ハイブリッド方式のコンバイン
【課題】コンバインによる収穫作業時に、グレンタンク内へ放出される穀粒の運動エネルギーを回生して電力に変換し、この電力によって駆動する電動モータで機体各部の駆動をアシストすることで、燃料消費量を低減する。
【解決手段】コンバイン(1)のグレンタンク(5)内部に揚穀筒(19)から放出される穀粒によって回転する羽根車(12)を設け、この羽根車(12)の回転で発電する発電機(25)と発電した電力を蓄えるバッテリ(29)を設け、コンバイン(1)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を前記バッテリ(29)からの電力で駆動する構成とする。
【解決手段】コンバイン(1)のグレンタンク(5)内部に揚穀筒(19)から放出される穀粒によって回転する羽根車(12)を設け、この羽根車(12)の回転で発電する発電機(25)と発電した電力を蓄えるバッテリ(29)を設け、コンバイン(1)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を前記バッテリ(29)からの電力で駆動する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として内燃機関(エンジン)と電動モータを搭載したハイブリッド方式のコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの動力源は、内燃機関(エンジン)が使用されているが、省燃費や低騒音化の目的で電動モータを併用したいわゆるハイブリッド方式のコンバインが提案されている。
【0003】
例えば、特開2001−320805号公報に記載の発明は、エンジンを最高出力付近の回転数に固定して収穫作業を行い、この収穫作業中のエンジン余裕出力を電力に変換してバッテリに蓄えておき、このバッテリに蓄えた電力にて電動機を駆動して圃場内外における単なる移動走行を行うことが出来るようにしている。
【0004】
また、特開2004−242558号公報に記載の発明は、走行装置を駆動する内燃機関と電動モータとを備えたコンバインで、内燃機関の駆動で発電された電力をバッテリに蓄えて、このバッテリに蓄えられた電力をコンバインの動力源の一部又は全部として利用出来るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−320805号公報
【特許文献2】特開2004−242558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の発明は、エンジンを燃焼効率が高い最高出力回転数付近で常に駆動するので燃料を有効に利用することになるが、駆動余力で充電するバッテリが満充電状態になってもエンジンを高回転のままで回転を維持することになって必要以上に燃料を使用する場合もある。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明は、エンジン駆動出力を小さくしても電動モータがエンジン出力を補うことができ、エンジンからの燃焼排ガスの排出量を減らすことができ、またエンジンの振動と騒音が比較的小さくなる。
【0008】
しかしながら、これらの従来技術は、全てエンジンの駆動余力を電力としてバッテリに蓄え、その蓄えた電力で電動機を駆動して走行或は走行補助に利用するものであるために、バッテリに蓄えた電力も結局燃料を燃焼して得られたエネルギーであって、燃料消費量があまり低減されない。
【0009】
そこで、本発明では、燃料を燃焼して取り出されるエンジン出力の一部を電力に変換してバッテリに蓄えるのではなく、コンバインの収穫作業時にグレンタンク内へ揚穀されて放出される穀粒の放出エネルギーでモータを駆動して発電し、その電力をバッテリに蓄えて適宜にコンバインの駆動部に設ける電動機を駆動することで、さらに低燃費となるハイブリッド方式のコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
