説明

ニトリル共重合体ゴム組成物

【課題】耐ガソリン透過性、耐サワーガソリン性および耐圧縮永久ひずみ性に優れたゴム架橋物を与えるニトリル共重合体ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位43〜60重量%を有するニトリル共重合体ゴム(A)と、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレーク(B)と、を含有し、前記ガラスフレーク(B)の含有割合が、前記ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、1〜30重量部であるニトリル共重合体ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ガソリン透過性、耐サワーガソリン性および耐圧縮永久ひずみ性に優れたゴム架橋物を与えるニトリル共重合体ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、共役ジエン単量体単位またはオレフィン単量体単位と、を含有するゴム(ニトリル共重合体ゴム)は、耐油性に優れるゴムとして知られており、その架橋物は主に燃料用ホース、ガスケット、パッキンおよびオイルシールなどの主として自動車用途の各種油類周りのゴム製品の材料として用いられている。
【0003】
近年、世界的な環境保護活動の高まりにより、ガソリンなどの燃料の大気中への蒸散量を低減させる取り組みが進み、日本でも燃料ホース、シールおよびパッキンなどの用途においてガソリン透過性が一層低いことが求められている。また、燃料ホースには、酸敗ガソリン中に発生するフリーラジカルに対する耐性(耐サワーガソリン性)のあることも要求されている。
【0004】
このような状況において特許文献1は、ゴムラテックスに粘土物質を分散、混合することにより得られる架橋物の特性を改善するために、各種ゴムラテックスと、モンモリロナイト懸濁水と、ピロリン酸化合物等のモンモリロナイト用分散剤とを高速で撹拌して混合することを提案している。しかしながら、この特許文献1の方法では、得られる架橋物のガスバリア性は向上するものの、耐ガソリン透過性が不十分であった。
【0005】
また、特許文献2には、ゴム系高分子と層状無機化合物とを含有する混合液を調製し、調製した混合液からゴム系高分子と層状無機化合物とを含有するゴム組成物を回収するゴム組成物の製造方法が開示されている。しかしながら、この特許文献2では、そもそも、制振性に優れたゴム架橋物を得ること目的としており、耐ガソリン透過性や耐サワーガソリン性が不十分であった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−70137号公報
【特許文献2】特開2003−201373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、耐ガソリン透過性、耐サワーガソリン性および耐圧縮永久ひずみ性に優れたゴム架橋物を与えるニトリル共重合体ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、所定量のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を有するニトリル共重合体ゴムに、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレークを特定量添加することにより得られるニトリル共重合体ゴム組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位43〜60重量%を有するニトリル共重合体ゴム(A)と、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレーク(B)と、を含有し、前記ガラスフレーク(B)の含有割合が、前記ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、1〜30重量部であるニトリル共重合体ゴム組成物が提供される。
【0010】
好ましくは、前記ガラスフレーク(B)が、カップリング剤で表面処理されたものである。
好ましくは、前記ニトリル共重合体ゴム(A)が、カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位をさらに有し、前記ニトリル共重合体ゴム(A)中における、前記カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位の含有割合が、0.1〜20重量%である。
好ましくは、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物は、可塑剤をさらに含有する。
好ましくは、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物は、前記ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、10〜150重量部の塩化ビニル系樹脂および/またはアクリル系樹脂をさらに含有する。
【0011】
本発明によれば、上記いずれかのニトリル共重合体ゴム組成物に架橋剤を加えてなる架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物が提供される。
本発明によれば、上記架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐ガソリン透過性、耐サワーガソリン性および耐圧縮永久ひずみ性に優れるゴム架橋物を与えるニトリル共重合体ゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のニトリル共重合体ゴム組成物は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位43〜60重量%を有するニトリル共重合体ゴム(A)と、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレーク(B)と、を含有し、前記ガラスフレーク(B)の含有割合が、前記ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、1〜30重量部である組成物である。
【0014】
ニトリル共重合体ゴム(A)
まず、本発明で用いるニトリル共重合体ゴム(A)について説明する。
ニトリル共重合体ゴム(A)は、少なくともα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を43〜60重量%有するゴムである。
【0015】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、43〜60重量%であり、好ましくは45〜56重量%、より好ましくは46〜53重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム架橋物の耐油性および耐ガソリン透過性が悪化する。一方、含有割合が高すぎると、得られるゴム架橋物が耐寒性に劣るものとなり、脆化温度が高くなる。
【0016】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば、特に限定されないが、たとえば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0017】
また、本発明で用いるニトリル共重合体ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位に加えて、カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位をさらに有することが好ましい。
【0018】
カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.3〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位を上記範囲で含有することにより、本発明の効果がより一層顕著になる。
【0019】
カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位を形成する単量体としては、得られる重合体が水または酸水溶液に接した際に正帯電性を有するような単量体単位を形成する単量体であれば、特に限定されない。このような単量体としては、たとえば、カチオン性単量体として、第四級アンモニウム塩基を含有する単量体が挙げられる。また、カチオンを形成可能な単量体として、第三級アミノ基のように塩酸および硫酸等の酸水溶液と接触した際にアンモニウム塩(たとえば、アミン塩酸塩やアミン硫酸塩)などにカチオン化される前駆体部(置換基)を有する単量体が挙げられる。
【0020】
カチオン性単量体の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライド〔アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライドおよび/またはメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライドを意味する。以下、同様。〕、(メタ)アクリロイルオキシヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等の第四級アンモニウム塩基を含有する(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩基を含有する(メタ)アクリルアミド単量体;などが挙げられる。
【0021】
