説明

ドラ焼きの製造装置及び製造方法

【課題】 生地を一定の厚みに延ばし、生地滴下による焼きむらをなくすとともに、生地が焼成板上の生地の表面上に滴下する液だれの防止が可能などら焼き製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、環状に連結された焼成板から構成され、可食生地を載せて移動する搬送装置と、可食生地充填槽を有し、焼成板上に生地を供給する可食生地供給装置と、焼成板の上下に設けられ可食生地の上下面を焼成する加熱装置と、焼成された可食生地を冷却後、中身を詰めてドラ焼きにするドラ焼き処理装置と、を含んで構成され、可食生地供給装置は、可食生地が可食生地充填槽から焼成板に供給される可食生地供給部と、可食生地供給部の下端に装着され焼成板との間の可食生地を薄く厚みを均一に延ばす回転可能な延ばし羽根と、可食生地を薄く引き延ばした後の引き延ばし羽根を上下動させる液垂れ防止機構と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドラ焼きの製造装置及び方法に係り、詳しくは、表裏両面を焼いた2枚のドラ焼き皮6をあんなどの中味をはさんで重ね合わせ、しかも、この皮6の周縁部に相当する耳部を押圧して密着したドラ焼きを連続的に製造できるドラ焼きの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラ焼きは和菓子の王様と云われ、種々のドラ焼きが製造されている。
ドラ焼きは、元来、手作業により、小麦を主成分とする生地を焼成板上に円盤状に滴下して、焼成板に接触する表面を焼いてから裏返して裏面を裏焼きし、その2枚の皮6の間に、あんなどの中味をはさんで作られている。
しかし、このドラ焼きは、中味をはさんだ皮6の間から細菌などが入り易く、これによって、日持ちがよくないと云われる。しかし、このドラ焼きは、2枚の皮6の表裏面が焼かれているため、非常にソフトで食感が良く、手造りであることもあって、おいしいと云われ、和菓子の王様とも云われている。
【0003】
このドラ焼きを、手作業に依存せず、しかも、重ね合わせた皮6の周縁部を互いに密着させるように、連続的に製造する方法が、例えば、特公昭60−1846号公報に開示されている。
この方法は、連続的に走行する無終端焼成板の上で、まず、一定量の生地の焼成板に接触する下面を焼くとともに、生地の上面として露出する裏面を乾燥し、その後、生地を反転して生地の裏面を焼成板に接触させて焼成板の余熱で焼く方法である。このため、裏面では、その中央部分だけ焼かれ、外周部は所定幅の環状の非焼成部として残る。
【0004】
この方法では、2枚の皮6を合わせると、裏面の外周部には非焼成部が環状に残っているため、重ね合わせ後に外周部を押圧すると、これら非焼成部が互いに接合し、皮6の合わせ面から雑菌などが侵入することがなく、日持ちが比較的良好であると云われている。
また、2枚の皮6は焼成板上でその両面が焼かれているため、食感もソフトで手焼きと同じ食感である。上記方法では、このようなものが大量かつ安価に得られる。
【0005】
しかし、この連続製造法をとると、連続的に走行する焼成板の出口部で焼き上った皮6を焼成板から剥離するのに手間がかかり、剥離するときに皮6が破損することが多い。このため、得られる皮6の品質が損なわれるほか、次の作業との連続性の点で問題が起きる。
また、剥離のときに、焼成板と焼き上った皮6との間に剥離板などを入れて剥離すると、剥離板によって、焼成板の表面が傷つけられるほか、焼き上った皮6そのものが破損し、品質が損なわれる。
さらに、連続的に走行する焼成板の往路側ではガス又は電気によって加熱されているが、入口部で生地が滴下されると、大幅に温度が低下する。このため、生地の加熱が不均一になり、焼き上った皮6のソフトさが失なわれる。
【0006】
