説明

ハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム

【課題】 入れ子状の段を有する発電機(102)用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)を提供する。
【解決手段】 発電機(102)が、外側の入れ子段(446)に関して入れ子状にされた内側入れ子段(444)を含む。オイルポンプ(222)が、油だめ(224)からオイルを引き込むようにオイルポンプインレットチューブ(226)に連結され、冷却コア(230)がポンプにより引き込んだオイルを発電機(102)内に分配する。ロータ部材(212)が内側入れ子段(444)および外側入れ子段(446)に連結される。ロータ部材(212)が発電機(102)の中心軸(216)の周りを回転するとき、ロータ部材(212)に設けられた内側段径方向孔(424)および外側段径方向孔(436)を通して冷却コア(230)からのオイルを遠心的に送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して発電機の潤滑および冷却に関し、具体的には入れ子状の複数の段を有する発電機用のハイブリッド・カスケージング潤滑および冷却に関する。
【0002】
本出願は、本出願の譲受人であるコネチカット州ウィンザーロックスのハミルトン・サンドストランド・コーポレイションと同一の譲受人に付与された以下の同時係属出願の対象と関連する対象を含む。以下の出願は、本明細書の参考となる。
【0003】
米国特許出願代理人整理番号PA−0011111−US、NESTED TORSIONAL DAMPER FOR AN ELECTRIC MACHINE;および米国特許出願代理人整理番号PA−0011112−US、NESTED EXCITER AND MAIN GENERATOR STAGES FOR A WOUND FIELD GENERATOR
【背景技術】
【0004】
発電機は、ロータアセンブリの軸に沿って連続的に配置された一つもしくは複数の段(stage)を含む。発電機を冷却するには、シャフトの内径に冷却オイルがポンプで送り込まれる。冷却オイルがロータアセンブリを通流して熱を除去する。冷却オイルが加圧され、シャフトに物理的に近接するコンポーネントを冷却するようにシャフトから直接オイルが噴射される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シャフトに冷却オイルをポンプで通すことができず、あるいは冷却されるコンポーネントにオイルがシャフトからスプレーで直接届かない場合、このような冷却、潤滑方式は効果的でない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、入れ子状の段(nested stage)を有する発電機用のハイブリッド・カスケージング(hybrid cascading)潤滑冷却システムが提供される。この発電機は、内側の入れ子段と、外側の入れ子段と、を含み、内側の入れ子段は、外側の入れ子段に関して、発電機の中心軸を中心として径方向に入れ子状に配置される。このハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システムは、油だめからオイルを引き込むようにオイルポンプインレットチューブに連結されたオイルポンプと、ポンプにより引き込んだオイルを発電機中に分配するための冷却コアと、を含む。ロータ部材が発電機の内側入れ子段および外側入れ子段に連結される。ロータ部材は、発電機の中心軸の周りを回転するときに、ロータ部材に設けられた内側段径方向孔および外側段径方向孔を通して冷却コアからオイルを遠心的に送り出す。
【0007】
さらに本発明の別の態様では、入れ子状の段を有する発電機用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システムの製造方法が提供される。発電機は、内側の入れ子段と、外側の入れ子段と、を含み、内側の入れ子段は、外側の入れ子段に関して、発電機の中心軸を中心として径方向に入れ子状に配置される。この方法は、油だめからオイルを引き込むためのオイルポンプインレットチューブにオイルポンプを連結し、ポンプにより引き込んだオイルを発電機中に分配するように冷却器コアを配置することを含む。さらにこの方法は、発電機の内側の入れ子段および外側の入れ子段にロータ部材を連結することを含む。ロータ部材は、発電機の中心軸の周りを回転するときに、ロータ部材の内側段径方向孔および外側段径方向孔を通して冷却コアからオイルを遠心的に送り出すように構成される。
【0008】
これらおよびその他の利点および特徴は、図面とともに以下の記載からより明らかとなるであろう。
【0009】
本発明と見なされる対象は、明細書の末尾にある請求項に特定して指摘されるとともに明確にクレームされる。本発明の上記のおよびその他の特徴、利点は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発電機が取り付けられた動力伝達装置の一実施例を示す図である。
