トンネル掘削機のカッタ板とその回収方法
【課題】 トンネル築造後に回収されるトンネル掘削機におけるカッタ板であって、外径がトンネル覆工体の内径よりも大径に形成されている外周カッタ板部の回収も簡単に行えるようにしたカッタ板を提供する。
【解決手段】 中央カッタ板部2の外周面に円環形状の外周カッタ板部3の内周面を着脱自在に設けてなるカッタ板1であって、外周カッタ板部3は複数個のカッタピース31〜34とキーカッタピース35、36とを周方向にボルトによって結合してなり、トンネル築造後に中央カッタ板部2と外周カッタ板部3との結合を解いて中央カッタ板部2を掘削機本体10と共に後方に回収したのち、外周カッタ板部3におけるキーカッタピース35、36を取り外して回収、撤去し、しかるのち、カッタピース31〜34を順次、互いの結合を解いて回収、撤去するように構成している。
【解決手段】 中央カッタ板部2の外周面に円環形状の外周カッタ板部3の内周面を着脱自在に設けてなるカッタ板1であって、外周カッタ板部3は複数個のカッタピース31〜34とキーカッタピース35、36とを周方向にボルトによって結合してなり、トンネル築造後に中央カッタ板部2と外周カッタ板部3との結合を解いて中央カッタ板部2を掘削機本体10と共に後方に回収したのち、外周カッタ板部3におけるキーカッタピース35、36を取り外して回収、撤去し、しかるのち、カッタピース31〜34を順次、互いの結合を解いて回収、撤去するように構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にトンネルを掘削したのち、該トンネル内を通じて回収し、再使用を可能にしたトンネル掘削機のカッタ板とこのカッタ板の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発進立坑側からトンネル掘削機によって地中にトンネルを掘削しながら該掘削壁面にトンネル覆工体を施工していくトンネル工事においては、該トンネル掘削機が到達立坑に達すると、この到達立坑内から地上に回収して再利用することが行われているが、到達側に既存の人孔が設けられていたり、周辺に建物等が存在していて到達立坑が設けられない場合や2基のトンネル掘削機を地中でドッキングさせる場合のように到達立坑を設けない場合、或いは、到達立坑が未完成の場合や既設の長い管路にトンネル掘削機を直交させるように到達させた場合等には、トンネル掘削機を発進立坑側に向かって後退させて回収しなければならない。
【0003】
このような回収型のトンネル掘削機としては、例えば、特許文献1に記載されているように、外径がトンネル径と同径の外胴と、この外胴内に後方に向かって引き出し可能に配設された掘削機本体とからなるトンネル掘削機が知られており、該掘削機本体は上記外胴の内面に着脱自在に係止した円筒形状の内胴と、該内胴の前部に一体に設けている隔壁に回転自在に支持されたカッタヘッドと、このカッタヘッドの駆動手段と、カッタヘッドによって掘削された掘削土砂の排出手段とを備えていると共に上記カッタヘッドを縮径可能に形成している。
【0004】
そして、このトンネル掘削機によって所定長さまでトンネルを掘削すると、上記掘削土砂排出手段をトンネル覆工体内を通じて回収、撤去すると共に、カッタヘッドをトンネル覆工体の内径以下にまで縮径させ、且つ、外胴に対する内胴の係止を解いたのち、該外胴を掘削壁面に残した状態で掘削機本体をトンネル覆工体内を通じて後方に回収、撤去している。
【0005】
このように構成したトンネル掘削機において、上記縮径可能なカッタヘッドの構造としては、複数個のカッタビットを前方に向かって突設している数本のスポーク体を、駆動モータによって回転駆動される中心軸の先端部から外径方向に放射状に設けてこれらのスポーク体によってトンネル覆工体の内径よりも小径のトンネル中央部分を掘削する中央カッタヘッド部を形成すると共に、各スポーク体の突出端面に、前方に向かって複数個のカッタビットを突設しているスポーク片を着脱自在に取付けて、これらのスポーク片によってトンネル覆工体の外径に等しいトンネル径を掘削するように構成している。
【0006】
一方、上記トンネル掘削機のカッタ板はスポークタイプであるから、自立性に優れた硬質の地盤の掘削に適していても、崩壊しやすい軟弱地盤や地下水の発生しやすい地盤の掘削には不適である。このような崩壊性の地盤を掘削するには、所謂、面板タイプのカッタ板が使用され、このカッタ板を回収型のトンネル掘削機に適用するには、外径がトンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面に、例えば、特許文献2に記載されているように円環形状の外周カッタ板部を着脱自在に連結し、この外周カッタ板部によってトンネル覆工体の外径に等しいトンネル径を掘削するように構成している。
【特許文献1】特許第3439745号公報
【特許文献2】特許第2038809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の回収型トンネル掘削機におけるカッタヘッドによれば、掘削機本体の回収時にスポーク体からスポーク片を撤去する際に、スポーク体に対するスポーク片の結合ボルトを取り外しても、スポーク片の後方にはトンネル掘削機の外胴の先端面が存在しているために、該スポーク体を機内側に回収することができず、そのため、作業員がカッタヘッドの掘削面側に出て、取り外し作業を行わなければならず、作業に危険を伴うばかりでなく、作業空間が極めて狭いために撤去作業も困難となる。
【0008】
また、2基のトンネル掘削機を地中でドッキングさせる場合や、既設の管路にトンネル掘削機を直交させるように到達させた場合において、トンネル掘削機の前方地盤を改良した時には、カッタヘッドの掘削面側には作業空間が設けられないために、回収することができないといった問題点がある。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載のカッタ板によれば、外周カッタ板部は円環形状に形成されているので、その外周端面をトンネル掘削壁面に密着させて支持させておくことができるから、中央カッタ板部の外周面とこの外周カッタ板部の内周面とを結合しているボルトを取り外したのち、該中央カッタ板部を外周カッタ板部の内周面から抜き取るようにして掘削機本体と一体的に後方に回収することができるが、円環形状の外周カッタ板部は後方に向かって回収することができないために、到達立坑内に残している。そのため、到達立坑が存在しない場合には回収することができず、そのまま外胴と共に掘削壁面の一部を被覆した状態で残しておかねばならず、再利用ができなくなって極めて不経済であるといった問題点があった。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中央カッタ板部と円環形状の外周カッタ板部とからなるカッタ板において、中央カッタ板部を掘削機本体と共に回収した後、該外周カッタ板部を能率よく確実に回収し得るように構成したトンネル掘削機のカッタ板とその回収方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のトンネル掘削機のカッタ板は、請求項1に記載したように、掘削したトンネルの覆工体内を通じて回収されるトンネル掘削機におけるカッタ板であって、外径が上記トンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面に内周面を取り外し可能に結合している円環形状の外周カッタ板部とからなり、この外周カッタ板部は周方向に複数のカッタピースに分割されていて隣接するカッタピース同士をボルトにより着脱自在に結合していると共に、これらのカッタピースの少なくとも一つに、両側面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成したキーカッタピースを備えていることを特徴とする。
【0012】
