説明

ネガ型感光性絶縁樹脂組成物及びその硬化物

【課題】絶縁膜を形成する際の基板の反りが抑えられ、且つ優れた解像性、電気絶縁性等を有するネガ型感光性絶縁樹脂組成物、及びこれが硬化されてなる硬化物を提供する。
【解決手段】(A)ヒドロキシスチレン系構造単位(a1)と、アルキルビニルエーテル系構造単位(a2)とを有するブロック共重合体、(B)分子中に2個以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物(b1)、オキシラン環含有化合物(b2)及びオキセタニル環含有化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種の化合物、(C)光感応性酸発生剤、(D)溶剤、を含有するネガ型感光性絶縁樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の表面保護膜(パッシベーション膜、オーバーコート膜)、層間絶縁膜、平坦化膜、感光性接着剤、感圧接着剤等に用いられるネガ型感光性絶縁樹脂組成物及びそれが硬化されてなる絶縁性の硬化物に関する。更に詳しくは、特定のブロック共重合体が含有されているため、絶縁膜を形成する際の基板の反りを抑えることができ、且つ永久膜レジストとして、解像性に優れるとともに、残膜率が高く、良好な電気絶縁性及び熱衝撃性等を有する絶縁膜等の硬化物を形成することができるネガ型感光性絶縁樹脂組成物、及びそれが硬化されてなる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の半導体素子に用いられる表面保護膜、層間絶縁膜等として、優れた耐熱性及び機械的特性等を有するポリイミド系樹脂が広く使用されている。また、半導体素子の高集積化にともない、膜形成精度の向上を図るため、感光性を付与した感光性ポリイミド系樹脂が種々提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、それぞれ、ポリイミド前駆体にイオン結合により光架橋基を導入した感光性ポリイミド系樹脂を含有する組成物、及びポリイミド前駆体にエステル結合により光架橋基を導入した感光性ポリイミド系樹脂を含有する組成物が記載されている。更に、特許文献3には、芳香族ポリイミド前駆体に多官能アクリル化合物を添加したネガ型の感光性組成物が記載されている。また、ポリイミド系樹脂を含有する組成物ではない他の樹脂組成物として、特許文献4には、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、架橋剤及び光感応性酸発生剤等を含有する感光性絶縁樹脂組成物が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭54−145794号公報
【特許文献2】特開平03−186847号公報
【特許文献3】特開平08−50354号公報
【特許文献4】特開2003−215802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2に記載された組成物では、イミド化するための閉環工程が必要であり、溶剤現像であるため、解像性が十分ではないという欠点がある。また、特許文献3に記載された組成物でも、前記と同様の問題点が指摘されている。更に、特許文献4に記載された組成物を用いて形成される絶縁膜では、絶縁膜を形成する際に生じる基板の反りが問題になっている。
【0005】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するものであり、より具体的には、絶縁膜等を形成するネガ型感光性絶縁樹脂組成物であって、絶縁膜を形成する際の基板の反りが抑えられ、且つ優れた解像性、電気絶縁性等を有するネガ型感光性絶縁樹脂組成物、及びこの組成物が硬化されてなる絶縁膜等の硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.(A)下記式(1)で表される構造単位(a1)と、下記式(2)で表される構造単位(a2)とを有するブロック共重合体、
(B)分子中に2個以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物(b1)、オキシラン環含有化合物(b2)及びオキセタニル環含有化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(C)光感応性酸発生剤、
(D)溶剤、を含有することを特徴とするネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【化1】

[式(1)のRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、式(2)のRは炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
2.前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)との合計を100モル%とした場合に、該構造単位(a1)の含有割合が40〜60モル%である前記1.に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
3.前記ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が、10,000〜30,000である前記1.又は2.に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
4.前記光感応性酸発生剤(C)がヒドロキシル基含有オニウム塩である前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
5.更に密着助剤(E)を含有する前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
6.更に架橋微粒子(F)を含有する前記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
7.前記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物は、特定のブロック共重合体が含有されているため、絶縁膜を形成する際の基板の反りが十分に抑えられ、且つ優れた解像性、電気絶縁性等を有する絶縁膜等の硬化物を形成することができる。
また、構造単位(a1)と構造単位(a2)との合計を100モル%とした場合に、構造単位(a1)の含有割合が40〜60モル%である場合は、優れたアルカリ現像性が得られると共に、得られる絶縁膜の応力を十分に低減することができる。