その他、焼成板上で、皮6の両面を焼くため、皮6の片面を焼いたのちには、例えば剥離板によって皮6を持ち上げて反転させてから、皮6の他面を焼くことになる。この剥離板による皮6の持ち上げ、ならびに反転のとき、皮6の他面は、未焼成であるため、持ち上げ後の反転時に生の生地が流れ出し、反転そのものにも問題がある。また、先に提案された連続製造法では表裏面を焼き上げて皮6の組織が十分に形成できないうちに中味が充填されるため、中味が皮6の組織の中に沈み、食感が失なわれる問題もあった。
【0007】
特許第3425264号は、上記問題を解決するために本発明者によりなされたものであり、以下の方法によりドラ焼きを製造するものである。
即ち、無終端状に連結された焼成板が入口部と出口部で巻回されて走行する焼成板の往路において、先ず、この焼成板上で生地を焼いてドラ焼き皮6用生地の表面を形成する。次に、ドラ焼き皮6用生地を反転裏返した裏面をその焼き状態がそれほど進行させない状態にとどめて焼成板上で焼きながら、焼成板を出口部の巻回部分に到達させる。この巻回部分で焼成板が傾斜しながら走行方向を往路から復路に変えるときに焼成板とその上で焼かれたドラ焼き皮6用生地との間に気体を噴射してこのドラ焼き皮6用生地を剥離する。その後、この剥離された2枚のドラ焼き皮6用生地の間に中味を入れて重ね合わせ、この2枚のドラ焼き皮6用生地の周縁を押圧密着させてドラ焼きを製造する。
【0008】
上記方法によると、無終端状に連結されて走行する焼成板の往路の焼成によって裏面の焼きをそれほど進行させることなく留められている皮6を形成しても、この皮6は焼成板の出口部において円滑に剥離することができる。さらに、剥離された皮6は、剥離後に2枚の皮6が常温まで冷却されて組織が形成され、中味が充填されるため、食感にすぐれるドラ焼きが得られる。
【0009】
しかし、この方法では、焼成板を走行させながら焼成板上に生地を滴下し、これを引き延ばす方法を採っているが、焼成板が加熱されているため滴下の間に生地の上に焼きむらが発生し、これが製品表面に模様となって現われるという問題があった。
また、生地を滴下後引き延ばし羽根を引き上げる際、羽根に生地が付着するため、付着した生地が焼成板上の生地の表面上に滴下するまで待つ必要があるため能率低下を来たす問題があった。
【特許文献1】特公昭60−1846号公報
【特許文献2】特許第3425264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生地を一定の厚みに延ばし、生地滴下による焼きむらをなくすとともに、生地が焼成板上の生地の表面上に滴下する液だれの防止が可能などら焼き製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、環状に連結された焼成板から構成され、可食生地を載せて移動する搬送装置と、可食生地充填槽を有し、前記焼成板上に生地を供給する可食生地供給装置と、前記焼成板の上下に設けられ前記可食生地の上下面を焼成する加熱装置と、焼成された可食生地を冷却後、中身を詰めてドラ焼きにするドラ焼き処理装置と、を含んで構成され、前記可食生地供給装置は、前記可食生地が前記可食生地充填槽から前記焼成板に供給される可食生地供給部と、前記可食生地供給部の下端に装着され前記焼成板との間の前記可食生地を薄く厚みを均一に延ばす回転可能な延ばし羽根と、前記可食生地を薄く引き延ばした後の前記引き延ばし羽根を上下動させる液垂れ防止機構と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
前記搬送装置は、2本のリンクチェーンに取り付けられ上部の往路側と下部の復路側を形成する焼成板と、前記2本のリンクチェーンを駆動し、前記連結された焼成板を連続的に移動させる駆動装置と、からなり、前記加熱装置は、前記環状に連結されて移動する焼成板の往路側で前記焼成板を下部から加熱する加熱装置と、前記焼成板の往路側で前記焼成板の上部を加熱する生地上部加熱装置と、からなることを特徴とする。
【0013】
