説明

ナット、ナットの製作方法、およびこれに対応する工具

【課題】効率良く使用でき、簡単にかつ素早く製作することができる、ばねのような閉止作用を有するナット、この製作方法およびこれに対応する工具を提供する。
【解決手段】本発明のナットは、ねじ孔(62)と、このねじ孔の長手軸心(E)方向に、径に沿って円周状に設けられた内溝(78)とを有する金属製部材を備えたナットであり、環状の鍔部(64)が、当該ナット(70)の端面(54)の1つに一体的に形成され、その断面が軸心方向に曲げられており、軸受面(55)としてねじ孔(62)を囲むこの端面の区域と、環状の鍔部に直接形成された収容スロット(78)とを形成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ孔と、当該ねじ孔の長手軸心方向に、径に沿って円周状に設けられた内溝とを有する金属製部材を備えたナットに関する。本発明は、さらに、このナットを製作する方法およびこれを製作するために開発された工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この型のナットは特許文献1に開示されており、環状の空洞が設けられ、安全ナットを形成しており、この空洞を形成する工程は、工作機械において回転するスピンドルを備えた穿孔加工装置によって行われ、上記スピンドルは、くり抜き工程の間、単一のナットまたは複数のナットを保持するチャックと整合している。この空洞は、ねじ山が切り込まれる前に形成される。この空洞は、ナットの2つの端面から同一の距離のところに位置している。ねじ山は、空洞の両面において同一のピッチで切られる。次に、空洞の両面におけるねじ山部分のオフセットを、互いに対して設けるために、ナットは圧縮される。
【0003】
特許文献2にも安全ナットが記載されており、この安全ナットの負荷がかからない端部には、ねじ山の一部を取り除くことによって溝が設けられており、この結果として環状のタブ(tab)が形成され、この環状のタブは、ねじ山の主な部分に据え込み鍛造がされた後に、据え込み鍛造が施される。これは、閉止ナットを提供する他の方法である。
【0004】
特許文献3には、楔形状の断面を有する環状の溝をねじ孔またはナットの中心に設けることによって達成される、ナットの閉止作用が記載されている。この場合においても、連続するねじ山が切欠部によってナットの上部において途切れており、この切欠部の形成の結果として薄い壁が形成されたことにより、上部の小区域がばね作用を有するようになる。次に、ナットの密着効果を得るために、この上部の小区域は、圧縮されることで直径が収縮し、同時に高さも圧縮する。この場合、切欠部の形成の結果として残分の薄い壁部分は、上部のねじ山部分の、収縮し、ピッチオフセットフランクの直径に対してばね作用を生む。
【特許文献1】独国特許第305761号明細書
【特許文献2】瑞西国特許第249469号明細書
【特許文献3】独国特許第490889号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのナットおよび他の公知のナットは、機能の観点からも多大な欠点を有するが、詳細には、ねじ山部分のばねのような閉止作用を得るために、ナットのねじ山の一部または壁の一部を切削加工しなければならない複雑な製造工程に関して多大な欠点を有する。
【0006】
これらの特定の事実を把握した上で、本発明者は、効率良く使用でき、何よりも簡単にかつ素早く製作することができるナットを提供するという課題に直面した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
独立請求項の教示内容がこの課題を解決するために用いられる。従属請求項には、好ましい発展形態が記載されている。さらに、本明細書および/または図面および/または特許請求の範囲に開示されている構成の少なくとも2つを組み合わせたものの全てが、本発明の範疇に含まれる。列挙された指定の範囲について、これら記載された範囲内にある数値は、制限値として開示されるべきであり、これらを所望の数値として使用してもよい。
【0008】
本発明によると、環状の鍔部は、ナットの端面の1つに一体的に形成され、その断面は軸心方向に曲げられており、軸受面としてねじ孔を囲むこの端面の区域と、当該環状の鍔部に直接形成された収容スロットとを形成している。
【0009】
