説明

ナノインプリント用硬化性組成物、硬化物およびその製造方法、ならびに液晶表示装置用部材

【課題】硬化性が良好であり、経時保存安定性に優れ、特に硬化後のパターン精度低下抑制の観点で経時保存安定性に優れたナノインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合性単量体、(B)光重合開始剤、および(C)重合禁止剤を含み、かつ、該重合禁止剤の添加量が該重合性単量体に対して重量で300ppm〜5%であることを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ナノインプリントに用いられる硬化性組成物、硬化物およびその製造方法、ならびに該硬化物を用いた液晶表示装置用部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる場合(非特許文献1)と、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を用いる場合(非特許文献2)の2通りが提案されている。熱式ナノインプリントの場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0003】
一方、透明モールドを通して光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方式では、室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント方法などの新しい展開も報告されている。
【0004】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。第一の技術としては、高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製等に適用しようとするものである。第二の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合であり、その例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。なお、さらにその他の技術としては、マイクロ構造とナノ構造の同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、μ−TASやバイオチップの作製に応用しようとするものもある。前述の技術を含め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0005】
まず、前記第一の技術における高密度半導体集積回路作成への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術として提案されたナノインプリントリソグラフィ技術(光ナノインプリント法)を用いることが検討された。例えば、下記特許文献1にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。この流れに伴って半導体集積回路の作製にナノインプリントリソグラフィを適用するため、モールドと樹脂との剥離性、パターン転写精度などをはじめとした性質の検討が活発化し始めている。 一方、モールドの樹脂からの剥離性、パターン転写精度、基板密着性をはじめとした性質など、半導体集積回路作製にナノインプリントリソグラフィを適用するための検討が活発化し始めている。
【0006】
一方、前記第二の技術における液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットデイスプレイへのナノインプリントリソグラフィの応用例について説明する。LCD基板やPDP基板大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリソグラフィが、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。また、LCDなどの構造部材として用いられる透明保護膜材料や液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサーなどに対しても、光ナノインプリントリソグラフィの応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
【0007】
従来のフォトリソグラフィ技術を適用した永久膜としては、例えば、液晶パネルのTFT基板上に設けられる保護膜や、R,G、B層間の段差を低減しITO膜のスパッタ製膜時の高温処理に対する耐性を付与するためにカラーフィルタ上に設けられる保護膜等が挙げられる。これらの保護膜(永久膜)の形成においては、塗布膜の均一性、基材との密着性、200℃を超える加熱処理後の高い光透過性、平坦化特性、耐溶剤性、耐擦傷製等の種々の特性が要求されている。
【0008】
また、液晶ディスプレイに用いられるスペーサーの分野では、従来のフォトリソグラフィ法においては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきている。前記スペーサーは、一般には、カラーフィルタ形成後または前記カラーフィルタ用保護膜形成後に、カラーフィルタ基板上に光硬化性組成物を用いてフォオトリソグラフィによって10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。このような液晶ディスプレイの用いられるスペーサーには、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度、現像性、パターン転写精度、密着性等の性能が要求される。このため、ナノインプリント法を用いた前記透明保護膜やスペーサー等の永久膜(永久レジスト)の形成に好適な光硬化性組成物の開発が求められている。
【0009】
光ナノインプリントリソグラフィに用いられる材料の要求特性は適用する用途によって異なる場合が多いものの、プロセス特性についての要望は用途に依らず共通点がある。例えば、下記非特許文献3に示されている主な要求項目は、塗布性、基板密着性、低粘度(<5mPa・s)、剥離性、低硬化収縮率、速硬化性などである。これらの要求特性をいかに制御し、諸特性のバランスを取るかが材料デザインの鍵となる。このため、少なくともプロセス材料と永久膜とでは要求特性が大きく異なるため材料はプロセスや用途に応じて開発する必要がある。
【0010】
以上のように、永久膜としての主要技術課題としては、パターン精度、密着性、200℃を超える加熱処理後の透明性、高い機械的特性(外部圧力に対する強度)、耐擦傷性、平坦化特性、耐溶剤性、加熱処理時のアウトガス低減など、多くの課題が挙げられる。光ナノインプリント用硬化性組成物を永久膜として適用した場合においても、従来のアクリル樹脂などを用いたレジストと同様に、塗布膜の均一性、加熱処理後の透明性、耐擦傷性の付与が重要である。
【0011】
同時に、光ナノインプリント用硬化性組成物特有の課題としては、前記課題に加えて、モールドの凹部へのレジストの流動性を確保し、無溶剤もしくは少量の溶剤使用下での低粘度化が必要となること、および、光硬化後、モールドと容易に剥離させ、モールドへの付着が生じないこと、を考慮する必要があり、組成物設計の技術的難易度が一層高くなる。
【0012】
さらに近年では、ナノインプリント分野の工業化が進行しつつあり、工業化に際して新たな課題が生じてきている。その中でも、微細パターンを形成するための硬化性組成物の保存安定性が工業化にあたっての当面の課題とされており、上記の従来の課題とともにナノインプリント用の硬化性組成物における課題となっている。
【0013】
一方、従来から一般的な硬化性樹脂の分野においては十分重合反応が進行して硬化することが求められており、重合を阻害するようないわゆる重合禁止剤は添加することは好ましくないとされてきた。特に、光硬化性樹脂の分野では照射光に対する感度不良も生じるという懸念から、さらに重合禁止剤は添加されることは好ましくないとされていた。
【0014】
さらに、ナノインプリント用硬化性組成物の分野では目的とする硬化したパターンの精度が非常に重要な要素であるため、硬化不良を避けてパターン形成性を高める観点から、重合禁止剤を添加することはより一層好ましくないとの認識が一般的であった。
【0015】
しかしながら、硬化性樹脂組成物の保存性を向上させることを目的として、硬化不良がさほど問題とならない分野において重合禁止剤を加えることが提案されている。例えば、複雑形状品、大物品への注型を容易にするためにスラリー注型可能な時間を数分間延ばすことを目的として光硬化性樹脂に重合禁止剤を加えてアクリル樹脂製連続気孔多孔体を形成する例(特許文献3参照)や、オフセット印刷分野において3〜5日間の保存性を向上させることを目的として光硬化性樹脂に重合禁止剤を添加して感光性平板印刷版を形成する例(特許文献4および5参照)が挙げられる。これらはいずれも短期間の保存安定性を向上させることが目的であり、硬化物の硬化性、硬化物のナノメートルレベルでの精度、長期間の保存安定性についてはいずれも検討されていない。