このように構成したトンネル掘削機のカッタ板において、請求項2に係る発明は、キーカッタピースを含む各カッタピースはその前面板部の周縁に後方に向かって一定幅の周壁を突設してあり、隣接するカッタピースの周壁における対向する側壁部同士を接合させてボルトにより着脱自在に結合していると共に、各カッタピースの内側周壁部の内周面を中央カッタ板の外周面に接合させて、ボルトにより着脱自在に結合していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記中央カッタ板部と、複数のカッタピースを周方向に着脱自在に結合してなる円環形状の外周カッタ板部とからなるカッタ板を備えたトンネル掘削機によってトンネルを掘削したのち、このトンネル掘削面を覆工している覆工体内を通じて上記カッタ板を回収する方法であって、トンネル掘削機の外胴から上記カッタ板と該カッタ板の駆動部とを備えている掘削機本体を切り離すと共に、中央カッタ板部に対する外周カッタ板部の結合を解いたのち、上記外胴とカッタ板の外周カッタ板部とを掘削壁面に残したまま該掘削機本体をカッタ板の中央カッタ板部と一体に後方に回収し、しかるのち、この中央カッタ板部の除去跡の空間部を利用して、まず、外周カッタ板部の一部として組み込んでいる両側端面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成しているキーカッタピースをこのキーカッタピースの両側に隣接するカッタピースとの結合を解いて中央カッタ板部の除去跡の空間部に向かって抜き取ることにより撤去し、次いで、カッタピースを順次、隣接するカッタピースとの結合を解くことにより外周カッタ板部全体を解体、撤去し、これらのカッタピースをトンネル覆工体内を通じて回収することを特徴とする。
【0014】
このように構成したトンネル掘削機のカッタ板の回収方法において、請求項4に係る発明は、カッタ板を回収するに先立って、該カッタ板における外周カッタ板部のキーカッタピースをカッタ板の上周部に位置させておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトンネル掘削機のカッタ板及びこのカッタ板の回収方法によれば、外径がトンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面にその内周面を取り外し可能に結合している円環形状の外周カッタ板部とからなるので、回収する際に、中央カッタ板部と外周カッタ板部との結合を解いたのち、掘削機本体を後退させることによって中央カッタ板部を掘削機本体と一体的に回収することができるのは勿論、この中央カッタ板部の撤去によってその除去跡に上記円環形状の外周カッタ板部で囲まれた空間部を得ることができ、この空間部を利用して該外周カッタ板部の分解、撤去作業が容易に行うことができる。
【0016】
この際、外周カッタ板部は互いにボルトによって着脱自在に結合している複数のカッタピースに分割されていると共にこれらのカッタピースの少なくとも一つに、両側面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成しているキーカッタピースを備えているので、各カッタピースを、互いに結合した接合面をガイドとしてカッタ板の径方向に直交する方向、即ち、トンネル長さ方向に引き出しながら解体するような作業を必要とすることなく、まず、上記キーカッタピースを隣接する両側のカッタピースとの結合を解いたのち、中央カッタ板部の除去跡である空間部に向かって抜き取ることにより、該空間部を利用して簡単に撤去、回収することができ、しかるのち、このキーカッタピースと結合していたカッタピースを始め、複数個のカッタピースを上記空間部を利用して順次、能率よく回収、撤去することができる。
【0017】
従って、カッタ板の後方近傍部にトンネル掘削壁面を被覆、支保した状態で残置されるトンネル掘削機の外胴が存在しているにもかかわらず、この外胴に邪魔されることなく、さらには、前方に作業空間が殆ど存在しない場合においても、中央カッタ板部の除去跡の空間部を利用して外周カッタ板部を円滑且つ確実に分解、回収することができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、外周カッタ板部を構成している上記キーカッタピースを含む各カッタピースにおける前面板部の周縁に後方に向かって一定幅の周壁を突設してあり、隣接するカッタピースの周壁における対向する側壁部同士を接合させてボルトにより着脱自在に結合していると共に、各カッタピースの内側周壁部の内周面を中央カッタ板の外周面に接合させてボルトにより着脱自在に結合しているので、作業員がカッタ板の掘削面側に出ることなく、機内側からボルトを取り外して中央カッタ板部と外周カッタ板部との結合の解除作業やカッタピース同士の結合の解除作業を安全性を確保しながら円滑に行うことができる。
【0019】
さらに、カッタ板を回収するに先立って、請求項4に記載したように、該カッタ板における外周カッタ板部のキーカッタピースをカッタ板の上周部に位置させた状態としておくことにより、このキーカッタピースを回収したのち、残りのカッタピースを足場として、上周部側のカッタピースから順次、結合部を切り離して安全に且つ能率よく回収、撤去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は面板タイプのカッタ板1の正面図、図2はこのカッタ板1を配設したトンネル掘削機の前半部分の縦断側面図であって、カッタ板1は外径が後述するトンネル覆工体Sの内径よりも小径に形成されている円板形状の中央カッタ板部2と、この中央カッタ板部2の外周面に内周面を嵌合させてボルト9により着脱自在に結合している円環形状の外周カッタ板部3と、この外周カッタ板部3の外周面に内周面を嵌合させてボルト9'により互いに結合している円形のリング部材4とから構成している。このリング部材4の外径はトンネル掘削機の外胴11の外径に等しい径に形成していると共に、内径はトンネル覆工体Sの内径よりも大径に形成されている。従って、このリング部材4の内周面に結合している外周カッタ板部3の外径もトンネル覆工体Sの内径よりも大径に形成されている。
【0021】
上記中央カッタ板部2は、円形の前面板部の外周縁に後方、即ち、トンネル覆工体S側に向かって前面板部に対し直角に屈折した一定幅のリング状周壁2cを突設していると共にその中心部を、掘削機本体10に装着している駆動モータ12によって回転駆動される回転中心軸13の前端部外周面に一体に固着してあり、さらにその前面板部に中心部から上記リング状周壁2cの内周面前端に亘って、周方向に一定間隔を存した一対の土砂取入れ開口部5、5を複数対(図においては4対)、放射状に設けてこれらの各対の互いに平行な開口部5、5間をスポーク形状の面板部2aに形成していると共に、隣接するスポーク形状の面板部2a、2a間に上記開口部5を介して中空扇形状の面板部2bを形成している。そして、スポーク形状の面板部2aの両側端縁と中央部とにカッタビット6を径方向に一定間隔毎に前方に向かって突設している。
【0022】
一方、上記外周カッタ板部3は、周方向に複数の扇形状カッタピース31〜36に分割されていて、隣接するカッタピースの対向する側面同士を接合してボルト9'により着脱自在に順次結合することによって円環形状に形成されていると共に、各カッタピース31〜36の内周面を上記中央カッタ板部2のリング状周壁2cにおける対向する外周面にボルト9によって着脱自在に結合してあり、さらに、この外周カッタ板部3の外周面を上記円形のリング部材4の内周面にボルト9'によって取り外し可能に結合している。
【0023】
詳しくは、各カッタピース31〜36は、その前面板部の周縁、即ち、周方向に円弧状に湾曲した内外周縁部と直線状の両側縁部とに、一定幅の円弧状に湾曲した内外周壁部3c、3dと、径方向に長い直状の両側壁部3e、3eとをそれぞれ前面板部に対して後方に直角に屈折した状態で突設してあり、隣接するカッタピースにおける対向する側壁部3e、3e同士を接合させてボルト9'により順次、周方向に結合、連結することにより円環形状の外周カッタ板部3を形成していると共に、円弧状に湾曲している内側周壁部3cの内周面を上記中央カッタ板部2のリング状周壁2cにおける対向する外周面に接合してボルト9により着脱自在に結合している。なお、各カッタピース31〜36の前面板部は、中央カッタ板部2の前面板部と垂直面上で面一状に連続するように形成されていると共に、その内側周壁部3cは中央カッタ板部2の周壁2cと同一幅に形成され、且つ、同一湾曲度でもって円弧状に湾曲している。
【0024】
