求項1記載のトレイ積層移載装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−261738(P2007−261738A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88445(P2006−88445)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(591124721)立山マシン株式会社 (36)
【Fターム(参考)】