本発明は、コンバイン(1)のグレンタンク(5)内部に揚穀筒(19)から放出される穀粒によって回転する羽根車(12)を設け、この羽根車(12)の回転で発電する発電機(25)と発電した電力を蓄えるバッテリ(29)を設け、コンバイン(1)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を前記バッテリ(29)からの電力で駆動する構成としたことを特徴とするハイブリッド方式のコンバインとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、収穫作業中に脱穀した穀粒が揚穀筒(19)で揚穀されてグレンタンク(5)内へ放出されるが、この揚穀筒(19)から放出される穀粒の勢いで羽根車(12)を回転させ、羽根車(12)の回転で発電機(25)を回して発電し、発電した電力をバッテリ(29)に蓄え、蓄えた電力で脱穀装置(4)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を駆動するので、揚穀筒(19)から放出される穀粒の運動エネルギーを回生でき、従来のハイブリッド方式のコンバインにおけるエンジンだけの高効率利用による燃料消費量よりもさらに効果的に燃料消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの背面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】別実施例のコンバインの背面図である。
【図5】別実施例のコンバインの側面図である。
【図6】要部の平断面図である。
【図7】別実施例要部の平断面図である。
【図8】脱穀装置の側断面図である。
【図9】脱穀装置の側断面図である。
【図10】脱穀装置の側断面図である。
【図11】脱穀装置の正断面図である。
【図12】脱穀装置の側断面図である。
【図13】脱穀装置の側断面図である。
【図14】脱穀装置の側断面図である。
【図15】脱穀装置の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
まず、コンバインの機体構成について説明する。
図1と図2に示す実施例では、コンバイン1は、左右のクローラ式の走行装置2の上側に枠組みされた機台3を設け、該機台3の左側部に脱穀装置4を搭載し、該脱穀装置4の右側にグレンタンク5を搭載し、このグレンタンク5の前側下部に原動部6を設け、原動部6の上部に操縦部7を設け、操縦部7と前記脱穀装置4との前側に刈取装置8を設けている。原動部6内の搭乗ステップ下部には、バッテリ29を搭載している。
【0014】
走行装置2は、機台3の下部に左右の転輪フレーム9,9を設け、この転輪フレーム9,9に枢支した多数の転輪10,10と後端部の緊張輪11,11と前端部に取り付けた駆動スプロケット13,13と、前記転輪10,10と緊張輪11,11と駆動スプロケット13,13に亘って巻き掛けるクローラベルト14,14で構成する。エンジンの動力がミッションケース内で変速されて駆動スプロケット13,13を駆動して走行する。
【0015】
脱穀装置4は、側部にフィードチェン15を備え、内部に扱胴(図示省略)を回転自在に備えた上側の扱室と、揺動選別棚、唐箕、一番移送螺旋、二番移送螺旋等を備えた下側の選別室とから構成する。該脱穀装置4は、後述するエンジンの駆動力によって駆動する構成である。尚、該脱穀装置4の後側には、脱穀後の排藁を切断して圃場に排出する排藁カッター16を搭載する。
【0016】
刈取装置8は、分草板20や刈刃装置22や引起装置21や穀稈搬送装置を取り付けた刈取支持フレーム17を機台3の前上部に刈取枢支軸で枢支し、機台3と刈取支持フレーム17の間に刈取装置8を油圧で昇降させる昇降シリンダを介装している。
【0017】
グレンタンク5は、脱穀装置4で脱穀選別した穀粒を一時的に貯留するもので、脱穀装置4の選別部から揚穀筒19でグレンタンク5内の上部に穀粒を放出して貯留する。揚穀筒19の放出位置には放出する穀粒が当たって回転する羽根車12を設けている。羽根車12の回転軸はグレンタンク5の外壁に取り付けた発電機25を駆動して発電し、その電力をバッテリ29に蓄電する。羽根車12の揚穀筒19放出口側には穀粒が羽根車12の回転軸下側に当たるようにガイドするガイド板18を設けている。羽根車12とガイド板18の間隔は穀粒径よりも広くして詰まりが生じないようにする。
【0018】
図2に示す実施例では、羽根車12を揚穀筒19放出口の上側に設けているが、図4に示すように、揚穀筒19放出口の下側に設け、ガイド板18で穀粒が羽根車12の回転軸上側に当たるようにする。この場合には、羽根車12が穀粒の詰り防止にも良い。
【0019】
図5に示す実施例では、揚穀筒19の放出口の放出範囲前側で羽根車12の回転軸を縦方向に設けている。羽根車12の位置は揚穀筒19の放出口の放出範囲後側でも良く、羽根車12が一方方向へ回転するようにガイド板18を設ける。この実施例の場合には、穀粒をグレンタンク5内で前後に拡散し、前後に長いグレンタンク5に表面を平らにして多く穀粒を溜める効果が有る。
【0020】