更に、ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が、10,000〜30,000である場合は、絶縁膜の解像性、熱衝撃性、耐熱性及び残膜率等をより向上させることができる。
また、光感応性酸発生剤(C)がヒドロキシル基含有オニウム塩である場合は、化合物(B)と、ブロック共重合体(A)又はフェノール性低分子化合物との反応が促進され、ネガ型のパターンを容易に形成することができる。
更に、密着助剤(E)を含有する場合は、基材と絶縁膜等の硬化物との密着性をより向上させることができる。
また、架橋微粒子(F)を含有する場合は、硬化物の耐久性及び熱衝撃性等をより向上させることができる。
本発明の硬化物は、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなり、優れた解像性、電気絶縁性等を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
【0009】
[1]ネガ型感光性絶縁樹脂組成物
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ということもある。)は、(A)前記式(1)により表される構造単位(a1)と、前記式(2)により表される構造単位(a2)とを有するブロック共重合体、(B)分子中に少なくとも2個以上のアルキルエーテル化されたアミノ基含有化合物(b1)、オキシラン環含有化合物(b2)及びオキセタニル環含有化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種の化合物、(C)光感応性酸発生剤、並びに(D)溶剤、を含有する。
【0010】
(A)ブロック共重合体
本発明における「ブロック共重合体(A)」は、アルカリ可溶性樹脂であり、前記式(1)で表される構造単位(a1)と、前記式(2)で表される構造単位(a2)とを有する。構造単位(a1)は、ヒドロキシスチレン単位又はヒドロキシスチレンアルキル誘導体単位(但し、アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、プロピル基及びブチル基である場合、直鎖状でもよく、分岐していてもよい。)であり、構造単位(a2)は、アルキルビニルエーテル単位(但し、アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、プロピル基及びブチル基である場合、直鎖状でもよく、分岐していてもよい。)である。
【0011】
ブロック共重合体(A)は、ABA型、即ち、構造単位(a1)からなるブロック及び構造単位(a2)からなるブロックのうちのいずれか一方のブロックの両末端に、他方のブロックが結合されたブロック共重合体でもよく、AB型、即ち、構造単位(a1)からなるブロック及び構造単位(a2)からなるブロックのうちのいずれか一方のブロックの片末端に、他方のブロックが結合されたブロック共重合体でもよい。これらのうちでは、より解像度に優れるため、ABA型ブロック共重合体が好ましい。尚、ブロック共重合体(A)は、通常、構造単位(a2)からなるブロックの両末端に、構造単位(a1)からなるブロックが結合したABA型ブロック共重合体である。
【0012】
構造単位(a1)の形成に用いる単量体としては、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等が挙げられる。
また、構造単位(a2)の形成に用いる単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、iso−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0013】
ブロック共重合体(A)を構成する構造単位(a1)と構造単位(a2)との含有割合は特に限定されないが、構造単位(a1)と構造単位(a2)との合計を100モル%とした場合に、構造単位(a1)が40〜60モル%であることが好ましく、45〜55モル%であることがより好ましい。また、構造単位(a2)も40〜60モル%であることが好ましく、45〜55モル%であることがより好ましい。
【0014】
更に、ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量は特に限定されないが、絶縁膜の解像性、熱衝撃性、耐熱性及び残膜率等の観点から、10,000以上であることが好ましく、10,000〜30,000であることがより好ましい。
【0015】
更に、ネガ型感光性絶縁樹脂組成物に含有されるブロック共重合体(A)の含有割合は特に限定されないが、溶剤(D)を除く他の成分の合計量を100質量%とした場合に、30〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましい。このブロック共重合体(A)の含有割合が30〜90質量%であれば、ネガ型感光性絶縁樹脂組成物を用いて形成された絶縁膜がアルカリ水溶液による十分な現像性を有しているため好ましい。
【0016】
また、樹脂組成物にはフェノール性低分子化合物が配合されていてもよい。このフェノール性低分子化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらのフェノール性低分子化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
フェノール性低分子化合物の配合量は、ブロック共重合体(A)を100質量部とした場合に、40質量部以下であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。
【0018】
ブロック共重合体(A)は、リビングカチオン重合法及びリビングラジカル重合法のいずれかにより製造することができる。
リビングカチオン重合法では、適宜の重合溶媒中で、例えば、4−ヒドロキシスチレンをカチオン重合触媒の存在下にカチオン重合させることにより、4−ヒドロキシスチレンのカチオン性リビングポリマーを形成し、このカチオン性リビングポリマーにエチルビニルエーテルを添加して共重合させることにより、ブロック共重合体を製造することができる。
【0019】