【0016】
これに対し、光ナノインプリント用硬化性組成物の分野では重合禁止剤を加える例はいまだ知られていない。例えば、半導体集積回路作製用の光ナノインプリント用エッチングレジストとして、(メタ)アクリレート、光重合開始剤を含む光硬化性樹脂を用いる例が挙げられているが、重合禁止剤を用いた光ナノインプリント用硬化性組成物を実際に用いた例はなく、重合禁止剤を用いることが好ましいとの示唆や重合禁止剤を用いた際の課題も記載されていない(特許文献6および非特許文献4参照)。
【0017】
このように、光ナノインプリント用の硬化性組成物については、種々の材料が開示されているものの、永久膜の作製に適した硬化性組成物については十分な設計指針が示されていないのが現状である。
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】特開2003−226709号公報
【特許文献4】特開平9−244243号公報
【特許文献5】特開平9−134011号公報
【特許文献6】特開2007−84625号公報
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【非特許文献3】最新レジスト材料ハンドブック、P1、103〜104(2005年、情報機構出版)
【非特許文献4】M.Verheijen et al.:J.Vac.Sci.Technol.B14(6),4124(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記実情に鑑みて成し遂げられたものであり、光硬化性に優れたナノインプリント用硬化性組成物、特にフラットパネルディスプレイ等の永久膜に好適な組成物を提供することを目的とする。すなわち、本発明の第一の目的は、硬化性が良好であり、経時保存安定性に優れ、特に硬化後のパターン精度低下抑制の観点で経時保存安定性に優れたナノインプリント用硬化性組成物を提供することである。また、本発明の第二の目的は、該硬化性組成物を用いた硬化膜およびその製造方法、ならびに該硬化膜を用いた液晶表示装置用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
しかしながら、本発明者が、保存安定性の改善を目的として従来忌避されていた重合禁止剤をナノインプリント用硬化性組成物に添加したところ、従来から懸念されていた硬化不良は起こらず、インプリントできることを見出した。また、長期間における保存安定性という観点からも十分満足できる性質を有していることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明者は下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
[1] (A)重合性単量体、(B)光重合開始剤および(C)重合禁止剤を含み、かつ、該重合禁止剤の添加量が該重合性単量体に対して重量で300ppm〜5%であることを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物。
[2] 前記重合禁止剤の添加量が前記重合性単量体に対して重量で1000ppm〜5%であることを特徴とする[1]に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[3] さらに界面活性剤を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[4] 前記(A)重合性単量体が(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[5] さらに酸化防止剤を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[6] 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする[3]〜[5]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[7] 前記(C)重合禁止剤が芳香族ポリオール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、キノン系化合物、N−オキシル系化合物およびアミン系化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[8] 前記(C)重合禁止剤が芳香族ポリオール系化合物またはアミン系化合物であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[9] 前記(C)重合禁止剤がヒドロキノン類、カテコール類、フェノチアジン、フェノキサジンのいずれかであることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
[11] [10]に記載の硬化物を含むことを特徴とする液晶表示装置用部材。
[12] [1]〜[9]のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基板上に塗布してパターン形成する工程と、前記パターン形成層にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光照射する工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
[13] さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする[12]に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、経時保存安定性に優れ、硬化後のパターン精度低下抑制に優れたナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を提供することが可能になる。また、本発明の硬化膜はパターン精度が高く、優れた物性を有すため液晶表示装置用部材に好適に用いることができる。また、本発明の硬化膜の製造方法によれば該硬化膜を生産性よく簡便に製造することができる。本発明の液晶表示装置用部材は本発明の硬化膜を用いているため、パターン精度が高く、優れた物性を有す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0023】
以下において本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、単量体とモノマーは同一である。本発明における単量体は、オリゴマー、ポリマーと区別し、質量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、官能基は重合に関与する基をいう。
なお、本発明で言うナノインプリントとは、およそ数μmから数十nmのサイズのパターン転写をいい、ナノオーダのものに限られるものではないことは言うまでもない。
【0024】
[ナノインプリント用硬化性組成物]
本発明のナノインプリント用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある)は、(A)重合性単量体、(B)光重合開始剤、および(C)重合禁止剤を含み、かつ、該重合禁止剤の添加量が該重合性単量体に対して重量で300ppm〜5%であることを特徴とする。
本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、上記特徴を有しているため、硬化前においては保存安定性が高く、微細凹凸パターン形成能に優れたものとすることができる。また、硬化後においてはパターン精度に優れており、さらには、他の諸点において総合的に優れた塗膜物性とすることができる。そのため、本発明の組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに広く用いることができる。また、特に好ましい態様においては、さらに本発明の組成物の基板密着性をも顕著に改良することもできる。
【0025】
即ち、本発明の組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに用いる場合、以下のような特徴を有するものとすることができる。
(1)室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいずれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい。
