説明

ハイブリッド車のためのエネルギーシステム

ハイブリッド車(1)のためのエネルギーシステム(10)の運転制御方法である。エネルギーシステム(10)は、所望のエンジン回転速度(RPMdesired)で動作するように制御される燃焼機関(11)と、燃焼機関(11)により駆動されて生成電力を出力するように構成される発電機/モータ(12)と、燃焼機関(11)により駆動されるように構成されるとともに、発電機/モータ(12)によって駆動可能な電力消費装置(14)と、発電機/モータ(12)に接続されるとともに、前記発電機/モータ(12)により出力される生成電力を受け入れるように構成されるエネルギー蓄積装置(13)とを備える。上記方法は、実エンジン回転速度(RPMactual)をモニタリングするステップ(101)と、実エンジン回転速度(RPMactual)が所望のエンジン回転速度(RPMdesired)より低下する場合に、発電機/モータ(12)を制御して、徐々に減少する生成電力を出力させるステップ(104)とを備える。これにより、燃焼機関を、効率的に作動する運転範囲に維持することが可能になり、同時に、電力消費装置の電力の要求を満たすことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車用のエネルギーシステムの運転を制御するための方法および装置、並びに、そのようなハイブリッド車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中への温室効果ガスの排出を低減する現行対策の一環として、よりエネルギー効率の高い車両が現在開発されている。
【0003】
そのような車両の一種は、いわゆるハイブリッド車と呼ばれ、このハイブリッド車には、燃焼機関、発電機/モータ、及びバッテリまたはコンデンサのようなエネルギー蓄積装置を有するエネルギーシステムが設けられている。エネルギー蓄積装置に蓄えられたエネルギーを賢明に使用することによって、燃焼機関をより効率的に運転することができ、それは、ハイブリッド車により排出されるキロメートル当たりのCO量の低減に繋がる。
【0004】
今日、乗用車の形態のハイブリッド車は市場に豊富に存在する。しかしながら、液圧リフトシステムのような付加的な大電力消費装置が設けられる建設機械およびその他の実用車の形態のハイブリッド車は、殆ど見付からない。
【発明の概要】
【0005】
上記のことを考慮して、本発明は、液圧リフトシステム(hydraulic lifting system)のような大電力消費装置を有するハイブリッド車のエネルギー効率的な運転を提供することを全般的な目的とする。
【0006】
本発明の第1態様においては、それら目的およびその他の目的が、ハイブリッド車のエネルギーシステムの運転制御方法によって達成されるものであり、前記エネルギーシステムが、所望のエンジン回転速度で動作するように制御される燃焼機関と、前記燃焼機関により駆動されて生成電力を出力するように構成される発電機/モータと、前記燃焼機関により駆動されるように構成されるとともに、前記発電機/モータによって駆動可能な電力消費装置と、前記発電機/モータに接続されるとともに、前記発電機/モータにより出力される生成電力を受け入れるように構成されるエネルギー蓄積装置とを備え、前記方法が、実エンジン回転速度をモニタリングするステップと、前記実エンジン回転速度が前記所望のエンジン回転速度より低下する場合に、前記発電機/モータを制御して、徐々に減少する生成電力を出力させるステップとを備える。
【0007】
なお、本発明に係る方法は、そのステップを特定の順序で実行することに決して限定されるものではないことに留意されたい。
【0008】
大電力消費装置を備えるハイブリッド車用のエネルギーシステムの開発に際して、本発明者は新たな課題に直面してきた。例えば、電力消費装置からの予測不能な電力の需要は、燃焼機関によって生成することができる電力よりも多くの総需要を引き起こす場合があり、それは、その後に止まる場合がある。
【0009】
この問題に対する明白な解決策は、より大きな燃焼機関を提供することであるかもしれないが、そのような解決策では、エネルギー効率を高めることのような、ハイブリッド車の利点が完全には実現されることはない。また、過大な燃焼機関は、ハイブリッド車のコストを増大させる。
【0010】
本発明者が直面するそれらの新たな課題を考慮して、本発明は、実エンジン回転速度をモニタリングするとともに、実エンジン回転速度が所望のエンジン回転速度より低下する場合(これは、大電力消費装置により電力が必要とされる場合に生じるであろう)に、発電機/モータにより出力される生成電力を徐々に減少させることによって、大電力消費装置を有するハイブリッド車のエネルギー効率的な運転が達成されるという認識に基づくものである。
【0011】
