説明

ノイズフィルタ

【課題】狭いスペースに搭載可能なねじなし端子を組み込み、導通チェックの容易なノイズフィルタを提供する。
【解決手段】ケース本体82と、複数の回路部品を覆った状態でケース本体に装着されるケースカバー92と、ケース本体82にケース本体と一体に形成されるAC入力端子台86とAC出力端子台88と、AC入力端子台とAC出力端子台に、ケース本体の側面部内壁に面して配置された接続板と、ケース本体側面部に対抗して配置された電線固定用の屈曲した平板状の接圧ばねと、ケース本体側面部に対して接続する電線と略平行な位置に配置された接圧ばねの端部側を押下するリリースボタン50−1〜50−6と、回路部品に電気的に接続される導体板とで構成されるねじなし端子と、電線挿入のための開口部16−1〜16−10とリリースボタンをガイドする開口部とを備えた端子カバーとを備えたノイズフィルタ80である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型のケースによって構成された端子台の電線接続インターフェイスを、ねじなし端子構造としたノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
電源ラインや通信ライン等を介して外部から電子機器内に侵入するノイズにより電子機器が誤動作することを防止するために、コイルとコンデンサで構成されるノイズフィルタが使用され、電子機器の安定な動作を行ううえで不可欠なデバイスである。
【0003】
従来、この種のノイズフィルタは、AC入力端子台とAC出力端子台を一体に形成したケース本体にコモンモードチョークコイル、Xコンデンサ(アクロス・ザ・ライン・コンデンサ)及びYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)を組み込んだ状態でケースカバーを装着する構造としている。AC入力端子台とAC出力端子台には外部からの電線を接続する。
【0004】
図11は、特許文献1に示された従来のノイズフィルタ構造の一例を示した斜視図である。ノイズフィルタ100は、ケース本体112と、その底面部に金属底板126、上面部にカバー110が取り付けられ、ケース本体112の両端部にAC入力端子台120及びAC出力端子台122が設けられている。電線の接続は、AC入力端子台120及びAC出力端子台122に設けられたねじ130と座金132により端子134に、電線の導線をねじ締めして接続される。アース端子124は、金属底板126の端部をコの字状に折り曲げて、上部水平面の座部にねじ孔を設け、ねじによりアースとなる電線の先端をねじ締めして接続する。
【0005】
図12は、電線を端子に接続した状態を説明する図である。AC入力端子台120に設けられた接続部に電線140を接続する場合に、電線140の先端部の絶縁被膜をワイヤストリッパ等で取り除き、圧着端子142を取り付ける。そして、熱収縮チューブ等の絶縁カバー144で覆う。圧着端子142にはねじ130を通し、圧着端子142を座金132と端子134に挟んでねじ締めする。
【0006】
アース端子は、ねじ締めする際に端子部に捩り力が作用するため、特許文献2では、端子部の座部の先端側面は端子台本体の側面に形成した壁部に当接し、また端子部の座部の金具を締め付けようとする方向の一側側面は、ケース部材の側面に形成した壁部に当接して、それ以上捩じられなくする構造を開示している。
【0007】
このような電線を接続するねじ式端子台に対して、簡易な接続方法として、ねじなし端子が知られている。例えば特許文献3には、組み立てが容易であり、電線を挿入した状態でもリリースレバーの位置が不安定となることのないねじなし端子が開示されている。また複数個のリリースレバーを共通の固定部で連結し、また、複数個の接圧ばねを共通の連結部で連結することにより、多連式の場合にも部品点数を削減できる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−288710号公報
【特許文献2】特許4225227号公報
【特許文献3】特開2000−223171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のノイズフィルタの電線の接続にあっては、ねじ式端子構造によりねじで締めて接続しているが、電線に圧着端子を取り付けなければならず、圧着端子の部品コストがかかる他、結線作業においてねじを回す必要があり、さらにメンテナンスではねじの増し締め作業も必要とされる。
【0010】