(2)組成物の保存安定性が高く、経時で増粘、ゲル化するなどの問題が起こりにくいため、組成物を調液した後も長期間にわたりパターン精度の低下が見られない。
(3)硬化後の硬化膜は機械的性質に優れ、塗膜と基板の密着性に優れ、塗膜とモールドの剥離性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる。
(4)塗布均一性に優れるため、大型基板への塗布・微細加工分野などに適する。
【0026】
例えば、本発明の組成物は、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサ、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用できるようになる。
【0027】
((A)重合性単量体)
本発明の組成物は、組成物粘度、膜硬度、可とう性等の改良を目的に重合性単量体を含んでおり、この目的のためにはエチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を併用することが好ましい。具体的には、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−安息香酸アリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシ−安息香酸アリルエステル、p−イソプロペニルフェノール、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールが例示される。
【0028】
さらに他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−アリルオキシ−プロピルエステル、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0029】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アクリル酸−2−アクリロイルオキシ−3−アリルオキシ−プロピルエステル等が本発明に好適に用いられる。
【0030】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0032】
本発明で用いる他の重合性単量体として、オキシラン環を有する化合物も採用できる。オキシラン環を有する化合物としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0033】
好ましく使用することのできるエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0034】
これらの成分の中、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0035】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0037】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は、適宜選択すれば良く、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0038】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
その他、本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニル化合物としてN−ビニル化合物を用いることもできる。N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0040】
また、本発明で用いる他の重合性単量体として、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0041】
その他、本発明の1官能重合体と併用できるスチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができ、ビニルナフタレン誘導体としては、例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0042】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0043】
本発明で用いる他の重合性単量体として、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを配合できる。例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0044】
前記重合性単量体は、(メタ)アクリレート化合物であることが光硬化性の観点から、より好ましい。
【0045】
前記重合性単量体は、組成物中に、10〜99質量%の範囲で含むことが好ましく、50〜99質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0046】
(多官能オリゴマーやポリマー)
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、上記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーやポリマーを本発明の目的を達成する範囲で配合することができる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0047】
((B)光重合開始剤)
本発明の組成物には、光重合開始剤が用いられる。本発明に用いられる光重合開始剤は、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%含有し、好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の割合が0.1質量%以上とすることにより、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等のナノインプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明の組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0048】
本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。また、光重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上用いてもよい。
【0049】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)、ESACUR日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4‘−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイル ビフェニル、4−ベンゾイル ジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等が挙げられる。
【0050】
本発明の重合開始のための光は、紫外光、近紫外光、遠紫外光、可視光、赤外光等の領域の波長の光または、電磁波だけでなく、放射線も含まれ、放射線には、例えば、マイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、さらに全面露光することも可能である。
【0051】
本発明で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、本発明のナノインプリント用硬化性組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させたりするなどの問題を生じる。ガスを発生させないものは、モールドが汚染されにくく、モールドの洗浄頻度が減少したり、本発明のナノインプリント用硬化性組成物がモールド内で変形したりしにくいので転写パターン精度を劣化させにくい等の観点で好ましい。
【0052】
((C)重合禁止剤)
本発明の組成物には、保存安定性を向上させるために重合禁止剤が用いられる。重合禁止剤とは重合開始剤もしくは重合性単量体に生成したラジカルが成長反応を起こす前にそのラジカルをトラップする能力を持つ化合物であり、重合を阻害する働きを持つ。