発電機/モータにより出力される生成電力の緩やかな減少は、連続的なものであっても、段階的なものであってもよい。例えば、実エンジン回転速度を示す値や、対応する生成電力を示す値は、参照テーブル内に与えられるものであってもよく、この参照テーブルは、その後、実エンジン回転速度を示す検出値に基づいて、発電機/モータを制御するために使用することができる。
【0012】
発電機/モータは、その生成電力の出力を急速に低下させて、実エンジン回転速度の低下に密に追従するように制御することができ、それにより、燃焼機関が動作し続けて停止しないことを可能にするのに十分な速さで、燃焼機関により駆動される負荷を低下させることができる。
【0013】
これにより、燃焼機関を、効率的に作動する運転範囲に維持することが可能になり、同時に、電力消費装置の電力の要求を満たすことが可能になる。
【0014】
さらに、本発明の方法の様々な実施形態は、燃焼機関を、発電機/モータおよび電力消費装置の予測負荷の合計よりもかなり低い最大出力電力用の寸法とすることを可能にする。これは、COの放出量を低減して、エネルギーシステムのコストを低下させる。
【0015】
上述した所望のエンジン回転速度は、一般に、燃焼機関が最大効率を持つエンジン回転速度となるように選択することができ、燃焼機関は、典型的には、所望のエンジン回転速度に向けてエンジンを調整するエンジン制御システムを有することができる。そのようなコントロールシステムは、それ自体は、従来より良く知られている。
【0016】
燃焼機関に加わる負荷が変動するとき、エンジン回転速度も一般に変動することとなる。ここで、変動するエンジン回転速度は、実エンジン回転速度である。そのような変動に応答して、エンジン制御システムは、一般に、所望のエンジン回転速度にエンジンを戻そうとする。
【0017】
本発明に係る方法はさらに、実エンジン回転速度が所望のエンジン回転速度に向けて増加している場合に、発電機/モータを制御して、徐々に増加する生成電力を出力させるステップをさらに備え、それにより、燃焼機関により伝達される電力の効率的な利用が提供される。
【0018】
その様々な実施形態によれば、本発明の方法は有利には、実エンジン回転速度が予め設定された閾値エンジン回転速度よりも低い場合に、発電機/モータを制御して、当該発電機/モータを、エネルギー蓄積装置から電力を引き出して電力消費装置に機械的動力を供給する電気モータとして機能させるステップをさらに備える。
【0019】
これにより、燃焼機関が伝えることができるよりも多くの電力を電力消費装置が必要とする場合においても、燃焼機関が作動して電力消費装置に機械的動力を供給し続けることを可能にすることができ、追加的な機械的動力を、発電機/モータにより提供することができる。
【0020】
これにより、少なくとも断続的に電力消費装置によって必要とされる電力よりも非常に小さい電力を提供するような寸法とすることができるという点において、より限られた大きさの燃焼機関が可能になる。これにより、エネルギーシステム、すなわちハイブリッド車を、低コストで、よりエネルギー効率的なものとすることができる。
【0021】
本発明の第2態様においては、上述した目的およびその他の目的が、ハイブリッド車のエネルギーシステムの運転を制御するコントローラによって達成されるものであり、前記エネルギーシステムが、所望のエンジン回転速度で動作するように制御可能な燃焼機関と、前記燃焼機関により駆動されて生成電力を出力するように構成される発電機/モータと、前記燃焼機関により駆動されるように構成されるとともに、前記発電機/モータによって駆動可能な電力消費装置と、前記発電機/モータに接続されるとともに、前記発電機/モータにより出力される生成電力を受け入れるように構成されるエネルギー蓄積装置とを備え、前記コントローラが、実エンジン回転速度をモニタリングし、前記実エンジン回転速度が前記所望のエンジン回転速度より低下する場合に、前記発電機/モータを制御して、徐々に減少する生成電力を出力させるように構成されている。
【0022】
コントローラは、ハードウェア、ソフトウェアまたはそれらの組合せの形態で提供することができ、また、本発明の第1態様に係る方法は、コントローラに含まれるマイクロプロセッサ上で実行するように構成されたコンピュータプログラムとして、あるいはそれらの組合せとして、コントローラのハードウェア内で具現化することができる。
【0023】
実エンジン回転速度のモニタリングのために、コントローラは実エンジン回転速度を示すデータを取得するための入力部を有することができる。データは、典型的には、実エンジン回転速度を感知するセンサから生じるものとすることができる。そのようなセンサは当業者には周知である。さらに、実エンジン回転速度は、燃焼機関のクランクシャフトの回転速度を直接モニタリングすることにより、あるいは、発電機/モータに含まれるロータ、または燃焼機関を発電機/モータおよび電力消費装置に機械的に連結することができる1または幾つかのシャフトまたはその他の動力伝達部材のような、エネルギーシステムのその他の回転部分を間接的にモニタリングすることにより、測定することができる。
