説明

ドープの製造方法及び装置、並びに製膜方法

【課題】 原料ドープと添加剤とを効率よく攪拌混合する。
【解決手段】 混合装置53は、上流側に配置されるスルーザーミキサー160と、下流側に配置されるスタティックミキサー170とから構成される。添加口150aから添加された添加剤は、上流側に配置されたスルーザーミキサー160を通過する。スルーザーミキサー160は分割効果に優れるため、添加剤はドープ用配管152内にまんべんなく拡散される。この後、添加剤は、スタティックミキサー170を通過する。スタティックミキサー170は転換効果に優れるため、添加剤は原料ドープに練り込まれるようにして、より細かく攪拌される。混合装置53は、2種類のタイプの異なるミキサーを用い、それぞれの利点を生かして効率よく攪拌混合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドープの製造方法及び装置に関し、特に液晶表示装置等の光学用途に用いるポリマーフイルムを製膜するためのドープの製造方法及び装置に関する。さらに、本発明は、前記ドープの製造方法及び装置により製造されたドープを用いた製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用ポリマーフイルムのポリマーとしては、様々なものが利用されている。中でも、セルロースアシレートフイルムは、透明性と適度な透湿性とを有し、機械的強度が大きく、かつ、寸法安定性の湿度依存性及び温度依存性が低いことから、広く用いられているもののひとつである。
【0003】
液晶の表示装置は偏光板と光学補償フイルムを備えており、その偏光板は、多くの場合偏光膜の両面に保護膜を有する構造である。近年では、光学補償フイルムを保護膜の一方に代えることがある。セルロースアシレートフイルムは過度な光学特性を与えることにより保護膜と光学補償フイルムを兼ねる事が知られている。
【0004】
一方、液晶表示装置は液晶テレビの表示装置として、需要が高まっており、高輝度化・大画面化、高画質化が要望されている。これらの高品質化では本発明に関する添加剤の微少な混合ムラも顕在化し、問題となってきている。
【0005】
セルロースアシレートを製膜する場合には、溶液製膜方法が用いられることが多い。溶液製膜方法は、ポリマーを溶媒と混合して原料ドープとし、この原料ドープに可塑剤,紫外線吸収剤,マット剤、レターデーション制御剤などの各種添加剤を添加することでドープを製造し、このドープをダイから流延支持体へ流延し、自己支持性をもったところで流延膜を剥ぎ取って、これを乾燥工程で乾燥させる方法である。この流延支持体は、連続して回転走行するドラムあるいはバンドとされている。
【0006】
ドープの製造おいて、原料ドープに添加剤などが添加された後、これらはインラインミキサによって攪拌混合される。インラインミキサとしては、長方形の板をねじって形成されたエレメントによって、管内を通過する物質を捻転させながら混合させる捻転混合型のスタティックミキサや、複数の細長い仕切板を交互に交差させて組み付けたエレメントによって、管内を通過する物質の流れを複数に分割させながら混合させる分割混合型のスルーザミキサなどが用いられる。
【0007】
攪拌が不十分でドープが均質でないと、製品の品位が低下してしまう。このため、確実に攪拌を行えるように様々な工夫がなされている。例えば、特願2003−282937号明細書には、インラインミキサの加熱条件やドープの圧力を制御することで、均質なドープを得る手法が提案されている。また、下記特許文献1には、添加物の添加口をインラインミキサに近づけるようにした例が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−53752
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したように、インラインミキサはタイプによってエレメントの構成が異なるため、例えば、スタティックミキサは捻転による転換効果に優れ、スルーザミキサは分割効果に優れるといったように、タイプにより利点が異なっている。しかしながら、従来は、複数種のインラインミキサの中から製造するドープの種類に合わせて選択された1種類のインラインミキサを用いていた。このため、効率よく攪拌を行えているとは言い難く、十分な攪拌を行うためにエレメントの数を増加させる必要があり、工程の大型化やコストアップを招いてしまうといった問題があった。
【0010】
本発明は、効率よく攪拌を行うことの出来るドープの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、原料ドープとこの原料ドープに添加される添加剤とを移送中に混合するインラインミキサを用いたドープの製造方法において、混合方法の異なる複数のインラインミキサを直列に接続して混合を行うことを特徴としている。
【0012】
インラインミキサとして、スタティックミキサと、スルーザミキサとのうち、少なくとも1つを備えていることが好ましい。スタティックミキサを備えた場合、スタティックミキサのエレメント数が6以上90以下であることが好ましく、さらには、6以上60以下であることがより好ましい。
【0013】
スタティックミキサと、スルーザミキサとの両方を備えている場合には、スルーザミキサをスタティックミキサの上流側に配置することが好ましい。さらに、スルーザミキサと添加剤を添加する添加口との距離が5mm以上150mm以下であることが好ましく、さらには、スルーザミキサと添加剤を添加する添加口との距離が5mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【0014】
また、スルーザミキサの最上流側エレメントは、原料ドープの流される配管を上流側から観察したときに、仕切板の長手方向が前記配管の上下方向に対して45°傾くように配置されることが好ましい。さらに、スルーザミキサを構成するエレメントの上流側端部が、前記配管の内側壁近傍に位置することが好ましい。
【0015】
さらに、原料ドープを濾過する第1の濾過装置をインラインミキサの上流側に備え、第1の濾過装置による濾過後の原料ドープに添加剤を添加することが好ましく、さらには、インラインミキサの下流側に、ドープを濾過する第2の濾過装置を備え、インラインミキサにより混合されたドープを第2の濾過装置により濾過することがより好ましい。
【0016】
また、本発明は、以下を満たしていることが好ましい。
(1) 添加剤の流速をV1、原料ドープの流速をV2としたときに、1≦V1/V2≦5である。
(2) 添加剤の添加比率が、流量比で0.1%〜50%である。
(3) 添加剤の粘度をN1、前記原料ドープの粘度をN2としたときに、1000≦N2/N1≦100000、を満たすとともに、20℃の状態において、5000cP≦N2≦500000cP、かつ、0.1cP≦N1≦100cP、を満たしている。
(4) 原料ドープのせん断速度が、0.1(1/s)〜30(1/s)である。
(5) ポリマーがセルロースアシレートである。
(6) 添加剤が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液である。
(7) 添加剤が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、原料ドープと異なる組成である。
(8) 添加剤が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の紫外線吸収剤を含んでいる。
(9) 添加剤が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の無機または有機の微粒子を分散してなる。
(10) 添加剤が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の剥離促進剤を含んでいる。
(11) 添加剤が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の貧溶剤を含んでいる。
【0017】
また、本発明の製膜方法は上記のようなドープの製造方法により製造されたドープを用い、このドープを流延して流延膜を形成することを特徴としている。前記製膜方法により、偏光板保護膜用フイルムや、写真フイルムを製造する際に用いられる写真用支持体を構成してもよい。さらに、テレビ用途の液晶表示装置の視野角依存性を改良のための光学補償フイルムとしても使用可能である。特に偏光膜の保護膜を兼ねる用途に効果的である。その為、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどに用いられる。また、前記偏光板保護膜用フイルムを用いて偏光板を構成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原料ドープと添加剤とを混合する際に、少なくとも2種類のインラインミキサを通過させながら、攪拌混合を行うようにしたので、インラインミキサのタイプごとの利点を有効活用して効率よく攪拌混合できる。このため、インラインミキサのエレメント数を減らして、工程の小型化及びコストを低減することが出来る。
【0019】
また、本発明は、添加剤と原料ドープとを効率よく攪拌混合することで、均質なドープを得ることが出来るので、ドープを用いた製膜方法、偏光板保護用フイルム、光学補償フイルム、写真用支持体に適用することで、高品位の製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[原料]
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(1)〜(3)の全てを満足するセルロースアシレートを用いることが好ましい。以下、TACと称する。
(1) 2.5≦A+B≦3.0
(2) 0≦A≦3.0
(3) 0≦B≦2.9
但し、式中A及びBは、セルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1mm〜4mmの粒子を用いることが好ましい。
【0021】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
【0022】
全アシル置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.32以上が好ましく、より好ましくは0.322以上、特に好ましくは0.324〜0.340である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。
