説明

ニコチン性アセチルコリン受容体リガンドとして有用な1,4−ジアザ−ビシクロ(3.2.2)ノニルピリミジニル誘導体

本発明は、新規な1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体及び医薬組成物の製造におけるそれらの使用に関する。本発明の化合物は、ニコチン性アセチルコリン受容体においてコリン作動性リガンドであることが見出される。それらの薬理学的プロファイルによって、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連する疾患又は障害、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症に関連する疾患又は障害、疼痛、及び化学物質の乱用の終了によってもたらされる離脱症状のように多様な疾患又は障害の治療に有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体及び医薬組成物の製造におけるそれらの使用に関する。本発明の化合物は、ニコチン性アセチルコリン受容体におけるコリン作動性リガンドであることが見出される。
【0002】
それらの薬理学的プロファイルによって、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連するもの、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症に関連する疾患又は障害、疼痛、及び化学物質の乱用の終了によってもたらされる離脱症状のように多様な疾患又は障害の治療のために有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
内因性コリン作動性神経伝達物質であるアセチルコリンは、2つのタイプのコリン作動性受容体であるムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を介してその生物学的作用を及ぼす。
【0004】
記憶及び認知にとって重要な脳の領域において、ムスカリン性アセチルコリン受容体はニコチン性アセチルコリン受容体よりも量的に優位であることが十分確立しているため、記憶に関連する障害の治療のための薬剤の開発を目的とした多くの研究は、ムスカリン性アセチルコリン受容体モジュレーターの合成に焦点を当ててきた。
【0005】
しかし、最近、nAChRモジュレーターの開発への興味が浮上してきた。いくつかの疾患は、コリン作動系の変性、すなわち、アルツハイマー型の老人性認知症、血管性認知症、及びアルコール中毒に直接関連する器質性脳障害疾患による認知機能障害に関連している。実際、いくつかのCNS障害は、コリン作動性欠損、ドーパミン作動性欠損、アドレナリン作動性欠損又はセロトニン作動性欠損に起因する場合がある。
【0006】
WO2004/029053及びWO2005/074940は、ニコチン性受容体のモジュレーターとして有用なジアザ二環式アリール誘導体について記載している。しかし、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体については記載されなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ニコチン性の新規なモジュレーターの提供に向けられ、このモジュレーターは、コリン作動性受容体に関連する疾患又は障害の治療のために有用である。
【0008】
それらの薬理学的プロファイルによって、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連するもの、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症に関連する疾患又は障害、疼痛、及び化学物質の乱用の終了によってもたらされる離脱症状のように多様な疾患又は障害の治療のために有用であり得る。
【0009】
本発明の化合物はまた、様々な診断法における診断手段又はモニタリング物質として、特にインビボ受容体イメージング(神経イメージング)のために有用であり得、それらは標識又は非標識形態で使用することができる。
【0010】
その第1の態様では、本発明は、式Iの新規な1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体、
【化1】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、式中、
Arは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、メチレンジオキシ及びエチレンジオキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フェニル及びナフチルから選択されるアリール基;又はハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フラニル、チエニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル及びインドリルから選択されるヘテロアリール基を表す。
【0011】
その第2の態様では、本発明は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に、治療有効量の本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩、又はそのプロドラッグを含む医薬組成物を提供する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、コリン作動性受容体の調節に応答性のヒトを含む哺乳動物の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減のための医薬組成物/医薬の製造のための、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩の使用に関する。
【0013】
第1の態様では、本発明は、コリン作動性受容体の調節に応答性のヒトを含む動物生体の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減方法を提供し、この方法は、それを必要としているこのような動物生体に、治療有効量の本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体を投与するステップを含む。
【0014】
本発明の他の目的は、当業者であれば下記の詳しい説明及び実施例から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体
第1の態様では、新規な1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体を提供する。本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、一般式I、
【化2】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩によって表すことができ、式中、