羽根車12の翼板は、先端に迎え角をつけた断面形状卍状にすると穀粒の衝突で良く回転する。また、羽根車12を送風ファンの如く、放出方向に対して捩った形状にして穀粒が正面から衝突すると一方方向へ回転するようにしても良い。
【0021】
さらに、羽根車12の翼板には穀粒の当たる面にゴム板のような弾性体を張り付けたり、翼板自体を樹脂製にしたりして穀粒が損傷しないようにすると良い。
なお、発電機25は粉塵による故障を防ぐためにグレンタンク5の外部に設ける方が良いが、防塵対策を充分にすればグレンタンク5内に設けても良い。
【0022】
グレンタンク5の後部には、縦送りオーガ56と横送りオーガ57を設けて、グレンタンク5内の穀粒を畦道で待っているトラックの穀粒タンクへ移送して排出する。
図6は、脱穀装置4の回転各部に適宜設ける駆動を補助する補助モータ40の駆動力補助構成の実施例で、ギヤケース69に、エンジンの駆動回転が伝動される入力プーリ70が固定された第一入力軸71を軸受72で回転自在に軸受けする。そして、該第一入力軸71と同一軸芯上に、該第一入力軸71から第一ワンウェイクラッチ73を介して駆動される第一出力軸75を設け、該第一出力軸75の端部に傘歯車状の第一出力ギヤ74を固定する。
【0023】
また、ギヤケース69の第一入力軸71と反対側には、第二入力軸77を軸受78で回転自在に軸受けする。そして、該第二入力軸77と同一軸芯上に、該第二入力軸77から第二ワンウェイクラッチ79を介して駆動される第二出力軸81を設け、該第二出力軸81の端部に傘歯車状の第二出力ギヤ80を固定する。そして、ギヤケース69の外側に変速装置(増速伝動装置または減速伝動装置)82を備えた補助モータ40を取り付け、該補助モータ40によって駆動される変速装置82の出力軸を前記第二入力軸77にスプライン勘合させて取り付ける。
【0024】
そして、第一出力軸75と第二出力軸81に直交して出力軸84をギヤケース69に軸受85、86で回転自在に軸受けする。出力軸84の中間部には傘歯車状の入力ギヤ87を固定し、出力軸84の伝動ギヤケース69から側方に突出する軸端部に駆動側回転体89を固定する。そして、出力軸84に固定した入力ギヤ87に対して、第一出力軸75に固定した第一出力ギヤ74と第二出力軸81に固定した第二出力ギヤ80との両方が噛み合う。
【0025】
以上の構成により、通常は第一ワンウェイクラッチ73が作用して第一入力軸71の回転(すなわち、エンジンの回転)を第一出力ギヤ74と入力ギヤ87で出力軸84に伝動しているが、エンジンの出力が低下して第一入力軸71の回転が低下すると第二ワンウェイクラッチ79が作用して補助モータ40の駆動力で回転する第二入力軸77の回転が第二出力ギヤ80と入力ギヤ87で出力軸84に伝動される。
【0026】
図7は、脱穀装置4の回転各部に適宜設ける駆動を補助する補助モータ40のパラレル動力取出装置156の実施例で、ブラケット136へ軸受142,143で軸支したモータ軸131に、一個のサンギヤ132と三個のプラネタリーギヤ133と該プラネタリーギヤ133のキャリア135とリングギヤ134からなる遊星ギヤ機構を装着し、ブラケット136に取り付けた補助モータ40でモータ軸131を駆動するようにしている。また、キャリア135の外周にはエンジンからの動力を伝動するエンジン側ベルト137を播き掛ける第一Vベルト溝144を形成し、リングギヤ134の外周には脱穀装置4の被駆動側へ動力を伝動する被駆動側ベルト138を播き掛ける第二Vベルト溝145を形成している。
【0027】
パラレル動力取出装置156のリングギヤ134は、エンジン側ベルト137のキャリア135を回す回転力と補助モータ141のサンギヤ132を回す回転力の調和によって一定回転数で回転する。すなわち、エンジン68の負荷が大きくてキャリア135の回転が低下すると補助モータ40がサンギヤ132を回す回転力が補ってリングギヤ134を一定回転数に維持するようになる。
【0028】
図8は、補助モータ40を脱穀装置4の脱穀入力軸45の駆動補助に使用した実施例で、脱穀入力軸45に装着した脱穀入力プーリ46に補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジンプーリ43からのエンジンベルト伝動44を行っている。脱穀入力プーリ46は回転が速い側の駆動力を受けて脱穀入力軸45に伝動するものである。
【0029】
図9は、脱穀装置4の揺動軸に装着した揺動入力プーリ47へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で揺動入力軸を回転駆動する。