さらに、各カッタピース31〜36における周方向に円弧状に湾曲した外側周壁部3dの外周面をこの周壁部3dと同一幅に形成している上記リング部材4における対向する内周面に接合して該周壁部3dをボルト9'によりリング部材4に取り外し可能に結合している。なお、中央カッタ板部2のリング状周壁2cとカッタピース31〜36の内側周壁部3cとの結合は、これらの周壁2cと周壁部3cとに周方向に一定間隔毎にボルト取付孔7(図3に示す)を設け、該ボルト取付孔7、7間にボルト9を挿通してナット8を螺合することにより行われてあり、隣接するカッタピースの側壁部3e、3e同士の結合もボルト取付孔間にボルトを挿通してナット8により螺合してもよいが、図4に示すように互いに接合する一方の側壁部3eの複数箇所にボルト挿通孔7'を、他方の側壁部3eにこれらのボルト挿通孔7'と対向する螺子孔8'をそれぞれ設けて、ボルト挿通孔7'から該螺子孔8'にボルト9'を螺合させることにより行っている。
【0025】
同様に、上記各カッタピース31〜36の外側周壁部3dに周方向に一定間隔毎に該周壁部3dの内外周面に亘って貫通したボルト挿通孔7'を設ける一方、リング部材4の内周面にこれらのボルト挿通孔7'と対向する螺子孔8'を設けて、ボルト挿通孔7'から該螺子孔8'にボルト9'を螺締することにより、カッタピース31〜36をリング部材4に対して取り外し可能に結合している。
【0026】
上記中央カッタ板部2と外周カッタ板部3とはその形状を左右対称となるように形成されてあり、具体的には、図1に示すように、中央カッタ板部2は上記スポーク形状の面板部2aをカッタ板1の回転中心軸13から周方向に互いに90度の角度間隔を存して四方に放射状に突設していると共に、外周カッタ板部3は、基本的には上下左右に同大、同形のカッタピース31〜34に4等分されてあり、そのうちの1つのカッタピース31の両側部をキーカッタピース35、36に形成している。
【0027】
具体的には、両側に上記キーカッタピース35、36を配設しているカッタピース31をカッタ板1の上周部側に位置させた状態において、このカッタ板1の両側部に左右に対称的に配設している両側のカッタピース32、33は、その周方向の中央部に、中央カッタ板部2における両側のスポーク形状の面板部2aとこの面板部2aを挟むように設けている上記対の開口部5、5との延長方向に、中央カッタ板部2のリング状周壁2cとこれらのカッタピース32、33の内側周壁部3cとを介してスポーク形状の中央面板部3aとこの中央面板部3aを挟んだ互いに平行な一対の開口部5'、5'とをそれぞれ設けていると共に、周方向の両側端部に該開口部5'と同じ形状の開口部5'を設けてあり、さらに、これらの開口部5'を設けた面板部の端縁部に前方に向かって複数個のカッタビット6を突設している。
【0028】
同様に、下周部側に配設したカッタピース34は、その周方向の中央部に、中央カッタ板部2における下側のスポーク形状の面板部2aとこの面板部2aを挟むように設けている上記対の開口部5、5との延長方向に、中央カッタ板部2のリング状周壁2cと該カッタピース34の内側周壁部3cとを介してスポーク形状の中央面板部3aとこの中央面板部3aを挟んだ互いに平行な一対の開口部5'、5'とをそれぞれ設けていると共に、周方向の両側端部に該開口部5'と同形の開口部5'を設けてあり、さらに、これらの開口部5'を設けた面板部の端縁部に前方に向かって複数個のカッタビット6を突設している。
【0029】
一方、両側部にキーカッタピース35、36を配設している上周部側のカッタピース31は、キーカッタピース35、36を備えた全体の形状としては上記カッタピース32〜34と同一形状に形成されているが、このカッタピース31に対して両側カッタピース35、36は分割されていて、カッタピース31の中央部に、上記中央カッタ板部2における上側のスポーク形状の面板部2aとこの面板部2aを挟むように設けている上記対の開口部5、5との延長方向に、中央カッタ板部2のリング状周壁2cと該カッタピース34の内側周壁部3cとを介してスポーク形状の中央面板部3aとこの中央面板部3aを挟んだ互いに平行な一対の開口部5'、5'とを設けてあり、両側キーカッタピース35、36にはその中央部に一つの開口部5'を内外周面間に亘って設けている。なお、これらの開口部5'を設けた面板部の端縁部に前方に向かって複数個のカッタビット6を突設している。また、上記リング部材4の前面にも複数個のカッタビット6を前方に向かって突設している。
【0030】
さらに、外周カッタ板部3における上記両側に配したカッタピース32、33の両側壁部3e、3eと、下周部側に配したカッタピース34の両側壁部3e、3e、及び、上記両側に配したカッタピース32、33の側壁部3eに接合したキーカッタピース35、36の一方の側壁部3eとは、カッタ板1の直径線上に設けられているが、上記上周部側に配設したカッタピース31の両側壁部3e' 、3e' と、この側壁部3e' に接合してボルト9'により結合しているキーカッタピース35、36の他方の側壁部3e' とは、その延長線上を中央カッタ板部2の垂直方向の直径線上における上部側に交差する方向に傾斜させてキーカッタピース35、36の周方向の幅を内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように、即ち、楔形状に形成している。
【0031】
なお、中央カッタ板部2におけるスポーク形状の任意の面板部2aの後面に、図2に示すように径方向に向けたジャッキ25を装着してあり、そのロッド26の先端に装着しているコピーカッタ27を、外周カッタ板部3の外側周壁部3dとリング部材4とを貫通してリング部材4から出没自在に突出させ、トンネル曲線部の施工等において、該コピーカッタ27により地山をオーバーカットするように構成している。
【0032】
次に、このように構成したカッタ板1を備えている回収型のトンネル掘削機の構造を簡単に説明すると、図5に示すように、このトンネル掘削機は、泥水式シールド工法に使用される掘削機であって、外径がトンネル掘削径と略同径に形成された円筒形状の鋼管からなる外胴11と、この外胴11の前端部内周面にその外周端面を溶接等により一体に固着していると共に中央部に、トンネル掘削壁面に施工されたトンネル覆工体Sの内径よりも小径の円形孔15を設けている円環板形状の支持壁14と、この支持壁14の上記円形孔15にその短筒状内胴16をシール材17を介して後方に向かって引き出し可能に支持させている掘削機本体10と、上記外胴11の長さ方向の中間部内周面に周方向に一定間隔毎に配設された複数本の推進ジャッキ18及び方向修正ジャッキ19と、掘削土砂の排出手段である送排泥管20、21と、セグメントを組み立てるエレクタ22とから構成されている。
【0033】
掘削機本体10は上記短筒状内胴16の前端に該内胴16の開口端を密閉している隔壁16a を一体に設けていると共にこの隔壁16a の中心部に上記カッタ板1の回転中心軸13を回転自在に支持してあり、さらに、隔壁16a の後面にカッタ板1を回転駆動する駆動モータ12を装着してなるものである。この掘削機本体10の内胴16の後端部は、外胴11の内周面に取り外し可能に固定している推進反力受止部材23によって受止されている。
【0034】
このように構成したトンネル掘削機を発進立坑C(図6に示す)内に設置し、該カッタ板1を回転させながら所定方向にトンネルTを掘進していく。そして、一定長のトンネルを掘削する毎に、エレクタ22により掘削壁面にセグメントを組み立てて掘削壁面を覆工し、このトンネル覆工体Sの前端面に推進ジャッキ18の推進反力を受止させて、該推進ジャッキ18を伸長させることによってトンネル掘削機を前進させる。この時、推進ジャッキ18による推進力は推進反力受止部材23を介して掘削機本体10に伝達され、カッタ板1を切羽に押しつけながら地山を掘削させる。
【0035】
カッタ板1によって掘削された土砂は、該カッタ板1に設けている上記開口部5、5'を通じてカッタ板1と掘削機本体10の隔壁16a との間の土砂室24内に取り込まれ、この土砂室24に連通している上記送排泥管20、21による還流泥水によって泥水と共にトンネル側に排出される。
【0036】