Arは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、メチレンジオキシ及びエチレンジオキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フェニル及びナフチルから選択されるアリール基;又はハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フラニル、チエニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル及びインドリルから選択されるヘテロアリール基を表す。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジン誘導体は、Arが、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回若しくは複数回、又はメチレンジオキシ若しくはエチレンジオキシで1回任意選択で置換されていてもよい、フェニル及びナフチルから選択されるアリール基を表す、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩である。
【0017】
さらに好ましい実施形態では、Arは、ハロ、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから選択される置換基で1回又は2回、又はメチレンジオキシ若しくはエチレンジオキシで1回任意選択で置換されていてもよい、フェニル基を表す。
【0018】
さらにより好ましい実施形態では、Arは、ハロ、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから選択される置換基で1回又は2回任意選択で置換されていてもよい、フェニル基を表す。
【0019】
別のさらに好ましい実施形態では、Arは、メチレンジオキシ若しくはエチレンジオキシで任意選択で置換されていてもよい、フェニル基を表す。
【0020】
よりさらに好ましい実施形態では、Arは、メチレンジオキシで置換されているフェニル基を表す。
【0021】
別の好ましい実施形態では、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジン誘導体は、Arが、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フラニル、チエニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル及びインドリルから選択されるヘテロアリール基を表す、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩である。
【0022】
さらに好ましい実施形態では、Arは、フラニル、チエニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル及びインドリルから選択される、任意選択で置換されているヘテロアリール基を表す。
【0023】
さらにより好ましい実施形態では、ヘテロアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回又は2回任意選択で置換されている。
【0024】
よりさらに好ましい実施形態では、ヘテロアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから選択される置換基で1回又は2回任意選択で置換されている。
【0025】
別のさらに好ましい実施形態では、Arは、フラニル、チエニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル及びインドリルから選択されるヘテロアリール基を表す。
【0026】
さらにより好ましい実施形態では、Arは、フラニル基、特にフラン−2−イル又はフラン−3−イル基を表す。
【0027】
別のよりさらに好ましい実施形態では、Arは、チエニル基、特にチエン−2−イル又はチエン−3−イル基を表す。
【0028】
第3のよりさらに好ましい実施形態では、Arは、ピロリル基を表す。
【0029】
第4のよりさらに好ましい実施形態では、Arは、ベンゾフラニル基、特にベンゾフラン−2−イル基を表す。
【0030】
第5のよりさらに好ましい実施形態では、Arは、ベンゾチエニル基、特にベンゾ[b]チオフェン−2−イル基を表す。
【0031】
第6のよりさらに好ましい実施形態では、Arは、インドリル基、特に1H−インドール−5−イル基を表す。
【0032】
最も好ましい実施形態では、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジン誘導体は、
4−(5−チオフェン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−チオフェン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−ベンゾフラン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−フラン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;又は
4−(5−フラン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
又はその薬学的に許容される塩である。
【0033】
本明細書に記載されている実施形態の2つ以上の任意の組合せは、本発明の範囲内であると考えられる。
【0034】
薬学的に許容される塩
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、意図された投与のために適切な任意の形態で提供し得る。適切な形態には、本発明の化合物の薬学的に(すなわち生理的に)許容される塩、及びプレドラッグ又はプロドラッグの形態が挙げられる。
【0035】
薬学的に許容される付加塩の例には、これらだけに限定されないが、無毒性の無機及び有機の酸付加塩(塩酸に由来する塩酸塩、臭化水素酸に由来する臭化水素酸塩、硝酸に由来する硝酸塩、過塩素酸に由来する過塩素酸塩、リン酸に由来するリン酸塩、硫酸に由来する硫酸塩、ギ酸に由来するギ酸塩、酢酸に由来する酢酸塩、アコニット酸に由来するアコニット酸塩、アスコルビン酸に由来するアスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸に由来するベンゼンスルホン酸塩、安息香酸に由来する安息香酸塩、ケイ皮酸に由来するケイ皮酸塩、クエン酸に由来するクエン酸塩、エンボン酸に由来するエンボン酸塩、エナント酸に由来するエナント酸塩、フマル酸に由来するフマル酸塩、グルタミン酸に由来するグルタミン酸塩、グリコール酸に由来するグリコール酸塩、乳酸に由来する乳酸塩、マレイン酸に由来するマレイン酸塩、マロン酸に由来するマロン酸塩、マンデル酸に由来するマンデル酸塩、メタンスルホン酸に由来するメタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸に由来するナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸に由来するフタル酸塩、サリチル酸に由来するサリチル酸塩、ソルビン酸に由来するソルビン酸塩、ステアリン酸に由来するステアリン酸塩、コハク酸に由来するコハク酸塩、酒石酸に由来する酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸に由来するトルエン−p−スルホン酸塩など)が挙げられる。このような塩は、周知であり当技術分野で記載されている手順によって形成し得る。
