説明

ナノインプリント方法およびモールド製造方法

【課題】ナノインプリント方法において、光硬化性組成物の揮発を抑制しつつ、残留気体を低減する。
【解決手段】凹凸を有するモールドと、基板上に形成した光硬化性組成物層とを密着させて凹凸の形状を光硬化性組成物層に転写するナノインプリント方法において、モールドおよび基板のいずれか一方または両方が石英からなり、モールドと光硬化性組成物とを、それらの間に、10kPa以上90kPa以下の気圧を有し、かつ、少なくとも70体積%がHeからなる気体を介在させた状態で密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸を有するモールドと、基板上に形成した光硬化性組成物層とを密着させてその凹凸の形状を光硬化性組成物層に転写するナノインプリント方法およびその方法を用いて新たなモールドを製造するモールド製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスおよび磁気記録メディア製造プロセスなどにおいて、数十nm〜数百nm単位の凹凸パターンを有するモールドを、基板上に形成した光硬化性組成物層に密着させてその凹凸パターンの形状を転写するナノインプリント技術が知られている。
【0003】
ところで、このナノインプリント技術においては、上記モールドと光硬化性組成物層を密着させる際の雰囲気ガスが、密着後においてもモールドと基板の間に残留し、この残留気体によって転写パターンに欠陥が発生することがある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、残留気体を透過させる多孔質の、モールドまたは基板を用いることにより、残留気体を低減させることが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、雰囲気ガスをヘリウム等で飽和させることにより、あるいは雰囲気ガスの圧力を低下させることにより、残留気体を低減させることが提案されている。
【0006】
また、モールドと光硬化性組成物層を密着させる処理を真空雰囲気下で行なうことにより、残留気体を低減させることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0140458号明細書
【特許文献2】特表2007−509769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、真空雰囲気下でモールドと光硬化性組成物層を密着させる上記方法には、減圧により光硬化性組成物が揮発し、その結果転写パターンに欠陥が発生するという問題がある。この問題は、微細パターンの成形性に優れた低粘度(低分子)の光硬化性組成物ほど揮発性が高い場合が多く、特に顕著に発生する。
【0009】
また、基板の微細加工精度を向上させるには、基板上への光硬化性組成物の塗布厚みを薄くすることにより、インプリント後の残膜を薄層化することが好ましい。しかし、光硬化性組成物層の塗布厚みを薄くすると、上記揮発の影響で光硬化性組成物の厚みにムラが生じ、光硬化性組成物の局所的な不足により転写パターンに欠陥が発生することがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、光硬化性組成物の揮発を抑制しつつ、残留気体を低減できるナノインプリント方法およびモールド製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のナノインプリント方法は、凹凸を有するモールドと、基板上に形成した光硬化性組成物層とを密着させて凹凸の形状を光硬化性組成物層に転写するナノインプリント方法において、モールドおよび基板のいずれか一方または両方が石英からなり、モールドと光硬化性組成物とを、それらの間に、10kPa以上90kPa以下の気圧を有し、かつ、少なくとも70体積%がHeからなる気体を介在させた状態で密着させることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のモールド製造方法は、上記ナノインプリント方法を用いてモールドとは反対の凹凸を有する新たなモールドを製造することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のナノインプリント方法およびモールド製造方法によれば、凹凸を有するモールドと、基板上に形成した光硬化性組成物層とを密着させて凹凸の形状を光硬化性組成物層に転写するナノインプリント方法において、モールドおよび基板のいずれか一方または両方が石英からなり、モールドと光硬化性組成物とを、それらの間に、少なくとも70体積%がHeからなる減圧した気体を介在させた状態で密着させることにより、残留気体中の少なくともHeが石英からなるモールドまたは基板を透過して外部に漏れ出すようにでき、残留気体を許容可能なレベルにまで低減できる。一方、Heが70体積%未満である場合には、外部に漏れ出す残留気体の量が減少し、残留気体を許容可能なレベルにまで低減できない場合がある。
【0014】
特に、その減圧の範囲を、残留気体を低減する効果が得られ、かつ、光硬化性組成物が揮発しない気圧範囲である、10kPa以上90kPa以下とすることにより、光硬化性組成物の揮発を抑制しつつ、残留気体を低減できる。その結果、光硬化性組成物の揮発や残留気体による、転写パターンの欠陥発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インプリント装置の概略構成図
【図2】モールドに形成した凹凸パターンの一例を示す図
【図3】実験例1における減圧後の圧力と欠陥数の関係を示すグラフ
【図4】実験例2における減圧後の圧力と欠陥数の関係を示すグラフ
【図5】実験例3における減圧後の圧力と欠陥数の関係を示すグラフ
【図6】実験例4における減圧後の圧力と欠陥数の関係を示すグラフ
