説明

ハイブリッド自動車の駆動装置

【課題】エンジンの動作中に外部電源による蓄電装置の充電を開始してもハイブリッド自動車が動き出さないようにして充電の信頼性・安全性を向上する。
【解決手段】エンジン2の動作中に充電器22の充電ケーブル23の電源プラグ24を外部電源である商用電源コンセントに差し込んで蓄電装置18の外部電源による充電を開始したときに、外部電源に充電器22が接続された状態を、充電制御コンピュータ25が検出し、この検出に基づいてエンジンコンピュータ15がエンジン2を停止制御して自動的に停止し、充電中にエンジン2の駆動力によってハイブリッド自動車1が動き出さないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジン及びモータの駆動力で走行するハイブリッド自動車の駆動装置に関し、詳しくは、前記モータの電源を形成する蓄電装置の外部電源による充電の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車は、モータの電源としてバッテリ(2次電池)、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)等の充電可能な蓄電装置を駆動装置に備える。
【0003】
そして、前記蓄電装置の外部電源による充電は、ハイブリッド自動車の充電器から引き出された充電ケーブルを外部電源(具体的には商用交流電源)にコネクタ接続して行なわれる。
【0004】
この場合、蓄電装置の充電器と外部電源とがケーブル接続されている充電中に何らかの原因でハイブリッド自動車が動き出すと、充電器のコネクタや充電ケーブルの破損、回路故障等が生じる。
【0005】
そして、前記コネクタ接続を検知して充電中のモータの駆動を禁止するようにしても、充電中のイグニッションキー操作、プッシュスタート操作等のスタート操作によってエンジンがかかると、このエンジンが発生する駆動力によってハイブリッド自動車が走行可能な状態になり、充電中のドライバの誤った操作やクリープ現象等によってハイブリッド自動車が動き出すおそれがある。
【0006】
そこで、前記蓄電装置と駆動制御部との間にメインリレーを配設し、このメインリレーを介した蓄電装置の電力によってモータ駆動を行なう構成のハイブリッド自動車において、前記コネクタ接続を検知したときにメインリレーを電力供給状態にすることを禁止し、外部電源による充電中はモータ駆動が行なえないようにしてハイブリッド自動車が動き出さないようにすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−223057号公報(請求項1、9、[0006]−[0009]、[0042]−[0044]、図1、図2、図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載の従来のハイブリッド自動車は、蓄電装置の充電開始前に、蓄電装置の充電器と外部電源とのケーブル接続(前記コネクタ接続)の検知に基づき、メインリレーを電力供給状態にすることを禁止し、これによって外部電源による充電中にはモータ駆動が行なえないようにしてハイブリッド自動車が動き出さないようにする。そのため、ハイブリッド自動車が、蓄電装置の電力でモータ走行を開始し、その後、走行状態に応じてエンジンも動作し、走行し続けるタイプであれば、エンジンの停止中に蓄電装置の充電器と外部電源とをケーブル接続して外部充電が開始され、前記した充電の不都合は生じない。
【0009】
しかしながら、この種のハイブリッド自動車において、例えばエンジンにより補機を駆動する場合や、エンジンの駆動力で走行を開始する場合は、イグニッションキー操作、プッシュスタート操作等のスタート操作によるエンジンスタート後、補機バッテリの充電等のために、実際の走行時だけでなく、イグニッションオンの状態中はエンジンが動作する。
【0010】
そのため、蓄電装置の外部電源による充電が、エンジンの動作中(通常はアイドリング状態中)に蓄電装置の充電器と外部電源とをケーブル接続して開始される。
【0011】
この場合、前記ケーブル接続の検知に基づいて前記メインリレーをオフして電力供給状態にすることを禁止したとしても、蓄電装置の充電中は、エンジンが動作中であり、エンジンの駆動力によってハイブリッド自動車が走行可能な状態に維持され、蓄電装置の外部電源による充電中に、エンジンの駆動力に基づき、ドライバの操作やクリープ現象等によってハイブリッド自動車が動き出し、充電器のコネクタや充電ケーブルの破損、回路故障等が生じるおそれがある。
【0012】
また、前記特許文献1等に記載の従来のハイブリッド自動車の場合、前記ケーブル接続の検知に基づいて前記メインリレーを電力供給状態にすることを禁止し、充電中にモータ駆動が行なえないようにするだけであるので、ドライバ等は外部電源による充電中に車内に自由に入ることができる。