重合溶媒としては、メチレンクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、及びアセトニトリル、ニトロベンゼン等の高極性溶媒などを用いることができる。また、カチオン重合触媒としては、HI−ZnI2・、I2・、I2・−HI等を用いることができ、その他に、メタルハライド・エーテル錯体等のルイス酸と塩基とを組み合わせてなる触媒を用いることもできる。これらのカチオン重合触媒の使用量は、先に重合される4−ヒドロキシスチレン等1モルに対して0.01〜0.00001モルとすることができる。反応温度は、例えば、−150〜50℃とすることができる。
【0020】
リビングラジカル重合法では、適宜の重合溶媒中で、例えば、エチルビニルエーテルをラジカル重合触媒の存在下にラジカル重合させることにより、エチルビニルエーテルのラジカル性リビングポリマーを形成し、このラジカル性リビングポリマーに4−ヒドロキシスチレンを添加して共重合させることにより、ブロック共重合体を製造することができる。
【0021】
重合溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル等のエステル系溶媒、シクロヘキシルベンゾフェノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒などを用いることができる。また、ラジカル重合触媒としては、過酸化物と、4−メチルスルホニルオキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシド、2,2’,5,5’−テトラメチルピロリデインオキシド、4−オキソ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシド等のN−オキシラジカルとを組み合せてなる系、及びスルフィド系などの触媒を用いることができる。これらのラジカル重合触媒の使用量は、単量体1モルに対して0.01〜0.00001モルとすることができる。反応温度は、末端が保護されたリビンググループが解裂されるのに必要なエネルギーによって決定され、例えば、60〜200℃とすることができる。
【0022】
(B)架橋剤として作用する特定の化合物
分子中に2個以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物(以下、「アミノ基含有化合物」という。)(b1)、オキシラン環含有化合物(b2)及びオキセタニル環含有化合物(b3)は、架橋剤として作用し、この化合物(B)としては、(b1)、(b2)及び(b3)から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。
【0023】
アミノ基含有化合物(b1)は特に限定されないが、例えば、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CHOH基)の全部又は一部(少なくとも2個)がアルキルエーテル化された化合物が挙げられる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、これらは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果、オリゴマー成分が形成されていてもよい。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。
【0024】
オキシラン環含有化合物(b2)としては、分子内にオキシラン環が含有されていればよく、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、オキセタニル環含有化合物(b3)としては、分子内にオキセタニル環が含有されていればよく、特に限定されないが、例えば、下記一般式(b3−1)で表される化合物、下記一般式(b3−2)で表される化合物、及び下記一般式(b3−3)で表される化合物等を挙げることができる。
【0025】
【化2】

【0026】
前記一般式(b3−1)〜(b3−3)の各々において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基であり、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、キシリル基等のアリール基;下記式(i)で表されるジメチルシロキサン残基;メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;フェニレン基;又は下記式(ii)〜(vi)で表される基を示し、iはRの価数に等しく、1〜4の整数である。
【0027】
【化3】

【0028】
前記式(i)及び(ii)におけるx及びyは、それぞれ独立に、0〜50の整数である。
また、前記式(iii)におけるZは、単結合、又は、−CH−、−C(CH−、−C(CF−若しくは−SO−で表される2価の基である。
【0029】
前記一般式(b3−1)〜(b3−3)で表わされる化合物の具体例としては、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン(商品名「OXT−121」、東亜合成社製)、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名「OXT−221」、東亜合成社製)、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕エーテル、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕プロパン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕スルホン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕ケトン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕ヘキサフロロプロパン、トリ〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、テトラ〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、及び下記の化学式(b3−4)〜(b3−8)で表される化合物等を挙げることができる。
【0030】
【化4】

【0031】
また、これらの化合物以外に、高分子量の多価オキセタン環を有する化合物を用いることができる。具体的には、例えば、オキセタンオリゴマー(商品名「Oligo−OXT」、東亞合成社製)、及び下記の化学式(b3−9)〜(b3−11)で表される化合物等を挙げることができる。
【0032】
【化5】

【0033】
前記式(b3−9)〜(b3−11)におけるp、q及びsは、それぞれ独立に、0〜10000の整数である。
