説明

ドライ真空ポンプ装置

【課題】1台又は直列に接続された複数台の多段容積型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置で、多段容積型ドライ真空ポンプの最終段吐出口及び中段中抜吐出口から吐出される気体の騒音を小型化が可能で、低周波数領域から高周波数領域までの広い周波数帯域で効果的に低減できるサイレンサを備えたドライ真空ポンプ装置を提供する。
【解決手段】最終段吐出口、中段中抜吐出口(圧力逃し孔19)を備えた多段容積型ドライ真空ポンプ10を備えたドライ真空ポンプ装置であって、最終段吐出口18に排気部逆止弁51を接続すると共に、中段中抜吐出口(圧力逃し孔19)に過圧縮防止逆止弁(中間部逆止弁52)を接続し、逆止弁と過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路56に接続し、該排気流路56にサイレンサ53を設け、該サイレンサ53より下流側の該排気流路56を排気口に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台又は複数台の多段容積型ドライ真空ポンプと、該ドライ真空ポンプから気体(ガス)が排気される際に発生する騒音を低減させるためのサイレンサとを備えたドライ真空ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気圧から動作が可能で、クリーンな真空環境が容易に得られるドライ真空ポンプ装置が、半導体製造設備等の幅広い分野で使用されている。特に半導体デバイスの製造は、300以上の工程数からなり、そこで使用される真空ポンプの数も非常に多い。そのため真空ポンプ装置の省フットプリント化は工場内の敷地面積を有効に利用する上で非常に重要である。特に真空ポンプ装置幅に合せて複数の真空ポンプ装置を並べて設置することが多いため、幅を小さくすることが重要である。また、半導体デバイスの製造装置においても装置−真空ポンプ間の配管抵抗を小さくするために装置内部にポンプを設置する場合があり、真空ポンプの小型化は重要である。
【0003】
また、ドライ真空ポンプ装置では、真空ポンプからガスが排気される際に騒音が発生する。この騒音を低減させるためには、真空ポンプの排気側にサイレンサを設ける必要がある。このサイレンサには膨張型と共鳴型の2種類がある。膨張型のサイレンサは幅広い周波数領域での騒音の消音(低減)が可能であるが、消音できる周波数はサイレンサの長さに反比例するため、低周波数領域の騒音を消音するためには、サイレンサが長くなってしまい、ドライ真空ポンプ装置の小型化の障害となる。また、共鳴型のサイレンサは、小型化が可能で、排気する気体の流れを妨げないという特徴があるが、消音できる周波数領域は膨張型サイレンサに比べて狭いという問題がある。
【0004】
従来の真空ポンプの消音器に関する技術としては、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に開示された消音器は、真空ポンプの排気口から排出される気体を、2つ以上の大部屋と該大部屋の間を通過させる第1絞り口と最後段の大部屋を外気中に連通させる第2絞り口とを順に通過させて、その気体の持つ騒音を低減させて外気中に排出する構造の消音器であり、第1絞り口の開口量を、第1絞り口を通過するガスの圧力又はガスの通過量に合せて、広狭に調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−289167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された消音器は、種々の運転条件下で運転される真空ポンプや大型から小型までの真空ポンプの排気口から排出される気体の圧力や気体の排出量に合せて、第1絞り口の開口量を大小に調整し、真空ポンプの排気口から排気される気体の持つ騒音を、真空ポンプの動力ロスを少なく抑えながら、騒音を効率良く低減させるものである。従って、特許文献1に開示された消音器は、真空ポンプから気体が排気される際に発生する低周波数領域から高周波数領域まで幅広い周波数帯域での騒音を効果的に低減でき、且つ小型化に適した構造の消音器(サイレンサ)ではなかった。
【0007】