カチオンを形成可能な単量体の具体例としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニル基含有環状アミン単量体;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の第三級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリルアミドジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の第三級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド単量体;N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリン等が挙げられる。
【0022】
カチオン性単量体およびカチオンを形成可能な単量体のなかでも、本発明の効果がより一層顕著になることから、ビニル基含有環状アミン単量体、第三級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体および第三級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド単量体が好ましく、ビニル基含有環状アミン単量体および第三級アミノ基含有アクリルアミド単量体がより好ましく、ビニル基含有環状アミン単量体が特に好ましい。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。なお、ビニル基含有環状アミン単量体としては、ビニル基含有ピリジン類が好ましく、2−ビニルピリジンが特に好ましい。
【0023】
また、本発明で用いるニトリル共重合体ゴム(A)は、得られるゴム架橋物がゴム弾性を有するものとするために、共役ジエン単量体単位を含有することが好ましい。
【0024】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、炭素数4以上の共役ジエンが好ましく、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0025】
ニトリル共重合体ゴム(A)における共役ジエン単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは20〜56.9重量%であり、より好ましくは29〜54.7重量%、さらに好ましくは36〜53.5重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム架橋物のゴム弾性が低下するおそれがある。一方、多すぎると得られるゴム架橋物の耐熱老化性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
【0026】
また、本発明で用いるニトリル共重合体ゴム(A)は、上記α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位、ならびに、共役ジエン単量体単位以外に、これらの単量体単位を形成する単量体と共重合可能な他の単量体の単位を含有していてもよい。このような他の単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0027】
このような共重合可能な他の単量体としては、たとえば、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、オクテニルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの不飽和エポキシド化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどのフッ素含有ビニル化合物;1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの非共役ジエン化合物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα―オレフィン化合物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸およびその無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル;マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸のモノエステルおよびジエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのトリメタクリル酸エステル類;などの多官能エチレン性不飽和単量体のほか、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N′-ジメチロール(メタ)アクリルアミドなどの自己架橋性化合物;などが挙げられる。
これらのなかでも、不飽和エポキシド化合物を用いることにより、得られるゴム架橋物の耐ガソリン透過性のさらなる向上が可能となる場合がある。
【0028】
ニトリル共重合体ゴム(A)のムーニー粘度(以下、「ポリマー・ムーニー粘度」と記すことがある。)(ML1+4、100℃)は、好ましくは3〜250、より好ましくは15〜180、さらに好ましくは40〜160である。ニトリル共重合体ゴム(A)のポリマー・ムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の強度特性が低下するおそれがある。一方、高すぎると、ニトリル共重合体ゴム組成物とした場合における加工性が悪化する可能性がある。
【0029】
ニトリル共重合体ゴム(A)の製造方法
ニトリル共重合体ゴム(A)の製造方法としては、特に限定されず、上記したニトリル共重合体ゴム(A)を構成する各単量体を共重合できる方法であれば良いが、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの乳化剤を用いて約50〜1,000nmの平均粒径を有する共重合体のラテックスを得る乳化重合法や、ポリビニルアルコールなどの分散剤を用いて約0.2〜200μmの平均粒径を有する共重合体のラテックスを得る懸濁重合法(微細懸濁重合法も含む)などを好適に用いることができる。これらのなかでも、重合反応制御が容易なことから乳化重合法がより好ましい。
【0030】
乳化重合法は、下記の手順で行うことが好ましい。
なお、以下において、適宜、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体を「単量体(m1)」とし、共役ジエン単量体を「単量体(m2)」とし、カチオン性単量体および/またはカチオンを形成可能な単量体を「単量体(m3)」とする。
【0031】
すなわち、単量体(m1)43〜62重量%、好ましくは45〜58重量%、より好ましくは46〜56重量%、単量体(m2)18〜56.9重量%、好ましくは27〜54.7重量%、より好ましくは34〜53.5重量%、および単量体(m3)0〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%からなる単量体混合物(ただし、単量体(m1)、単量体(m2)および単量体(m3)の合計量が100重量%である。)を、乳化重合し、重合転化率が好ましくは50〜95重量%の時点で、重合反応を停止した後、所望により未反応の単量体を除去する方法が好ましい。
【0032】
乳化重合法に用いる、単量体(m1)の使用量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性および耐ガソリン透過性が悪化し、一方、多すぎると、耐寒性が悪化する傾向がある。単量体(m2)の使用量が少なすぎると重合初期段階で反応が失活し、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐ガソリン透過性が悪くなる傾向がある。また、単量体(m3)を上記範囲で用いることにより、ガラスフレークの分散性が向上し、耐ガソリン透過性および耐寒性がより一層優れたものとなる。
また、重合反応を停止する際の重合転化率が低すぎると、未反応の単量体の回収が非常に困難になる。一方、高すぎると、得られるゴム架橋物の常態物性が悪化する。
【0033】
なお、乳化重合を行うに際しては、乳化重合の分野で従来公知の乳化剤、重合開始剤、重合副資材などを適宜用いることができ、重合温度や重合時間も適宜調節すればよい。
【0034】
本発明においては、乳化重合に用いる単量体(m1)〜(m3)の全量を用い、重合反応を開始してもよいが、生成する共重合体の各単量体単位の組成分布を制御し、よりゴム弾性に富むゴム架橋物が得られるという観点より、乳化重合に用いる単量体(m1)〜(m3)の全量のうち一部を用い、重合反応を開始し、その後、乳化重合に用いる単量体(m1)〜(m3)の残余を反応器に添加して重合することが好ましい。これは、一般に、重合反応開始時から、乳化重合に用いる単量体(m1)〜(m3)の全量を反応させてしまうと、共重合体の組成分布が広がるためである。
【0035】
この場合、重合に用いる単量体(m1)の好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%、特に好ましくは30〜100重量%、重合に用いる単量体(m2)の好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは15〜70重量%、および、重合に用いる単量体(m3)の好ましくは0〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%からなる単量体混合物を反応器に仕込み、重合反応を開始した後、反応器に仕込んだ単量体混合物に対する重合転化率が好ましくは5〜80重量%の範囲で、残余の単量体を反応器に添加して重合反応を継続することが好ましい。なお、たとえば、単量体(m3)を使用しない場合においても、重合に用いる単量体(m1)、単量体(m2)のうち、上記した量を用い、重合反応を開始し、単量体(m1)、(m2)の残余を反応器に添加して重合することが好ましい。
【0036】
残余の単量体を添加する方法は、特に制限されないが、一括で添加しても、分割して添加しても、また、連続的に添加してもよい。本発明では、得られる共重合体の組成分布をより簡便に制御できる点から、残余の単量体を、分割して添加することが好ましく、1〜6回に分割して添加することが特に好ましい。残余の単量体を、分割して添加する場合、分割添加する単量体の量や分割添加する時期は、重合反応の進行に合わせ、所望の共重合体が得られるよう調整すればよい。