一般に感度不良の懸念から光硬化性組成物には重合禁止剤を添加しないことが好ましく、ナノインプリント用組成物に関しては、パターン形成性の悪化が懸念されることから、なおのこと重合禁止剤を添加しないことが好ましいとされていた。本発明の組成物では長期間にわたる保存安定性の改善を目的として重合禁止剤が添加されているが、懸念していた硬化不良は見られずにナノインプリントに好適な特性を維持できることがわかった。さらにそれどころか、重合禁止剤を特定量添加することにより、硬化膜の基板密着性が向上するという予期せぬ効果をも得られることを見出した。このように、パターン精度をナノメーターレベルで要求されるナノインプリント用組成物に対して重合禁止剤を添加しても硬化不良が起こらず、かつ、6ヶ月もの長期間経過した後でもナノインプリント分野における基準での良好なパターンを形成できることは従来の常識的に予想に反するものであり、予想外な効果であった。さらに、基板密着性が重合禁止剤によって高まることについては従来検討されていないどころか予想すらされておらず、本願で初めて見出した顕著な効果である。
【0053】
本発明で用いられる重合禁止剤としては、例えば、芳香族ポリオール系化合物、キノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、アミン系化合物、銅類およびN−オキシル系化合物等を用いることができる。
【0054】
ここで、本明細書中において、前記「芳香族ポリオール系化合物」とは芳香環にフェノール性ヒドロキシル基が少なくとも2つ有する化合物および該ヒドロキシル基が置換された誘導体を表し、かつ、誘導体である場合は少なくとも1つの無置換のフェノール性ヒドロキシル基を有するものをいう。また、芳香環の他の水素原子が置換されていても無置換であってもよいが、無置換であることが好ましい。前記芳香環の炭素数は6〜14であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。また、前記フェノール性ヒドロキシル基の数は2〜4であることが好ましく、2個であることがより好ましい。このような芳香族ポリオール系化合物としては、例えば、ヒドロキノン類、4−メトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、カテコール類等を挙げることができ、この中でもp−tert−ブチルカテコール、4−メトキシフェノールおよび4−メトキシ−1−ナフトールが好ましく、4−メトキシフェノールおよび4−メトキシ−1−ナフトールがより好ましい。
【0055】
本明細書中において、前記「キノン系化合物」とはキノン類およびその誘導体を表す。このようなキノン系化合物としては、例えば、ナフトキノンおよびベンゾキノン等が挙げられ、この中でもベンゾキノンが好ましい。
【0056】
本明細書中において、前記「ヒンダードフェノール系化合物」とはベンゼン環にフェノール性ヒドロキシル基を1つ有し、ベンゼン環の2位および6位がともにかさ高いアルキル基(水素原子やメチル基以外)であり、かつ、ベンゼン環のその他の水素原子に酸素原子が直接結合していないことを特徴とする化合物およびその誘導体を表す。このようなアルキルフェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等が挙げられ、この中でも2,6−ジ−tert−ブチルフェノールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが好ましい。
【0057】
本明細書中において、前記「N−オキシル系化合物」とは、C・O−N結合のようにラジカル成長末端を一時的に共有結合種として安定化できる−N−O結合を有する基を有する化合物を表す。このようなN−オキシル系化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられ、この中でも2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが好ましい。
【0058】
本明細書中において、前記「アミン系化合物」とは、アンモニアの水素原子を置換または無置換の炭化水素基で少なくとも1つ置換した化合物をいう。本発明のアミン系化合物は第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンのいずれでもよい。また前記炭化水素基が環を形成していてもよく、形成する環は炭化水素環であってもヘテロ環であってもよい。また、窒素原子の近傍にかさ高いアルキル基が存在しないことが好ましい。このようなアミン系化合物としては、アルキル化ジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェノキサジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げられ、この中でも4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、フェノチアジンおよびフェノキサジンが好ましく、フェノチアジンおよびフェノキサジンが特に好ましい。
【0059】
本明細書中において、前記「銅類」とは、無機または有機銅類を表す。このような銅類としては、ジメチルジチオアルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、硫酸銅等を挙げられ、この中でもジエチルジチオカルバミン酸銅がより好ましい。
【0060】
これらの中でも、重合性単量体への溶解性や溶解時の着色の観点から、前記芳香族ポリオール系化合物、前記ヒンダードフェノール系化合物、前記N−オキシル系化合物および前記アミン系化合物が好ましい。また、前記芳香族ポリオール系化合物および前記アミン系化合物がより好ましい。
【0061】
本発明において、前記重合禁止剤の添加量は、本発明の重合性単量体量に対して重量で300ppm〜5%(50000ppm)の割合で配合される。前記重合禁止剤添加量は1000ppm〜5%であることが好ましく、2000ppm〜5%であることがより好ましく、5000ppm〜5%であることが特に好ましい。
前記重合禁止剤の添加量が重合性単量体量に対して重量で300ppm以上であれば、経時による増粘やパターン精度の悪化を防ぐことができ、重量で5%以下であれば、光硬化性組成物の照射光に対する感度が十分得られる。
また、前記重合禁止剤の添加量が重合性単量体量に対して重量で1000ppm〜5%であれば上記効果に加えて基板密着性が向上することとなり好ましく、2000ppm〜5%であればさらに基板密着性が向上することとなりより好ましく、5000ppm〜5%であればよりさらに基板密着性が向上することとなり特に好ましい。
【0062】
(界面活性剤)
本発明の組成物には、界面活性剤を含むことができる。本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001未満では、塗布の均一性の効果が不十分であり、一方、5質量%を越えると、モールド転写特性を悪化させるため、好ましくない。
界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。
ここで、フッ素・シリコーン系界面活性剤とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることにより、本発明の組成物を、半導体素子製造用のシリコーンウェーハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成されるなど基板上の塗布時に起こるストリエーションや鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決する目的、およびモールド凹部のキャビティ内への組成物の流動性を良くし、モールドとレジスト間の剥離性を良くし、レジストと基板間の密着性を良くする、組成物の粘度を下げる等が可能になる。
【0063】
本発明で用いる非イオン性フッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)、商品名サーフロン「S−382」(旭硝子社製)、EFTOP「EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100」(トーケムプロダクツ社製)、商品名PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA社)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18(いずれも(株)ネオス社製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(いずれもダイキン工業(株)社製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられ、非イオン性ケイ素系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ、パイオニンD6315(いずれも竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業社製)、KP−341(信越化学工業社製)が挙げられる。