また、多段容積型ドライ真空ポンプでは、最終段に気体を吐出す最終段吐出口の他に、ポンプ中段で過圧縮が発生した場合、過負荷防止の回転数制御がかかり回転数が低下し、回転数の低下により排気速度が低下する。この対策として、過圧縮気体を吐出す中段中抜吐出口を設け過圧縮気体を吐出するようにしている。このように中段中抜吐出口を設けた場合、最終段吐出口から吐出される気体の騒音と中段中抜吐出口から吐出される過圧縮気体の騒音を効果的に消音させる必要があり、この要望に応えるサイレンサを備えたドライ真空ポンプの開発が要望されている。従来の中段中抜吐出口を設けたドライ真空ポンプでは、中段中抜吐出口がサイレンサ後流に設けられており、過圧縮気体の騒音を消音できなかった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、1台又は直列に接続された複数台の多段容積型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置で、多段容積型ドライ真空ポンプの最終段吐出口及び中段中抜吐出口から吐出される気体の騒音を小型化が可能で、低周波数領域から高周波数領域までの広い周波数帯域で効果的に低減できるサイレンサを備えたドライ真空ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、最終段に気体を吐出す最終段吐出口、中段に過圧縮気体を吐出す中段中抜吐出口を備えた多段容積型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置であって、多段容積型ドライ真空ポンプの最終段吐出口に逆止弁を接続すると共に、中段中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続し、逆止弁と過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路に接続し、該排気流路にサイレンサを設け、該サイレンサより下流側の該排気流路を排気口に接続したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記ドライ真空ポンプ装置において、逆止弁、過圧縮防止逆止弁、排気流路及びサイレンサは排気ユニットとして一体的に構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、上記ドライ真空ポンプ装置において、容積型ドライ真空ポンプは5段の真空ポンプであり、中段中抜吐出口は2段目に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記ドライ真空ポンプ装置において、サイレンサは共鳴型サイレンサと膨張型サイレンサを備えた複合型サイレンサであり、排気ガス流れの上流側に共鳴型サイレンサが、下流側に膨張型サイレンサが位置するように配置して設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記ドライ真空ポンプにおいて、多段容積型ドライ真空ポンプは1台又は複数台直列に接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、多段容積型ドライ真空ポンプの最終段吐出口に逆止弁を接続すると共に、中段中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続し、逆止弁と過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路に接続し、該排気流路にサイレンサを設け、該サイレンサより下流側の該排気流路を排気口に接続したので、最終段吐出口から吐出される気体の騒音及び中段中抜吐出口から吐き出される過圧縮気体の騒音を効果的に消音(低減)させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るサイレンサを装備するドライ真空ポンプ装置の縦断面構造を示す図である。
【図2】本発明に係るサイレンサを装備するドライ真空ポンプ装置の横断面構造を示す図である。
【図3】本発明に係るドライ真空ポンプ装置のフローシートを示す図である。
【図4(a)】本発明に係るドライ真空ポンプ装置が備える排気ユニットの構造を示す平面図である。
【図4(b)】本発明に係るドライ真空ポンプ装置が備える排気ユニットの構造を示す正面図である。
