説明

トレーラの床構造およびトレーラの床製造方法

【課題】車幅寸法精度の向上が図れるトレーラの床構造およびトレーラの床製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】車長方向に延在する複数の床構成材30を車幅方向に連接し溶接にて接合してなるトレーラの床構造であって、隣接する少なくとも二つの床構成材30(36,37)のうち一方の床構成材(外側床構成材36)には、床の幅方向に調整代を有する幅調整板50が設けられ、他方の床構成材(端部床構成材37)には、片側隅肉溶接にて幅調整板50に接合される継手板55が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラの床構造およびトレーラの床製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、従来のトレーラの床構造100は、車体の長さ方向に延在する一対のメインビーム101,101に、複数のクロスメンバ(横根太)102,102…を取り付けて、クロスメンバ102上に木材やアルミニウム製押出形材等の床材(図示せず)を載置・固定して形成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−67337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の床構造では、クロスメンバ102上に床材を設けているため、車体の重量がかさみ、積載量が低下してしまう問題があった。また、クロスメンバ102は多数設けられているので、クロスメンバ102と床材を固定するのに多くの手間と時間を要し、組立工数が多いという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明者等は、クロスメンバを必要としない構成として、車長方向に延在する複数の床構成材を車幅方向に連接し溶接にて接合してなるトレーラの床構造を発明した。しかしながら、この構成では、溶接による熱収縮や各床構成材の交差を原因とする幅寸法のズレが発生するので、車幅寸法精度の向上が求められる。
【0006】
以上のことを鑑みて、本発明は案出されたものであって、車幅寸法精度の向上が図れるトレーラの床構造およびトレーラの床製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、車長方向に延在する複数の床構成材を車幅方向に連接し溶接にて接合してなるトレーラの床構造であって、隣接する少なくとも二つの床構成材のうち一方の床構成材には、車幅方向に調整代を有する幅調整板が設けられ、他方の床構成材には、片側隅肉溶接にて前記幅調整板に接合される継手板が設けられていることを特徴とするトレーラの床構造である。
【0008】
このような構成によれば、片側隅肉溶接で床構成材を取り付けているので、溶接時の床構成材の収縮量を少なくできる。そして、最後に取り付ける床構成材を片側隅肉溶接で接合すれば、先に形成した床部材の溶接時の変形や寸法公差を吸収でき、車幅寸法精度の向上が図れる。
【0009】
そして、本発明では、前記継手板が、その表面が前記他方の床構成材の表面と面一となるように形成されており、前記幅調整板が、前記一方の床構成材の表面から前記継手板の厚さ寸法と同じ寸法の段差をあけて形成されており、前記一方の床構成材の表面と前記継手板の表面とが同一面内に位置するように構成されているものが好ましい。このような構成によれば、荷台面が面一となり、荷役作業を行いやすい。
【0010】
また、本発明では、前記他方の床構成材が、床の幅方向端部に設けられる端部床構成材であるものが好ましい。このような構成によれば、最後に取り付けられる端部床構成材を接合するときに、内側の床ユニットの溶接時の変形や寸法公差を吸収でき、車幅寸法精度の向上が図れる。
【0011】
さらに、請求項4に係る発明は、車長方向に延在する複数の床構成材を車幅方向に連接し溶接にて接合して内側床ユニットを形成する内側床ユニット形成工程と、前記内側床ユニットの幅方向両外側に、端部床構成材を仮組みして仮組床ユニットを形成する仮組床ユニット形成工程と、間隔をあけて配置された一対のガイド壁間に仮組床ユニットを配置し、幅寸法を調整しつつ、前記ガイド壁に前記端部床構成材を固定する幅寸法調整工程と、溶接にて前記内側床ユニットと前記端部床構成材とを接合する溶接工程と、を備え、前記内側床ユニットの幅方向両端には、車幅方向に調整代を有する幅調整板が設けられ、前記端部床構成材には、溶接にて前記幅調整板に接合される継手板が設けられており、前記仮組床ユニット形成工程では、前記幅調整板と前記継手板が重合した状態で前記内側床ユニットと前記端部床構成材とが仮組みされることを特徴とするトレーラの床製造方法である。