このトンネル掘削機によって所定位置まで掘削壁面にセグメントによる覆工を行いながらトンネルTを掘削したのち、該掘削機本体10をこのトンネル覆工体S内を通じて発進立坑側まで後退させて回収しなければならない場合、例えば、図6に示すように、到達立坑Dの土留壁dまでトンネルTを掘削しても該到達立坑Dは築造途中である場合において、施工したトンネル覆工体S内を通じて掘削機本体10を回収するには、この回収に先立って、トンネル掘削機の前端部の周辺地盤を薬液注入等によって改良してこの改良地盤Eによって機内に地下水等が浸入するのを防止した状態にする。
【0037】
しかるのち、まず、エレクタ22や送排泥管20、21、推進ジャッキ18、方向修正ジャッキ19等を解体や取り外し等してトンネル覆工体S内を通じて後方に回収すると共に、推進反力受止部材23を取り外して外胴11に対する掘削機本体10の固定を解く一方、隔壁16a に設けている出入口(図示せず)を通じて作業員が土砂室24内に入り、カッタ板1の後方側から該カッタ板1における中央カッタ板部2の周壁2cと外周カッタ板部3の内側周壁部3cとを結合させているボルト9'を取り外す。なお、推進ジャッキ18や方向修正ジャッキ19は掘削機本体10の回収の邪魔にならない場合には掘削機本体10の回収後に撤去してもよい。
【0038】
次いで、掘削機本体10を後方に牽引してその短筒状内胴16を外胴11の内周面に固着している支持壁14の円形孔15から抜き取る。この際、カッタ板1における回転中心軸13の前端部に一体に設けている中央カッタ板部2は上述したように外周カッタ板部3に対する結合を解かれているので、図7に示すように掘削機本体10と一体的に後退し、支持壁14の円形孔15を通過して後方に移動する。この中央カッタ板部2を備えた掘削機本体10をトンネル覆工体S内を通じて発進立坑側に回収するには、例えば、支持壁14の円形孔15から抜き取られた掘削機本体10の内胴16の下周部と、円形孔15を通過した中央カッタ板部2の下周部とに、車輪(図示せず)を装着し、これらの車輪をトンネル覆工体Sの内底面上を転動させることによって行うことができる。
【0039】
こうして、カッタ板1の中央カッタ板部2が除去されると、外周カッタ板部3はトンネル掘削壁面に内嵌、支持された状態で残り、この外周カッタ板部3の内周面で囲まれた中央カッタ板部2の除去跡、即ち、抜き取り跡に図8に示すように空間部28が設けられた状態となる。そして、この空間部28を作業空間に利用して、この外周カッタ板部3の解体、撤去を行う。
【0040】
まず、この外周カッタ板部3を形成している複数のカッタピース31〜35において、上記作業空間部に向かって、即ち、カッタ板1の中心に向かって抜き取り可能に組み込んでいるキーカッタピース35、36を回収、撤去する。この際、これらのカッタピース31〜35の分解作業の安全性、作業性を考慮して、予め、トンネル掘削作業が完了した時点でキーカッタピース35、36が上部に位置した状態となるようにカッタ板1を回動、停止させておく。そして、下部側のカッタピース34を足場として上側カッタピース31の両側壁部3e' 、3e' とキーカッタピース35、36の側壁部3e' 、3e' とを結合させているボルト9'を取り外すと共に、キーカッタピース35、36の側壁部3eと両側カッタピース32、33の側壁部3eとを結合させているボルト9'を取り外し、さらに、キーカッタピース35、36の外側周壁部3dとリング部材4とを結合しているボルト9'を取り外したのち、図9に示すように、これらのキーカッタピース35、36を隣接するカッタピース31と32間、及び31と33間から上記空間部28内に向かって引き抜くようにして回収、撤去する。
【0041】
次いで、上記空間部28を利用して上側カッタピース31の外側周壁部3dをリング部材4の内周面に結合させているボルト9'を取り外したのち、図10に示すように該上側カッタピース31を回収、撤去すると共に、両側カッタピース32、33も同様にして下側カッタピース34の両側壁部3e、3eに対してボルト9'によって結合している側壁部3e、3eを該ボルト9'を取り外すことによってその結合を解き、さらに、その外側周壁部3dとリング部材4とを結合しているボルト9'を取り外したのち、図11に示すように、回収、撤去し、しかるのち、下側カッタピース34の外側周壁部3dとリング部材4との結合ボルト9'を取り外して図12に示すように該下側カッタピース34を回収、撤去する。
【0042】
こうして、外周カッタ板部3を複数のカッタピース31〜36に解体してトンネル覆工体S内を通じて発進立坑側に搬出、回収し、次のトンネル工事を行う際に、再び、カッタ板1の外周カッタ板部3として使用する。一方、カッタ板1のリング部材4は、回収することなく外胴11と共にトンネル掘削壁面の覆工材の一部として残しておく。なお、以上の実施の形態においては、カッタ板1における外周カッタ板部3を構成している複数のカッタピース31〜36のうち、キーカッタピースを2個、組み込んでいるが、1個だけであってもよく、また、リング部材4を各カッタピース31〜36に応じて複数分割してそれぞれのカッタピースの外周面に一体に設けた外周カッタ板部3の構造としておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】カッタ板の正面図。
【図2】トンネル掘削機の前半部分の縦断側面図。
【図3】図1におけるA−A線断面図。
【図4】図1におけるB−B線断面図。
【図5】トンネル掘削機全体の縦断側面図。
【図6】所定位置までトンネルを掘削した状態の簡略縦断側面図。
【図7】掘削機本体を回収している状態の簡略縦断側面図。
【図8】中央カッタ板部を除去した後のカッタ板の外周カッタ板部の正面図。
【図9】キーカッタピースを撤去している外周カッタ板部の正面図。
【図10】上側カッタピースを撤去している状態の正面図。
【図11】両側カッタピースを撤去している状態の正面図。
【図12】下側カッタピースを撤去している状態の正面図。
【符号の説明】
【0044】
1 カッタ板
2 中央カッタ板部
2c リング状周壁
3 外周カッタ板部
3c、3d 内外周壁部
3e 側壁部
9 ボルト
10 掘削機本体
31〜34 カッタピース
35、36 キーカッタピース
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にトンネルを掘削したのち、該トンネル内を通じて回収し、再使用を可能にしたトンネル掘削機のカッタ板とこのカッタ板の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発進立坑側からトンネル掘削機によって地中にトンネルを掘削しながら該掘削壁面にトンネル覆工体を施工していくトンネル工事においては、該トンネル掘削機が到達立坑に達すると、この到達立坑内から地上に回収して再利用することが行われているが、到達側に既存の人孔が設けられていたり、周辺に建物等が存在していて到達立坑が設けられない場合や2基のトンネル掘削機を地中でドッキングさせる場合のように到達立坑を設けない場合、或いは、到達立坑が未完成の場合や既設の長い管路にトンネル掘削機を直交させるように到達させた場合等には、トンネル掘削機を発進立坑側に向かって後退させて回収しなければならない。
【0003】
このような回収型のトンネル掘削機としては、例えば、特許文献1に記載されているように、外径がトンネル径と同径の外胴と、この外胴内に後方に向かって引き出し可能に配設された掘削機本体とからなるトンネル掘削機が知られており、該掘削機本体は上記外胴の内面に着脱自在に係止した円筒形状の内胴と、該内胴の前部に一体に設けている隔壁に回転自在に支持されたカッタヘッドと、このカッタヘッドの駆動手段と、カッタヘッドによって掘削された掘削土砂の排出手段とを備えていると共に上記カッタヘッドを縮径可能に形成している。
【0004】
そして、このトンネル掘削機によって所定長さまでトンネルを掘削すると、上記掘削土砂排出手段をトンネル覆工体内を通じて回収、撤去すると共に、カッタヘッドをトンネル覆工体の内径以下にまで縮径させ、且つ、外胴に対する内胴の係止を解いたのち、該外胴を掘削壁面に残した状態で掘削機本体をトンネル覆工体内を通じて後方に回収、撤去している。
【0005】
このように構成したトンネル掘削機において、上記縮径可能なカッタヘッドの構造としては、複数個のカッタビットを前方に向かって突設している数本のスポーク体を、駆動モータによって回転駆動される中心軸の先端部から外径方向に放射状に設けてこれらのスポーク体によってトンネル覆工体の内径よりも小径のトンネル中央部分を掘削する中央カッタヘッド部を形成すると共に、各スポーク体の突出端面に、前方に向かって複数個のカッタビットを突設しているスポーク片を着脱自在に取付けて、これらのスポーク片によってトンネル覆工体の外径に等しいトンネル径を掘削するように構成している。
