説明

ドライアイ障害の処置のためのサイトカイン合成インヒビターの使用

免疫が存在しない眼の表面細胞におけるサイトカイン合成の阻害は、ドライアイ障害および眼の保湿を必要とする他の障害を処置するために有用である。本発明の方法に従って、マイトジェン活性化キナーゼインヒビター;c−jun N末端キナーゼインヒビター;I−κキナーゼインヒビター;IL−1β合成インヒビター;TNFα合成インヒビター;Janusファミリーチロシンキナーゼインヒビター;シグナル伝達物質および転写インヒビターのアクチベーター;ならびにレチノイドXレセプターリガンドからなる群から選択されるサイトカイン合成インヒビターが、ドライアイまたは眼の保湿を必要とする他の障害に罹患する患者に投与される。サイトカイン合成インヒビターは、好ましくは、眼に局所的に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイ障害の処置に関する。特に、本発明は、ドライアイおよび哺乳動物において眼の保湿を必要とする他の障害の処置における特定のサイトカイン合成インヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ドライアイ(また、一般に乾性角結膜炎として知られている)は、毎年多くのアメリカ人が冒されている一般的な眼科障害である。この状態は、受精能の休止後のホルモンの変化に起因して、閉経後の女性の間で特に広がっている。ドライアイは、種々の重篤度で個体を冒し得る。穏やかな場合、患者は、瞼と眼の表面との間に留まる小さな塊によりしばしば引き起こされるような、灼熱感、乾燥感および持続的な刺激を経験し得る。重篤な場合、実質的に視力が損なわれ得る。他の疾患(例えば、シェーグレン病および瘢痕性類天疱瘡)は、ドライアイの合併症を示す。
【0003】
多数の無関係な病因から生じ得ることが明らかであるが、合併症の全ての提示が、共通の効果、つまり、眼球前方の涙液膜の崩壊を共有し、これが、露出された外側表面の脱水および上で概説されている症状の多くを生じる(Lemp,Report of the National Eye Institute/Industry Workshop on Clinical Trials in Dry Eyes,The CLAO Journal,第21巻,4号,221−231頁(1995))。
【0004】
開業医は、ドライアイの処置に対していくつかのアプローチを取ってきた。1つの一般的なアプローチは、1日の間中滴下されるいわゆる人工涙液を使用して、眼の涙液膜を補充および安定化することであった。他のアプローチとしては、涙液の代替物または内因性の涙液の産生の刺激を提供する眼の挿入物の使用が挙げられる。
【0005】
涙液置換物アプローチの例としては、緩衝化等張生理食塩水溶液、溶液をより粘性にし、従って、眼によってあまり容易に流されないようにする水溶性ポリマーを含有する水溶液の使用が挙げられる。涙液の再構成はまた、涙液膜の1つ以上の成分(例えば、リン脂質およびオイル)を提供することによって試みられる。リン脂質組成物は、ドライアイを処置するのに有用であることが示されている;例えば、McCulleyおよびShine,Tear film structure and dty eye,Contactologia,20(4)巻,145−49頁(1998);ならびにShineおよびMcCulley,Keratoconjuctivitis sicca associated with meibomian secretion polar lipid abnormality,Archives of Ophthalmology,116(7)巻,849−52頁(1998)を参照のこと。ドライアイの処置のためのリン脂質組成物の例は、米国特許第4,131,651号(Shahら)、同第4,370,325号(Packman)、同第4,409,205号(Shively)、同第4,744,980号および同第4,883,658号(Holly)、同第4,914,088号(Glonek)、同第5,075,104号(Gresselら)、同第5,278,151号(Korbら)、同第5,294,607号(Glonekら)、同第5,371,108号(Korbら)ならびに同第5,578,586号(Glonekら)に開示される。米国特許第5,174,988号(Mautoneら)は、リン脂質、噴霧剤および活性物質を含むリン脂質薬物送達システムを開示する。
【0006】
別のアプローチは、人工涙液の代わりに潤滑物質の供給を含む。例えば、米国特許第4,818,537号(Guo)は、潤滑性のリポソームベースの組成物の使用を開示し、米国特許第5,800,807号(Huら)は、ドライアイを処置するためのグリセリンおよびプロピレングリコールを含有する組成物を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらのアプローチは、ある程度成功しているが、それにもかかわらず、ドライアイの処置における問題が存在したままである。涙液置換物の使用は、一時的には有効であるが、一般に、患者の起きている時間の全体にわたって繰り返して適用する必要がある。患者が、人工涙液を、1日の間に、10〜12回適用する必要があることは珍しくない。このような仕事は、厄介かつ時間がかかるだけでなく、潜在的に非常に高価でもある。屈折矯正手術に関するドライアイの一過性の症状は、いくつかの場合において、手術後6週間〜6ヶ月間以上継続すると報告されている。
