説明

ナビゲーション装置の経路探索方法

【課題】ユーザから細かな探索条件を受け付けることなく、よりユーザが好む経路を探索する。
【解決手段】
ナビゲーション装置は、ユーザの自宅位置を入手し、自宅位置に応じて異なるリンクコストを設定し、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索する。例えば、自宅が関東と関西のいずれにあるかで、リンクコストを異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、特に車載用ナビゲーション装置の経路探索技術に関する。
【背景技術】
【0002】
経路の好みは、ユーザにより異なる。あるユーザは、料金が高くても旅行時間が短い経路を望む。一方、あるユーザは、旅行時間が長くても料金の安い経路を望む。
【0003】
特許文献1には、有料道路優先、距離優先などの探索条件をユーザが選択可能とし、ユーザの好みに近い経路を探索しようとする車載用ナビゲーション装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−89986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、ユーザ自ら、好みの経路が探索される条件を細かく指定しなくてはならない。
【0006】
本発明の目的は、ユーザが好む経路を、ユーザから細かな探索条件を受け付けることなく探索する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明のナビゲーション装置は、ユーザの自宅位置に応じて経路を探索する。
【0008】
例えば、本発明のナビゲーション装置は、ユーザの自宅位置を入手するステップと、前記自宅位置に応じて異なるリンクコストを設定し、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索するステップとを行う。
【0009】
また、本発明のナビゲーション装置は、ユーザの自宅位置と、道路を構成するリンクのリンク旅行時間と、地域ごとのコスト係数とを記憶する記憶装置を有し、リンクのコストとして、当該リンクのリンク旅行時間に、ユーザの自宅位置が含まれる地域に対応するコスト係数を乗じた値を用いて、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、経路の好みには地域色があることを考慮して、ユーザから細かな探索条件を受け付けることなく、ユーザの好みに近い経路を探索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置の概略構成図である。
【0013】
図示するように、本実施形態の車載用ナビゲーション装置は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4と、入力装置5と、車輪速センサ6と、地磁気センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Ground Positioning System)受信装置9と、を有する。
【0014】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば、各種センサ6〜8やGPS受信装置9から出力される情報を基にして現在地を検出し、得られた現在地情報に基づいて、表示に必要な地図データ310を記憶装置3から読み出す。また、読み出した地図データ310をグラフィックス展開し、そこに現在地を示すマークを重ねてディスプレイ2へ表示したり、記憶装置3に記憶されている地図データ310を用いて、ユーザから指示された目的地と出発地(例えば現在地)とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索し、音声入出力装置4やディスプレイ2を用いてユーザを誘導したりする。
【0015】
ディスプレイ2は、演算処理部1で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットで、CRTや液晶ディスプレイなどで構成される。また、演算処理部1とディスプレイ2との間の信号S1は、RGB信号やNTSC(National Television System Committee)信号で接続するのが一般的である。
【0016】
記憶装置3は、CD-ROMやDVD-ROMやHDDやICカードといった記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、地図データ310、リンクコスト係数情報320、右左折コスト係数330などが記憶されている。
【0017】
図2は、記憶装置3に記憶されている地図データ310の構成例を示す図である。図示するように、地図を複数に分割することで得られるメッシュ領域毎に地図データ310が記憶されている。地図データ310は、メッシュ領域の識別コード(メッシュID)311、および、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータ312を有する。リンクデータ312は、リンクの識別コード(リンクID)3121、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報3122、リンクを含む道路の種別情報3123、リンクの長さを示すリンク長情報3124、リンク旅行時間3125、2つのノードにそれぞれ接続するリンクのリンクID(接続リンクID)3126などを有する。
【0018】
なお、ここでは、リンクを構成する2つのノードについて開始ノードと終了ノードとを区別することで、同じ道路の上り方向と下り方向とを、それぞれ別のリンクとして管理するようにしている。また、地図データ310には、対応するメッシュ領域に含まれている道路以外の地図構成物の情報(名称、種別、座標情報など)も含まれている。
【0019】
また、地図データ310には、右左折時のコストである右左折コスト(角度コスト)も記憶されている。
【0020】
図3は、記憶装置3に記憶されているリンクコスト係数情報320の構成を示す図である。リンクコスト係数は、リンクのコストを求める際に、リンク旅行時間に乗じられる係数である。本実施例では、関東322と関西323において、異なるリンクコスト係数を定めている。また、関東322の方が、関西323に比べて、狭い道路になるほど、リンクコストが大きくなるように、コスト係数を定めている。また、リンクコスト係数は、道路種別321ごとに設けられている。
【0021】
図4は、記憶装置3に記憶されている右左折コスト係数情報330の構成を示す図である。右左折コスト係数は、右左折時のコストを求める際に、地図データ310に含まれている予め定められた右左折コストに乗じられる係数である。本実施例では、関東331と関西332において、異なる右左折コスト係数を定めている。また、関東331の方が、関西332に比べて、右左折コストが大きくなるように、コスト係数を定めている。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。音声入出力装置4は、演算処理部1で生成したユーザへのメッセージを音声信号に変換し出力すると共に、ユーザが発した声を認識し演算処理部1にその内容を転送する処理を行う。
【0023】
入力装置5は、ユーザからの指示を受け付けるユニットで、スクロールキー、縮尺変更キーなどのハードスイッチ、ジョイスティック、ディスプレイ上に貼られたタッチパネルなどで構成される。
【0024】
センサ6〜8およびGPS受信装置9は、車載用ナビゲーション装置で現在地(自車位置)を検出するために使用するものである。車輪速センサ6は、車輪の円周と計測される車輪の回転数の積から距離を測定し、さらに対となる車輪の回転数の差から移動体が曲がった角度を計測する。地磁気センサ7は、地球が保持している磁場を検知し、移動体が向いている方角を検出する。ジャイロ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体が回転した角度を検出するものである。GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在地、進行方向および進行方位を測定する。
【0025】
図5は、演算処理部1のハードウェア構成を示す図である。
【0026】
図示するように、演算処理部1は、各デバイス間をバス32で接続した構成としてある。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、記憶装置3から読み出した地図データや演算データを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、メモリ間およびメモリと各デバイスとの間のデータ転送を実行するDMA(Direct Memory Access)24と、グラフィックス描画を実行し且つ表示制御を行う描画コントローラ25と、グラフィックスイメージデータを蓄えるVRAM(Video Random Access Memory)26と、イメージデータをRGB信号に変換するカラーパレット27と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器28と、シリアル信号をバスに同期したパラレル信号に変換するSCI(Serial Communication Interface)29と、パラレル信号をバスに同期させてバス上にのせるPIO(Parallel Input/Output)30と、パルス信号を積分するカウンタ31と、を有する。
【0027】
図6は、演算処理部1の機能構成を示す図である。
【0028】
図示するように、演算処理部1は、ユーザ操作解析部41と、経路探索部42と、経路誘導部44と、表示処理部45と、現在位置算出部46とを有する。
【0029】
現在位置算出部46は、車輪速センサ6で計測される距離パルスデータS5およびジャイロ8で計測される角加速度データS7を各々積分した結果得られる距離データおよび角度データを用い、そのデータを時間軸で積分していくことにより、初期位置(X,Y)から自車走行後の位置である現在地(X′,Y′)を定期的に演算し、マップマッチ処理により現在位置を求める。