前記ドラ焼き処理装置は、前記焼成板の往路で下部を加熱された前記可食生地を反転させる生地反転手段と、前記焼成板の往路終端近くで前記可食生地を焼成板から剥離する剥離手段と、前記焼成板から剥離された前記可食生地を受け取るコンベヤと、前記焼成板から剥離された前記可食生地を冷却する冷却手段と、冷却された前記可食生地に中味を充填する中味充填手段と、中味を充填された前記可食生地に別の前記冷却された可食生地を重ね合わせる可食生地重ね手段と、中味が充填された前記可食生地の耳締めを行なう耳締め手段と、からなることを特徴とする。
【0014】
前記可食生地供給装置は、前記焼成板の進行方向に直角な方向に、1つまたは複数個設けられ、前記延ばし羽根は、耐食性金属、または樹脂製で、先端部に傾斜部が設けられており、前記可食生地供給装置の下端部には、引き延ばされる可食生地の厚さを決めるためのストッパーピンが設けられていることを特徴とする。
【0015】
前記可食生地供給装置は、焼成板が移動する間は前記引き延ばし羽根を上昇させ、焼成板が停止している間は前記引き延ばし羽根を下降させるアクチュエータと、引き延ばし羽根を回転させる電動機を装着していることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、環状に連結されて移動する焼成板上に充填槽から可食生地供給部を通して可食生地が供給される可食生地供給段階と、前記可食生地が前記焼成板上に供給開始されると同時に、前記可食生地供給部の下端に装着された延ばし羽根を回転させて、前記焼成板との間の前記可食生地を薄く厚みを均一に延ばす生地引き延ばし段階と、前記生地引き延ばし段階終了後、前記可食生地供給装置に取り付けられた液垂れ防止機構により前記延ばし羽根を前記生地から離して引き上げた後、直ちに再度前記延ばし羽根を下げて薄く引き延ばされた前記可食生地に接触させ、前記延ばし羽根の液垂れを焼成板上の前記可食生地と一体化させる液垂れ防止段階と、前記焼成板の上下に設けられ前記可食生地の上下面を焼成する加熱装置により、前記可食生地の上下面を焼成する加熱段階と、焼成された可食生地をドラ焼き処理装置により
冷却後、中身を詰めてドラ焼きにするドラ焼き処理段階と、からなることを特徴とする。
【0017】
前記ドラ焼き処理段階は、前記焼成板が可食生地供給装置から加熱装置に向かう往路において、前記焼成板で下部を加熱された前記可食生地を反転させる生地反転工程と、前記焼成板の往路終端近くで前記可食生地を焼成板から剥離する剥離工程と、前記焼成板から剥離された前記可食生地をコンベヤ上に受け取り、冷却する冷却工程と、前記冷却された前記可食生地に中味を充填する中味充填工程と、中味を充填された前記可食生地に別の前記冷却された可食生地を重ね合わせる可食生地重ね工程と、中味が充填された前記可食生地の耳締めを行なう耳締め工程と、からなることを特徴とする。
【0018】
前記焼成板は、その復路において加熱しておき、前記可食生地は、焼成板の往路において、この焼成板上で生地を焼いて可食生地の表面を形成してから、前記可食生地を反転裏返した裏面をその焼き状態がそれほど進行させない状態にとどめることを特徴とする。
【0019】
前記可食生地は、前記可食生地を反転裏返した裏面をその焼き状態がそれほど進行させない状態にとどめた後、往路端末の焼成板反転部で、前記焼成板が傾斜しながら走行方向を往路から復路に変えるときに前記焼成板とその上で焼かれた可食生地との間に気体を噴射してこのドラ焼き皮6用生地を剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、生地を一定の厚みに延ばすことができ、生地を滴下しながら厚みを均一に延ばすことで生地滴下による焼きむらをなくすることが出来るとともに、生地が焼成板上の生地の表面上に滴下する液だれの防止が可能となり、安定した品質が確保できる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面により本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1は本発明のドラ焼きの製造装置の全体配置図、図2は本発明の剥離装置の詳細図、図3は可食生地供給装置の詳細図、図4は延ばし羽根の詳細図である。