【0024】
本発明の第1態様に関連して述べたように、コントローラはさらに、実エンジン回転速度が予め設定された閾値エンジン回転速度よりも低い場合に、発電機/モータを制御して、当該発電機/モータを、エネルギー蓄積装置から電力を引き出して電力消費装置に機械的動力を供給する電気モータとして機能させるように、構成することができる。
【0025】
この目的を達成するために、コントローラは、実エンジン回転速度を予め設定されたエンジン回転速度と比較して、実エンジン回転速度が閾値エンジン回転速度よりも低いと判定される場合に、発電機/モータを逆作動させるように構成することができる。発電機/モータを発電機の状態からモータの状態に切り換える方法は当業者に良く知られている。
【0026】
本発明の第2態様の更なる実施形態および本発明の第2態様によって得られる効果は、本発明の第1態様について上述したものと大部分が類似している。
【0027】
また、本発明に係るコントローラは、有利にはハイブリッド車のエネルギーシステムに含ませることができるものであり、エネルギーシステムはさらに、所望のエンジン回転速度で動作するように制御可能な燃焼機関と、前記燃焼機関により駆動されて生成電力を出力するように構成される発電機/モータと、前記燃焼機関により駆動されるように構成されるとともに、前記発電機/モータによって駆動可能な電力消費装置と、前記発電機/モータに接続されるとともに、前記発電機/モータにより出力される生成電力を受け入れるように構成されるエネルギー蓄積装置とを備える。
【0028】
発電機/モータおよび電力消費装置は、燃焼機関に機械的に連結されて、実エンジン回転速度で燃焼機関により駆動されるようにしてもよい。
【0029】
また、燃焼機関、発電機/モータおよび電力消費装置は、直列配列で配置するようにして、シャフトで相互に連結するようにしてもよい。
【0030】
様々な実施形態によれば、電力消費装置を、液圧リフトシステムのような液圧システムのポンプとすることができる。
【0031】
さらに、本発明の様々な実施形態に係るエネルギーシステムは、有利にはハイブリッド車に含まれるものであり、このハイブリッド車は、一組の動輪と、一組の動輪を駆動する少なくとも1の駆動電気モータとを備え、電気モータが、当該ハイブリッド車のエネルギーシステムに含まれるエネルギー蓄積装置から電力を受け取るように構成されている。
【0032】
様々な実施形態においては、ハイブリッド車が、複数の個別に制御可能な駆動電気モータを備えることができ、その各々が、対応する動輪の一つを駆動するように配置されている。
【0033】
ハイブリッド車は、当該ハイブリッド車のエネルギーシステムに含まれる電力消費装置によって駆動するように構成された液圧システムをさらに備えることができる。
【0034】
様々な実施形態においては、この液圧システムが、林業に使用されるフォワーダの掘削機バケットまたはグラビングツールのような液圧リフトツールを備えることができる。
【0035】
更なる態様によれば、上述した目的およびその他の目的が、コンピュータプログラムであって、本発明の第2態様に係るコントローラ上で実行されるときに、本発明の第1態様に係る方法のステップの実行を可能にするコンピュータプログラムによっても達成される。そのようなコンピュータプログラムは、既存のコンピュータプログラムが本発明に係る方法のステップを実行することを可能にする、スタンドアロンのコンピュータプログラムまたはそのアップグレード版とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の例示的な実施形態を示す添付図面を参照して、本発明のこれらの態様およびその他の態様をより詳細に説明することとする。
【図1】図1は、林業で使用されるフォワーダ(forwarder)の形態の、本発明の一実施形態に係る例示的なハイブリッド車を概略的に示している。
【図2】図2は、図1のハイブリッド車に含まれるエネルギーシステムの一実施形態を概略的に示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るエネルギーシステム制御方法を概略的に示すフローチャートである。
【図4】図4a乃至図4cは、例示的なシナリオにおける図2のエネルギーシステムの運転を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
この詳細な説明では、本発明に係る制御方法、コントローラおよびエネルギーシステムの様々な実施形態を、林業で使用されるフォワーダに含まれるエネルギーシステムを参照しながら、主に検討にする。なお、これは、本発明の範囲を決して限定するものではなく、掘削機およびダンプカーを含むハイブリッド駆動建設機械のような任意のその他のハイブリッド車で使用されるエネルギーシステムに同等に適用可能なものである。