【0023】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、好ましくは2.2〜2.86であり、より好ましくは2.40〜2.80である。また、DSBは1.50以上であることが好ましく、特に好ましくは1.7以上である。さらにDSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度の値が0.75以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.80以上であり特に好ましくは0.85以上であるセルロースアシレートを用いることである。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。更に粘度が低く濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0024】
セルロースアシレートは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
【0025】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル基、ブタノイル基である。
【0026】
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0027】
炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度など及びフイルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを一種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2質量%〜25質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0028】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えるため、ジクロロメタンを用いない溶媒組成も提案されている。この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いる。これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−,−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であれば良い。
【0029】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特願2004−264464号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特願2004−264464号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【0030】
[原料ドープの製造]
図1に原料ドープ製造ライン10を示す。原料ドープの製造は、始めに溶媒タンク11からバルブ12を開き、溶媒を溶解タンク13に送る。次にホッパ14に入れられているTACを溶解タンク13に計量しながら送り込む。添加剤タンク15から添加剤溶液をバルブ16の開閉操作を行って必要量を溶解タンク13に送り込む。なお、添加剤は溶液として送り込む方法以外にも、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンク13に送り込むことも可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパを用いて溶解タンク13に送り込むことも可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク15中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンクを用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンク13に送り込むこともできる。
【0031】
前述した説明においては、溶解タンク13に入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。TACを計量しながら溶解タンク13に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンク13に予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物に混合させることもできる。
【0032】
溶解タンク13を包み込むようにジャケット17が備えられている。モータ18により回転する第1攪拌翼19が取り付けられている。さらに、モータ20により回転する第2攪拌翼が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌翼は、アンカー翼であることが好ましく、第2攪拌翼21は、ディゾルバータイプの偏芯攪拌機を用いることが好ましい。ジャケット17に伝熱媒体を流して溶解タンク13内を−10℃〜55℃の範囲に温度調整することが好ましい。第1攪拌翼19,第2攪拌翼21を適宜選択して回転させることでTACが溶媒中で膨潤した膨潤液22を得ることができる。
【0033】
膨潤液22をポンプ25により加熱装置26に送液する。加熱装置26は、ジャケット付き配管を用いることが好ましく、更に膨潤液22を加圧できる構成であることが好ましい。膨潤液22を加熱または加圧加熱条件下でTACなどを溶媒に溶解させて原料ドープを得る。なお、この場合に膨潤液22の温度は、0℃〜97℃であることが好ましい。また、膨潤液22を−150℃〜−10℃の温度に冷却する冷却溶解法を行うこともできる。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に十分溶解させることが可能となる。温調機27により原料ドープの温度を略室温とした後に、濾過装置28により濾過を行い原料ドープ中の不純物を取り除く。濾過装置28の濾過フィルタの平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/hr以上であることが好ましい。濾過後の原料ドープは、バルブ29を介してストックタンク30に入れられる。
【0034】
前記原料ドープは、後述する溶液製膜用ドープとして用いることが可能である。しかしながら、膨潤液22を調製した後にTACを溶解させる方法は、TACの濃度を上昇させるほど時間がかかりコストの点で問題が生じる場合がある。その場合には、目的とするTAC濃度より低濃度の原料ドープを調製した後に目的とする濃度の原料ドープを調製する濃縮工程を行うことが好ましい。濾過装置28で濾過された原料ドープをバルブ29を介してフラッシュ装置31に送液する。フラッシュ装置31内で原料ドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発した溶媒は、凝縮器(図示しない)により液体とした後に回収装置32で回収する。その溶媒は再生装置33により原料ドープ調製用の溶媒として再生を行い再利用することがコストの点から有利である。
【0035】
濃縮された原料ドープをフラッシュ装置31からポンプ34を用いて抜き出す。さらに、原料ドープ中の泡抜きを行うことが好ましい。泡抜きは、公知のいずれの方法により行っても良く、例えば超音波照射法が挙げられる。その後に濾過装置35に送液して異物の除去を行う。なお、この際に原料ドープの温度が0℃〜200℃であることが好ましい。このようにして、TAC濃度が5質量%〜40質量%の原料ドープ36を製造することができる。なお、製造された原料ドープ36は、ストックタンク30に貯蔵される。
【0036】
なお、TACフイルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特願2004−264464号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
【0037】
[溶液製膜方法]
図2にフイルム製膜ライン40を示す。ストックタンク30には、モータ41で回転する攪拌翼42が取り付けられている。攪拌翼42を回転させることで原料ドープ36を常に均一にしている。ストックタンク30には、中間層用ドープ流路43,支持体面用ドープ流路44,エアー面用ドープ流路45が接続されている。原料ドープ36は、それぞれの流路43,44,45に設けられているポンプ46,47,48により送液される。フィードブロック70に送液されて合流した後に流延ダイ71から流延バンド72上に流延される。
【0038】
「ドープの製造工程」
中間層用ドープ流路43中の原料ドープ(以下、中間層用原料ドープと称する。)に、スタックタンク50に入れられている中間層用添加剤51がポンプ52により送液されて混合される。その後にインラインミキサ53により攪拌混合されて均一となる。これにより中間層用ドープが生成される。中間層用添加剤51には、例えば紫外線吸収剤,レターデーション制御剤などの添加剤が予め含まれた溶液(または分散液)が入れられている。
【0039】
支持体面用ドープ流路44中の原料ドープ(以下、支持体面用原料ドープと称する。)に、ストックタンク55に入れられている支持体面用添加剤56がポンプ57により送液されて混合される。その後にインラインミキサ58により攪拌混合されて均一となる。これにより支持体面用ドープが生成される。支持体面用添加剤56には、支持体である流延バンドからの剥離を容易とする剥離促進剤(例えば、クエン酸エステルなど)、フイルムをロール状に巻き取った際にフイルム面間での密着を抑制するマット剤(例えば、二酸化ケイ素など)などの添加剤が予め含有されている。なお、支持体面用添加剤56には、可塑剤,紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていても良い。
【0040】
エアー面用ドープ流路45中の原料ドープ(以下、エアー面用原料ドープと称する。)に、ストックタンク60に入れられているエアー面用添加剤61がポンプ62により送液されて混合される。その後にインラインミキサ63により攪拌混合されて均一となる。これにより、エアー面用ドープが生成される。エアー面用添加剤61には、フイルムをロール状に巻き取った際にフイルム面間での密着を抑制するマット剤(例えば、二酸化ケイ素など)などの添加剤が予め含有されている。なお、エアー面用添加剤61には、剥離促進剤,可塑剤,紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていても良い。
【0041】
また、このドープの製造工程には、濾過装置65a、65b、65c、65dが設けられている。濾過装置65aは、原料ドープが各ドープ流路43、44、45に分割される分岐地点よりも上流側に設けられ、濾過装置65b、65c、65dは、それぞれ各ドープ流路43、44、45のインラインミキサ53、58、63の下流側に配置される。このように、インラインミキサ53、58、63の上流側及び下流側で濾過を行うことによって、より均質なドープを得ることができる。
【0042】