本発明のさらなる構成によると、壁面の区域によって形成された多角形の基本輪郭を有するナットの、断面が変形された環状の鍔部が、成形された鍔部を形成しており、その外面は、ナットの壁面の区域の軸方向に対して互いに平行な縁から径方向に離れたところに延在する。この場合、収容スロットは、成形された鍔部の外面の近傍に設けられており、好ましくは、前記成形された鍔部には、断面が軸心方向に湾曲した外面が設けられている。
【0010】
好ましくは、2つの平行な外周縁を備える収容スロットの断面は、これら外周縁に対して傾いている。しかしながら、収容スロットをナットの直径面に延在させることも本発明の範疇内である。
【0011】
特に図7〜図10を用いて詳細に説明する、本発明の第1の好ましい実施形態である第1の変形例において、環状の鍔部の断面は、収容スロットがねじ孔に向って開口するように軸心方向に曲げられている。つまり、収容スロットの外周縁は、ねじ孔の方向に互いに離間している。
【0012】
特に図11〜図14を用いて詳細に説明する、本発明のさらなる特に好ましい実施形態である第2の変形例において、環状の鍔部の断面は、収容スロットがねじ孔に向って閉じるように軸心方向に曲げられている。つまり、収容スロットの外周縁は、実際には、ねじ孔の方向に互いと当接する。
【0013】
上記の両方の変形例において、曲げ成形された鍔部の端部領域に形成されたねじ山は、ナットの残りのねじ山に対してオフセットを有しており、結果として、このナットがボルトまたはねじに螺合されると、ボルトまたはねじのねじ山のフランクに対して作用する弾性力によって、本発明の閉止作用が生まれる。ナットの残りのねじ山に対する、曲げ成形された鍔部の端部領域に設けられたねじ山のオフセットは、比較的に小さく、ほんの数10分の1ミリメートル(mm)単位で、例えば、10分の1または10分の2ミリメートル(mm)でもよく、本発明の効果を奏するのに十分である。さらに、本発明によって示されるこのようなオフセットは、実際に、本発明に従い、単に環状の鍔部を軸心方向に曲げるだけで得ることができる。
【0014】
成形された鍔部のばね作用に変化を与えるように、詳細には、このばね作用がより柔軟になるように、好ましくは、環状の鍔部すなわち成形された鍔部の区域は、ナットの円周に沿って延在する。この点について、好ましくは、環状の鍔部/成形された鍔部の隣り合う区域が、遮断部、例えば、切り込みまたは他の隙間によって完全に、または一部において、互いに分離されている。別個の区域は、ナットの全円周に沿って延在する成形された鍔部と比較して、特定の用途に関してより効果的なばね作用を有することがある。
【0015】
保持および/または密封をする部材が収容スロット内に取り付けられ、収容スロットの外周縁を越えて軸心方向に突き出ており、例えば、ナットのねじ山に固定されるねじピンに内側から圧接するという構成は、特に注目すべきである。
【0016】
ナットを製造する本発明の方法において、円形の上部の自由縁を有する環状の鍔部が、ナットの基本輪郭を有するブランクナット(半加工ナット)の端面に一体的に形成されており、その断面が、当該上部の自由縁へと軸方向に移動される加圧工具によって、ブランクナットの長手軸心方向に湾曲される。さらに、環状の鍔部の上部の自由端は、これに隣接する、ブランクナットの端面へと円周方向に平行になるように移動され、この端面から離れたところに配置される。
【0017】
さらに、好ましくは、環状の鍔部は、変形時に、上部の自由縁における端部領域において据え込み鍛造をされることにより、この端部領域が、成形された鍔部の隣接する領域よりも大きい断面を有するようになる。
【0018】
本発明の方法のさらなる構成によると、雌ねじがブランクナットの軸方向の孔溝に切り込まれ、または別の方法でブランクナットに形成され、詳細には、この雌ねじは、曲げ成形された鍔部の端部領域にも切り込まれるか、または別の方法でこれに形成される。ナットを完成させるために、前記成形された鍔部は、さらに、雌ねじが形成された後に雌ねじに向ってオフセットされる。
【0019】
上記の工程が環状の鍔部の曲げ工程時に行われない場合、この工程が行われると、収容スロットの外周縁がねじ孔の方向に互いに離間するか、またはねじ孔の方向において一方が他方に当接する。このオフセットによって、ボルトまたはねじがナットに螺合されると、このボルトまたはねじのねじ山のフランクに弾性的なクランプ力が加わる。
