説明

ナノファイバーアレルゲンバリア布

高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層と、このナノファイバー層の上にあり、それと接着した布層と、任意の層であって、このナノファイバー層の下にあり、それと接着した布層とを備えるアレルゲンバリア布であって、この上にある布層および任意の下にある布層はこのアレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するように前記ナノファイバー層と接着している。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
室内アレルギーを起こすタンパク質の主要な源泉は塵ダニである。サイズが100〜300ミクロンの塵ダニは肉眼では見ることができない。アレルギー反応を引き起こす主な成分である塵ダニの排泄物は一層小さく、サイズは10ミクロンまでの範囲にある。したがって塵、塵ダニ、およびそれらのアレルギーを起こす粒子に対する有効なバリアであるためには布または材料は、10ミクロンの粒子がその平らな表面を透過するのを制限しなければならない。これらの事実は、例えばPlatts−Millsらの論文「Dust Mite Allergens and Asthma:Report of a Second International Workshop」、J.Allergy Clin.Immunology,1992,Vol.89,pp.1046〜1060(「幾つかの研究は、空気で運ばれる第Iグループの塵アレルゲンの大部分が直径10〜40Vmの比較的「大型の」糞便粒子と関連していることを実証している」)、およびWoodcockらの米国特許第5,050,256号明細書の中で考察されており、これらの両方は参照により全体が本明細書中に援用される。
【0002】
Woodcockらの論文「Fungal contamination of bedding」Allergy 2006:61:140〜142は、アレルギー患者にとっての新たな脅威について詳述している。枕の内部では、塵ダニの排泄物内で直径2〜30ミクロンの真菌の胞子が成長している。これらの胞子が枕から漏れ出し、アレルギー反応を引き起こす恐れがある。
【0003】
家庭内で塵ダニおよび真菌胞子が集中して見出されるのは主に寝室中である。例えば普通のマットレスは、200万個の塵ダニのコロニーの存続を支える。枕もまた、塵ダニのすぐれた居住環境である。6年経った枕は、一般にそれらの重量の25%が塵、塵ダニ、およびアレルゲンから構成されている。ソファのクッション、椅子のクッション、絨毯、および他の発泡体または繊維を詰めた物品もまた、塵ダニにとって好適な居住環境を提供する。事実上いずれの家庭も皆、塵ダニが生育することができる多くの領域を含有している。
【0004】
さらに塵ダニおよび真菌胞子由来のアレルゲンの存在は、枕、マットレスなどが古くなるに従って増加するという問題がある。その寿命の間に典型的な塵ダニは、その正味体重の200倍までの排泄物を生みだす。この排泄物は、喘息発作と、鬱血、目の充血、くしゃみ、および頭痛を含めたアレルギー反応との引き金になるアレルゲンを含有する。この問題は、塵ダニが生育する材料からそれらを除去することが難しいという事実によって増幅される。枕は稀には洗濯されるが、大部分のマットレスは決して洗浄されない。
【0005】
市販のアレルギー軽減寝具製品は、それらの効力をアレルゲンバリアであるとする幅広い数々の宣伝文句を提供する。しかし積層またはコーティングされた材料は、一般に寝心地が悪く、堅く、手触りが柔らかくなく、また騒々しい(すなわち、人がシーツまたは枕の上で動いたとき比較的騒々しいサラサラ音をたてる)。さらにその上、ビニル、ポリウレタン、および微孔質コーティング布は、それら材料を通り抜ける空気循環が可能でないので枕またはマットレスのティッキングとして使用した場合、通気を必要とする。これらの材料で被覆された枕またはマットレスは、通気させないと、圧縮した場合、しぼませることができず、また再び膨らませることができない。しかしこれらの布を通気させる必要性は、それらを有効なアレルゲンバリアと考えることができるかどうかの論点を避けている(アレルゲンもまた通気孔を通って侵入しかつ漏れ出る可能性があるので)。コーティング布および積層布はまた、被膜の層間剥離のために摩耗寿命が限られる傾向がある。
【0006】
コーティングなしの天竺木綿はそれなりに推奨されてはいるが、それらの細孔径が本質的に大きいためにアレルゲンに対する真のバリアではない。アレルギー専門医は、患者に定期的に週単位で彼らの寝具製品を洗濯することを強く勧める。しかしこれらを実践することは、長時間の洗濯により繊維が失われるので天竺木綿の細孔径をさらに大きくするのに役立つだけである。
【0007】
マットレスおよび枕のカバーに使用されるスパンボンド/メルトブローン/スパンボンド(SMS)ポリオレフィン不織布もまた、アレルゲンに対するバリア保護として使用される。
【0008】
Woodcockに対して発行された米国特許第5,050,256号明細書は、水蒸気透過性カバーを備えたアレルゲンを通さない寝具システムを記載している。この特許中に記載されているカバー材料は、Baxenden Witcoflex 971/973型ポリウレタンをコーティングしたポリエステル織布またはナイロン布から作製される。
【0009】
Schortmann(International Paper Co.)に対して発行された米国特許第5,368,920号明細書は、細孔がなく通気性のあるバリア布および関連する製造方法を記載している。この布は、布基材中のすき間をフィルム形成性クレイ−ラテックス材料で充填して、水蒸気透過性でかつ液体および空気不透過性のバリア布を形成することによって作製される。