【0037】
そして、その後、所望により、加熱蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留などの公知の方法を用いて未反応の単量体を除去することにより、ニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスを得ることができ、これを凝固させることにより、ニトリル共重合体ゴム(A)を得ることができる。
【0038】
本発明においては、乳化重合法によって得られるニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスの固形分濃度は、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
【0039】
なお、本発明で用いるニトリル共重合体ゴム(A)は、上記のように共重合して得られた共重合体の共役ジエン単量体単位部分における不飽和結合部分のうち少なくとも一部を水素化(水素添加反応)した水素化ニトリル共重合体ゴムであっても良い。水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。ニトリル共重合体ゴム(A)を、水素化ニトリル共重合体ゴムとする場合には、そのヨウ素価は、120以下、好ましくは80以下、より好ましくは40以下である。ニトリル共重合体ゴム(A)を水素化し、水素化ニトリル共重合体ゴムとすることにより、耐熱性、耐候性、耐オゾン性などを向上させることができる。
【0040】
ニトリル共重合体ゴム組成物
本発明のニトリル共重合体ゴム組成物は、上述のニトリル共重合体ゴム(A)に、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレーク(B)を特定量加えてなるものである。ニトリル共重合体ゴム(A)に、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレーク(B)を加えることにより、ゴム架橋物とした場合における、ガソリンの浸透遮断効果を向上させることができ、得られるゴム架橋物を耐ガソリン透過性に優れたものとすることができる。
【0041】
本発明で用いるガラスフレーク(B)は、EガラスまたはCガラスなどの無定形板状粒子である。図1に、本発明で用いるガラスフレーク(B)の模式図を示す。図1中において、ガラスフレーク(B)は符号「1」で表され、図1に示すように、ガラスフレーク(B)は、厚み方向(図1中、符号「t」で表した。)と略垂直な面であって、ガラスフレーク(B)の有する面のうち最も表面積の広い面である主面2を有している。本発明においては、ガラスフレーク(B)を構成する各板状粒子の主面2の最大の面の平均面積を、「主面の平均面積」とする。
【0042】
ガラスフレーク(B)の主面の平均面積は、1μm以上であり、好ましくは5〜850,000μm、より好ましくは100〜500,000μm、さらに好ましくは200〜400,000μmである。主面の平均面積が上記範囲にあるガラスフレーク(B)を用い、これをニトリル共重合体ゴム(A)に加えることにより、ゴム架橋物とした場合における、ガソリンの浸透遮断効果を向上させることができ、得られるゴム架橋物を耐ガソリン透過性および耐サワーガソリン性に優れたものとすることができる。ガラスフレーク(B)の主面の平均面積が小さすぎると、得られるゴム架橋物の耐ガソリン透過性が悪化してしまう。一方、大きすぎると、ニトリル共重合体ゴム(A)中への分散が困難となり、得られるゴム架橋物の機械的強度が低下してしまう。
【0043】
ガラスフレーク(B)の平均厚みは、好ましくは0.01〜20μmであり、より好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.9〜8μmである。ガラスフレーク(B)の平均厚みは、ガラスフレーク(B)を構成する各板状粒子の厚みtを平均することにより求めることができる。ガラスフレーク(B)の平均厚みが上記範囲にある場合に、耐ガソリン透過性がより一層向上する。
【0044】
なお、ガラスフレーク(B)の主面の平均面積および平均厚みは、ガラスフレーク(B)を構成する各板状粒子から、原子間力顕微鏡で無作為に選んだ100個の粒子について、図1に示す主面2の面積および厚みtを測定し、これらを算術平均することにより求めることができる。
【0045】
また、ガラスフレーク(B)は、本発明の効果がより一層顕著になることから、その表面を、カップリング剤で処理されたものが好ましい。表面処理に用いるカップリング剤としては、有機官能基と加水分解基とを有するものであれば特に限定されないが、チタネート系カップリング剤およびシランカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤が特に好ましい。
ガラスフレーク(B)の表面をカップリング剤で処理する方法としては、(ア)予め、ガラスフレーク(B)を、たとえばアルコールやトルエンなどのような揮発性の溶媒中にいれることにより、ガラスフレーク(B)の表面にカップリング剤が広がりやすいようにした後、反応性を増すために少量のアルカリ性の溶液を添加してからカップリング剤を適量投入し、次いで溶媒を除去する方法;(イ)直接カップリング剤とガラスフレーク(B)とを接触させた後に、50℃〜200℃で加熱処理する方法;(ウ)混錬時にガラスフレークとカップリング剤とを投入し、排出温度を120〜200℃に制御することにより表面処理を行う方法;などが挙げられるが、上記(ア)の方法が好ましい。上記(ア)の方法を用いることにより、伸び、耐ガソリン透過性、および耐圧縮永久ひずみ性のさらなる向上が可能となる。
【0046】
カップリング剤の具体例としては、たとえば、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトメチルトリメトキシラン、γ−メルカプトメチルトリエトキシラン、γ−メルカプトヘキサメチルジシラザン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプリピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤:p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;ジアリルジメチルシラン等のアリル基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン等のアルコキシ基のみを有するシランカップリング剤;ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有シランカップリング剤;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロ基含有シランカップリング剤;イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等の(シクロ)アルキル基含有シランカップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソポロピレートなどのアルミニウム系カップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデジル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートなどのチタネート系カップリング剤;等が挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。これらのなかでも、本発明の効果がより一層顕著になることから、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基およびエポキシ基含有のシランカップリング剤が好ましく、エポキシ基含有シランカップリング剤が特に好ましい。
【0047】
本発明のニトリル共重合体ゴム組成物中における、ガラスフレーク(B)の含有割合は、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、1〜30重量部であり、好ましくは5〜25重量部、より好ましくは15〜25重量部である。ガラスフレーク(B)の配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐ガソリン透過性が低下したり、耐サワーガソリン性が不十分になったりするおそれがある。一方、配合量が多すぎると、耐ガソリン透過性や伸びが低下するおそれがある。
【0048】
本発明のニトリル共重合体ゴム組成物は、前記ニトリル共重合体ゴム(A)および前記ガラスフレーク(B)に加えて、可塑剤を含有していることが好ましい。可塑剤としては、従来からゴム配合用の可塑剤として使用されているものが使用でき、特に限定されないが、HOY法によるSP値(溶解度パラメータ)が8〜10.2(cal/cm1/2である可塑剤が好ましく用いられる。可塑剤のSP値が大き過ぎると、得られるゴム架橋物の耐寒性が劣る傾向にある。また、小さすぎると得られるゴム架橋物の耐ガソリン透過性が悪化する傾向にある。
【0049】