本発明で用いる、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物に用いられる界面活性剤としては、電圧保持率の観点から、非イオン性(ノニオン系)の界面活性剤が好ましい。
【0065】
(酸化防止剤)
さらに、本発明の組成物には、公知の酸化防止剤を含むことができる。本発明に用いられる酸化防止剤は、全組成物中、例えば、0.01〜10質量%含有し、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
酸化防止剤は、酸素ラジカルをトラップする能力を有し、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、または分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0066】
酸化防止剤の市販品としては、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業製)、アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0067】
(その他の成分)
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、有機金属カップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光増感剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、連鎖移動剤を添加することができる。これらについて以下説明する。なお、その他流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0068】
剥離性をさらに向上する目的で、本発明の組成物には、離型剤を任意に配合することができる。具体的には、本発明の組成物の層に押し付けたモールドを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離できるようにする目的で添加される。離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系化合物等が何れも使用可能である。また、これらの離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
【0069】
シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる上記光硬化性樹脂と組み合わせた時にモールドからの剥離性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性または変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当し、一般的にハードコート用組成物で用いられているシリコーン系レベリング剤の適用も可能である。
【0070】
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0071】
変性シリコーンオイルは組成物成分との適度な相溶性があることが好ましい。特に、組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明の組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の、光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明の組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
【0072】
トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く剥離性に優れており、表面にブリードアウトしても密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
上記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0073】
離型剤を本発明の組成物に添加する場合、組成物全量中に0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましく、0.01〜5質量%の範囲で添加することがより好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、モールドとナノインプリント用硬化性組成物層の剥離性向上効果が不充分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
離型剤の割合が0.01質量%以上とすることにより、モールドとナノインプリント用硬化性組成物層の剥離性向上効果が充分となる。一方、離型剤の割合が上記範囲を10質量%以内だと、組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じにくく、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害しにくく、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こしにくい等の点で好ましい。
【0074】
本発明の組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0075】
本発明の組成物に用いるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;および、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0077】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0078】
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0079】
上記有機金属カップリング剤は、ナノインプリント用硬化性組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。有機金属カップリング剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、有機金属カップリング剤の割合を10質量%以下とすることにより、組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
【0080】
紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、ナノインプリント用硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0081】
光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0082】
老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0083】
本発明の組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0084】
本発明の組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加しても良い。密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2'−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0085】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0086】
