説明

ハイブリッド自動車

【課題】内燃機関の運転による燃料消費をより適正に抑制する。
【解決手段】バッテリの制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Smin以下になることによりエンジンの運転を継続して第1モータからの電力によりバッテリを充電しながら要求トルクTr*により走行するよう制御する強制充電走行制御を開始する際(時刻t1)、制御蓄電割合SOCcが実際の蓄電割合SOCより許容範囲を超えて大きい状態から低下して充電必要閾値Smin以下になった過大推定低下時であるのときには(時刻t2)、制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Sminより大きく且つ第1の閾値S1より小さい第2の閾値S2になるまで強制充電走行制御を継続する(時刻t3)。これにより、過大推定低下時にはより小さい制御蓄電割合SOCcになるタイミングで強制充電走行制御を終了させ、エンジンの運転による無駄な燃料消費を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関し、詳しくは、内燃機関と、内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、発電機および電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、二次電池に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合の推定値として推定蓄電割合を演算する推定蓄電割合演算手段と、演算された推定蓄電割合が予め定められた充電必要閾値以下になったときには内燃機関の運転を継続して発電機からの電力により二次電池を充電すると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する強制充電走行制御を行なう制御手段と、を備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、モータジェネレータと、エンジンとモータジェネレータと駆動輪側とに接続された動力分割機構と、駆動輪側に接続された電気モータと、モータジェネレータおよび電気モータに接続されたバッテリとを備え、エンジンのアイドル運転の停止を禁止して走行するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、バッテリの温度が高温になるほどエンジンのアイドル運転停止を禁止する時間が長くなるように制御するなどにより、エンジンの停止時間を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−60526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したハード構成のハイブリッド自動車では、バッテリの蓄電割合(SOC)が閾値以下にまで低下したときに、蓄電割合を回復させるためにエンジンの運転停止を禁止して強制的に運転を継続して発電機の発電電力でバッテリを充電する強制充電制御が行なわれている。しかしながら、例えば道路の混雑状況や運転者の運転傾向などの車両が実際に走行する傾向によれば蓄電割合を回復させることができるにも拘わらず、バッテリの管理上の要因などのために強制充電制御が開始されてしまい、エンジンの運転が無駄に継続する場合があった。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、内燃機関の運転による燃料消費をより適正に抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、前記二次電池の状態に基づいて該二次電池に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合の推定値として推定蓄電割合を演算する推定蓄電割合演算手段と、前記演算された推定蓄電割合が予め定められた充電必要閾値以下になるまでは前記内燃機関を運転するときに前記推定蓄電割合が小さいほど大きくなる傾向の充電電力で前記二次電池を充電すると共に前記内燃機関の間欠運転を伴って走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値以下になったときには前記内燃機関の運転を継続して前記発電機からの電力により前記二次電池を充電すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する強制充電走行制御を行なう制御手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記強制充電走行制御を開始する際、前記推定蓄電割合が前記二次電池の実際の前記蓄電割合より許容範囲を超えて大きい状態から低下して前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値以下になった過大推定低下時でないときには、前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値より大きい値として予め定められた第1の充電終了閾値になるまで前記強制充電走行制御を継続し、前記過大推定低下時であるときには、前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値より大きく且つ前記第1の充電終了閾値より小さい第2の充電終了閾値になるまで前記強制充電走行制御を継続する手段である、 ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、二次電池に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合の推定値として推定蓄電割合を演算する。そして、演算された推定蓄電割合が充電必要閾値以下になったことにより内燃機関の運転を継続して発電機からの電力により二次電池を充電すると共に走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する強制充電走行制御を開始する際に、推定蓄電割合が二次電池の実際の蓄電割合より許容範囲を超えて大きい状態から低下して演算された推定蓄電割合が予め定められた充電必要閾値以下になった過大推定低下時ないときには、演算された推定蓄電割合が充電必要閾値より大きい値として予め定められた第1の充電終了閾値になるまで強制充電走行制御を継続する。また、強制充電走行制御を開始する際に過大推定低下時であるときには、演算された推定蓄電割合が充電必要閾値より大きく且つ第1の充電終了閾値より小さい第2の充電終了閾値になるまで強制充電走行制御を継続する。すなわち、強制充電走行制御を開始する際に過大推定低下時であるときには、過大推定低下時でないときに比して、推定蓄電割合が小さい閾値になるタイミングで強制充電走行制御を終了するのである。これにより、過大推定低下時には内燃機関の運転による燃料消費を抑制することができる。また、過大推定低下時は、推定蓄電割合が実際の蓄電割合よりも許容範囲を超えて大きい状態であったことから、推定蓄電割合に含まれる誤差のために二次電池の充電が抑制されていた状態であったということができる。したがって、過大推定低下時は、推定蓄電割合を実際の蓄電割合により近い値とすることができれば、二次電池の蓄電割合を回復させる余地があったときということができる。よって、強制充電走行制御を開始する際に過大推定低下時であるときは、過大推定低下時でないときに比して強制充電走行制御により蓄電割合を回復させる必要性が低いときということができる。このような過大推定低下時により小さい推定蓄電割合になるタイミングで強制充電走行制御を終了するから、内燃機関の運転による燃料消費をより適正に抑制することができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記二次電池は、前記二次電池の電圧が少なくとも予め定められた低電圧範囲を含む所定電圧範囲内のときには該所定電圧範囲外のときよりも前記蓄電割合の単位変化量に対する前記二次電池の電圧の変化量が大きくなる電池特性を有し、前記推定蓄電割合演算手段は、前記二次電池を充放電する電流の積算値に基づいて前記蓄電割合の第1の推定値である積算蓄電割合を演算すると共に、前記二次電池の電圧に基づいて前記電池特性が反映された該二次電池の電圧と前記蓄電割合との予め定められた関係を用いて前記蓄電割合の第2の推定値である電圧蓄電割合を設定し、前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲外のときには前記設定した電圧蓄電割合よりも前記演算した積算蓄電割合により近い値となるように前記推定蓄電割合を演算し、前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲内のときには前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲外から離れるほど前記設定した電圧蓄電割合に近くなる傾向の値となるように前記推定蓄電割合を演算する手段であり、前記制御手段は、前記強制充電走行制御を開始する際に前記演算された推定蓄電割合が前記演算された積算蓄電割合より予め定められた所定割合以上小さいときを前記過大推定低下時として制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、推定蓄電割合と積算蓄電割合との比較によって過大推定低下時であるか否かを判別することができる。ここで、「二次電池」としては、ニッケル水素二次電池などを用いることができる。また、この場合、前記推定蓄電割合演算手段は、前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲外のときには前記演算した積算蓄電割合を前記推定蓄電割合として用いると共に、前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲内のときには前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲外から離れるほど前記設定した電圧蓄電割合に近くなる値を前記推定蓄電割合として用いる手段である、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記二次電池は、前記蓄電割合が少なくとも予め定められた低蓄電割合範囲を含む所定蓄電割合範囲内のときには該所定蓄電割合範囲外のときよりも前記蓄電割合の単位変化量に対する前記二次電池の電圧の変化量が大きくなる電池特性を有し、前記推定蓄電割合演算手段は、前記二次電池を充放電する電流の積算値に基づいて前記蓄電割合の第1の推定値である積算蓄電割合を演算すると共に、前記二次電池の電圧に基づいて前記電池特性が反映された該二次電池の電圧と前記蓄電割合との予め定められた関係を用いて前記蓄電割合の第2の推定値である電圧蓄電割合を設定し、前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲外のときには前記設定した電圧蓄電割合よりも前記演算した積算蓄電割合により近い値を前記推定蓄電割合として演算し、前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲内のときには前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲外から離れるほど前記設定した電圧蓄電割合に近くなる傾向の値を前記推定蓄電割合として演算する手段であり、前記制御手段は、前記強制充電走行制御を開始する際に前記演算された推定蓄電割合が前記演算された積算蓄電割合より予め定められた所定割合以上小さいときを前記過大推定低下時として制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、推定蓄電割合と積算蓄電割合との比較によって過大推定低下時であるか否かを判別することができる。ここで、「二次電池」としては、ニッケル水素二次電池などを用いることができる。「低蓄電割合範囲」は、充電必要閾値を含む範囲とすることができる。また、この場合、前記推定蓄電割合演算手段は、前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲外のときには前記推定蓄電割合として前記演算した積算蓄電割合を用いると共に、前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲内のときには前記推定蓄電割合として前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲外から離れるほど前記設定した電圧蓄電割合に近くなる値を用いる手段である、ものとすることもできる。
【0011】
これら推定蓄電割合が積算蓄電割合より所定割合以上小さいときを過大推定低下時として制御する態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記推定蓄電割合演算手段は、前記強制充電走行制御が開始する際に前記積算蓄電割合を前記推定蓄電割合と等しい値に置き換える手段である、ものとすることもできる。こうすれば、強制充電走行制御を開始するとき以降に積算蓄電割合を二次電池の実際の蓄電割合により近い値とすることができる。
【0012】
さらに、本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記内燃機関の運転を停止した状態で走行している最中に前記内燃機関の始動を伴って前記強制充電走行制御を開始したとき、前記強制充電走行制御を終了するときに前記内燃機関の運転が要求されていないときには該内燃機関の運転が停止されるよう該内燃機関を制御する手段である、ものとすることもできる。
【0013】
あるいは、本発明のハイブリッド自動車において、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結され且つ前記電動機が接続された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構を備える、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】充放電要求パワー設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】バッテリECU52により実行される蓄電割合設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】バッテリ50の蓄電割合SOCとバッテリ電圧Vbとの関係として表されるバッテリ50の特性の一例を示す説明図である。
【図6】バッテリ50の制御蓄電割合SOCcを設定するための反映係数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図8】モータ運転モードで走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図9】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図10】エンジン運転モードで走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図11】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される強制充電関連設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図12】バッテリ50の制御蓄電割合SOCcと偏差ΔSOCおよびその大小の状態と強制充電要求フラグFbとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。
【図13】変形例の反映係数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図14】変形例のバッテリECU52により実行される蓄電割合設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図15】変形例の反映係数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図16】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図17】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図18】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されたエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26に複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34が接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62とギヤ機構60を介して連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aにリングギヤ32が接続され遊星歯車機構として構成された動力分配統合機構30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が動力分配統合機構30のサンギヤ31に接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、電力ライン54を共用するインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするニッケル水素二次電池として構成されたバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0017】