【0034】
これらのオキセタニル環含有化合物(b3)のなかでも、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン(商品名「OXT−121」、東亜合成社製)、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名「OXT−221」、東亜合成社製)が好ましい。
【0035】
化合物(B)としては、アミノ基含有化合物(b1)、オキシラン環含有化合物(b2)が好ましく、アミノ基含有化合物(b1)とオキシラン環含有化合物(b2)とを併用することがより好ましい。また、併用する場合、合計を100質量%としたときに、オキシラン環含有化合物(b2)が50質量%以下であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。このような質量割合で併用した場合、高解像性を損なうことなく、且つ耐薬品性に優れた絶縁膜等の硬化物を形成することができるため好ましい。
【0036】
化合物(B)の含有量は、ブロック共重合体(A)を100質量部とした場合に、1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。この化合物(B)の含有量が1〜100質量部であれば、硬化反応が十分に進行し、形成される絶縁膜は高解像度で良好なパターン形状を有し、且つ耐熱性、電気絶縁性等に優れるため好ましい。
【0037】
(C)光感応性酸発生剤
光感応性酸発生剤(C)[以下、「酸発生剤(C)」という。]は、放射線などの照射により酸を発生する化合物であり、この酸の触媒作用により、化合物(B)中のアルキルエーテル基と、ブロック共重合体(A)又はフェノール性低分子化合物中のフェノール環とが脱アルコールをともなって反応することにより、ネガ型のパターンが形成される。酸発生剤(C)は放射線などの照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されないが、例えば、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0038】
オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。好ましいオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフリオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0039】
ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等が挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物の具体例としては、1,10−ジブロモ−n−デカン、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、スチリル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ナフチル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0040】
ジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等が挙げられ、具体例としては、フェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0041】
スルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物及びこれらの化合物のα−ジアゾ化合物等が挙げられ、具体例としては、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタン等が挙げられる。
【0042】
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類等が挙げられる。好ましい具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0043】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられる。
【0044】
ジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
酸発生剤(C)としては、オニウム塩化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有オニウム塩化合物がより好ましい。
これらの酸発生剤(C)は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
酸発生剤(C)の含有量は、ネガ型感光性絶縁樹脂組成物の感度、解像度、パターン形状等を確保する観点から、ブロック共重合体(A)、又はフェノール性低分子化合物が配合される場合は、これらの合計を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部とすることができ、0.3〜5質量部とすることが好ましい。酸発生剤(C)の含有量が0.1質量部未満であると、硬化が不十分になり、耐熱性が低下することがある。一方、10質量部を越えると、放射線に対する透明性が低下し、パターン形状の劣化を招くことがある。
【0046】
(D)溶剤
ネガ型感光性絶縁樹脂組成物に溶剤(D)を含有させることにより、樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度及び保存安定性を調節したりすることができる。この溶剤(D)は特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類などが挙げられる。これらの溶剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(E)密着助剤
ネガ型感光性絶縁樹脂組成物には、基材との密着性を向上させるため、密着助剤(E)を更に含有させることができる。この密着助剤(E)としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有する官能性シランカップリング剤等が挙げられる。具体的には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1,3,5−N−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらの密着助剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