【0030】
図10は、脱穀装置4の処理胴軸に装着した処理胴入力プーリ48へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で処理胴軸を回転駆動する。
【0031】
図11は、脱穀装置4の扱胴軸に装着した扱胴軸入力プーリ49へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で処理胴軸を回転駆動する。
【0032】
図12は、脱穀装置4後部のカッター入力軸に装着したカッター入力プーリ50へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動でカッター入力軸を回転駆動する。
【0033】
図13は、脱穀装置4の吸引入力軸に装着した吸引入力プーリ51へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で吸引入力軸を回転駆動する。
【0034】
図14は、脱穀装置4の一番移送螺旋軸に装着した一番螺旋入力プーリ52へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で一番移送螺旋軸を回転駆動する。
【0035】
図15は、脱穀装置4の排藁チェン駆動軸に装着した排藁チェン駆動入力プーリ53へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で排藁チェン駆動軸を回転駆動する。
【0036】
図示を省略するが、グレンタンク5の内部に乾燥風を送り込む乾燥ブロア駆動軸に前記と同様の乾燥ブロア駆動入力プーリを装着して、エンジン側動力の低下時に補助モータ40で乾燥ブロア駆動軸を駆動するようにすることも出来る。
【0037】
なお、補助モータ40は常時駆動しても良いが、エンジン回転の低下を検出してその時に駆動するようにした方がより省燃費になる。
【符号の説明】
【0038】
1 コンバイン
5 グレンタンク
12 羽根車
25 発電機
29 バッテリ
40 駆動補助モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として内燃機関(エンジン)と電動モータを搭載したハイブリッド方式のコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの動力源は、内燃機関(エンジン)が使用されているが、省燃費や低騒音化の目的で電動モータを併用したいわゆるハイブリッド方式のコンバインが提案されている。
【0003】
例えば、特開2001−320805号公報に記載の発明は、エンジンを最高出力付近の回転数に固定して収穫作業を行い、この収穫作業中のエンジン余裕出力を電力に変換してバッテリに蓄えておき、このバッテリに蓄えた電力にて電動機を駆動して圃場内外における単なる移動走行を行うことが出来るようにしている。
【0004】
また、特開2004−242558号公報に記載の発明は、走行装置を駆動する内燃機関と電動モータとを備えたコンバインで、内燃機関の駆動で発電された電力をバッテリに蓄えて、このバッテリに蓄えられた電力をコンバインの動力源の一部又は全部として利用出来るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−320805号公報
【特許文献2】特開2004−242558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の発明は、エンジンを燃焼効率が高い最高出力回転数付近で常に駆動するので燃料を有効に利用することになるが、駆動余力で充電するバッテリが満充電状態になってもエンジンを高回転のままで回転を維持することになって必要以上に燃料を使用する場合もある。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明は、エンジン駆動出力を小さくしても電動モータがエンジン出力を補うことができ、エンジンからの燃焼排ガスの排出量を減らすことができ、またエンジンの振動と騒音が比較的小さくなる。
【0008】
しかしながら、これらの従来技術は、全てエンジンの駆動余力を電力としてバッテリに蓄え、その蓄えた電力で電動機を駆動して走行或は走行補助に利用するものであるために、バッテリに蓄えた電力も結局燃料を燃焼して得られたエネルギーであって、燃料消費量があまり低減されない。
【0009】