エンジンECU24は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24は、エンジン22の状態を検出する図示しない種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置やエンジン22の冷却水温,スロットル開度,吸入空気量,吸気温などを入力ポートを介して入力し、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、図示しない燃料噴射弁への駆動信号や、図示しないスロットルバルブへの駆動信号、イグナイタと一体化された図示しないイグニッションコイルへの制御信号などを出力ポートを介して出力している。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0018】
モータECU40は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流,インバータ41,42に取り付けられた図示しない温度センサからのインバータ温度などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0019】
バッテリECU52は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52は、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからのバッテリ電圧Vb,バッテリ50の正極側の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからのバッテリ温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値や電圧センサ51bにより検出されたバッテリ電圧Vbに基づいて、バッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCの推定値として各種制御に用いられる制御蓄電割合SOCcを設定したり、設定した制御蓄電割合SOCcと温度センサ51cからのバッテリ温度Tbとに基づいて、バッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。バッテリ50の制御蓄電割合SOCcの設定については後述する。以下では、バッテリ50の蓄電割合SOCは、実際の値を意味するものとし、制御蓄電割合SOCcなどの推定値とは区別して説明する。
【0020】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0021】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0022】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0023】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,初期値としては値0が設定されバッテリ50の制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Smin以下まで低下したときに値1が設定される強制充電要求フラグFb,バッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ温度Tbとバッテリ50の制御蓄電割合SOCcとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。さらに、強制充電要求フラグFbは、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される後述の強制充電関連設定ルーチンにより設定されたものを入力するものとした。また、充放電要求パワーPb*は、実施例では、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcと充放電要求パワーPb*との関係を予め定めて充放電要求パワー設定用マップとしてROM74に記憶しておき、バッテリECU52から通信により入力した制御蓄電割合SOCcが与えられると記憶したマップから対応する充放電要求パワーPb*を導出して設定するものとした。図3に充放電要求パワー設定用マップの一例を示す。充放電要求パワーPb*は、図示するように、制御蓄電割合SOCcがバッテリ50の蓄電割合SOCの管理上の目標値である管理中心SOC*(例えば60%など)より大きいほど正の所定パワーまで大きくなる放電要求側の値が設定され、制御蓄電割合SOCcが管理中心SOC*より小さいほど負の所定パワーまで小さくなる充電要求側の値が設定されるものとした。ここで、駆動制御の説明を一旦中断し、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcの設定について説明する。
【0024】
図4はバッテリECU52により実行される蓄電割合設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、バッテリECU52により所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。蓄電割合設定ルーチンが実行されると、バッテリECU52の図示しないCPUは、まず、電圧センサ51aにより検出されたバッテリ電圧Vbや電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibなど設定に必要なデータを入力し(ステップS300)、入力した充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50の蓄電割合SOCの第1の推定値として積算蓄電割合SOC1を演算すると共に(ステップS310)、入力したバッテリ電圧Vbに基づいてバッテリ50の蓄電割合SOCの第2の推定値として電圧蓄電割合SOC2を設定する処理を実行する(ステップS320)。
【0025】
ここで、積算蓄電割合SOC1は、実施例では、例えば車両の出荷時などにバッテリ50の実際の蓄電割合SOCを反映する値として予め定められた初期値から充放電電流Ibを積算することにより演算を開始し、イグニッションオフされたときに図示しないフラッシュメモリに記憶したものを次にイグニッションオンされたときに読み出して用いることにより演算を継続するものとした。また、電圧蓄電割合SOC2は、実施例では、バッテリ電圧Vbと電圧蓄電割合SOC2との関係をバッテリ50の特性が反映されるように予め定めて電圧蓄電割合設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、バッテリ電圧Vbが与えられると記憶したマップから対応する電圧蓄電割合SOC2を導出して設定するものとした。図5にバッテリ50の蓄電割合SOCとバッテリ電圧Vbとの関係として表されるバッテリ50の特性の一例を示す。図中、所定の低蓄電割合SLは管理中心SOC*より小さい値(例えば45%など)であり、所定の高蓄電割合SHは管理中心SOC*より大きい値(例えば80%など)である。なお、強制充電フラグFbに値1を設定するための充電必要閾値Sminは、所定の低蓄電割合SLより小さい値(例えば40%など)として定められており、図中、括弧内の数字は各値の一例を示す。また、所定の低電圧Vblはこのバッテリ50の特性における所定の低蓄電割合SLに対応するバッテリ電圧Vbであり、所定の高電圧Vbhはこのバッテリ50の特性における所定の高蓄電割合SHに対応するバッテリ電圧Vb(所定の低電圧Vblより高い値)である。実施例のバッテリ50は、ニッケル水素二次電池であり、図示するように、蓄電割合SOCが所定の低蓄電割合SL未満の範囲(以下、低蓄電割合範囲という)または所定の高蓄電割合SHより大きい範囲(以下、高蓄電割合範囲という)にあるときには、蓄電割合SOCが低蓄電割合範囲にも高蓄電割合範囲にもないときに比して、蓄電割合SOCの単位変化量(例えば1%)に対するバッテリ電圧Vbの変化量が大きい、という特性を有する。言い換えると、バッテリ50は、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vbl未満の範囲(以下、低電圧範囲という)または所定の高電圧Vbhより大きい範囲(以下、高電圧範囲という)にあるときには、バッテリ電圧Vbが低電圧範囲にも高電圧範囲にもないときに比して、蓄電割合SOCの単位変化量(例えば1%)に対するバッテリ電圧Vbの変化量が大きい、という特性を有する。したがって、このようなバッテリ50の特性を反映した実施例の電圧蓄電割合設定用マップ、即ち、図5の蓄電割合SOCを電圧蓄電割合SOC2に置き換えて得られる電圧蓄電割合設定用マップに、電圧センサ51aからのバッテリ電圧Vbを適用して電圧蓄電割合SOC2を設定すると、設定された電圧蓄電割合SOC2は、バッテリ電圧Vbが低電圧範囲または高電圧範囲にあるときには、バッテリ電圧Vbが低電圧範囲にも高電圧範囲にもないときに比してバッテリ50の実際の蓄電割合SOCをより正しく反映した推定値となり、制御蓄電割合SOCcをより正しく設定するのに用いることが可能な推定値となる。
