説明

ドアハンドル装置及びこれを備えたキーレスエントリー装置

【課題】検出感度が高く、周囲環境へのノイズ放出の低減や、車載バッテリーへの負担軽減をすることができるドアハンドル装置及びこれを用いたキーレスエントリー装置を提供すること。
【解決手段】ドア13に組み付けられて前記ドア13の開閉操作時の把持部となるハンドル本体23と、前記ハンドル本体23のドア13側に取り付けられた圧電センサ15とを有し、前記圧電センサ15は、独立して変位可能な複数の部位を有する緩衝材25を介してハンドル本体23の前記ドア13に対向する面にとりつけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両のドアの施錠/解錠をキー操作なしで可能にするキーレスエントリシステムに好適なドアハンドル装置に関するもので、特に、キーレスエントリシステムの動作信頼性の向上、消費電流の低減等を実現することのできるドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両では、利便性、セキュリティーの向上を目的として、キーレスエントリシステムを搭載したものが増えている。
【0003】
キーレスエントリシステムは、ドアの施錠/解錠をキー操作なしで可能にするシステムで、運転者が携帯所持する無線通信端末と車載の無線通信端末との間における無線通信によって暗証データ等を照合することで、ドアの施錠/解錠を行う。
【0004】
従来、このようなキーレスエントリシステム用として、図11に示す車両用ドアハンドルが提案されている。
【0005】
この車両用ドアハンドル1は、車両のドアアウタパネル2の開口部3に組み付けられてドアの開閉操作時の把持部となるハンドル本体4を中空構造にし、このハンドル本体4内の中空部4aに、ハンドル操作検出センサ10を組み込んだものである。
【0006】
ハンドル操作検出センサ10は、運転者等がハンドル本体4に手を触れると、その人体との接触でハンドル本体4周囲の静電容量が変動することに着眼して、静電容量の変動からドアの開閉操作の有無を検出するもので、静電容量の変動を検出するためのセンサ電極9と、このセンサ電極9によって静電容量の一定以上の変動を検出した時に運転者が携帯所持する無線通信端末との間で信号の送受を行うアンテナ8とを備えた構成である(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
なお、ハンドル本体4は、矢印(イ)方向に揺動変位可能に、前部から延出したアーム5がドア側に連結されている。また、ハンドル本体4の後側には、キーシリンダケース6と、ベルクランク体7が装備されている。ベルクランク体7は、図示しないリンク機構と協働してドアロック装置を構成する。
【特許文献1】特開2003−194959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記の車両用ドアハンドル1は、ハンドル操作検出センサ10の組み込みのためにハンドル本体4内に一定以上の大きさの中空部4aを確保しなければならず、ハンドル本体4の形状や寸法が制限されてしまうという問題があった。
【0009】
また、ハンドル本体4の周囲の静電容量は、例えば、人体以外の器物の接近や接触によっても微小変動する。
【0010】
そこで、このような外乱による静電容量の微小変動を誤検出しないように、静電容量式のハンドル操作検出センサ10の検出感度を低めに設定しておくと、ドアの開閉操作時のハンドル本体4への手指の接触圧が弱い時には、ドアの開閉操作の有無が検出できず、ハンドル本体4への手指の接触のやり直しが必要になって、操作性の低下を招く虞があった。
【0011】
一方、ハンドル操作検出センサ10の検出感度を高めれば、ドアの開閉操作時のハンドル本体4への手指の接触圧が弱い場合でも、確実にドアの開閉操作の有無を検出できるようになるが、その反面、外乱による静電容量の微小変動でも、ハンドル操作検出センサ10はドアの開閉操作が有ったと判定して、信号の発信を行うようになり、無為な信号発信が周囲環境へのノイズの放出となる虞があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、ハンドル本体の形状や寸法に対する設計自由度が高く、しかも、検出感度が高く、ドアの開閉操作時のハンドル本体への手指の接触が弱い場合でも確実にドアの開閉操作の有無を検出することができ、更には、無為な信号発信による周囲環境へのノイズの放出を防止すると同時に、消費電流の低減によって車載バッテリーへの負担を軽減することができるドアハンドル装置及びこれを用いたキーレスエントリー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1のドアハンドル装置は、ドアに組み付けられて前記ドアの開閉操作時の把持部となるハンドル本体と、前記ハンドル本体のドア側に取り付けられた圧電センサとを有し、前記圧電センサは、独立して変位可能な複数の部位を有する緩衝材を介してハンドル本体の前記ドアに対向する面にとりつけたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第2のドアハンドル装置は、第1のドアハンドル装置において、独立して変位可能な複数の部位は、緩衝材に複数の切り込みをいれて構成されたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第3のドアハンドル装置は支持軸を介して一端側をドアに揺動自在に支持され、前記揺動により他端側を前記ドアの引き出し方向に移動するハンドルと、前記ハンドルを支持する支持部に前記支持軸に対して所定の角度をもって取り付けられたてこ部に取り付けられた圧電センサとを有することを特徴とするドアハンドル装置。
【0016】
また、本発明のキーレスエントリー装置は、第1乃至第3のいずれかのドアハンドル装置と、車両側に搭載した車両側送受信機と、操作者が携帯する携帯側送受信機と、車両側送受信機が送信した暗証要求信号を携帯側送受信機が受信した後に携帯側送受信機が送信した暗証信号を車両側送受信機で受信することによりドアのロックを解除する制御部とを具備したキーレスエントリー装置であって、前記制御部が、前記圧電センサからの検出信号を受けて前記車両側送受信機から暗証要求信号を送信させる暗証信号要求手段と、前記車両側送受信機によって受信し解読された暗証信号が予め設定された正規信号か否かを判定する暗証信号判定手段と、暗証信号が正規信号であった場合に前記ドアロック手段によるロックの解除を指示するロック解除指示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
ハンドル本体の形状や寸法に対する設計自由度が高く、しかも、検出感度が高く、ドアの開閉操作時のハンドル本体への手指の接触が弱い場合でも確実にドアの開閉操作の有無を検出することができ、更には、無為な信号発信による周囲環境へのノイズの放出を防止すると同時に、消費電流の低減によって車載バッテリーへの負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るドアハンドル装置及びこれを備えたキーレスエントリー装置の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は本発明に係る第1の実施形態のドアハンドル装置を表す外観斜視図、図2は図1のA−A断面を(a)、(a)のB−B断面を(b)、(b)のC−C断面を(c)に表した内部構成図、図3は図2に示した圧電センサの概略構成図、図4は圧電素子材の構成図、図5はドアハンドル装置のブロック図である。
【0020】
この第1の実施形態によるドアハンドル装置100は、図1に示すように、開閉操作のためのハンドル11を有するドア13に設けられ、このドア13の開扉操作をロックする図示しないドアロック手段を、ハンドル11の操作によってロック解除可能とする。ドアハンドル装置100は、その主要な構成として、ハンドル11に配設され可撓性を有する圧電素子にて形成した圧電センサ15と、ドア13とハンドル本体23との間に手が挿入され、ハンドル本体23が把持された際の接触荷重26による圧電センサ15からの検出信号を受けてドアロック手段によるロックを解除する制御部である後述の判定手段17(図3、図5参照)とを備える。
【0021】
ドアハンドル装置100は、車両のドア(ドアアウタパネル)13に組み付けられる。ハンドル11は、支持軸21を介して一端側23aをドア13に揺動自在に支持して、この揺動によって他端側23bを引き出し方向に移動するハンドル本体23を有している。つまり、片側がヒンジとなるプルライズ式のハンドル11を構成している。圧電センサ15は、ハンドル本体23のドア13に対向する面23cに配設され、ハンドル本体23の把持操作による圧電センサ15の変形を検出可能としている。なお、図2(a)中、79はハンドル本体23の後側に装備されたキーシリンダケースを示す。
【0022】
本実施形態において、圧電センサ15は、図2(b)に示すように緩衝材25を介装したチューブ状の被覆材27に覆われている。つまり、被覆材27がハンドル本体23のドア13に対向する面23cに貼着されている。圧電センサ15は、ハンドル本体23の他端側23bから導出されたケーブル部29がドア13内に引き込まれて判定手段17に接続される。
【0023】