【0006】
一方、上記トンネル掘削機のカッタ板はスポークタイプであるから、自立性に優れた硬質の地盤の掘削に適していても、崩壊しやすい軟弱地盤や地下水の発生しやすい地盤の掘削には不適である。このような崩壊性の地盤を掘削するには、所謂、面板タイプのカッタ板が使用され、このカッタ板を回収型のトンネル掘削機に適用するには、外径がトンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面に、例えば、特許文献2に記載されているように円環形状の外周カッタ板部を着脱自在に連結し、この外周カッタ板部によってトンネル覆工体の外径に等しいトンネル径を掘削するように構成している。
【特許文献1】特許第3439745号公報
【特許文献2】特許第2038809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の回収型トンネル掘削機におけるカッタヘッドによれば、掘削機本体の回収時にスポーク体からスポーク片を撤去する際に、スポーク体に対するスポーク片の結合ボルトを取り外しても、スポーク片の後方にはトンネル掘削機の外胴の先端面が存在しているために、該スポーク体を機内側に回収することができず、そのため、作業員がカッタヘッドの掘削面側に出て、取り外し作業を行わなければならず、作業に危険を伴うばかりでなく、作業空間が極めて狭いために撤去作業も困難となる。
【0008】
また、2基のトンネル掘削機を地中でドッキングさせる場合や、既設の管路にトンネル掘削機を直交させるように到達させた場合において、トンネル掘削機の前方地盤を改良した時には、カッタヘッドの掘削面側には作業空間が設けられないために、回収することができないといった問題点がある。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載のカッタ板によれば、外周カッタ板部は円環形状に形成されているので、その外周端面をトンネル掘削壁面に密着させて支持させておくことができるから、中央カッタ板部の外周面とこの外周カッタ板部の内周面とを結合しているボルトを取り外したのち、該中央カッタ板部を外周カッタ板部の内周面から抜き取るようにして掘削機本体と一体的に後方に回収することができるが、円環形状の外周カッタ板部は後方に向かって回収することができないために、到達立坑内に残している。そのため、到達立坑が存在しない場合には回収することができず、そのまま外胴と共に掘削壁面の一部を被覆した状態で残しておかねばならず、再利用ができなくなって極めて不経済であるといった問題点があった。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中央カッタ板部と円環形状の外周カッタ板部とからなるカッタ板において、中央カッタ板部を掘削機本体と共に回収した後、該外周カッタ板部を能率よく確実に回収し得るように構成したトンネル掘削機のカッタ板とその回収方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のトンネル掘削機のカッタ板は、請求項1に記載したように、掘削したトンネルの覆工体内を通じて回収されるトンネル掘削機におけるカッタ板であって、外径が上記トンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面に内周面を取り外し可能に結合している円環形状の外周カッタ板部とからなり、この外周カッタ板部は周方向に複数のカッタピースに分割されていて隣接するカッタピース同士をボルトにより着脱自在に結合していると共に、これらのカッタピースの少なくとも一つに、両側面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成したキーカッタピースを備えていることを特徴とする。
【0012】
このように構成したトンネル掘削機のカッタ板において、請求項2に係る発明は、キーカッタピースを含む各カッタピースはその前面板部の周縁に後方に向かって一定幅の周壁を突設してあり、隣接するカッタピースの周壁における対向する側壁部同士を接合させてボルトにより着脱自在に結合していると共に、各カッタピースの内側周壁部の内周面を中央カッタ板の外周面に接合させて、ボルトにより着脱自在に結合していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記中央カッタ板部と、複数のカッタピースを周方向に着脱自在に結合してなる円環形状の外周カッタ板部とからなるカッタ板を備えたトンネル掘削機によってトンネルを掘削したのち、このトンネル掘削面を覆工している覆工体内を通じて上記カッタ板を回収する方法であって、トンネル掘削機の外胴から上記カッタ板と該カッタ板の駆動部とを備えている掘削機本体を切り離すと共に、中央カッタ板部に対する外周カッタ板部の結合を解いたのち、上記外胴とカッタ板の外周カッタ板部とを掘削壁面に残したまま該掘削機本体をカッタ板の中央カッタ板部と一体に後方に回収し、しかるのち、この中央カッタ板部の除去跡の空間部を利用して、まず、外周カッタ板部の一部として組み込んでいる両側端面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成しているキーカッタピースをこのキーカッタピースの両側に隣接するカッタピースとの結合を解いて中央カッタ板部の除去跡の空間部に向かって抜き取ることにより撤去し、次いで、カッタピースを順次、隣接するカッタピースとの結合を解くことにより外周カッタ板部全体を解体、撤去し、これらのカッタピースをトンネル覆工体内を通じて回収することを特徴とする。
【0014】
このように構成したトンネル掘削機のカッタ板の回収方法において、請求項4に係る発明は、カッタ板を回収するに先立って、該カッタ板における外周カッタ板部のキーカッタピースをカッタ板の上周部に位置させておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトンネル掘削機のカッタ板及びこのカッタ板の回収方法によれば、外径がトンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面にその内周面を取り外し可能に結合している円環形状の外周カッタ板部とからなるので、回収する際に、中央カッタ板部と外周カッタ板部との結合を解いたのち、掘削機本体を後退させることによって中央カッタ板部を掘削機本体と一体的に回収することができるのは勿論、この中央カッタ板部の撤去によってその除去跡に上記円環形状の外周カッタ板部で囲まれた空間部を得ることができ、この空間部を利用して該外周カッタ板部の分解、撤去作業が容易に行うことができる。
【0016】
この際、外周カッタ板部は互いにボルトによって着脱自在に結合している複数のカッタピースに分割されていると共にこれらのカッタピースの少なくとも一つに、両側面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成しているキーカッタピースを備えているので、各カッタピースを、互いに結合した接合面をガイドとしてカッタ板の径方向に直交する方向、即ち、トンネル長さ方向に引き出しながら解体するような作業を必要とすることなく、まず、上記キーカッタピースを隣接する両側のカッタピースとの結合を解いたのち、中央カッタ板部の除去跡である空間部に向かって抜き取ることにより、該空間部を利用して簡単に撤去、回収することができ、しかるのち、このキーカッタピースと結合していたカッタピースを始め、複数個のカッタピースを上記空間部を利用して順次、能率よく回収、撤去することができる。
【0017】