【0036】
薬学的に許容されると考えられない場合があるシュウ酸などの他の酸は、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体及びその薬学的に許容される酸付加塩を得ることにおいて、中間体として有用な塩の調製において有用であり得る。
【0037】
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体の薬学的に許容されるカチオン塩の例には、これらだけに限定されないが、アニオン基を含有する本発明の化合物のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、コリン、リシン、及びアンモニウム塩などが挙げられる。このようなカチオン塩は、周知であり当技術分野で記載されている手順によって形成し得る。
【0038】
薬学的に許容される付加塩のさらなる塩には、これらだけに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩などの無毒性の無機及び有機の酸付加塩が挙げられる。このような塩は、周知であり当技術分野で記載されている手順によって形成し得る。
【0039】
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体の金属塩には、カルボキシ基を含有する本発明の化合物のナトリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0040】
本発明の状況において、N含有化合物の「オニウム塩」もまた、薬学的に許容される塩として企図される。好ましい「オニウム塩」には、アルキル−オニウム塩、シクロアルキル−オニウム塩、及びシクロアルキルアルキル−オニウム塩が挙げられる。
【0041】
標識化合物
本発明の化合物は、それらの標識又は非標識形態で使用することができる。本発明の状況において、標識化合物は、天然で通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられている1つ又は複数の原子を有する。標識によって、前記化合物の容易な定量的検出が可能になるであろう。
【0042】
本発明の標識化合物は、様々な診断法における診断手段、放射性トレーサー、又はモニタリング物質として、及びインビボ受容体イメージングのために有用であり得る。
【0043】
本発明の標識異性体は、好ましくは標識として少なくとも1種の放射性核種を含有する。ポジトロン放出放射性核種は、全て使用のための候補である。本発明の状況において、放射性核種は、好ましくはH(重水素)、H(トリチウム)、13C、14C、131I、125I、123I、及び18Fから選択される。
【0044】
本発明の標識異性体を検出するための物理的方法は、ポジション放出断層撮影法(PET)、単一光子イメージングコンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴分光法(MRS)、磁気共鳴映像法(MRI)、及びコンピュータ体軸X線断層撮影法(CAT)、並びにこれらの組合せから選択してもよい。
【0045】
1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体の生成方法
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、化学合成のための従来の方法、例えば実施例において記載されているものによって調製し得る。本出願において記載されている方法のための出発物質は公知であり、従来の方法によって市販の化学物質から容易に調製し得る。
【0046】
また本発明の1つの化合物は、従来の方法を使用して本発明の他の化合物に変換することができる。
【0047】
本明細書に記載されている反応の最終生産物は、従来の技術によって、例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィーなどによって単離し得る。
【0048】
生物活性
本発明は、ニコチン性受容体の新規なリガンド及びモジュレーターの提供に向けられ、このリガンド及びモジュレーターは、コリン作動性受容体、特にニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に関連する疾患又は障害の治療のために有用である。本発明の好ましい化合物は、顕著なニコチン性アセチルコリンα7受容体サブタイプ選択性を示す。
【0049】
それらの薬理学的プロファイルによって、本発明の化合物は、CNSに関連する疾患、PNSに関連する疾患、平滑筋収縮に関連する疾患、内分泌障害、神経変性に関連する疾患、炎症に関連する疾患、疼痛、及び化学物質の乱用の終了によってもたらされる離脱症状のように多様な疾患又は状態の治療のために有用であり得る。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、認識力障害、学習障害、記憶欠損及び障害、ダウン症、アルツハイマー病、注意欠陥、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥーレット症候群、精神病、うつ病、双極性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、統合失調症に関連する認知若しくは注意欠陥、強迫性障害(OCD)、パニック障害、神経性食欲不振症、過食症及び肥満症などの摂食障害、ナルコレプシー、侵害受容、AIDS認知症、老人性認知症、自閉症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、不安、非OCD不安障害、痙攣性疾患、てんかん、神経変性障害、一過性無酸素症、誘発性神経変性、ニューロパシー、糖尿病性ニューロパシー、末梢性失読症、遅発性ジスキネジア、運動亢進症、軽度の疼痛、中等度若しくは重度の疼痛、急性、慢性若しくは周期的に起こる特徴の疼痛、片頭痛に起因する疼痛、術後疼痛、幻肢痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、慢性頭痛、中枢痛、糖尿病性ニューロパシー、治療後神経痛、若しくは末梢神経損傷に関連する疼痛、過食症、外傷後症候群、対人恐怖、睡眠障害、仮性痴呆、ガンザー症候群、月経前症候群、後期黄体相症候群、線維筋痛症、慢性疲労症候群、無言症、抜毛癖、時差ボケ、不整脈、平滑筋収縮、狭心症、早産、下痢、喘息、遅発性ジスキネジア、運動亢進症、早漏、勃起困難、高血圧、炎症性疾患、炎症性皮膚障害、ざ瘡、酒さ、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、下痢、又はタバコなどのニコチン含有製品、ヘロイン、コカイン及びモルヒネなどのオピオイド、ベンゾジアゼピン及びベンゾジアゼピン様薬物、並びにアルコールを含む中毒性のある物質の使用の終了によってもたらされる離脱症状の治療、予防又は軽減のために有用であり得る。