【0026】
こうしてバッテリ50の蓄電割合SOCの第1の推定値として積算蓄電割合SOC1を演算すると共に第2の推定値として電圧蓄電割合SOC2を設定すると、入力したバッテリ電圧Vbと所定の高電圧Vbhとを比較すると共に(ステップS330)、バッテリ電圧Vbと所定の低電圧Vblとを比較し(ステップS340)、バッテリ電圧Vbが所定の高電圧Vbh以下であり且つ所定の低電圧Vbl以上のとき(高電圧範囲にも低電圧範囲にもないとき)には、演算した積算蓄電割合SOC1を制御蓄電割合SOCcとして設定し(ステップS350)、蓄電割合設定ルーチンを終了する。図5に例示したように、バッテリ50の特性によれば、バッテリ電圧Vbに基づく電圧蓄電割合SOC2は、バッテリ電圧Vbが低電圧範囲にも高電圧範囲にもないときには、バッテリ50の実際の蓄電割合SOCを正しく反映しにくい。このため、実施例では、バッテリ電圧Vbが高電圧範囲にも低電圧範囲にもないときには、電圧蓄電割合SOC2に比してバッテリ50の実際の蓄電割合SOCをより正しく反映する積算蓄電割合SOC1を推定蓄電割合SOCcとして設定するものとした。ただし、積算蓄電割合SOC1は、時間経過に応じて実際の蓄電割合SOCに対する誤差が大きくなる可能性がある。
【0027】
バッテリ電圧Vbが所定の高電圧Vbhより大きい高電圧範囲にあるときや、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vbl未満の低電圧範囲にあるときには、積算蓄電割合SOC1より電圧蓄電割合SOC2の方が実際の蓄電割合SOCを正確に反映しやすいと判断し、バッテリ電圧Vbに基づいて制御蓄電割合SOCcに電圧蓄電割合SOC2を反映させる割合を定める値0以上値1以下の反映係数kvを設定すると共に(ステップS360)、設定した反映係数kvと電圧蓄電割合SOC2との積に値1から反映係数kvを減じた値(1−kv)と積算蓄電割合SOC1との積を加えたものを次式(1)に示すように積算蓄電割合SOCとして演算し(ステップS370)、蓄電割合設定ルーチンを終了する。ここで、反映係数kvは、実施例では、バッテリ電圧Vbと反映係数kvとの関係を予め定めて反映係数設定用マップとして図示しないROMに記憶しておき、バッテリ電圧Vbが与えられると記憶したマップから対応する反映係数kvを導出して設定するものとした。図6に反映係数設定用マップの一例を示す。図示するように、反映係数kvは、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vbl以上且つ所定の高電圧Vbh以下のときには値0が設定され、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vblより小さいほど値1まで大きくなる値が設定され、バッテリ電圧Vbが所定の高電圧Vbhより大きいほど値1まで大きくなる値が設定される。バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vbl以上且つ所定の高電圧Vbh以下の範囲から離れるほど大きくなる値を反映係数kvに設定するのは、制御蓄電割合SOCcが不連続に変更されるのを抑制するためである。こうしてバッテリ電圧Vbが低電圧範囲や高電圧範囲になったときに積算蓄電割合SOC1より電圧蓄電割合SOC2が反映されるように制御蓄電割合SOCcを演算する(電圧蓄電割合SOC2が反映されるように制御蓄電割合SOCcを補正する)から、バッテリ50の実際の蓄電割合SOCが低下したときなどに制御蓄電割合SOCcを実際の蓄電割合SOCをより正しく反映した値とすることができる。以上、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcの設定について説明した。駆動制御の説明に戻る。
【0028】
SOCc=kv・SOC2+(1-kv)・SOC1 (1)
【0029】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図7に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものからバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*を減じてロスLossを加えることにより計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めたりすることができる。
【0030】
続いて、エンジン22が運転中であるか運転停止中であるかを判定し(ステップS120)、エンジン22が運転停止中であるときには、要求パワーPe*を、エンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を始動した方がよい要求パワーPe*の範囲の下限として定められた閾値Pstartと比較すると共に(ステップS130)、強制充電要求フラグFbを調べ(ステップS140)、要求パワーPe*が閾値Pstart未満で強制充電要求フラグFbが値0のときには、エンジン22の運転停止を継続すると判断し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する(ステップS150)。
【0031】
続いて、要求トルクTr*を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものをモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpとして設定すると共に(ステップS160)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutを現在のモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS170)、計算した仮トルクTm2tmpを次式(2)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS180)。
【0032】
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (2)
【0033】
こうしてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS190)、駆動制御ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御する。こうした制御により、モータMG2から駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。モータ運転モードで走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。
【0034】
ステップS130で要求パワーPe*が閾値Pstart以上のときには、エンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を始動した方がよいと判断し、また、ステップS130,S140で要求パワーPe*が閾値Pstart未満でも強制充電要求フラグFbが値1のときには、バッテリ50を蓄電割合SOCを高めるためにエンジン22を始動した方がよいと判断して、エンジン22を始動する(ステップS200)。ここで、エンジン22の始動は、モータMG1からトルクを出力すると共にこのトルクの出力に伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクをキャンセルするためのトルクをモータMG2から出力することによりエンジン22をクランキングし、エンジン22の回転数Neが所定回転数(例えば1000rpm)に至ったときに燃料噴射制御や点火制御などを開始することにより行なわれる。なお、このエンジン22の始動の最中も要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG2の駆動制御が行なわれる。即ち、モータMG2から出力すべきトルクは、要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力するためのトルクと、モータMG1によってエンジン22をクランキングする際にリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするためのトルクと、の和のトルクとなる。
【0035】