従って、カッタ板の後方近傍部にトンネル掘削壁面を被覆、支保した状態で残置されるトンネル掘削機の外胴が存在しているにもかかわらず、この外胴に邪魔されることなく、さらには、前方に作業空間が殆ど存在しない場合においても、中央カッタ板部の除去跡の空間部を利用して外周カッタ板部を円滑且つ確実に分解、回収することができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、外周カッタ板部を構成している上記キーカッタピースを含む各カッタピースにおける前面板部の周縁に後方に向かって一定幅の周壁を突設してあり、隣接するカッタピースの周壁における対向する側壁部同士を接合させてボルトにより着脱自在に結合していると共に、各カッタピースの内側周壁部の内周面を中央カッタ板の外周面に接合させてボルトにより着脱自在に結合しているので、作業員がカッタ板の掘削面側に出ることなく、機内側からボルトを取り外して中央カッタ板部と外周カッタ板部との結合の解除作業やカッタピース同士の結合の解除作業を安全性を確保しながら円滑に行うことができる。
【0019】
さらに、カッタ板を回収するに先立って、請求項4に記載したように、該カッタ板における外周カッタ板部のキーカッタピースをカッタ板の上周部に位置させた状態としておくことにより、このキーカッタピースを回収したのち、残りのカッタピースを足場として、上周部側のカッタピースから順次、結合部を切り離して安全に且つ能率よく回収、撤去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は面板タイプのカッタ板1の正面図、図2はこのカッタ板1を配設したトンネル掘削機の前半部分の縦断側面図であって、カッタ板1は外径が後述するトンネル覆工体Sの内径よりも小径に形成されている円板形状の中央カッタ板部2と、この中央カッタ板部2の外周面に内周面を嵌合させてボルト9により着脱自在に結合している円環形状の外周カッタ板部3と、この外周カッタ板部3の外周面に内周面を嵌合させてボルト9'により互いに結合している円形のリング部材4とから構成している。このリング部材4の外径はトンネル掘削機の外胴11の外径に等しい径に形成していると共に、内径はトンネル覆工体Sの内径よりも大径に形成されている。従って、このリング部材4の内周面に結合している外周カッタ板部3の外径もトンネル覆工体Sの内径よりも大径に形成されている。
【0021】
上記中央カッタ板部2は、円形の前面板部の外周縁に後方、即ち、トンネル覆工体S側に向かって前面板部に対し直角に屈折した一定幅のリング状周壁2cを突設していると共にその中心部を、掘削機本体10に装着している駆動モータ12によって回転駆動される回転中心軸13の前端部外周面に一体に固着してあり、さらにその前面板部に中心部から上記リング状周壁2cの内周面前端に亘って、周方向に一定間隔を存した一対の土砂取入れ開口部5、5を複数対(図においては4対)、放射状に設けてこれらの各対の互いに平行な開口部5、5間をスポーク形状の面板部2aに形成していると共に、隣接するスポーク形状の面板部2a、2a間に上記開口部5を介して中空扇形状の面板部2bを形成している。そして、スポーク形状の面板部2aの両側端縁と中央部とにカッタビット6を径方向に一定間隔毎に前方に向かって突設している。
【0022】
一方、上記外周カッタ板部3は、周方向に複数の扇形状カッタピース31〜36に分割されていて、隣接するカッタピースの対向する側面同士を接合してボルト9'により着脱自在に順次結合することによって円環形状に形成されていると共に、各カッタピース31〜36の内周面を上記中央カッタ板部2のリング状周壁2cにおける対向する外周面にボルト9によって着脱自在に結合してあり、さらに、この外周カッタ板部3の外周面を上記円形のリング部材4の内周面にボルト9'によって取り外し可能に結合している。
【0023】
詳しくは、各カッタピース31〜36は、その前面板部の周縁、即ち、周方向に円弧状に湾曲した内外周縁部と直線状の両側縁部とに、一定幅の円弧状に湾曲した内外周壁部3c、3dと、径方向に長い直状の両側壁部3e、3eとをそれぞれ前面板部に対して後方に直角に屈折した状態で突設してあり、隣接するカッタピースにおける対向する側壁部3e、3e同士を接合させてボルト9'により順次、周方向に結合、連結することにより円環形状の外周カッタ板部3を形成していると共に、円弧状に湾曲している内側周壁部3cの内周面を上記中央カッタ板部2のリング状周壁2cにおける対向する外周面に接合してボルト9により着脱自在に結合している。なお、各カッタピース31〜36の前面板部は、中央カッタ板部2の前面板部と垂直面上で面一状に連続するように形成されていると共に、その内側周壁部3cは中央カッタ板部2の周壁2cと同一幅に形成され、且つ、同一湾曲度でもって円弧状に湾曲している。
【0024】
さらに、各カッタピース31〜36における周方向に円弧状に湾曲した外側周壁部3dの外周面をこの周壁部3dと同一幅に形成している上記リング部材4における対向する内周面に接合して該周壁部3dをボルト9'によりリング部材4に取り外し可能に結合している。なお、中央カッタ板部2のリング状周壁2cとカッタピース31〜36の内側周壁部3cとの結合は、これらの周壁2cと周壁部3cとに周方向に一定間隔毎にボルト取付孔7(図3に示す)を設け、該ボルト取付孔7、7間にボルト9を挿通してナット8を螺合することにより行われてあり、隣接するカッタピースの側壁部3e、3e同士の結合もボルト取付孔間にボルトを挿通してナット8により螺合してもよいが、図4に示すように互いに接合する一方の側壁部3eの複数箇所にボルト挿通孔7'を、他方の側壁部3eにこれらのボルト挿通孔7'と対向する螺子孔8'をそれぞれ設けて、ボルト挿通孔7'から該螺子孔8'にボルト9'を螺合させることにより行っている。
【0025】
同様に、上記各カッタピース31〜36の外側周壁部3dに周方向に一定間隔毎に該周壁部3dの内外周面に亘って貫通したボルト挿通孔7'を設ける一方、リング部材4の内周面にこれらのボルト挿通孔7'と対向する螺子孔8'を設けて、ボルト挿通孔7'から該螺子孔8'にボルト9'を螺締することにより、カッタピース31〜36をリング部材4に対して取り外し可能に結合している。
【0026】
上記中央カッタ板部2と外周カッタ板部3とはその形状を左右対称となるように形成されてあり、具体的には、図1に示すように、中央カッタ板部2は上記スポーク形状の面板部2aをカッタ板1の回転中心軸13から周方向に互いに90度の角度間隔を存して四方に放射状に突設していると共に、外周カッタ板部3は、基本的には上下左右に同大、同形のカッタピース31〜34に4等分されてあり、そのうちの1つのカッタピース31の両側部をキーカッタピース35、36に形成している。
【0027】
具体的には、両側に上記キーカッタピース35、36を配設しているカッタピース31をカッタ板1の上周部側に位置させた状態において、このカッタ板1の両側部に左右に対称的に配設している両側のカッタピース32、33は、その周方向の中央部に、中央カッタ板部2における両側のスポーク形状の面板部2aとこの面板部2aを挟むように設けている上記対の開口部5、5との延長方向に、中央カッタ板部2のリング状周壁2cとこれらのカッタピース32、33の内側周壁部3cとを介してスポーク形状の中央面板部3aとこの中央面板部3aを挟んだ互いに平行な一対の開口部5'、5'とをそれぞれ設けていると共に、周方向の両側端部に該開口部5'と同じ形状の開口部5'を設けてあり、さらに、これらの開口部5'を設けた面板部の端縁部に前方に向かって複数個のカッタビット6を突設している。
【0028】
同様に、下周部側に配設したカッタピース34は、その周方向の中央部に、中央カッタ板部2における下側のスポーク形状の面板部2aとこの面板部2aを挟むように設けている上記対の開口部5、5との延長方向に、中央カッタ板部2のリング状周壁2cと該カッタピース34の内側周壁部3cとを介してスポーク形状の中央面板部3aとこの中央面板部3aを挟んだ互いに平行な一対の開口部5'、5'とをそれぞれ設けていると共に、周方向の両側端部に該開口部5'と同形の開口部5'を設けてあり、さらに、これらの開口部5'を設けた面板部の端縁部に前方に向かって複数個のカッタビット6を突設している。
【0029】