さらに、詳しくは後述するが、本発明は、このドープ製造工程において、インラインミキサ53、58、63に工夫を施すことによって、原料ドープと添加剤とを効率よく攪拌混合できるようになっている。そして、各原料ドープに各種添加剤を添加することによって生成された各ドープは、フィードブロック70にそれぞれ所望の流量で送液される。フィードブロック70内で各ドープが合流した後に流延ダイ71から流延バンド72上に流延される。
【0043】
「流延工程」
流延ダイ71の材質は2層ステンレス鋼を用いることが好ましい。その熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の素材を用いることが好ましい。また、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものを用いることもできる。さらに、その素材はジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ71を作製することが好ましい。これにより流延ダイ71内を流れるドープの面状が一定に保たれる。流延ダイ71及びフィードブロック70の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。スリットのクリアランスは自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いる。流延ダイ71のリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリット全巾に亘り50μm以下のものを用いる。また、流延ダイ71内での剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)となるように調整されているものを用いることが好ましい。
【0044】
流延ダイ71の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフイルムの幅の1.0倍〜2.0倍程度のものを用いることが好ましい。また、製膜中は、所定の温度に保持されるように温調機を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ71にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を所定の間隔で設けてヒートボルトによる自動厚み調整機構を取り付けることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)46〜48の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フイルム製膜ライン40中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm以下となるように調整することが好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
【0045】
リップ先端に硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、また、流延ダイ71と密着性が良く、かつ、ドープと密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al2 3 ,TiN,Cr2 3 などが挙げられるが特に好ましくはWCを用いることである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
【0046】
流延ダイ71のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置(図示しない)をスリット端に取り付けることが好ましい。ドープを可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビード端部とスリットとの気液界面に供給することが好ましい。なお、この液を供給するポンプの脈動率は5%以下のものを用いることが好ましい。
【0047】
流延ダイ71の下方には、回転ローラ73,74に掛け渡された流延バンド72が設けられている。流延バンド72は、図示しない駆動装置により回転ローラ73,74が回転することに伴い無端で走行する。流延バンド72の移動速度、すなわち流延速度は、10m/分〜200m/分であることが好ましい。また、流延バンド72の表面温度を所定の値にするために回転ローラ73,74に伝熱媒体循環装置75が取り付けられていることが好ましい。流延バンド72の表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。回転ローラ73,74内には伝熱媒体流路が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより回転ローラ73,74の温度を所定の値に保持できる。
【0048】
流延バンド72の幅は特に限定されるものではないが、ドープの流延幅の1.1倍〜3.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは10m〜200m、厚みは、0.3mm〜10mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨したものを用いることが好ましい。材質は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、流延バンド72の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
【0049】
回転ローラ73,74が駆動する際に流延バンド72に生じるテンションが1.5×104 kg/mとなるように調整することが好ましい。また、流延バンド72と回転ローラ73,74との相対速度差は、0.01m/min以下となるように調整する。流延バンド72の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド72が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために流延バンド72の両端を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づきフィードバック制御を行うことがより好ましい。さらに、流延ダイ71直下における流延バンド72表面の回転ローラ73の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以下となるように調整することが好ましい。
【0050】
なお、回転ローラ73,74を直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転ムラが0.2%以下となるように高精度で回転させることが好ましい。この場合には、回転ローラ73,74の表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、クロムメッキ処理などを行い十分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(流延バンド72や回転ローラ73,74)の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2 以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下とすることが好ましい。
【0051】
流延ダイ71、流延バンド72などは流延室76に収められている。流延室76内の温度を所定の値に保つため温調設備77が取り付けられている。流延室76の温度が−10℃〜57℃であることが好ましい。また、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)78が設けられている。凝縮液化した有機溶媒は、回収装置79により回収され再生させた後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。
【0052】
流延ダイ71からドープ(エアー面用ドープ,中間層用ドープ,支持体面用ドープ)を流延ビードを形成させながら流延バンド72上に共流延して流延膜80を形成する。なお、このときのそれぞれドープの温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。また、流延ビードの形成を安定化させるため減圧チャンバ81が流延ビード背面に取り付けられ、所望の圧力に調整されていることが好ましい。ビード背面は、前面との圧力よりも−10Pa〜−2000Paの範囲で減圧することが好ましい。さらに、減圧チャンバ81の温度を所定の温度に保つため、ジャケット(図示しない)を取り付けることが好ましい。減圧チャンバ81の温度は特に限定されるものではないが、10℃〜50℃の範囲であることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものにたもつため流延ダイ71のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。エッジ吸引風量は、1L/min〜100L/minの範囲であることが好ましい。
【0053】
流延膜80は、流延バンド72の走行とともに移動する。このときに流延膜80中の溶媒を蒸発させるため送風機82,83,84を設けることが好ましい。送風機の取り付け位置は、流延バンド72の上部上流側82,下流側83,流延バンド72下部84に設けられている形態を図示しているがこれに限定されるものではない。また、形成直後の流延膜80に乾燥風が吹き付けられることによる膜面の面状変動を抑制するために遮風装置85が設けられていることが好ましい。なお、図では支持体として流延バンドを用いている例を示しているが、流延ドラムを用いることも可能である。流延ドラムの表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。
【0054】
「剥取り、乾燥工程」
流延膜80が自己支持性を有するものとなった後に剥取ローラ86で支持しながら湿潤フイルム87として流延バンド72から剥ぎ取る。その後に多数のローラが設けられている渡り部90を搬送させた後にテンタ100に送り込む。渡り部90では、送風機91から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フイルム87の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。なお、渡り部90では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フイルム87にドローを付与させることも可能である。
【0055】
テンタ100に送られる湿潤フイルム87は、その両縁がクリップで把持され搬送されつつ乾燥される。また、テンタ100内を異なった温度ゾーンに区画して乾燥条件を調整することが好ましい。テンタ100を用いて湿潤フイルム87を幅方向に延伸させることも可能である。このように、渡り部90及び/またはテンタ100で湿潤フイルム87の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5%〜300%延伸することが好ましい。