【図5】本発明に係るドライ真空ポンプ装置が備えるサイレンサの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。先ず本発明に係るドライ真空ポンプ装置を図1及び図2を用いて説明する。図1はルーツ型の容積型のドライ真空ポンプの全体構成を示す縦断面図であり、図2は図1のA−A断面図である。ドライ真空ポンプ10は、2本の回転軸11a、11bに一対の5段のルーツ型ロータ12a、12b、12c、12d、12eがそれぞれ固定されている。回転軸11a、11bはそれぞれ軸受20、21により回転自在に支持されている。なお、以下の説明では、一対のロータ12a、12b、12c、12d、12eを総称して適宜ロータ12、12と称する。
【0017】
ロータ12、12間、及びロータ12、12とロータケーシング14の内周面との間には微小な隙間が形成されており、ロータ12、12は、それぞれの回転軸11a、11bを中心として非接触で回転するようになっている。ロータ12a、12b、12c、12d、12eをそれぞれ収容して気体を移送するロータ室13a、13b、13c、13d、13eがそれぞれ2本の回転軸11a、11bに沿って直列に1つのロータケーシング14内に配置されている。ロータケーシング14の上面には図示しないカバー部材が取り付けられている。ロータケーシング14の上部には吸込口17が形成されており、吸込口17は初段のロータ室13aに連通している。ロータケーシング14の吐出口側面には第1のサイドケーシング26が固定されており、サイドケーシング26の側面には軸受ケーシング23が固定されている。サイドケーシング26には、最終段のロータ室13eに連通する吐出口18が形成されている。吐出口18は後に詳述するように、排気部逆止弁、中間部逆止弁、及びサイレンサを介して大気領域にガスを排出する。
【0018】
図1に示すように、軸受20の図中左側にモータ(例えばブラシレスDCモータ)22が配置されている。即ち、回転軸11a、11bの一方の端部にモータロータ22aが固定され、その周囲にモータステータ22bが配置されている。モータ22は図示しないインバータ装置等の電力供給装置により周波数可変電力の供給を受け、ソフトスタート等を含む真空ポンプの回転速度制御を行う。モータ22は、モータケーシング24の内部に配置されている。モータ22に、ブラシレスDCモータを採用すると、ロータ12、12は回転軸11a、11bを介してこのブラシレスDCモータ22により同期反転させられる。回転軸11a、11bの他方の端部には、それぞれタイミングギア29及び吐出側の軸受21が軸受ケーシング23に収容されている。軸受20、21はそれぞれ軸受ケース40、41に保持されており、これらの軸受ケース40、41はそれぞれモータケーシング24及び軸受ケーシング23に収容されている。
【0019】
各ロータ室13a〜13eにおいては、2本の回転軸11a、11bにそれぞれ固定されたロータ12、12とロータケーシング14の内周面との間に閉じ込められた気体が吸込側から吐出側に移送される。ロータケーシング14は二重ケーシングとなっており、二重ケーシングを構成する内外周囲壁の間には気体流路15a、15b、15c、15d、15eが設けられている。ロータ室13aの吐出側と次段のロータ室13bの吸込側は気体流路15aによって連通しており、ロータ室13a内のロータ12aによって圧縮された気体は気体流路15aを通ってロータ室13bの吸込側に移送される。このようにして、各段のロータ12、12によって圧縮された気体は、気体流路15a〜15eを通って吐出し側に順次移送され、吐出口18に移送される。
【0020】
一般に、初段のロータ室の容積は設計する真空ポンプの排気速度により決定される。このため、排気速度の大きな真空ポンプを設計する場合は、初段のロータ室の容積を大きくすることが必要となる。これに対し、最終段のロータ室の容積は、最終段のロータ室での前後の圧力差によって発熱(圧縮熱)、及びその圧力差に抗してロータを回転させるモータの消費電力を抑えるために小さくする必要がある。しかしながら、最終段のロータ室の容積を小さくすると、スムーズに排気できなくなる。このように、容積比と発熱とはトレードオフの関係にあるため、どの点を重視して真空ポンプを設計するかによって、容積比(圧縮比)を大きくするか小さくするかを決定することになる。
【0021】
モータ22に、ブラシレスDCモータを採用すると、モータ22の回転速度制御を行うことで、最終段のロータ室13eの容積を小さくしたまま排気速度を大きくすることができ、且つ発熱及びモータ消費電力を抑えることができる。つまり、通常のモータを使用した従来の真空ポンプに比べて、同じ排気速度を達成しつつ容積比(圧縮比)を大きくできると共に、発熱量を抑えることができる。また、2本の回転軸11a、11bを回転駆動する駆動源として上記のようにブラシレスDCモータ22を用いることで、モータとしての効率が良いだけでなく大きな負荷変動に対応することができ、更に起動時における圧縮動力の増大にも対応することができる。