エンジン22を始動すると、要求パワーPe*とエンジン22を効率よく動作させる動作ラインとに基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し(ステップS210)、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(3)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(4)によりモータMG1から出力すべきトルク指令Tm1*を計算する(ステップS220)。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図9に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。式(3)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン運転モードで走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図10に示す。図中、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(3)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(4)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(4)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0036】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (3)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (4)
【0037】
そして、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2の仮トルクTm2tmpを次式(5)により計算すると共に(ステップS230)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2のトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(6)および式(7)により計算し(ステップS240)、計算した仮トルクTm2tmpを式(8)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS250)。ここで、式(5)は、図10の共線図から容易に導くことができる。
【0038】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (5)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (6)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (7)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (8)
【0039】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*とを設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS260)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。こうした制御により、エンジン22から要求パワーPe*を効率よく出力して、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0040】
エンジン22からの動力を用いた走行を開始すると、次回に本ルーチンが実行されたときにはステップS120でエンジン22は運転中であると判定され、要求パワーPe*を、エンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を運転停止した方がよい要求パワーPe*の上限として定められた閾値Pstop(閾値Pstartより若干小さい値)と比較すると共に(ステップS270)、強制充電要求フラグFbを調べる(ステップS280)。要求パワーPe*が閾値Pstopより大きいときには、エンジン22を効率よく運転するためにエンジン22の運転を継続した方がよいと判断し、また、要求パワーPe*が閾値Pstop以下のときでも強制充電要求フラグFbが値1のときには、バッテリ50の蓄電割合SOCを高めるためにエンジン22の運転を継続した方がよいと判断して、上述したステップS210〜S260の処理により、エンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジンECU24やモータECU40に送信して、駆動制御ルーチンを終了する。
【0041】
ステップS270,S280で要求パワーPe*が閾値Pstop以下であり強制充電要求フラグFbが値0のときには、エンジン22を運転停止すると判断し、エンジン22の運転を停止し(ステップS290)、上述したステップS150〜S190の処理により、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信して、駆動制御ルーチンを終了する。
【0042】
こうした制御により、強制充電要求フラグFbが値0のときには、エンジン22の要求パワーPe*の大小に基づくエンジン22の間欠運転を伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。この強制充電要求フラグFbが値0の場合にエンジン22を運転するときには、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcが小さいほど充電電力として大きくなる傾向に設定された充放電要求パワーPe*によってバッテリ50の充放電が行なわれるように制御が行なわれることになる。また、強制充電要求フラグFbが値1のときには、エンジン22の要求パワーPe*の大小に拘わらずエンジン22を継続して運転してリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。この強制充電要求フラグFbが値1の場合は、詳細は後述するが、バッテリ50の蓄電割合SOCが制御中心SOC*より小さい充電必要閾値Smin以下になった場合であるから、充電電力として設定された充放電要求パワーPb*によって、エンジン22の運転によるモータMG1からの発電電力でバッテリ50が充電されるように制御が行なわれることになる。なお、エンジン22を運転停止した状態で走行中に強制充電要求フラグFbに値1が設定されるとエンジン22が始動され、その後に強制充電要求フラグFbに値0が設定されるとエンジン22の要求パワーPe*が停止閾値Pstop以下のときにはエンジン22が運転停止される。以上、駆動制御について説明した。
【0043】
次に、こうした駆動制御で用いられるバッテリ50の強制充電要求フラグFbの設定に関連する処理について説明する。図11は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される強制充電関連設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0044】
強制充電関連設定ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、バッテリ50の積算蓄電割合SOC1や制御蓄電割合SOCcなど強制充電要求フラグFbなどの設定に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS400)。積算蓄電割合SOC1は、図4の蓄電割合設定ルーチンにより、電流センサ51bからの充放電電流Ibの積算値に基づいて演算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。また、制御蓄電割合SOCcは、図4の蓄電割合設定ルーチンにより、積算蓄電割合SOC1として設定されたものや、積算蓄電割合SOC1と電圧蓄電割合SOC2とに基づいて演算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0045】
こうしてデータを入力すると、初期値としては値0が設定され本ルーチンで制御蓄電割合SOCcに応じて値1や値0が設定される強制充電要求フラグFbを調べ(ステップS410)、強制充電要求フラグFbが値0のときには、制御蓄電割合SOCcと充電必要閾値Sminとを比較する(ステップS420)。充電必要閾値Sminは、バッテリ50の蓄電割合SOCを高める必要がある範囲の上限としてバッテリ50の蓄電容量などに基づいて予め定められたものであり、実施例では、図5に例示したように、所定の低蓄電割合SLより小さい値(例えば40%など)に定められているものとした。
【0046】