【0030】
ユーザ操作解析部41は、入力装置5により入力されたユーザからの要求を受け、その要求内容を解析して、その要求内容に対応する処理が実行されるように演算処理部1の各部を制御する。
【0031】
経路探索部42は、ダイクストラ法等を用いて、指定された2地点(出発地(現在地)、目的地)間を結ぶ経路のうち少ないコスト(例えば、旅行時間や旅行距離など)で目的地へ到達可能な経路を、地図データから検索する。
【0032】
経路誘導部44は、経路探索部42により探索された推奨経路の情報と、現在地の情報とを比較し、交差点等を通過する前に直進すべきか、右左折すべきかを音声出入力装置4を用いて音声でユーザに知らせたり、ディスプレイ2に表示された地図上に進行すべき方向を表示して、ユーザに推奨経路を通知したりする。
【0033】
表示処理部45は、ディスプレイ2に要求された映像が表示されるように、描画コマンドを生成し、ディスプレイ2に出力する。
【0034】
[動作の説明]次に、上記構成の車載用ナビゲーション装置の動作について説明する。
【0035】
まず、ユーザの自宅位置の登録について説明する。
【0036】
電源が投入されると、ユーザ操作解析部41は、記憶装置3にユーザの自宅位置が登録されているか否か調べる。登録されていない場合、ユーザ操作解析部41は、表示処理部45を介して、ディスプレイ2に、自宅位置の設定画面を表示する。
【0037】
図7は、自宅位置の設定画面の表示例である。図示するように、ユーザ操作解析部41は、現在位置を自宅位置に設定するボタン604と、カーソル位置を自宅位置に設定するボタン605を表示する。また、地図602上に、カーソル603を表示する。カーソル603は、入力装置5を介して移動要求があった場合、当該移動要求に従い表示位置が変更されるようになっている。
【0038】
ユーザ操作解析部41は、現在位置を自宅位置に設定するボタン604が押された場合、現在位置算出部46から出力された現在位置を自宅位置として記憶装置3に登録する。
【0039】
一方、カーソル位置を自宅位置に設定するボタン605が押された場合、ユーザ操作解析部41は、地図602上のカーソル位置603を自宅位置として記憶装置3に登録する。
【0040】
こうして、記憶装置3には、ユーザの自宅位置が登録される。
【0041】
つぎに、経路探索の処理について説明する。図8は、本実施形態の車載用ナビゲーション装置の経路探索処理のフロー図である。このフローは、ユーザ操作解析部41が、音声入出力装置4あるいは入力装置5を介してユーザより推奨経路の探索要求を受け付けることで開始される。
【0042】
まず、ユーザ操作解析部41は、出発地、目的地を設定する(S102)。操作解析部41は、入力装置5を介してユーザから出発地、目的地及び出発時刻を受け付ける。現在位置算出部46が求めた現在地を出発地に設定する場合は、ユーザによる出発地の指定を省略してもよい。
【0043】
以上のようにして出発地、目的地および出発時刻が設定されたならば、ユーザ操作解析部41は、経路探索部42に経路探索処理の開始を指示する。
【0044】
これを受けて、経路探索部42は、経路探索に用いるリンクコストの算出および右左折コストの算出に使用するコスト係数を決定する。
【0045】
経路探索部42は、記憶装置3に登録してある自宅位置が、関東に属するか、関西に属するかを判定する(S104)。具体的には、自宅位置の座標位置が、関東に属する地図のメッシュ領域に属するか、関西に属する地図のメッシュ領域に属するするかで判定する。
【0046】
自宅位置が関東に属すると判定された場合(S104で「関東」)、経路探索部42は、リンクコスト算出のためのコスト係数として、リンクコスト係数情報320の関東322のリンクコスト係数を使用するように決定する。また、右左折コストを算出するための右左折コスト係数として、右左折コスト係数情報330の関東331の右左折コスト係数を使用するように決定する(S106)。
【0047】
一方、自宅位置が関西に属すると判定された場合(S104で「関西」)、経路探索部42は、リンクコスト算出のためのコスト係数として、リンクコスト係数情報320の関西323のリンクコスト係数を使用するように決定する。また、右左折コストを算出するための右左折コスト係数として、右左折コスト係数情報330の関西332の右左折コスト係数を使用するように決定する(S108)。
【0048】
なお、自宅位置が関東および関西のいずれにも属さない場合は、リンクコスト係数=1.0、右左折コスト係数=1.0にするように決定する。
【0049】
つぎに、経路探索部42は、出発地から目的地までの経路の探索を開始する。ただし、経路探索部42は、下記式で求めたリンクコストを用いる。
リンクコスト=(そのリンクの旅行時間3125(またはリンク長3124))×(そのリンクの道路種別のリンクコスト係数)
リンクコスト係数は、S106またはS108で決定されたリンクコスト係数である。
【0050】
また、経路探索部42は、下記式で求めた右左折コストを用いる。
右左折コスト=(予め設定されている右左折コスト)×(右左折コスト係数)