【0013】
そのため、蓄電装置の外部電源による充電をエンジンの停止中、動作中のいずれで始める状態であっても、充電中にドライバ等が車内に入り、不用意にエンジンスタートやパーキングブレーキの解除等の操作を行なったりすると、充電中にハイブリッド自動車が動き出すおそれがあり、充電の十分な信頼性・安全性が得られない問題もある。
【0014】
本発明は、エンジンの動作中に外部電源による蓄電装置の充電を開始してもハイブリッド自動車が動き出さないようにして充電の信頼性・安全性を向上することを目的とし、また、外部電源による充電中にドライバの不用意な操作によってハイブリッド自動車が動き出さないようにして充電の信頼性・安全性を向上することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、本発明のハイブリッド自動車の駆動装置は、駆動力の発生源としてのエンジン及びモータと、前記駆動力を駆動輪に伝達する伝達手段と、前記モータの電源を形成する充電可能な蓄電装置と、前記蓄電装置の充電時に外部電源に接離自在に接続されて前記外部電源に基づく充電電力を前記蓄電装置に給電する充電接続手段とを備えたハイブリッド自動車の駆動装置であって、前記外部電源と前記充電接続手段とが接続された状態か否かを検出する検出手段と、前記外部電源と前記充電接続手段とが接続された状態を前記検出手段が検出した場合に、ドアを閉じた状態にロックするロック制御手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、検出手段の外部電源と充電接続手段とが接続された状態の検出に基づき、蓄電装置の外部電源による充電中はロック制御手段によって自動的にハイブリッド自動車のドアが閉じた状態にロックされる。
【0017】
そのため、外部電源による蓄電装置の充電中は、ドライバは車内に入ることができず、ドライバによるエンジンスタートやパーキングブレーキの解除等の不用意な操作が発生せず、不用意な操作によってハイブリッド自動車が動き出すことがなく、充電の信頼性・安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態のハイブリッド自動車の駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施形態のドアロック制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、実施形態について、図1及び図2にしたがって詳述する。
【0020】
(一実施形態)
本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明が適用されるハイブリッド自動車1の駆動装置の構成を示すブロック図であり、同図の紙面の上、下がハイブリッド自動車1の前、後に対応する。
【0022】
図1のハイブリッド自動車1は、本発明の駆動力の発生源としてのエンジン2及びモータ3が搭載され、通常はエンジン2で補機を駆動し、モータ3の駆動力で走行を開始する。
【0023】
具体的には、後述する蓄電装置18の充電状態が良好(充電量が大)であれば、モータ3で走行を開始する。そのとき、エンジン2は補機駆動のため運転される。蓄電装置18の充電状態が悪化していればエンジン走行となる。
【0024】
そして、スタータ4を備え、ドライバのエンジンスタート操作(イグニッションキー操作やプッシュスイッチ操作)により、スタータ4が補機バッテリ5の出力で瞬時駆動されると、エンジン2が始動(エンジンスタート)する。以降、エンジンオフ操作が行なわれない限り、実際の走行時だけでなく、いわゆるイグニッションオンの状態中は補機の駆動や補機バッテリ5の充電等のためにもエンジン2が動作し続ける。
【0025】
なお、補機バッテリ5は周知の補機バッテリと同様、例えば12Vの2次電池からなり、各種コンピュータや燃料噴射の電子機器等を含むハイブリッド自動車1の各種電装部品等を給電駆動する。
【0026】
そして、本実施形態のハイブリッド自動車1はオートマチック車(AT車)であり、エンジンスタート後、ドライバがパーキングブレーキレバー6を緩めてパーキングブレーキを解除し、シフトレバー8を例えばニュートラル(N)からドライブ(D)にレンジ移動(シフトチェンジ)することにより、エンジン2の駆動力がトランスミッション9を介して駆動軸10の左、右の前輪(駆動輪)1lL、11Rに伝達される。
【0027】
このとき、ドライバがブレーキペダル(図示省略)から足を離すと、アクセルペダル12を踏まなくても、クリープ現象によって前輪11L、11Rが回転し、それに伴って後軸13の左、右の後輪14L、14Rも回転し、ハイブリッド自動車1が前方に動き出す。