【0012】
このような方法によれば、内側床ユニットの溶接時の変形や寸法公差を吸収できるとともに、車幅寸法を外追いで管理できるので、車幅寸法精度の向上が図れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車幅寸法精度の向上が図れるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るトレーラの床構造を示した断面図および部分拡大図である。
【図2】本発明の実施形態に係るトレーラの床構造を示した側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るトレーラの床構造を示した斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るトレーラの床構造を示した要部拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るトレーラの床構造の最終溶接工程を示した断面図である。
【図6】従来のトレーラの床構造を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図2に示すように、本実施形態に係るトレーラ1の床構造2は、トラクタ3に牽引されるトレーラ1の床を構成するものである。図1および図3に示すように、トレーラ1(図2参照)の床構造2は、トレーラ1の長さ方向(車長方向)に延在する一対のメインビーム10,10と、長さ方向に延在する複数の床構成材30,30…とを備えている。そして、メインビーム10,10と床構成材30,30…とを、トレーラ1の幅方向(車幅方向)に連接させて面状の構造体を形成して床構造2が構成されている。なお、本実施形態では、メインビーム10が車幅方向に間隔をあけて一対設けられているが、メインビームの本数はこれに限定されるものではなく、たとえば、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0017】
図1乃至図3に示すように、メインビーム10は、アルミニウム合金製長尺材にて構成されている。メインビーム10は、トレーラ1の車長方向に沿って、その前端から後端まで直線状に延在している。一対のメインビーム10,10は、車幅方向に間隔をあけて、互いに平行になるように配置されている。
【0018】
図1に示すように、メインビーム10は、上フランジ部11と下フランジ部12とウエブ部13とを備えて構成されている。上フランジ部11と下フランジ部12は、メインビーム10の上下部分を構成する部材であって、それぞれ車幅方向に広がって構成されている。上フランジ部11と下フランジ部12は、同じ幅寸法に形成されている。ウエブ部13は、アルミニウム合金製の板材または押出形材にて構成されている。ウエブ部13は、その上端部が上フランジ部11に溶接固定され、下端部が下フランジ部12に溶接固定されて、メインビーム10が一体的に形成されている。なお、メインビーム10は、上フランジ部11と下フランジ部12とウエブ部13とが一体成形されたものであってもよい。
【0019】
上フランジ部11の下面の幅方向中央部には、下方に延出する突条14が形成されている。突条14の下端にウエブ部13の上端部が溶接されている。上フランジ部11は、床構成材30と同じ厚さ寸法で形成されており、その上面は、床構成材30の上面と面一になるように構成されて、床面の一部を構成している。上フランジ部11は、中空部を有しており、この中空部は、補強リブ16にて分割されている。補強リブ16は、上フランジ部11の上板部11aと下板部11b間に配置されている。上板部11aは、後記する床構成材30の上板部32と同等の厚さ寸法に形成されている。下板部11bは、後記する床構成材30の下板部33と同等の厚さ寸法に形成されている。上フランジ部11は、アルミニウム合金製の押出中空形材にて構成されている。
【0020】
下フランジ部12の上面の幅方向中央部には、上方に延出する突条17が形成されている。突条17の上端にウエブ部13の下端部が溶接されている。下フランジ部12は、アルミニウム合金製の押出形材にて構成されている。
【0021】
図2に示すように、メインビーム10は、前後位置によって高さ寸法が変化する。メインビーム10の上フランジ部11は、前端から後端にかけて同一レベルに形成されて、上面が水平な平面形状となっている。一方、下フランジ部12は、メインビーム10の高さの変化に応じて、屈曲して形成されている。ウエブ部13は、トレーラ1の前後に向かうにつれて、それぞれの高さに応じて、複数の高さに形成されている。ウエブ部13の高さ寸法が変化することで、メインビーム10のビーム高さが変化するようになっている。