【図7】実験例5における減圧後の圧力と欠陥数の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のナノインプリント方法の一実施形態について説明する。本発明のナノインプリント方法は、凹凸を有するモールドと、基板上に形成した光硬化性組成物層とを密着させてその凹凸の形状を光硬化性組成物層に転写するものである。まず、モールド、基板および光硬化性組成物について説明する。
【0017】
〔モールドについて〕
モールドは、表面に所望の凹凸パターン形状を有する構造体である。基板が石英以外の材料からなるものである場合には、石英からなるモールド(石英モールド)を用いるが、基板が石英からなるものである場合には、石英モールドを用いてもよいし、石英以外の材料からなるモールド(たとえばSiモールド)を用いてもよい。
【0018】
ここで、石英以外の材料からなるモールドの一例としてSiモールドを作製する方法について説明する。まず、Si基材上に、ノボラック系樹脂、アクリル樹脂などのフォトレジスト液をスピンコートなどにより塗布してフォトレジスト層を形成する。その後、Si基材にレーザー光(又は電子ビーム)を照射し、フォトレジスト表面に所定のパターンを描画露光する。その後、フォトレジスト層を現像処理し、露光部分を除去する。次いで、除去後のフォトレジスト層のパターンをマスクにしてRIE(Reacting Ion Etching)などにより選択エッチングを行い、所望の凹凸パターンを有するSiモールドを作製できる。
【0019】
石英モールドは、後述する本発明のモールド製造方法による反転モールドの製造プロセスを2回行なうことにより作製できる。具体的には、所望の凹凸を有する原盤モールド(石英モールドまたは石英以外の材料からなるモールド)に対して本発明のモールド製造方法を適用して、原盤モールドとは反対の凹凸を有する反転モールドを製造し、その製造された反転モールドに再度本発明のモールド製造方法を適用して、反転モールドとは反対の凹凸、つまり原盤モールドと同じ凹凸を有する複製モールド(石英モールド)を作成する。石英モールドの厚みは、通常0.3mm以上10mm以下であることが好ましい。0.3mm以下では、ハンドリングやインプリント中の押圧で破損しやすく、10mm以上では、石英内部のHe拡散速度が遅く、欠陥を低減するために長時間のインプリント時間を必要とするからである。
【0020】
なお、モールドは、光硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を施したものであってもよい。たとえばシリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤により離型処理を行なう。ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC-1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0021】
〔基板について〕
モールドが石英以外の材料からなるものである場合には、石英からなる基板(石英基板)を用いる。この場合、石英基板は、光透過性を有し、厚みが0.3mm以上10mm以下であれば、特に制限されることなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、石英基板表面をシランカップリング剤で被覆したものや、石英基板上にCr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属層を積層したものや、石英基板上にCrO、WO、TiOなどからなる金属酸化膜層を積層したものや、前期積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したもの、などが挙げられる。金属層または金属酸化膜層の厚みは、通常30nm以下、好ましくは20nm以下、にする。30nmを超えると光透過性が低下し、光硬化性組成物の硬化不良が起こりやすい。
【0022】
ここで、「光透過性を有する」とは、具体的には、基板にインプリントレジスト層が形成される一方の面から出射するように、基板の他方の面から光を入射した場合に、インプリントレジスト液が十分に硬化することを意味しており、少なくとも、前記他方の面から前記一方の面への所望の波長の光透過率が5%以上であることを意味する。
【0023】
また、石英基板の厚みは、通常0.3mm以上10mm以下であることが好ましい。0.3mm以下では、ハンドリングやインプリント中の押圧で破損しやすく、10mm以上では、石英内部のHe拡散速度が遅く、欠陥を低減するために長時間のインプリント時間を必要とするからである。
【0024】
一方、モールドが石英からなるものである場合には、基板は、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基板の形状は、例えば、情報記録媒体である場合には、円板状であってもよい。基板の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、基板の材質は、基板材料として公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂などが挙げられる。これらの基板材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、基板は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0025】
基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましい。基板の厚みが0.05mm未満であると、被パターン形成体とモールド構造体との密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性があるからである。
【0026】
〔光硬化性組成物について〕
本発明の光硬化性組成物は、少なくとも、重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、を含む。通常、光ナノインプリント法に用いられる光硬化性組成物は、重合性官能基を有する重合性化合物と、光照射によって前記重合性化合物の重合反応を開始させる光重合開始剤と、を含み、さらに必要に応じて、溶剤、界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。