ドラ焼きの製造装置1は、図1に示す通り、搬送装置2と、可食生地供給装置3と、加熱装置4と、ドラ焼き処理装置5からなり、可食生地供給装置3は、図3に示す通り、中心部を通過して可食生地が可食生地充填槽から前記焼成板に供給される可食生地供給部21と、可食生地供給部21の下端に装着され焼成板との間の可食生地を薄く厚みを均一に延ばす回転可能な延ばし羽根22と、可食生地を薄く引き延ばした後、引き延ばし羽根を上下動させる液垂れ防止機構(図示なし)と、を備えている。
【0023】
搬送装置は、2本のリンクチェーンに取り付けられ上部の往路側と下部の復路側を形成する焼成板と、2本のリンクチェーンを駆動し、連結された焼成板を連続的に移動させる駆動装置と、からなる。
加熱装置は、環状に連結されて移動する焼成板の往路側で焼成板を下部から加熱する加熱装置と、焼成板の往路側で焼成板の上部を加熱する生地上部加熱装置と、からなる。
【0024】
ドラ焼き処理装置は、焼成板の往路で下部を加熱された可食生地を反転させる生地反転手段と、焼成板の往路終端近くで可食生地を焼成板から剥離する剥離手段と、焼成板から剥離された可食生地を受け取るコンベヤと、焼成板から剥離された可食生地を冷却する冷却手段と、冷却された可食生地に中味を充填する中味充填手段と、中味を充填された可食生地に別の冷却された可食生地を重ね合わせる可食生地重ね手段と、中味が充填された可食生地の耳締めを行なう耳締め手段と、からなる。
【0025】
可食生地供給装置は、焼成板の進行方向に直角な方向に、1つまたは複数個設けられ、延ばし羽根は、耐腐食性金属、または樹脂製で、先端部に傾斜部が設けられ、可食生地供給装置の下端部には、引き延ばされる可食生地の厚さを決めるためのストッパーピンが設けられている。
本発明の可食生地供給装置では、可食生地供給部の下部に延ばし羽根が設けられ、生地を滴下しながら、滴下する場所と同じ場所で生地を厚みを均一に延ばすようになっているため、生地滴下による焼きむらは発生しない。
可食生地供給装置は、焼成板が移動する間は引き延ばし羽根を上昇させ、焼成板が停止している間は引き延ばし羽根を下降させるアクチュエータと、引き延ばし羽根を回転させる電動機を装着している。
【0026】
本実施例の焼成板は、板厚8mm、幅490mm、長さ147mmの銅板で、この焼成板を幅500mmのコンベアベルトの長手方向に27枚配置している。
搬送装置は、直径150mmφ〜200mmφの2つのスプロケットにリンクチェーンを巻き付けて上部の往路側と下部の復路側を形成し、2本のリンクチェーンは、減速ギヤを介しモーターで駆動される。
加熱装置のうち、焼成板の往路側で焼成板を下部から加熱する加熱装置は、最大燃焼料が35,800Kcal/hのガス加熱方式である。焼成板の往路側で焼成板の上部を加熱する生地上部加熱装置もガス加熱方式であるが、電気ヒーター方式を用いてもよい。
【0027】
可食生地供給装置は、焼成板の進行方向と直角な方向に、4個設置されており、可食生地供給装置の可食生地供給部は、内径30mmで供給管の中心部を通過して可食生地が可食生地充填槽から焼成板に供給される。
図3に示す通り、可食生地供給部21の下端には、20mm高さの支持棒23を介して延ばし羽根22が装着されている。延ばし羽根22は、厚さが1mm、高さが5mm、長さが55mmのステンレス製で、先端部は、図4に示す通りテーパーがついたシャープエッジになっている。
可食生地供給装置の下端部には、引き延ばされる可食生地の厚さを決めるためのストッパーピン(図示なし)がねじ留めされており、ねじの高さを調節することで、引き延ばされる可食生地の厚さを決めることができる。
【0028】