そこで、本発明では、燃料を燃焼して取り出されるエンジン出力の一部を電力に変換してバッテリに蓄えるのではなく、コンバインの収穫作業時にグレンタンク内へ揚穀されて放出される穀粒の放出エネルギーでモータを駆動して発電し、その電力をバッテリに蓄えて適宜にコンバインの駆動部に設ける電動機を駆動することで、さらに低燃費となるハイブリッド方式のコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
本発明は、コンバイン(1)のグレンタンク(5)内部に揚穀筒(19)から放出される穀粒によって回転する羽根車(12)を設け、この羽根車(12)の回転で発電する発電機(25)と発電した電力を蓄えるバッテリ(29)を設け、コンバイン(1)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を前記バッテリ(29)からの電力で駆動する構成としたことを特徴とするハイブリッド方式のコンバインとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、収穫作業中に脱穀した穀粒が揚穀筒(19)で揚穀されてグレンタンク(5)内へ放出されるが、この揚穀筒(19)から放出される穀粒の勢いで羽根車(12)を回転させ、羽根車(12)の回転で発電機(25)を回して発電し、発電した電力をバッテリ(29)に蓄え、蓄えた電力で脱穀装置(4)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を駆動するので、揚穀筒(19)から放出される穀粒の運動エネルギーを回生でき、従来のハイブリッド方式のコンバインにおけるエンジンだけの高効率利用による燃料消費量よりもさらに効果的に燃料消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの背面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】別実施例のコンバインの背面図である。
【図5】別実施例のコンバインの側面図である。
【図6】要部の平断面図である。
【図7】別実施例要部の平断面図である。
【図8】脱穀装置の側断面図である。
【図9】脱穀装置の側断面図である。
【図10】脱穀装置の側断面図である。
【図11】脱穀装置の正断面図である。
【図12】脱穀装置の側断面図である。
【図13】脱穀装置の側断面図である。
【図14】脱穀装置の側断面図である。
【図15】脱穀装置の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
まず、コンバインの機体構成について説明する。
図1と図2に示す実施例では、コンバイン1は、左右のクローラ式の走行装置2の上側に枠組みされた機台3を設け、該機台3の左側部に脱穀装置4を搭載し、該脱穀装置4の右側にグレンタンク5を搭載し、このグレンタンク5の前側下部に原動部6を設け、原動部6の上部に操縦部7を設け、操縦部7と前記脱穀装置4との前側に刈取装置8を設けている。原動部6内の搭乗ステップ下部には、バッテリ29を搭載している。
【0014】
走行装置2は、機台3の下部に左右の転輪フレーム9,9を設け、この転輪フレーム9,9に枢支した多数の転輪10,10と後端部の緊張輪11,11と前端部に取り付けた駆動スプロケット13,13と、前記転輪10,10と緊張輪11,11と駆動スプロケット13,13に亘って巻き掛けるクローラベルト14,14で構成する。エンジンの動力がミッションケース内で変速されて駆動スプロケット13,13を駆動して走行する。
【0015】
脱穀装置4は、側部にフィードチェン15を備え、内部に扱胴(図示省略)を回転自在に備えた上側の扱室と、揺動選別棚、唐箕、一番移送螺旋、二番移送螺旋等を備えた下側の選別室とから構成する。該脱穀装置4は、後述するエンジンの駆動力によって駆動する構成である。尚、該脱穀装置4の後側には、脱穀後の排藁を切断して圃場に排出する排藁カッター16を搭載する。
【0016】
刈取装置8は、分草板20や刈刃装置22や引起装置21や穀稈搬送装置を取り付けた刈取支持フレーム17を機台3の前上部に刈取枢支軸で枢支し、機台3と刈取支持フレーム17の間に刈取装置8を油圧で昇降させる昇降シリンダを介装している。
【0017】
グレンタンク5は、脱穀装置4で脱穀選別した穀粒を一時的に貯留するもので、脱穀装置4の選別部から揚穀筒19でグレンタンク5内の上部に穀粒を放出して貯留する。揚穀筒19の放出位置には放出する穀粒が当たって回転する羽根車12を設けている。羽根車12の回転軸はグレンタンク5の外壁に取り付けた発電機25を駆動して発電し、その電力をバッテリ29に蓄電する。羽根車12の揚穀筒19放出口側には穀粒が羽根車12の回転軸下側に当たるようにガイドするガイド板18を設けている。羽根車12とガイド板18の間隔は穀粒径よりも広くして詰まりが生じないようにする。