【0010】
米国特許第5,321,861号明細書中でDanceyは、細孔径が0.0005mm未満で溶接継ぎ目を有し、その開口部を接着テープで覆われたジッパーなどの再封可能なファスナーによって密閉した微孔質限外ろ過材料について記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
空気の効率的な通過を可能にすると同時に家庭内のアレルゲンに対する優れたバリアを提供するアレルゲンバリアが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態において本発明は、高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、このナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、任意の層であって、このナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層とを備え、この上にある布層および任意の下にある布層は、そのアレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度とを有するように前記ナノファイバー層と接着している、微孔質カバー材料を有するマットレスに関する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、アレルゲンバリア布を備えた枕であって、前記アレルゲンバリア布が、高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径は約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、このナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、任意の層であって、このナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層とを備え、この上にある布層および任意の下にある布層は、そのアレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度とを有するように前記ナノファイバー層と接着している、枕に関する。
【0014】
本発明の別の実施形態は、アレルゲンバリア布を備えたベッドカバーであって、前記アレルゲンバリア布が、高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が、約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、このナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、任意の層であって、このナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層とを備え、この上にある布層および任意の下にある布層は、そのアレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度とを有するように前記ナノファイバー層と接着している、ベッドカバーに関する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、アレルゲンバリア布を備えた、アレルゲンの浸透しやすい物品用の裏地であって、前記アレルゲンバリア布が、高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が、約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、このナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、任意の層であって、このナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層とを備え、この上にある布層および任意の下にある布層は、そのアレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度とを有するように前記ナノファイバー層と接着している、裏地に関する。
【0016】
本発明の別の実施形態は、アレルゲンバリア布であって、高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、このナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、任意の層であって、このナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層とを備え、この上にある布層および任意の下にある布層は、そのアレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度とを有するように前記ナノファイバー層と接着している、アレルゲンバリア布に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】メルトブローンまたはスパンボンドウェブなどの比較的大きな繊維のウェブから作製された先行技術のアレルゲンバリア布の図である。