【図2】入れ子状の複数の段を有する発電機用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システムの一実施例の断面図である。
【図3】発電機中の一体型の配管の一実施例の断面図である。
【図4】入れ子状の複数の段を有する発電機用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システムの一実施例の断面図である。
【図5】入れ子状の複数の段を有する発電機用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システムの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は一実施例の動力伝達装置100を示す。一実施例では、動力伝達装置100はトラックもしくはタンク等の陸上車の動力伝達装置の一部である。動力伝達装置100は、エンジン104と、トランスミッション106との間に挿入された発電機(electrical machine)102を含む。一実施例では、発電機102は、エンジン104およびトランスミッション106における既設の連結部と位置合わせされた連結部108を有する。したがって、発電機102が動力伝達装置100内に挿入されたときに、エンジン104やトランスミッション106などの既設のコンポーネントに与える影響は最小限に抑えられる。発電機102がエンジン104とトランスミッション106との間に図示されているが、動力伝達装置100におけるコンポーネントの配置はこれに限定されないことを理解されたい。例えば、クラッチのような追加のコンポーネントが動力伝達装置100に挿入されてもよく、また発電機102の直径がより小さいほうが望ましい場合に、発電機102がトランスミッション106の反対側の端部に取り付けられてもよい。発電機102は機械回転に応じて電流および電圧を発生させる発電機もしくはオルタネータでもよい。
【0012】
一実施例では、発電機102に外部管110が取り付けられて、熱交換器/リリーフバルブ/フィルタアセンブリ(ERFA)112との間でオイルが送給される。発電機102中を循環するオイルが発電機102により発生する熱を吸収するとともに、発電機102のコンポーネントを潤滑する。また発電機102内のオイルは、発電機102内部からの粒状物質やその他の細塵を捕獲する。一つ以上のポンプが外部管110を通してオイルをERFA112へと循環させ、オイルが発電機102へと戻る前にここでオイルが冷却、濾過される。
【0013】
図2は、図1の発電機102のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム200の一実施例の断面図を示す。図2に示される発電機102の実施例では、発電機102は、外側段ステータ202と、外側段ロータ204と、回転式整流器アセンブリ206と、内側段ステータ208と、内側段ロータ210と、を備えた入れ子状の巻線形電界発生器である。外側段ロータ204および内側段ロータ210は、ドライブシャフト214の回転によって駆動するロータ部材212に取り付けられる。一実施例では、発電機102の中心軸216のまわりをドライブシャフト214が回転して、ロータ部材212を回転させる。ロータ部材212が回転しているとき、外側段ステータ202および内側段ステータ208は静止している。回転式整流器アセンブリ206は、ロータ部材212上の外側段ロータ204もしくは内側段ロータ210に近接するように配置されてもよく、外側段ロータ204および内側段ロータ210の両方に電気的に連結される。回転式整流器アセンブリ206を支持して配線を固定するようにワイヤカバー218が用いられてもよい。
【0014】
ドライブシャフト214が回転するに従い、ロータ部材212が内側段ロータ210を内側段ステータ208と近接するように回転させ、外側段ロータ204は外側段ステータ202と近接するように回転する。バッテリもしくはオルタネータ(図示せず)から電流等の直流源を内側段ステータ208に加えることにより直流磁界が生じ、ロータ部材212が回転するに従い、内側段ロータ210内に交流を誘導する界磁の伝達(field communication)を確立する。内側段ロータ210内の交流が回転式整流器アセンブリ206を通流して外側段ロータ204内に直流を発生させる。外側段ロータ204内の直流が直流磁界を作り出し、ロータ部材212が回転するに従い、外側段ステータ202内に交流を誘導する界磁の伝達を確立する。外側段ステータ202内の交流は外部出力整流器アセンブリを介して直流に変換することができる。したがって、発電機102は、ドライブシャフト214の機械回転を高電圧直流電源に変換することができる。
【0015】
図2から分かるように、外側段ステータ202、外側段ロータ204、内側段ステータ208、および内側段ロータ210は、中心軸216のまわりに同心円状に配置され、内側段ステータ208および内側段ロータ210は、外側段ステータ202および外側段ロータ204に関して発電機102の中心軸216の周りに径方向に入れ子状にされる。発電機102がエンジン104とトランスミッション106との間に挿入されて連結部108で取り付けられたとき、この構成により、図1の動力伝達装置100の全長が最小化されるという効果がもたらされる。