【0051】
より好ましい実施形態では、本発明の化合物は、疼痛、軽度若しくは中等度若しくは重度の疼痛、急性、慢性若しくは周期的に起こる特徴の疼痛、片頭痛に起因する疼痛、術後疼痛、幻肢痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、慢性頭痛、中枢痛、糖尿病性ニューロパシー、治療後神経痛、若しくは末梢神経損傷に関連する疼痛の治療、予防又は軽減のために有用であり得る。
【0052】
さらにより好ましい実施形態では、本発明の化合物は、平滑筋収縮、痙攣性疾患、狭心症、早産、痙攣、下痢、喘息、てんかん、遅発性ジスキネジア、運動亢進症、早漏、又は勃起困難と関連する疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減のために有用であり得る。
【0053】
よりさらに好ましい実施形態では、本発明の化合物は、神経変性障害、一過性無酸素症、又は誘発性神経変性の治療、予防又は軽減のために有用であり得る。
【0054】
さらにより好ましい実施形態では、本発明の化合物は、炎症性疾患、炎症性皮膚障害、ざ瘡、酒さ、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、又は下痢の治療、予防又は軽減のために有用であり得る。
【0055】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の化合物は、糖尿病性ニューロパシー、統合失調症、統合失調症に関連する認知若しくは注意欠陥、又はうつ病の治療、予防又は軽減のために有用であり得る。
【0056】
最後に、本発明の化合物は、乱用傾向及び中毒性のある物質の使用の終了によってもたらされる離脱症状の治療のために有用であり得る。このような中毒性のある物質には、タバコなどのニコチン含有製品、ヘロイン、コカイン、モルヒネ及びカンナビスなどのオピオイド、ベンゾジアゼピン、ベンゾジアゼピン様薬物、並びにアルコールが挙げられる。中毒性のある物質からの離脱は一般に、不安及びフラストレーション、怒り、不安、集中困難、不穏状態、心拍数低下及び食欲増加及び体重増加によって特徴付けられるトラウマ的経験である。
【0057】
このような状況において、「治療」とは、離脱症状及び禁断の治療、防止、予防及び軽減、並びに中毒性のある物質の自発的な摂取の減少をもたらす治療を包含する。
【0058】
他の態様では、本発明の化合物は、診断用薬として、例えば様々な組織におけるニコチン性受容体の同定及び位置測定のために使用される。
【0059】
現在、活性医薬成分(API)の適切な用量は、1日当たり約0.1〜約1000mgのAPI、より好ましくは1日当たり約10〜約500mgのAPI、最も好ましくは1日当たり約30〜約100mgのAPIの範囲内であることが企図されるが、正確な投与方法、それが投与される形態、意図される適応症、対象、特に関係のある対象の体重、さらに担当する医師又は獣医師の好み及び経験による。
【0060】
本発明の好ましい化合物は、マイクロモル未満及びマイクロモル範囲で、すなわち1未満から約100μMの範囲で生物活性を示す。
【0061】
医薬組成物
他の態様では、本発明は、治療有効量の本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体を含む新規な医薬組成物を提供する。
【0062】
治療において使用するための本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は原体化合物の形態で投与し得るが、医薬組成物に、1種又は複数の補助剤、賦形剤、担体、緩衝液、希釈剤、及び/又は他の従来の医薬助剤と共に、任意選択で生理学的に許容できる塩の形態で、活性成分を導入することが好ましい。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明は、1種又は複数の薬学的に許容される担体、及びしたがって、任意選択で当技術分野において公知であり使用されている他の治療及び/又は予防成分と共に、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体、又はその薬学的に許容される塩又は誘導体を含む医薬組成物を提供する。担体(単数又は複数)は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに対して有害ではないという意味において「許容され」なくてはならない。
【0064】
本発明の医薬組成物は、所望の治療に適した任意の好都合な経路によって投与し得る。好ましい投与経路には、経口投与、特に錠剤、カプセル剤、糖衣錠(drage)、散剤、又は液体形態、及び非経口投与、特に皮膚、皮下、筋内、又は静脈内注射が挙げられる。本発明の医薬組成物は、所望の製剤に適切な標準的方法及び従来の技術を使用することによっていかなる当業者も製造することができる。所望である場合、活性成分の持続放出を得るために適合される組成物を用いてもよい。
【0065】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、気管支、経鼻、肺、局所(口腔及び舌下を含む)、経皮、膣又は非経口(皮膚、皮下、筋内、腹腔内、静脈内、動脈内、脳内、眼球内注射又は注入を含む)投与のために適切なもの、或いは吸入又は吹送による投与(粉末及び液体エアロゾル投与を含む)、或いは持続放出系による投与のために適切な形態のものでよい。持続放出系の適切な例には、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス(このマトリックスは、成形された物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態であり得る)が挙げられる。
【0066】
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、従来の補助剤、担体、又は希釈剤と共に、このように医薬組成物及びその単位用量の形態としてもよい。このような形態には、固体、特に錠剤、充填カプセル剤、散剤及びペレット剤形態、並びに液体、特に水溶液剤又は非水溶液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、及びこれらを充填したカプセル剤(全て経口使用用)、直腸投与のための坐薬、及び非経口使用のための無菌注射剤が挙げられる。このような医薬組成物及びその単位剤形は、さらなる活性化合物又は成分を伴って、又は伴わず、従来の割合で従来の成分を含んでもよく、このような単位剤形は、用いられる意図した1日投与量範囲に見合った任意の適切な有効量の活性成分を含有し得る。
【0067】