このような可塑剤の具体例(SP値の単位は「(cal/cm1/2」)としては、たとえば、アジピン酸ジブトキシエチル(SP値:8.8)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)(SP値:9.2)などのアジピン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;アゼライン酸ジブトキシエチル、アゼライン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)などのアゼライン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;セバシン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)などのセバシン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;フタル酸ジブトキシエチル、フタル酸ジ(ブトキシエトキシエチル)などのフタル酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;イソフタル酸ジブトキシエチル、イソフタル酸ジ(ブトキシエトキシエチル)などのイソフタル酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)(SP値:8.5)、アジピン酸ジイソデシル(SP値:8.3)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジブチル(SP値:8.9)などのアジピン酸ジアルキルエステル類;アゼライン酸ジ−(2−エチルヘキシル)(SP値:8.5)、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジ−n−ヘキシルなどのアゼライン酸ジアルキルエステル類;セバシン酸ジ−n−ブチル(SP値:8.7)、セバシン酸ジ−(2−エチルヘキシル)(SP値:8.4)などのセバシン酸ジアルキルエステル類;フタル酸ジブチル(SP値:9.4)、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)(SP値:9.0)、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチル(SP値:9.0)、フタル酸ジイソデシル(SP値:8.5)、フタル酸ジウンデシル(SP値:8.5)、フタル酸ジイソノニル(SP値:8.9)などのフタル酸ジアルキルエステル類;フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸ジシクロアルキルエステル類;フタル酸ジフェニル、フタル酸ブチルベンジル(SP値:10.2)などのフタル酸アリールエステル類;イソフタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、イソフタル酸ジイソオクチルなどのイソフタル酸ジアルキルエステル類;テトラヒドロフタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチル、テトラヒドロフタル酸ジイソデシルなどのテトラヒドロフタル酸ジアルキルエステル類;トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)(SP値:8.9)、トリメリット酸トリ−n−オクチル(SP値:8.9)、トリメリット酸トリイソデシル(SP値:8.4)、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリ−n−ヘキシル、トリメリット酸トリイソノニル(SP値:8.8)、トリメリット酸トリイソデシル(SP値:8.8)などのトリメリット酸誘導体;エポキシ化大豆油(SP値:9.0)、エポキシ化アマニ油(SP値:9.3)などのエポキシ系可塑剤;トリクレジルホスフェート(SP値:9.7)などのリン酸エステル系可塑剤;などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0050】
これらのなかでも、得られるゴム架橋物の耐寒性と耐ガソリン透過性とを良好なものとすることができることから、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびフタル酸などの二塩基酸と、エーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;が好ましく、アジピン酸とエーテル結合含有アルコールとのエステル化合物;がより好ましく、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)が特に好ましい。
【0051】
本発明のニトリル共重合体ゴム組成物における可塑剤の含有量は、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対し、好ましくは0.1〜200重量部であり、より好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは2〜100重量部である。可塑剤の含有量が上記範囲にある場合に、ブリードが防止できることに加えて、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0052】
また、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物は、ガラスフレーク(B)以外の板状の無機充填剤、たとえば、カオリナイトやハロサイトなどのカオリナイト類;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スティブンサイト、マイカなどのスメクタイト類;およびバーミキュライト類;緑泥石類;タルクなどをさらに含有していてもよい。これらのなかでも、スメクタイト類が好ましく、モンモリロナイト、マイカおよびサポナイトが特に好ましい。
【0053】
板状の無機充填剤の配合量は、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対し、好ましくは1〜50重量部であり、より好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部である。
【0054】
本発明のニトリル共重合体ゴム組成物の製造方法としては、特に限定されないが、ニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスを用い、ニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスに、ガラスフレーク(B)、ならびに、必要に応じて添加される可塑剤および板状の無機充填剤を撹拌下で添加し、ラテックス組成物を得て、これを凝固する方法が好ましい。
【0055】
なお、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物を、ニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスを用いて調製する場合には、ガラスフレーク(B)、ならびに、必要に応じて添加される可塑剤および板状の無機充填剤は、予め水中に分散させ、水性分散液として、ニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスに添加することがより好ましい(以下、各成分をラテックス又は分散液の状態で混合することを、「ラテックスブレンド」ということがある)。上記ラテックスブレンドで調整することにより、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0056】
ガラスフレーク(B)の水性分散液の調製方法は特に限定はないが、水媒体を、強く撹拌しながら、ガラスフレーク(B)を添加して調製すればよい。この場合においては、ガラスフレーク(B)に対して、0.1〜10重量%となる量のポリアクリル酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリマレイン酸ナトリウム、β−ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物のNa塩などの分散剤や界面活性剤等を含有する水媒体を使用することが好ましく、アニオン性の分散剤又は界面活性剤を含有するのが特に好ましい。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。ガラスフレーク(B)の水性分散液の固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%である。
【0057】
また、可塑剤を用いる場合における、可塑剤の水性分散液の調製方法は特に限定はないが、可塑剤の0.5〜10重量%となる量の界面活性剤を含有する水媒体を強く撹拌しながら、可塑剤を添加して調製することが好ましい。このような界面活性剤としては、ロジン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどのノニオン界面活性剤;ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン界面活性剤;等が挙げられる。なお、水性分散液中の可塑剤の濃度は、5〜70重量%とすることが好ましい。
【0058】
また、板状の無機充填剤の水性分散液の調製方法も特に限定されないが、たとえば、ガラスフレーク(B)の水性分散液と同様にして調製することができる。
【0059】
本発明のニトリル共重合体ゴム組成物は、さらにアクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂を含有していても良い。アクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂を含有するものとすることにより、ゴム架橋物とした場合に、耐オゾン性がより一層改善されたものとすることができる。アクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂の含有量は、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは15〜125重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。アクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂の含有量が少なすぎると、その添加効果が得難くなる。一方、多すぎると耐寒性が悪化するおそれがある。なお、アクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂を含有させる方法は特に限定されないが、例えば乳化重合により製造したラテックス状態のアクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂を、上記ラテックス組成物に混合(ラテックスブレンド)すれば良い。