【0016】
ドライブシャフト214から広がるように離間した入れ子状の段の入れ子状ロータおよびステータの配列は本発明の範囲において様々である。例えば、図2に示すように、内側段ロータ210と中心軸216との径方向距離は、内側段ステータ208と中心軸216との径方向距離に比べて小さくてもよい。別の構成では、内側段ロータ210と中心軸216との径方向距離は、内側段ステータ208と中心軸216との径方向距離に比べて大きくてもよく、これは例えば図2に示す内側段ステータ208および内側段ロータ210の相対位置を逆にしたものである。同様に、図2に示すように、外側段ロータ204と中心軸216との径方向距離は、外側段ステータ202と中心軸216との径方向距離に比べて小さくてもよい。反対に、外側段ロータ204と中心軸216との径方向距離は、外側段ステータ202と中心軸216との径方向距離に比べて大きくてもよい。
【0017】
発電機102のコンポーネントを冷却および潤滑するように、ハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム200が発電機102に一体化される。オイルピックアップチューブ220がオイルポンプ222に応答して油だめ224からオイルを引き込む。オイルがオイルポンプインレットチューブ226からオイルポンプ222へと引き込まれ、オイルポンプアウトレットチューブ228へと続く。このオイルはオイルポンプアウトレットチューブ228から外部管110を介して図1のERFA112へと流れ、ここでオイルから熱が排出されてオイルが濾過される。冷却、濾過されたオイルは冷却コア230に分配されるように発電機102へと戻る。回転するロータ部材212の遠心性のポンプ作用によりオイルが発電機に亘って流される。単一のオイルポンプ222のみが図2に示されるが、冗長性のためや各々のオイルポンプ222のサイズをコンパクトに保つようにオイルポンプ222の複数の例を利用することができる。オイルポンプ222として、ベーン、ピストン、もしくは遠心式容積移送式ポンプ(centrifugal positive displacement pumps)などの様々な種類のポンプを利用することができる。さらに、油だめ224から図1のERFA112へとオイルを移送するように、内部もしくは外部で一体化された一次ポンプもしくは個別の複数のポンプを用いることができる。
【0018】
発電機102の別の実施例として、永久磁石発電機/モータ、誘導発電機/モータ、およびスイッチド・リラクタンス発電機/モータを含む。これらの代替実施例では、発電機102の入れ子状の段は維持しながらも、外側段ステータ202、外側段ロータ204、回転式整流器アセンブリ206、内側段ステータ208、および/または内側段ロータ210のうち一つもしくは複数が取り除かれてもよく、もしくは置き換えられてもよい。例えば、ロータ部材212は、ドライブシャフト214上に2つの別々の永久磁石発電機を入れ子状にすることが可能であり、ここでハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム200が潤滑および冷却を行う。
【0019】
図3は発電機102の一体式の配管の一実施例の断面図を示す。図3に示すように、2つのオイルポンプ222が、油だめ224から2つのオイルポンプインレットチューブ226へと分岐するオイルピックアップチューブ220を用いてオイルを引き込むことができる。オイルポンプ222は、図2のドライブシャフト214により歯車装置を介して駆動されて油だめ224からオイルを取り込み、図1のERFA112へと汲み出す容積式ポンプである。オイルが各オイルポンプ222から各々のオイルポンプアウトレットチューブ228へと流れてポート302へと流れ、ここで図1のERFA112へのオイル流が合流する。図1のERFA112から戻ったオイルは図2の冷却コア230に流れ込み、ここでオイルが発電機102内に分配され、最終的に油だめ224へと戻る。
【0020】
図4は発電機102用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム400を示す。ハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム400は、図2のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム200の実施例の詳細な図を表す。図4に示すように、オイルがポート402から発電機102に入り、オイルを分配するように冷却コア230へと入る。オイルは図1のERFA112からポート402へと流れる。冷却コア230内のオイルの一部はポート404へと流れて発電機102の熱交換器406を冷却し、そしてこのオイルが図2,3の油だめ224へと戻される。また、オイルは冷却コア230を通ってポート408,410へと通流する。ポート408では、オイルが冷却コア230を出てベアリング412、およびギア414へと噴射され、そしてベアリング418にオイルを供給する遠心式油受け416中に噴射される。ギア414は図2,3における一つもしくは複数のオイルポンプ222を駆動するように用いられる。