【0038】
図1は、林業で使用されるフォワーダ1の形態の例示的なハイブリッド車を概略的に示している。
【0039】
ハイブリッドフォワーダ1は、キャビン2と、伐採した木材を保持するベッド3と、フォワーダ1のオペレータが伐採した木材を地面からフォワーダ1のベッド3に持ち上げることを可能にする液圧グラビングツール4とを備える。ハイブリッドフォワーダ1には、6つの車輪5a−5fがさらに設けられ、その各々が、関連する個々の制御可能な電気モータ(図1には現れない)によって駆動される。車輪5a−5fを駆動する電気モータおよび液圧グラビングツール4は、図1には現れないが図2を参照して以下により詳細に説明するエネルギーシステムによって、動力が供給される。
【0040】
図2は、図1のハイブリッドフォワーダ1に含まれるエネルギーシステムの一実施形態を概略的に示すブロック図である。
【0041】
図2を参照すると、エネルギーシステム10は、ディーゼルまたはバイオ燃料で作動するエンジンの形態で提供されることが望ましい燃焼機関11と、発電機/モータ12と、ここでは単一のバッテリで概略的に示されているエネルギー蓄積装置13と、図1のハイブリッドフォワーダ1のグラビングツール4に動力を供給する液圧ポンプ14の形態の電力消費装置とを備える。
【0042】
図2に示すように、燃焼機関11、発電機/モータ12および液圧ポンプ14は、シャフト15,16によって機械的に連結されており、それらシャフトは、同じ回転速度、実エンジン回転速度RPMactualで、燃焼機関11、発電機/モータ12および液圧ポンプ14の可動部分を回転させる。なお、本発明は、1または幾つかのギアボックスまたは同様のものを介するような、エネルギーシステム10の様々な部材間に間接的な機械的結合を有するエネルギーシステムにも同等に適用可能である。
【0043】
また、図2に概略的に示すように、発電機/モータ12は、エネルギー蓄積装置13に電気的に接続され、このエネルギー蓄積装置は、フォワーダ1の車輪5a−5fを駆動する電気モータに電気エネルギーを提供する。なお、発電機/モータ12が、車輪5a−5fを駆動する電気モータに、直接的に電力を供給するようにしてもよい。
【0044】
エネルギーシステム10の運転を制御するために、エネルギーシステム10にはコントローラ17が設けられ、このコントローラは、図2に概略的に示す例示的な実施形態では、発電機/モータ12に付随するマイクロプロセッサとして示されている。
【0045】
ここで、本発明の一実施形態に係る例示的なエネルギーシステムの基本構成を説明して、図3の概略的なフローチャートを参照しながら、コントローラ17により実行される制御方法の一実施形態について以下に説明することとする。
【0046】
図3を参照すると、最初のステップ101において、実エンジン回転速度RPMactualがコントローラ17によってモニタされる。実エンジン回転速度RPMactualは、実エンジン回転速度RPMactualを示すデータを繰り返し取得することによってモニタするようにしてもよい。これは、例えば、燃焼機関11のクランクシャフト、発電機/モータ12のロータ、液圧ポンプ14、またはエネルギーシステム10の主要部材を機械的に連結するシャフト15,16の何れかの回転速度を検知する1または複数のセンサからの信号を得ることによって達成することができる。
【0047】
次のステップ102において、モニタされた実エンジン回転速度RPMactualが、予め設定された閾値エンジン回転速度RPMthと比較される。実エンジン回転速度RPMactualが閾値エンジン回転速度RPMthよりも大きい場合には、当該方法は、ステップ103に移行し、このステップにおいて、実エンジン回転速度RPMactualの経時的な変化が評価される。実エンジン回転速度RPMactualは、一定に保持されるか、低下または増加する可能性がある。
【0048】
ステップ103において、実エンジン回転速度RPMactualが一定であると判定される場合には、プロセスがステップ101に戻って、実エンジン回転速度RPMactualのモニタを続ける。
【0049】
ステップ103において、実エンジン回転速度RPMactualが低下していると判定される場合には、プロセスがステップ104に移行するとともに、発電機/モータ12を制御して、発電機/モータ12により出力される電力を徐々に低下させる。その後、プロセスがステップ101に戻って、実エンジン回転速度RPMactualのモニタを続ける。
【0050】
ステップ103において、実エンジン回転速度RPMactualが増加していると判定される場合には、プロセスがステップ105に移行するとともに、発電機/モータ12を制御して、発電機/モータ12により出力される電力を徐々に増加させる。その後、プロセスがステップ101に戻って、実エンジン回転速度RPMactualのモニタを続ける。