【0020】
本発明の方法を実行するための工具は、ハウジング内に、加圧プランジャのための案内溝を有しており、この案内溝は、工具の端面の環状の周縁によって形成された、加工材料を収容するための領域で終端している。この加圧プランジャは、軸方向に変位自在であるようにして案内溝に嵌合されている。さらに、この環状の周縁は内面を有しており、この内面の断面は前記工具の端面に向って内側に湾曲されており、加圧動作時における環状の鍔部を湾曲させる。
【0021】
加圧プランジャが加工材料の環状の鍔部へと移動できるように、ハウジングを環状の鍔部に配置させ、加圧プランジャの加圧の前方の自由端を、加工材料の環状の鍔部内に位置決めすることが好ましいことが証明されている。
【0022】
本発明のさらなる構成によると、加圧の前方の自由端から離れたところにある加圧プランジャの端部には、少なくとも1つの径方向に突出した係止部材が設けられている。ハウジングの内側の段差は、前記係止部材の移動経路におけるこれに対向する係止部として設けられている。
【0023】
全体として、発明者によって想定された目的を達成するための優れた解決手段が設けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のさらなる利点、構成および詳細は、好ましい例示的な実施形態の以下の説明および図面に示されている。
【0025】
環状の加工材料50を機械加工する金属製の工具10は、この例示において長さaが76ミリメートル(mm)であり、直径dが約10ミリメートル(mm)である加圧プランジャ12を備えており、この例示において直径dが12ミリメートル(mm)であり、軸方向の厚さbが3ミリメートル(mm)である中央の係止板14が、当該加圧プランジャの上側(図1において)の端部に形成されている。加圧プランジャ12のこの直径d、つまり加圧の前方の端部15の直径の寸法は、ブランクナット52の孔溝(さらに後になって説明する)の直径に依存している。加圧プランジャ12は、この例示において軸方向の長さhが78ミリメートル(mm)であり外径cが約22ミリメートル(mm)であるスリーブ状のハウジング20の案内溝16内に変位自在に嵌合されている。ハウジングの長手軸心Aに沿って延びる案内溝16の直径eは、加圧プランジャ12の直径dよりも少し大きい。
【0026】
環状の鍔部24が、円筒状のハウジング20の外面22に、当該円筒状のハウジングの上部の開口周縁32から軸方向の距離nが23ミリメートル(mm)である位置において一体的に形成されている。第一に、ハウジング20のソケット状の区域28は、前記環状の鍔部24の上部(図1において)の環状の縁26によって形成される直径面Dで終わり、案内溝16を有しており、この直径面Dにおいてハウジング20の上部の区域30と合体し、この上部の領域は、前述の開口周縁32を備えている。第二に、案内溝16は、軸方向溝18へと開口し、係止板14のための対向する係止部材として環状の内側の段差17を形成しており、上記軸方向溝18は前記案内溝16の延長部であり、前記軸方向溝18の長さは、環状の鍔部24の開口周縁32からの軸方向の距離nによって決まり、軸方向溝18は、ハウジング20の上部の区域30に延在する。上部の区域30の3ミリメートル(mm)の壁厚zは、ソケット状の区域28の約5ミリメートル(mm)の壁厚zよりも薄い。さらに、環状の鍔部24は、ソケット状の区域28に近接した、当該環状の鍔部24の領域において、当該ソケット状の区域28に対して傾いた環状面25を有している。
【0027】
ハウジング20のソケット状の区域28の自由端は、高さiが約4ミリメートル(mm)であり、環状の周縁34によって形成されており、この環状の周縁34は、当該環状の周縁の環状の縁36から始まり長手軸心Aに向って約25°の角度wで傾く内面38を有する。この内面38は、長手軸心Aに対して断面が傾いている、ハウジングのソケット状の区域28の端面40で終わる。
【0028】
図1において、金属製の材料を有する加工材料50は、ハウジング20またはハウジング20の環状の周縁34と軸方向に対応している。この加工材料は、軸方向高さq(ブランクナット52の2つの端面54,54によって形成される)が約10ミリメートル(mm)である六角形の基本輪郭を持つブランクナット52の素材である。孔溝58が、加工材料の長手軸心Eに沿って、元来、ストレート面を有する中空のナット52の6つの壁面の区域56の間に延在している。例えば、5ミリメートル(mm)の高さqおよび小さい壁厚tを有する環状の鍔部64が、軸方向に対して平行に、かつ上部の端面54(図3において)に一体的に形成されており、内側の環状の軸受面55と、円形の基本輪郭を有する前記環状の鍔部64の上部の自由縁66とを形成している。