次に、ドラ焼き処理装置によるドラ焼き方法について説明する。
本実施例による焼成板上の可食生地の配列ピッチは、110mmであり、進行方向に直角な方向に4個ずつ焼成される。
先ず、可食生地供給段階では、環状に連結されて移動する焼成板上に充填槽から可食生地供給部を通して可食生地が供給される。
可食生地が焼成板上に供給開始されると同時に、可食生地供給部の下端に装着された延ばし羽根を回転させて、焼成板との間の可食生地が薄く引き延ばされる生地引き延ばし段階が実行される。
【0029】
生地引き延ばし段階終了後、可食生地供給装置に取り付けられた液垂れ防止機構により延ばし羽根を生地から離して引き上げた後、直ちに再度延ばし羽根を下げて薄く引き延ばされた可食生地に接触させ、延ばし羽根の液垂れを焼成板上の前記可食生地と一体化させる液垂れ防止段階が実行される。
可食生地の厚さは、1〜15mmの間で変更可能であるが、本実施例の場合は3.5mmである。
実施例では、生地の充填時間は、液だれ防止段階を含め、3〜8秒である。
【0030】
液垂れ防止段階を終えた焼成板上の可食生地は、その下面をガスで加熱された焼成板で加熱される。その後、上面は焼成板上方のヒーターで焼き状態がそれほど進行させない状態に加熱される。
可食生地は焼成板11に接触する裏面は焼かれていても、表面は未焼成である。このため、剥離板を旋回させるときに、表面の生地が垂れ下がり、製品の品質が損なわれる。
【0031】
これを防止するため、反転装置12に入る前に、加熱装置4により反転に先立って、表面をある程度加熱して未焼成の表面をある程度硬化させる。
しかし、このように加熱装置4で加熱硬化させても、剥離板を使用するときには表面の生地はどうしても垂れ下がる。このためには、剥離板の旋回速度は一定にすることなく、生地を持ち上げるときの旋回速度に比べて生地を反転させるときの旋回速度を大きくする。
【0032】
可食生地の裏面が焼かれて皮13の表面が形成されたのち、図1に示すように出口近くに設けられた反転装置12に達すると、反転装置12内の剥離板が一端で旋回して生地が持ち上げられる。その後、剥離板は更に旋回し、これによって生地は反転されて裏返しになり、未焼成の皮13の裏面が焼かれ、焼成板11の出口部から排出される。
反転装置12としては、生地の周囲から掴む方式や、焼成板と生地との間に、一端で旋回自在の剥離板を差し込んで、剥離板を旋回させて生地を持ち上げ反転する方式がある。
【0033】
可食生地は、焼成板11の往路終端近くで可食生地は焼成板11から剥離される。
焼成板11の往路で、反転させて皮13の裏面を焼成するときには、焼成板と接触する皮13の裏面の焼きはそれほど進行させないようにすることが必要である。
これは、2枚の皮6の間にあんなどの中味を挟んだ後、皮13の外周部を押圧して締付ける必要があるが、焼きが進んでいると、皮13の外周部が接触しても接着しないことが多いことによる。
しかし、このような焼き状態では、剥離板で皮13を剥離するときに、円滑に剥離できない。
このため、図2に示す通り、焼成板11が出口部で反転して往路から復路に方向を変える時の焼成板11の傾斜を利用し、図2に示すように、傾斜した焼成板11と皮13との間に気体噴射装置71によって気体7を噴射すると、気体によって皮13が容易に剥離できる。この気体を選定することで、殺菌の目的も達成できる。
【0034】
焼成板11から剥離された可食生地は、コンベヤ上に載せられて、冷却される。
冷却ゾ−ン10で冷却すると、中味充填に先立って焼き上った皮13は常温まで冷却されているため、皮13の組織が完全に形成され、ある程度の強度をもつことになる。
従って、中味を充填するときに、皮13は中味の荷重に十分に耐えることができ、中味によって皮13が加圧されて沈むことがなく、食感の優れた皮13のドラ焼きができる。
【0035】
また、この冷却によって皮13の周辺部に残した不完全焼成部もある程度強くなり、中味を入れたのちに、周辺部を加圧してもそれによって皮13の周辺部の食感が劣化することがない。