密着助剤(E)の含有量は特に限定されないが、ブロック共重合体(A)を100質量部とした場合に、0.2〜10質量部であることが好ましく、0.5〜8質量部であることがより好ましい。密着助剤(E)の含有量が0.2〜10質量部であれば、貯蔵安定性に優れ、且つ良好な密着性を有する樹脂組成物とすることができるため好ましい。
【0049】
(F)架橋微粒子
ネガ型感光性絶縁樹脂組成物には、硬化物の耐久性及び熱衝撃性等を向上させるため、架橋微粒子(F)を更に含有させることができる。架橋微粒子(F)は、この架橋微粒子(F)を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることを除いて、特に限定されない。例えば、不飽和重合性基を2個以上有する架橋性単量体(以下、単に「架橋性単量体」という。)と、架橋微粒子(F)のTgが0℃以下となるように選択される1種又は2種以上の「他の単量体」とを共重合させた共重合体を用いることが好ましい。特に、他の単量体を2種以上併用し、且つ他の単量体のうちの少なくとも1種が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等の重合性基以外の官能基を有するものであることがより好ましい。
【0050】
架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を複数有する化合物が挙げられる。これらのうちではジビニルベンゼンが好ましい。
【0051】
架橋微粒子(F)を製造する際に用いる架橋性単量体は、共重合に用いられる全単量体を100質量%とした場合に、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0052】
また、他の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン化合物;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール等の芳香族ビニル化合物;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、グリコールのジグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル等の不飽和酸化合物;ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和化合物等が挙げられる。
【0053】
これらの他の単量体のうちでは、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等が好ましい。
【0054】
また、架橋微粒子(F)の製造には、他の単量体として、少なくも1種のジエン化合物、具体的には、ブタジエンが用いられることが好ましい。このようなジエン化合物は、共重合に用いる全単量体を100質量%とした場合に、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。ジエン化合物が20〜80質量%であれば、架橋微粒子(F)がゴム状の軟らかい微粒子となり、形成される絶縁膜等の硬化物にクラック(割れ)が発生するのを防止することができ、耐久性に優れる絶縁膜等とすることができる。
これらの架橋微粒子(F)は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
また、架橋微粒子(F)の平均粒径は、通常、30〜500nmであり、好ましくは40〜200nm、更に好ましくは50〜120nmである。この架橋微粒子(F)の粒径の制御方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合により架橋微粒子を合成する場合、使用する乳化剤の量により乳化重合中のミセルの数を制御することにより、粒径を調整することができる。
尚、架橋微粒子(F)の平均粒径は、光散乱流動分布測定装置(大塚電子社製、型式「LPA−3000」)を使用し、架橋微粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。
【0056】
更に、架橋微粒子(F)の含有量は、ブロック共重合体(A)を100質量部とした場合に、0.5〜50質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。架橋微粒子(F)の含有量が0.5〜50質量部であれば、他の成分との相溶性又は分散性に優れ、形成される絶縁膜等の熱衝撃性及び耐熱性等を向上させることができる。
【0057】
その他の添加剤
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加剤を、本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。このような他の添加剤としては、無機フィラー、増感剤、クエンチャー、レベリング剤等が挙げられる。
【0058】
製造方法
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。また、各々の成分を投入し、密栓したサンプル瓶を、ウェーブローター上で攪拌することによっても製造することができる。
【0059】
[2]硬化物
本発明の硬化物は、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなる。
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物を用いた硬化物は、電気絶縁性、熱衝撃性等に優れ、硬化物の1種である絶縁膜は、残膜率が高く、優れた解像性等を有する。そのため、硬化物は、半導体素子、半導体パッケージ等の電子部品の表面保護膜、平坦化膜、層間絶縁膜、感光性接着剤、感圧接着剤等として好適に用いることができる。
【0060】
本発明の硬化物は、本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物を、支持体(樹脂付き銅箔、銅張り積層板並びに金属スパッタ膜を付設したシリコンウエハー及びアルミナ基板等)に塗工し、乾燥して、溶剤等を揮散させて塗膜を形成し、その後、所望のマスクパターンを介して露光し、加熱処理(以下、この加熱処理を「PEB」という。)をし、ブロック共重合体(A)と化合物(B)との反応を促進させ、次いで、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することにより、所望のパターンを形成し、その後、絶縁膜特性を発現させるために加熱処理をする、ことにより形成することができる。