【0027】
−重合性化合物(A)−
本発明における重合性化合物(A)は、重合性官能基を含む化合物である。前記重合性官能基としては、カチオン重合性官能基、ラジカル重合性官能基が挙げられ、ラジカル重合性官能基が好ましい。前記カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタン基が好ましい。また、前記ラジカル重合性官能基としては、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基が好ましい。本発明における重合性化合物(A)中に含まれる重合性官能基の数は、硬化性、粘度の観点から1〜4が好ましく、1〜2がさらに好ましい。
【0028】
本発明における重合性化合物(A)の炭素数としては、粘度、揮発性の観点から10〜30が好ましく、10〜20がさらに好ましく、10〜16が特に好ましい。また、重合性化合物(A)の分子量は、粘度、揮発性の観点から150〜400が好ましく、150〜300がさらに好ましく、150〜300が特に好ましい。
【0029】
前記重合性化合物(A)として低粘度の化合物を用いると、インプリント時のモールド充填性が向上し、ナノインプリント法によるパターン量産時においてモールド圧接圧力を高くしなくても速やかにモールドに硬化性組成物が充填され、モールド耐久性およびスループットの観点からより好ましいこととなる。しかし、低粘度の化合物は分子量が低く、揮発性が高くなる傾向がある。そのため、粘度と揮発性のバランスを考慮して化合物を選択する必要がある。
【0030】
本発明の中における重合性化合物の総含有量は、硬化性の観点から、溶剤を除く全成分中、50〜99.5質量%が好ましく、70〜99質量%がさらに好ましく、90〜99質量%が特に好ましい。また、重合性化合物(A)が重合性官能基を2つ有する化合物である場合には、本発明における重合性化合物(A)の含有量は全重合性化合物中1〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。また、重合性化合物(A)が重合性官能基を3つ以上有する化合物である場合には、本発明における重合性化合物(A)の含有量は、全重合性化合物中1〜70質量%が好ましく、より好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。即ち、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、特に重合性化合物(A)が2以上の重合性官能基を有する場合には、重合性化合物(A)と、重合性化合物(A)とは異なる他の重合性化合物と、を併用することが好ましい。
【0031】
上述のように本発明の光硬化性組成物は、さらに、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を目的に、重合性化合物として、さらに、重合性化合物(A)とは異なる他の重合性化合物を含んでいてもよい。重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和化合物;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和化合物が好ましい。
【0032】
前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和化合物(1〜6官能の重合性不飽和化合物)について説明する。
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和化合物(1官能の重合性不飽和化合物)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
【0033】
これらの中で特に、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0034】
重合性化合物として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和化合物を用いることも好ましい。本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和化合物の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0035】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0036】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和化合物の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0038】
前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0039】
本発明に好ましく使用することのできる前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0040】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0041】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明で用いる重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0043】
また、本発明で用いる重合性化合物としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0044】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0045】