また、ねじ式端子は一般に安全性を保つために端子に端子カバーを被せるが、電線接続の作業時には端子カバーを開き、結線終了後に端子カバーを閉じる必要があり、電線接続の導通チェックにも端子カバーの開閉をしなければならず、作業工程が複雑となっている。この他、ビスガレ不良が発生する可能性があり、発生した場合はねじの交換をしなければならず、専用工具を必要とする。
【0011】
圧着端子を使用した電線の結線では、電線を引き出すためのスペース、即ち、電線を横に引き出すため、側面部に作業エリアを設けなければならない。
【0012】
簡易な結線構造としてのねじなし端子は、端子と接圧ばねとリリースボタンとで構成され、リリースボタンは一般に接圧ばねの屈曲部上部に配置され、接圧ばねの幅方向の中心部を押下するような構造となっているが、ノイズフィルタ等の小型の電子機器に組み込むには、狭いスペースにどのような構造で組み込むかが問題となる。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決し、狭いスペースにねじなし端子を組み込み、導通チェックの容易なノイズフィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ケース本体と、複数の回路部品を覆った状態でケース本体に装着されるケースカバーと、ケース本体にケース本体と一体に形成されるAC入力端子台とAC出力端子台と、AC入力端子台とAC出力端子台に、ケース本体の側面部内壁に面して配置された接続板と、ケース本体側面部に対抗して配置された電線固定用の屈曲した平板状の接圧ばねと、ケース本体側面部に対して接続する電線と略平行な位置に配置された接圧ばねの端部を押下するリリースボタンと、回路部品に接続される導体板とで構成されるねじなし端子と、電線挿入のための開口部とリリースボタンをガイドする開口部とを備えた端子カバーとを備えたことを特徴とするノイズフィルタである。
【0015】
接続板には、電線の挿入方向と垂直方向に突起部が形成されている。
【0016】
接続板と前記導体板は一体として構成され、導体板の一部に接圧ばねを固定した構造としたねじなし端子であることを特徴とする。
【0017】
2本の電線を接続する場合には、接圧ばねを2個隣接して導体板の一部に固定し、隣接した接圧ばねの中央部にリリースボタンを配置して、隣接した前記接圧ばねの両端部が前記リリースボタンにより同時に押下可能としている。
【0018】
リリースボタンは、押下時に移動のガイドとなるように、側面が接続板に接している。また、リリースボタンの上部面には、十字形状の溝を備えている。
【0019】
リリースボタンの下部面には、電線と隣接する側にのみ、リリースボタン本体の幅及び端子カバーのガイド用開口部の幅より広いストッパが設けられている。
【0020】
AC入力端子台とAC出力端子台の接続板が取り付けられた側壁には、接続板に対応した位置に導通チェック用のチェック孔が設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるねじなし端子構造を備えたノイズフィルタは、電線とリリースボタンを平行に配置しているため、ねじがない分実装面積が小さくでき小型の電子機器への搭載に適した構造である。電線の結線作業も、被覆を除いた電線を差し込むだけで可能であり作業工数が低減する効果がある。
【0022】
また、電線を上部から差し込むだけの作業であり、圧着端子を使用した場合のような作業エリアも必要としない。さらに、電線をはずす時にもリリースボタンを押すだけで特別な工具を必要としない。ドライバーを利用でリリースボタンを押す場合にも、リリースボタン上部面に十字状の溝があるため、ドライバーの先端部が確実にリリースボタンに嵌合してズレが生じず、作業性が良い。
【0023】
接続板に対応した位置に導通チェック用のチェック孔を備えているために、完成後の導通チェックが容易に行え、また、ねじが無いためにねじ増し作業が不要で、完成後のメンテナンスフリー化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるノイズフィルタの実施形態を示した外観説明図
【図2】本発明によるノイズフィルタに対する結線状態を示した説明図
【図3】図1のケースカバーを外して内部構造を示した説明図
【図4】図3の端子部カバーを外して内部構造を示した説明図
【図5】本発明のノイズフィルタに設けたねじなし端子構造の実施形態を示した断面図。
【図6】図5のねじなし端子構造に設けた複線用ねじなし端子を取り出して示した説明図
【図7】図6を複線用ねじなし端子を逆方向から示した説明図
【図8】図5のねじなし端子構造に設けた単線用ねじなし端子を取り出して示した説明図
【図9】図8の単線用ねじなし端子を逆方向から示した説明図
【図10】本発明によるノイズフィルタの回路図