【0060】
ラテックス組成物を凝固させ、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物を得る際における凝固方法としては、特に限定されないが、凍結凝固、乾燥凝固、水溶性有機液体による凝固、塩析凝固等の公知の方法が適用される。その中でも、凝固剤を含む水溶液に、ラテックス組成物を添加して塩析させることにより行うことが好ましい。凝固剤としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、凝固剤の使用量は、ニトリル共重合体ゴム(A)に対して、好ましくは0.5〜150重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%である。
【0061】
ここで、ニトリル共重合体ゴム(A)に、カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位を含有させる場合には、ラテックス組成物を塩析する際に、希硫酸水溶液などを添加して、凝固剤水溶液のpHをニトリル共重合体(A)のラテックス組成物の等電点以下に制御することが好ましい。凝固剤水溶液のpHを制御することにより、ニトリル共重合体ゴム(A)に含まれるカチオン性単量体単位およびカチオンを形成可能な単量体単位が有する官能基のゼータ電位が上昇し、これにより、ガラスフレーク(B)の分散性が向上するとともに、凝固によって得られるクラム粒径を大きなものとすることができる。
【0062】
一般に、クラム粒径は、凝固、洗浄工程に続く振動スクリーンやスクイーザーでの脱水度、クラム回収率、さらには乾燥工程での乾燥度に大きな影響を及ぼすものである。たとえば、クラム粒径が小さすぎると、振動スクリーンなどでは、クラム粒径が小さくてスクリーンの目から流出したり、スクイーザーでのポリマーの噛みこみが不充分になって脱水度が低下したりして、生産性が悪化する。そのため、クラムの平均粒径は、0.5〜40mmであることが好ましい。
【0063】
クラムの洗浄、脱水および乾燥方法については、一般的なゴムの製造における洗浄・脱水方法および乾燥方法と同様とすることができる。洗浄・脱水方法としては網目状のフィルター、遠心分離機等を用いて、凝固によって得られたクラムと水とを分離させた後、洗浄し、スクイーザー等でクラムを脱水すればよい。次に一般にゴムの製造に用いられるバンドドライヤー、通気竪型乾燥機、二軸押出機等により、所望の含水率になるまで乾燥させることにより、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物を得ることができる。また、二軸押出機内で、凝固、乾燥を同時に行ってもよい。
【0064】
なお、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物の調製方法としては、上述した方法以外にも、たとえば、ニトリル共重合体ゴム(A)のラテックスに、ガラスフレーク(B)、必要に応じて添加される可塑剤、必要に応じて添加される板状の無機充填剤、ならびに、必要に応じて添加されるアクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂の全成分もしくは1つ以上の成分の全量もしくはその一部を含有させた後に凝固・乾燥し、残余の成分をロールやバンバリーミキサー等の混錬機で混錬して得ることもできる。また、上記方法に従って調製したラテックス組成物を用い、これを凝固、乾燥して得られたゴム組成物に、ガラスフレーク(B)、可塑剤、板状の無機充填剤、ならびに、アクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂をロールやバンバリーミキサー等の混錬機で混錬して得ることもできる。
【0065】
このようにして得られるニトリル共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは5〜300、より好ましくは10〜250である。
【0066】
架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物
本発明の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物は、上記方法で得られたニトリル共重合体ゴム組成物に、架橋剤を加えてなる。
架橋剤は、ニトリル基含有共重合体ゴムの架橋剤として通常使用されるものであればよく、特に限定されない。代表的な架橋剤としては、ニトリル共重合体ゴム(A)の不飽和結合間を架橋する硫黄系架橋剤または有機過酸化物架橋剤が挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。これらのなかでも、硫黄系架橋剤が好ましい。
【0067】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼノピン−2)、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0068】
有機過酸化物架橋剤としては、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−n−ブチルバレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0069】
本発明の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物中における、架橋剤の含有量は特に限定されないが、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜5重量部である。
【0070】
有機過酸化物架橋剤を用いる場合には、架橋助剤として、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレン、イソシアヌル酸トリアリルなどの多官能性単量体などを併用することができる。これらの架橋助剤の使用量は特に限定されないが、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部の範囲である。
【0071】
硫黄系架橋剤を用いる場合には、亜鉛華、ステアリン酸などの架橋助剤;グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系などの架橋促進剤;を併用することができる。これらの架橋助剤および架橋促進剤の使用量も特に限定されないが、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。
【0072】
また、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物または架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物には、その他必要に応じて一般的なゴムに使用される配合剤、例えば、架橋遅延剤、老化防止剤、ガラスフレーク(B)以外の充填剤、補強剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、加工助剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を配合してもよい。
【0073】
老化防止剤としては、フェノール系、アミン系、ベンズイミダゾール系、リン酸系などの老化防止剤を使用することができる。フェノール系では、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が、アミン系では、4,4’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等が、ベンズイミダゾール系では2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上併せて使用される。
【0074】
ガラスフレーク(B)以外の充填剤としては、たとえば、カーボンブラックや、シリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、短繊維、(メタ)アクリル酸亜鉛や(メタ)アクリル酸マグネシウムなどのα,β−エチレン系不飽和カルボン酸金属塩などが挙げられる。
【0075】
また、本発明のニトリル共重合体ゴム組成物および架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ニトリル共重合体ゴム(A)以外のゴムを含有していてもよい。ニトリル共重合体ゴム(A)以外のゴムとしては、特に限定されないが、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体ゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、天然ゴムおよびポリイソプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。なお、ニトリル共重合体ゴム(A)以外のゴムを配合する場合における配合量は、ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。
【0076】
本発明の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(以下、「コンパウンド・ムーニー粘度」と記すことがある。)(ML1+4、100℃)は、好ましくは5〜300、より好ましくは10〜250である。
【0077】
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上記架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を架橋してなる。