一方、両側部にキーカッタピース35、36を配設している上周部側のカッタピース31は、キーカッタピース35、36を備えた全体の形状としては上記カッタピース32〜34と同一形状に形成されているが、このカッタピース31に対して両側カッタピース35、36は分割されていて、カッタピース31の中央部に、上記中央カッタ板部2における上側のスポーク形状の面板部2aとこの面板部2aを挟むように設けている上記対の開口部5、5との延長方向に、中央カッタ板部2のリング状周壁2cと該カッタピース34の内側周壁部3cとを介してスポーク形状の中央面板部3aとこの中央面板部3aを挟んだ互いに平行な一対の開口部5'、5'とを設けてあり、両側キーカッタピース35、36にはその中央部に一つの開口部5'を内外周面間に亘って設けている。なお、これらの開口部5'を設けた面板部の端縁部に前方に向かって複数個のカッタビット6を突設している。また、上記リング部材4の前面にも複数個のカッタビット6を前方に向かって突設している。
【0030】
さらに、外周カッタ板部3における上記両側に配したカッタピース32、33の両側壁部3e、3eと、下周部側に配したカッタピース34の両側壁部3e、3e、及び、上記両側に配したカッタピース32、33の側壁部3eに接合したキーカッタピース35、36の一方の側壁部3eとは、カッタ板1の直径線上に設けられているが、上記上周部側に配設したカッタピース31の両側壁部3e' 、3e' と、この側壁部3e' に接合してボルト9'により結合しているキーカッタピース35、36の他方の側壁部3e' とは、その延長線上を中央カッタ板部2の垂直方向の直径線上における上部側に交差する方向に傾斜させてキーカッタピース35、36の周方向の幅を内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように、即ち、楔形状に形成している。
【0031】
なお、中央カッタ板部2におけるスポーク形状の任意の面板部2aの後面に、図2に示すように径方向に向けたジャッキ25を装着してあり、そのロッド26の先端に装着しているコピーカッタ27を、外周カッタ板部3の外側周壁部3dとリング部材4とを貫通してリング部材4から出没自在に突出させ、トンネル曲線部の施工等において、該コピーカッタ27により地山をオーバーカットするように構成している。
【0032】
次に、このように構成したカッタ板1を備えている回収型のトンネル掘削機の構造を簡単に説明すると、図5に示すように、このトンネル掘削機は、泥水式シールド工法に使用される掘削機であって、外径がトンネル掘削径と略同径に形成された円筒形状の鋼管からなる外胴11と、この外胴11の前端部内周面にその外周端面を溶接等により一体に固着していると共に中央部に、トンネル掘削壁面に施工されたトンネル覆工体Sの内径よりも小径の円形孔15を設けている円環板形状の支持壁14と、この支持壁14の上記円形孔15にその短筒状内胴16をシール材17を介して後方に向かって引き出し可能に支持させている掘削機本体10と、上記外胴11の長さ方向の中間部内周面に周方向に一定間隔毎に配設された複数本の推進ジャッキ18及び方向修正ジャッキ19と、掘削土砂の排出手段である送排泥管20、21と、セグメントを組み立てるエレクタ22とから構成されている。
【0033】
掘削機本体10は上記短筒状内胴16の前端に該内胴16の開口端を密閉している隔壁16a を一体に設けていると共にこの隔壁16a の中心部に上記カッタ板1の回転中心軸13を回転自在に支持してあり、さらに、隔壁16a の後面にカッタ板1を回転駆動する駆動モータ12を装着してなるものである。この掘削機本体10の内胴16の後端部は、外胴11の内周面に取り外し可能に固定している推進反力受止部材23によって受止されている。
【0034】
このように構成したトンネル掘削機を発進立坑C(図6に示す)内に設置し、該カッタ板1を回転させながら所定方向にトンネルTを掘進していく。そして、一定長のトンネルを掘削する毎に、エレクタ22により掘削壁面にセグメントを組み立てて掘削壁面を覆工し、このトンネル覆工体Sの前端面に推進ジャッキ18の推進反力を受止させて、該推進ジャッキ18を伸長させることによってトンネル掘削機を前進させる。この時、推進ジャッキ18による推進力は推進反力受止部材23を介して掘削機本体10に伝達され、カッタ板1を切羽に押しつけながら地山を掘削させる。
【0035】
カッタ板1によって掘削された土砂は、該カッタ板1に設けている上記開口部5、5'を通じてカッタ板1と掘削機本体10の隔壁16a との間の土砂室24内に取り込まれ、この土砂室24に連通している上記送排泥管20、21による還流泥水によって泥水と共にトンネル側に排出される。
【0036】
このトンネル掘削機によって所定位置まで掘削壁面にセグメントによる覆工を行いながらトンネルTを掘削したのち、該掘削機本体10をこのトンネル覆工体S内を通じて発進立坑側まで後退させて回収しなければならない場合、例えば、図6に示すように、到達立坑Dの土留壁dまでトンネルTを掘削しても該到達立坑Dは築造途中である場合において、施工したトンネル覆工体S内を通じて掘削機本体10を回収するには、この回収に先立って、トンネル掘削機の前端部の周辺地盤を薬液注入等によって改良してこの改良地盤Eによって機内に地下水等が浸入するのを防止した状態にする。
【0037】
しかるのち、まず、エレクタ22や送排泥管20、21、推進ジャッキ18、方向修正ジャッキ19等を解体や取り外し等してトンネル覆工体S内を通じて後方に回収すると共に、推進反力受止部材23を取り外して外胴11に対する掘削機本体10の固定を解く一方、隔壁16a に設けている出入口(図示せず)を通じて作業員が土砂室24内に入り、カッタ板1の後方側から該カッタ板1における中央カッタ板部2の周壁2cと外周カッタ板部3の内側周壁部3cとを結合させているボルト9'を取り外す。なお、推進ジャッキ18や方向修正ジャッキ19は掘削機本体10の回収の邪魔にならない場合には掘削機本体10の回収後に撤去してもよい。
【0038】
次いで、掘削機本体10を後方に牽引してその短筒状内胴16を外胴11の内周面に固着している支持壁14の円形孔15から抜き取る。この際、カッタ板1における回転中心軸13の前端部に一体に設けている中央カッタ板部2は上述したように外周カッタ板部3に対する結合を解かれているので、図7に示すように掘削機本体10と一体的に後退し、支持壁14の円形孔15を通過して後方に移動する。この中央カッタ板部2を備えた掘削機本体10をトンネル覆工体S内を通じて発進立坑側に回収するには、例えば、支持壁14の円形孔15から抜き取られた掘削機本体10の内胴16の下周部と、円形孔15を通過した中央カッタ板部2の下周部とに、車輪(図示せず)を装着し、これらの車輪をトンネル覆工体Sの内底面上を転動させることによって行うことができる。
【0039】
こうして、カッタ板1の中央カッタ板部2が除去されると、外周カッタ板部3はトンネル掘削壁面に内嵌、支持された状態で残り、この外周カッタ板部3の内周面で囲まれた中央カッタ板部2の除去跡、即ち、抜き取り跡に図8に示すように空間部28が設けられた状態となる。そして、この空間部28を作業空間に利用して、この外周カッタ板部3の解体、撤去を行う。
【0040】
まず、この外周カッタ板部3を形成している複数のカッタピース31〜35において、上記作業空間部に向かって、即ち、カッタ板1の中心に向かって抜き取り可能に組み込んでいるキーカッタピース35、36を回収、撤去する。この際、これらのカッタピース31〜35の分解作業の安全性、作業性を考慮して、予め、トンネル掘削作業が完了した時点でキーカッタピース35、36が上部に位置した状態となるようにカッタ板1を回動、停止させておく。そして、下部側のカッタピース34を足場として上側カッタピース31の両側壁部3e' 、3e' とキーカッタピース35、36の側壁部3e' 、3e' とを結合させているボルト9'を取り外すと共に、キーカッタピース35、36の側壁部3eと両側カッタピース32、33の側壁部3eとを結合させているボルト9'を取り外し、さらに、キーカッタピース35、36の外側周壁部3dとリング部材4とを結合しているボルト9'を取り外したのち、図9に示すように、これらのキーカッタピース35、36を隣接するカッタピース31と32間、及び31と33間から上記空間部28内に向かって引き抜くようにして回収、撤去する。
【0041】