【図2】ナノファイバーウェブによって従来の布ウェブの表面を覆った本発明のアレルゲンバリア布の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者は、アレルゲンの浸透しやすい物品用のカバーに使用される布に高分子ナノファイバーを含む不織布ウェブを組み込むことが、有効なアレルゲンバリアとして働く可能性があると結論した。この高分子ナノファイバー含有ウェブを1枚または複数枚の他の布ウェブと接着させて、マットレスまたは枕のカバー、マットレスまたは枕のティッキング、マットレスパッド、羽毛掛け布団カバーなどのカバーに使用され、またさらにダウンジャケットなどの裏地等のアレルゲンを含有する衣服用の裏地にさえ使用されるアレルゲンバリア布を形成することができる。
【0019】
ティッキングは、枕またはマットレスの繊維充填材または他のパッドを入れる取外しできない布カバーである。枕またはマットレスのカバーは、その枕またはマットレスを覆う取外し可能な布であり、かつ装飾的な洗濯のきくケース(例えばピロー・ケース)としての機能を果たすこともできる。アレルギー患者の場合、枕カバーもまたアレルゲンバリアとして機能することがある。枕カバーを閉じるものは、一般にはジッパーか、または重なり合った垂れぶたのどちらかである。また公共施設のマットレスのカバーは、流体に対するバリアを可能にしなければならない。アレルギー患者の場合、このようなカバーもまたアレルゲンバリアとして機能することがある。マットレスカバーを閉じるものは、一般にはジッパーまたは重なり合った垂れぶたのどちらかである。マットレスパッドは、マットレス用のキルティングされた取外し可能なカバーである。アレルギー患者の場合、そのパッドの最も内側または最も外側の布はアレルゲンバリアとして機能することができる。
【0020】
スパンボンドまたはメルトブローン不織布ウェブあるいは目の詰んだ織布などのより普通のアレルゲンバリア布と比べた場合の高分子ナノファイバーウェブのアレルゲン減少効果は、そのようなウェブの平均流孔径の減少によると考えられる。図1は、スパンボンドまたはメルトブローンウェブなどの従来の先行技術の不織布ウェブの拡大図であり、一般的なアレルゲン粒子の大きさと比較した繊維間の細孔径を示す。
【0021】
本発明の高分子ナノファイバー含有ウェブは、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間、さらには約200nm〜約800nmの間でさえあり、またはさらには約300nm〜約700nmの間でさえあり、かつ平均流孔径が約0.01μm〜約10μmの間、さらには約0.5μm〜約3μmの間でさえある高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を含む。
【0022】
従来のアレルゲンバリア布と比較してこの平均流孔径の減少は、本発明によるナノファイバーウェブの単位表面積(および単位体積)当たりの堆積繊維の本数の大幅な増加に起因する。図2は、従来の不織布ウェブ層にナノファイバーの層を被せた本発明によるアレルゲンバリア布の図である。その布の一定の表面積単位中に堆積させることができるナノファイバーの本数は、通常の布のウェブの場合よりもはるかに多いことが分かる。ナノファイバー自体の間に形成される、またナノファイバーと下側の不織布ウェブの繊維の間に形成される細孔が小さいほど、そのウェブを通る高い通気能力を保持しつつ、はるかに優れたアレルゲンバリア特性をもたらす。
【0023】
高分子ナノファイバー含有ウェブは先行技術において知られており、エレクトロスピニングまたはエレクトロブローイングなどの技術によって生産することができる。エレクトロスピニングおよびエレクトロブローイングの両技術は、そのポリマーが比較的穏やかなスピニング条件下で、すなわち実質的には周囲の温度および圧力条件で溶媒に可溶である限り種々様々なポリマーに適用することができる。本発明によるナノファイバーウェブは、アルキルおよび芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ尿素、ビニルポリマー、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリジエン、ポリスルフィド、多糖類、ポリラクチド、およびこれらのコポリマー、誘導化合物、または組合せなどのポリマーから作ることができる。特に好適なポリマーには、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリアニリン類、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム類、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、およびポリ(ビニルブチレン)が挙げられる。
【0024】
ポリマー溶液は、上記各ポリマーに応じて溶媒を選択することによって調製される。好適な溶媒には、水、アルコール類、ギ酸、ジメチルアセトアミド、およびジメチルホルムアミドが挙げられる。このポリマー溶液は、関連するポリマーと相容性の任意の樹脂類、可塑剤、紫外線安定剤、架橋剤、加硫剤、反応開始剤、染料および顔料などの着色剤等を含めた添加剤と混合することができる。これら大部分のポリマーの溶解には特定の温度範囲は全く必要でないが、加熱は溶解反応を助けるために必要な場合もある。
【0025】