【0051】
一方、ステップ102において、実エンジン回転速度RPMactualが閾値エンジン回転速度RPMthよりも小さいと判定される場合には、当該方法は、ステップ106に移行するとともに、発電機/モータ12を制御して、エネルギー蓄積装置13から引き出される電力を、発電機/モータ12および液圧ポンプ14を連結するシャフト16を介して液圧ポンプ14に供給される機械的動力に変換する電気モータとして、発電機/モータを機能させる。その後、プロセスがステップ101に戻って、実エンジン回転速度RPMactualのモニタを続ける。
【0052】
ここで、本発明に係るエネルギーシステム制御方法の一実施形態を総括的に説明した後に、図2に関連して上述したエネルギーシステムの運転を、図4a乃至4cの概略図を参照しながら以下に説明することとする。
【0053】
図4aの図面は、図1のフォワーダ1の例示的な一連の動作について、時間の関数として液圧ポンプ14の電力消費を概略的に示し、図4bの図面は、時間の関数として、実エンジン回転速度を概略的に示し、図4cの図面は、発電機/モータ12からの電力の出力を概略的に示している。
【0054】
図4a乃至4cで示される時間tで生じる最初の事象の前に、燃焼機関11が、所望のエンジン回転速度RPMdesiredで作動し、液圧ポンプ14が、非常に低い待機電力を消費し、発電機/モータ12が、燃焼機関11により与えられる機械的動力のすべてを事実上受け取って、この動力を生成電力に変換し、その電力がエネルギー蓄積装置13に出力される。
【0055】
図4aから分かるように、時間tに水圧ポンプ14の電力消費の増加があり、そこで、待機電力から電力Pに電力消費が増加する。この液圧ポンプ14の電力消費の増加は、フォワーダ1を回転させること、グラビングツール4を操作すること、キャビン2を持ち上げること等のような、オペレータの行為により生じる場合がある。
【0056】
液圧ポンプ14の電力消費が増加するとき、燃焼機関11が伝えることができるよりも多くの電力に対する需要が瞬間的に生じることとなり、それは、図4bに概略的に示すように、実エンジン回転速度RPMactualの急降下をもたらす。
【0057】
実エンジン回転速度RPMactualは、図3のフローチャートとの関連で説明したように、コントローラ17によりモニタされ、コントローラは、発電機/モータ12を制御して、図4cに概略的に示すように、発電機/モータ12により出力される生成電力を徐々に低下させることとなる。発電機/モータ12からの電力の出力、すなわち発電機/モータ12により消費される機械的動力は、燃焼機関11により提供される動力が発電機/モータ12および液圧ポンプ14により消費される電力と一致するような定常状態に達するまで、徐々に低下することとなる。ここで例示の実施例においては、液圧ポンプ14の電力消費が待機電力に再び落ちる時間tまで、定常状態が続く。
【0058】
液圧ポンプ14の電力消費の減少の結果として、エネルギーシステム10の総消費電力が下がる。これにより、燃焼機関のエンジン制御システムが、図4bに示すように、所望のエンジン回転速度RPMactualに達するまで、実エンジン回転速度RPMactualを徐々に増加させることが可能になる。
【0059】
実エンジン回転速度RPMactualはコントローラ17によってモニタされ、コントローラは、図4cに概略的に示すように、発電機/モータ12を制御して、徐々に増加する生成電力をエネルギー蓄積装置13に出力させる。
【0060】
時間tにおいて、図4aから分かるように、液圧ポンプ14の消費電力の増加が再びあり、そこで、電力消費が、待機電力から、燃焼機関11により提供することができる最大電力よりも高い電力Pに増加する。この液圧ポンプ14の電力消費の増加は、例えば、グラビングツール4を操作して重い荷を持ち上げるのと、キャビン2を持ち上げるのとを同時に行うような、オペレータの行為の組合せにより生じることがある。
【0061】
液圧ポンプ14の消費電力が増加するとき、燃焼機関11が伝えることができるより多くの電力の需要が再び瞬間的に生じることがあり、それは、図4bに概略的に示すように、実エンジン回転速度RPMactualの急降下をもたらす。
【0062】
実エンジン回転速度RPMactualの低下に応答して、コントローラ17は、発電機/モータ12を再び制御して、徐々に減少する生成電力をエネルギー蓄積装置13に出力させることとなる。この場合、液圧ポンプ14は、燃焼機関11が伝えることができるより多くの電力を要求するため、定常状態が達成されることはない。その代わりに、実エンジン回転速度RPMactualは、予め設定された閾値エンジン回転速度RPMthまでは、降下し続ける。これは、コントローラ17によって検知され、これに応答して、コントローラは、発電機/モータ12を制御して、エネルギー蓄積装置13から電力を引き出して機械的動力を液圧ポンプ14に供給する電気モータとして、発電機/モータ12を機能させる。これにより、燃焼機関11の失速が阻止されて、燃焼機関11および発電機/モータ12の双方から同時に必要とする機械的動力が液圧ポンプ14に提供される。