【0056】
本発明のポリマーフイルムは、フイルムの任意の領域の遅相軸と、この任意の領域と隣接する全ての領域の遅相軸との軸ズレが2.0度未満であることが好ましい。なお、軸ズレが1.0度未満であることがより好ましい。また、溶液製膜方法で製造されたポリマーフイルムであって、溶液製膜方法を行う際にフイルムの幅方向に延伸した後に、フイルムの幅方向に緩和することが好ましい。
【0057】
前記延伸及び前記緩和が、フイルムを把持手段で把持して行うものであって、フイルムの両端を把持した際のフイルムの幅をL1(mm)とし、フイルムを幅方向に最大に延伸したときのフイルムの幅をL2(mm)とし、フイルムを緩和して把持手段がフイルムを離す際のフイルムの幅をL3(mm)としたときに、1<(L2−L3)/L1×100<15であることが好ましい。前記延伸緩和を行っている際に、フイルムの乾燥温度が略同一に保持されていたことが好ましい。フイルムの乾燥温度が、50℃以上180℃以下の範囲で略同一温度に保持されていたことが好ましい。本発明には、フイルムを溶融製膜方法で製造したポリマーフイルムも含まれる。
【0058】
前記領域が、フイルムの長手及び幅方向の各方向に50mm毎の領域であることが好ましい。前記ポリマーフイルムが光学フイルムであることが好ましい。前記ポリマーフイルムがセルロースエステルフイルムであることが好ましい。前記セルロースエステルフイルムは、セルロースアシレートフイルムであることが好ましく、セルロースアセテートフイルムであることがより好ましく、最も好ましくはセルローストリアセテートフイルムである。また、本発明には前記セルロースエステルフイルムを各種光学機能性フイルムに用いるものも含まれる。例えば、写真感光材料のベースフイルム,偏光板の保護フイルム、光学補償フイルムのベースフイルムなどである。さらに、本発明には、前記光学機能性フイルムを用いて構成される液晶表示装置も含まれる。
【0059】
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むドープを支持体上に流延した後にフイルムとして支持体から剥離し、フイルムの両端を把持手段によって保持しつつ延伸緩和を行う溶液製膜方法において、前記延伸緩和の際にフイルムを幅方向に延伸し、その後に緩和することが好ましい。前記延伸緩和を行う際に、フイルムの両端を把持した際のフイルムの幅をL1(mm)とし、フイルムを幅方向に最大に延伸したときのフイルムの幅をL2(mm)とし、フイルムを緩和して把持手段がフイルムを離す際のフイルムの幅をL3(mm)としたときに、1<(L2−L3)/L1×100<15の関係を満たすことがより好ましい。
【0060】
フイルムの延伸緩和を行う際に、フイルムの乾燥温度を略同一に保持することが好ましい。フイルムの乾燥温度が、50℃以上180℃以下の範囲で略同一温度であることがより好ましい。
【0061】
テンタ100で所定の残留溶媒量まで乾燥された湿潤フイルム87は、フイルム101として送り出される。フイルム101の両端を耳切装置102によりその両縁が切断される。切断されたフイルムは、図示しないカッターブロワーによりクラッシャー103に送られる。クラッシャー103によりフイルムの縁部は、粉砕されてチップとなる。このチップをドープ調製用に再利用することがコストの点から有利である。なお、このフイルムの両縁を切断する工程は、省略することもできるが、前記流延工程から前記フイルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
【0062】
次にフイルム101は、多数のローラ104が備えられている乾燥室105に送られる。乾燥室105内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃〜180℃の範囲であることが好ましい。乾燥室105でフイルム101は、ローラ104に巻き掛けられながら搬送され溶媒は揮発して乾燥される。また、乾燥室105には、吸着回収装置106が取り付けられている。揮発溶媒は、吸着回収装置106により吸着回収される。溶媒成分が除去された大気は乾燥室105内に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室105は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置102と乾燥室105との間に予備乾燥室(図示しない)を設け、フイルム101の予備乾燥を行うことが好ましい。こうすることで、フイルム温度の急激な上昇によるフイルムの形状変化を抑制できる。
【0063】
フイルム101は、冷却室107に搬送され、略室温まで冷却される。なお、乾燥室105と冷却室107との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。調湿室でフイルム101の所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付ける。これにより、フイルム101のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制できる。
【0064】
フイルム101が搬送されている間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように強制除電装置(除電バー)108を設けている。図では、冷却室107の下流側に設けられている例を図示しているがその位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ109を設けて、フイルム101の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm〜200μmであることが好ましい。
【0065】
「巻き取り工程」
最後に、フイルム101を巻取室110内の巻取ローラ111で巻き取る。この際に、プレスローラ112で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフイルム101は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、幅方向が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、1800mmより大きい場合にも効果がある。フイルムの厚みは、15μm以上100μm以下の薄いフイルムを製造する際にも適用できる。
【0066】
本発明の溶液製膜方法において、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させる。さらに両共流延を組み合わせても良い。同時積層共流延を行う際には、図2に示されているようにフィードブロック70を取り付けた流延ダイ71を用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。共流延により多層からなるフイルムは、空気面側の層の厚さ及び/又は支持体側の層の厚さがそれぞれ全体のフイルム厚さ中で0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合に、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープを低粘度ドープで包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合に、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に内部のドープは、そのドープよりもアルコールの組成比が大きなドープで包み込まれることが好ましい。
【0067】
図2に示したように3種類のドープを共流延することによりフイルム101の目的とする特性を容易に得ることができる。すなわち、フイルム101をロールとして巻き取る際に、フイルム面間での密着を防止する必要がある。そのため、ドープ中にマット剤を添加することが好ましいが、通常マット剤は光学特性の悪化(例えば、透明性の悪化など)を招く。そこで、本実施形態のようにフイルムの表裏面となる支持体面用ドープとエアー面用ドープとにマット剤を含有させ、中間層用ドープには含有させないことにより、表面密着性を低下させると共に所望の光学特性を得ることが可能となる。
【0068】
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フイルム回収方法まで、特願2004−264464号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
【0069】
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフイルムの性能及びそれらの測定法は、特願2004−264464号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
【0070】
[表面処理]
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
【0071】
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフイルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
【0072】
さらに前記セルロースアシレートフイルムをベースフイルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
【0073】
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m2 〜1000mg/m2 含有することが好ましい。セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特願2003−319673号の[0843]から[1079]に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
【0074】
セルロースアシレートフイルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、特願2004−264464号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
【0075】
(用途)
(用途)