【0022】
ドライ真空ポンプの吐出口18の近傍には軸受21が配置され、吸込側の軸受20と共に回転軸11a、11bを回転自在に支持している。軸受21は軸受ケーシング23内に収容され、軸受ケーシング23とロータケーシング14との間にはサイドケーシング26が配置されている。軸受ケーシング23とサイドケーシング26との間には図示しないOリングシール(シール部)が配置され、これにより軸受ケーシング23とサイドケーシング26との間の微小な隙間が封止されている。また、サイドケーシング26とロータケーシング14との間にも図示しないOリングシール(シール部)が配置され、これによりサイドケーシング26とロータケーシング14との間の微小な隙間が封止されている。軸受20はモータケーシング24内に収容されており、モータケーシング24とロータケーシング14との間には第2のサイドケーシング30が配置されている。サイドケーシング30とロータケーシング14との間には図示しないOリングシール(シール部)が配置されている。更に、サイドケーシング30とモータケーシング24との間には図示しないOリングシール(シール部)が配置されている。
【0023】
上記構成のドライ真空ポンプにおいて、モータ22を起動し、回転軸11a、11bを回転させると、ロータ12a、12b、12c、12d、12eが回転し、吸込口17から吸込まれたガスはロータ室13a、13b、13c、13d、13e内のロータ12a、12b、12c、12d、12eで圧縮され、気体流路15a〜15eを通って吐出し側に順次移送され、吐出口18から大気圧領域に排出される。該吐出口18には排気ユニット50が接続され、該吐出口18から排出されたガスは該排気ユニット50を通して排出される。排気ユニット50には、排気部逆止弁(最終段逆止弁)51と、2段目出口中抜きの中間部逆止弁52と、サイレンサ53が設けられている。中間部逆止弁52はドライ真空ポンプ内のガスが外気圧以上に圧縮された気体を外気中に逃がして、本ドライ真空ポンプの動力ロスを少なく抑えるために設けた圧力逃し孔(中段中抜吐出口)19(図3参照)に設けられた過圧縮防止逆止弁である。
【0024】
図3はドライ真空ポンプ10と排気ユニット50のフローシートを示す図である。図示するドライ真空ポンプ10を運転すると吸込口17に吸込まれたガスは気体流路15a〜15eを通って吐出口18から排気ユニット50に流入し、排気部逆止弁(最終段逆止弁)51及びサイレンサ53を通って外部に排出される。また、ドライ真空ポンプ10の起動時等内部が過圧縮になった場合、気体流路15bに連通する圧力逃し孔19から排気ユニット50に流入したガスは中間部逆止弁(過圧縮防止逆止弁)52を通ってサイレンサ53へ送られる。排気部逆止弁51、中間部逆止弁52、及びサイレンサ53は後に詳述するように、排気ユニット50内に一体的に配置され、ドライ真空ポンプ10に排気ユニット50を装着することにより、排気部逆止弁51、中間部逆止弁52、及びサイレンサ53はドライ真空ポンプ10に装着できるようになっている。
【0025】
図4は排気ユニット50の構成を示す図で、図4(a)は平面図、図4(b)正面図である。排気ユニット50はバルブ部50aとサイレンサ部50bとからなる。バルブ部50aには排気部逆止弁51及び中間部逆止弁52が配置されている。図3に示すように、排気部逆止弁51の入口部は気体流路54を通って吐出口18に連通するようなっており、中間部逆止弁52の入口部は気体流路55を通って圧力逃し孔19に連通するようになっている。また、排気部逆止弁51及び中間部逆止弁52の吐出口は排気流路56に連通するようになっている。そしてサイレンサ53の下流側の排気流路56は装置の排気口に接続され、大気領域に開放される。
【0026】
図5はサイレンサ部50b内のサイレンサ53の構成を示す図である。図5(a)は本サイレンサの側断面構成を示す図で、図5(b)はA−A断面図である。本サイレンサ53は共鳴型サイレンサ53−1と膨張型サイレンサ53−2を一体的に形成された複合型サイレンサである。共鳴型サイレンサ53−1、及び膨張型サイレンサ53−2は排気ユニット50の気体流路(図示せず)に連通する気体流路61に連通して設けられ、共鳴型サイレンサ53−1を上流側に、膨張型サイレンサ53−2を下流側に配置している。