ここで、図2(c)は図2(b)のC−C断面の緩衝材25、圧電センサ15及び被覆材27を拡大した図である。図2(c)に示すように、圧電センサ15上部の緩衝材25は圧電センサと対向する側に切り込み22を複数有し、切り込み22で区分けされた部位24は互いに独立して変形することが可能であり、切り込みのないものと比べると撓みやすい。
【0024】
ドア13とハンドル本体23との間に手が挿入され、ハンドル本体23が把持されると、緩衝材25、圧電センサ15及び被覆材27に接触荷重26が発生する。この際、緩衝材25は複数の互いに独立して変形可能な部位を有するため、接触荷重26による圧電センサ15の変形を妨げにくく、圧電センサ15の変形はより大きくなる。
【0025】
圧電センサ15は、図3に示すように、所定長のケーブル状の圧電素子材31と、この圧電素子材31の一端に接続された断線検出用抵抗体33と、圧電素子材31の他端に接続された判定手段17と、判定手段17に接続されたケーブル37と、このケーブル37の先端に接続されたコネクタ39とから構成されている。判定手段17に接続されたケーブル37は、電源供給用と検出信号の出力用で、その先端に装備されたコネクタ39を介して、電源や、通信用端末に接続される。
【0026】
圧電センサ15に使用されている圧電素子材31は、図4に示す構造を有し、軸方向中心に芯線(中心電極)41と、この中心電極41の周囲に圧電セラミックスであるピエゾ素子材料(複合圧電体層)45を被覆し、さらにピエゾ素子材料45の周囲に外側電極43を配設し、最外周をPVC(塩化ビニル樹脂)等の被覆層47で被覆して形成したものである。この圧電素子材31は、優れた可撓性を有し、変形時の変形加速度に応じた出力信号を発生する。圧電セラミックスとしては、例えば、チタン酸鉛、又はチタン酸ジルコン酸鉛の焼結粉体やニオブ酸ナトリウム等の非鉛系圧電セラミック焼結粉体を用いる。
【0027】
上記ケーブル状の圧電センサ15は、使用温度が120℃まで可能な出願人独自開発の耐熱性を有する樹脂系材料をピエゾ素子材料45に用いており、従来の代表的な高分子ピエゾ素子材料(一軸延伸ポリ弗化ビニリデン)やピエゾ素子材料(クロロプレンと圧電セラッミック粉末のピエゾ素子材料)の最高使用温度である90℃より高い温度域(120
℃以下)で使用できる。そして、ピエゾ素子材料45がフレキシブル性を有する樹脂と圧
電性セラミックから構成され、また、コイル状金属中心電極及びフィルム状外側電極から成るフレキシブル電極を用いて構成しており、通常のビニールコード並みのフレキシブル性を有している。
【0028】
ピエゾ素子材料45は、樹脂系材料と、10μm以下の圧電性セラミック粉末の複合体とから構成され、振動検出特性はセラミックにより、またフレキシブル性は樹脂によりそれぞれ実現している。本ピエゾ素子材料45は樹脂系材料として塩素系ポリエチレンを用い、高耐熱性(120℃)と容易に形成できる柔軟性を実現すると共に架橋する必要のない簡素な製造工程を可能とするものである。
【0029】
このようにして得られたケーブル状の圧電センサ15は、ピエゾ素子材料45を成形したままでは、圧電性能を有しないので、ピエゾ素子材料45に数kV/mmの直流高電圧
を印加することにより、ピエゾ素子材料45に圧電性能を付与する処理(分極処理)を行うことが必要である。ピエゾ素子材料45にクラックなどの微少な欠陥が内在する場合、その欠陥部で放電して両電極間が短絡し易くなるので、充分な分極電圧が印加できなくなるが、本発明では一定長さのピエゾ素子材料45に密着できる補助電極を用いた独自の分極工程を確立することにより、欠陥を検出・回避して分極を安定化でき、これにより数10m以上の長尺化も可能になる。
【0030】
また、圧電ケーブルセンサにおいては、中心電極41にコイル状金属中心電極を、外側電極43にフィルム状電極(アルミニウム−ポリエチレンテレフタレート−アルミニウムの三層ラミネートフィルム)を用い、これによりピエゾ素子材料45と電極の密着性を確保すると共に、外部リード線の接続が容易にでき、フレキシブルなケーブル状実装構成が可能になる。
【0031】
中心電極41は、銅−銀合金コイル、外側電極43はアルミニウム−ポリエチレンテレフタレート−アルミニウムから成る三層ラミネートフィルム、ピエゾ素子材料45はポリエチレン系樹脂+圧電性セラミック粉末、外皮は熱可塑性プラスチック、これにより、比誘電率は55、電荷発生量は10−13C(クーロン)/gf、最高使用温度は120℃
となる。
【0032】
以上の圧電素子材31は、一例として以下の工程により製造される。最初に塩素化ポリエチレンシートと40〜70体積%の圧電セラミックス(ここでは、チタン酸ジルコン酸鉛)粉未がロール法によりシート状に均一に混合される。このシートを細かくペレット状に切断した後、これらのペレットは中心電極41と共に、連続的に押し出されて複合圧電体層45を形成する。そして、補助電極を複合圧電体層45の外周に接触させて前記補助電極と中心電極41との間に高電圧を印加させて分極処理を行う。それから、外側電極43が複合圧電体層45の周囲に巻き付けられる。外側電極43を取り巻いて被覆層47も連続的に押し出される。