【0029】
工具10の加圧プランジャ12が、当該加圧プランジャ12の加圧の前方の端部15が上記軸受面55に合致するように、符号Qで示された基底部に載置された加工材料50へと同心状に移動されるが、すなわち、加工材料の内側の直径tは、加圧の前方の端部15の直径dよりも少し大きい。ハウジング20が加圧の方向Pに沿って下げられると、冷間押出工程の過程において、ハウジング20の環状の縁36の傾いた内面38および隣接する端面40が、図5および図6に示されているように、加工材料50の環状の鍔部64を変形して、軸心の方向に断面が湾曲した、成形された鍔部74を形成し、この成形された鍔部が孔溝58に形成されてから、雌ねじ60を形成、例えば、切削する。図7〜10に示されている、高さyを有し、軸方向に対して平行な壁面の区域56を備えたねじ用ソケット72を備えるねじ用締付ナット70は、このようにして製作される。上記孔溝58は、これに雌ねじが形成されることによってねじ用の孔すなわちねじ孔62へと形成される。前記ねじ用の孔すなわちねじ孔は、軸心の方向に断面が湾曲した上面または外面76を有する成形された鍔部74と軸方向に対向している。この成形された鍔部は、上記環状の鍔部64が断面変形の結果として圧縮されたときに形成され、内側の円周溝を、挿入リング(図示せず)のための収容スロット78として有している。雌ねじ60が形成されると、ハウジング20または対応する工具が環状の鍔部64に押し付けられ、環状の鍔部64が雌ねじ60に向って少し変形される。
【0030】
成形された鍔部74の外面76の近傍に延在する収容スロット78の断面は、図10に示すように、水平面に対する角度kで外周縁80に向って傾いているが、異なる形態では、成形された鍔部74の直径面に延在してもよく、すなわち、いかなる断面の傾きも有していない。図6には、成形工程時に据え込み鍛造がなされる、傾いた、成形された鍔部74の端部領域81が示されており、この成形工程の結果として、成形された鍔部74よりも本質的に断面の幅が広い、据え込み鍛造によるビード84が、この自由端に形成される。これら断面の差異は、図10を分かり易くするために、図10には再現されていない。
【0031】
図10には、軸方向に対して平行な壁面の区域56と成形された鍔部74の外面76との間にある、径方向の幅rの外側の突部82が示されており、この外側の突部82は、上述した上部の端面54の区域である。この外側の突部82の図示された径方向の幅rは、壁面の区域56の軸方向に対して互いに平行な縁57にのみ存在する。
【0032】
上述した挿入リングは図示されていないが、リング部材として収容スロット78内に狭持され、外周縁80を越えて軸心方向に突き出して、ねじ孔62内に配置されるねじピンまたはこれと同様なもの対して保持および/または密封をする部材として圧接する。この挿入リングは、機能に応じて、剛性を有する材料または限られた範囲内において柔軟である材料から製作される。
【0033】
図3に示されたブランクナット52の実施形態において、環状の鍔部64は、孔溝58に面した内面にねじ山を有していない。図7〜図10に示す機械加工済みのナットの実施形態、および図11〜図14における機械加工済みのナットの実施形態は、上記の図3の実施形態と異なり、環状の鍔部が、ねじ孔62に面した内面、すなわち端部領域81にねじ山を有している。
【0034】
端部領域81におけるねじ山は、わずかのオフセットしか持たない残りの雌ねじ60に対してオフセットを持っており、この例示において、0.1〜0.2ミリメートル(mm)である。したがって、ナット、例えば、図10からのナットまたは図14からのナットが螺合されると、成形された鍔部74は、符号Sで示された矢印の方向とは逆方向に「曲げ上がり」、ねじピッチが適切な度合いに達すると、ボルトまたはねじのねじ山のフランクに嵌まり込み、これにより、軸心方向に曲げられることによって符号Sで示される矢印の方向に作用するばねに相当する応力を生じさせて、環状の鍔部64の端部領域81に形成されたねじ山のオフセットによって生じる一定の応力を保持する。このようにして、ナットと、ボルトまたはねじとのねじ接続部が、開口を確実に閉じている。