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、多種多様の経口及び非経口剤形で投与することができる。下記の剤形が、活性成分として、本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩を含み得ることは当業者には明らかであろう。
【0068】
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は、固体又は液体でよい。固形製剤には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐薬、及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又は封入材料としても作用し得る1種又は複数の物質でよい。
【0069】
散剤において、担体は、微粉化した活性成分との混合物中にある微粉化した固体である。
【0070】
錠剤において、活性成分は、適切な割合で必要な結合能を有する担体と混合され、所望の形状及びサイズに圧縮されている。
【0071】
散剤及び錠剤は、好ましくは5又は10〜約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。「調製物」という用語は、担体として封入材料を伴う活性化合物の製剤を含むことを意図し、担体を有する又は有さない活性成分が担体で取り囲まれているカプセル剤を提供する(担体は、このように活性成分と関連している)。同様に、カシェ剤及びロゼンジが含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びロゼンジは、経口投与のために適切な固体として使用することができる。
【0072】
坐薬を調製するために、脂肪酸グリセリド又はカカオバターの混合物などの低融点ワックスを最初に溶解し、撹拌することによって活性成分をその中に均一に分散させる。次いで、溶解された均一な混合物を好都合なサイズの型中に注ぎ、冷却し、それによって凝固させる。
【0073】
膣投与に適切な組成物は、活性成分に加えて当技術分野において適切なものとして公知のこのような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤又はスプレー剤として提示してもよい。
【0074】
液体調製物には、溶液、懸濁剤、及び乳剤、例えば、水溶液又は水−プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射用液体調製物は、ポリエチレングリコール水溶液中で溶液として製剤することができる。
【0075】
本発明による1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、このように(例えば注入、例えばボーラス注入又は持続注入による)非経口投与のために製剤してもよく、アンプル、予め充填されたシリンジ、少容量の注入中の単位用量形態、又は保存剤を加えた複数用量容器中で提示してもよい。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液剤、又は乳剤などの形態をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの配合剤を含有してもよい。代わりに、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば無菌の発熱物質なしの水との構成のための、無菌固体の無菌的単離によって又は溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態でよい。
【0076】
経口使用のために適切な水溶液は、活性成分を水に溶解し、適切な着色剤、香料、安定化剤及び増粘剤を所望により加えることによって調製することができる。
【0077】
経口使用のために適切な水性懸濁剤は、天然若しくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は他の周知の懸濁化剤などの粘稠材料と共に、微粉化した活性成分を水に分散することによって作製することができる。
【0078】
経口投与のための液体形態調製物への使用直前の変換が意図される固形調製物もまた含まれる。このような液体形態には、溶液剤、懸濁剤、及び乳剤が挙げられる。活性成分に加えて、このような調製物は、着色剤、香料、安定剤、緩衝液、人口及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
【0079】
表皮への局所投与のために、本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、軟膏、クリーム剤若しくはローション剤として、又は経皮パッチとして製剤し得る。軟膏及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性基剤と共に製剤し得る。ローション剤は、水性又は油性基剤と共に製剤してもよく、一般にまた1種若しくは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、又は着色剤を含有するであろう。
【0080】
口中での局所投与に適した組成物には、香味を付けた基剤(通常スクロース及びアカシア又はトラガカント)中に活性剤を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの不活性な基剤中に活性成分を含む香錠;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0081】
溶液剤又は懸濁剤は、従来の手段によって、例えばスポイト、ピペット又はスプレーで鼻腔に直接施される。組成物は、単回用量又は複数用量形態で提供し得る。
【0082】
気道への投与はまた、エアロゾル製剤によって行ってもよく、ここでは活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切な気体などの適切な噴射剤と共に加圧パック中で提供される。エアロゾルはまた、好都合なことにレシチンなどの界面活性剤を含有し得る。薬物の用量は、定量バルブを用意することによって制御し得る。
【0083】
代わりに、活性成分は、乾燥粉末の形態、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP)など)などの適切な粉末基剤中の化合物の混合粉体中で提供してもよい。好都合なことに、粉末担体は、鼻腔中でゲルを形成するであろう。粉末組成物は、例えば、(例えば、ゼラチンの)カプセル剤若しくはカートリッジ、又はブリスターパック(そこから粉末を吸入器によって投与し得る)中の単位用量形態で提示してもよい。
【0084】
鼻腔内組成物を含む気道への投与のために意図された組成物において、化合物は一般に、例えば5ミクロン以下程度の小粒径を有するであろう。このような粒径は、当技術分野において公知の手段、例えば微粒子化によって得てもよい。
【0085】
所望である場合、活性成分の持続放出を得るために適合される組成物を用いてもよい。