冷却された可食生地は中味を充填され、中味を充填された可食生地には、別の冷却された可食生地を重ね合わせ、耳締めを行ってドラ焼きが出来上がる。
本実施例によるドラ焼きの成形可能範囲は、外径が80〜100mmφであり、ドラ焼き1個当たりの成形時間の1例は、反転前が約70秒、反転後が約20秒で、合計90秒で、製造能力は、1時間当たり約850個である。
【0036】
本発明によると、焼成板の往路の焼成によって裏面の焼きをそれほど進行させない皮13でも焼成板の出口部において円滑に剥離することができる。さらに、剥離された皮13は、常温まで冷却されてから、中味が充填されるため、食感にすぐれるドラ焼きが得られる。
また、生地滴下による焼きむらがなくなるため、表面外観が優れ、焼成生地が均一であるため優れた食感が得られる。さらに、生地が焼成板上の生地の表面上に滴下する液だれの防止が可能となるため、生地供給時間が短縮でき生産能率向上の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるドラ焼き製造装置の全体配置図である。
【図2】本発明による焼成後の皮6の剥離法を説明する説明図である。
【図3】本発明による可食生地供給装置の断面図である。
【図4】本発明による延ばし羽根の詳細図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ドラ焼き製造装置
2 搬送装置
3 可食生地供給装置
4 加熱装置
5 ドラ焼き処理装置
7 気体
8 中味充填装置
9 耳締め装置
10 冷却ゾ−ン
11 焼成板
12 反転装置
13 皮
21 可食生地供給部
22 延ばし羽根
23 支持棒
71 気体噴射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に連結された焼成板から構成され、可食生地を載せて移動する搬送装置と、
可食生地充填槽を有し、前記焼成板上に生地を供給する可食生地供給装置と、
前記焼成板の上下に設けられ前記可食生地の上下面を焼成する加熱装置と、
焼成された可食生地を冷却後、中身を詰めてドラ焼きにするドラ焼き処理装置と、
を含んで構成され、
前記可食生地供給装置は、前記可食生地が前記可食生地充填槽から前記焼成板に供給される可食生地供給部と、前記可食生地供給部の下端に装着され前記焼成板との間の前記可食生地を薄く厚みを均一に延ばす回転可能な延ばし羽根と、前記可食生地を薄く引き延ばした後の前記引き延ばし羽根を上下動させる液垂れ防止機構と、を備えていることを特徴とするドラ焼きの製造装置。
【請求項2】
前記搬送装置は、2本のリンクチェーンに取り付けられ上部の往路側と下部の復路側を形成する焼成板と、前記2本のリンクチェーンを駆動し、前記連結された焼成板を連続的に移動させる駆動装置と、からなることを特徴とする請求項1に記載のドラ焼きの製造装置。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記環状に連結されて移動する焼成板の往路側で前記焼成板を下部から加熱する加熱装置と
前記焼成板の往路側で前記焼成板の上部を加熱する生地上部加熱装置と、からなることを特徴とする請求項1に記載のドラ焼きの製造装置。
【請求項4】
前記ドラ焼き処理装置は、
前記焼成板の往路で下部を加熱された前記可食生地を反転させる生地反転手段と、
前記焼成板の往路終端近くで前記可食生地を焼成板から剥離する剥離手段と、
前記焼成板から剥離された前記可食生地を受け取るコンベヤと、
前記焼成板から剥離された前記可食生地を冷却する冷却手段と、
冷却された前記可食生地に中味を充填する中味充填手段と、
中味を充填された前記可食生地に別の前記冷却された可食生地を重ね合わせる可食生地重ね手段と、
中味が充填された前記可食生地の耳締めを行なう耳締め手段と、
からなることを特徴とする請求項1に記載のドラ焼きの製造装置。
