説明

トンネル防災設備

【課題】 トンネル防災設備において、システムリセットした場合に、トンネル内の無監視領域を、少なくすることができるトンネル防災設備を提供することを目的とするものである。

【解決手段】 システムリセットの機能を、複数の中継盤のそれぞれに、独立して搭載することによって、防災受信盤の指令によって、防災受信盤のみのシステムリセット、任意の中継盤のみのシステムリセット、システム全体のシステムリセットを可能とし、また、中継盤の指令によって、中継盤のみのシステムリセットを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル防災設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトンネル防災システムは、防災受信盤、中継盤を初期化し、たとえば、モジュール毎にROM、RAMチェック、ID・設定スイッチの読み込み等を行うことができる。また、トンネル内端末機器の配線が断線または短絡したときに、異常箇所を最小限に抑えるための制御であるいわゆる幹線補償制御があり、個別に配線されている検知器系統と変換器系統とを混在する機能がある。
【0003】
図3は、トンネル防災設備において、幹線補償制御の概要を示す図である。
【0004】
たとえば、図3に示すように、系統A(検知器系統)において、検知器4と5との間に断線が発生すると、この異常個所を最小限に抑えるために、断線箇所の後部に接続されている中継増幅器CR2が、バイパスおよびループバック制御を行い、いわゆる幹線補償制御が働く。
【0005】
この幹線補償制御によって、系統Aの検知器接続台数は4台になるが、断線箇所後部の検知器は、上記のバイパスとループとによって、系統B(変換器系統)と接続され、通信が継続される。このときに、系統Bの接続台数は12台になる。断線箇所が修復された後に、システムリセットによって幹線補償制御が解除され、システム再構築でトンネル内端末機器の種別・接続構成が復旧し、系統Aと系統Bとは、それぞれ初期状態に戻る(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002―246962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トンネルに使用される防災受信盤、中継盤を初期化するために、また、幹線補償制御を解除するために、トンネル内の端末機器種別等の情報を再収集する必要があり、このように、再収集した情報に基づいて、システムを再構築するために、システムリセットが必要である。
【0007】
上記「システムリセット」は、この防災受信盤、中継盤を初期化するために、また、幹線補償制御を解除し、トンネル内の端末機器種別等の情報を所定の範囲で再収集すること、または、防災受信盤から中継盤へデータベースのダウンロードおよび制御情報通知、中継盤から防災受信盤へ状態取得することである。
【0008】
しかし、従来のシステムリセットは、防災受信盤、中継盤およびトンネル内端末機器の全体を一括して行う。これは、システムリセットの間には、防災受信盤、中継盤を初期化し、トンネル内端末機器の情報を個別に順次収集し、システムを再構築するので、トンネル内を監視することができず、トンネル防災設備の全体に設けられている全てのトンネル内端末機器が無監視になる可能性がある。
【0009】
なお、上記システムリセットは、少なくとも、数分間を要する。したがって、システムリセット中は、少なくとも数分間、トンネル内が無監視状態になる。
【0010】
図4は、従来のトンネル防災設備300の構成図である。
【0011】
従来のトンネル防災設備300において、防災受信盤1a、中継盤C1a、…、Cna、トンネル内端末機器T1a、…、Tnaの全体のシステム一括でシステムリセットを実行している。
【0012】
上記のように、従来のトンネル防災設備300において、システムリセットした場合、中継盤の端末機器(たとえばT1a)の種別等の情報収集、特に防災受信盤1aや一部の中継盤(たとえばC1a)のソフト変更・メンテナンスを行っても、一時的に全システムが無監視となるという問題がある。
【0013】
本発明は、トンネル防災設備において、システムリセットした場合に、トンネル内の無監視領域を、少なくすることができるトンネル防災設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、トンネル内の各部に配置されている複数の端末機器と、上記トンネル内の所定領域内に設けられている端末機器が伝送線を介して接続されている複数の中継盤と、上記各中継盤が通信線を介して接続されている防災受信盤とを具備するトンネル防災設備において、上記複数の中継盤のうちで、個別に指定された中継盤がシステムリセットすることを特徴とするトンネル防災設備である。