【0008】
主にドライアイに関する症状の緩和に向けられた努力は別として、ドライアイ状態の処置に関する方法および組成物もまた探求されている。例えば、米国特許第5,041,434号(Lubkin)は、閉経後の女性におけるドライアイ状態を処置するための性ステロイド(例えば、結合体化したエストロゲン)の使用を開示し;米国特許第5,290,572号(MacKeen)は、眼球前方の涙液膜産生を刺激するための微細に分割されたカルシウムイオン組成物の使用を開示し;そして米国特許第4,966,773号(Gresselら)は、眼組織正常化のための1つ以上のレチノイドの極微細粒子の使用を開示する。
【0009】
いくつかの最近の文献の報告は、ドライアイ症候群を罹患する患者が、関連する眼組織(例えば、涙腺およびマイボーム腺)において過剰の炎症の顕著な特徴を偏って示すことを示唆する。ドライアイの患者を処置するための種々の化合物(例えば、ステロイド[例えば、米国特許第5,958,912号;Marshら、Topical nonpreserved methylprednisolone therapy for keratoconjunctivitis sicca in Sjogren syndrome,Ophthalmolog,106(4):811−816(1999);Pflugfelderら、米国特許第6,153,607号]、サイトカイン放出インヒビター(Yanni,J.M.ら、WO 0003705 A1)、シクロスポリンA[Tauber,J.Adv.Exp.Med.Biol.1998,438(Lacrimal Gland,Tear Film,and Dry Eye Syndromes 2),969]および15−HETE(Yanniら、米国特許第5,696,166号))の使用が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、ドライアイおよび眼の保湿を必要とする他の障害(LASIK手術のような屈折強制手術に関するドライアイの症状を含む)の処置のための方法に関する。本発明の方法に従って、特定のサイトカイン合成インヒビターが、ドライアイまたは眼の保湿を必要とする他の障害に罹患する患者に投与される。サイトカイン合成インヒビターは、好ましくは、眼に局所的に投与される。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明に従って、免疫が存在しない眼の表面細胞(角膜および結膜の上皮細胞および間質細胞を含む)によるサイトカイン合成のインヒビターが、ドライアイを罹患する患者に投与される。本発明における使用に適した化合物は、免疫が存在しない眼の表面細胞におけるシグナル伝達カスケードの特異的なエフェクターに干渉することによって、これらの細胞において炎症促進性サイトカインの合成を阻害する。ドライアイの処置における阻害のために標的化されるサイトカイン合成のエフェクターとしては、マイトジェン活性化キナーゼ(MAPキナーゼ、p38キナーゼ)、c−jun N末端キナーゼ(JNK)およびI−κキナーゼ(IKK)が挙げられる。また、炎症促進性サイトカインIL−1β(ICE、IL−1変換酵素)およびTNFα(TACE、TNFα変換酵素)の前駆体を、活性種に変換する酵素のインヒビターか、または、サイトカインmRNAの翻訳を阻害する酵素のインヒビターが、ドライアイの治療を提供する。サイトカインは、Janusファミリーチロシンキナーゼ(JAK)ならびにシグナル伝達物質および転写のアクチベーター(STAT)の活性化によって炎症促進性サイトカインの合成をさらに促進し、それゆえ、JAKおよびSTATのインヒビターは、ドライアイの処置を提供する。アクチベータータンパク質1(AP−1)のインヒビターは、眼表面細胞におけるサイトカイン合成を抑制することが公知であり、ドライアイ治療を提供する。さらに、レチノイドXレセプター(RXR)のリガンドは、上皮細胞におけるサイトカイン合成を抑制し、本発明における使用に適している。
【0012】