【0061】
樹脂組成物を支持体に塗工する方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、又はスピンコート法等の各種の塗布方法を採用することができる。また、塗布膜の厚さは、塗布手段、樹脂組成物溶液の固形分濃度及び粘度等を調整することにより、適宜制御することができる。
【0062】
露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、h線ステッパー、i線ステッパー、gh線ステッパー、ghi線ステッパー等から照射される、紫外線、電子線、レーザー光線等が挙げられる。また、露光量は、使用する光源及び樹脂膜厚等によって適宜設定することができ、例えば、高圧水銀灯から照射される紫外線の場合、樹脂膜厚1〜50μmでは、100〜20,000J/m程度とすることができる。
【0063】
露光後は、発生した酸によるブロック共重合体(A)と化合物(B)との硬化反応を促進させるために上記PEB処理を実施する。PEB条件は、ネガ型感光性絶縁樹脂組成物の配合量及び膜厚等によって異なるが、通常、70〜150℃、好ましくは80〜120℃で、1〜60分程度である。その後、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することによって所望のパターンを形成する。この現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等が挙げられる。現像条件は、通常、20〜40℃で1〜10分程度である。
【0064】
アルカリ性現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等のアルカリ性化合物を、1〜10質量%濃度となるように水に溶解させたアルカリ性水溶液が挙げられる。また、アルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性の有機溶剤及び界面活性剤等を適量配合することもできる。尚、アルカリ性現像液で現像した後は、水で洗浄し、乾燥させる。
【0065】
更に、現像後に絶縁膜としての特性を十分に発現させるため、加熱処理により十分に硬化させることができる。このような硬化条件は特に限定されないが、硬化物の用途に応じて、50〜250℃の温度で、30分〜10時間程度加熱し、硬化させることができる。また、硬化を十分に進行させたり、形成されたパターン形状の変形を防止するため、二段階で加熱することもでき、例えば、第一段階では、50〜120℃の温度で、5分〜2時間程度加熱し、更に80〜250℃の温度で、10分〜10時間程度加熱して硬化させることもできる。このような硬化条件であれば、加熱設備として一般的なオーブン及び赤外線炉等を用いることができる。
【0066】
本発明のネガ型感光性絶縁樹脂組成物を用いれば、図1及び図2のような、半導体素子(回路付基板)等の電子部品を形成することができる。即ち、基板1上に金属パッド2をパターン状に形成し、その後、樹脂組成物を用いて硬化絶縁膜3をパターン状に形成し、次いで、金属配線4をパターン状に形成することにより、図1のような、回路付基板を作製することができる。また、この基板上に更に硬化絶縁膜5を形成することにより、図2のような、回路付基板を作製することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]ブロック共重合体の製造
製造例1
耐圧ビン内に、窒素気流下に4−ヒドロキシスチレンが溶解されたメチレンクロライド溶液を仕込み、その後、この溶液を−78℃に冷却した。この溶液を攪拌しながら、カチオン重合触媒としてHI−ZnI2・を4−ヒドロキシスチレン1モルに対して1/500モルとなる量で添加することにより、4−ヒドロキシスチレンをカチオン重合させた。TSC法により、4−ヒドロキシスチレンの反応率が98%以上に到達したことを確認した後、この反応系に、窒素気流下にエチルビニルエーテルを添加することにより、リビングカチオン重合によるブロック共重合を8時間実施した。得られたポリマー溶液の温度を徐々に上昇させて室温に戻し、このポリマー溶液に対してその5倍量のメタノールを添加することにより、生成したブロック共重合体を凝固させて回収した。このブロック共重合体を常法により再沈精製し、その後、50℃で1日間減圧乾燥した[「共重合体(A−1)」とする。]。
【0068】
共重合体(A−1)の組成を13C−NMRにより分析したところ、共重合体(A−1)は、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(a2)からなるブロックの両末端に、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(a1)からなるブロックが結合したABA型ブロック共重合体であった。また、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(a1)と、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(a2)との割合は、これらの合計を100モル%とした場合に、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(a1)の割合が60モル%、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(a2)の割合が40モル%であった。更に 、共重合体(A−1)のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は30,000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は3.5であった。
【0069】
尚、13C−NMR分析には、日本電子社製、型式「JNM−EX270」を用いた。また、Mw及びMnの測定には、東ソー社製、型式「HLC−8220GPC」のGPCを用いた。具体的には、カラムとして、G2000HXLを2本、G3000HXLを1本及びG4000HXLを1本使用し、流量;1.0ミリリットル/分、溶出溶媒;テトラヒドロフラン、カラム温度;40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した。分子量分布(Mw/Mn)は、Mw及びMnの各々の測定値に基づいて算出した。