本発明の組成物には、塗膜の視認性を向上するなどの目的で、着色剤を任意に添加してもよい。着色剤は、UVインクジェット組成物、カラーフィルタ用組成物およびCCDイメージセンサ用組成物等で用いられている顔料や染料を本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。本発明で用いることができる顔料としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物であり、具体的には鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、金属複合酸化物を挙げることができる。有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 11, 24, 31, 53, 83, 99, 108, 109, 110, 138, 139,151, 154, 167、C.I.Pigment Orange 36, 38, 43、C.I.Pigment Red 105, 122, 149, 150, 155, 171, 175, 176, 177, 209、C.I.Pigment Violet 19, 23, 32, 39、C.I.Pigment Blue 1, 2, 15, 16, 22, 60, 66、C.I.Pigment Green 7, 36, 37、C.I.Pigment Brown 25, 28、C.I.Pigment Black 1, 7および、カーボンブラックを例示できる。着色剤は組成物の全量に対し、0.001〜2質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0087】
また、本発明の組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0088】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0089】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0090】
さらに本発明の組成物には、光重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0091】
本発明の組成物における光増感剤の含有割合は、該組成物中、15質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下が好ましい。光増感度剤含有割合の下限は特に限定されないが、効果を発現するためには、光増感剤含有割合の下限は0.1質量%程度である。
【0092】
本発明の組成物には、光硬化反応の促進などの目的で、紫外線等のエネルギー線を受けることにより光重合を開始させる光酸発生剤を添加してもよい。
【0093】
前記光酸発生剤としては、米国特許第4,139,655号明細書に記載のチオビリリウム塩、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、o−ニトロベンジルエステル化合物、イミドスルホネート化合物、ビススルホニルジアゾメタン化合物、オキシムスルホネート化合物を挙げることができる。
【0094】
本発明で用いることができる光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物を広く採用することができる(イメージング用有機材料、有機エレクトロニクス材料研究会編、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。これらの化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Voi.71 No.11(1998年)、イメージング用有機材料(有機エレクトロニクス材料研究会編、ぶんしん出版(1993年))に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0095】
光酸発生剤の市販品としては、IRGACURE261、IRGACURE OXE01、IRGACURE CGI-1397(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。上記の光酸発生剤は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0096】
また、上記酸発生剤は前記光重合開始剤として組み合わせて用いることができる。この場合、光酸発生剤は0.05〜3.0質量%の範囲で用い、光重合開始剤と光酸発生剤併せて、0.5〜15.0質量%の範囲で用いることが望ましい。
【0097】
本発明の組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2'−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2',4'−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0098】
本発明の組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミンならびに、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0099】
本発明の組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加しても良い。具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0100】
(有機溶剤)
本発明の組成物は、有機溶剤の含有量が、全組成物中、3質量%以下であることが好ましい。すなわち本発明の組成物は、好ましくは特定の1官能およびまたは2官能の単量体を反応性希釈剤として含むため、本発明の組成物の成分を溶解させるための有機溶剤は、必ずしも含有する必要がない。また、有機溶剤を含まなければ、溶剤の揮発を目的としたベーキング工程が不要となるため、プロセス簡略化に有効となるなどのメリットが大きい。従って、本発明の組成物では、有機溶剤の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。このように、本発明の組成物は、必ずしも、有機溶剤を含むものではないが、反応性希釈剤では、溶解しない化合物などを、本発明の組成物として溶解させる場合や粘度を微調整する際など、任意に添加してもよい。本発明の組成物に好ましく使用できる有機溶剤の種類としては、ナノインプリント用硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであれば良く、かつこれらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0101】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソフチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。これらは1種を単独使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
これらの中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが特に好ましい。
【0102】
(粘度)
本発明の組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明の組成物は、溶剤を除く組成物の25℃における粘度が、3〜18mPa・sであり、好ましくは5〜15mPa・sであり、より好ましくは7〜12mPa・sである。本発明の組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じにくい傾向にある。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる傾向にあり、好ましい。一方、本発明の組成物の粘度を18mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなり好ましい。
【0103】
(表面張力)
本発明の組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させるという効果が得られる。
【0104】
(水分量)
なお、本発明の組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0105】
(調製)
本発明の組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。前記ナノインプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0106】
[硬化膜]
次に、本発明の組成物を用いた本発明の硬化膜(特に、微細凹凸パターン)について説明する。本発明では、本発明の組成物を塗布して硬化して本発明の硬化膜を形成することができる。
【0107】
また、基板または、支持体上に本発明の組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもできる。