【0033】
上記塩素化ポリエチレンに圧電セラミックス粉体を添加するとき、前もって、圧電セラミックス粉体をチタン・カップリング剤の溶液に浸漬・乾燥することが好ましい。この処理により、圧電セラミックス粉体表面が、チタン・カップリング剤に含まれる親水基と疎水基で覆われる。親水基は、圧電セラッミクス粉体同士の凝集を防止し、また、疎水基は塩素化ポリエチレンと圧電セラミックス粉体との濡れ性を増加する。この結果、圧電セラミックス粉体は、塩素化ポリエチレン中に均一に、最大70体積%までに多量に添加することができる。上記チタン・カップリング剤溶液中の浸漬に代えて、塩素化ポリエチレンと圧電セラミックス粉体のロール時にチタン・カップリング剤を添加することにより、上記と同じ効果の得られることが見出された。この処理は、特別にチタン・カップリング剤溶液中の浸漬処理を必要としない点で優れている。このように、塩素化ポリエチレンは、圧電セラミックス粉体を混合する際のバインダー樹脂としての役割も担っている。
【0034】
本実施の形態の場合、中心電極41には、銅系金属による単線導線を使用している。また、外側電極43には、高分子層の上にアルミ金属膜の接着された帯状電極を用い、これを複合圧電体層45の周囲に巻き付けた構成としている。そして、高分子層としては、ポリエチレン・テレフタレート(PET)を用い、この上にアルミ薄膜を接着した電極は、商業的にも量産されて、安価であるので、外側電極43として好ましい。この電極を判定手段17に接続する際には、例えば、加締めや、ハトメにより接続することができる。また、外側電極43のアルミ薄膜の周りに金属単線コイルや金属編線を判定手段17の接続用に半田付けする構成としてもよく、半田付けが可能となるので、作業の効率化が図れる。なお、圧電素子材31を外部環境の電気的雑音からシールドするために、外側電極43は部分的に重なるようにして複合圧電体層45の周囲に巻き付けることが好ましい。
【0035】
被覆層47としては、前述の塩化ビニル樹脂よりも断熱性及び防水性に優れたゴム材料を使用することもできる。このゴム材料とは、接触する物品の押圧力で複合圧電体層45が変形し易いように、複合圧電体層45よりも柔軟性及び可撓性の高いものが良い。車載部品として耐熱性、耐寒性を考慮して選定し、具体的には、−30℃〜85℃で可撓性の低下が少ないものを選定することが好ましい。このようなゴム材料として、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、シリコンゴム(Si)、熱可塑性エラストマー等を用いればよい。以上のような構成により、圧電素子材31の最小曲率は、半径5mmまで可能になり、また、塩化ビニルと比較して、更に優れた断熱性及び防水性を確保することができる。
【0036】
上記のように、圧電素子材31の複合圧電体が塩素化ポリエチレンの有する可撓性と圧電セラミックスの有する高温耐久性とを併せ持つので、圧電体としてポリフッ化ビニリデンを用いた従来の圧電センサのような高温での感度低下がなく、高温耐久性がよい上、EPDMのようなゴムのように成形時に加硫工程が不要なので生産効率がよいという利点が得られる。
【0037】
図5に示すように、圧電素子材31の出力信号からドアの開閉操作の有無を検出する判定手段17には、ドアのロック装置の施錠/解錠を行う開閉駆動手段51と、この開閉駆動手段51の動作を制御する開閉制御手段53が装備されて、従来キーレスエントリシステムを構成する。
【0038】
判定手段17は、圧電素子材31の断線を検出する際に使用する分圧用抵抗体61、圧電素子材31からの出力信号から所定の周波数成分のみを通過させる瀘波部62、瀘波部62からの出力信号に基づき圧電素子材31への物体の接触を判定する判定部63、断線検出用抵抗体33と分圧用抵抗体61により形成される電圧値から圧電素子材31の中心電極41と外側電極43の断線異常を判定する異常判定部64を備えている。
【0039】
また、中心電極41と外側電極43を判定手段17に接続し、圧電素子材31からの出力信号を判定手段17に入力する信号入力部65と、判定部63からの判定信号を出力する信号出力部66とは、隣接して判定手段17内に配設してある。信号出力部66には、判定手段17への電源ラインとグランドラインも接続されている。さらに、判定手段17は、信号入力部65と信号出力部66との間に設けられ高周波信号をバイパスするコンデンサ等のバイパス部67を有している。
【0040】