前記セルロースアシレートフイルムは、特に偏光板保護フイルムとして有用である。セルロースアシレートフイルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特願2004−264464号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフイルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフイルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフイルムとして光学補償フイルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フイルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特願2004−264464号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
【0076】
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフイルム(TACフイルム)を得ることができる。前記TACフイルムは、偏光板保護フイルムや写真感光材料のベースフイルムとして用いることができる。さらにテレビ用途などの液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フイルムとしても使用可能である。特に偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどにも用いられる。また、前記偏光板保護膜用フイルムを用いて偏光板を構成しても良い。
【0077】
以下、本発明にかかるインラインミキサ53、58、63について詳しく説明する。なお、本実施形態では、添加する添加剤の種類は異なるものの、インラインミキサ53、58、63は同様の構成とした。このため、以下の説明では、各インラインミキサ53、58、63を代表してインラインミキサ53を例に説明を行う。
【0078】
図3に示すように、中間層用ドープ流路43には、中間層用添加剤51が流される添加剤用配管150と、インラインミキサ53とが配置されている。添加剤用配管150は、中間層用原料ドープの流されるドープ用配管152を貫通して設けられ、先端が添加口150aとなっている。添加剤用配管150は、この添加口150aがドープ用配管152の中央に位置するように形成される。中間層用添加剤51は、ポンプ52によりストックタンク50から送られ、添加口150aからドープ用配管152内に添加される。
【0079】
インラインミキサ53は、スルーザミキサ160とスタティックミキサ170とから構成され、添加剤用配管150の下流側に配置されている。スルーザミキサ160は、添加口150aの直後に設置される。スルーザミキサ160には、エレメント162、164が設けられ、これらがドープ用配管152の長手方向に交互に配置されている。エレメント162、164は、複数の細長い仕切板を交互に交差させるように組み付けて形成されている。また、エレメント162とエレメント164とは、ドープ用配管152を上流側から観察したときに、仕切板の長手方向が直交するようにドープ用配管の軸を中心に90°回転された状態で配置される(図4参照)。スルーザミキサ160は、ドープ用配管152内を流される原料ドープと添加剤とを、エレメント162、164によって分割しながら混合する。
【0080】
スタティックミキサ170は、スルーザミキサ160の下流側に配置される。スタティックミキサ170には、エレメント172、174が設けられ、これらがドープ用配管152の長手方向に交互に配置されている。エレメント172、174は、長方形の板を180°ねじって形成されたものであり、エレメント172と、エレメント174とではねじられる方向が逆にされている。エレメント172、174は、板の側端部が直交するように、ドープ用配管152の軸を中心に90°回転された状態で配置される。スタティックミキサ170、ドープ用配管152内を流される原料ドープと添加剤とを、エレメント172、174によって転換しながら混合する。
【0081】
なお、説明を簡略化するため、図3では、スルーザミキサ160、及び、スタティックミキサ170は、それぞれ2つのエレメントから構成される例を示したが、実際はより複数のエレメントが並べられている。エレメントの数は適宜設定することができるが、スタティックミキサのエレメント数は、6以上90以下であることが好ましく、さらには、6以上60以下であることがより好ましい。
【0082】
本実施形態においては、スルーザミキサ160を上流側に、スタティックミキサ170を下流側に配置している。このため、添加口150aから添加された添加剤は、まず、上流側に配置されたスルーザミキサ160を通過する。スルーザミキサ160は分割効果に優れるため、添加剤はドープ用配管152内にまんべんなく拡散される。この後、添加剤は、スタティックミキサ170を通過する。スタティックミキサ170は転換効果に優れるため、添加剤は原料ドープに練り込まれるようにして、より細かく攪拌される。
【0083】
スタティックミキサ170を上流側に、スルーザミキサ160を下流側に配置してもよいが、こうすると添加剤がドープ用配管152の中央部の原料ドープに練り込まれた後、拡散されるため、スタティックミキサ170の転換効果を十分に生かすことができない。インラインミキサ53は、スルーザミキサ160を上流側に、スタティックミキサ170を下流側に配置することで、2種類のタイプの異なるミキサーの利点を生かして攪拌混合の効率を上げることができる。
【0084】
上述のように、スルーザミキサ160を上流側に配置することで攪拌混合の効率を上げることができるが、例えば、スルーザミキサ160をドープ用配管152の上流側から観察した図4において、エレメント162を構成する仕切板165a〜165gの長手方向が、ドープ用配管152の上下方向に対して平行な同図(A)の場合や、垂直な同図(B)の場合、ドープが上下に分割される流れが発生し、添加剤がこの流れに乗って、スルーザミキサ160の中心に添加できないことが実験によってわかった。このため、本実施形態では、同図(C)に示すように、仕切板165a〜165gをドープ用配管152の上下方向に対して45°傾けて配置している。こうすることによって、添加剤がエレメント162の中心に添加され、効率よく混合を行える。
【0085】
さらに、本実施形態においては、エレメント162の上流側の端部がドープ用配管152の内壁近傍に位置するようになっている。例えば、図5(A)に示すエレメント180のように、上流側の端部180aがドープ用配管152の中央部に位置し、エレメント18の上流側が中央凸形状であると、端部180aにより原料ドープが分割され、ドープ用配管152の中心から外側へ向けかう流れが発生する。そして、添加剤がこの流れに乗って、ドープ用配管152の内壁の近傍に集中してしまい、十分に混合できなくなってしまう。これに対して、同図(B)に示す本実施形態のエレメント162は、上流側の端部162aがドープ用配管152の内壁近傍に位置し、エレメント18の上流側が中央凹形状となっている。このため、添加剤がドープ用配管152に中心に寄せられ、中心からまんべんなく拡散されるので、十分に混合することができる。
【0086】
攪拌混合の効率をより高めるために、インラインミキサ53と添加口150aとの距離Dが1mm〜150mmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、距離Dが1mm〜15mmの範囲であることである。距離Dが近すぎると、原料ドープの抵抗で添加口150aが詰まってしまう恐れがあり、逆に遠すぎるとインラインミキサ53の中心に添加剤を添加できなくなる恐れがある。
【0087】
また、添加剤の添加比率は、流量比で0.1%〜50%であることが好ましい。添加剤の添加比率が低すぎると精度よく添加することが難しく、逆に高すぎると原料ドープと混合させることが難しくなる。
【0088】
さらに、添加剤の流速をV1、原料ドープの流速をV2としたときに、1≦V1/V2≦5を満たすことが好ましく、さらに好ましくは、1≦V1/V2≦3を満たすことである。V1/V2の値が小さすぎると送液方向に液切れが発生してしまう恐れがあり、逆に大きすぎると添加剤がエネルギーを持ち、インラインミキサ53を勢いよく通過してしまう恐れがある。
【0089】
また、添加剤の粘度をN1、原料ドープの粘度をN2としたときに、20℃において、N1は0.1cP〜100cP、N2は5000cP〜500000cPであり、かつ、粘度比が、1000≦N2/N1≦1000000であることが好ましい。
【0090】
さらに、ドープ用配管160を流れる原料ドープのせん断速度V3が、0.1(1/s)〜30(1/s)であることが好ましい。せん断速度V3が小さすぎると混合が進まない恐れがあり、逆に大きすぎるとドープ用配管152での圧損が高くなり、20Kg耐圧では耐えられない恐れがある。
【0091】
このように、インラインミキサ53、58、63は、分割効果に優れるスルーザミキサ160と、転換効果に優れるスタティックミキサ170の2種類のタイプの異なるミキサーを用い、それぞれの利点を生かして効率よく攪拌混合することができる。このため、ミキサーのエレメント数を減らし、工程の小型化、コスト削減が可能となる。
【0092】
なお、本発明は、2種類以上のインラインミキサにより、原料ドープと添加剤とを攪拌混合すればよいので、インラインミキサの形態は上記実施形態で説明したものに限定されず、適宜変更してよい。例えば、上記実施形態では、スルーザミキサの下流にスタティックミキサを設ける例で説明をしたが、さらにこれらの下流にスルーザミキサを配置してもよい。また、上記実施形態で用いた、スルーザミキサやスタティックミキサ以外に、ドープ用配管内に配置される攪拌翼をモータなどの動力により回転させることで攪拌混合を行う動的なミキサを設けてもよい。また、ドープをより均質なものとするために、インラインミキサの上流側、下流側の一方、もしくは両方に、濾過装置を設けるといったことも考えられる。
【0093】
[実施例1]
以下、本発明の具体的な実施例1について説明する。この実施例1では、後述するドープの製造過程において、上記実施形態にて説明したインラインミキサ53、58、63を用い、ドープを製造した。そして、このドープを流延してフイルムを製造した。以下、フイルムの製造に関する具体的な条件を示すが、本発明は、この実施例1に限定されるものではない。
【0094】
使用した質量部を下記に示す。
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
【0095】
[綿化合物]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有量が58ppm、Mg含有量が42ppm、Fe含有量が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンが15ppm含むものであった。また6位アセチル基の置換度は0.91であり全アセチル中の32.5%であった。また、アセトン抽出分は8質量%、重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、イエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このセルローストリアセテートは、綿から採取したセルロースを原料としてセルローストリアセテートを合成した。