【0108】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることがのぞましく、その濃度としては、1000ppm以下、望ましくは100ppm以下にすることが必要である。
【0109】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいても良い。また、輸送、保管に際しては、常温でも良いが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御しても良い。勿論、反応が進行しないレベルで遮光する必要がある。
【0110】
[液晶表示装置用部材]
また、本発明の硬化物は、半導体集積回路、記録材料、あるいは液晶表示装置用部材として好ましく適用することができ、その中でも液晶表示装置部材であることがより好ましく、フラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することが特に好ましい。
【0111】
[硬化膜の製造方法]
以下において、本発明の組成物を用いた硬化膜の製造方法について述べる。
本発明の組成物は、光もしくは光及び熱により硬化させることが好ましい。具体的には、基板または、支持体上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布し、溶剤を乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射および加熱により硬化させる。通常、光照射および加熱は複数回に渡って行われる。本発明の硬化膜の製造方法によるナノインプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0112】
本発明の硬化物は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、本発明の組成物を塗布することにより形成することができる。本発明の組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmである。また、本発明の組成物は、多重塗布してもよい。
【0113】
本発明の組成物を塗布するための基板または支持体は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0114】
本発明の組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
【0115】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
更に、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0116】
本発明の組成物を硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。
【0117】
次に本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基板の上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、光透過性モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させる。また、光透過性基板上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0118】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0119】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。形状は板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0120】
上記本発明で用いられるモールドは、本発明の組成物とモールドとの剥離性を向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業製、オプツールDSXや住友スリーエム製、Novec EGC−1720等の市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0121】
本発明の硬化膜の製造方法を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、通常、モールドの圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凸部の本発明の組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0122】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとナノインプリント用硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射しても良い。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲で行われる。
【実施例】
【0123】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0124】
[実施例1]
(ナノインプリント用硬化性組成物の調製)
下記重合性単量体R−1(40質量部)、下記重合性単量体S−1(30質量部)、下記重合性単量体T−1(30質量部)、下記光重合開始剤P−1(2質量%)、下記重合禁止剤F−1、下記界面活性剤W−1(0.1質量%)および下記界面活性剤W−2(0.04質量%)を加えて実施例1のナノインプリント用硬化性組成物を調製した。
【0125】
(光照射による硬化)
下記表1および2に示す単量体、光重合開始剤、界面活性剤、酸化防止剤とからなる各組成物を調整し、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、モールドとして、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILPOT184」を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするものを用いた。装置内を真空とした後(真空度10Torr(約1.33kPa)、モールドを基板に圧着させ、窒素パージ(1.5気圧:モールド押し圧)を行い装置内を窒素置換した。これにモールドの裏面から照度10mW/cm2で露光量240mJ/cm2の条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。
【0126】
(加熱による硬化)
上述の方法により露光して得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱することにより完全に硬化させた。
【0127】
<1官能単量体>
R−1:ベンジルアクリレート(ビスコート#160:大阪有機化学社製)
R−2:(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート(ビスコートOXE10 大阪有機化学工業製)
R−3:N−ビニル−2−ピロリドン
R−4:4−アクリロイルオキシ−安息香酸アリルエステル
【0128】
<2官能単量体>
S−1:ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製)
S−2:アクリル酸−2−アクリロイルオキシ−3−アリルオキシ−プロピルエステル
【0129】
<3官能以上の単量体>
T−1:トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM−309:東亞合成社製)
【0130】
<重合性オリゴマー>
O−1:Ebecryl605(エポキシジアクリレートオリゴマー;ダイセルUCB社製)
【0131】
<光重合開始剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
P−2:Irgacure907(Ciba社製)
【0132】
<重合禁止剤>
F−1:ヒドロキノンモノメチルエーテル(別名:4−メトキシフェノール)(東京化成工業社製)
F−2:4−メトキシ−1−ナフトール(東京化成工業社製)
F−3:フェノチアジン(東京化成工業社製)
F−4:フェノキサジン(東京化成工業社製)
【0133】
<非イオン性界面活性剤>
W−1:非フッ素系界面活性剤(竹本油脂(株)製:パイオニンD6315)
W−2:フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックF780F)