【0063】
図4aに示すように、時間tで、液圧ポンプ14の電力消費が待機電力に再び降下する。
【0064】
液圧ポンプ14の消費電力の減少の結果として、エネルギーシステム10の総消費電力が下がる。これにより、燃焼機関のエンジン制御システムが、図4bに示すように、所望のエンジン回転速度RPMactualに達するまで、実エンジン回転速度RPMactualを徐々に増加させることが可能になる。
【0065】
実エンジン回転速度RPMactualはコントローラ17によってモニタされ、コントローラは、図4cに概略的に示すように、発電機/モータ12を制御して、発電機の状態に切り替えるとともに、徐々に増加する生成電力をエネルギー蓄積装置13に出力させる。
【0066】
液圧ポンプ14の電力消費の変化が、実質的に瞬間的なものとして図4aに示されているが、これは、例示を目的とするものに過ぎない。
【0067】
当業者は、本発明が、上述した望ましい実施形態に決して制限されるものではないことを理解するであろう。例えば、コントローラ17は、ハイブリッド車1の如何なる位置に配置するようにしてもよく、また、分散論理回路から構成するようにしてもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車(1)のためのエネルギーシステム(10)の運転制御方法であって、
前記エネルギーシステム(10)が、
所望のエンジン回転速度(RPMdesired)で動作するように制御される燃焼機関(11)と、
前記燃焼機関(11)により駆動されて生成電力を出力するように構成される発電機/モータ(12)と、
前記燃焼機関(11)により駆動されるように構成されるとともに、前記発電機/モータ(12)によって駆動可能な電力消費装置(14)と、
前記発電機/モータ(12)に接続されるとともに、前記発電機/モータ(12)により出力される生成電力を受け入れるように構成されるエネルギー蓄積装置(13)とを備え、
当該方法が、
実エンジン回転速度(RPMactual)をモニタリングするステップ(101)と、
前記実エンジン回転速度(RPMactual)が前記所望のエンジン回転速度(RPMdesired)より低下する場合に、前記発電機/モータ(12)を制御して、徐々に減少する生成電力を出力させるステップ(104)とを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記実エンジン回転速度(RPMactual)が前記所望のエンジン回転速度(RPMdesired)に向けて増加する場合に、前記発電機/モータ(12)を制御して、徐々に増加する生成電力を出力させるステップ(105)をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記実エンジン回転速度(RPMactual)が予め設定された閾値エンジン回転速度(RPMth)よりも低い場合に、前記発電機/モータ(12)を制御して、当該発電機/モータを、前記エネルギー蓄積装置(13)から電力を引き出して前記電力消費装置(14)に機械的動力を供給する電気モータとして機能させるステップ(106)をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
ハイブリッド車(1)のエネルギーシステム(10)の運転を制御するコントローラ(17)であって、
前記エネルギーシステム(10)が、
所望のエンジン回転速度(RPMdesired)で動作するように制御可能な燃焼機関(11)と、
前記燃焼機関(11)により駆動されて生成電力を出力するように構成される発電機/モータ(12)と、
前記燃焼機関(11)により駆動されるように構成されるとともに、前記発電機/モータ(12)によって駆動可能な電力消費装置(14)と、
前記発電機/モータ(12)に接続されるとともに、前記発電機/モータ(12)により出力される生成電力を受け入れるように構成されるエネルギー蓄積装置(13)とを備え、
当該コントローラ(17)が、
実エンジン回転速度(RPMactual)をモニタリングし、
前記実エンジン回転速度(RPMactual)が前記所望のエンジン回転速度(RPMdesired)より低下する場合に、前記発電機/モータ(12)を制御して、徐々に減少する生成電力を出力させるように構成されていることを特徴とするコントローラ。
【請求項5】
請求項4に記載のコントローラ(17)において、
前記実エンジン回転速度(RPMactual)が前記所望のエンジン回転速度(RPMdesired)に向けて増加する場合に、前記発電機/モータ(12)を制御して、徐々に増加する生成電力を出力させるように、さらに構成されていることを特徴とするコントローラ。