【0018】
図2に示す実施例では、羽根車12を揚穀筒19放出口の上側に設けているが、図4に示すように、揚穀筒19放出口の下側に設け、ガイド板18で穀粒が羽根車12の回転軸上側に当たるようにする。この場合には、羽根車12が穀粒の詰り防止にも良い。
【0019】
図5に示す実施例では、揚穀筒19の放出口の放出範囲前側で羽根車12の回転軸を縦方向に設けている。羽根車12の位置は揚穀筒19の放出口の放出範囲後側でも良く、羽根車12が一方方向へ回転するようにガイド板18を設ける。この実施例の場合には、穀粒をグレンタンク5内で前後に拡散し、前後に長いグレンタンク5に表面を平らにして多く穀粒を溜める効果が有る。
【0020】
羽根車12の翼板は、先端に迎え角をつけた断面形状卍状にすると穀粒の衝突で良く回転する。また、羽根車12を送風ファンの如く、放出方向に対して捩った形状にして穀粒が正面から衝突すると一方方向へ回転するようにしても良い。
【0021】
さらに、羽根車12の翼板には穀粒の当たる面にゴム板のような弾性体を張り付けたり、翼板自体を樹脂製にしたりして穀粒が損傷しないようにすると良い。
なお、発電機25は粉塵による故障を防ぐためにグレンタンク5の外部に設ける方が良いが、防塵対策を充分にすればグレンタンク5内に設けても良い。
【0022】
グレンタンク5の後部には、縦送りオーガ56と横送りオーガ57を設けて、グレンタンク5内の穀粒を畦道で待っているトラックの穀粒タンクへ移送して排出する。
図6は、脱穀装置4の回転各部に適宜設ける駆動を補助する補助モータ40の駆動力補助構成の実施例で、ギヤケース69に、エンジンの駆動回転が伝動される入力プーリ70が固定された第一入力軸71を軸受72で回転自在に軸受けする。そして、該第一入力軸71と同一軸芯上に、該第一入力軸71から第一ワンウェイクラッチ73を介して駆動される第一出力軸75を設け、該第一出力軸75の端部に傘歯車状の第一出力ギヤ74を固定する。
【0023】
また、ギヤケース69の第一入力軸71と反対側には、第二入力軸77を軸受78で回転自在に軸受けする。そして、該第二入力軸77と同一軸芯上に、該第二入力軸77から第二ワンウェイクラッチ79を介して駆動される第二出力軸81を設け、該第二出力軸81の端部に傘歯車状の第二出力ギヤ80を固定する。そして、ギヤケース69の外側に変速装置(増速伝動装置または減速伝動装置)82を備えた補助モータ40を取り付け、該補助モータ40によって駆動される変速装置82の出力軸を前記第二入力軸77にスプライン勘合させて取り付ける。
【0024】
そして、第一出力軸75と第二出力軸81に直交して出力軸84をギヤケース69に軸受85、86で回転自在に軸受けする。出力軸84の中間部には傘歯車状の入力ギヤ87を固定し、出力軸84の伝動ギヤケース69から側方に突出する軸端部に駆動側回転体89を固定する。そして、出力軸84に固定した入力ギヤ87に対して、第一出力軸75に固定した第一出力ギヤ74と第二出力軸81に固定した第二出力ギヤ80との両方が噛み合う。
【0025】
以上の構成により、通常は第一ワンウェイクラッチ73が作用して第一入力軸71の回転(すなわち、エンジンの回転)を第一出力ギヤ74と入力ギヤ87で出力軸84に伝動しているが、エンジンの出力が低下して第一入力軸71の回転が低下すると第二ワンウェイクラッチ79が作用して補助モータ40の駆動力で回転する第二入力軸77の回転が第二出力ギヤ80と入力ギヤ87で出力軸84に伝動される。
【0026】
図7は、脱穀装置4の回転各部に適宜設ける駆動を補助する補助モータ40のパラレル動力取出装置156の実施例で、ブラケット136へ軸受142,143で軸支したモータ軸131に、一個のサンギヤ132と三個のプラネタリーギヤ133と該プラネタリーギヤ133のキャリア135とリングギヤ134からなる遊星ギヤ機構を装着し、ブラケット136に取り付けた補助モータ40でモータ軸131を駆動するようにしている。また、キャリア135の外周にはエンジンからの動力を伝動するエンジン側ベルト137を播き掛ける第一Vベルト溝144を形成し、リングギヤ134の外周には脱穀装置4の被駆動側へ動力を伝動する被駆動側ベルト138を播き掛ける第二Vベルト溝145を形成している。
【0027】