本発明で用いる重合性化合物としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0046】
−光重合開始剤(B)−
本発明のナノインプリント硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性化合物を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤、光照射により酸を発生するカチオン重合開始剤が好ましく、より好ましくはラジカル重合開始剤であるが、前記重合性化合物の重合性基の種類に応じて適宜決定される。即ち、本発明における光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる必要がある。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0047】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量は、組成物に含まれる全重合性単量体に対して、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0048】
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等の光硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明の光硬化性組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0049】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。光重合開始剤は例えば市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)、ESACUR日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等が挙げられる。
【0050】
なお、本発明において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0051】
本発明で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、光硬化性組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させるなどの問題を生じる。
【0052】
本発明の光硬化性組成物は、重合性化合物(A)がラジカル重合性化合物であり、光重合開始剤(B)が光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であるラジカル重合性組成物であることが好ましい。
【0053】
(その他成分)
本発明の光硬化性組成物は、上述の重合性化合物(A)および光重合開始剤(B)の他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。本発明の光硬化性組成物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素・シリコーン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0054】
−界面活性剤−
本発明の光硬化性組成物には、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0055】
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。ここで、“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
【0056】
このような界面活性剤を用いることによって、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂などの、各種の膜が形成される基板上に本発明の光硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への光硬化性組成物の流動性の向上、モールドと組成物との間の剥離性の向上、組成物と基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明の光硬化性組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0057】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0058】
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0059】
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0060】
−酸化防止剤−
さらに、本発明のナノインプリント硬化性組成物には、公知の酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、重合性化合物の総量に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0061】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NO、SO(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0062】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0063】
−溶剤−
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には、種々の必要に応じて、溶剤を用いることができる。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には溶剤を含有していることが好ましい。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0064】