【図11】従来のノイズフィルタ構造を示した説明図
【図12】従来のノイズフィルタ構造における電線接続状態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によるねじなし端子構造を使用したノイズフィルタの実施形態について、図1〜4を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明にノイズフィルタの実施形態を示した外観説明図である。ノイズフィルタ80はケース本体82の両側にAC入力端子台86、AC出力端子台88及び2つのアース端子台94−1,94−2を一体に備え、ケース本体82に対しケースカバー92を装着している。ケースカバー92は、ノイズフィルタ80の回路部品(図示せず)を覆っている。
【0027】
AC入力端子台86には、入力端子にねじなし端子が搭載され、端子カバー14−1,14−2で覆われている。端子カバー14−1,14−2には、内部のねじなし端子に外部から電線を接続するためのテーパ状開口部16−1,16−2,16−3,16−4が備えられている。1つの入力端子に対して2本の電線を接続する構造のため、それぞれの入力端子に対してテーパ状開口部は2つある。さらに、端子カバー14−1,14−2には、電線の接続を解除するためのリリースボタン50−1,50−2用の開口部があり、リリースボタン50−1,50−2の上部面が端子カバー14−1,14−2とほぼ同平面に位置している。リリースボタン50−1を押し下げることで、両端のテーパ状開口部16−1,16−2から挿入された2本の電線は同時に解除される。リリースボタン50−2を押し下げれば、両端のテーパ状開口部16−3,16−4から挿入された2本の電線は同時に解除される。
【0028】
AC出力端子台88においても、AC入力端子台86と同様な構造となっており、出力端子にねじなし端子が搭載され、端子カバー14−3,14−4で覆われている。端子カバー14−3,14−4にはテーパ状開口部16−5,16−6,16−7,16−8が設けられている。さらに、端子カバー14−3,14−4にも、電線の接続を解除するためのリリースボタン50−3,50−4用の開口部があり、リリースボタン50−3,50−4の上部面が端子カバー14−3,14−4とほぼ同平面に位置している。
【0029】
2つのアース端子台94−1,94−2についても内部にねじなし端子が搭載され、端子カバー14−5,14−6で覆われている。アース端子は、ケース本体82の底面部にある金属底板84の一部を屈曲させ、取付ねじ90でアース端子台94−1,94−2内部のねじなし端子と接続している。アース端子も端子カバー14−5,14−6で覆われ、それぞれの端子カバー14−5,14−6には、電線接続のためのテーパ状開口部16−9,16−10及びリリースボタン50−5、50−6用の開口部が備えられている。
【0030】
電線接続後の導通チェックは、各端子に対応して備えられているチェック孔46−1,46−2,46−3を使用して行われる。
【0031】
図2は、図1のノイズフィルタ80に、電線20−1〜20−10を結線した状態を示した図である。AC入力端子台86の端子カバー14−1,14−2に備えられているテーパ状開口部16−1,16−2,16−3、16−4からは、入力用の電線20−1,20−2,20−3,20−4が挿入されている。AC出力端子台88の端子カバー14−3,14−4に備えられているテーパ状開口部16−5,16−6,16−7,16−8からは、入力用の電線20−5,20−6,20−7,20−8が挿入されている。アース端子用の端子カバー14−5,14−6のテーパ状開口部16−9,16−10からは、電線20−9,20−10が挿入されている。
【0032】
いずれの電線20−1〜20−10も、絶縁被膜を取り除き、導体を露出した状態でテーパ状開口部16の上部から挿入するだけで端子と結線できるため、簡単な作業であり短時間の作業工程で済む。
【0033】
さらに、結線後の導通チェックは、AC入力端子台86及びAC出力端子台88に備えられているチェック孔46から、テスターの端子を差し込むだけで検査が可能である。
【0034】
チェック孔46−1にテスターの端子を差込めば、もう一方の端子で電線20−1,20―2との導通チェックができる。また、チェック孔46−2にテスターの端子を差込めば、もう一方の端子で電線20−3,20−4との導通チェックができる。さらに、アース端子のチェック孔46−3によりアース用の電線20−9との導通チェックができる。
【0035】