エレクトロスピニングとして知られる繊維紡糸法では溶液状態のポリマーに高電圧を掛けてナノファイバーおよび不織布を作り出す。ポリマー溶液をシリンジに装入し、そのシリンジ内の溶液に高電圧を印加する。シリンジのニードルの先端にぶら下がった溶液の液滴上で帯電が高まる。この帯電が溶液の表面張力に打ち克つに連れて次第にこの液滴が伸び、テーラーコーンを形成する。最後に溶液は、テーラーコーンの先端からジェットとして出て、空中を通ってそのターゲット媒体へ進む。従来のエレクトロスピニングの1つの欠点は、米国特許第4,127,706号明細書中に例示されているように紡糸液のきわめて低い処理量にあり、商業的利用にとっては十分な大きさのナノファイバーウェブの形成に時間がかかり、実用的でないことを意味する。米国特許第6,673,136号明細書に記載されている複数個の回転エレクトロスピニングヘッドを利用した改良型エレクトロスピニング法でさえ、その潜在的生産能力は限られている。
【0026】
これに対して、参照により本明細書に援用される国際公開第2003/080905号パンフレット(米国特許出願第10/822,325号明細書)中に開示されているエレクトロブローイング法を使用した場合、少なくとも約1g/m2以上の坪量を有するナノファイバーウェブが業務用に使用できる量で容易に得られる。
【0027】
このエレクトロブローイング方法は、貯槽からのポリマーと溶媒を含むポリマー溶液の流れを紡糸口金内の一連の紡糸ノズルに供給し、これに高電圧を印加し、それを通ってポリマー溶液を放出させるステップを含む。一方、場合によっては加熱される圧縮空気が、紡糸ノズルの側部または周囲に配置された空気ノズルから流出する。この空気は、新たに流出したポリマー溶液を包んでそれを運ぶ吹込ガス流として全般的には下方へ向かい、繊維性ウェブの形成を助ける。ウェブは減圧室上方の接地された多孔質捕集ベルト上に回収される。
【0028】
このエレクトロブローイング法によって堆積するナノファイバーの数平均繊維径は、約1000nm未満、またはさらには約800nm未満でさえあり、またはさらには約50nm〜約500nmの間でさえあり、またさらには約100nm〜約400nmの間でさえある。各ナノファイバー層は、少なくとも約1g/m2の坪量、さらには約1g/m2〜約40g/m2の間でさえあり、またさらには約5g/m2〜約20g/m2の間でさえある坪量を有することができる。各ナノファイバー層は、約20μm〜約500μmの厚さ、またさらには約20μm〜約300μmの厚ささえ有することができる。
【0029】
アレルゲンバリア材料として空気透過性(air flow permeability)のきわめて低い微孔質フィルムを使用するのとは対照的に、本発明のナノファイバー層は少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度、またはさらには少なくとも約2m3/分/m2さえもの、またはさらには少なくとも約4m3/分/m2さえもの、またさらには約6m3/分/m2までさえのフレージャー透気度を示している。本発明のナノファイバー層を通り抜ける高度な空気循環は、それらの通気性のために、低レベルのアレルゲン透過を維持したままで使用者に際立った快適さを与えるアレルゲンバリア布をもたらす。
【0030】
アレルゲンバリア布に耐久性を付与するためにナノファイバー層を、少なくとも1枚の布層、場合によっては2枚の布層(ナノファイバー層の両面に1枚ずつ)と接着させる。これら追加の布層は、例えばホットメルト接着剤または超音波接合を用いた熱接着、あるいは化学的接着、例えば溶剤系接着剤を用いた層の取付け、あるいは機械的接着、例えば縫製、水流交絡(hydroentanglement)、または布層上へのナノファイバー層の直接堆積によってナノファイバー層と接着させることができる。また併用が適切または望ましい場合、これらの接着技術を組み合わせて使用することもできる。本発明のアレルゲンバリア布の耐久性は、その様々な布層の機械的分離または層間剥離なしに少なくとも10回の洗浄、またさらには50回までの洗浄に耐えるようなものである。
【0031】
ナノファイバー層に接着させることができる追加の布層は、ナノファイバー層の空気透過性にあまり悪影響を与えない限り、特に限定されない。例えば追加の布層は織布、編物、不織布、スクリム、またはトリコットであることができる。一体にした層の空気透過性はそのナノファイバー層の空気透過性と同じであること、すなわち追加の層がナノファイバー層のフレージャー透気度にまったく影響を及ぼさないことが好ましい。したがって、本発明のアレルゲンバリア布は、少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度、またはさらには少なくとも約2m3/分/m2さえもの、またはさらには少なくとも約4m3/分/m2さえもの、またさらには約6m3/分/m2までのフレージャー透気度を示している。
【0032】
本発明による布に対する化学的機能強化には、恒久的抗菌仕上げおよび/または柔軟フルオロケミカル仕上げの適用が挙げられる。本明細書の文脈においては「恒久的」とは、その製品寿命の間のそれぞれの仕上げの有効性を意味する。任意の適切な抗菌またはフルオロケミカル仕上げを本発明から逸脱することなく用いることができ、このような仕上げは当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第4,822,667号明細書を参照)。
【0033】
好適な抗菌仕上げの例としては、3−(トリメトキシシリル)−プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド(Dow Corning 5700)のきわめて耐久力のある化合物を塗布することができる。この仕上げは、細菌および真菌から布を保護し、また臭気を引き起こす細菌の成長を抑制する。これは、細菌(ストレプトコッカスファエカリス(Streptococcus faecalis)、肺炎桿菌(K.pneumoniae))、真菌(アスペルギルスニガー(Aspergillus niger))、酵母菌(サッカロマイセスセレビシエ(Saccaromyces cerevisiae))、創傷分離菌(wound isolates)(シトロバクターディバーサス(Citrobacter diversus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis))、および尿分離菌(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(E.coli))に対して効果があることが示されている。