【0035】
図7〜図10の実施形態を発展させた実施形態として、図11〜図14には、発展形態であるナットが示されており、このナットの場合、図1〜図10に示されているものと他のやり方であり、発展形態において収容スロット78がねじ孔62に面して閉じるようにして、環状の鍔部64の断面が軸心方向に曲げられている。この場合、収容スロット78の外周縁80は、ねじ孔62の方向に互いに当接する。すなわち、収容スロット78は、図14に示された、断面が滴形である縁を有しており、この結果として、収容スロット78において延在する外周縁80が、図10における角度kの発展形態である角度k’で互いに傾く。説明したように、雌ねじ60が端部領域81と残りのナットとに形成され、成形された鍔部74が雌ねじ60に向って変形された結果として、収容スロット78の外周縁80は、ねじ孔62に向って完全に互いと当接することができる。成形された鍔部74のこの後に続くオフセットは、この場合、成形された鍔部74の最終曲げ加工または据え込み鍛造(オフセットに相当するわずかな程度で)によって得られる。原則として、図10に示された実施形態において、オフセットはより顕著に形成することができ、他方、図14に示された実施形態においては、成形された鍔部74をより大きく曲げることにより、弾力のある確実な閉止力を得ることができる。このオフセットは、1〜2のねじピッチの範囲でなされてもよい。図10における実施形態の例では、このオフセットは1.5のねじピッチである。図14における実施形態の例では、このオフセットは1のねじピッチである。これら2つの実施形態において、成形された鍔部74の、収容スロットに隣接する端部領域81が、隣接する断面よりも厚いが、図6に示されているように比較的薄く、このため簡単に曲がることができので、ねじの処理および製造を簡略化でき特に効果的であることが証明されている。
【0036】
図15には、図3における加工材料と比べて発展した加工材料50’の一実施形態が示されており、この加工材料50’は、図3に示された加工材料50と同一の方法で、図5〜図14に示されたナットの基礎材として使用することができる。加工材料50’の場合、環状の鍔部の特定の区域のみが加工材料50’の円周に沿って延在する。この場合、3つの区域64’が設けられ、これらは、隙間65の形態での3つの遮断部によって互いに完全に分離されており、加工材料50’の端面54に一体的に形成されている。
【0037】
区域64’は、本発明の概念に応じたナットを得るために、上述したように(図5,図6)、軸心方向に曲げることができる。
【0038】
区域64’から成形される成形された鍔部のばね作用は、図7〜図14に示されているような全円周に延在する環状の鍔部のばね作用よりも、比較的に円滑かつ柔軟である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一部が断面で示された圧力生成工具と、これの長手軸心に対応する(離れたところにおいて)同様に一部が断面で示された加工材料とを示す側面図である。
【図2】図1における加工材料を示す上面図である。
【図3】図1および図2よりも拡大された加工材料を示す斜視図である。
【図4】加工材料の一部が収容された工具の一部が断面で示された側面図である。
【図5】変形された加工材料を有する工具の長手方向の断面を示す拡大詳細図である。
【図6】図5の矢印VIによって示された部分を示す拡大詳細図である。
【図7】図3の加工材料に対応する、ナットの変形された加工材料を示す図である。
【図8】機械加工がなされた加工材料すなわちナットを示す、一部が断面で示された側面図である。
【図9】図8のナットが機械加工された加工材料すなわちナットを示す上面図である。
【図10】図8よりも拡大された、機械加工された加工材料すなわちナットを示す部分図である。
【図11】一発展形態のナットであって、図3における加工材料に対応する、変形された加工材料を示す図である。
【図12】図11に示された発展の実施形態の機械加工された加工材料すなわちナットを示す、一部が断面で示された側面図である。
【図13】図11に示された発展の実施形態の機械加工された加工材料すなわちナットを示す上面図である。
【図14】図12よりも拡大された、図11に示された発展の実施形態の加工材料すなわちナットを示す部分図である。