【0028】
さらに、通常ドライバがアクセルペダル12を踏み込むと、ハイブリッド自動車1は、蓄電装置18の充電状態が良好であればモータ3の駆動力で走行を開始し、蓄電装置18の充電状態が良好でなければエンジン2の駆動力で走行を開始する。
【0029】
このとき、モータ3の回転速度の検出及び、シフトレバー8の操作や車速、加減速等から把握される車両走行状態にしたがってクラッチ機構17がモータ3の出力軸を駆動軸10に接離する。この離接により、エンジンスタート後、車両走行状態に応じてモータ3が発生する駆動力が前輪11L、11Rに伝達され、ハイブリッド自動車1はモータ3の駆動力によって走行する。なお、トランスミッション9、駆動軸10、クラッチ機構17等が本発明の伝達手段である。
【0030】
また、エンジン2はエンジンコンピュータ15により、アクセルペダル12の加減速操作等にしたがって、燃料噴射等の電子制御が施される。トランスミッション9はトランスミッションコンピュータ16により、車速変化等に応じた変速制御が施される。
【0031】
つぎに、ハイブリッド自動車1はモータ3の電源を形成する本発明の蓄電装置18を搭載する。この蓄電装置18は、充電可能なバッテリ(2次電池)や電気二重層コンデンサ(キャパシタ)等からなり、その直流高電圧出力は開閉器19を介してインバータ20で交流に変換され、インバータ20の交流出力でモータ3が駆動される。
【0032】
蓄電装置18の充電(蓄電)状態は、蓄電装置監視コンピュータ21により、蓄電装置18の電圧、電流等を監視して把握され、その結果によってインバータ20駆動等が制御される。
【0033】
さらに、蓄電装置18には充電器22の直流出力側が接続され、充電器22の交流入力側は充電ケーブル23を介して電源プラグ24が接続されている。なお、充電器22及び充電ケーブル23、電源プラグ24が本発明の充電接続手段を形成する。
【0034】
充電器22は充電制御コンピュータ25を有する。充電制御コンピュータ25は、本発明の検出手段を形成し、充電器22の入力側の電圧から、外部電源と前記充電接続手段とが接続された状態か否かを検出する。
【0035】
蓄電装置監視コンピュータ21は、CAN等の車内LAN(図示省略)により、車内の各コンピュータ15、16等と同様、エンジン2やモータ3の動作情報、ハンドル7やレバー6、8、ペダル12等の操作情報等も収集する。
【0036】
そして、それらの情報に基づいて蓄電装置監視コンピュータ21は蓄電装置18の充電を制御する。
【0037】
ところで、充電ケーブル23及び電源プラグ24は、常時は充電器22に接続された状態で車内に収納され、蓄電装置18を外部電源で充電する際に車外に引き出されて電源プラグ24が外部電源に接離自在に接続される。
【0038】
前記外部電源は、本実施形態の場合、一般家庭等においても簡単に充電できるようにするため、例えば100Vの商用交流電源である。
【0039】
つぎに、蓄電装置18の外部充電について説明する。
【0040】
例えば、ドライバが、ハイブリッド自動車1をエンジンスタートした後、蓄電装置18の充電不足に気が付いた場合や、ハイブリッド自動車1を運転して自宅に戻った場合等に、蓄電装置18を外部電源で充電するため、車内において、シフトレバー8をDレンジ(又はNレンジ或いはPレンジ)に入れたまま、パーキングブレーキレバー6を引いてパーキングブレーキをかけると、ハイブリッド自動車1は、走行は停止しているが、エンジン2が動作している状態になる。
【0041】
このようにエンジン2を停止させていない状態でドライバは車外に出て充電ケーブル23を引き出し、その電源プラグ24の2極又は3極の電極を建物の壁面等の商用電源コンセントに差し込み、充電器22を商用交流電源に接続する場合がある。
【0042】
このとき、商用電源コンセントの交流電源の電圧が充電ケーブル23を通って充電器22の入力側に印加され、この電圧印加に基づいて、充電器22の充電制御コンピュータ25は、外部電源と充電接続手段とが接続された状態を充電可能状態として検出する。
【0043】
そして、充電制御コンピュータ25は、前記充電可能状態を検出すると、蓄電装置監視コンピュータ21の監視結果等に基づいて充電器22の直流出力を制御し、例えば周知の定電圧充電法又は定電流充電法で蓄電装置18を充電する。
【0044】
ところで、前記充電可能状態を検出したときには、ハイブリッド自動車1はエンジン2が動作中であり、エンジン2の駆動力によって走行可能な状態に維持されている。
【0045】