【0021】
ベアリング412,418により、発電機102が自己支持される。別の実施例では、図1のエンジン104のクランクシャフトがロータ部材212に直接連結され、ここでロータ部材212がエンジン104のフライホイールとして機能する。この実施例においては、エンジン104のクランクシャフトベアリングがロータ部材212の回転を支持するのに十分であるため、ベアリング412,418を省くことができる。外側段ステータ202および内側段ステータ208をエンジン104に直接連結することができる。したがって、ベアリング412,418が省かれる場合、オイルはベアリング412,418には噴霧されない。このような実施例では遠心式油受け416を省いてもよい。
【0022】
ポート408では、冷却オイルが冷却コア230を通過して、内側段遠心式油受け420内に噴射される。内側段遠心式油受け420では、回転するロータ部材212の遠心性のポンプ作用によりオイルが与圧され、オイルが内側段ロータ210の巻線422を横断して流れるように案内されて、内側段ロータ210に冷却オイル流を供給する。オイルは、ロータ部材212のロータ巻線保持バンド426の円周にある内側段径方向孔424を通過する前に、内側段遠心式油受け420に捕集される。オイルはまた、内側段遠心式油受け428に捕集されて内側段ロータ210を冷却する。
【0023】
オイルが内側段遠心式油受け428から内側段ステータ208の巻線430を横切るように噴射されて内側段ステータ208に冷却オイル流を供給する。オイルが内側段ステータ208を通過すると、このオイルは外側段遠心式油受け432および外側段遠心式油受け434により捕集される。また外側段遠心式油受け432は、冷却コア230からの追加の冷却オイルをポート410から受け取る。外側段遠心式油受け432のオイルは、ロータ部材212の外側段径方向孔436を通流する前に、回転するロータ部材212の遠心性のポンプ作用により再び与圧される。オイルが外側段径方向孔436を通過すると、オイルが外側段ロータ204の巻線438を横断して流れるように案内されて、外側段ロータ204に冷却オイルを供給する。
【0024】
オイルが外側段ロータ204を通過して外側段ステータ202の巻線440上に噴射される前に、オイルは外側段遠心式油受け434に捕集される。オイルが巻線440に噴射された後、図2,3に示すように、オイルは発電機102の油だめ224に重力によって押し戻される。
【0025】
オイルを油だめ224から図1のERFA112へと通流させるコンポーネントと、発電機102内にオイルを分配させるようにするコンポーネントとの組み合わせにより、ハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム400を提供する。しかしながら、ERFA112はハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム400に含まれる必要がない。発電機102内のオイルの分配に回転するロータ部材212の遠心性のポンプ作用を利用して、オイルを発電機102全体に亘って通流させるようにするための推進力を提供する。発電機コア442に供給されたオイルは捕集され、内側段径方向孔424を通過して発電機102の内側入れ子段444へと供給される。内側の入れ子段444のオイルは外側の入れ子段446に向かって遠心力によって送り出され、ここでオイルが外側段径方向孔436を通って外側の入れ子段446に移動する前にポート410から補充のオイルが追加される。内側の入れ子段444は内側段ステータ208および内側段210を含み、外側の入れ子段446は外側段ステータ202および外側段ロータ204を含む。内側の入れ子段444は発電機102の中心軸216の周りに外側の入れ子段446に対して径方向に入れ子にされる。別の実施例では、内側入れ子段444および外側入れ子段446は、巻線の代わりに磁石などを用いるその他の界磁発生コンポーネントを含む。さらに、内側入れ子段444および外側入れ子段446は電気的に独立しており、発電機102からそれぞれ独立した出力電圧をもたらす。
【0026】
内側段遠心式油受け420,428と外側段遠心式油受け432,434との間のオイルの流れは、オイルが遠心式油受けの間を移動するカスケード冷却の役割を果たす。発電機102内部のロータ部材212の形状は内側段遠心式油受け420および外側段遠心式油受け432を形成し、これらに内側段径方向孔424および外側段径方向孔436が設けられて、オイルを遠心力により径方向外側に移動させる。内側段径方向孔424および外側段径方向孔436は、内側段遠心式油受け420および外側段遠心式油受け432から各熱源へとオイルを冷却および潤滑のために案内する。
【0027】
図5は、図1〜4の発電機102のような入れ子状の段を有する発電機のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム400の製造方法500を表す。先に述べたように、内側の入れ子段444は発電機102の中心軸216のまわりに外側入れ子段446に対して径方向に入れ子にされている。内側の入れ子段444は内側段ステータ208および内側段ロータ210を含む。外側の入れ子段446は外側段ステータ202および外側段ロータ204を含む。