【0086】
医薬品は、好ましくは単位剤形である。このような形態において、調製物は適切な量の活性成分を含有する単位用量に再分割される。単位剤形は、パッケージ化された調製物、分離量の調製物を含有するパッケージ(バイアル又はアンプル中のパッケージ化された錠剤、カプセル剤、及び散剤など)でよい。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、若しくはロゼンジ自体でよく、又は適切な数のパッケージ化された形態のこれらのいずれかでよい。
【0087】
経口投与のための錠剤又はカプセル剤、並びに静脈内投与及び持続注入のための液体は、好ましい組成物である。
【0088】
製剤及び投与のための技術についてのさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.、Easton、PA)の最新版において見出し得る。
【0089】
治療有効用量は、症状又は状態を緩和させる活性成分の量を意味する。治療効力及び毒性、例えばED50及びLD50は、細胞培養又は実験動物において標準的な薬理学的手順によって決定し得る。治療効果と毒性効果との用量比は治療係数であり、LD50/ED50比によって表してもよい。大きな治療係数を示す医薬組成物が好ましい。
【0090】
投与される用量は、当然ながら治療される個人の年齢、体重及び状態、並びに投与経路、剤形及び療法、並びに所望の結果に注意深く調整されるべきであり、正確な投与量は、当然ながら医師によって決定されるべきである。
【0091】
実際の投与量は、治療される疾患の性質及び重篤度によって決まり、医師の裁量の範囲内であり、所望の治療効果を生じさせるための本発明の特定の状況への投与量の滴定によって変化し得る。しかし、個々の用量毎に約0.1〜約500mg、好ましくは約1〜約100mg、最も好ましくは約1〜約10mgの活性成分を含有する医薬組成物は、治療上の処置のために適切であることが現在意図される。
【0092】
活性成分は、1日当たり1回又は複数回の用量で投与し得る。満足のいく結果は、場合によっては、0.1μg/kg(静脈内)及び1μg/kg(経口)の低さの投与量で得ることができる。投与量範囲の上限は、約10mg/kg(静脈内)及び100mg/kg(経口)であると現在考えられる。好ましい範囲は、約0.1μg/kg〜約10mg/kg/日(静脈内)及び約1μg/kg〜約100mg/kg/日(経口)である。
【0093】
治療法
本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体は、有用なニコチン性であり、したがってコリン作動性機能障害が関与する一連の病気、並びにnAChRモジュレーターの作用に応答する一連の障害の治療に有用である。
【0094】
他の態様では、本発明は、ヒトを含む動物生体の疾患又は障害又は状態(この疾患、障害又は状態は、コリン作動性受容体の調節に応答する)の治療、予防又は軽減のための方法を提供し、この方法は、それを必要としているヒトを含むこのような動物生体に、有効量の本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体を投与することを含む。
【0095】
好ましい実施形態では、この疾患、障害又は状態は、中枢神経系に関する。
【0096】
本発明によって意図される好ましい医学的適応症は、上記のものである。
【0097】
適切な用量範囲は、従来通り、正確な投与方法、投与形態、投与の対象とする適応症、関与している対象、関与している対象の体重、並びにさらに担当の医師又は獣医師の好み及び経験によって、1日0.1〜1000ミリグラム、好ましくは1日10〜500ミリグラム、さらに好ましくは1日30〜100ミリグラム内であることが現在意図されている。
【実施例】
【0098】
本発明を、下記の実施例を参照しながらさらに例示するが、これは特許請求されている本発明の範囲を決して限定することを意図しない。
【0099】
(例1)
調製例
空気に対して不安定な試薬又は中間体を伴う全ての反応は、窒素下及び無水溶媒中で行った。硫酸マグネシウムを後処理手順における乾燥剤として使用し、溶媒を減圧下で蒸発させた。
【0100】
1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン(中間化合物)
表題化合物を、J.Med.Chem.1993、36、2311〜2320によって(及び下記の僅かに変更した方法によって)調製した。
【0101】
1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン−3−オン(中間化合物)
3−キヌクリジノン塩酸塩(45g;278mmol)の水溶液(90ml)に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(21g;302mmol)及び酢酸ナトリウム(CHCOONa×3HO;83g;610mmol)を加え、混合物を70℃で1時間撹拌し、次いで0℃に冷却した。分離した結晶質を(洗浄はせず)濾過し、真空中で乾燥させ、40.0gのオキシムを得た。
【0102】
3−キヌクリジノンオキシム(40.0g)を、予熱した120℃ポリリン酸(190g)に2時間の間で少量ずつ加えた。反応の間の溶液の温度を、130℃に保った。全てのオキシムを加えた後、溶液を同じ温度で20分間撹拌し、次いでエナメル加工した容器に移し、室温にした。酸性混合物を炭酸カリウムの溶液(300mlの水中500g)によって中和し、2000mlのフラスコに移し、300mlの水で希釈し、クロロホルム(3×600ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させ、固体残留物を真空中で乾燥させ、30.0g(77%)のラクタムの混合物を得た。
【0103】
1,4−ジオキサン(220ml)からの得られた混合物の結晶化によって、15.8g(40.5%)の1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン−3−オンを無色の大きな結晶(融点211〜212℃)として得た。
【0104】
1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン(中間化合物)
1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン−3−オン(15.8g;113mmol)の無水ジオキサン(130ml)溶液に、LiAlH(4.9g;130mmol)をアルゴン下で加えた。混合物を6時間還流させ、次いで室温にした。反応混合物に、水(10mlのジオキサン中5ml)を一滴ずつ加え、混合物を0.5時間撹拌し、次いでガラスフィルターで濾過した。溶媒を蒸発させ、90℃(0.1ミリバール)でクーゲルロール装置を使用して残渣を蒸留し、1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン(11.1g;78%)を無色の吸湿性物質として得た。
【0105】
方法A
4−(5−チオフェン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン塩酸塩(化合物A1)