【0022】
図1および図3に示すように、床構成材30は、一対のメインビーム10,10の間と、車幅方向外側に固定されている。床構成材30は、中空部を有する中空押出形材からなる。中空部には、トラス状に配置された斜材31が設けられている。つまり、床構成材30は、上板部32と下板部33と側板部34とを備えてなり、その内側の中空部に、上板部32と下板部33とを結ぶ斜材31が設けられている。上板部32は、その板厚が下板部33よりも厚くなっている。これは、使用時において荷物が落下した際の衝撃などの外力による凹み等の変形や損傷の発生を抑えるためである。
【0023】
床構成材30は、メインビーム10,10間に設けられる内側床構成材35と、メインビーム10の車幅方向外側に張り出して設けられる外側床構成材36と、外側床構成材36の外側に設けられる端部床構成材37の三種のものを備えている。なお、本実施形態では、メインビーム10の上フランジ部11も床面を構成しているので、床構成材30に含む。
【0024】
内側床構成材35は、メインビーム10,10間に三枚並設されている。内側床構成材35は、幅方向両端に凸部38を有する第一内側床構成材35aと、幅方向両端に凹部39を有する第二内側床構成材35bの二種のものからなる。これらは、メインビーム10、第一内側床構成材35a、第二内側床構成材35b、第一内側床構成材35a、メインビーム10の順で配置されている。
【0025】
図1の右側の拡大図部分に示すように、凸部38は、上側継手板38aと下側継手板38bとから構成されている。上側継手板38aは、第一内側床構成材35aの上板部32から厚さ方向内側(下側)にオフセットして幅方向外方(第一内側床構成材35aの外側両方向)に突出している。下側継手板38は、第一内側床構成材35aの下板部33から厚さ方向内側(上側)にオフセットして幅方向外方(第一内側床構成材35aの外側両方向)に突出している。上側継手板38aと上板部32は互いに平行になるように形成されている。上側継手板38aと上板部32との段差部は、上板部32の表面に対して傾斜しており、厚さ方向内側(下側)に向かうに連れて先端側に突出する。下側継手板38bと下板部33は互いに平行になるように形成されている。下側継手板38bと下板部33との段差部は下板部33の表面に対して傾斜しており、厚さ方向内側(上側)に向かうに連れて先端側に突出する。
【0026】
凹部39は、上側継手板39aと下側継手板39bと側板部34によって区画されて構成されている。上側継手板39aは、第二内側床構成材35bの上板部32から面一の状態で幅方向外方(第二内側床構成材35bの外側両方向)に突出している。下側継手板39bは、第二内側床構成材35bの下板部33から面一の状態で幅方向外方(第二内側床構成材35bの外側両方向)に突出している。上側継手板39aの先端面は、厚さ方向内側(下側)に向かうに連れて先端側に突出するように傾斜している。下側継手板39bの先端面は、厚さ方向内側(上側)に向かうに連れて先端側に突出するように傾斜している。
【0027】
互いに隣接する第一内側床構成材35aと第二内側床構成材35bでは、第一内側床構成材35aの凸部38が、第二内側床構成材35bの凹部39に挿入されている。挿入時には、凹部39の上側継手板39aの先端が、凸部38の上側継手板38aと上板部32との段差部に当接するとともに、凹部39の下側継手板39bの先端が、凸部38の下側継手板38bと下板部33との段差部に当接することで、互いの位置決めが為される。このとき、凹部39の上側継手板39aの先端面と、凸部38の上側継手板38aと上板部32との段差部の傾斜面との間には、断面V字の隙間が生じる。また、凹部39の下側継手板39bの先端面と、凸部38の上側継手板38aと上板部32との段差部の傾斜面との間には、断面逆V字状の隙間が生じる。これら上下の隙間に溶接棒などの溶接金属を供給しながら突合せ溶接を行うことで、第一内側床構成材35aと第二内側床構成材35bとが固定される。突合せ溶接は、前記隙間に沿って、車長方向に延びて直線状に行われる。このとき、溶接棒が溶けて、上表面ではビード40が断面V字の隙間を覆うので、第一内側床構成材35aと第二内側床構成材35bの接合部に段差が発生せず、床面が面一になる。
【0028】