【0015】
請求項2記載の発明は、トンネル内の各部に配置されている複数の端末機器と、上記トンネル内の所定領域内に設けられている端末機器が伝送線を介して接続されている複数の中継盤と、上記各中継盤が通信線を介して接続されている防災受信盤とを具備するトンネル防災設備において、上記防災受信盤のみがシステムリセットすることを特徴とするトンネル防災設備である。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2において、上記中継盤は、所定領域を対象としてシステムリセットした場合、伝送線を介して接続されている各端末機器の情報を個別に収集する中継盤であり、上記防災受信盤は、上記複数の中継盤のそれぞれが収集した情報を個別に収集する防災受信盤であることを特徴とするトンネル防災設備である。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記複数の中継盤が情報を収集する端末機器の範囲として、伝送線の系統毎のグループ、チューブ毎のグループ、トンネル毎のグループのうちで、少なくとも1つのグループを選択可能であることを特徴とするトンネル防災設備である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、防災受信盤または中継盤のみをシステムリセットするので、システムリセット領域のみが無監視になるだけで、システムリセットしていない領域は、通常監視することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1であるトンネル防災設備100を示すブロック図である。
【0021】
トンネル防災設備100は、防災受信盤1と、中継盤C1、C2、……、Cnと、トンネル内端末機器T1、T2、……、Tnと、複数の中継増幅器CRとを有する。
【0022】
中継盤Cnは、防災受信盤1と通信する防災盤通信部Cn1と、システムリセットを行う中継盤を制御する主制御部Cn2と、トンネル内端末機器との間で信号伝送するトンネル内伝送部Cn3とを有する。
【0023】
なお、実施例における「システムリセット」は、所定領域において行う動作であり、防災受信盤、中継盤を初期化するために、また、幹線補償制御を解除し、トンネル内の端末機器種別等の情報を所定の範囲で再収集すること、防災受信盤から中継盤へデータベースのダウンロードおよび制御情報通知、中継盤から防災受信盤へ状態取得することのうちで、上記所定領域において必要な動作である。
【0024】
そして、トンネル内伝送部Cn3からは、トンネル内の左右方向に配線が引き出されるとともに、火災を検知するための検知器系と、消火栓または自動弁等の消火用機器を監視制御するための変換器系との2系統の伝送線が設置されている。
【0025】
そして、トンネル内端末機器Tnの種別・接続構成の情報を収集する場合、中継盤Cnの主制御部Cn2が、トンネル内伝送部Cn3を介して、中継盤単位(図の点線に囲まれる部分)でシステムリセットを行えば、トンネル内端末機器Tnに関連する検知器や変換器の情報をチェックすることができる。
【0026】
他の中継盤C1、C2、……の構成も、中継盤Cnの構成と同様である。
【0027】
ここで、中継盤Cnにのみシステムリセットを行わせるには、まず、防災受信盤1の図示しない表示・操作部に、中継盤Cnを指定するシステムリセットを入力する。このシステムリセットの入力によって、防災受信盤1は、通信線を介して、中継盤Cnにシステムリセットを命令する信号を送信する。そして、上記信号を受信した中継盤Cnは、システムリセットの動作を行い、その内容によって、トンネル内端末機器Tnを監視制御できなくなる。この間、システムリセットしている中継盤は、無監視になるが、その他の中継盤C1等は、監視を続けることができ、無監視領域を部分的に限定することができる。
【0028】
システムリセットの内容の中で、特に端末機器の種別収集時は、中継盤Cnは監視することができない。その他の内容についても、主制御部Cn2の能力に基づいて、防災受信盤1と通信中に端末機器を監視できないとすると、データベースのダウンロード時等にも、無監視状態が発生する。
【0029】
さらに、防災盤通信部Cn1は、上記チェックしたトンネル内端末機器Tnの情報を防災受信盤1に伝え、これによって、防災受信盤1は、中継盤Cnが収集した情報を個別に収集できる。一方、上記システムリセットしている中継盤Cn以外の中継盤は、このシステムリセットには影響されず、通常監視し、無監視箇所を必要最小限にすることができる。