本発明の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を架橋する際には、製造する成形品(ゴム架橋物)の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、次いで架橋反応させることにより架橋物の形状を固定化する。架橋を行う際には、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
【0078】
また、ゴム架橋物は、その形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0079】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、耐ガソリン透過性、耐サワーガソリン性および耐圧縮永久ひずみ性に優れるものである。そのため、本発明のゴム架橋物からなる層(I)を少なくとも1つの層とする一層または二層以上からなるホースとすることにより燃料用ホースなどとして好適に用いられる。なお二層以上の積層体の場合においては、本発明のゴム架橋物からなる層(I)を内層、中間層、外層のいずれに用いてもよい。積層体の層(I)以外を構成する層(II)としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位含有量が好ましくは5〜55重量%、より好ましくは18〜45重量%であるニトリル共重合体ゴム(L)、ニトリル共重合体ゴム(L)とアクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂とを含有するものや、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、ブチルゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0080】
また、必要に応じて、層(I)と層(II)を接着させるために、層(I)、層(II)のいずれか/または両方にホスニウム塩などを含有させてもよく、層(I)、層(II)の間に、新たな層(III)を接着層として用いてもよい。層(III)としては、上述した層(II)を構成する樹脂又はゴム組成物と同様の樹脂又はゴム組成物を用いることができる。層(III)としては、上述した層(II)を構成する樹脂又はゴム組成物を一種単独でまたは複数種併せて用いることができ、ホスニウム塩などを含有させてもよい。
【0081】
ここで、層(I)の厚みは、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmである。また、二層以上の積層体の場合においては、層(I)以外の層の厚みは、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmである。
【0082】
なお、上述のような構成を有する、本発明のゴム架橋物を含むホースを製造する方法としては、特に限定されないが、押出機などを用いて筒状に成形し、それを架橋することにより本発明のホースとなる、本発明の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物は、マンドレルクラックが発生しにくいという性質を有しているため、マンドレルを用いて製造することができる。
すなわち、ホースを、本発明の架橋物のみからなる単層のものとする場合には、まず、本発明の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を筒状に成形し、得られた筒状の成形体にマンドレルを挿入することにより形状を固定し、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を架橋させることにより製造することができる。
あるいは、ホースを、本発明の架橋物を含む多層のものとする場合には、本発明の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物と、本発明の架橋物からなる層以外の層を形成することとなる樹脂又はゴム組成物と、を積層させながら筒状に成形し、得られた筒状の積層成形体にマンドレルを挿入することにより形状を固定し、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を架橋させることにより製造することができる。
【0083】
また、本発明のゴム架橋物は、上記の他、パッキン、ガスケット、O−リング、オイルシール等のシール部材;オイルホース、インレットホース、ガスホース、ブレーキホース、冷媒ホース等のホース類;に好適である。上記ガスホースのガスとしては、空気、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ジメチルエーテル、LPG等が挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0085】
ムーニー粘度
ニトリル共重合体ゴムおよび架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度、コンパウンド・ムーニー粘度)(ML1+4、100℃)は、JIS K6300に準拠して測定した。
【0086】
引張強さ、伸び、100%引張応力
架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、加圧しながら160℃で20分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。得られたシート状のゴム架橋物を用いてJIS K6251に従い、ダンベル状3号形で打ち抜いた試験片を用いてゴム架橋物の引張強さ、伸びおよび100%引張応力を、それぞれ測定した。
【0087】
硬さ
架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、加圧しながら160℃で30分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。得られたシート状のゴム架橋物を用いてJIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機タイプAを用いて、ゴム架橋物の硬さを、JIS K6251に従い、測定した。
【0088】
圧縮永久ひずみ率
架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を、金型を用いて、加圧しながら160℃で30分間プレス成形して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱状の架橋物を得た。そして、得られた円柱状の架橋物を用いて、円柱状の架橋物を挟んだ二つの平面間の距離をディスク厚み方向に25%圧縮した状態で120℃にて70時間保持する条件でJIS K6262に従い、圧縮永久ひずみを測定した。
【0089】
ガソリン透過係数
上記引張強さ、伸び、および100%引張応力の評価に用いたシート状のゴム架橋物と同様のものを準備し、燃料油として「イソオクタンとトルエンとエタノールを重量比2:2:1で混合したもの」を使用して、アルミカップ法によりガソリン透過係数を測定した。具体的には、100ml容量のアルミニウム製のカップに、上記燃料油を50ml入れ、その上にシート状のゴム架橋物をのせ、これで蓋をして、締め具で、シート状のゴム架橋物によりアルミカップ内外を隔てる面積が25.50cmになるように調整し、該アルミカップを23℃の恒温槽内にて、放置し、24時間毎に重量測定することにより24時間毎の油の透過量を測定し、その最大量を透過量とするものである(単位:g・mm/m・day)。
なお、ガソリン透過係数は低い程好ましく、比較例1を100として指数化した。
【0090】
耐サワーガソリン試験
上記引張強さ、伸び、および100%引張応力の評価に用いたシート状のゴム架橋物と同様のものを準備し、燃料油としての「イソオクタンとトルエンとエタノールを重量比2:2:1で混合したもの」にジラウロイルペルオキシドを3重量%の濃度で溶解させた試験油中に、温度40℃、500時間(試験油は168時間当たり2回の割合で新規のものと交換した。)の条件にて、シート状のゴム架橋物を浸漬させた。そして、500時間経過後のサンプルについて、JIS K6253に準拠して、引張試験を行い、引張試験による伸長時にクラックの発生の有無を観察し、耐サワーガソリン性を評価した。
【0091】
製造例1(ニトリル共重合体ゴム(A1)のラテックスの製造)
反応容器に、水240部、アクリロニトリル77部、2−ビニルピリジン3.4部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(乳化剤)2.5部を仕込み、温度を5℃に調節した。次いで、気相を減圧して十分に脱気してから、1,3−ブタジエン19部、重合開始剤であるパラメンタンヒドロペルオキシド0.05部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄(7水塩)0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.05部、ならびに連鎖移動剤のt−ドデシルメルカプタン0.6部を添加して乳化重合の1段目の反応を開始した。反応開始後、仕込み単量体に対する重合転化率が、26重量%、52重量%、72重量%にそれぞれ達した時点で、反応容器に1,3−ブタジエン16部、1,3−ブタジエン15部およびt−ドデシルメルカプタン0.2部、1,3−ブタジエン14部を、それぞれ追加添加して2,3段目および4段目の重合反応を行った。その後、仕込み全単量体に対する重合転化率が86重量%に達した時点でヒドロキシルアミン硫酸塩0.3部と水酸化カリウム0.2部を添加して重合反応を停止させた。反応停止後、反応容器の内容物を70℃に加温し、減圧下に水蒸気蒸留により未反応の単量体を回収してニトリル共重合体ゴム(A1)のラテックス(固形分36重量%、粒径約100nm)を得た。
【0092】