メインビーム10の上フランジ部11の幅方向両端部にも、凹部39と同じ形状の凹部39’が形成されている。そして、上フランジ部11の幅方向一端(車幅方向内側端)の凹部39’に、メインビーム10に隣接する第一内側床構成材35aの凸部38が挿入されており、前述のように突合せ溶接を行うことで、メインビーム10と第一内側床構成材35aとが固定されている。
【0029】
図1の左側の拡大図部分に示すように、外側床構成材36の幅方向一端(車幅方向内側端)には、凸部38と同じ形状の凸部38’が形成されている。そして、この凸部38’が、上フランジ部11の幅方向他端(車幅方向外側端)の凹部39’に挿入されており、前述のように突合せ溶接を行うことで、外側床構成材36とメインビーム10とが固定されている。
【0030】
図1に示すように、外側床構成材36の下面には、車長方向全長に延在する凹溝43が形成されている。凹溝43は、下方に突出する断面L字状の一対のプレートにて区画されており、中空押出形材の成型時に同時に形成される。凹溝43は、開口部分にリップ部(L字の屈曲部分)が形成されており、内部にボルトの頭部等を挿入して係止できるようになっている。このように凹溝43を形成することによって、床構成材30の下面に各種部品を容易に取り付けることができる。
【0031】
外側床構成材36,36およびメインビーム10,10と、3つの内側床構成材35,35,35とは、端部床構成材37,37が接合される前に一体化される。端部床構成材37,37が接合される前の状態を、「内側床ユニット70」(図3および図5参照)と称する。
【0032】
図4に示すように、外側床構成材36の幅方向他端部(車幅方向外側端部)に、車幅方向に調整代を有する幅調整板50が設けられ、端部床構成材37の幅方向一端部(車幅方向内側端部)に、片側隅肉溶接にて幅調整板50に接合される継手板55が設けられている。
【0033】
なお、本実施形態では、外側床構成材36が、特許請求の範囲における「隣接する少なくとも二つの床構成材のうち一方の床構成材」に該当し、端部床構成材37が、特許請求の範囲における「隣接する少なくとも二つの床構成材のうち他方の床構成材」に該当する。
【0034】
外側床構成材36は、上板部32と下板部33と側板部34とを備えてなり、その内側の中空部に、上板部32と下板部33とを結ぶ斜材31が設けられている。外側床構成材36の車幅方向外側端部に、上下一対の幅調整板50が設けられている。上下一対の幅調整板50,50のうち、上板部32につながるものを「上側調整板51a」と称し、下板部33につながるものを「下側調整板51b」と称する。上側調整板51aと下側調整板51bは互いに平行になっている。上側調整板51aは、外側床構成材36の上板部32から厚さ方向内側(下側)にオフセットしている。上側調整板51aは、オフセットした段差部の先端から車幅方向外方に突出している。上側調整板51aと上板部32は互いに平行になっている。上側調整板51aと上板部32との段差部は、上板部32の表面に対して略45度の角度で傾斜しており、厚さ方向内側(下側)に向かうに連れて先端側に向かう。下側調整板51bは、外側床構成材36の下板部33から厚さ方向内側(上側)にオフセットしている。上側調整板51aは、オフセットした段差部の先端から車幅方向外方に突出している。下側調整板51bと下板部33は互いに平行になっている。下側調整板51bと下板部33との段差部は、下板部33の表面に対して略45度の角度で傾斜しており、厚さ方向内側(上側)に向かうに連れて先端側に向かう。
【0035】
上側調整板51aと下側調整板51bとは、同じ突出長さを有している。上側調整板51aおよび下側調整板51bは、前述した凸部38の上側継手板38aおよび下側継手板38bよりも長く突出しており、所定長さの調整代を有している。調整代の寸法Lは、車幅方向に広がる寸法であって、必要接触寸法L1と可動寸法L2と溶接空間寸法L3を加えた長さである。必要接触寸法L1は、端部床構成材37を外側床構成材36に安定して溶接固定するために必要とする幅調整板50と継手板55との接触長さである。
【0036】
可動寸法L2は、端部床構成材37が外側床構成材36に対して相対移動できる長さであって、内側床ユニット70の製作上の寸法誤差を吸収するための寸法である。内側床ユニット70の寸法誤差は、隣接する床構成材30同士または床構成材30とメインビーム10の突合せ溶接時の熱収縮や、各床構成材30やメインビーム10の寸法公差によって発生する。可動寸法L2は、寸法誤差の最大値を考慮して設定される。
【0037】
溶接空間寸法L3は、溶接時に溶接トーチ等の溶接治具(図示せず)が上側調整板51aと上板部32との段差部および下側調整板51bと下板部33との段差部に干渉しないようにするためと、溶接のビード41が段差部に流れないようにするための寸法である。上側調整板51aおよび下側調整板51bは突出長さが長いので、先端部同士が補強板52を介して連結されて補強されている。補強板52は、側板部34と平行に形成されている。