【0034】
フルオロケミカル仕上げは、本発明のアレルゲンバリア布の、例えば液漏れによるしみ抵抗性を高めるために撥液性を付与する恒久的な極薄可撓性フルオロケミカルフィルムであることができる。
【実施例】
【0035】
本発明のアレルゲンバリアに使用されるナノファイバー層の製造方法は、上記で考察した国際公開第2003/080905号パンフレット中で開示されている。下記実施例の評価においては次の試験方法が使用された。
【0036】
坪量は、参照により本明細書に援用されるASTM D−3776により求められ、単位g/m2で記録される。
【0037】
繊維径は下記のように測定された。各ナノファイバー層試料の倍率5,000倍の10枚の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を撮った。11個のはっきり見分けられるナノファイバーの直径を写真から測定し記録した。欠陥部は含めなかった(すなわちナノファイバーの塊、ポリマーの滴り、ナノファイバーの交差部)。各試料の平均繊維径を計算した。
【0038】
フレージャー透気度は多孔材料の通気性の尺度であり、ft3/分/ft2の単位で記録される。これは、水の0.5インチ(12.7mm)の圧力差で材料を通過する空気の流れの体積を測定する。試料を通過する空気の流れを測定可能な量に制限するためにオリフィスが真空システム中に設けられる。オリフィスの大きさは材料の多孔度によって決まる。フレージャー透気度は、校正オリフィスを備えたSherman W.Frazier Co.のデュアルマノメータを用いてft3/分/ft2の単位で測定され、m3/分/m2の単位に転換される。
【0039】
平均流孔径は、ASTM Designation E1294−89、「Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter」に従って測定した。この方法は、毛管流多孔度計(型式番号CFP−34RTF8A−3−6−L4、Porous Materials,Inc.(PMI),Ithaca,NY)を使用するASTM Designation F316に基づく自動バブルポイント法を用いて0.05μm〜300μmの細孔径を有する膜の細孔径特性を近似的に測定する。個々の試料を低表面張力流体(16ダイン/cmの表面張力を有する1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロペン、すなわち「Galwick」)で濡らした。各試料をホルダーの中に置き、空気の圧力差を加え、試料から流体を除去した。濡れ流量が乾き流量(湿潤溶媒なしの流量)の二分の一に等しくなる圧力差を用いて、支給されたソフトウェアを使用して平均流孔径を計算した。
【0040】
洗浄試験はLowe’sから入手できる普通のGE洗濯機で行った。布の洗浄は、常温/低温設定の5回の洗浄を10回繰り返した。各試料は、熱風乾燥を使用せずに各繰り返し回数の間で完全に乾燥した。この洗浄の間、石鹸または洗剤は使用しなかった。試料は、機械的破損または層間剥離の有無を目視検査された。
【0041】
実施例1
約400nmの数平均繊維径、約10gsmの坪量、6m3/分/m2のフレージャー透気度、および1.8ミクロンの平均流孔径を有するナイロン−6,6のナノファイバー層の第一面に、パターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。225綿番手の製織平織り綿布をこの多孔質シートの第一面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させた。
【0042】
このナノファイバー層の第二面に、同じパターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。120綿番手の製織平織り綿布をこの多孔質シートの第二面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させ、溶媒を蒸発させた。得られた構造物のフレージャー透気度は1.8m3/分/m2であり、また平均流孔径は1.5ミクロンであった。
【0043】
実施例2
約400nmの数平均繊維径、10gsmの坪量、6m3/分/m2のフレージャー透気度、および1.8ミクロンの平均流孔径を有するナイロン−6,6のナノファイバー層の第一面に、パターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。ナイロントリコットをこのナノファイバー層の第一面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させた。
【0044】
このナノファイバー層の第二面に、同じパターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。ナイロンの不織リップストップ生地をこのナノファイバー層の第二面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させ、溶媒を蒸発させた。得られた構造物のフレージャー透気度は3.9m3/分/m2であった。この工程を、約450nm、約700nm、および約1000nmの数平均繊維径を有するナイロン−6,6のナノファイバー層で繰り返した。得られた構造物のフレージャー透気度は、それぞれ4.7、5.4、および5.9m3/分/m2であった。