右左折コスト係数は、S106またはS108で決定された右左折コスト係数である。
【0051】
経路探索部42は、これらのリンクコスト及び右左折コストを用いて、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索する(S110)。
【0052】
そして、経路探索部42は、探索した経路を、推奨経路として、表示処理部45を介して、ディスプレイ2に表示して(S112)、経路探索処理を終了する。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0054】
なお、上記実施形態では、関東と関西について異なるコスト係数を定める例について説明したが、これに限定されず、他の地域についても異なるコスト係数を定め、自宅位置の属する地域ごとに異なるリンクコストと右左折コストが設定されるようにしてもよい。
【0055】
上記実施形態によれば、地域によって経路の好みに違いがあること考慮して、よりユーザの好みに近い経路を探索できる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、さまざまな変形が可能である。
【0057】
例えば、上記の実施形態では、本発明を車載用ナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は車載用以外のナビゲーション装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の一実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】図2は、記憶装置3に記憶されている地図データの構成例を示す図である。
【図3】図3は、記憶装置3に記憶されているリンクコスト係数情報の構成例を示す図である。
【図4】図4は、記憶装置3に記憶されている右左折コスト係数情報の構成例を示す図である。
【図5】図5は、演算処理部1のハードウェア構成を示す図である。
【図6】図6は、演算処理部1の機能構成を示す図である。
【図7】図7は、自宅位置の設定画面の表示例である。
【図8】図8は、経路探索処理のフロー図である。
【符号の説明】
【0059】
1…演算処理部、2…ディスプレイ、3…地図データ記憶装置、4…音声出入力装置、5…入力装置、6…車輪速センサ、7…地磁気センサ、8…ジャイロ、9…GPS受信機、21…CPU、22…RAM、23…ROM、24…DMA、25…描画コントローラ、26…VRAM、27…カラーパレット、28…A/D変換器、29…SCI、30…PIO、31…カウンタ、41…ユーザ操作解析部、42…経路探索部、44…経路誘導部、45…表示処理部、46…現在位置算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置の経路探索方法であって、
ユーザの自宅位置を入手するステップと、
前記自宅位置に応じて異なるリンクコストを設定し、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索するステップと
を行うことを特徴とする経路探索方法。
【請求項2】
ナビゲーション装置の経路探索方法であって、
前記ナビゲーション装置は、
ユーザの自宅位置と、
道路を構成するリンクのリンク旅行時間と、
地域ごとのコスト係数とを記憶する記憶装置を有し、
リンクのコストとして、当該リンクのリンク旅行時間に、ユーザの自宅位置が含まれる地域に対応するコスト係数を乗じた値を用いて、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索する
ことを特徴とする経路探索方法。
【請求項3】
ナビゲーション装置の経路探索方法であって、
前記ナビゲーション装置は、
ユーザの自宅位置と、
道路を構成するリンクのリンク旅行時間と、
地域及び道路種別ごとのコスト係数とを記憶する記憶装置を有し、
リンクのコストとして、当該リンクのリンク旅行時間に、当該リンクの道路種別のコスト係数であってユーザの自宅位置が含まれる地域に対応するコスト係数を乗じた値を用いて、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索する
ことを特徴とする経路探索方法。
【請求項4】
請求項2または3において、
ユーザの自宅位置を受け付けるステップと、
受け付けた自宅位置を前記記憶装置に記憶させるステップと
を行うことを特徴とする経路探索方法。
【請求項5】
ナビゲーション装置であって、
ユーザの自宅位置を入手する手段と、
前記自宅位置に応じて異なるリンクコストを設定し、出発地から目的地までの総コストが最少となる経路を探索する手段と
を有することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−200989(P2006−200989A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11909(P2005−11909)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】