【0038】
端部床構成材37は、上板部32と下板部33と側板部34とを備えてなり、その内側の中空部に、上板部32と下板部33とを結ぶ斜材31が設けられている。端部床構成材37の車幅方向内側端部には、上下一対の継手板55が設けられている。上下一対の継手板55,55のうち、上板部32につながるものを「上側継手板55a」と称し、下板部33につながるものを「下側継手板55b」と称する。上側継手板55aは、端部床構成材37の上板部32から面一の状態で、上板部32と側板部34の接続部分から外側床構成材36に向かって突出している。下側継手板55bは、端部床構成材37の下板部33から面一の状態で、下板部33と側板部34の接続部分から外側床構成材36に向かって突出している。上側継手板55aと下側継手板55bは互いに平行になっており、同じ長さで突出している。上側継手板55aと、下側継手板55bと、側板部34とで凹部が形成され、この凹部に幅調整板50(上下一対の上側調整板51aと下側調整板51b)の先端部が挿入される。上側継手板55aおよび下側継手板55bの先端面は、上板部32および下板部33の表面に対して直交している。上側継手板55aおよび下側継手板55bの突出寸法は、必要接触寸法L1と可動寸法L2を加えた長さ以上とするのがよい。このようにすれば、上側継手板55aおよび下側継手板55bの先端が、幅調整板50の可動域の最も奥(可動寸法L2と溶接空間寸法L3との境界)まで到達できる。なお、上側継手板55aおよび下側継手板55bの突出寸法を、必要接触寸法L1と可動寸法L2を加えた長さと同じにすれば、端部床構成材37の凹部の奥まで幅調整板50を挿入したときに、幅調整板50の先端が側板部34の当接する。これによって、継手板55の先端が溶接空間まで到達しないようにするためのストッパの役目を果たす。
【0039】
上側継手板55aの厚さ寸法は、外側床構成材36の上側調整板51aと上板部32との段差寸法と同じである。言い換えれば、上側調整板51aは、外側床構成材36の上表面から上側継手板55aの厚さ寸法と同じ寸法の段差をあけて形成されている。これによって、外側床構成材36の上表面と、上側継手板55aの上表面(端部床構成材37の上表面)とが同一面内に位置している。一方、下側継手板55bの厚さ寸法は、外側床構成材36の下側調整板51bと下板部33との段差寸法と同じである。言い換えれば、下側調整板51bは、外側床構成材36の下表面から下側継手板55bの厚さ寸法と同じ寸法の段差をあけて形成されている。これによって、外側床構成材36の下表面と、下側継手板55bの下表面(端部床構成材37の下表面)とが同一面内に位置している。
【0040】
継手板55は、幅調整板50の表面に片側隅肉溶接にて接合されている。具体的には、継手板55の先端面と幅調整板50の表面との交差部分に、溶接棒等の溶接金属を供給しながら、溶接トーチを傾斜させて外側床構成材36側から押し当てて、片側隅肉溶接を行う。このとき、溶接金属が溶けて、継手板55の先端面と幅調整板50の表面に沿った断面が略直角三角形のビード41が形成される。ここで、ビード41は、幅調整板50と外側床構成材36の表面との段差部には流れ着かず、段差部との間に隙間をあけている。
【0041】
端部床構成材37の車体外側の端部には、サイドレール44が形成されている。サイドレール44は、断面コ字状に形成されたプレートであり、車長方向全長に延在している。端部床構成材37の下面には、車長方向全長に延在する凹溝43が形成されている。この凹溝43は、外側床構成材36の下面に設けられた凹溝43と同じ構成である。このように凹溝43およびサイドレール44を形成することによって、トレーラ1の車体の下面および外側部に各種部品を容易に取り付けることができる。
【0042】
次に、以上のような構成の床構造2を製造するトレーラ1の床製造方法を説明する。
【0043】
(内側床ユニット形成工程)
床構造2を製造するに際しては、まず、図1に示すように、第一内側床構成材35aの凸部38を第二内側床構成材35bの凹部39に挿入して突合せ溶接を行って、3つの内側床構成材35,35,35同士を接合する。その後、第一内側床構成材35aの凸部38をメインビーム10の凹部39’に挿入して突合せ溶接を行って、内側床構成材35とメインビーム10を接合する。さらに、外側床構成材36の凸部38’をメインビーム10の凹部39’に挿入して突合せ溶接を行って、外側床構成材36とメインビーム10を接合する。これによって、内側床ユニット70(図5参照)が形成される。この内側床ユニット70は、隣接する床構成材30同士または床構成材30とメインビーム10の突合せ溶接時の熱収縮や、各床構成材30やメインビーム10の寸法公差によって車幅方向の寸法誤差が発生するが、本工程では、寸法誤差はそのままにしておき、後の工程で車幅寸法の調整を行う。