【0045】
実施例3
約400nmの数平均繊維径、10gsmの坪量、6m3/分/m2のフレージャー透気度、および1.8ミクロンの平均流孔径を有するナイロン−6,6のナノファイバー層の第一面に、パターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。225綿番手の製織平織り綿布をこのナノファイバー層の第一面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させた。
【0046】
このナノファイバー層の第二面に、同じパターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。17gsmポリエチレン不織シートをこのナノファイバー層の第二面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させ、溶媒を蒸発させた。得られた構造物のフレージャー透気度は1.8m3/分/m2であり、また平均流孔径は2.9ミクロンであった。
【0047】
実施例4
約400nmの数平均繊維径、10gsmの坪量、6m3/分/m2のフレージャー透気度、および1.8ミクロンの平均流孔径を有するナイロン−6,6のナノファイバー層の第一面に、パターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。ナイロントリコットをこのナノファイバー層の第一面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させた。
【0048】
このナノファイバー層の第二面に、同じパターン付きロールからのポリウレタン接着剤溶液を塗布した。ポリエステルのリップストップ生地をこのナノファイバー層の第二面に同時かつ同延に接触させた。次いでこの構造物を、ニップを通してカレンダー仕上げし、24時間硬化させ、溶媒を蒸発させた。この構造物を8×10インチシートに切断し、洗浄試験した。層間剥離または機械的破損は観察されなかった。洗浄試験後のフレージャー透気度は1.8m3/分/m2であると判定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔質カバー材料を有するマットレスであって、
高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜約30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、
前記ナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、
任意の層であって、前記ナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層と
を備え、
前記上にある布層および任意の下にある布層は、アレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するように前記ナノファイバー層と接着している、マットレス。
【請求項2】
前記アレルゲンバリア布がマットレスのティッキングの中に含まれている、請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
アレルゲンバリア布を備えた枕であって、前記アレルゲンバリア布が、
高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜約30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、
前記ナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、
任意の層であって、前記ナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層と
を備え、
前記上にある布層および任意の下にある布層は、前記アレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するように前記ナノファイバー層と接着している、枕。
【請求項4】
前記アレルゲンバリア布が枕のティッキングの中に含まれている、請求項3に記載の枕。
【請求項5】
アレルゲンバリア布を含むベッドカバー材料であって、前記アレルゲンバリア布が、
高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜約30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、
前記ナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、
任意の層であって、前記ナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層と
を備え、
前記上にある布層および任意の下にある布層は、前記アレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するように前記ナノファイバー層と接着している、ベッドカバー材料。
【請求項6】
前記アレルゲンバリア布がベッドスプレッドの中に含まれている、請求項5に記載のベッドカバー。
【請求項7】