また、開閉制御手段53には、判定手段17の判定結果を車室内のフロントパネルに設置された所定のライト等で報知する報知手段74、ドアを開閉するための開閉スイッチ75が接続されている。そして、判定手段17を通じて電力を供給する自動車のバッテリー等からなる電源76が設けられている。
【0041】
瀘波部62は、圧電素子材31の出力信号から自動車の車体の振動等に起因する不要な信号を除去し、異物の接触による押圧により圧電素子材31が変形する際に圧電素子材31の出力信号に現れる特有な周波数成分のみを抽出するような濾波特性を有する。濾波特性の決定には、自動車の車体の振動特性や走行時の車体振動を解析して最適化すればよい。
【0042】
外来の電気的ノイズを除去するため、判定手段17はシールド部材で全体を覆って電気的にシールドしてある。また、外側電極43は判定手段17のシールド部材と導通し、圧電素子材31も電気的にシールドされている。なお、上記回路の入出力部に貫通コンデンサやEMIフィルタ等を付加して強電界対策を行っても良い。
【0043】
以上のドアハンドル装置100では、図2(a)に示すように、ハンドル本体23に手指がかけられて、矢印(ロ)方向にハンドル本体23が引き出されると、互いに独立して変形する部位24とともに圧電センサ15が変形し、その変形による圧電素子材31の出力信号に基づいて判定手段17が、ドアの開閉操作の有無を判定し、開閉駆動手段51の動作が制御される。
【0044】
図6(a)は圧電センサ15に加わる荷重とセンサ出力特性を示す線図である。出願人が圧電センサ15の荷重とセンサ出力の関係を実験した結果、圧電センサ15に(a)のような曲げ荷重を印加したとき、センサ出力が(b)のような変動を呈するようになる。
【0045】
(1)時刻tで圧電センサ15に荷重が加わっていないときは、センサ出力は電圧Vaを示している。
【0046】
(2)時刻tで圧電センサ15に一定方向に曲げ荷重が加わると、加わった瞬間からセンサ出力はVbに増加した後、直ぐに反転して0(V)になり、その後再びVaに戻る。
【0047】
(3)その後、曲げたままにしていてもセンサ出力はVaを示したままである。(4)時刻tで、圧電センサ15をもとの状態に戻すと、その瞬間からセンサ出力はVcに減少したあと、直ぐに反転してVdになり、その後再びVaに戻る。
【0048】
このように、この圧電センサ15は加速度に反応した出力を高感度に検出できるため、微小な振動を精度良く検出して出力することができる。なお、荷重印加タイミングの検出には、例えば図示した電圧Vaを中心とした所定電圧幅ΔVの判定閾値を設け、この判定閾値を越えた場合に荷重変化があったと判定すれば良い。
【0049】
以上に説明した第1の実施の形態のドアハンドル装置100では、圧電センサ15はその構成要素である圧電素子材31がハンドル本体23が手で把持されることにより変形すればドア開閉操作の有無を検出することができ、圧電センサ15自体をハンドル本体14内に組み込む必要がない。従って、圧電センサ15を組み込むための所定の大きさの中空部をハンドル本体14に設ける必要がなく、ハンドル本体14は操作時に把持性や外観デザイン等を重視して任意に形状や寸法を設計可能になり、ハンドル本体14の形状や寸法に対する設計自由度が高くなる。
【0050】
しかも、上記の圧電センサ15は、ドアの開閉操作時に手でハンドル本体23が把持されることによって圧電素子材31のピエゾ素子材料49が変形を受けることで、開閉操作の有無を検出するもので、静電容量式の従来のハンドル操作検出センサと比較して、ドアの開閉操作に無関係な器物の接近等を誤検出する虞がない。
【0051】
従って、検出感度を高く設定して、ハンドル本体が把持された際に圧電センサ15に生じる僅かな変位によって、鋭敏に開閉操作の有無を検出することが可能で、ドアの開閉操作の有無を検出させることが可能で、ドアの開閉操作時のハンドル本体23への手の接触が弱い場合でも確実に開閉操作の有無を検出できる。
【0052】
特に、本実施の形態では、圧電センサ15を互いに独立して変形する部位を有する緩衝材を介してハンドル本体に配設しているため、僅かな変位であってもより大きな変形を圧電センサ15に生じさせることができるため、より確実に開閉操作の有無を検出している。
【0053】
また、上記の圧電センサ15では、ハンドル本体23が手で把持されることにより圧電素子材31のピエゾ素子材料49が変形しない限り、検出信号を出力しないため、無為な信号発信による周囲環境へのノイズの放出を防止することもできる。
【0054】
また、圧電素子材31を使用した本発明の圧電センサ15は、1mA以下の消費電流で安定動作させることができるため、静電容量式の従来の圧電センサ15と比較すると、消費電流の低減によって車載バッテリーへの負担を軽減することができる。
【0055】