【0096】
(1)原料ドープ仕込み
図1に示す原料ドープ製造ライン10を用いた。攪拌羽根19,21を有する4000Lのステンレス製溶解タンク13に、前記複数の溶媒を混合して混合溶媒として攪拌・分散しつつ、セルローストリアセテート粉体(フレーク)をホッパ14から徐々に添加し、全体が2000kgとなるように調製した。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。溶解タンク13内を攪拌剪断速度が最初は5m/sec(剪断応力5×104 kgf/m/sec2 )の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸21および、中心軸にアンカー翼19を有して周速1m/sec(剪断応力1×104 kgf/m/sec2 )で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼19の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させて膨潤液22を得た。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また原料ドープ中の水分量は0.3質量%であった。
【0097】
(2)溶解・濾過
膨潤液22を溶解タンク13からポンプ25でジャケット付配管26に送液した。ジャケット付き配管26で50℃まで加熱し、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解させた。加熱時間は15分であった。温調機27で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置28を通過させて固形分濃度が19質量%の原料ドープ(以下、濃縮前原料ドープと称する)を得た。この際、濾過1次圧は1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。なお、高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有するものを使用した。
【0098】
(3)濃縮・濾過・脱泡
濃縮前原料ドープを80℃で常圧に調整されているフラッシュ装置31内でフラッシュさせて、蒸発した溶媒を凝縮器で液化して回収装置32で回収分離した。フラッシュ後の原料ドープの固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、回収された溶媒は、再生装置33で再利用のために調整された。フラッシュ装置31のフラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有しており、周速0.5m/secで攪拌して脱泡を行った。フラッシュタンク内の原料ドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。この原料ドープを採取して25℃で測定したせん断粘度はせん断速度10(1/s)で450Pa・sであった。
【0099】
つぎに、この原料ドープに弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。その後、ポンプ34を用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置35に送液した。濾過装置35では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次圧は1.5MPa,1.2MPaであり、2次圧は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後の原料ドープの温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製ストックタンク30内に貯蔵した。ストックタンク30は中心軸にアンカー翼42を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。なお、濃縮前ドープから原料ドープを調製する際に、各装置のドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。また、ジクロロメタンが86.5質量部、アセトンが13質量部、n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒37を作製した。
【0100】
(4)吐出
図2に示すフェイル製膜ライン40を用いてフイルム製膜を行った。続いてストックタンク30内の原料ドープ36を1次増圧用のギアポンプ46,47,48で高精度ギアポンプの1次側圧力が0.8MPaになるようにインバーターモーターによりフィードバック制御を行い送液した。高精度ギアポンプ46〜48は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であった。また、吐出圧力は1.5MPaであった。
【0101】
流延ダイ71は、幅が1.8mであり共流延用に調整したフィードブロック70を装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフイルムを成形できるようにした装置を用いた。以下の説明において、主流から形成される層を中間層と称し、支持体面側の層を支持体面と称し、反対側の面をエアー面と称する。なお、ドープの送液流路は、中間層用ドープ流路43、支持体面用ドープ流路44,エアー面用ドープ流路45の3流路を用いた。
【0102】
(5)ドープの製造
UV剤a(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール),UV剤b(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)5−クロルベンゾトリアゾール)とレターデーション制御剤(N,N’−di−m−トリル−N’ ’−P−メトキシフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)と混合溶媒37と原料ドープ36とを混合させた中間層用添加液51をストックタンク50に入れた。中間層用添加液51をポンプ52により中間層用ドープ流路43中の原料ドープ36に送液した。そして、インラインミキサ53を介して混合させて、中間層用ドープを生成した。全固形分濃度が21.8質量%,紫外線吸収剤a,bがフイルム形態で1.2質量%,レターデーション制御剤がフイルム形態で2.6質量%となるように混合量の調整を行った。
【0103】
マット剤である二酸化ケイ素(粒径15nm モース硬度 約7)を0.05質量部と剥離促進剤であるクエン酸エステル混合物(クエン酸,クエン酸モノエチルエステル,クエン酸ジエチルエステル,クエン酸トリエチルエステル)を0.006質量部と原料ドープ36と混合溶媒37とを溶解または分散させて支持体面用添加液56とした。支持体面用添加液56をストックタンク55に入れ、ポンプ57を用いて所望の流量で支持体面用ドープ流路44中に流れている原料ドープ36に送液した。そして、インラインミキサ58で混合させて、支持体面用ドープを生成した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%、フイルム形態でマット剤濃度が0.05質量%、フイルム形態で剥離促進剤濃度が0.03質量%となるように行った。
【0104】
二酸化混合溶媒37に分散させてエアー面用添加液61を調製しストックタンク60に入れた。エアー面用添加液61をポンプ62によりエアー面用ドープ流路45中の原料ドープ36に送液した。そして、インラインミキサ63を介して混合させて、エアー面用ドープを生成した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%、フイルム形態でマット剤濃度が0.1質量%となるように行った。
【0105】
(6)流延
そして、目的とするTACフイルムの膜厚(エアー面,中間層,支持体面)がそれぞれ4μm,73μm,3μmであり、製品厚みが80μmとなるように、流延幅を1700mmとして各ドープ(中間層用ドープ,支持体面用ドープ,エアー面用ドープ)の流量を調整して流延を行った。各ドープの温度を36℃に調整するため、流延ダイ71にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
【0106】
流延ダイ71、フィードブロック70、配管は製膜時にはすべて36℃に保温した。流延ダイ71はコートハンガータイプのものを用い、厚み調整ボルト(ヒートボルト)が20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。ヒートボルトは予め設定したプログラムにより高精度ギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フイルム製膜ライン40内に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものである。流延エッジ部20mmを除いたフイルムで50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が3μm/m以下となるように調整した。また、各層の平均厚み精度は両外層が±2%以下、主流が±1%以下に制御され、全体厚みは±1.5%以下となるように調整した。
【0107】
流延ダイ71の1次側には減圧するための減圧チャンバ81を設置した。減圧チャンバ81の減圧度は流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるようになっていて、流延スピードに応じて調整が可能なものである。また、減圧チャンバ81の温度は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高く設定できる機構を具備したものであった。ビード前後、後部にラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、両端には開口部を設けた。さらに、そこから、流延ビードの両縁の乱れを調整するためにエッジ吸引装置(図示しない)が取り付けられているものを用いた。
【0108】
流延ダイ71の材質は2層ステンレス鋼であり、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有する素材を使用した。流延ダイ71及びフィードブロック70の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。ダイリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工した。ダイ内部での剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)の範囲であった。また、流延ダイ71のリップ先端には、溶射法によりWCコーティングをおこない硬化膜を設けた。