そのため、この状態で蓄電装置18の充電を始めると、充電中にドライバが誤ってDレンジのまま、又は、NレンジやPレンジからDレンジに入れ、パーキングブレーキを解除してアクセルペダルを踏んだり、パーキングブレーキの効きがあまく、いわゆるクリープ現象が発生したりしてハイブリッド自動車が動き出すと、充電ケーブル23や電源プラグ24の破損、充電器22の回路故障等が生じる。
【0046】
そこで、本実施形態においては、電源プラグ24が商用電源コンセントに差し込まれて充電器22が商用交流電源に接続されたときに、充電器22の入力側が商用電源コンセントの交流電源の電圧になることから、充電器22の充電制御コンピュータ25により、外部電源と充電接続手段とが接続された充電可能状態を検出する。
【0047】
さらに、前記車内LANを通して充電制御コンピュータ25の前記充電可能状態の検出結果を受信したエンジンコンピュータ15は、本発明のエンジン停止制御手段を形成し、前記充電可能状態の検出結果の受信により、例えば燃料噴射の強制停止の割り込み処理を実行して動作中のエンジン2を停止制御して自動的に停止する。
【0048】
したがって、本発明では、エンジン2が停止してから外部電源による蓄電装置18の充電が始まることになり、充電中はエンジン2が必ず停止し続け、充電中にエンジン2の駆動力によってハイブリッド自動車1が動き出すことがなく、充電ケーブル23や電源プラグ24の破損、充電器22の回路故障等が防止されて充電の信頼性・安全性が向上する。
【0049】
なお、充電中とは、外部電源と充電接続手段とが接続されてから充電が始まるまでの充電準備期間も含むものであり、以下同様である。
【0050】
また、本実施形態の場合、前記充電可能状態の検出結果を受信したエンジンコンピュータ15は、その後、充電が終了して電源プラグ24が商用電源コンセントから引き抜かれ、外部電源と充電接続手段とが切り離されて前記充電可能状態の検出結果を受信しなくなるまで、スタータ4の駆動も禁止し、充電中はドライバのエンジンスタート操作を無効にしてエンジン2の起動ができないようにし、充電の信頼性・安全性を一層向上する。
【0051】
つぎに、本実施形態においては、充電の信頼性・安全性をさらに一層向上するため、前記開閉器19とその開閉制御コンピュータ26も備える。
【0052】
開閉器19とその開閉制御コンピュータ26は本発明のモータ停止制御手段を形成し、エンジン2、モータ3の駆動の有無等の影響を受けないようにするため、補機バッテリ5によって動作する。
【0053】
そして、蓄電装置18を外部電源で充電するため、電源プラグ24が商用電源コンセントに差し込まれて充電器22が商用交流電源に接続されると、開閉制御コンピュータ26は、前記車内LANを通して充電制御コンピュータ25の充電可能状態の検出結果を受信し、この受信により開閉器19を閉から開に切り換える。
【0054】
したがって、蓄電装置18の充電中は、蓄電装置18からインバータ20への高電圧系の給電路も遮断され、蓄電装置18の電力によってモータ3が誤って駆動されることもなく、充電の信頼性・安全性がさらに一層向上する。なお、何らかの原因で充電開始前にモータ3が既に給電駆動されていたとしても、開閉器19が開放するため、充電開始時にはモータ3が確実に停止する。
【0055】
そして、蓄電装置18を搭載しているが、それを外部電源で充電する機能は備えていない既存のハイブリッド自動車に、充電器22、その付属の充電ケーブル23、電源プラグ24も付加することにより、部品数が少なく簡単、安価に蓄電装置18を外部電源で安全に充電する機能を備えた新規なハイブリッド自動車1を製造することができる。
【0056】
(他の実施形態)
他の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0057】
図2は蓄電装置18を外部充電する時のドアロック制御の説明図である。
【0058】
本実施形態においては、ハイブリッド自動車1に図1に示すドアロック制御コンピュータ27も備える。
【0059】
このドアロック制御コンピュータ27は本発明のドアロック制御手段であり、電源プラグ24が商用電源コンセントに差し込まれて充電器22が商用交流電源に接続されると、前記車内LANを通して充電制御コンピュータ25の充電可能状態の検出結果を受信し、この受信により、図1の計5枚のドア28の電動ロック機構を作動して全ドア28を閉じた状態にドアロックする。
【0060】
したがって、蓄電装置18の外部電源による充電中は、自動的にハイブリッド自動車1の全ドア28が閉じた状態にロックされ、車外のドライバは不用意に車内に入ることができなくなる。
【0061】
なお、車内からはロック解除できるようになっている。例えば、乗員が車内に取り残された場合でも、当然自力で車外に出られるようにするためである。
【0062】