また、電極を表出させる必要がないので、外乱や、付着する塵埃や雨や雪等の影響を受けにくくすることができる。
【0056】
なお、本実施の形態では圧電センサ15上部の緩衝材25に複数の切り込み22を有する構成としたが、互いに独立して変形する部位24を複数有する構成であればよい。例えば、互いに独立して変形する複数の部位24を、複数の区分けされた緩衝材25により構成してもよい。
【0057】
また、圧電センサ15の上部にのみ複数の切り込み22を有する構成としたが、圧電センサ15と被覆材27との間にも緩衝材25を設け、圧電センサ15の下部または下部及び上部にも複数の切り込み22を有する構成としてもよい。
【0058】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る第2の実施の形態のドアハンドル装置について説明する。
【0059】
なお、本実施の形態において、第1の実施の形態と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0060】
図7は本実施の形態2の形態のドアハンドル装置を示す断面図である。
【0061】
ハンドル11は、支持軸21を介して一端側をドアに揺動自在に支持された支持部であるアーム部703と、支持部21が揺動可能に支持されたことにより他端側をドア13の引き出し方向である(ハ)方向に移動するハンドル本体23とを有している。また、てこ部702は棒状の部材であって、アーム部703に支持軸に対してハンドル本体23と対向する側に、アーム部703を延長するようにして取り付けられている。さらに、てこ部702には突起705により圧電センサ15が配設されており、圧電センサ15はクランプ704により基板701に設置されるとともに、基板701に設置された判定手段17に接続されている。
【0062】
図8は図7のD−D矢視図である。圧電センサ15は、その一部が、図7に示すように、てこ部702の外周に巻きつけられると共に、てこ部702の外周に突起された一対の突起705によっててこ部702の外周面上に位置決めされていて、ハンドル本体23の操作に伴って、てこ部702が矢印(ニ)方向に変位すると、一対の突起705が圧電センサ15の外周面を押圧して、圧電センサ15に変形を生じさせる。
【0063】
つまり、本実施の形態2のドアハンドル装置では、ハンドル本体23に手がかけられて、矢印(ハ)方向にハンドル本体23が引き出されると、支持軸21を介して、てこ部702に矢印(ニ)方向に変位が生じ、てこ部702に巻きつけられている圧電センサ15が一対の突起705によって押圧を受けて変形し、その時の圧電センサ15の出力信号に基づいて判定手段17が、ドアの開閉の有無を判定し、開閉駆動手段51の動作が制御される。
【0064】
以上に説明した実施の形態2のドアハンドル装置200では、ハンドル本体23が引き出されることによる変位をてこ部702の変位に変換することができ、てこ部702が所定の長さにすることによって、圧電センサ15の変形に十分な変位を与えることができ、確実にドアの開閉動作の有無の検出が可能となる。
【0065】
また、圧電センサ15はその構成要素である圧電素子材31がハンドル本体23に連動するてこ部702の変位による変形によりドア開閉操作の有無を検出することができるため、圧電センサ15自体をハンドル本体23内に組み込む必要がない。従って、圧電センサ15を組み込むための所定の大きさの中空部をハンドル本体23に設ける必要がなく、ハンドル本体23は操作時に把持性や外観デザイン等を重視して任意に形状や寸法を設計可能になり、ハンドル本体23の形状や寸法に対する設計自由度が高くなる。
【0066】
しかも、上記の圧電センサ15は、ドアの開閉操作時にハンドル本体23と一体に所定の変位をするてこ部702によって圧電素子材31のピエゾ素子材料45が変形を受けることで、開閉操作の有無を検出するもので、静電容量式の従来のハンドル操作検出センサと比較して、ドアの開閉操作に無関係な器物の接近等を誤検出する虞がない。
【0067】
従って検出感度を高く設定して、てこ部702の僅かな変位によって、鋭敏に開閉操作の有無を検出することが可能で、ドアの開閉操作時のハンドル本体23への手指の接触が弱い場合でも確実にドアの開閉操作の有無を検出できる。
【0068】
また、上記の圧電センサ15では、ハンドル本体23と一体に変位するてこ部702の変位挙動によって圧電素子材31のピエゾ素子材料45が変形しない限り、検出信号を出力しないため、無為な信号発信による周囲環境へのノイズの放出を防止することもできる。
【0069】
また、圧電素子材31を使用した本発明の圧電センサ15は、1mA以下の消費電流で安定動作させることができるため、静電容量式の従来のハンドル操作検出センサ16と比較すると、消費電流の低減によって車載バッテリーへの負担を軽減することができる。