W−3:フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックR08)
【0134】
<酸化防止剤>
A−1:スミライザーGA80(住友化学(株)製)
A−2:アデカスタブAO503(アデカジャパン(株)製)
【0135】
[実施例2〜6]
実施例1において、上記ナノインプリント用硬化性組成物をそれぞれ下記表1記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6の組成物を調製した。なお、下記表1のうち、重合禁止剤合計とは、単量体に含まれる重合禁止剤と添加した重合禁止剤の合計を表す。
【0136】
[比較例1]
実施例1において、重合禁止剤を除いた以外は同様にして比較例1の組成物を調製し、レジストパターンを得た。
【0137】
[比較例2]
実施例2において、添加する重合禁止剤を50ppmとした以外は実施例2と同様にして、比較例2の組成物を調製し、レジストパターンを得た。
【0138】
[比較例3]
実施例3において、重合禁止剤を除いた以外は同様にして比較例3の組成物を調製し、レジストパターンを得た。
【0139】
[比較例4]
特開2007−84625号公報に開示されている液晶ディスプレイ用組成物の実施例1に記載の組成物を、実施例1と同様に調製し、レジストパターンを得た。
【0140】
[比較例5]
実施例4において、添加する重合禁止剤を10%とした以外は同様にして、比較例5の組成物を調製し、レジストパターンを得た。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
<ナノインプリント用硬化性組成物の評価>
実施例1〜6および比較例1〜5により得られた組成物の各々について、下記評価方法に従って測定・評価した。これらの結果を下記表3に示す。
【0144】
<硬化性>
光照射後に得られたレジストパターンに関してベタつきの有無を確認し、硬化不良が起きていないか評価した。
○:ベタつきがなく、良好に硬化していた。
×:ベタつきがあり、硬化不良を起こした。
【0145】
<パターン精度の観察>
調液直後(24時間以内)に塗布し、光照射および加熱により硬化させたレジストパターンに関して、転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡にて観察し、パターン精度を以下のように評価した。同様に、調液後25℃にて6ヶ月経過した組成物を塗布、光照射および加熱により硬化させたレジストパターンについても以下の評価のようにパターン精度を評価した。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとほぼ同一である。
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%未満の範囲)がある。
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと10%以上20%未満の範囲)がある。
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとはっきりと異なる、あるいはパターンの膜厚が原版のパターンと20%以上異なる。
【0146】
【表3】

【0147】
本発明の実施例1〜6の組成物では、重合禁止剤を添加しても硬化不良を招くことなく光硬化性に優れ、また調液直後のみならず経時後のパターン精度にも顕著に優れていることがわかった。一方、比較例1〜4の組成物ではいずれも硬化不良は見られないものの、経時後のパターン精度が調液直後に比べて悪化することがわかった。また、重合禁止剤の添加量を本発明の範囲外とした比較例5では硬化不良が見られ、パターン精度も調液直後および経時後ともに悪化することがわかった。
【0148】
<密着性>
実施例1〜6および比較例1〜4の組成物各レジストパターンの基板密着性を、光硬化した光硬化性レジストパターン表面に、粘着テープを貼り付け、引き剥がした時に、テープ側に光硬化した光硬化性レジストパターンが付着あるか否か目視観察で判断し、以下のように評価した。結果を下記表4に示す。なお、粘着テープとして、日東電工社製、商品名セロハンテープNo.29を用いた。
A:テープ側にパターンの付着が無い。
B:パターンの一部がテープに剥ぎ取られる。
C:パターンが完全にテープに剥ぎ取られる。
【0149】
【表4】

【0150】
本発明の実施例2〜6の組成物、とりわけ重合禁止剤の添加量が多い実施例3〜6においては基盤への密着性が非常に優れることがわかった。一方、比較例1〜4の組成物に関しては基板への密着性が悪いことがわかった。いかなる理論に拘泥するものでもないが、重合禁止剤の添加量を適度に多くしたことで光重合速度が低下し、そのために発熱が抑制され、発熱が抑制されたために硬化膜の熱収縮が軽減されたことによるものと推定される。このような顕著な基板密着性向上硬化は従来予想すらされていないものであり、驚くべき結果であった。
【0151】
また、N−オキシル系化合物である4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを上記実施例と同様に検討したところ、同様に硬化不良がなく、調液直後のみならず経時後のパターン精度にも優れ、さらに密着性も良好であった。
【0152】
<着色>
実施例3と比較例1の硬化膜の着色を目視で確認したところ、実施例3の硬化膜には着色が見られなかったが、比較例1の硬化膜は黄色に着色していた。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明により、硬化性が良好であり、経時保存安定性に優れ、特に硬化後のパターン精度低下抑制の観点で経時保存安定性に優れたナノインプリント用硬化性組成物を提供することが可能になった。ナノインプリントを工業化し、硬化膜等の大量生産を目指す際に上記の保存安定性の付与は従来は考慮されていなかった課題の中でも重要なものであり、本発明は産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性単量体、(B)光重合開始剤および(C)重合禁止剤を含み、かつ、該重合禁止剤の添加量が該重合性単量体に対して重量で300ppm〜5%であることを特徴とするナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合禁止剤の添加量が前記重合性単量体に対して重量で1000ppm〜5%であることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
さらに界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
前記(A)重合性単量体が(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
さらに酸化防止剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
前記(C)重合禁止剤が芳香族ポリオール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、キノン系化合物、N−オキシル系化合物およびアミン系化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
前記(C)重合禁止剤が芳香族ポリオール系化合物またはアミン系化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
前記(C)重合禁止剤がヒドロキノン類、カテコール類、フェノチアジン、フェノキサジンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物を含むことを特徴とする液晶表示装置用部材。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基板上に塗布してパターン形成する工程と、前記パターン形成層にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光照射する工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項13】
さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−16149(P2010−16149A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174216(P2008−174216)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】