上で同定されたサイトカイン合成インヒビターのクラスは公知である。MAPキナーゼ(p38)のインヒビターとしては、(5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジニル)イミダゾール)[「SB−220025」]が挙げられる。JNKのインヒビターとしては、アントラ[1,9−cd]ピラゾール−6(2H)−オン[「SP−600125」]が挙げられる。ICEのインヒビターとしては、プラルナカザン(HMR3480/VX−740)が挙げられる。TNF mRNA翻訳インヒビターとしては、(D)アルギニル−(D)ノルロイシル−(D)ノルロイシル−(D)アルギニル−(D)ノルロイシル−(D)ノルロイシル−(D)ノルロイシル−グリシン−(D)チロシン−アミド、酢酸塩[「RDP58」]が挙げられる。NFκBインヒビターとしては、2−クロロ−N−[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル]−4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド[「SP−100030」]およびトリフルサル(triflusal)が挙げられる。AP−1インヒビターとしては、SP−1 00030が挙げられる。RXRアゴニストとしては、ベキサロテン(bexarotene)が挙げられる。
【0013】
本発明において使用するために好ましいサイトカイン合成インヒビターは、JNKインヒビターおよびAP−1インヒビターである。
【0014】
本発明の方法に従って、結膜嚢または眼の前眼房への局所的な眼科投与または移植のための1種以上の特定のサイトカイン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物が、このような投与を必要とする被験体に投与される。組成物は、所望される特定の投与経路について当該分野で公知の方法に従って処方される。
【0015】
本発明に従って投与される組成物は、1種以上の特定のサイトカイン合成インヒビターの薬学的有効量を含む。本明細書中で使用される場合、「薬学的有効量」とは、ドライアイまたは眼の保湿を必要とする他の障害の徴候または症状を減少または排除するのに十分な量である。一般に、点眼剤または眼軟膏の形態で眼に局所投与されることが意図される組成物について、サイトカイン合成インヒビターの合計量は、約0.001〜1.0%(w/w)である。
【0016】
好ましくは、本発明に従って投与される組成物は、溶液、懸濁液および局所投与のための他の投薬形態として処方される。処方の容易さ、および、1〜2滴の溶液を罹患している眼に滴下することによって、このような組成物を用意に投与する患者の能力に基づいて、水溶液が一般に好ましい。しかし、組成物はまた、懸濁液、粘性ゲルもしくは半粘性ゲルまたは他の型の固形組成物もしくは半固形組成物であり得る。懸濁液は、水にやや溶けにくいサイトカイン合成インヒビターについて、好まれ得る。
【0017】
本発明に従って投与される組成物はまた、種々の他の成分を含み得、これらとしては、界面活性剤、等張剤、緩衝剤、保存剤、共溶媒(co−solvent)および粘性形成剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0018】
種々の等張剤が、組成物の張度を、好ましくは、眼科用組成物については天然の涙液の張度まで調節するために使用され得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロースおよび/またはマンニトールが、およそ生理学的張度まで組成物に添加され得る。等張剤のこのような量は、添加される特定の薬剤に依存して変化する。しかし、一般に、組成物は、最終的な組成物が、眼科的に受容可能な浸透圧(一般に、約150〜450mOsm、好ましくは250〜350mOsm)を有するようにするのに十分な量の等張剤を有する。
【0019】
適切な緩衝系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸)が、保存条件下でのpHのドリフトを避けるために、組成物に添加され得る。特定の濃度は、使用される薬剤に依存して変化する。しかし、好ましくは、緩衝剤は、pH6〜7.5の範囲内に標的pHを維持するように選択される。
【0020】
ドライアイ型疾患および障害の処置のために処方される組成物はまた、ドライアイ型状態の即時型の短期の軽減を提供するように設計された水性キャリアを含み得る。このようなキャリアは、リン脂質キャリアもしくは人工涙液キャリアまたは両方の混合物として処方され得る。本明細書中で使用される場合、「リン脂質キャリア」および「人工涙液キャリア」は、(i)眼への投与の際に、潤滑にするか、「保湿」するか、内因性の涙液の粘度に接近するか、天然の涙液の形成を助けるか、または他の方法でドライアイの症状および状態の一時的な緩和を提供する、1種以上のリン脂質(リン脂質キャリアの場合)または他の化合物を含み;(ii)安全であり;そして(iii)1種以上の特定のサイトカインインヒビターの有効量の局所投与に適切な送達ビヒクルを提供する、水性組成物をいう。人工涙液キャリアとして有用な人工涙液組成物の例としては、市販の製品(例えば、Tears Naturale(登録商標)、Tears Naturale II(登録商標)、Tears Naturale Free(登録商標)およびBion Tears(登録商標)(Alcon Laboratories,Inc.,Fort Worth,Texas))が挙げられるがこれらに限定されない。リン脂質キャリア処方物の例としては、米国特許第4,804,539号(Guoら)、同第4,883,658号(Holly)、同第4,914,088号(Glonek)、同第5,075,104号(Gresselら)、同第5,278,151号(Korbら)、同第5,294,607号(Glonekら)、同第5,371,108号(Korbら)、同第5,578,586号(Glonekら)に開示されるものが挙げられる;上記の特許は、それらが、本発明のリン脂質キャリアとして有用なリン脂質組成物を開示する程度に、本明細書中に参考として援用される。