【0070】
なお、ハンドル本体23の開閉操作時にハンドル本体23と一体となって変位するてこ部15は上記実施の形態に限らない。例えば、アーム部703と支持軸21に対して所定の角度を有するようにてこ部を設け、設置が容易な箇所に圧電センサを設けてもよい。
【0071】
また、圧電素子材31に変形を生じさせるための圧電素子材31とてこ部702との係合形態も、上記実施の形態に限らない。
【0072】
上記実施の形態では、ケーブル状の圧電素子材31を棒状のてこ部702の外周に巻き付けていたが、例えば、巻き付けずに、てこ部702の上を単純に横断するように圧電素子材31を配索することも可能である。
【0073】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る第3の実施の形態のキーレスエントリー装置について説明する。
【0074】
なお、本実施の形態3において、実施の形態1、2と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0075】
図9は本発明に係る第3の実施形態のキーレスエントリー装置の概略構成を(a)、その要部詳細構成を(b)に表したブロック図、図10は図9に示したキーレスエントリー装置の動作手順を表す流れ図である。
【0076】
キーレスエントリー装置300は、上記した第1、第2の実施形態で説明したドアハンドル装置100、200のいずれか一つのドアハンドル装置(例えばドアハンドル装置100)と、図9(a)に示した車両側に搭載した送受信機91と、操作者が携帯する送受信機93とを具備する。キーレスエントリー装置300は、車両側送受信機91が送信した暗証要求信号を携帯側送受信機93が受信した後に、携帯側送受信機93が送信した暗証信号を車両側送受信機で受信することによりドア13のロックを解除するよう基本動作する。
【0077】
携帯側送受信機93は、車両側送受信機91と同一周波数の電波を送受信する送受信回路95と、この送受信回路95を制御する制御回路97及び図示しない電源回路を装備して構成される。制御回路97は、図示しないCPU及びこのCPUを制御するためのプログラムと暗証コードとが書き込まれた不揮発性メモリを有して構成され、後述する車両側送受信機91からの暗証要求コードが送受信回路95で受信されると、不揮発性メモリに書き込まれている暗証コードを送受信回路95から送信させる。なお、送受信回路95には図示しないアンテナコイルが設けられている。また、携帯側送受信機93の電源としては、ボタン電池等の一次電池を用いても良いし、車両側送受信機91からの搬送波信号により、携帯側送受信機93のアンテナコイルに誘起するエネルギーを利用するように構成してもよい。
【0078】
車両側送受信機91は、携帯側送受信機93と同一周波数の電波を送受信する送受信回路99と、この送受信回路99を制御する制御部である制御回路101とを有して構成される。なお、送受信回路99には図示しないアンテナコイルが設けられている。制御回路101にはドアハンドル装置100の圧電センサ15と、ドアロック手段103が接続される。制御回路101は、ハンドル11に操作者が接触することによる振動を圧電センサ15によって監視して、この変化値が所定値以上になるとオンする。制御回路101がオンすると、図示しないリレーボックスを介してバッテリーから車両側送受信機91へ電源が供給される。
【0079】
車両側送受信機91の制御回路101は、基本的にCPU及びこのCPUを制御するためのプログラムと暗証コードとが書き込まれた不揮発性メモリを有して構成される。具体的には、図9(b)に示すように、圧電センサ15からの検出信号を受けて車両側送受信機91から暗証要求信号を送信させる暗証信号要求手段105と、車両側送受信機91によって受信した暗証信号を解読する解読手段107と、解読した暗証信号が予めメモリ109に格納された正規信号か否かを判定する暗証信号判定手段111と、暗証信号が正規信号であった場合にドアロック手段103によるロックの解除を指示するロック解除指示手段113とを備えてなる。
【0080】
このキーレスエントリー装置300では、図10に示すように、操作者がドア13とハンドル本体23との間に手を挿入し、ドアを開けようとすると(st21)、制御回路101によってドア開動作が検出され(st22)、暗証信号要求手段105から暗証要求信号が送信される(st23)。携帯側送受信機93の制御回路97は、暗証要求信号を受信すると(st24)、暗証信号を送受信回路95から送信する(st25)。制御回路101は、暗証信号を受信すると(st26)、解読手段107によって暗証信号の解読を行った後、暗証信号判定手段111によって暗証信号の判定を行い(st27)、暗証信号がメモリ109に格納された暗証信号と一致すると(st28)、ロック解除指示手段113によってドアロック手段103へロック解除信号を送出する(st29)。一方、暗証信号が不一致であり、かつ不一致の暗証信号が所定回数以上判定されると(st30)、警報が発報される(st31)。