【請求項5】
前記可食生地供給装置は、前記焼成板の進行方向に直角な方向に、1つまたは複数個設けられることを特徴とする請求項1に記載のドラ焼きの製造装置。
【請求項6】
前記延ばし羽根は、耐腐食性金属、または樹脂製で先端部に傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドラ焼きの製造装置。
【請求項7】
前記可食生地供給装置の下端部には、引き延ばされる可食生地の厚さを決めるためのストッパーピンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドラ焼きの製造装置。
【請求項8】
前記可食生地供給装置は、焼成板が移動する間は前記引き延ばし羽根を上昇させ、焼成板が停止している間は前記引き延ばし羽根を下降させるアクチュエータと、引き延ばし羽根を回転させる電動機を装着していることを特徴とする請求項1に記載のドラ焼きの製造装置。
【請求項9】
環状に連結されて移動する焼成板上に充填槽から可食生地供給部を通して可食生地が供給される可食生地供給段階と、
前記可食生地が前記焼成板上に供給開始されると同時に、前記可食生地供給部の下端に装着された延ばし羽根を回転させて、前記焼成板との間の前記可食生地を薄く厚みを均一に延ばす生地引き延ばし段階と、
前記生地引き延ばし段階終了後、前記可食生地供給装置に取り付けられた液垂れ防止機構により前記延ばし羽根を前記生地から離して引き上げた後、直ちに再度前記延ばし羽根を下げて薄く引き延ばされた前記可食生地に接触させ、前記延ばし羽根の液垂れを焼成板上の前記可食生地と一体化させる液垂れ防止段階と
前記焼成板の上下に設けられ前記可食生地の上下面を焼成する加熱装置により、前記可食生地の上下面を焼成する加熱段階と、
焼成された可食生地をドラ焼き処理装置により冷却後、中身を詰めてドラ焼きにするドラ焼き処理段階と、からなることを特徴とするドラ焼きの製造方法。
【請求項10】
前記ドラ焼き処理段階は、
前記焼成板が可食生地供給装置から加熱装置に向かう往路において、前記焼成板に下部を加熱された前記可食生地を反転させる生地反転工程と、
前記焼成板の往路終端近くで前記可食生地を焼成板から剥離する剥離工程と、
前記焼成板から剥離された前記可食生地をコンベヤ上に受け取り、冷却する冷却工程と、
前記冷却された前記可食生地に中味を充填する中味充填工程と、
中味を充填された前記可食生地に別の前記冷却された可食生地を重ね合わせる可食生地重ね工程と、
中味が充填された前記可食生地の耳締めを行なう耳締め工程と、
からなることを特徴とする請求項9に記載のドラ焼きの製造方法。
【請求項11】
前記焼成板は、その復路において加熱しておくことを特徴とする請求項9に記載のドラ焼きの製造方法。
【請求項12】
前記可食生地は、焼成板の往路において、この焼成板上で生地を焼いて可食生地の表面を形成してから、前記可食生地を反転裏返した裏面をその焼き状態がそれほど進行させない状態にとどめることを特徴とする請求項9に記載のドラ焼きの製造方法。
【請求項13】
前記可食生地は、前記可食生地を反転裏返した裏面をその焼き状態がそれほど進行させない状態にとどめた後、往路端末の焼成板反転部で、前記焼成板が傾斜しながら走行方向を往路から復路に変えるときに前記焼成板とその上で焼かれた可食生地との間に気体を噴射してこのドラ焼き皮6用生地を剥離することを特徴とする請求項12に記載のドラ焼きの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−100684(P2009−100684A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275965(P2007−275965)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000191157)株式会社マスダック (16)
【Fターム(参考)】