【0044】
(仮組床ユニット形成工程)
次に、図5に示すように、内側床ユニット70の幅方向両外側に、端部床構成材37を仮組みして仮組床ユニット71を形成する。本工程での仮組みとは、内側床ユニット70の両端の外側床構成材36の幅調整板50,50を、端部床構成材37の継手板55,55の間に挿入した状態で、溶接前の状態を言う(図5の右側参照)。つまり、仮組床ユニット71は、端部床構成材37が、内側床ユニット70に固定されておらず、相対移動可能な状態である。
【0045】
(幅寸法調整工程)
一対のガイド壁75,75を、所定の間隔をあけて配置する。そして、一対のガイド壁75,75間に仮組床ユニット71を配置し、幅寸法を調整しつつ、ガイド壁75,75に両端の端部床構成材37,37をそれぞれ固定する。ガイド壁75,75間の間隔は、製造される車体の幅寸法に合わせる。本工程では、内側床ユニット70の両端の外側床構成材36の幅調整板50,50を、端部床構成材37の継手板55,55の間の一番奥までに挿入して、仮組床ユニット71の幅寸法を小さくした状態でガイド壁75,75間に配置する。そして、両端の端部床構成材37,37を、ガイド壁75,75の内側面に当接する位置まで広げて、ボルトナットやクリップ等の固定治具(図示せず)で、端部床構成材37をガイド壁75に仮固定する。
【0046】
(溶接工程)
その後、溶接にて内側床ユニット70と端部床構成材37とを接合する。本実施形態では、内側床ユニット70と端部床構成材37とで仮止めを行った後に、端部床構成材37の継手板55の先端面と、外側床構成材36の幅調整板50の表面との交差部分に、溶接棒等の溶接金属を供給しながら、溶接トーチを傾斜させて外側床構成材36側から押し当てて、片側隅肉溶接を行う。片側隅肉溶接は、仮組床ユニット71の車長方向全長に渡って行う。このとき、図4に示すように、溶接金属が溶けて、継手板55の先端面と幅調整板50の表面に沿った断面が略直角三角形のビード41が形成される。以上の片側隅肉溶接が完了後に仕上げ加工を行い、床構造2が完成する。
【0047】
以上のような構成および製造方法によれば、内側床ユニット形成工程で内側床ユニット70を先に形成して、最後に取り付ける端部床構成材37を幅寸法調整工程においてガイド壁75に固定することで、内側床ユニット70の溶接時の変形や寸法公差を吸収できる。要するに、幅寸法調整工程で、ガイド壁75,75の離間距離によって車体寸法を決めることで車幅寸法を外追いで管理できるので、車幅寸法精度の向上が図れる。さらに、ガイド壁75,75は正確に平行配置できるので、内側床ユニット70の外側面同士が平行になっていない場合であっても、そのズレを吸収でき、車体の外側面同士(端部床構成材37,37同士)の平行精度も向上する。
【0048】
また、端部床構成材37を外側床構成材36に、片側隅肉溶接で取り付けているので、突合せ溶接による角変形が起こり難く、さらに、熱収縮は一方の部材(端部床構成材37の先端)のみに起こるだけであるので、溶接時の各床構成材36,37の収縮量を少なくできる。そして、最後に取り付ける端部床構成材37を片側隅肉溶接で接合しているので、先に形成した内側床ユニット70の溶接時の変形や寸法公差を、端部床構成材37の設置時に吸収できる。
【0049】
幅調整板50は、内側床ユニット70の寸法誤差の最大値を考慮して設定された可動寸法L2と、溶接のビード41が外側床構成材36の表面と幅調整板50との段差部に流れないようにするために設定された溶接空間寸法L3とを備えているので、幅寸法調整工程において継手板55が段差部に近づき過ぎることがない。したがって、ビード41が段差部に流れることはなく、確実に片側隅肉溶接を行うことができる。
【0050】
そして、本発明では、継手板55の表面が端部床構成材37の表面と面一となるように形成され、幅調整板50が、外側床構成材36の表面から継手板55の厚さ寸法と同じ寸法の段差をあけて形成されているので、外側床構成材36の表面と、端部床構成材37の表面と継手板55の表面とが同一面内に位置する。したがって、床構造2の荷台面が面一となり、荷役作業を行いやすい。なお、外側床構成材36の表面と幅調整板50との段差部と継手板55との間の隙間は、適宜長尺部材を挿入して埋めるようにすればよい。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、外側床構成材36に幅調整板50を形成して端部床構成材37に継手板55を形成しているが、これに限定されるものではなく、外側床構成材36に継手板を形成して端部床構成材37に幅調整板を形成してもよい。