【0028】
ブロック502では、油だめ224からオイルを汲み上げるようにオイルポンプ222がオイルポンプインレットチューブ226に連結される。所望の流量やサイジングの制約に応じて追加のオイルポンプ222を用いることができる。例えば、図3に示されるように、油だめ224からオイルを引き込むように第2のオイルポンプ222が第2のオイルポンプインレットチューブ226に連結される。第2のオイルポンプ222に第2のオイルポンプアウトレットチューブ228が連結されてもよい。図3のポート302がオイルポンプアウトレットチューブ228および第2のオイルポンプアウトレットチューブ228に連結されて、図1のERFA112へとオイル流を案内する前に、オイルポンプ222および第2のオイルポンプ222からのオイル流を合流させる。冷却コア230はERFA112から戻ったオイルを収容する。
【0029】
ブロック504では、発電機102内に汲み上げられたオイルを分配するように冷却コア230が配置される。冷却コア230に連結されたポート404を通してオイルが案内されて、発電機102の熱交換機406を冷却する。また冷却コア230に連結されたポート408を通してオイルが案内されて、発電機102のベアリング412およびギア414を冷却および潤滑する。ポート408が遠心式油受け416にオイルを供給してもよく、次いでベアリング418にオイルを供給する。またポート408は内側の入れ子段444の内側段遠心式油受け420にオイルを供給する。冷却コア230にポート410を連結してもよく、このポート410は、外側の入れ子段446の外側段遠心式油受け432において、追加のオイルを内側の入れ子段444からのオイルと混合させるための流路を提供する。
【0030】
ブロック506では、内側の入れ子段444および外側の入れ子段446にロータ部材212が連結される。例えば、ロータ部材212は、内側段ロータ210および外側段ロータ204に連結される。ロータ部材212は、発電機102の中心軸216のまわりを回転するときに、ロータ部材212の内側段径方向孔424および外側段径方向孔436を通して冷却コア230からオイルを遠心的に送り出す(centrifugally pump)ように構成される。内側段径方向孔424は、内側段遠心式油受け420から内側入れ子段444を通り抜けるオイルの流路を提供し、これにより内側段ステータ208および内側段ロータ210を冷却および潤滑する。外側段径方向孔436は、外側段遠心式油受け432から外側入れ子段446を通り抜けるオイルの流路を提供し、これにより外側段ステータ202および外側段ロータ204を冷却および潤滑する。ロータ部材212の回転により、発電機コア442から内側入れ子段444へ、そして外側入れ子段446へとオイルを段階的に流す(cascade)遠心的なポンプ力を付与する。
【0031】
本明細書に記載のように、図5のプロセス500を介して製造されたハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム400は発電機102と一体化される。発電機102は、例えば図1のエンジン104およびトランスミッション106に連結するように、連結部108を介して動力伝達装置100にインライン状に連結される。エンジン104、発電機102、およびトランスミッション106は、図2のドライブシャフト214により駆動される。中心軸216の近傍もしくは中心軸から離間した位置に種々のコンポーネントを配置するように、内側段ロータ210、内側段ステータ208、外側段ロータ204、および外側段ステータ202の様々な配置を用いることができる。質量の大きいコンポーネントを中心軸216に近い場所に配置すると発電機102の慣性モーメントおよびその他の設計/性能パラメータに影響を及ぼす可能性がある。
【0032】
技術的効果として、動力伝達装置に取り付け可能な、入れ子状の段を有する発電機の冷却および潤滑が挙げられる。図2,4に示す遠心式の油受けの形状を用いた場合、発電機の内側段および外側段の入れ子状の設計により、短い軸方向長さに対してエネルギー密度の高い発電機を実装することができる。吸引力を与えるための容積式ポンプと、入れ子状の段による遠心性のポンプ作用とを組み合わせることにより、発電機の潤滑および冷却に対する信頼性の高いハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システムを構築している。
【0033】
限られた数の実施例のみに関して本発明を詳述したが、本発明はこれらの開示の実施例のみに限定されないことを理解されたい。むしろ、ここでは記載されていないが、本発明の精神および範囲に対応する任意の変形、変更、置換、もしくは同等の配置が、本発明に組み込まれるように修正されうる。さらに、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明の態様は、記載の実施例の一部のみを含みうることを理解されたい。したがって、本発明は、上記の記載によって限定されると見るのではなく、付記の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0034】