【0070】
製造例2〜3及び比較製造例1〜2
製造例2
エチルビニルエーテルに代えてプロピルビニルエーテルを用いた他は、製造例1と同様にして、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(a2)からなるブロックの両末端に、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(a1)からなるブロックが結合したABA型ブロック共重合体を製造した[「共重合体(A−2)」とする。]。共重合体(A−2)を製造例1の場合と同様にして分析したところ、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(a1)の割合が60モル%、プロピルビニルエーテルに由来する構造単位(a2)の割合が40モル%であった。また、共重合体(A−2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は30,000であり、分子量分布は3.5であった。
【0071】
製造例3
4−ヒドロキシスチレンとエチルビニルエーテルとの量比を変更した他は、製造例1と同様にして、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(a2)からなるブロックの両末端に、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(a1)からなるブロックが結合したABA型ブロック共重合体を製造した[「共重合体(A−3)」とする。]。共重合体(A−3)を製造例1の場合と同様にして分析したところ、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(a1)の割合が50モル%、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(a2)の割合が50モル%であった。また、共重合体(A−3)のポリスチレン換算の重量平均分子量は10,000であり、分子量分布は3.5であった。
【0072】
比較製造例1
p−t−ブトキシスチレンとエチルビニルエーテルとをモル比60:40の割合で合計100質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル150質量部に溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、アゾビスイソブチロニトリル4質量部を用いて10時間重合させた。その後、反応溶液に硫酸を加えて反応温度を90℃に保持して10時間反応させ、p−t−ブトキシスチレンを脱保護して4−ヒドロキシスチレンに変換した。得られた共重合体に酢酸エチルを加え、水洗を5回繰り返し、酢酸エチル相を分取し、溶剤を除去して、ランダム共重合体[4−ヒドロキシスチレン/エチルビニルエーテル共重合体(以下、「共重合体(AR−1)」という)]を得た。共重合体(AR−1)を製造例1の場合と同様にして分析したところ、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(ar1)の割合が60モル%、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(ar2)の割合が40モル%であった。また、共重合体(AR−1)のポリスチレン換算の重量平均分子量は30,000であり、分子量分布は3.5であった。
【0073】
比較製造例2
エチルビニルエーテルに代えてスチレンを用いた他は、製造例1と同様にして、エチルビニルエーテルに由来する構造単位(ar2)からなるブロックの両末端に、スチレンに由来する構造単位(ar1)からなるブロックが結合したABA型ブロック共重合体を製造した[「共重合体AR−2」とする。]。共重合体(AR−2)を製造例1の場合と同様にして分析したところ、4−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位(ar1)の割合が60モル%、スチレンに由来する構造単位(ar2)の割合が40モル%であった。また、共重合体(AR−2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は30,000であり、分子量分布は3.5であった。
【0074】
[2]ネガ型感光性絶縁樹脂組成物の製造
実施例1
表1のように、共重合体(A−1)を100質量部、特定の化合物(架橋剤)(B−1)を15質量部、酸発生剤(C−1)を1質量部、溶剤(D−1)を150質量部、及び密着助剤(E−1)を3質量部、配合し、各々の成分を溶剤に溶解させてネガ型感光性絶縁樹脂組成物を製造した。
【0075】
実施例2〜6及び比較例1〜3
表1に記載の共重合体、特定の化合物(架橋剤)、酸発生剤、溶剤、及び密着助剤を、表1に記載の質量割合となるように配合し、ネガ型感光性絶縁樹脂組成物を製造した。
尚、上記の成分の他に、実施例5では、フェノール性低分子化合物[フェノール化合物(a−1)]を5質量部配合した。また、実施例6では、架橋微粒子(F−1)を5質量部配合した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に記載の各々の成分のうち共重合体を除く他の成分の詳細は下記のとおりである。
(a)フェノール化合物
a−1:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル}エタン
(B)特定の化合物(架橋剤)
B−1:ヘキサメトキシメチル化メラミン(三井サイテック社製、商品名「サイメル300」)
B−2:プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社製、商品名「エポライト70P」)
B−3:ペンタエリスリトールグリシジルエーテル(ナガセケムテック社製、商品名「デナコールEX411」)
B−4:1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製、商品名「OXT−121」)
(C)光感応性酸発生剤
C−1:2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル製、商品名「TFE−トリアジン」)
C−2:4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、商品名「CPI−210S」)
(D)溶剤
D−1:乳酸エチル