【0021】
眼への投与の際に、潤滑にするか、「保湿」するか、内因性の涙液の粘度に接近するか、天然の涙液の形成を助けるか、または、他の方法で、ドライアイの症状および状態の一時的な緩和を提供するように設計される他の化合物は、当該分野で公知である。このような化合物は、組成物の粘度を増強し得、そして、これらとしては以下が挙げられるがこれらに限定されない:単量体ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール);多量体ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」))、デキストラン(例えば、デキストラン70);水溶性タンパク質(例えば、ゼラチン);ならびにビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン)およびカルボマー(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974P)。
【0022】
他の化合物がまた、キャリアの粘度を増加するために本発明の眼科用組成物に添加され得る。粘性増強剤の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:多糖類(例えば、ヒアルロン酸およびその塩、硫酸コンドロイチンおよびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの種々のポリマー);ビニルポリマー;ならびにアクリル酸ポリマー。一般に、リン脂質キャリアまたは人工涙液キャリアの組成物は、1〜400のセンチポアズ(「cps」)の粘度を示す。
【0023】
局所眼科的製品は、代表的に、複数投薬形態でパッケージングされる。従って、使用の間の細菌の混入を防ぐために保存剤が必要とされる。適切な保存剤としては以下が挙げられる:塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、臭化ベンゾドデシニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム−1または当業者に公知の他の薬剤。このような保存剤は代表的に、0.001〜1.0%w/vのレベルで使用される。本発明の単位用量医薬組成物は、無菌であるが、代表的に保存されない。従って、このような組成物は一般に、保存剤を含まない。
【0024】
本発明の好ましい組成物は、ドライアイまたはドライアイの症状を罹患するヒト患者への投与のために意図される。好ましくは、このような組成物は、局所投与される。一般に、上記の目的のために使用される用量は変化するが、ドライアイの状態を排除または改善する有効量である。一般に、このような組成物の1〜2滴が、1日に1回から何回も投与される。
【0025】
例示的な点眼処方物は、以下の実施例1に提供される。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
【0027】
【表1】

上記の組成物は以下の方法により調製される。ホウ酸、塩化ナトリウム、エデト酸二ナトリウムおよびポリクオタニウム−1のバッチ量を秤量し、バッチ量の90%の純水に撹拌して溶解する。NaOHおよび/またはHClを用いてpHを7.4±0.1に調節する。ストック溶液としてのサイトカイン合成インヒビターのバッチ量を測量し、添加する。純水を100%まで適量加える。混合物を5分間撹拌してホモジナイズし、次いで、滅菌フィルター膜を通して滅菌受容器に濾過する。
【0028】
(実施例2:インビトロでのヒト角膜上皮細胞からの高浸透圧誘導性サイトカイン産生の阻害)