バッテリ50の制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Sminより大きいときには、バッテリ50の蓄電割合SOCを高める必要はないと判断し、強制充電要求フラグFbに値0を保持したまま、強制充電関連設定ルーチンを終了する。また、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Smin以下のときには、バッテリ50の蓄電割合SOCを高める必要があると判断し、強制充電要求フラグFbに値1を設定し(ステップS430)、入力した積算蓄電割合SOC1から制御蓄電割合SOCcを減じたものを偏差ΔSOCとして計算し(ステップS440)、計算した偏差ΔSOCが所定割合Sref以上であるか否かを判定する(ステップS450)。強制充電要求フラグFbに値1が設定されると、図2に例示した駆動制御によってエンジン22の運転停止が禁止されエンジン22の運転が継続される。即ち、エンジン22の運転を継続してモータMG1の発電電力によりバッテリ50を充電しながら要求トルクTr*により走行するためのエンジン22とモータMG1,MG2との制御(以下、強制充電走行制御という)が開始されることになる。ここで、所定割合Srefは、強制充電走行制御を開始する際に、制御蓄電割合SOCcが実際の蓄電割合SOCより許容範囲を超えて大きい値として推定されている状態から低下して充電必要閾値Smin以下になったとき(以下、過大推定低下時という)であるか否かを判定するためのものであり、バッテリ50の蓄電容量などに基づいて例えば2%や3%などに予め定めたものを用いることができる。
【0047】
計算した偏差ΔSOCが所定割合Sref未満のときには、過大推定低下時ではないと判断し、強制充電走行制御を終了するときのバッテリ50の制御蓄電割合SOCcである充電終了閾値Sfinに充電必要閾値Sminより大きい第1の閾値S1(例えば50%など)を設定し(ステップS470)、計算した偏差ΔSOCが所定割合Sref以上のときには、過大推定低下時であると判断し、充電終了閾値Sfinに充電必要閾値Sminより大きいが第1の閾値S1より小さい第2の閾値S2(例えば、43%や45%など)を設定する(ステップS480)。そして、バッテリ50の積算蓄電割合SOC1を現在の制御蓄電割合SOCcと同じ値に置き換えて設定し直すようバッテリECU52に指令して(ステップS480)、強制充電関連制御ルーチンを終了する。指令されたバッテリECU52は、積算蓄電割合SOC1の値を置換して図4に例示した蓄電割合設定ルーチンによる積算蓄電割合SOC1の演算を継続する。図5や図6に示したように、強制充電走行制御を開始するときには、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcは充電必要閾値Smin以下であり、この制御蓄電割合SOCcにはバッテリ電圧Vbに基づく電圧蓄電割合SOC2が大きく反映され実際の蓄電割合SOCをより正しく反映した値となっている。このため、実施例では、強制充電走行制御を開始するときに、実際の蓄電割合SOCに対して誤差を含んでいる可能性がある積算蓄電割合SOC1を制御蓄電割合SOCcと同じ値に置換することにより、その後の積算蓄電割合SOC1をより正しい値として演算することができる。なお、偏差ΔSOCと所定割合Srefとの大小関係に応じて充電終了閾値Sfinを変更する理由については、後述する。
【0048】
こうして強制充電走行制御を開始すると、次に本ルーチンを実行したときにステップS410で強制充電要求フラグFbが値1であると判定され、入力した制御蓄電割合SOCcを設定した充電終了閾値Sfinと比較し(ステップS490)、制御蓄電割合SOCcが充電終了閾値Sfin未満のときには、強制充電走行制御を継続すると判断して、強制充電要求フラグFbに値1を保持したまま、強制充電関連設定ルーチンを終了する。一方、入力した制御蓄電割合SOCcが設定した充電終了閾値Sfin以上のときには、強制充電走行制御を終了すると判断し、強制充電要求フラグFbに値0を設定して(ステップS500)、強制充電関連設定ルーチンを終了する。こうして強制充電要求フラグFbに値0が設定されると、図2に例示した駆動制御によってエンジン22の運転停止が許可されエンジン22の要求パワーPe*の大小に基づくエンジン22の間欠運転が行なわれる。即ち、強制充電走行制御が終了する。
【0049】
ここで、強制充電走行制御を開始する際に、バッテリ50の積算蓄電割合SOC1から制御蓄電割合SOCcを減じて得られる偏差ΔSOCと所定割合Srefとの大小関係に応じて充電終了閾値Sfinを変更する理由について説明する。図12は、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcと偏差ΔSOCおよびその大小の状態と強制充電要求フラグFbとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。図中、実線で示す制御蓄電割合SOCcと比較するために、積算蓄電割合SOC1を一点鎖線で示し、偏差ΔSOCの大小に拘わらず充電終了閾値Sfinとして第1の閾値S1を設定したときの比較例における制御蓄電割合SOCcを破線で示す。偏差ΔSOCの大小の状態は、偏差ΔSOCが所定割合Sref以上のときを偏差が大きい状態とし、偏差ΔSOCが所定割合Sref未満のときを偏差が小さい状態として示した。バッテリ50からの放電により制御蓄電割合SOCcが低下し、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vbl未満となって電圧蓄電割合SOC2が反映されるように制御蓄電割合SOCcが補正され始めると(時刻t1)、実際の蓄電割合SOCが積算蓄電割合SOC1より小さいために積算蓄電割合SOC1と制御蓄電割合SOCcとの間に差が生じ、偏差ΔSOCが所定割合Sref以上にまで大きくなった状態で制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Smin以下となる過大推定低下時となり(時刻t2)、強制充電走行制御を開始する場合がある。例えば、バッテリ50が高温で自己放電による放電量が大きい状態が継続したときなどには、過大推定低下時となりやすい。こうした過大推定低下時の場合に、破線で示す比較例のように、制御蓄電割合SOCcが比較的大きい第1の閾値S1になるまで強制充電走行制御を継続すると(時刻t4)、エンジン22の運転による燃焼消費が無駄に継続してしまう。無駄となる理由は、過大推定低下時は、制御蓄電割合SOCcが実際の蓄電割合SOCよりも許容範囲を超えて大きい状態であったことから、充放電要求パワーPe*が充電電力としては小さく設定されてバッテリ50の充電が抑制されていた状態であり、制御蓄電割合SOCcを実際の蓄電割合SOCにより近い値とすることができれば、バッテリ50の蓄電割合SOCを車両の走行によって回復させる余地があった状態ということができるためである。したがって、強制充電走行制御を開始するときに過大推定低下時と判定された場合には、強制充電走行制御を制御蓄電割合SOCcが比較的小さい第2の閾値S2になるまでしか強制充電走行制御を継続しないようにすることにより(時刻t3)、エンジン22の燃焼消費を抑制することができる。一方、強制充電走行制御を開始するときに過大推定低下時でないと判定された場合には、例えば渋滞中など車両の走行によっては蓄電割合SOCを回復させる余地が少ないと判断し、強制充電走行制御を制御蓄電割合SOCcが比較的大きい第1の閾値S1になるまで継続することにより、実際の蓄電割合SOCを回復させることができる。
【0050】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Smin以下になったことによりエンジン22の運転を継続してモータMG1からの電力によりバッテリ50を充電しながら要求トルクTr*により走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御する強制充電走行制御を開始する際に、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcが実際の蓄電割合SOCより許容範囲を超えて大きい状態から低下して制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Smin以下になった過大推定低下時でないときには、制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Sminより大きい値として定めた第1の閾値S1になるまで強制充電走行制御を継続し、一方、強制充電走行制御を開始する際に過大推定低下時であるときには、制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Sminより大きく且つ第1の閾値S1より小さい第2の閾値S2になるまで強制充電走行制御を継続するから、過大推定低下時にはより小さい制御蓄電割合SOCcになるタイミングで強制充電走行制御を終了することができ、エンジン22の運転による燃料消費をより適正に抑制することができる。
【0051】
実施例のハイブリッド自動車20では、強制充電走行制御を開始するときに積算蓄電割合SOC1を制御蓄電割合SOCcと同じ値に置換するものとしたが、強制充電走行制御を開始した後でも、例えばバッテリ電圧Vbが所定の低電圧閾値Vblに至る前などに、こうした置換を行なうものとしてもよい。また、強制充電走行制御を開始するときに積算蓄電割合SOC1を電圧蓄電割合SOC2と同じ値に置換する設定を行なうものとしてもよい。