【0027】
本サイレンサ53は厚板状のサイレンサケーシング60と蓋体69を備えている。サイレンサケーシングの片側面には排気流路56に連通する一部が開口した溝状の気体流路61、共鳴型サイレンサ53−1を構成する一部が開口した凹状の共鳴室62、膨張型サイレンサ53−2を構成する一部が開口した凹状の第1膨張室63、及び第2膨張室64が形成されている。更に、共鳴室62と気体流路61を連通する一部が開口した溝状の共鳴口65、第1膨張室63と気体流路61を連通する一部が開口した溝状の第1絞り口66、第1膨張室63と第2膨張室64を連通する一部が開口した第2絞り口67、第2膨張室64と外部を連通する第3絞り口68が設けられている。
【0028】
上記サイレンサケーシング60の気体流路61、共鳴室62、第1膨張室63、及び第2膨張室64等が形成されている面を蓋体69で覆うことにより、気体流路61、共鳴室62、第1膨張室63、及び第2膨張室64は一部開口部が閉塞された空間となる。一部開口が閉塞された共鳴室62及び第1膨張室63はそれぞれ共鳴口65を通して気体流路61に連通し、一部開口が閉塞された第1膨張室63と第2膨張室64は第2絞り口67で互いに連通し、更に該第2膨張室64は第3絞り口68を通して外部に連通する。
【0029】
本サイレンサ53は上記のように厚板状のサイレンサケーシング60に共鳴型サイレンサ53−1、及び膨張型サイレンサ53−2を一体的に形成し、その開口部を蓋体69で閉塞した構成の複合型サイレンサである。また、サイレンサ53が厚板状のサイレンサケーシング60と蓋体69で構成されるので、平板状で小型化されたサイレンサとなる。排気ユニット50の気体流路から、気体流路61に流入したガス流の有する騒音は、共鳴口65及び共鳴室62で構成される共鳴型サイレンサ53−1の固有周波数に共鳴して消音(低減)される。該共鳴型サイレンサ53−1を通ったガス流は第1絞り口66を通って第1膨張室63に流入することにより該第1膨張室で膨張して消音(低減)され、続いて、第2絞り口67を通って第2膨張室64に流入することにより該第2膨張室64内で膨張して消音(低減)され、更に第3絞り口68を通して外気に流出し膨張して消音(低減)される。
【0030】
共鳴型サイレンサ53−1は小型化が可能で、気体流路61を流れるガスの流を妨げないという特徴があるが、消音できる騒音の周波数領域は膨張型に比べて狭い。これに対して、膨張型53−2は幅広い周波数領域で騒音の消音が可能であるが、消音できる周波数はサイレンサの長さに反比例するため、低周波領域を消音する場合、サイレンサが長くなってしまう。そこで小型化できる共鳴型サイレンサ53−1でガス流の低周波領域の騒音を消音させ、残る高周波領域の騒音をサイレンサの長さが消音周波数反比例する膨張型サイレンサ53−2で消音させることにより、共鳴型サイレンサ53−1と膨張型サイレンサ53−2の両者が小型となり、サイレンサ53の全体を小型化できると共に、騒音の幅広い周波数帯域での消音(低減)が可能になる。
【0031】
また、共鳴型サイレンサ53−1を気体流路61の上流側に設けるので、共鳴型サイレンサ53−1は気体流路61に流入したガスの流を妨げない特徴を有しているから、このような複合型サイレンサを排気ユニット50の気体流路のガス排出側に設けても、排気ユニット50のガス排出機能を低減し極力抑えることが可能となる。
【0032】
排気ユニット50のバルブ部50aとサイレンサ部50bは一体に構成され、ドライ真空ポンプ装置を構成する1つの部品として構成されるようになっている。従って、排気部逆止弁51をドライ真空ポンプ10の吐出口18に接続するための配管等部品、中間部逆止弁52を圧力逃し孔19に接続するための配管等部品、更にはサイレンサ部50bの気体流路61とバルブ部50aの排気流路56に接続するための配管等部品が不必要となり、ドライ真空ポンプ10の排気部を構成するための部品点数が少なくなり、コストも安価となる。
【0033】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記例では1台のルーツ型の容積型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置を例に説明したが、例えばこのような容積型ドライ真空ポンプを上流側にブースタポンプとして、下流側にメインポンプとして配置するように、複数台のドライ真空ポンプを備えた構成のドライ真空ポンプ装置でもよいことは当然である。また、ルーツ型の容積型真空ポンプに限らず他のドライ真空ポンプでもよい。