本発明の組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性の観点から、組成物の0〜95質量%が好ましく、0〜90質量%がさらに好ましい。特に膜厚100nm以下のパターンを形成する際には1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がさらに好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
【0065】
−ポリマー成分−
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては、組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0066】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性化合物との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては、組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。本発明の組成物において溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下であると、パターン形成性が向上する。また、パターン形成性の観点から樹脂成分はできる限り少ない法が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0067】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0068】
本発明の光硬化性組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、前記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0069】
本発明の光硬化性組成物において、溶剤を除く成分の25℃における粘度は1〜100mPa・sであることが好ましい。より好ましくは2〜50mPa・s、更に好ましくは5〜30mPa・sである。粘度を適切な範囲とすることで、パターンの矩形性が向上し、更に残膜を低く抑えることができる。
【0070】
〔ナノインプリント方法について〕
次に、図1を参照して、本発明のナノインプリント方法について説明する。なお、ここでは、基板が石英からなるものであるとして説明する。図1はナノインプリント装置10の概略構成を示す図である。ナノインプリント装置10は、上部に開口を有するチャンバー本体11と、チャンバー本体11に管路を介して接続された圧力調整機構12と、プレス部材13などを備えている。チャンバーの内部は、チャンバー本体11の上部に設置された石英基板20でシールされることで、外部と隔離される。チャンバーの外部は、He濃度が0.1体積%以下である大気である。圧力調整機構12は、配管12aを介して気体供給源(Heなど)に、配管12bを介して真空ポンプに連結され、チャンバー内部を、他のガスに置換、減圧、加圧することにより、チャンバー内部のガス雰囲気を調整するものである。
【0071】
まず、石英基板上20に、光硬化性組成物をスピンコートなどにより塗布して光硬化性組成物層50を形成し、図1に示すように、石英基板20とモールド30を、光硬化性組成物層50が形成された面と凹凸を有する面が対向するように設置する。
【0072】
次いで、圧力調整機構12により、チャンバー内部のHe濃度が95体積%になるまで、チャンバー内部のガスをHeに置換する(置換工程)。チャンバー内部のHe濃度は、残留気体を許容可能なレベルにまで低減できる点から少なくとも70体積%にすることが好ましい。チャンバー内部のHe濃度は、残留気体をより効果的に低減できる点から90体積%以上がより好ましく、95体積%以上がさらに好ましい。なお、Heが70体積%未満である場合には、He以外の成分が残留気体として石英を透過せず、また、光硬化性組成物内に残留気体を溶解しきれず、この残留気体によって転写パターンに欠陥が発生することがある。
【0073】
次いで、圧力調整機構12により、チャンバー内を10kPa以上90kPa以下に減圧する(減圧工程)。チャンバー内の減圧は、残留気体を低減する効果が得られ、かつ、光硬化性組成物が容易に揮発しない気圧範囲である、10kPa以上90kPa以下とすることが好ましい。また、残留気体をより効果的に低減できる点から30〜70kPaがより好ましく、40〜60kPaがさらに好ましい(後述する図3〜6のグラフ参照)。
【0074】
次いで、プレス部材13を図示しない駆動機構によって上昇させ、プレス部材13上に保持されているモールド30を石英基板20側に押し付けることにより、モールド30と、石英基板20上に形成された光硬化性組成物層50とを密着させる(密着工程)。ここで「モールド30と光硬化性組成物層50とを密着させる」というのは、モールド30の転写すべき凹凸の凸部だけでなく、凹部についても充分な密着状態が得られるようにすることを意味する。
【0075】
次いで、石英基板20の外部側からの大気圧(約101kPa)により、モールド30に対して石英基板20を(あるいは石英基板20に対してモールド30を)押し付け、その押し付けた状態を5秒間維持する(加圧工程)。このとき、石英基板20のモールド30側のHe分圧が外部側のHe分圧よりも高く、かつ、石英はHeを透過させることから、石英基板20とモールド30の間40に残留する気体中の少なくともHeが石英基板20を透過して外部に漏れ出し、残留気体の量が減少する。
【0076】