図3は、ねじなし端子が搭載された図1のノイズフィルタ80から、回路部品とケースカバー92を取り外して内部構造を示した図である。中央部の円筒型スペースには、ノイズフィルタ回路に使用されるコモンモードチョークコイルが収納される。
【0036】
図4は、図3のノイズフィルタ80からさらに、AC入力端子台86の端子カバー14−1,14−2、AC出力端子台88の端子カバー14−3,14−4及びアース端子台94−1,94−2の端子カバー14−5,14−6を取り外した図である。AC入力端子台86には、2つの端子にそれぞれ1本ずつの電線が接続され、計2本の電線が接続される複線用ねじなし端子10−1,10−2が搭載されている。AC出力端子台88にもそれぞれの端子に複線用ねじなし端子10−3,10−4が搭載されている。アース端子は1本の電線の接続であるため、アース端子台94−1,94‐2には、単線用ねじなし端子12−1,12−2が搭載されている。
【0037】
図5は、本発明による複線用ねじなし端子10の構造を説明する断面図であり、ノイズフィルタ80のAC入力端子台86に組み込んで、電線20を接続した状態を示している。複線用ねじなし端子10は、接圧ばね32、接続板34、導体板38と接圧ばねを押下するリリースボタン50から構成されている。この基本構造は、単線用ねじなし端子12も同様である。
【0038】
AC入力端子台86は、ノイズフィルタ80の端部に設けられており、AC入力端子台側壁18の内側に複線用ねじなし端子10が組み込まれている。AC入力端子台側壁18に当接して接続板34が配置され、接続板34の一部には、水平方向に突起部36がある。接続板34からは導体板38が一体で形成され、導体板38は、接続板34から底面部42、連結部40と端子接続部44から成っている。
【0039】
導体板38の連結部40は、底面部42から垂直に立ち上がった部分であり、接続板34と対向した位置にある。この連結部40に、平板状の接圧ばね32を固定する。導体板38及び接圧ばね32は通常金属材料を使用しており、例えばスポット溶接等で固定する。ただし、接圧バネ32は必ずしも金属である必要は無く、また、導電性である必要も無い。
【0040】
接圧バネ32は、連結部40で固定され、上部で屈曲して接続板34方向に斜めに突き出た形状となっている。接圧バネ32の上部屈曲部は、端子カバー14の溝部に位置し、屈曲部背面が端子カバー14の壁面に当接しているため、後方への移動が制限される。接圧バネ32の先端の角部は、導線24の引き抜きに対して、導線24に食い込む力が働いて、導線24の引き抜きを防止している。
【0041】
電線20は、先端部の絶縁被膜22を取り除き、導線24を露出して端子カバー14のテーパ状開口部16から挿入される。
【0042】
電線20の先端部導線24は、上部から垂直方向にテーパ状開口部16から挿入されるが、このとき接圧ばね32を下方に押す。接圧ばね32は下方斜めに向いているから、容易にバネの反発力に打ち勝ち、導線24を挿入できる。挿入されたた導線24は、接圧ばね32の反発力で接続板34方向に押圧され、接続板34にある突起部36に当接して導線24と接続板34との電気的導通状態となる。
【0043】
電線20を上方向に引き抜く力が働いても、接圧ばね32の屈曲部は端子カバー14の溝部に固定されているから、接圧ばね32の角部が導線24に食い込んで、導線24が引く抜かれることはない。
【0044】
導線24を引き抜くときには、電線20と接続板34に対して平行に配置されたリリースボタン50を押し下げる。リリースボタン50の先端部は、接圧ばね32の幅方向の中心部より端方向の端部を押して、接圧ばね32を導線24から離して押圧を解除する。接圧ばね32により押圧を解除された導線20は容易に引き抜くことができる。
【0045】
電線20をねじなし端子10−1に接続した場合の導通チェックは、AC入力端子台側壁18に設けられているチェック孔46から、テスターの端子を差し込んで接続板に当て、容易に導通チェックが行える。
【0046】
図6は、AC入力端子台86及びAC出力端子台88に使用される複線用ねじなし端子10の構造を示した図である。AC入力端子やAC出力端子は、電源容量との関係から2本の電線を接続する場合も多く、図6は、2本の電線を接続するねじなし端子の構造である。
【0047】
図6において、接続板34は水平方向に2つの突起部36−1,36−2を有し、突起部36−1,36−2下方に先端が位置するように、接圧ばね32−1,32−2が平行に配置されている。接圧ばね32−1,32−2は、接続板34と対向する位置にある導体板38の連結部40に固定されている。導体板38の先端部には2つの端子接続部44があり、コモンモードチョークコイルや各コンデンサのリード線とハンダ付けされて電気的に接続される。これらの電子部品は、プリント基板を使用してプリント回路基板の配線部にハンダ付けし、端子接続部44と電気的に接続してもよい。