【0052】
実施例のハイブリッド自動車20では、電圧蓄電割合SOC2を制御蓄電割合SOCcに反映させるための反映係数kvには、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vbl以上且つ所定の高電圧Vbh以下のときには値0が設定され、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vblより小さいほど値1まで大きくなる値が設定され、バッテリ電圧Vbが所定の高電圧Vbhより大きいほど値1まで大きくなる値が設定されるものとしたが、図13の変形例の反映係数設定用マップに例示するように、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vbl以上且つ所定の高電圧Vbh以下のときには値0.5より小さい正の値が設定され、バッテリ電圧Vbが所定の低電圧Vblより小さいほど値0.5より大きい値1未満のある値まで大きくなる値が設定され、バッテリ電圧Vbが所定の高電圧Vbhより大きいほど値0.5より大きい値1未満のある値まで大きくなる値が設定されるものとしてもよい。この場合、図4の蓄電割合設定ルーチンのステップS330〜S350の処理を実行せずに、ステップS320の処理に続けてステップS360,S370の処理を実行すればよい。
【0053】
実施例のハイブリッド自動車20では、図4に例示した蓄電割合設定ルーチンにより、バッテリ電圧Vbを所定の高電圧Vbhや所定の低電圧Vblと比較して制御蓄電割合SOCcを設定するものとしたが、図14の変形例の蓄電割合設定ルーチンに示すように、積算蓄電割合SOC1を所定の高蓄電割合SHや所定の低蓄電割合SLと比較して制御蓄電割合SOCcを設定するものとしてもよい。図14のルーチンでは、図4のルーチンと同一の処理については同一のステップ番号を付しその詳細な説明は省略する。図14のルーチンでは、バッテリ50の積算蓄電割合SOC1を演算すると共に電池蓄電割合SOC2を設定すると、積算蓄電割合SOC1を所定の高蓄電割合SHと比較すると共に(ステップS600)、積算蓄電割合SOC1を所定の低蓄電割合SLと比較し(ステップS610)、積算蓄電割合SOC1が所定の高蓄電割合SHより大きい高蓄電割合範囲になく且つ所定の低蓄電割合SLより小さい低蓄電割合範囲にもないときには、積算蓄電割合SOC1を制御蓄電割合SOCcとして設定する(ステップS350)。一方、積算蓄電割合SOC1が高蓄電割合範囲にあるとき又は低蓄電割合範囲にあるときには、積算蓄電割合SOC1に基づいて図15に例示する予め定められた反映係数設定用マップを用いて反映係数kvを設定し(ステップS620)、電圧蓄電割合SOC2が制御蓄電割合SOCcにより大きく反映されるように前述の式(1)を用いて制御蓄電割合SOCcを演算して(ステップS370)、本ルーチンを終了する。図15の反映係数設定用マップでは、反映係数kvは、積算蓄電割合SOC1が所定の低蓄電割合SL以上且つ所定の高蓄電割合SH以下のときには値0が設定され、積算蓄電割合SOC1が所定の低蓄電割合SLより小さいほど値1まで大きくなる値が設定され、積算蓄電割合SOC1が所定の高蓄電割合SHより大きいほど値1まで大きくなる値が設定される。こうした設定によっても、バッテリ50の実際の蓄電割合SOCが低下したときなどに制御蓄電割合SOCcを実際の蓄電割合SOCをより正しく反映した値とすることができる。
【0054】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50はニッケル水素二次電池であるものとしたが、蓄電割合SOCが低蓄電割合範囲を含む所定蓄電割合範囲内のときには蓄電割合SOCが所定蓄電割合範囲外のときに比して蓄電割合SOCの単位変化量に対するバッテリ電圧Vbの変化量が大きいという特性、言い換えると、バッテリ電圧Vbが低電圧範囲を含む所定電圧範囲内のときにはバッテリ電圧Vbが所定電圧範囲外のときに比して蓄電割合SOCの単位変化量に対するバッテリ電圧Vbの変化量が大きいという特性を有するものであれば、如何なる二次電池を用いるものとしてもよい。
【0055】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図16の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図14における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0056】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すると共にモータMG2からの動力を減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図17の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22からの動力を用いてモータMG1により発電した電力をバッテリ50に充電すると共にバッテリ50からの電力を用いてモータMG2により駆動輪63a,63bに接続された駆動軸に動力を出力するものとしてもよい。また、図18の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、駆動輪63a,63bに接続された駆動軸に変速機330を介してモータMGを取り付け、モータMGの回転軸にクラッチ329を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機330とを介して駆動軸に出力すると共にモータMGからの動力を変速機330を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。即ち、内燃機関と内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と走行用の動力を入出力可能な電動機とを備えるものであれば、内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機として機能すると共に走行用の動力を入出力可能な電動機としても機能する一つの発電電動機を備えるハイブリッド自動車も含めて、如何なるタイプのハイブリッド自動車としてもよい。
【0057】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、充放電電流Ibやバッテリ電圧Vbに基づいてバッテリ50の蓄電割合SOCの推定値である制御蓄電割合SOCcを設定する図4の蓄電割合設定ルーチンを実行するバッテリECU52が「推定蓄電割合演算手段」に相当し、強制充電要求フラグFbが値0のときにはエンジン22の運転に際して充放電要求パワーPb*に基づいてバッテリ50を充放電すると共にエンジン22の要求パワーPe*の大小に基づくエンジン22の間欠運転を伴って駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行し、強制充電要求フラグFbが値1のときには充放電要求パワーPe*に基づいてバッテリ50の充電を伴ってエンジン22の要求パワーPe*の大小に拘わらずエンジン22を継続して運転してリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*とを設定する図2の駆動制御ルーチンを実行したり、バッテリ50の制御蓄電割合SOCcが充電必要閾値Smin以下になって強制充電走行制御を開始するときに過大推定低下時であるか否かを判定し判定結果に応じて充電終了閾値Sfinを第1の閾値S1または第2の閾値S2に設定して制御蓄電割合SOCcが充電終了閾値Sfinになるまで強制充電要求フラグFbに値1を保持する図11の強制充電関連設定ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、目標回転数Ne*や目標トルクTe*に基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24と、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。また、動力分配統合機構30が「遊星歯車機構」に相当する。