パラレル動力取出装置156のリングギヤ134は、エンジン側ベルト137のキャリア135を回す回転力と補助モータ141のサンギヤ132を回す回転力の調和によって一定回転数で回転する。すなわち、エンジン68の負荷が大きくてキャリア135の回転が低下すると補助モータ40がサンギヤ132を回す回転力が補ってリングギヤ134を一定回転数に維持するようになる。
【0028】
図8は、補助モータ40を脱穀装置4の脱穀入力軸45の駆動補助に使用した実施例で、脱穀入力軸45に装着した脱穀入力プーリ46に補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジンプーリ43からのエンジンベルト伝動44を行っている。脱穀入力プーリ46は回転が速い側の駆動力を受けて脱穀入力軸45に伝動するものである。
【0029】
図9は、脱穀装置4の揺動軸に装着した揺動入力プーリ47へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で揺動入力軸を回転駆動する。
【0030】
図10は、脱穀装置4の処理胴軸に装着した処理胴入力プーリ48へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で処理胴軸を回転駆動する。
【0031】
図11は、脱穀装置4の扱胴軸に装着した扱胴軸入力プーリ49へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で処理胴軸を回転駆動する。
【0032】
図12は、脱穀装置4後部のカッター入力軸に装着したカッター入力プーリ50へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動でカッター入力軸を回転駆動する。
【0033】
図13は、脱穀装置4の吸引入力軸に装着した吸引入力プーリ51へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で吸引入力軸を回転駆動する。
【0034】
図14は、脱穀装置4の一番移送螺旋軸に装着した一番螺旋入力プーリ52へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で一番移送螺旋軸を回転駆動する。
【0035】
図15は、脱穀装置4の排藁チェン駆動軸に装着した排藁チェン駆動入力プーリ53へ補助モータ40からの補助ベルト伝動42とエンジン側からのエンジンベルト伝動44を入力していて、エンジンベルト伝動44の回転が低下すると補助モータ40の駆動で排藁チェン駆動軸を回転駆動する。
【0036】
図示を省略するが、グレンタンク5の内部に乾燥風を送り込む乾燥ブロア駆動軸に前記と同様の乾燥ブロア駆動入力プーリを装着して、エンジン側動力の低下時に補助モータ40で乾燥ブロア駆動軸を駆動するようにすることも出来る。
【0037】
なお、補助モータ40は常時駆動しても良いが、エンジン回転の低下を検出してその時に駆動するようにした方がより省燃費になる。
【符号の説明】
【0038】
1 コンバイン
5 グレンタンク
12 羽根車
25 発電機
29 バッテリ
40 駆動補助モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバイン(1)のグレンタンク(5)内部に揚穀筒(19)から放出される穀粒によって回転する羽根車(12)を設け、この羽根車(12)の回転で発電する発電機(25)と発電した電力を蓄えるバッテリ(29)を設け、コンバイン(1)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を前記バッテリ(29)からの電力で駆動する構成としたことを特徴とするハイブリッド方式のコンバイン。
【請求項1】
コンバイン(1)のグレンタンク(5)内部に揚穀筒(19)から放出される穀粒によって回転する羽根車(12)を設け、この羽根車(12)の回転で発電する発電機(25)と発電した電力を蓄えるバッテリ(29)を設け、コンバイン(1)の回転各部に適宜設ける補助モータ(40)を前記バッテリ(29)からの電力で駆動する構成としたことを特徴とするハイブリッド方式のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−4631(P2011−4631A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149835(P2009−149835)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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