【0034】
また、上記実施形態例では、共鳴型サイレンサと膨張型サイレンサとの複合型サイレンサを用いる例を説明したが、サイレンサはこれに限定されるものではなく、要は中段中抜吐出口から吐き出される過圧縮気体の騒音、及び最終段吐出口から吐き出される気体の騒音を効果的に消音できるサイレンサであればよい。また、中段中抜吐出口と最終段の吐出口とで別々にサイレンサを設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、多段容積型ドライ真空ポンプ10の最終段吐出口に逆止弁を接続すると共に、中段中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続し、逆止弁と過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路に接続し、該排気流路にサイレンサを設け、該サイレンサより下流側の該排気流路を排気口に接続したので、最終段吐出口から吐出される気体の騒音及び中段中抜吐出口から吐出される過圧縮気体の騒音を効果的に消音(低減)させることが可能なドライ真空ポンプ装置として利用できる。
【符号の説明】
【0036】
10 ドライ真空ポンプ
11a 回転軸
11b 回転軸
12 ロータ
12a〜12e ロータ
13a〜13e ロータ室
14 ロータケーシング
15a〜15e 気体流路
17 吸込口
18 吐出口
19 圧力逃し孔
20 軸受
21 軸受
22 モータ
22a モータロータ
22b モータステータ
23 軸受ケーシング
24 モータケーシング
26 サイドケーシング
29 タイミングギア
30 サイドケーシング
40 軸受ケース
41 軸受ケース
50 排気ユニット
51 排気部逆止弁
52 中間部逆止弁
53 サイレンサ
53−1 共鳴型サイレンサ
53−2 膨張型サイレンサ
54 気体流路
55 気体流路
56 排気流路
60 サイレンサケーシング
61 気体流路
62 共鳴室
63 第1膨張室
64 第2膨張室
65 共鳴口
66 第1絞り口
67 第2絞り口
68 第3絞り口
69 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終段に気体を吐出す最終段吐出口、中段に過圧縮気体を吐出す中段中抜吐出口を備えた多段容積型ドライ真空ポンプを備えたドライ真空ポンプ装置であって、
前記多段容積型ドライ真空ポンプの最終段吐出口に逆止弁を接続すると共に、前記中段中抜吐出口に過圧縮防止逆止弁を接続し、前記逆止弁と前記過圧縮防止逆止弁の吐出口を排気流路に接続し、該排気流路にサイレンサを設け、該サイレンサより下流側の該排気流路を排気口に接続したことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドライ真空ポンプ装置において、
前記逆止弁、前記過圧縮防止逆止弁、前記排気流路、及びサイレンサは排気ユニットとして一体的に構成されていることを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドライ真空ポンプ装置において、
容積型ドライ真空ポンプは5段の真空ポンプであり、前記中段中抜吐出口は2段目に設けられていることを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドライ真空ポンプ装置において、
前記サイレンサは共鳴型サイレンサと膨張型サイレンサを備えた複合型サイレンサであり、排気ガス流れの上流側に共鳴型サイレンサが、下流側に膨張型サイレンサが位置するように配置して設けたことを特徴とするドライ真空ポンプ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のドライ真空ポンプ装置において、
前記多段容積型ドライ真空ポンプは1台又は複数台直列に接続していることを特徴とするドライ真空ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226366(P2011−226366A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96541(P2010−96541)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】