【0048】
リリースボタン50は、2つの圧接ばね32−1,32−2の中央部に配置され、底面部が2つの圧接ばね32−1,32−2の端部側に当たる様になっている。このような配置により、1つのリリースボタン50を押下すると、2つの圧接ばね32−1,32−2が同時に押し下げられるため、2つの圧接ばね32−1,32−2に対応した2つのリリースボタン50が必要でなく、1つのリリースボタン50でよい。このため、省スペース構造のねじなし端子が実現でき、小型の電子機器に容易に搭載可能となる。
【0049】
また、従来のねじなし端子構造に見られるように、リリースボタン50を接圧ばね32−1、32−2の上部位置に配置した構造に対して、2本の電線20間にリリースボタン50を配置する構造としている点に特徴がある。このような構造とすることにより、図6の幅方向に電線20とリリースボタン50を配置する従来構造よりも狭い幅でねじなし端子が構成されるため、当然にノイズフィルタ80の両端に設置されるAC入力端子台86及びAC出力端子台88の幅方向の設置スペースを狭くでき、ノイズフィルタ全体として大幅な省スペース構造が実現できる。
【0050】
リリースボタン50の上部面には、十字形状の溝52が設けられている。リリースボタン50は電線20の間に配置されており、小さな部品であるために、接続した電線を外すときは、汎用的に使用されるドライバーの先端を押し当てて押し下げるのが便利である。ドライバーはプラスとマイナスのドライバーがあるため、いずれのドライバーの先端部を押し当ててもズレが生ずることなくリリースボタン50に押圧がかかるようにするために設けたのが十字形状の溝52である。この十字形状の溝52に、ドライバーの先端部が嵌め合わされて、リリースボタン50を押下し、接圧ばね32−1、32−2を押し下げる。
【0051】
リリースボタン50の底部には、ストッパ54が設けられていて、端子カバー14のリリースボタン開口部からの抜けを防止している。
【0052】
図7は、図6の複線用ねじなし端子10を逆方向から見た図である。リリースボタン50の底部にあるストッパ54が無く、平面となっている。この様に、ストッパ54を片側だけに設けることにより、リリースボタン50の底面部の幅を狭くでき、高密度実装に適した省スペース構造のリリースボタン50とすることができる。
【0053】
図8は、単線用ねじなし端子12の構造を示した図である。単線用ねじなし端子12は、主にアース端子のねじなし端子として使用する。
【0054】
単線用ねじなし端子12が図6の複線用ねじなし端子10と異なるのは、接圧ばね32が1つであることは勿論、導体板38が接続板34と垂直方向に配置された構造となっていることである。そして、導体板38にはねじ孔56が設けられている。これは、金属底板に接続されるアース端子は、金属底板の端部を垂直方向に屈曲させて導体板38に当接して、ねじで固定するためである。
【0055】
また、接圧ばね32は、導体板38に対して垂直方向に固定され、接続板34と対抗している。固定強度は、接圧ばね32の下部と背面部にAC入力端子台内部の押し当て部により補強されている。
【0056】
図9は、図8の単線用ねじなし端子12を逆方向から見た図である。単線用ねじなし端子12においても、複線用ねじなし端子10と同様に、リリースボタン50の底部にあるストッパ54は片側だけである。図5では、電線20側にストッパ54を設けているので、逆側は平面となり、導体板38に近接して配置することができたが、単線用ねじなし端子12においても同様に高密度実装に適した省スペース構造のリリースボタン50とすることができる。
【0057】
図10は、本発明のノイズフィルタ80の実施形態で使用したノイズフィルタ回路60である。AC入力端子62a,62bとAC出力端子70a,70bの間には、コモンモードチョークコイル66を挟んで、Xコンデンサ64をライン間に接続し、各ラインはYコンデンサ68を介して接地されている。ライン間には保護用のブリーダ抵抗74を挿入している。コモンモードチョークコイル66はAC入力端子62a,62bとAC出力端子70a,70bの間に接続されて低域のコモンモードノイズを減衰させる。
【0058】
Xコンデンサ64はコモンモードチョークコイル66の入力側及び出力側のライン間に接続されて低域のノーマルモードノイズを減衰させる。Yコンデンサ68はライン・グランド間に接続されて高域のコモンモードノイズとノーマルモードノイズを減衰させる。アース端子72は、ケース本体の底部に設けられている金属底板と接続されている。