【0052】
さらに、前記実施形態では、端部床構成材37を最後に取り付ける床構成材30として、外側床構成材36と端部床構成材37との接合部分に幅調整板50と継手板55をそれぞれ形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、メインビーム10の上フランジ部11と外側床構成材36との接合部分に、幅調整板と継手板をそれぞれ形成してもよい。この場合、メインビーム10,10と内側床構成材35,35,35とで内側床ユニットが構成され、その外側に位置する端部床構成材37と外側床構成材36とが先に固定された状態で、内側床ユニットに片側隅肉溶接にて固定される。このような構成によっても、内側床ユニットの寸法誤差と、端部床構成材37と外側床構成材36との寸法誤差を、最後の接合時に吸収できる。
【0053】
また、前記実施形態では、内側床ユニット70の両端に一対の端部床構成材37を固定するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、複数の床構成材からなる床ユニットを二つ形成し、床ユニット同士の接合部分に、幅調整板と継手板をそれぞれ形成してもよい。この場合、幅調整板と継手板は、一箇所の接合部分に形成すればよい。このような構成によっても、各床ユニットの寸法誤差を、最後の接合時に吸収できる。この場合の床ユニット同士の接合部分は、車幅方向の中間部であってもよいし、端部近傍であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 トレーラ
2 床構造
30 床構成材
35 内側床構成材
35a 第一内側床構成材
35b 第二内側床構成材
36 外側床構成材
37 端部床構成材
50 幅調整板
55 継手板
70 内側床ユニット
71 仮組床ユニット
75 ガイド壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車長方向に延在する複数の床構成材を車幅方向に連接し溶接にて接合してなるトレーラの床構造であって、
隣接する少なくとも二つの床構成材のうち一方の床構成材には、床の幅方向に調整代を有する幅調整板が設けられ、
他方の床構成材には、片側隅肉溶接にて前記幅調整板に接合される継手板が設けられている
ことを特徴とするトレーラの床構造。
【請求項2】
前記継手板は、その表面が前記他方の床構成材の表面と面一となるように形成され、
前記幅調整板は、前記一方の床構成材の表面から前記継手板の厚さ寸法と同じ寸法の段差をあけて形成されており、
前記一方の床構成材の表面と前記継手板の表面とが同一面内に位置するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のトレーラの床構造。
【請求項3】
前記他方の床構成材は、床の幅方向端部に設けられる端部床構成材である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレーラの床構造。
【請求項4】
車長方向に延在する複数の床構成材を車幅方向に連接し溶接にて接合して内側床ユニットを形成する内側床ユニット形成工程と、
前記内側床ユニットの幅方向両外側に、端部床構成材を仮組みして仮組床ユニットを形成する仮組床ユニット形成工程と、
間隔をあけて配置された一対のガイド壁間に仮組床ユニットを配置し、幅寸法を調整しつつ、前記ガイド壁に前記端部床構成材を固定する幅寸法調整工程と、
溶接にて前記内側床ユニットと前記端部床構成材とを接合する溶接工程と、を備え、
前記内側床ユニットの幅方向両端には、床の幅方向に調整代を有する幅調整板が設けられ、前記端部床構成材には、溶接にて前記幅調整板に接合される継手板が設けられており、
前記仮組床ユニット形成工程では、前記幅調整板と前記継手板が重合した状態で前記内側床ユニットと前記端部床構成材とが仮組みされる
ことを特徴とするトレーラの床製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11795(P2012−11795A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147165(P2010−147165)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】