前記アレルゲンバリア布が羽毛掛け布団カバーの中に含まれている、請求項5に記載のベッドカバー。
【請求項8】
前記アレルゲンバリア布がマットレスカバーの中に含まれている、請求項5に記載のベッドカバー。
【請求項9】
前記アレルゲンバリア布がマットレスパッドの中に含まれている、請求項5に記載のベッドカバー。
【請求項10】
前記アレルゲンバリア布が枕カバーの中に含まれている、請求項5に記載のベッドカバー。
【請求項11】
アレルゲンバリア布を備えたアレルゲンの浸透しやすい物品用の裏地であって、前記アレルゲンバリア布が、
高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜約30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、
前記ナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、
任意の層であって、前記ナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層と
を備え、
前記上にある布層および任意の下にある布層は、前記アレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するように前記ナノファイバー層と接着している、裏地。
【請求項12】
アレルゲンの浸透しやすい前記物品がダウンジャケットである、請求項11に記載の裏地。
【請求項13】
アレルゲンバリア布であって、
高分子ナノファイバーの少なくとも1層の多孔質層を備えたナノファイバー層であって、前記ナノファイバーの数平均径が約50nm〜約1000nmの間にあり、前記ナノファイバー層が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径、約1g/m2〜約30g/m2の間の坪量、および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するナノファイバー層と、
前記ナノファイバー層の上にあり、それと接着している布層と、
任意の層であって、前記ナノファイバー層の下にあり、それと接着している布層と
を備え、
前記上にある布層および任意の下にある布層は、前記アレルゲンバリア布が約0.01μm〜約10μmの間の平均流孔径および少なくとも約1.5m3/分/m2のフレージャー透気度を有するように前記ナノファイバー層と接着している、アレルゲンバリア布。
【請求項14】
前記上にある布層および任意の下にある布層が、熱接着、化学的接着、または機械的接着の少なくとも1つによって前記ナノファイバー層と接着している、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項15】
機械的分離または層間剥離なしに少なくとも10回の洗浄を可能にするのに十分な耐久性を有する、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項16】
前記ナノファイバーの数平均径が、約300nm〜約800nmの間にある、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項17】
前記ナノファイバー層が、約0.5μm〜約3μmの間の平均流孔径を有する、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項18】
前記ナノファイバー層が、約2g/m2〜約30g/m2の間の坪量を有する、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項19】
少なくとも約2m3/分/m2のフレージャー透気度を有する、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項20】
前記ナノファイバーが、アルキルおよび芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ尿素、ビニルポリマー、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリジエン、ポリスルフィド、多糖類、ポリラクチド、およびこれらのコポリマー、誘導化合物、または組合せからなる群から選択されるポリマーから作製される、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項21】
前記上にある布層および任意の下にある布層が、織布、編物、不織布、スクリム生地、およびトリコットからなる群から選択される、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項22】
抗菌仕上げ処理剤をさらに含む、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。
【請求項23】
流体抵抗仕上げ処理剤をさらに含む、請求項13に記載のアレルゲンバリア布。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−500898(P2010−500898A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524642(P2009−524642)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/017871
【国際公開番号】WO2008/021293
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】