102…発電機
200…ハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム
212…ロータ部材
216…中心軸
222…オイルポンプ
224…油だめ
226…オイルポンプインレットチューブ
230…冷却コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機(102)用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)であって、前記発電機(102)は、内側の入れ子段(444)と、外側の入れ子段(446)と、を備え、前記内側の入れ子段(444)は、前記外側の入れ子段(446)に関して、前記発電機(102)の中心軸(216)を中心として径方向に入れ子状に配置されており、さらに、
油だめ(224)からオイルを引き込むためのオイルポンプインレットチューブ(226)に連結されたオイルポンプ(222)と、
ポンプにより引き込んだオイルを前記発電機(102)内に分配するように配置された冷却コア(230)と、
前記発電機(102)の前記内側の入れ子段(444)および前記外側の入れ子段(446)に連結されたロータ部材(212)であって、前記発電機(102)の中心軸(216)の周りを回転するときに、該ロータ部材(212)に設けられた内側段径方向孔(424)および外側段径方向孔(436)を通して前記冷却コア(230)からのオイルを遠心的に送り出すように構成されたロータ部材(212)と、
を備えたハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項2】
前記発電機(102)の熱交換器(406)にオイルを案内するように前記冷却コア(230)に連結されたポート(404)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項3】
前記発電機(102)の第1のベアリング(412)およびギア(414)にオイルを案内するように前記冷却コア(230)に連結されたポート(408)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項4】
前記ポート(408)は、オイルを遠心式油受け(416)に供給するとともに、前記遠心式油受け(416)は、オイルを第2のベアリング(418)に供給することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項5】
前記ポート(408)は、前記内側の入れ子段(444)の内側段遠心式油受け(420)にオイルを供給することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項6】
前記内側段径方向孔(424)は、前記内側段遠心式油受け(420)から前記内側入れ子段(444)を通り抜けるオイルの流路を提供することを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項7】
前記冷却コア(230)に連結されたポート(410)をさらに備えるとともに、前記ポート(410)は、前記外側の入れ子段(446)の外側段遠心式油受け(432)において、追加のオイルを前記内側の入れ子段(444)からのオイルと混合させるための流路を提供することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項8】
前記外側段径方向孔(436)は、前記外側段遠心式油受け(432)から前記外側入れ子段(446)を通り抜けるオイルの流路を提供することを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項9】
前記オイルポンプ(222)から熱交換器/リリーフバルブ/フィルタアセンブリ(112)にオイル流を案内するためのオイルポンプアウトレットチューブ(228)をさらに備え、前記冷却コア(230)が、熱交換器/リリーフバルブ/フィルタアセンブリ(112)から戻るオイルを受け入れることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項10】
前記油だめ(224)からオイルを引き込むための第2のオイルポンプインレットチューブ(226)に連結された第2のオイルポンプ(222)と、
前記第2のオイルポンプ(222)に連結された第2のオイルポンプアウトレットチューブ(228)と、
前記オイルポンプアウトレットチューブ(228)および第2のオイルポンプアウトレットチューブ(228)からのオイル流を、前記熱交換器/リリーフバルブ/フィルタアセンブリ(112)に案内する前に合流させるポート(302)と、
をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)。
【請求項11】