上記ニトリル共重合体ゴム(A1)のラテックスの一部をサンプリングし、凝固・水洗・乾燥させ、得られたニトリル共重合体ゴム(A1)の単量体を構成する各単量体の含有割合を、日本電子株式会社製FT−NMR装置(JNM−EX400WB)を用いて測定したところ、アクリロニトリル単量体単位48.5重量%、1,3−ブタジエン単量体単位49.2重量%、2−ビニルピリジン単量体単位2.3重量%であった。また、ニトリル共重合体ゴム(A1)のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)は50であった。
【0093】
製造例2(ニトリル共重合体ゴム(A2)のラテックスの製造)
製造例1において、乳化重合1段目の反応の仕込み単量体の使用量を、アクリロニトリル83部、2−ビニルピリジン2.9部および1,3−ブタジエン14.7部に変更し、反応開始後、仕込み単量体に対する重合転化率が36重量%、58重量%、74重量%にそれぞれ達した時点で、反応容器に、1,3−ブタジエン14部、1,3−ブタジエン13部およびt−ドデシルメルカプタン0.2部、1,3−ブタジエン12部を、それぞれ追加添加して、2,3段目および4段目の重合反応を行った以外は、製造例1と同様にして、ニトリル共重合体ゴム(A2)のラテックス(固形分:36重量%)を得た。
【0094】
得られたニトリル共重合体ゴム(A2)を構成する各単量体単位の含有割合を、製造例1と同様にして測定したところ、アクリロニトリル単量体単位54.3重量%、2−ビニルピリジン2.3重量%、1,3−ブタジエン単位43.4重量%であった。また、ニトリル共重合体ゴム(A2)のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)は60であった。
【0095】
製造例3(ニトリル共重合体ゴム(A3)のラテックスの製造)
製造例1において、乳化重合1段目の反応の仕込み単量体の使用量を、アクリロニトリル80部、2−ビニルピリジン3.1部および1,3−ブタジエン16.9部に変更し、反応開始後、仕込み単量体に対する重合転化率が31重量%、56重量%、73重量%にそれぞれ達した時点で、反応容器に、1,3−ブタジエン15部、1,3−ブタジエン14部およびt−ドデシルメルカプタン0.2部、1,3−ブタジエン13部を、それぞれ追加添加して、2,3段目および4段目の重合反応を行った以外は、製造例1と同様にして、ニトリル共重合体ゴム(A3)のラテックス(固形分:36重量%)を得た。
【0096】
得られたニトリル共重合体ゴム(A3)を構成する各単量体単位の含有割合を、製造例1と同様にして測定したところ、アクリロニトリル単量体単位50.1重量%、2−ビニルピリジン2.4重量%、1,3−ブタジエン単位47.5重量%であった。また、ニトリル共重合体ゴム(A3)のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)は48であった。
【0097】
製造例4(ニトリル共重合体ゴム(A4)のラテックスの製造)
乳化重合1段目の反応の仕込み単量体の使用量を、アクリロニトリル83部および1,3−ブタジエン15部に変更し、反応開始後、仕込み単量体に対する重合転化率が40重量%、60重量%にそれぞれ達した時点で、反応容器に、1,3−ブタジエン14部、1,3−ブタジエン25部およびt−ドデシルメルカプタン0.2部を、それぞれ追加添加して、2段目および3段目の重合反応を行った以外は、製造例1と同様にして、ニトリル共重合体ゴム(A4)のラテックス(固形分:36重量%)を得た。
【0098】
得られたニトリル共重合体ゴム(A4)を構成する各単量体単位の含有割合を、製造例1と同様にして測定したところ、アクリロニトリル単量体単位48.5重量%、1,3−ブタジエン単位51.5重量%であった。また、ニトリル共重合体ゴム(A4)のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)は52であった。
【0099】
実施例1
板状フィラーの表面処理
まず、エタノール50部に、1NのKOH水溶液を1部添加した溶液を準備し、この溶液中にガラスフレーク(商品名:REF−015、日本板硝子製、主面の平均面積225μm、厚み5μm)100部を入れ、かき混ぜながら全体に溶液がわたるようにした。さらにシランカップリング剤(γーグリシドキシプロピルトリエトキシシラン)20部を入れ、全体に行きわたるように攪拌した。次いで、1日自然乾燥させ、130℃の真空乾燥機に入れて30分間熱処理を行い、温度が室温になるまで徐々に冷却することにより、表面処理ガラスフレーク(B1)を得た。表面処理ガラスフレークの加熱減量を、TGA(熱重量測定装置)で測定したところ7%であった。
【0100】
ニトリル共重合体ゴム組成物の調製
上記にて調製した表面処理ガラスフレーク(B1)100部を、蒸留水と、ポリアクリル酸ナトリウム5部の混合物に添加して強攪拌し、固形分濃度5%の表面処理ガラスフレーク(B1)の水性分散液を得た。
【0101】
また、可塑剤としてのアジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)(商品名「アデカサイザーRS−107」、旭電化工業社製)と乳化剤としてのオレイン酸カリウムを該可塑剤の2重量%使用し、蒸留水中で強撹拌することにより、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)の50重量%水性エマルジョンを調製した。
【0102】
そして、製造例1にて得られたニトリル共重合体ゴム(A1)のラテックスを容器内で撹拌しつつ、上記にて調製した表面処理ガラスフレーク(B1)の水性分散液を添加して分散させた。なお、表面処理ガラスフレーク(B1)の水性分散液は、ニトリル共重合体ゴム(A1)のラテックスの固形分(ニトリル共重合体ゴム量)100部に対して、表面処理ガラスフレーク(B1)20部となるように添加し、固形分(ニトリル共重合体ゴムとガラスフレーク)濃度15%とした。
【0103】
次いで、ニトリル共重合体ゴム(A1)に表面処理ガラスフレーク(B1)を分散させた溶液に、ニトリル共重合体ゴム(A1)100部に対して、上記にて調製したアジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)を含有する水性エマルジョン20部(可塑剤量は10部)を加えて混合・分散して、ニトリル共重合体ラテックス組成物を得た。そして、得られたニトリル共重合体ラテックス組成物を、そのラテックス組成物中のニトリル共重合体ゴム(A1)の量に対して4重量%となる量の塩化カルシウム(凝固剤)を含有する水溶液中に、凝固中の水溶液のpHが上記等電点以下のpH2となるよう10%希硫酸を適時添加してpHを調整しながら、撹拌下で注ぎ入れて凝固させ、ニトリル共重合体ゴム(A1)、表面処理ガラスフレーク(B1)および可塑剤の混合物からなるクラムを生成させた。
そして、得られたクラムを濾別、水洗した後、60℃で減圧乾燥してニトリル共重合体ゴム組成物を得た。
【0104】
架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物の調製
次いで、バンバリーミキサを用いて、ニトリル共重合体ゴム組成物中のニトリル共重合体ゴム(A1)100部に対して、FEFカーボンブラック(シーストSO、東海カーボン社製)20部、架橋助剤としての亜鉛華5部およびステアリン酸1部、老化防止剤としての2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(ノクラック224、大内新興化学工業社製)2部、および同じく老化防止剤としてのN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(ノクラック810NA、大内新興化学工業社製)2部を添加して50℃にて混合した。次いで、およそ160℃に達した時点で取り出し、この混合物をロールに移して架橋剤である325メッシュ硫黄0.5部およびテトラメチルチウラムジスルフィド(ノクセラーTT、大内新興化学工業社製)1.5部、およびN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)1.5部を添加して50℃で混練し、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製した。
【0105】
得られた架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンド・ムーニー粘度)、ならびに、該組成物を架橋して得られたゴム架橋物について、引張強さ、伸び、100%引張応力、硬さ、圧縮永久ひずみ率、ガソリン透過係数、および耐サワーガソリン性の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
実施例2
表面処理ガラスフレーク(B1)の配合量を20部から10部に変更した以外は実施例1と同様に実施して、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
実施例3
実施例1で用いたガラスフレークの代わりに、ガラスフレーク(商品名:REF−160、日本板硝子製、主面の平均面積25,600μm、厚み5μm)を用い、実施例1と同様にして、シランカップリング剤(γーグリシドキシプロピルトリエトキシシラン)で表面処理し、表面処理ガラスフレーク(B2)を得た。表面処理ガラスフレーク(B2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
実施例4
実施例1で用いたガラスフレークの代わりに、ガラスフレーク(商品名:REF−600、日本板硝子製、主面の平均面積360,000μm、厚み5μm)を用い、実施例1と同様にして、シランカップリング剤(γーグリシドキシプロピルトリエトキシシラン)で表面処理し、表面処理ガラスフレーク(B3)を得た。表面処理ガラスフレーク(B3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
実施例5