【請求項6】
請求項4または5に記載のコントローラ(17)において、
前記実エンジン回転速度(RPMactual)が予め設定された閾値エンジン回転速度(RPMth)よりも低い場合に、前記発電機/モータ(12)を制御して、当該発電機/モータを、前記エネルギー蓄積装置(13)から電力を引き出して前記電力消費装置(14)に機械的動力を供給する電気モータとして機能させるように、さらに構成されていることを特徴とするコントローラ。
【請求項7】
ハイブリッド車(1)のためのエネルギーシステム(10)であって、
所望のエンジン回転速度(RPMdesired)で動作するように制御可能な燃焼機関(11)と、
前記燃焼機関(11)により駆動されて生成電力を出力するように構成される発電機/モータ(12)と、
前記燃焼機関(11)により駆動されるように構成されるとともに、前記発電機/モータ(12)によって駆動可能な電力消費装置(14)と、
前記発電機/モータ(12)に接続されるとともに、前記発電機/モータ(12)により出力される生成電力を受け入れるように構成されるエネルギー蓄積装置(13)と、
請求項4乃至6の何れか一項に記載のコントローラ(17)とを備えることを特徴とするエネルギーシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のエネルギーシステム(10)において、
前記発電機/モータ(12)および前記電力消費装置(14)が、前記燃焼機関(11)に機械的に連結されて、前記実エンジン回転速度(RPMactual)で前記燃焼機関により駆動されることを特徴とするエネルギーシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のエネルギーシステム(10)において、
前記燃焼機関(11)、前記発電機/モータ(12)および前記電力消費装置(14)が、直列配列で配置されて、シャフト(15,16)により相互に連結されていることを特徴とするエネルギーシステム。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか一項に記載のエネルギーシステム(10)において、
前記電力消費装置(14)が、液圧システム(4)用のポンプであることを特徴とするエネルギーシステム。
【請求項11】
ハイブリッド車(1)であって、
請求項7乃至9の何れか一項に記載のエネルギーシステム(10)と、
一組の動輪(5a−5f)と、
前記一組の動輪(5a−5f)を駆動する少なくとも1の駆動電気モータとを備え、前記電気モータが、当該ハイブリッド車(1)のエネルギーシステム(10)に含まれるエネルギー蓄積装置(13)から電力を受け取るように構成されていることを特徴とするハイブリッド車。
【請求項12】
請求項11に記載のハイブリッド車(1)において、
複数の個別に制御可能な駆動電気モータを備え、その各々が、対応する前記動輪(5a−5f)の一つを駆動するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車。
【請求項13】
請求項11または12に記載のハイブリッド車(1)において、
当該ハイブリッド車(1)のエネルギーシステム(10)に含まれる前記電力消費装置(14)によって駆動されるように構成された液圧システム(4)をさらに備えることを特徴とするハイブリッド車。
【請求項14】
請求項13に記載のハイブリッド車(1)において、
前記液圧システムが、液圧リフトツール(4)を備えることを特徴とするハイブリッド車。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、
請求項4乃至6の何れか一項に記載のコントローラ(17)上で実行されるときに、請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法のステップの実行を可能にすることを特徴とするコンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a−4c】
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【公表番号】特表2012−526930(P2012−526930A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510121(P2012−510121)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055711
【国際公開番号】WO2010/130284
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511269392)エル−フォレスト アクチエボラグ (1)
【氏名又は名称原語表記】EL−FOREST AB
【Fターム(参考)】