次いで、上記空間部28を利用して上側カッタピース31の外側周壁部3dをリング部材4の内周面に結合させているボルト9'を取り外したのち、図10に示すように該上側カッタピース31を回収、撤去すると共に、両側カッタピース32、33も同様にして下側カッタピース34の両側壁部3e、3eに対してボルト9'によって結合している側壁部3e、3eを該ボルト9'を取り外すことによってその結合を解き、さらに、その外側周壁部3dとリング部材4とを結合しているボルト9'を取り外したのち、図11に示すように、回収、撤去し、しかるのち、下側カッタピース34の外側周壁部3dとリング部材4との結合ボルト9'を取り外して図12に示すように該下側カッタピース34を回収、撤去する。
【0042】
こうして、外周カッタ板部3を複数のカッタピース31〜36に解体してトンネル覆工体S内を通じて発進立坑側に搬出、回収し、次のトンネル工事を行う際に、再び、カッタ板1の外周カッタ板部3として使用する。一方、カッタ板1のリング部材4は、回収することなく外胴11と共にトンネル掘削壁面の覆工材の一部として残しておく。なお、以上の実施の形態においては、カッタ板1における外周カッタ板部3を構成している複数のカッタピース31〜36のうち、キーカッタピースを2個、組み込んでいるが、1個だけであってもよく、また、リング部材4を各カッタピース31〜36に応じて複数分割してそれぞれのカッタピースの外周面に一体に設けた外周カッタ板部3の構造としておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】カッタ板の正面図。
【図2】トンネル掘削機の前半部分の縦断側面図。
【図3】図1におけるA−A線断面図。
【図4】図1におけるB−B線断面図。
【図5】トンネル掘削機全体の縦断側面図。
【図6】所定位置までトンネルを掘削した状態の簡略縦断側面図。
【図7】掘削機本体を回収している状態の簡略縦断側面図。
【図8】中央カッタ板部を除去した後のカッタ板の外周カッタ板部の正面図。
【図9】キーカッタピースを撤去している外周カッタ板部の正面図。
【図10】上側カッタピースを撤去している状態の正面図。
【図11】両側カッタピースを撤去している状態の正面図。
【図12】下側カッタピースを撤去している状態の正面図。
【符号の説明】
【0044】
1 カッタ板
2 中央カッタ板部
2c リング状周壁
3 外周カッタ板部
3c、3d 内外周壁部
3e 側壁部
9 ボルト
10 掘削機本体
31〜34 カッタピース
35、36 キーカッタピース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削したトンネルの覆工体内を通じて回収されるトンネル掘削機におけるカッタ板であって、外径が上記トンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面に内周面を取り外し可能に結合している円環形状の外周カッタ板部とからなり、この外周カッタ板部は周方向に複数のカッタピースに分割されていて隣接するカッタピース同士をボルトにより着脱自在に結合していると共に、これらのカッタピースの少なくとも一つに、両側面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成したキーカッタピースを備えていることを特徴とするトンネル掘削機のカッタ板。
【請求項2】
キーカッタピースを含む各カッタピースはその前面板部の周縁に後方に向かって一定幅の周壁を突設してあり、隣接するカッタピースの周壁における対向する側壁部同士を接合させてボルトにより着脱自在に結合していると共に、各カッタピースの内側周壁部の内周面を中央カッタ板の外周面に接合させてボルトにより着脱自在に結合していることを特徴とするトンネル掘削機のカッタ板。
【請求項3】
中央カッタ板部と、複数のカッタピースを周方向に着脱自在に結合し且つこれらのカッタピースの内周面を上記中央カッタ板部の外周面に取り外し可能に結合した円環形状の外周カッタ板部とからなるカッタ板を備えたトンネル掘削機によってトンネルを掘削したのち、このトンネル掘削壁面を覆工している覆工体内を通じて上記カッタ板を回収する方法であって、トンネル掘削機の外胴から上記カッタ板と該カッタ板の駆動部とを備えている掘削機本体を切り離すと共に、中央カッタ板部に対する外周カッタ板部の結合を解いたのち、上記外胴とカッタ板の外周カッタ板部とを掘削壁面に残したまま該掘削機本体をカッタ板の中央カッタ板部と一体に後方に回収し、しかるのち、この中央カッタ板部の除去跡の空間部を利用して、まず、外周カッタ板部の一部として組み込んでいる両側端面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成しているキーカッタピースをこのキーカッタピースの両側に隣接するカッタピースとの結合を解いて中央カッタ板部の除去跡の空間部に向かって抜き取ることにより撤去し、次いで、カッタピースを順次、隣接するカッタピースとの結合を解くことにより外周カッタ板部全体を解体、撤去し、これらのカッタピースをトンネル覆工体内を通じて回収することを特徴とするトンネル掘削機のカッタ板の回収方法。
【請求項4】
カッタ板を回収するに先立って、該カッタ板における外周カッタ板部のキーカッタピースをカッタ板の上周部に位置させておくことを特徴とする請求項3に記載のトンネル掘削機におけるカッタ板の回収方法。
【請求項1】
掘削したトンネルの覆工体内を通じて回収されるトンネル掘削機におけるカッタ板であって、外径が上記トンネル覆工体の内径よりも小径の中央カッタ板部と、この中央カッタ板部の外周面に内周面を取り外し可能に結合している円環形状の外周カッタ板部とからなり、この外周カッタ板部は周方向に複数のカッタピースに分割されていて隣接するカッタピース同士をボルトにより着脱自在に結合していると共に、これらのカッタピースの少なくとも一つに、両側面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成したキーカッタピースを備えていることを特徴とするトンネル掘削機のカッタ板。
【請求項2】
キーカッタピースを含む各カッタピースはその前面板部の周縁に後方に向かって一定幅の周壁を突設してあり、隣接するカッタピースの周壁における対向する側壁部同士を接合させてボルトにより着脱自在に結合していると共に、各カッタピースの内側周壁部の内周面を中央カッタ板の外周面に接合させてボルトにより着脱自在に結合していることを特徴とするトンネル掘削機のカッタ板。
【請求項3】
中央カッタ板部と、複数のカッタピースを周方向に着脱自在に結合し且つこれらのカッタピースの内周面を上記中央カッタ板部の外周面に取り外し可能に結合した円環形状の外周カッタ板部とからなるカッタ板を備えたトンネル掘削機によってトンネルを掘削したのち、このトンネル掘削壁面を覆工している覆工体内を通じて上記カッタ板を回収する方法であって、トンネル掘削機の外胴から上記カッタ板と該カッタ板の駆動部とを備えている掘削機本体を切り離すと共に、中央カッタ板部に対する外周カッタ板部の結合を解いたのち、上記外胴とカッタ板の外周カッタ板部とを掘削壁面に残したまま該掘削機本体をカッタ板の中央カッタ板部と一体に後方に回収し、しかるのち、この中央カッタ板部の除去跡の空間部を利用して、まず、外周カッタ板部の一部として組み込んでいる両側端面間の幅が内周側から外周側に向かって徐々に幅狭くなるように形成しているキーカッタピースをこのキーカッタピースの両側に隣接するカッタピースとの結合を解いて中央カッタ板部の除去跡の空間部に向かって抜き取ることにより撤去し、次いで、カッタピースを順次、隣接するカッタピースとの結合を解くことにより外周カッタ板部全体を解体、撤去し、これらのカッタピースをトンネル覆工体内を通じて回収することを特徴とするトンネル掘削機のカッタ板の回収方法。
【請求項4】
カッタ板を回収するに先立って、該カッタ板における外周カッタ板部のキーカッタピースをカッタ板の上周部に位置させておくことを特徴とする請求項3に記載のトンネル掘削機におけるカッタ板の回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−169944(P2007−169944A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366206(P2005−366206)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】
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