架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製する際に、ニトリル共重合体ゴム(A1)70部に対して、塩化ビニル樹脂のラテックス(塩化ビニル樹脂の量は30部、塩化ビニルモノマーの単独重合体で、平均重合度は900)をさらに添加し、可塑剤の配合量を10部から30部に変更した以外は、実施例3と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
実施例6
架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製する際に、ニトリル共重合体ゴム(A1)70部に対して、アクリル樹脂のラテックス(アクリル樹脂の量は30部、数平均分子量は600,000、メタクリル酸メチルとアクリロニトリルを80:20の重量比で共重合したもの)をさらに添加し、可塑剤の配合量を10部から30部に変更した以外は、実施例3と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
実施例7〜9
ニトリル共重合体ゴム(A1)のラテックスの代わりに、それぞれ、製造例2で得られたニトリル共重合体ゴム(A2)のラテックス(実施例7)、製造例3で得られたニトリル共重合体ゴム(A3)のラテックス(実施例8)、および製造例4で得られたニトリル共重合体ゴム(A4)のラテックス(実施例9)を使用した以外は、実施例3と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
実施例10
表面処理ガラスフレーク(B2)20部の代わりに、表面処理していないガラスフレーク(商品名:REF−160、日本板硝子製、主面の平均面積25,600μm、厚み5μm)20部を用い、γ―グリシドキシプロピルトリエトシキシラン1.4部を、バンバリーミキサーの混練時に添加した以外は、実施例9と同様にして、各組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
実施例11
γ―グリシドキシプロピルトリエトシキシランを使用しなかった以外は、実施例10と同様にしてゴム組成物を調整した。結果を表1に示す。
【0114】
比較例1
表面処理ガラスフレーク(B1)を添加せず、FEFカーボンブラック20部に加えて、さらにMTカーボンブラック15部を用いた以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
比較例2
表面処理ガラスフレーク(B2)20部の代わりに、表面処理していないガラスフレーク(商品名:REF−160、日本板硝子製、主面の平均面積25,600μm、厚み5μm)50部を用いた以外は、実施例3と同様にして架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調整した。結果を表1に示す。
【0116】
比較例3
ラテックスブレンドは行わず、バンバリーミキサーを用いて、ニトリル共重合体ゴム(A5)(N220S、ジェイエスアール社製、アクリルニトリル単位含有量40.1%、ムーニー粘度52)100部に対して、表面処理していないガラスフレーク(商品名:REF−160、日本板硝子製、主面の平均面積25,600μm、厚み5μm)20部、γ―グリシドキシプロピルトリエトシキシラン1.4部、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)10部、FEFカーボンブラック(シーストSO、東海カーボン社製)20部、架橋助剤としての亜鉛華5部およびステアリン酸1部、老化防止剤としての2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(ノクラック224、大内新興化学工業社製)2部、および同じく老化防止剤としてのN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(ノクラック810NA、大内新興化学工業社製)2部を添加して50℃にて混合した。次いで、およそ160℃に達した時点で取り出し、この混合物をロールに移して架橋剤である325メッシュ硫黄0.5部およびテトラメチルチウラムジスルフィド(ノクセラーTT、大内新興化学工業社製)1.5部、およびN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)1.5部を添加して50℃で混練し、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製した。
【0117】
得られた架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンド・ムーニー粘度)、ならびに、該組成物を架橋して得られたゴム架橋物について、引張強さ、伸び、100%引張応力、硬さ、圧縮永久ひずみ率、ガソリン透過係数、および耐サワーガソリン性の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
比較例4
表面処理ガラスフレーク(B2)の代わりに、カオリン(主面の平均面積0.64μm、ハイドライトPX、竹原化学工業社製)を使用し、γ―グリシドキシプロピルトリエトシキシランを、バンバリーミキサーの混練時に添加した以外は、実施例9と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
比較例5
表面処理ガラスフレーク(B2)の代わりに、マイカ(B−82、株式会社山口雲母工業所社製、平均面積約32,400μm)を用いるとともに、γ―グリシドキシプロピルトリエトシキシランを使用しなかった以外は、実施例9と同様にして、架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を調製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
表1中、充填剤の種類における「GF」はガラスフレークを、「CB」はMTカーボンブラックを示す。また、シランカップリング剤の配合方法における「予め処理」は、シランカップリング剤を用いて、予め充填剤(ガラスフレーク)を表面処理したことを意味し、「後添加」は、シランカップリング剤で予め表面処理をせずに、シランカップリング剤をバンバリーミキサーでの混合時に配合したことを意味する。
【0122】
表1より、ニトリル共重合体ゴム組成物に、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレークを特定量含有させ、これを架橋して得られるゴム架橋物は、ガソリン透過係数(指数)が小さく、耐サワーガソリン性および耐圧縮永久ひずみ性に優れる結果となった(実施例1〜11)。
ガラスフレークを使用しないために本発明の要件を満たさないと、耐ガソリン透過性、耐サワーガソリン性および耐圧縮永久ひずみ性が不十分となる(比較例1)。
ガラスフレークの配合量が多すぎるために本発明の要件を満たさないと、強度が大幅に低下し、圧縮永久ひずみ率も悪化する結果となった(比較例2)。また、比較例2においては、ガソリン透過係数の測定中に、内容物が全て外に漏れ出したため、ガソリン透過係数は途中で測定不能になった。この理由はゴムが膨潤したときにガラスフレークがゴムに亀裂を発生させたものと推定される。
【0123】
また、ニトリル共重合ゴム中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎるために本発明の要件を満たさない場合には、耐ガソリン透過性および耐サワーガソリン性に劣る(比較例3)。
ガラスフレークを使用しないために本発明の要件を満たさないと、カオリンを配合しても耐ガソリン透過性および耐サワーガソリン性に劣る(比較例4)。
また、ガラスフレークを使用しないために本発明の要件を満たさないと、マイカを配合しても、耐圧縮永久ひずみ性や、耐ガソリン透過性に劣る(比較例5)。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明で用いるガラスフレーク(B)の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位43〜60重量%を有するニトリル共重合体ゴム(A)と、主面の平均面積が1μm以上であるガラスフレーク(B)と、を含有し、
前記ガラスフレーク(B)の含有割合が、前記ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、1〜30重量部であるニトリル共重合体ゴム組成物。
【請求項2】
前記ガラスフレーク(B)が、カップリング剤で表面処理されたものである請求項1に記載のニトリル共重合体ゴム組成物。
【請求項3】
前記ニトリル共重合体ゴム(A)が、カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位をさらに有し、前記ニトリル共重合体ゴム(A)中における、前記カチオン性単量体単位および/またはカチオンを形成可能な単量体単位の含有割合が、0.1〜20重量%である請求項1または2に記載のニトリル共重合体ゴム組成物。
【請求項4】
可塑剤をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載のニトリル共重合体ゴム組成物。
【請求項5】
前記ニトリル共重合体ゴム(A)100重量部に対して、10〜150重量部の塩化ビニル系樹脂および/またはアクリル系樹脂をさらに含有する請求項1〜4のいずれかに記載のニトリル共重合体ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のニトリル共重合体ゴム組成物に架橋剤を加えてなる架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の架橋性ニトリル共重合体ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−155883(P2010−155883A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333912(P2008−333912)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】