次いで、光硬化性組成物50を塗布した基板20にモールド30を押し付けた状態で、高圧水銀灯(露光ピーク波長365nm)により露光照度25mW/cmの紫外線を10秒間照射することにより光硬化性組成物50を硬化させ(露光工程)、硬化した光硬化性組成物50からモールド30を離型する。なお、この露光に際しては、露光照度を1mW/cm〜50mW/cmの範囲にすることが望ましい。1mW/cm以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあるからである。露光量は5mJ/cm〜1000mJ/cmの範囲にすることが望ましい。5mJ/cm未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の虞がある。
【0077】
以上の処理によって、モールド30の凹凸の形状が光硬化性組成物層50に転写される。なお、上記説明は、基板が石英からなるものであると想定し、チャンバー本体11の上部に基板を設置し、プレス部材13上にモールドを設置する場合について説明したが、モールドが石英からなるものである場合には、モールドをチャンバー本体11の上部に設置し、基板をプレス部材13上に設置してもよい。この場合には、基板と石英モールドの間に残留する気体は石英モールドを透過して外部に排出される。
【0078】
次に、実験例1〜5について説明する。
〔実験例1〕
<モールド>
モールドとして、0.525mm厚の4インチSiウエハの中心部に、1mmの領域Rを4分割した凹凸パターン領域が形成されたものを用いる(図2のR1〜R4)。モールド表面はディップコート法によりオプツールDSXで離型処理をする。領域Rの凹凸パターンは、長さ400um、幅100nm、ピッチ200nm、深さ100nmの溝形状からなる2000本のラインパターンが形成された領域と、直径100nm、ピッチ200nm、深さ100nmのホール形状からなる2000×2000個のドットパターンが形成された領域で構成される。
【0079】
<基板>
基板には0.7mm厚の6インチ石英ウエハを用いる。石英ウエハ表面は光硬化性組成物との密着性を向上させるため、事前にシランカップリング剤KBM−5103(信越化学工業(株)製)による表面処理を行う。
【0080】
<光硬化性組成物>
重合性化合物Aに、重合開始剤B(2質量%)、下記界面活性剤W−1(0.1質量%)、下記界面活性剤W−2(0.04質量%)、下記酸化防止剤A−1およびA−2(各1質量%)を加えて光硬化性組成物を調製する。本実験例では、光硬化性組成物の揮発によって発生する欠陥の抑制効果を確認するため、低粘度かつ比較的揮発性の高い物質であるベンジルアクリレートを重合性化合物として選択する。溶解性の悪いものについては少量のアセトンまたは酢酸エチルを加えて溶解させた後、溶媒を留去する。また、基板に塗布する際は、光硬化性組成物の膜厚が60nmになるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより適宜希釈して使用する。
【0081】
・重合性化合物(A)
A:ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学(株)製)
・光重合開始剤(B)
B:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO-L:BASF社製)
・界面活性剤
W−1:フッ素系界面活性剤(トーケムプロダクツ(株)製:フッ素系界面活性剤)
W−2:シリコーン系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックペインタッド31)
・酸化防止剤
A−1:スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)
A−2:アデカスタブAO503((株)ADEKA製)
【0082】
<インプリント条件>
・置換工程
0.7mm厚の6インチ石英ウエハでチャンバーをシールし、チャンバー内部のHe濃度が95体積%になるように、チャンバー内部の気体を圧力調整機構により置換する。
・減圧工程
チャンバー内部の気体圧力を圧力調整機構により所望の値に制御する。チャンバー内部の気体圧力を実施例では10kPa、20kPa、・・・、90kPaとし、比較例では5kPa、100kPaとする。
・加圧工程
モールドと基板を密着させた後、大気圧(約101kPa)により5秒間加圧する。
・露光工程
加圧後に、高圧水銀灯(露光ピーク波長365nm)を用いて露光照度25mW/cmの紫外線を10秒間照射することにより光硬化性組成物を硬化し、硬化した光硬化性組成物からモールドを離型する。
【0083】
〔実験例2〕
モールドとして、0.7mm厚の6インチ石英ウエハの中心部に、1mmの領域Rを4分割した凹凸パターン領域が形成されたものを用い、基板として0.525mm厚の4インチSiウエハを用いる。上記以外は実験例1と同条件とする。
【0084】
〔実験例3〕
モールドとして、0.7mm厚の6インチ石英ウエハの中心部に、1mmの領域Rを4分割した凹凸パターン領域が形成されたものを用い、基板として0.525mm厚の4インチ石英ウエハを用いる。上記以外は実験例1と同条件とする。
【0085】
〔実験例4〕
基板には7mm厚の6インチ石英ウエハを用いる。7mm厚の6インチ石英ウエハでチャンバーをシールし、チャンバー内部のHe濃度が70体積%になるように、チャンバー内部の気体を圧力調整機構により置換する。上記以外は実験例1と同条件とする。
【0086】
〔実験例5〕
置換工程において、チャンバー内部を置換する気体としてNを使用し、N濃度が95体積%となるようにチャンバー内部の気体を圧力調整機構により置換する。また、減圧工程におけるチャンバー内部の気体圧力を5kPa、10kPa、20kPa、・・・、90kPa、100kPaとする。上記以外は実験例1と同条件とする。
【0087】
上記各実験例1〜5において、減圧条件を5kPa、10kPa、20kPa、・・・、90kPa、または100kPaにして作製した転写パターンのそれぞれに対して、後述する欠陥数の測定方法により1mm当たりの欠陥数を測定し、その結果を図3〜7に示した。実験例1の結果は図3に、実験例2の結果は図4に、実験例3の結果は図5に、実験例4の結果は図6に、実験例5の結果は図7に、それぞれ示した。ここで、実験例1〜4中の、減圧条件が10kPa、20kPa、・・・、90kPaである場合は実施例であり、その他の場合は比較例である。