【0058】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど、如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、内燃機関からの動力を用いて発電可能なものであれば如何なるタイプの発電機であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、ニッケル水素二次電池であるバッテリ50に限定されるものではなく、発電機および電動機と電力のやりとりが可能なものであれば、他のタイプの二次電池であっても構わない。「推定蓄電割合演算手段」としては、図4の蓄電割合設定ルーチンを実行するバッテリECU52に限定されるものではなく、二次電池の状態に基づいて二次電池に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合の推定値として推定蓄電割合を演算するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、図2に例示した駆動制御や図11に例示した強制充電関連設定を行なうものに限定されるものではなく、設定された推定蓄電割合が予め定められた充電必要閾値以下になるまでは内燃機関を運転するときに推定蓄電割合が小さいほど大きくなる傾向の充電電力で二次電池を充電すると共に内燃機関の間欠運転を伴って走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、設定された推定蓄電割合が充電必要閾値以下になったときには内燃機関の運転を継続して発電機からの電力により二次電池を充電すると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する強制充電走行制御を行ない、さらに、強制充電走行制御を開始する際、推定蓄電割合が二次電池の実際の蓄電割合より許容範囲を超えて大きい状態から低下して設定された推定蓄電割合が充電必要閾値以下になった過大推定低下時でないときには、設定された推定蓄電割合が充電必要閾値より大きい値として予め定められた第1の充電終了閾値になるまで強制充電走行制御を継続し、過大推定低下時であるときには、設定された推定蓄電割合が充電必要閾値より大きく且つ第1の充電終了閾値より小さい第2の充電終了閾値になるまで強制充電走行制御を継続する、ものであれば如何なるものとしても構わない。また、「遊星歯車機構」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるもの4軸式のものなど、内燃機関の出力軸と発電機の回転軸と車軸に連結され且つ電動機が接続された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるものしても構わない。
【0059】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0060】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
20,120,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、329 クラッチ、330 変速機、MG1,MG2,MG モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関からの動力を用いて発電可能な発電機と、走行用の動力を入出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、前記二次電池の状態に基づいて該二次電池に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合の推定値として推定蓄電割合を演算する推定蓄電割合演算手段と、前記演算された推定蓄電割合が予め定められた充電必要閾値以下になるまでは前記内燃機関を運転するときに前記推定蓄電割合が小さいほど大きくなる傾向の充電電力で前記二次電池を充電すると共に前記内燃機関の間欠運転を伴って走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値以下になったときには前記内燃機関の運転を継続して前記発電機からの電力により前記二次電池を充電すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する強制充電走行制御を行なう制御手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記強制充電走行制御を開始する際、前記推定蓄電割合が前記二次電池の実際の前記蓄電割合より許容範囲を超えて大きい状態から低下して前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値以下になった過大推定低下時でないときには、前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値より大きい値として予め定められた第1の充電終了閾値になるまで前記強制充電走行制御を継続し、前記過大推定低下時であるときには、前記演算された推定蓄電割合が前記充電必要閾値より大きく且つ前記第1の充電終了閾値より小さい第2の充電終了閾値になるまで前記強制充電走行制御を継続する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記二次電池は、前記二次電池の電圧が少なくとも予め定められた低電圧範囲を含む所定電圧範囲内のときには該所定電圧範囲外のときよりも前記蓄電割合の単位変化量に対する前記二次電池の電圧の変化量が大きくなる電池特性を有し、
前記推定蓄電割合演算手段は、前記二次電池を充放電する電流の積算値に基づいて前記蓄電割合の第1の推定値である積算蓄電割合を演算すると共に、前記二次電池の電圧に基づいて前記電池特性が反映された該二次電池の電圧と前記蓄電割合との予め定められた関係を用いて前記蓄電割合の第2の推定値である電圧蓄電割合を設定し、前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲外のときには前記設定した電圧蓄電割合よりも前記演算した積算蓄電割合により近い値となるように前記推定蓄電割合を演算し、前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲内のときには前記二次電池の電圧が前記所定電圧範囲外から離れるほど前記設定した電圧蓄電割合に近くなる傾向の値となるように前記推定蓄電割合を演算する手段であり、
前記制御手段は、前記強制充電走行制御を開始する際に前記演算された推定蓄電割合が前記演算された積算蓄電割合より予め定められた所定割合以上小さいときを前記過大推定低下時として制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記二次電池は、前記蓄電割合が少なくとも予め定められた低蓄電割合範囲を含む所定蓄電割合範囲内のときには該所定蓄電割合範囲外のときよりも前記蓄電割合の単位変化量に対する前記二次電池の電圧の変化量が大きくなる電池特性を有し、
前記推定蓄電割合演算手段は、前記二次電池を充放電する電流の積算値に基づいて前記蓄電割合の第1の推定値である積算蓄電割合を演算すると共に、前記二次電池の電圧に基づいて前記電池特性が反映された該二次電池の電圧と前記蓄電割合との予め定められた関係を用いて前記蓄電割合の第2の推定値である電圧蓄電割合を設定し、前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲外のときには前記設定した電圧蓄電割合よりも前記演算した積算蓄電割合により近い値を前記推定蓄電割合として演算し、前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲内のときには前記演算した積算蓄電割合が前記所定蓄電割合範囲外から離れるほど前記設定した電圧蓄電割合に近くなる傾向の値を前記推定蓄電割合として演算する手段であり、
前記制御手段は、前記強制充電走行制御を開始する際に前記演算された推定蓄電割合が前記演算された積算蓄電割合より予め定められた所定割合以上小さいときを前記過大推定低下時として制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項2または3記載のハイブリッド自動車であって、
前記推定蓄電割合演算手段は、前記強制充電走行制御が開始する際に前記積算蓄電割合を前記推定蓄電割合と等しい値に置き換える手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記内燃機関の運転を停止した状態で走行している最中に前記内燃機関の始動を伴って前記強制充電走行制御を開始したとき、前記強制充電走行制御を終了するときに前記内燃機関の運転が要求されていないときには該内燃機関の運転が停止されるよう該内燃機関を制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結され且つ前記電動機が接続された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構
を備えるハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−183915(P2012−183915A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48111(P2011−48111)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】