【0109】
さらに流延ダイ71のスリット端には流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープを可溶化する前記混合溶媒を流延ビード端部とスリット気液界面に片側で0.5ml/minで供給した。この液を供給するポンプの脈動率は5%以下のものを用いた。また、減圧チャンバ81によりビード背面の圧力を150Pa低くした。減圧チャンバ81の温度を一定にするために、ジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内に35℃に調整された伝熱媒体を供給した。エッジ吸引風量は、1L/min〜100L/minの範囲で調整可能なものを用い、本実施例では30L/min〜40L/minの範囲で適宜調整した。
【0110】
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド72として利用した。流延バンド72の厚みは1.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下になるように研磨した。材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。流延バンド72の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド72は、2個の回転ローラ73,74により駆動させた。その際の流延バンド72のテンションは1.5×104 kg/mに調整し、流延バンド72と回転ローラ73、74との相対速度差が0.01m/min以下になるように調整した。また、流延バンド72の速度変動は0.5%以下であった。また1回転の幅方向の蛇行は1.5mm以下に制限するように流延バンド72の両端位置を検出して制御した。また、流延ダイ71直下におけるダイリップ先端と流延バンド72との上下方向の位置変動は200μm以下とした。流延バンド72は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室76内に設置されている。この流延バンド72上に流延ダイ71から3層のドープ(エアー面,中間層,支持体面)を共流延した。
【0111】
回転ローラ73、74は、流延バンド72の温度調整を行えるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ71側の回転ローラ73には5℃の伝熱媒体(水)を流し、他方の回転ローラ74には40℃の伝熱媒体(水)を流した。流延直前の流延バンド72中央部の表面温度は15℃であり、その両端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド72は、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2 以下、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下であるものを用いた。
【0112】
流延室76の温度は、温調設備77を用いて35℃に保った。流延バンド72上に流延されたドープから形成された流延膜80は、最初に平行流の乾燥風により乾燥した。乾燥する際の乾燥風からの流延膜80への総括伝熱係数は24kcal/m2 ・hr・℃であった。乾燥風の温度は流延バンド72上部の上流側を135℃とし、下流側を140℃とした。また、流延バンド72下部は、65℃となるように送風機82,83,84から送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。流延バンド72上の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。また、流延室76内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)78を設け、その出口温度は、−10℃に設定した。
【0113】
(7)剥取り・乾燥
流延後5秒間は遮風装置85により乾燥風が、直接ドープ及び流延膜80に当たらないようにして流延ダイ71直近の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜80中の溶媒比率が乾量基準で150質量%になった時点で流延バンド72から剥取ローラで支持しながらフイルム(以下、湿潤フイルムと称する)87として剥ぎ取った。このときの剥取テンションは10kgf/mであり、剥取不良を抑制するために流延バンド72の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は、100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。湿潤フイルム87の表面温度は15℃であった。流延バンド72上での乾燥速度は、平均60質量%乾量基準溶媒/minであった。乾燥して発生した溶媒ガスは、−10℃の凝縮器78で凝縮液化して回収装置79で回収した。回収された溶媒は調整がなされた後に、ドープ調製用溶媒として再利用した。その際に、溶媒に含まれる水分量を0.5%以下に調整した。溶媒が除去された乾燥風は再度加熱して乾燥風として再利用した。湿潤フイルム87を渡り部90のローラを介して搬送し、テンタ100に送った。このときに送風機91から40℃の乾燥風を湿潤フイルム87に送風した。なお、渡り部90のローラで搬送している際に、湿潤フイルム87に約20Nのテンションを付与した。
【0114】
テンタ100に送られた湿潤フイルム87は、クリップでその両端を固定されながらテンタ100の乾燥ゾーン内を搬送され、乾燥風により乾燥した。クリップには、20℃の伝熱媒体を供給して冷却した。テンタの駆動はチェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンタ100内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,100℃,110℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃の飽和ガス濃度とした。テンタ100内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶媒)/minであった。テンタ100の出口ではフイルム内の残留溶媒の量が、7質量%となるように乾燥ゾーンの条件を調整した。また、テンタ100内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。テンタ100に搬送された際の湿潤フイルム87の幅を100%としたときの拡幅量を103%とした。剥取ローラ86からテンタ100入口に至る延伸率(テンタ駆動ドロー)は、102%とした。テンタ100内の延伸率はテンタ噛み込み部から10mm以上はなれた部分における実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点の延伸率の差異は5%以下であった。ベース端のうちテンタで固定している長さの比率は90%とした。テンタ100内で蒸発した溶媒は、−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(図示しない)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。溶媒に含まれる水分量を0.5質量%以下に調整して再使用した。そして、テンタ100からフイルム101として送り出した。
【0115】
そして、テンタ100の出口から30秒以内に両端の耳切を耳切装置102で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワー(図示しない)によりクラッシャー103に風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際に原料として利用した。テンタ100の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室105で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフイルム101を予備加熱した。
【0116】
フイルム101を乾燥室105で高温乾燥した。乾燥室105を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フイルム101のローラ104による搬送テンションは100N/巾として、最終的に残留溶媒量が、0.3質量%になるまでの約10分間乾燥した。前記ローラ104のラップ角度は、90度および180度とした(図2では誇張して示している)。前記ローラ104の材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ104の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ104の回転による振れは全て50μm以下であった。また、テンション100N/巾でのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
【0117】
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置106を用いて吸着回収除去した。吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は、水分量0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバーでこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りの大部分は吸着回収により回収した。
【0118】
乾燥されたフイルム101を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室105と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フイルム101のカールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフイルム101を搬送した。第2調湿室では、フイルム101に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
【0119】
調湿後のフイルム101は、冷却室107で30℃以下に冷却して両端耳切りを行った。搬送中のフイルム帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)108を設置した。さらにフイルム101の両端にナーリング付与ローラ109でナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングする幅は10mmであり、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