【図15】図1および図2よりも拡大された、加工材料の発展の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10 工具
12 加圧プランジャ
16 案内溝
20 ハウジング
34 環状の周縁
40 工具の端面
50 加工材料
52 ブランクナット
54 ナットの端面
55 軸受面
62 ねじ孔
64 環状の鍔部
66 自由縁
70 ナット
78 内溝、収容スロット
E 長手軸心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ孔(62)と、当該ねじ孔の長手軸心(E)方向に、径に沿って円周状に設けられた内溝(78)とを有する金属製部材を備えたナットにおいて、
環状の鍔部(64)が、当該ナット(70)の端面(54)の1つに一体的に形成され、その断面が軸心方向に曲げられており、軸受面(55)として前記ねじ孔(62)を囲むこの端面の区域と、
当該環状の鍔部に直接形成された収容スロット(78)とを形成していることを特徴とするナット。
【請求項2】
請求項1において、壁面の区域(56)によって形成された多角形の基本輪郭を有するナットにおいて、
断面が変形された前記環状の鍔部(64)が、成形された鍔部(74)を形成し、その外面(76)が、当該ナット(70)の前記壁面の区域(56)の軸方向に対して互いに平行な縁(57)から径方向に離れたところ(r)に延在し、前記収容スロット(78)が、前記成形された鍔部の前記外面の近傍に設けられていることを特徴とするナット。
【請求項3】
請求項2において、断面が軸心方向に湾曲した、前記成形された鍔部(74)の外面(76)を有することを特徴とするナット。
【請求項4】
請求項2において、断面が下方に湾曲した、前記成形された鍔部(74)の内面を有することを特徴とするナット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、2つの平行な外周縁(80)を備える前記収容スロットの断面が、前記外周縁に対して傾いている(K’)ことを特徴とするナット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記収容スロット(78)に隣接する、前記成形された鍔部(74)の端部領域(81)が、当該端部領域の隣接する断面よりも厚いことを特徴とするナット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、前記環状の鍔部(64)の断面が、前記収容スロット(78)が前記ねじ孔(62)に向って開口するように軸心方向に曲げられており、
前記収容スロット(78)の前記外周縁(80)が、前記ねじ孔(62)の方向に互いに離間していることを特徴とするナット。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項において、前記環状の鍔部(64)の断面が、前記収容スロット(78)が前記ねじ孔(62)に向って閉じるように軸心方向に曲げられており、
前記収容スロット(78)の前記外周縁(80)が前記ねじ孔(62)の方向に互いに当接することを特徴とするナット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、前記環状の鍔部(64)が、前記端面(54)の外壁に延在することを特徴とするナット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、前記環状の鍔部(64)が、当該ナットの全円周に延在することを特徴とするナット。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項において、前記環状の鍔部の区域が当該ナットの円周に沿って延在し、前記環状の鍔部の隣り合う区域(64’)が遮断部(65)によって互いに分離されていることを特徴とするナット。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、前記収容スロット(78)に取り付けられた、保持および/または密封をする部材が、前記収容スロットの前記外周縁(80)を越えて軸心方向に突出していることを特徴とするナット。
【請求項13】