(E)密着助剤
E−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、商品名「S−510」)
(F)架橋微粒子
F−1:ブタジエン/スチレン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/

ビニルベンゼン=60/20/12/6/2(質量%)、平均粒径;65nm
(G)界面活性剤
G−1:ネオス社製、商品名「FTX−218」
【0078】
[3]感光性絶縁樹脂組成物の評価
実施例1〜6及び比較例1〜3のネガ型感光性絶縁樹脂組成物の特性を、下記の方法に従って評価した。結果は表2のとおりである。
(1)解像度
6インチのシリコンウエハーにネガ型感光性絶縁樹脂組成物をスピンコートし、その後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、厚さ20μmの均一な樹脂塗膜を作製した。次いで、アライナー(Karl Suss社製、型式「MA−100」)を使用し、パターンマスクを介して高圧水銀灯から照射される紫外線を、波長365nmにおける露光量が500mJ/cmとなるように露光した。その後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱(PEB)し、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で120秒間、浸漬し、現像した。このようにして得られたパターンの最小寸法を解像度とする。
【0079】
(2)絶縁膜の応力
8インチのシリコンシリコンウエハーにネガ型感光性絶縁樹脂組成物をスピンコートし、その後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、厚さ20μmの均一な樹脂塗膜を作製した。次いで、アライナー(Karl Suss社製、型式「MA−100」)を使用し、高圧水銀灯から照射される紫外線を、波長365nmにおける露光量が500mJ/cmとなるように露光した。その後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱(PEB)し、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて23℃で120秒間、浸漬し、現像した。その後、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱し、樹脂塗膜を硬化させて絶縁膜を形成した。そして、絶縁膜形成前後の基板の応力差を応力測定装置(TOHOテクノロジー(旧技術所有KLA−Tencor)社製 FLX−2320−s)にて測定し、応力を評価した。
【0080】
(3)電気絶縁性
図3のように、基板6上にパターン状の銅箔7を有している絶縁性評価用の基材8に、ネガ型感光性絶縁樹脂組成物を塗布し、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、銅箔7上での厚さが10μmである樹脂塗膜を有する基材を作製した。その後、対流式オーブンを用いて190℃で1時間加熱し、樹脂塗膜を硬化させて絶縁膜を形成した。この基材8をマイグレーション評価システム(タバイエスペック社製、型式「AEI,EHS−221MD」)に投入し、温度121℃、湿度85%、圧力1.2気圧、印加電圧5Vの条件で200時間処理した。次いで、試験基材の抵抗値(Ω)を測定し、絶縁性を評価した。
【0081】
【表2】

【0082】
表2の結果によれば、実施例1〜6は、絶縁膜の応力が小さく、且つ解像性及び電気絶縁性に優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】半導体素子の断面を説明する模式図である。
【図2】半導体素子の断面を説明する模式図である。
【図3】電気絶縁性評価用の基材を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1;基板、2;金属パッド、3;硬化絶縁膜、4;金属配線、5;硬化絶縁膜、6;基板、7;銅箔、8;絶縁性評価用の基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される構造単位(a1)と、下記式(2)で表される構造単位(a2)とを有するブロック共重合体、
(B)分子中に2個以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物(b1)、オキシラン環含有化合物(b2)及びオキセタニル環含有化合物(b3)から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(C)光感応性酸発生剤、
(D)溶剤、を含有することを特徴とするネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【化1】

[式(1)のRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、式(2)のRは炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)との合計を100モル%とした場合に、該構造単位(a1)の含有割合が40〜60モル%である請求項1に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が、10,000〜30,000である請求項1又は2に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記光感応性酸発生剤(C)がヒドロキシル基含有オニウム塩である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
更に密着助剤(E)を含有する請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
更に架橋微粒子(F)を含有する請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載のネガ型感光性絶縁樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−102271(P2010−102271A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276090(P2008−276090)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】