発電機(102)用のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法であって、前記発電機(102)は、内側の入れ子段(444)と、外側の入れ子段(446)と、を備え、前記内側の入れ子段(444)は、前記外側の入れ子段(446)に関して、前記発電機(102)の中心軸(216)を中心として径方向に入れ子状に配置されているものにおいて、
油だめ(224)からオイルを引き込むためのオイルポンプインレットチューブ(226)にオイルポンプ(222)を連結し、
ポンプにより引き込んだオイルを前記発電機(102)内に分配するように冷却器コア(230)を配置し、
前記発電機(102)の前記内側の入れ子段(444)および前記外側の入れ子段(446)にロータ部材(212)を連結することを備え、
前記ロータ部材(212)は、前記発電機(102)の中心軸(216)の周りを回転するときに、該ロータ部材(212)に設けられた内側段径方向孔(424)および外側段径方向孔(436)を通して前記冷却コア(230)からのオイルを遠心的に送り出すように構成されることを特徴とするハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項12】
前記冷却コア(230)に連結されたポート(404)を通して前記発電機(102)の熱交換器(406)へとオイルを案内することをさらに備えた請求項11に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項13】
前記冷却コア(230)に連結されたポート(408)を通して前記発電機(102)の第1のベアリング(412)およびギア(414)にオイルを案内することをさらに備えた請求項11に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項14】
前記ポート(408)は、オイルを遠心式油受け(416)に供給するとともに、前記遠心式油受け(416)は、オイルを第2のベアリング(418)に供給することを特徴とする請求項13に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項15】
前記ポート(408)は、前記内側の入れ子段(444)の内側段遠心式油受け(420)にオイルを供給することを特徴とする請求項13に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項16】
前記内側段径方向孔(424)は、前記内側段遠心式油受け(420)から前記内側入れ子段(444)を通り抜けるオイルの流路を提供することを特徴とする請求項15に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項17】
前記冷却コア(230)にポート(410)を連結することをさらに備えるとともに、前記ポート(410)は、前記外側の入れ子段(446)の外側段遠心式油受け(432)において、追加のオイルを前記内側の入れ子段(444)からのオイルと混合させるための流路を提供することを特徴とする請求項11に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項18】
前記外側段径方向孔(436)は、前記外側段遠心式油受け(432)から前記外側入れ子段(446)を通り抜けるオイルの流路を提供することを特徴とする請求項17に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項19】
熱交換器/リリーフバルブ/フィルタアセンブリ(112)にオイル流を案内するように前記オイルポンプ(222)にオイルポンプアウトレットチューブ(228)を連結することをさらに備え、前記冷却コア(230)が、熱交換器/リリーフバルブ/フィルタアセンブリ(112)から戻るオイルを受け入れることを特徴とする請求項11に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。
【請求項20】
前記油だめ(224)からオイルを引き込むための第2のオイルポンプインレットチューブ(226)に第2のオイルポンプ(222)を連結し、
第2のオイルポンプ(222)に第2のオイルポンプアウトレットチューブ(228)を連結し、
前記オイルポンプ(222)および前記第2のオイルポンプ(222)からのオイル流を、前記熱交換器/リリーフバルブ/フィルタアセンブリ(112)に案内する前に合流させるように、前記オイルポンプアウトレットチューブ(228)および前記第2のオイルポンプアウトレットチューブ(228)にポート(302)を連結することをさらに備えた請求項19に記載のハイブリッド・カスケージング潤滑冷却システム(200,400)の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−24411(P2011−24411A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158356(P2010−158356)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】