【0059】
ノイズフィルタ80の回路部品は、それぞれのリード線がハンダ付けにより電気的に接続され複線用ねじなし端子10の端子接続部44に接続している。また、回路部品はプリント基板を使用して配線してもよいことは勿論である。この場合は、プリント基板に端子接続部44を通す開口部を備え、端子接続部44をこの開口部に通して配線部とハンダ付けして電気的に接続すると共に、プリント基板を端子接続部44により固定することになる。プリント基板は、ケースカバー92により覆われ保護される。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0061】
10,10−1〜10−4 複線用ねじなし端子
12,12−1,12−2 単線用ねじなし端子
14,14−1〜14−6 端子カバー
16,16−1〜16−10 テーパ状開口部
18 AC入力端子台側壁
20,20−1〜20−10 電線
22 絶縁被膜
24 導線
32,32−1,32−2 接圧ばね
34 接続板
36,36−1,36−2 突起部
38 導体板
40 連結部
42 底面部
44 端子接続部
46,46−1,46−2,46−3 チェック孔
50,50−1〜50−6 リリースボタン
52 十字形状の溝
54 ストッパ
60 ノイズフィルタ回路
62a,62b AC入力端子
64 Xコンデンサ
66 コモンモードチョークコイル
68 Yコンデンサ
70a,70b AC出力端子
72 アース端子
74 ブリーダ抵抗
80 ノイズフィルタ
82 ケース本体
84 金属底板
86 AC入力端子台
88 AC出力端子台
90 取付ねじ
92 ケースカバー
94 アース端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体と、
複数の回路部品を覆い前記ケース本体に装着されるケースカバーと、
前記ケース本体に前記ケース本体と一体に形成されるAC入力端子台とAC出力端子台と、
前記AC入力端子台と前記AC出力端子台に、前記ケース本体の側面部内壁に面して配置された接続板と、前記ケース本体側面部に対抗して配置された電線固定用の屈曲した平板状の接圧ばねと、前記ケース本体側面部に対して接続する電線と略平行な位置に配置された前記接圧ばねの端部側を押下するリリースボタンと、前記回路部品に接続される導体板とで構成されるねじなし端子と、
前記電線挿入のための開口部と前記リリースボタンをガイドする開口部とを備えた端子カバーと、
を備えたことを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
前記接続板には、電線の挿入方向と垂直方向に突起部が形成されている請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
前記接続板と前記導体板は一体として構成され、前記導体板の一部に前記接圧ばねを固定した構造としたねじなし端子であることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
前記接圧ばねを2個隣接して前記導体板の一部に固定し、隣接した前記接圧ばねの中央部に前記リリースボタンを配置して、隣接した前記接圧ばねの両端部が前記リリースボタンにより同時に押下可能とした請求項3に記載のノイズフィルタ。
【請求項5】
前記リリースボタンは、押下時に移動のガイドとなるように、側面が前記接続板に接していることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項6】
前記リリースボタンの上部面には、十字形状の溝を備えていることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項7】
前記リリースボタンの下部面には、電線と隣接する側にのみ、前記リリースボタン本体の幅及び前記端子カバーのガイド用開口部の幅より広い台座が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項8】
前記AC入力端子台と前記AC出力端子台の前記接続板が取り付けられた側壁には、前記接続板に対応した位置に接続チェック用のチェック孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−100002(P2012−100002A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245119(P2010−245119)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】