4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン(1.0g、3.5mmol)、2−チオフェンボロン酸(0.67g、5.25mmol)、炭酸カリウム(1.45、10.5mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(148mg、0.210mmol)、1,3−プロパンジオール(1.09g、14.0mmol)、1,2−ジメトキシエタン(110ml)及び水(50ml)の混合物を、7時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(80ml、1M)を加え、続いてジクロロメタン(3×50ml)によって抽出した。混合物を蒸発させた。ジクロロメタン、メタノール及びアンモニア水の混合物(9:1+1%)を使用することによって、粗混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。遊離塩基をエタノールに溶解し、続いてエタノール中のHCl(3ml、3M)を加えることによって、相当する塩を得た。収率0.23g(23%)。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、287.1331ダルトン、(計算値)287.133042ダルトン、偏差0.2ppmを示す。
【0106】
4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン(中間化合物)
5−ブロモ−2−クロロピリミジン(2.5g、12.92mmol)、1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノナン(1.4g、18.09mmol)、トリエチルアミン(1.3g、12.92mmol)及びジオキサン(100ml)の混合物を、室温で3時間撹拌した。水(100ml)を加えた。混合物を酢酸エチル(3×100ml)で抽出した。有機相を炭酸ナトリウム(100ml、1%)及び飽和塩化ナトリウム(75ml)で洗浄した。生成物を油として単離した。
【0107】
4−(5−チオフェン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンフマル酸塩(化合物A2)
3−チオフェンボロン酸及び4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンから方法Aによって調製した。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、287,1326ダルトン、(計算値)287,133042ダルトン、偏差−1.5ppmを示す。
【0108】
4−(5−ベンゾフラン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンフマル酸塩(化合物A3)
2−ベンゾフランボロン酸及び4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンから方法Aによって調製した。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、321,171ダルトン、(計算値)321,171536ダルトン、偏差−1.7ppmを示す。
【0109】
4−(5−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンフマル酸塩(化合物A4)
2−ベンゾチオフェンボロン酸及び4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンから方法Aによって調製した。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、337,1476ダルトン、(計算値)337,148692ダルトン、偏差−3.2ppmを示す。
【0110】
4−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンフマル酸塩(化合物A5)
5−インドリルボロン酸及び4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンから方法Aによって調製した。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、320,1873ダルトン、(計算値)320,18752ダルトン、偏差−0.7ppmを示す。
【0111】
4−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン遊離塩基(化合物A6)
5−ベンゾ[1,3]ジオキソリルボロン酸及び4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンから方法Aによって調製した。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、325.166ダルトン、(計算値)325.166451ダルトン、偏差−1.4ppmを示す。
【0112】
4−(5−フラン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン遊離塩基(化合物A7)
3−フランボロン酸及び4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンから方法Aによって調製した。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、271.1572ダルトン、(計算値)271.155886ダルトン、偏差4.8ppmを示す。
【0113】
4−(5−フラン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン遊離塩基(化合物A8)
2−フランボロン酸及び4−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナンから方法Aによって調製した。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、271.1546ダルトン、(計算値)271.155886ダルトン、偏差−4.7ppmを示す。
【0114】
(例2)
ラット脳におけるH−α−ブンガロトキシン結合のインビトロ阻害
この実施例において、ニコチン性受容体のα−サブタイプへの結合のための本発明の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体の親和性を、例えばWO2006/087306において記載されているように本質的に行う標準的アッセイにおいて決定する。
【0115】
試験値を、IC50H−α−ブンガロトキシンの特異的結合を50%阻害する被検物質の濃度)として示す。
【0116】
この実験の結果を、下記の表1に示す。
表1
H−α−ブンガロトキシン結合の阻害