【0120】
(8)巻取り
そして、フイルム101を巻取室110に搬送した。巻取室110は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。さらに、フイルム帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVになるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフイルム(厚さ80μm)101の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラ111の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは360N/巾であり、巻き終わりが250N/巾になるようなテンションパターンとした。巻き取り全長は3940mであった。巻き取りの際の周期を400mとし、オシレート幅を±5mmとした。また、巻取ローラ111にプレスローラ112を押し圧50N/巾に設定した。巻き取り時のフイルムの温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶媒量は0.3質量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は20質量%(乾量基準溶媒)/minであった。また巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。また、ロール外観も良好であった。
【0121】
フイルム101のフイルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。また、フイルム101を製膜した後に、流延バンド72上にはドープから形成された流延膜80の剥げ残りは全く見られなかった。
【0122】
(9)結果と評価
実施例で得られた試料の評価方法について下記に示す。
【0123】
(i)溶液の安定性
原料ドープ36を採取し、30℃で静置保存したまま観察し以下のA、B、C、Dの4段階に評価した。
A:20日間経時でも透明性と液均一性を示す。
B:10日間経時まで透明性と液均一性を保持しているが、20日で少し白濁が見られる。
C:液作製終了時では透明性と均一な液であるが、1日経時するとゲル化し不均一な液となる。
D:液は膨潤・溶解が見られず不透明で不均一な溶液状態である。
【0124】
(ii)フイルム面状
フイルム101を目視で観察し、その面状を以下の如く評価した。
A:フイルム表面は平滑である。
B:フイルム表面は平滑であるが、少し異物が見られる。
C:フイルム表面に弱い凹凸が見られ、異物の存在がはっきり観察される。
D:フイルム表面に凹凸が見られ、異物が多数見られる。
【0125】
(iii)フイルムの耐湿熱性
フイルム101から1gを試料として切断した後に折り畳んで15ml容量のガラス瓶に入れ、温度90℃、相対湿度100%条件下で調湿した後、密閉した。これを90℃で経時して10日後に取り出した。フイルムの状態を目視で確認し、以下の判定をした。
A:特に異常が認められない
B:かすかな分解臭が認められる
C:かなりな分解臭が認められる
D:分解臭と分解による形状の変化が認められる
【0126】
原料ドープ36の安定性はAであった。また、得られたフイルム101は、フイルム面状もA、フイルム引裂試験では16gであり、フイルムの耐折試験は71回であり、耐湿熱性はAであり、すべて優れたものであった。また、残存酢酸量は、0.01質量%未満であり、Caを0.05質量%未満、Mgを0.01質量%未満含有し、フイルム101の厚さは、全領域に渡り80μm±1.5μmであった。このとき、長さ方向のトップ、中間部とラストのそれぞれについて、さらにその幅方向の両端部と中央部の評価を実施し、そのデータは誤差が0.2%以下であることを確認した。また、フイルム101の縦横平均熱収縮(80℃90%RH48時間)は、−0.1%であり、熱収縮が生じ難いフイルムが得られた。また、テンタ出口での残留溶媒量は7質量%であり、そのときの耳サイロLELは25%未満と良好であった。
【0127】
またフイルム101は、ヘイズが0.3%、透明度(透明性)が92.4%、傾斜幅は19.6nm、波長限界は392.7nm、吸収端は374.1nm、380nmの吸収は2.0%であり、Reは1.2nm、Rthは48nmであり、分子配向軸は1.4°弾性率が長手方向が3.54GPa、幅方向が3.45GPa、抗張力は長手方向142MPa、幅方向が141MPa、伸張率は長手方向が43%、幅方向が49%であり、キシミ値(静止摩擦係数)は0.65、キシミ値(動摩擦係数)は0.51、アルカリ加水分解性はAであり、カール値は25%RHで−0.4、ウェットでは1.7であった。また、含水率は1.4質量%であり、残量溶媒量は0.3質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.09%であり、幅方向が−0.08%であった。異物はリントが5個/m未満であった。また、輝点は0.02mm〜0.05mmが10個/3m未満、0.05〜0.1mmが5個/3m未満、0.1mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着も見られず(○)、透湿度も良好(○)であった。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】ドープの製造ラインを表す説明図である。
【図2】フイルム製膜ラインを表す説明図である。
【図3】中間層用ドープ流路の斜視図である。
【図4】中間層用ドープ流路を上流側から観察した平面図である。
【図5】中間層用ドープ流路を側方から観察した平面図である。
【符号の説明】
【0129】
36 原料ドープ
51 中間層用添加剤
56 支持体面用添加剤
61 エアー面用添加剤
43 中間層用ドープ流路
44 支持体面用ドープ流路
45 エアー面用ドープ流路
53、58、63 インラインミキサ
65a、65b、65c、65d 濾過装置
150 添加剤用配管
150a 添加口
152 ドープ用配管
160 スルーザミキサ
170 スタティックミキサ
162、164、172、174、180 エレメント
162a、180a 端部
165a〜165g 仕切板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ドープとこの原料ドープに添加される添加剤とを移送中に混合するインラインミキサを用いたドープの製造方法において、
混合方法の異なる複数のインラインミキサを直列に接続して前記混合を行うことを特徴とするドープの製造方法。
【請求項2】
前記インラインミキサの1つは、ねじられた仕切り部材からなる第1のエレメントを配管内に複数配置した捻転混合型のスタティックミキサであることを特徴とする請求項1記載のドープの製造方法。
【請求項3】
前記インラインミキサの1つは、複数の細長い仕切部材を交互に交差させてなる第2のエレメントを配管内に複数配置した分割混合型のスルーザミキサであることを特徴とする請求項1記載のドープの製造方法。
【請求項4】
前記インラインミキサとして、ねじられた仕切り部材からなる第1のエレメントを配管内に複数配置した捻転混合型のスタティックミキサと、複数の細長い仕切部材を交互に交差させてなる第2のエレメントを配管内に複数配置した分割混合型のスルーザミキサとを備えるとともに、
前記添加剤の投入位置の下流に最初に配置されるインラインミキサを前記スルーザミキサとしたことを特徴とする請求項1記載のドープの製造方法。
【請求項5】
前記スルーザミキサの最上流側のエレメントの上流側先端と、前記添加剤を投入するための添加口との距離が5mm以上150mm以下であることを特徴とする請求項4記載のドープの製造方法。
【請求項6】
前記スルーザミキサの最上流側エレメントは、前記配管の断面方向における前記仕切部材の長手方向が、前記配管の上下方向に対して45°傾くように配置されることを特徴とする請求項4又は5記載のドープの製造方法。
【請求項7】
前記スルーザミキサの最上流側エレメントの上流側先端を、前記配管の内側壁の近傍に位置させて、前記添加剤が添加された原料ドープを最上流側エレメントの中央部に寄せる構造としたことを特徴とする請求項4〜6いずれか1つ記載のドープの製造方法。
【請求項8】
前記添加剤の流速をV1、前記原料ドープの流速をV2としたときに、1≦V1/V2≦5を満たすことを特徴とする請求項1〜7いずれか1つ記載のドープの製造方法。
【請求項9】
前記添加剤の添加比率が、流量比で0.1%〜50%であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1つ記載のドープの製造方法。
【請求項10】
前記添加剤の粘度をN1、前記原料ドープの粘度をN2としたときに、1000≦N2/N1≦100000、を満たすとともに、
20℃の状態において、5000cP≦N2≦500000cP、かつ、0.1cP≦N1≦100cP、を満たすことを特徴とする請求項1〜9いずれか1つ記載のドープの製造方法。
【請求項11】
前記原料ドープのせん断速度が、0.1(1/s)〜30(1/s)であることを特徴とする請求項1〜10いずれか1つ記載のドープの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか1つ記載のドープの製造方法によって製造されたドープを用い、このドープを流延して流延膜を形成することを特徴とする製膜方法。
【請求項13】
原料ドープとこの原料ドープに添加される添加剤とを移送中に混合するインラインミキサを備えたドープの製造装置において、
混合方法の異なる複数のインラインミキサを設け、これらインラインミキサを直列に接続して配置したことを特徴とするドープの製造装置。
【請求項14】
請求項13記載のドープの製造装置を用いて製造されたことを特徴とするセルロースアセテートフィルム。
【請求項15】
請求項13記載のドープの製造装置を用いて製造されたフイルムを保護膜として用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項16】
請求項13記載のドープの製造装置を用いて製造されたフイルムからなる保護膜を有する偏光板を用いたことを特徴とするVA、OCBモードの液晶表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−76280(P2006−76280A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81964(P2005−81964)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】