そのため、充電中に、ドライバによるエンジンスタートやパーキングブレーキの解除等の不用意な操作が発生せず、不用意な操作によってハイブリッド自動車1が動き出すことがなく、充電の信頼性・安全性がさらに一層向上する。
【0063】
なお、蓄電装置18の充電が終了し、電源プラグ24が商用電源コンセントから引き抜かれると、エンジン動作中に充電を始めた場合、イグニッションキーがキーシリンダに差し込まれた状態になっているので、いわゆる「キー閉じ込め」の状態にならないようにするため、ドアロック制御コンピュータ27は各ドア28の電動ロック機構を開放して全ドア28のドアロックを自動的に解除する。
【0064】
つぎに、エンジンの停止状態で蓄電装置の充電を始める場合について、図1を用いて説明する。
【0065】
すなわち、上述したように蓄電装置18の電力で走行を開始し、その後、走行中にエンジン2を動作してエンジン2の駆動力で走行し続けるタイプのハイブリッド自動車は、エンジン2の停止状態で電源プラグ24が商用電源コンセントに差し込まれて充電器22が商用交流電源に接続され、エンジン2の停止状態で蓄電装置18の充電が始まる。
【0066】
そして、この場合も、ドアロック制御コンピュータ27により、充電制御コンピュータ25の充電可能状態の検出結果を受信して全ドア28を閉じた状態にドアロックすることにより、蓄電装置18の外部電源による充電中は、自動的にハイブリッド自動車1の全ドア28が閉じた状態にロックされ、車外のドライバは不用意に車内に入ることができなくなる。
【0067】
そのため、充電中に、ドライバによるエンジンスタートやパーキングブレーキの解除等の不用意な操作が発生せず、不用意な操作によってハイブリッド自動車1が動き出すことがなく、充電の信頼性・安全性がさらに一層向上する。
【0068】
なお、この場合、蓄電装置18の充電が終了し、電源プラグ24が商用電源コンセントから引き抜かれても、イグニッションキーがキーシリンダに差し込まれていないため、ドアロック制御コンピュータ27は各ドア28のドアロックを継続する。
【0069】
そして、ドアロック制御コンピュータ27は、具体的には、例えば図2に示すように動作する。
【0070】
すなわち、電源プラグ24が商用電源コンセントに差し込まれて充電器22が商用交流電源に接続され、蓄電装置18の充電を開始するときには、図2のステップS1からステップS2に移行してドアロックを行なう。
【0071】
また、キーの閉じ込めを防止するため、ステップS2からステップS3に移行してキーシリンダにイグニッションキーが差し込まれているか否かを判別する。
【0072】
そして、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていなければ、ステップS3からステップS4に移行してイグニッションキーによるドアロックの解除を無効にする。このようにすることで、ドライバが充電中であること忘れて又は知らずに、イグニッションキーでドア28を開けてハイブリッド自動車1を走行させてしまうことや、坂道停車の場合にパーキングブレーキを解除してしまいハイブリッド自動車1が動き出すことを、防止できる。
【0073】
その後、蓄電装置18の充電を開始する。
【0074】
一方、ステップS2でドアロックを行なったときに、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていると、イグニッションキーによるドアロックの解除を無効にすることなく、蓄電装置18の充電を開始する。
【0075】
つぎに、蓄電装置18の充電が終了し、電源プラグ24が商用電源コンセントから引き抜かれると、図2のステップS5からステップS6に移行する。
【0076】
このとき、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていれば、ステップS6からステップS7に移行してドアロックを解除する。
【0077】
一方、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていなければ、ステップS6からステップS8に移行し、ドアロックは維持しつつイグニッションキーによるドアロックの解除を有効にする。あくまでもドア28のロック解除はイグニッションキーで行なえるようにするためであり、このようにすることで、他人に電源プラグ24が引き抜かれて車内に進入されるのを防止できる。
【0078】
なお、ドアロック制御コンピュータ27は補機バッテリ5または商用電源コンセントの外部電源からの給電によって動作する。
【0079】
一方、ドアロックした場合には例えばドアロック制御コンピュータ27によってハザードランプを点滅し、充電開始を報知し、充電終了時にもハザードランプを点滅し、その旨を報知するようにしてもよい。