【0088】
図3〜6に示すように、減圧条件5kPa、100kPaにより得られた転写パターン(比較例)では1mm当たりの欠陥数が許容可能な最低レベルのパターン欠陥数(10個)を超えてしまった。それに対して、減圧条件10kPa、20kPa、・・・、90kPaにより得られた転写パターン(実施例)では、欠陥数が許容可能な最低レベルのパターン欠陥数(10個)以下となった。
【0089】
また、図3〜6に示すように、減圧条件が10〜90kPaである場合よりも、30〜70kPaである場合に欠陥数がより少なく、40〜60kPaである場合に欠陥数がさらに少なくなった。
【0090】
また、ナノインプリント処理では、加圧工程における加圧時間を長くするほど、残留気体に起因する欠陥の発生が低減できる。しかし、処理時間が長くなるほど生産性が低下してしまうので、許容可能な最低レベルのパターン欠陥数を実現するために必要となる時間が重要となる。そこで、出願人は、上記各実験例1〜5において、欠陥数10個/mmの実現に必要な時間を測定し、その結果を表1に併せて示した。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に示すように、比較例(太枠の外側に記載のデータ)では、欠陥数10個/mmの実現に必要な時間が5秒を超えてしまった。それに対して、実施例(太枠の内側に記載のデータ)では、5秒以下で実現できた。
【0093】
〔欠陥数の測定方法について〕
パターン部を光学顕微鏡(倍率50倍〜1,500倍)の暗視野測定で検査した。まず倍率50倍で1mm角の視野を規定する。次に測定視野を走査し、パターン欠陥の有無を粗く測定する。疑わしい箇所があった場合は、徐々に高倍率に上げて観察し、パターン欠陥の数をカウントする。パターン欠陥は、残留気体、異物、剥がれ、倒れ等により、正常なパターンで見られない散乱光を検出した場合を対象とした。残留気体による欠陥以外も含めて欠陥総数をカウントした。なお、暗視野で測定するとパターン欠陥がラインパターン1本、ドットパターン1個のレベルまで散乱光により検出できる。
【0094】
〔モールド製造方法について〕
以下、本発明のモールド製造方法の一実施形態について説明する。本発明のモールド製造方法は、本発明のナノインプリント方法を用いて、凹凸を有する原盤モールドからその原盤モールドとは反対の凹凸を有する新たなモールドである反転モールドを製造するものである。以下の説明において基板は、最終的に反転モールドとなるものである。
【0095】
まず、光硬化性組成物を含有するインプリントレジスト液を塗布してなるレジスト層が一方の面に形成された基板に対して、レジスト層にHe雰囲気中で原盤モールドを押圧し、押圧中に原盤モールドを押し当てた際、UV照射により光硬化性組成物の硬化処理を行う。その後、原盤モールドを剥離する。これによって、原盤モールドの凹凸パターンがレジスト層に転写されてなるレジストパターンが基板上に形成される。
【0096】
この際、Siからなる原盤モールドに対しては石英基板を用いる。石英からなる原盤モールドに対する基板は、その形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0097】
次に、上記形成されたレジストパターンをマスクとして基板をドライエッチングすることにより、エッチング部分を凹部とする原盤モールドとは反対の凹凸形状を基板上に形成する。これによって、原盤モールドとは反対の凹凸を有する基板、つまり反転モールドが得られる。
【0098】
なお、基板表面上に金属層を積層した基板を用いる際は、レジストパターンをマスクとして金属層をドライエッチングすることにより、レジストパターンに基づく凹凸形状の金属薄膜パターンを形成し、更に、その金属薄膜パターンをマスクとして基板をドライエッチングすることにより、金属薄膜パターンに基づく凹凸形状を基板上に形成して、原盤モールドとは反対の凹凸を有する反転モールドを得る。
【0099】
前記ドライエッチングとしては、基板に凹凸形状を形成できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
【0100】
前記イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。前記イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。イオンビームエッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
【符号の説明】
【0101】
10 ナノインプリント装置
11 チャンバー本体
12 圧力調整機構
13 プレス部材
20 基板
30 モールド
50 光硬化性組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有するモールドと、基板上に形成した光硬化性組成物層とを密着させて前記凹凸の形状を前記光硬化性組成物層に転写するナノインプリント方法において、
前記モールドおよび前記基板のいずれか一方または両方が石英からなり、
前記モールドと前記光硬化性組成物とを、それらの間に、10kPa以上90kPa以下の気圧を有し、かつ、少なくとも70体積%がHeからなる気体を介在させた状態で密着させることを特徴とするナノインプリント方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載のナノインプリント方法を用いて前記モールドとは反対の凹凸を有する新たなモールドを製造することを特徴とするモールド製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−210942(P2011−210942A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76992(P2010−76992)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】