ドライアイにおける眼の涙液膜は、異常に高浸透圧であり、眼の表面細胞を刺激する。高浸透圧性媒体でのヒト結膜上皮細胞の処置は、炎症促進性サイトカインの産生を惹起する。選択的JNKインヒビターである、アントラ[1,9−cd]ピラゾール−6(2H)−オンを、形質転換したヒト角膜上皮細胞株であるCEPI−17からの高浸透圧誘導性サイトカイン分泌の阻害について評価した。CEPI−17細胞を、完全等張ケラチノサイト増殖培地(isoKGM)中で増殖させ、ヒドロコルチゾンなしのisoKGM(isoKGM−HC)中、48ウェルプレートにプレートした。細胞がコンフルエンスに達すると、細胞をisoKGM−HC中の示された濃度の上記化合物で1時間前処理した。次いで、細胞を、上記化合物の存在下で、高浸透性KGM−HCにより6時間刺激した(さらなる80mM NaClをisoKGM−HCに添加した)。上清のアリコートを、ELISAによりIL−6、IL−8についてアッセイした。サイトカイン放出を、細胞から抽出された二本鎖DNA(dsDNA)の量により正規化した。サイトカイン産生の阻害%を、ビヒクルで処理した細胞におけるサイトカインレベルとの比較により算出した。結果を図1に示す。高浸透圧は、記載される条件下で、CEPI−17細胞からのIL−6およびIL−8の産生を有意に誘導した。デキサメタゾンは、100nMにて各サイトカインの分泌を有意に阻害した。アントラ[1,9−cd]ピラゾール−6(2H)−オン(SP−600125)は、IL−6(IC50=12.6μM)およびIL−8(IC50=3.7μM)の両方の産生を、用量依存的に阻害した。
【0029】
本発明は、特定の好ましい実施形態を参照することによって記載されてきたが、その特別または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態またはその改変形において本発明が実施され得ることが理解されるべきである。従って、上記の実施形態は、あらゆる点で例示的であり、制限的でないとみなされ、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、SP−600125およびデキサメタゾンによる、インビトロでのヒト角膜上皮細胞からの高浸透圧誘導性のサイトカイン産生の阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイおよび眼の保湿を必要とする他の障害の処置のための方法であって、該方法は、哺乳動物に、薬学的に受容可能なキャリアならびに、マイトジェン活性化キナーゼインヒビター;c−jun N末端キナーゼインヒビター;I−κキナーゼインヒビター;IL−1β合成インヒビター;TNFα合成インヒビター;Janusファミリーチロシンキナーゼインヒビター;シグナル伝達物質および転写インヒビターのアクチベーター;ならびにレチノイドXレセプターリガンドからなる群から選択される薬学的有効量のサイトカイン合成インヒビターを含む組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記サイトカイン合成インヒビターが、MAPキナーゼインヒビターおよびp38キナーゼインヒビターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイトカイン合成インヒビターが、(5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジニル)イミダゾール);アントラ[1,9−cd]ピラゾール−6(2H)−オン;プラルナカザン;(D)アルギニル−(D)ノルロイシル−(D)ノルロイシル−(D)アルギニル−(D)ノルロイシル−(D)ノルロイシル−(D)ノルロイシル−グリシン−(D)チロシン−アミド、酢酸塩;2−クロロ−N−[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル]−4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド;トリフルサル;およびベキサロテンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サイトカイン合成インヒビターは、c−jun N末端キナーゼインヒビターおよびアクチベータープロテインIインヒビターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
薬学的有効量の前記サイトカイン合成インヒビターは、0.001〜1.0%(w/w)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物は、眼に局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ドライアイならびに該眼の保湿を必要とする他の障害が、屈折矯正手術に関連するドライアイの症状である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−502183(P2006−502183A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537690(P2004−537690)
【出願日】平成15年8月26日(2003.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/026689
【国際公開番号】WO2004/026406
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】