【0080】
そして、本発明は上記した両実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0081】
例えば、ハイブリッド自動車1がプッシュスタート操作で始動するプッシュスタート方式の場合は、プッシュスタート操作により、よく知られているように、コンピュータ制御でイグニッションオフの状態からスタータ4を作動してエンジン2を起動し、エンジン2が起動すると、自動的にイグニッションオンの状態に維持する。
【0082】
そこで、このイグニッションオンの状態で蓄電装置18の充電を開始することにより、エンジンコンピュータ15により燃料噴射を停止してエンジン2を止めるだけでなく、その直後またはそれから一定時間後に前記コンピュータ制御もイグニッションオンの状態からイグニッションオフの状態に戻すことが好ましい。
【0083】
この場合、イグニッションオフの状態にすることにより、ハイブリッド自動車1は各部の電装部品がイグニッションオフの状態で必要な省電力状態になり、蓄電装置18の充電中の補機バッテリ5等の電力浪費を防止しいわゆるバッテリ上がり等を招来しないようにすることができる。
【0084】
つぎに、蓄電装置18の充電中にハイブリッド自動車1をより一層確実に停止状態に保持するため、電源プラグ24が商用電源コンセントに差し込まれて充電器22が商用交流電源に接続されたときに、その検出に基づいてパーキングブレーキレバー6を電動制御で引いて自動的にパーキングブレーキをかけるようにすることが好ましい。また、電源プラグ24が商用電源コンセントに差し込まれて充電器22が商用交流電源に接続されたときに、シフトレバー8を自動的にPレンジに移動して固定することも好ましい。
【0085】
つきに、エンジン2が停止しているイグニッションオフの状態で電源プラグ24を商用電源コンセントに差し込んで充電器22を商用交流電源に接続し、蓄電装置18を外部電源で充電する場合、(1)補機バッテリ5等の電力浪費を極力抑えるため、充電に関係する蓄電装置監視コンピュータ21、充電器22、充電制御コンピュータ25等のみを給電駆動し、残りのコンピュータ等の各電装部品等は給電駆動しないようにすることが望ましい。(2)充電専用のキーを使用しないと充電が開始しないようにして蓄電装置18の充電中に誤ってハイブリッド自動車1が走行しないようにすることも好ましい。(3)充電専用のキーに代えて指紋認証によって充電を開始するようにし、蓄電装置18の充電中に誤ってハイブリッド自動車1が走行しないようにすることも好ましい。
【0086】
さらに、充電器22や充電ケーブル23、電源プラグ24の構成や形状等はどのようであってもよく、外部電源が100V以外の商用交流電源や専用の交流電源または直流電源であってもよいのは勿論である。
【0087】
そして、本発明は、種々のハイブリッド自動車1の蓄電装置18の充電に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ハイブリッド自動車
2 エンジン
3 モータ
15 エンジンコンピュータ
18 蓄電装置
19 開閉器
22 充電器
23 充電ケーブル
24 電源プラグ
25 充電制御コンピュータ
26 開閉制御コンピュータ
27 ドアロック制御コンピュータ
28 ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の発生源としてのエンジン及びモータと、前記駆動力を駆動輪に伝達する伝達手段と、前記モータの電源を形成する充電可能な蓄電装置と、前記蓄電装置の充電時に外部電源に接離自在に接続されて前記外部電源に基づく充電電力を前記蓄電装置に給電する充電接続手段とを備えたハイブリッド自動車の駆動装置であって、
前記外部電源と前記充電接続手段とが接続された状態か否かを検出する検出手段と、
前記外部電源と前記充電接続手段とが接続された状態を前記検出手段が検出した場合に、ドアを閉じた状態にロックするロック制御手段とを備えたことを特徴とするハイブリッド自動車の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−81961(P2012−81961A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252418(P2011−252418)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【分割の表示】特願2007−130441(P2007−130441)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】