請求項12において、保持および/または密封をする環状の部材を備えることを特徴とするナット。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のナットを製作する方法において、
円形の上部の自由縁(66)を有する環状の鍔部(64)が、前記ナット(70)の基本輪郭を有するブランクナット(52)の端面(54)に一体的に形成されており、
その断面が、前記上部の縁へと軸方向に移動される加圧工具(10)によって、前記ブランクナットの長手軸心(E)方向に湾曲されることを特徴とする、ナットの製作方法。
【請求項15】
請求項14において、前記環状の鍔部(64)の前記上部の自由縁(66)が、前記ブランクナット(52)の前記端面(54)の隣接する内側の領域へと、円周方向に平行になるように移動され、この領域から離れたところに配置されることを特徴とする、ナットの製作方法。
【請求項16】
請求項15において、環状の内溝(78)が、前記端面(54)の前記内側の領域と前記環状の鍔部(64)の内面との間に形成されることを特徴とする、ナット製作方法。
【請求項17】
請求項14または16において、前記環状の鍔部(64)が、変形時に、上部の縁(66)における端部領域(81)において据え込み鍛造をされることを特徴とする、ナット製作方法。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項において、雌ねじ(60)が軸方向の孔溝(58)であり、前記ブランクナット(52)の成形された鍔部(74)の前記端部領域(80)
に切り込まれて形成されることを特徴とする、ナット製作方法。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか一項において、前記成形された鍔部(74)の周縁が、前記雌ねじ(60)が形成された後に、当該雌ねじに向ってオフセットされることを特徴とする、ナット製作方法。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか一項に記載のナット製作方法を実行するための工具において、
加圧プランジャ(12)のためのハウジング(20)の案内溝(16)が、工具の端面(40)の環状の周縁(34)によって形成された、加工材料(50)を収容するための領域で終わり、
前記加圧プランジャが、軸方向に変位自在であるように前記案内溝に嵌合されていることを特徴とする工具。
【請求項21】
請求項20において、前記環状の周縁(34)が内面(38)を有しており、
この内面の断面が、前記加工材料(50)の環状の鍔部(64)に圧接するために、前記ハウジング(20)の前記端面(40)に向って内側に湾曲されていることを特徴とする工具。
【請求項22】
請求項20または21において、前記加圧プランジャを前記加工材料の前記環状の鍔部(64)に移動できるように、前記ハウジング(20)が前記加圧プランジャに配置されていることを特徴とする工具。
【請求項23】
請求項22において、加圧の前方の自由端(15)から離れたところにある前記加圧プランジャ(12)の端部に、少なくとも1つの径方向に突出した係止部材(14)が設けられており、
前記ハウジング(20)の内側の段差(17)が、前記係止部材の移動経路における前記加圧プランジャの前記係止部材に係止される係止部として設けられていることを特徴とする工具。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれか一項において、前記ハウジング(20)の前記工具の端面(40)が、前記加工材料(50)の成形された鍔部(74)に位置決めすることができるように形成されていることを特徴とする工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−520929(P2009−520929A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546271(P2008−546271)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012418
【国際公開番号】WO2007/076968
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508186990)
【氏名又は名称原語表記】FLAIG,Hartmut
【Fターム(参考)】