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによって表される1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジン誘導体、
【化1】


立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩
[式中、
Arは、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、メチレンジオキシ及びエチレンジオキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フェニル及びナフチルから選択されるアリール基;又は
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フラニル、チエニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル及びインドリルから選択されるヘテロアリール基を表す]。
【請求項2】
Arが、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回若しくは複数回、又はメチレンジオキシ若しくはエチレンジオキシで1回任意選択で置換されていてもよい、フェニル及びナフチルから選択されるアリール基を表す、請求項1に記載の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジン誘導体、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Arが、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される置換基で1回又は複数回任意選択で置換されていてもよい、フラニル、チエニル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル及びインドリルから選択されるヘテロアリール基を表す、請求項1に記載の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジン誘導体、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
4−(5−チオフェン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−チオフェン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−ベンゾフラン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
4−(5−フラン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;又は
4−(5−フラン−2−イル−ピリミジン−2−イル)−1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノナン;
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジン誘導体。
【請求項5】
少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に、治療有効量の請求項1から4までのいずれか一項に記載の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩、又はそのプロドラッグを含む医薬組成物。
【請求項6】
ヒトを含む哺乳動物の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減のための医薬組成物/医薬の製造のための、請求項1から4までのいずれか一項に記載の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩の使用であって、この疾患、障害又は状態が、コリン作動性受容体の調節に応答する、上記使用。
【請求項7】
前記疾患、障害又は状態が、認識力障害、学習障害、記憶欠損及び障害、ダウン症、アルツハイマー病、注意欠陥、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥーレット症候群、精神病、うつ病、双極性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、統合失調症に関連する認知若しくは注意欠陥、強迫性障害(OCD)、パニック障害、神経性食欲不振症、過食症及び肥満症などの摂食障害、ナルコレプシー、侵害受容、AIDS認知症、老人性認知症、自閉症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、不安、非OCD不安障害、痙攣性疾患、てんかん、神経変性障害、一過性無酸素症、誘発性神経変性、ニューロパシー、糖尿病性ニューロパシー、末梢性失読症、遅発性ジスキネジア、運動亢進症、軽度の疼痛、中等度若しくは重度の疼痛、急性、慢性若しくは周期的に起こる特徴の疼痛、片頭痛に起因する疼痛、術後疼痛、幻肢痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、慢性頭痛、中枢痛、糖尿病性ニューロパシー、治療後神経痛、若しくは末梢神経損傷に関連する疼痛、過食症、外傷後症候群、対人恐怖、睡眠障害、仮性痴呆、ガンザー症候群、月経前症候群、後期黄体相症候群、線維筋痛症、慢性疲労症候群、無言症、抜毛癖、時差ボケ、不整脈、平滑筋収縮、狭心症、早産、下痢、喘息、遅発性ジスキネジア、運動亢進症、早漏、勃起困難、高血圧、炎症性疾患、炎症性皮膚障害、ざ瘡、酒さ、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、下痢、又はタバコなどのニコチン含有製品、ヘロイン、コカイン及びモルヒネなどのオピオイド、ベンゾジアゼピン及びベンゾジアゼピン様薬物、並びにアルコールを含む中毒性のある物質の使用の終了によってもたらされる離脱症状である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ヒトを含む動物生体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減方法であって、この障害、疾患又は状態が、コリン作動性受容体の調節に応答し、それを必要としているこのような動物生体に、治療有効量の請求項1から4までのいずれか一項に記載の1,4−ジアザ−ビシクロ[3.2.2]ノニルピリミジニル誘導体を投与するステップを含む、上記方法。

【公表番号】特表2010−536724(P2010−536724A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520574(P2010−520574)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060652
【国際公開番号】WO2009/024515
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】