【実施例2】
【0030】
図2は、本発明の実施例1であるトンネル防災設備100と同じであるが、図1に示す防災受信盤1を詳細に示すブロック図である。
【0031】
防災受信盤1は、システムリセットを行うとともに、防災受信盤1を制御する主制御部11と、各中継盤C1〜Cnとの間で、通信線を介して個別に通信する中継盤通信部12と、監視制御のための表示・操作部13とを有する。
【0032】
この防災受信盤1の表示・操作部13に、防災受信盤1のみをシステムリセットするように入力する。このシステムリセットを入力すると、防災受信盤1内の主制御部11の制御によって、防災受信盤1のみをシステムリセットすることができ、たとえば防災受信盤1内のモジュールの初期化と、各中継盤C1〜Cnからの状態取得とを実行することができ、中継盤C1〜Cnやトンネル内端末機器T1〜Tn等、防災受信盤1以外の機器は、上記システムリセットに影響されず、監視制御を継続することができる。
【0033】
上記実施例では、トンネル防災設備において、システムリセットの機能を、各中継盤C1、C2、……、Cnに搭載し、中継盤のシステムリセットを可能とする。
【0034】
また、上記実施例では、トンネル内の所定領域として、中継盤Cnがトンネル端末機器Tnの情報を収集するが、これに限定されず、複数の中継盤が情報収集する端末機器の範囲として、伝送線の系統毎のグループ、チューブ毎のグループ、トンネル毎のグループ(通常自動車用のトンネルは2本のチューブで構成している)を、上記トンネル内の所定領域として考えるようにしてもよい。これらの範囲指定を可能とする防災受信盤1とし、必要な中継盤を指定する命令を行えばよい。
【0035】
上記実施例によれば、各機器単位でシステムリセットを行うので、無監視の部分を、該当箇所に止め、監視運用における支障をできる限り少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1であるトンネル防災設備100のブロック図である。
【図2】本発明の実施例1であるトンネル防災設備100と同じであるが、本発明の実施例2を説明するため、図1に示す防災受信盤1を詳細に示すブロック図である。
【図3】トンネル防災設備において、幹線補償制御の概要を示す図である。
【図4】従来のトンネル防災設備300の構成図である。
【符号の説明】
【0037】
100…トンネル防災設備、
1…防災受信盤、
C1、C2、〜、Cn…中継盤、
CR、CR1〜CRn…中継増幅器、
T1、T2、〜、Tn…トンネル内端末機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の各部に配置されている複数の端末機器と、上記トンネル内の所定領域内に設けられている端末機器が伝送線を介して接続されている複数の中継盤と、上記各中継盤が通信線を介して接続されている防災受信盤とを具備するトンネル防災設備において、
上記複数の中継盤のうちで、個別に指定された中継盤がシステムリセットすることを特徴とするトンネル防災設備。
【請求項2】
トンネル内の各部に配置されている複数の端末機器と、上記トンネル内の所定領域内に設けられている端末機器が伝送線を介して接続されている複数の中継盤と、上記各中継盤が通信線を介して接続されている防災受信盤とを具備するトンネル防災設備において、
上記防災受信盤のみがシステムリセットすることを特徴とするトンネル防災設備。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
上記中継盤は、所定領域を対象としてシステムリセットした場合、伝送線を介して接続されている各端末機器の情報を個別に収集する中継盤であり、
上記防災受信盤は、上記複数の中継盤のそれぞれが収集した情報を個別に収集する防災受信盤であることを特徴とするトンネル防災設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、
上記複数の中継盤が情報を収集する端末機器の範囲として、伝送線の系統毎のグループ、チューブ毎のグループ、トンネル毎のグループのうちで、少なくとも1つのグループを選択可能であることを特徴とするトンネル防災設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−106834(P2006−106834A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288556(P2004−288556)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】