【0081】
この第3の実施形態に係るキーレスエントリー装置300によれば、高感度な検出が可能で、電極の表出による外乱を受けにくく、設置場所の制約条件が少ないドアハンドル装置100または200が主要な構成部材として備えられ、ハンドル11に対する手指の接触が比較的弱い場合でもドアハンドル装置100が動作され、また、接点接合式スイッチのような接点接合のストロークが存在しないため、ドア開閉動作を開始した瞬間からスイッチが動作するまでの時間差がない。従って、ドア開閉動作を開始した瞬間から、制御回路101のロック解除指示手段113がドアロック手段103へロックの解除を指示するまでの時間を、大幅に短縮でき、急峻なドアの開扉に対応した、ロック手段103の解除が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態のドアハンドル装置を表す外観斜視図
【図2】(a)同実施の形態における図1のA−A断面の内部構成図(b)同実施の形態における(a)のB−B断面の内部構成図(c)同実施の形態における(b)のC−C断面の内部構成図
【図3】同実施の形態における図2に示した圧電センサの概略構成図
【図4】同実施の形態における圧電素子材の構成図
【図5】同実施の形態におけるドアハンドル装置のブロック図
【図6】(a)同実施の形態における圧電センサに対する曲げ荷重を示す図(b)同実施の形態における圧電センサの曲げ荷重に対して出力されるセンサ出力図
【図7】本発明の第2の実施の形態のドアハンドル装置を示す断面図
【図8】同実施の形態における図7のD−D矢視図
【図9】(a)本発明の第3の実施の形態のキーレスエントリー装置の概略構成図(b)同実施の形態のキーレスエントリー装置の腰部構成図
【図10】同実施の形態における図9に示したキーレスエントリー装置の動作手順を表す流れ図
【図11】従来の車両用ドアハンドル装置の構成説明図
【符号の説明】
【0083】
13 ドア
15 圧電センサ
21 支持軸
22 切り込み
23 ハンドル本体
25 緩衝材
91 車両側送受信機
93 携帯側送受信機
101 制御回路(制御部)
105 暗証信号要求手段
111 暗証信号判定手段
113 ロック解除指示手段
702 てこ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアに組み付けられて前記ドアの開閉操作時の把持部となるハンドル本体と、
前記ハンドル本体のドア側に取り付けられた圧電センサとを有し、
前記圧電センサは、独立して変位可能な複数の部位を有する緩衝材を介してハンドル本体の前記ドアに対向する面にとりつけらたことを特徴とするドアハンドル装置。
【請求項2】
独立して変位可能な複数の部位は、緩衝材に複数の切り込みをいれて構成されたことを特徴とするドアハンドル装置。
【請求項3】
支持軸を介して一端側をドアに揺動自在に支持され、前記揺動により他端側を前記ドアの引き出し方向に移動するハンドルと、
前記ハンドルを支持する支持部に前記支持軸に対して所定の角度をもって取り付けられたてこ部に取り付けられた圧電センサとを有することを特徴とするドアハンドル装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のドアハンドル装置と、
車両側に搭載した車両側送受信機と、
操作者が携帯する携帯側送受信機と、
車両側送受信機が送信した暗証要求信号を携帯側送受信機が受信した後に携帯側送受信機が送信した暗証信号を車両側送受信機で受信することによりドアのロックを解除する制御部とを具備したキーレスエントリー装置であって、
前記制御部が、前記圧電センサからの検出信号を受けて前記車両側送受信機から暗証要求信号を送信させる暗証信号要求手段と、
前記車両側送受信機によって受信し解読された暗証信号が予め設定された正規信号か否かを判定する暗証信号判定手段と、
暗証信号が正規信号であった場合に前記ドアロック手段によるロックの解除を指示するロック解除指示手段とを備えたことを特徴とするキーレスエントリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−83522(P2006−83522A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266393(P2004−266393)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】