説明

ハイブリッド車両の冷却システム

【課題】EGRクーラを流通するEGRガスを十分に冷却でき、もってEGR環流によるNOxの低減や燃費向上などの効果を十分に達成できるハイブリッド車両の冷却システムを提供する。
【解決手段】エンジン1の排気通路6と吸気通路3とを接続するEGR通路10に第1のEGRクーラ12を設けると共に、その下流側に第2のEGRクーラ13を設ける。これらのEGRクーラ12,13を他のクーラに直列接続することなく、第1のEGRクーラ12にはエンジン冷却系の第1の冷却水を直接的に流通させ、第2のEGRクーラ13には第1の冷却水よりも低温となるハイブリッド機器冷却系の第2の冷却水を直接的に流通させ、これによりEGRガスを2段階で冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両の冷却システムに係り、詳しくはエンジンの排気通路から吸気通路に環流されるEGRガスを冷却するEGRクーラに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排ガス中に含まれるNOxの低減や燃費向上などを目的とし、排気通路から吸気通路に排ガスをEGRガスとして環流させるEGRシステムが実施されている。このEGRシステムは排気通路と吸気通路とをEGR通路により接続し、EGR通路に設けたEGR弁の開度に応じてEGR環流量を調整するものである。高温のEGRガスをそのまま吸気通路に環流させると、筒内燃焼温度が上昇してEGR環流によるNOxや燃費面での効果が半減してしまうため、EGR通路にEGRクーラを設けてEGRガスを冷却する対策が講じられている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1にはターボ過給機付きエンジンを搭載したハイブリッド車両が開示されており、ターボ過給器により圧縮された吸入空気を冷却するためのチャージドエアクーラに対してEGRクーラを直列に配置している。これらのチャージドエアクーラ及びEGRクーラを冷却するための冷媒としては、ハイブリッド機器を冷却するためのハイブリッド機器冷却系を循環する冷媒が用いられ、ハイブリッド機器冷却系から冷媒を分流させてチャージドエアクーラ及びEGRクーラに流通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−32713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チャージドエアクーラを流通後の冷媒は吸入空気からの受熱で既に温度上昇しているため、その後にEGRクーラを流通する際にEGRガスを十分に冷却できない。結果としてEGRガスの環流によるNOxの低減や燃費向上などの効果を十分に達成できないという問題が生じ、従来からより効果的な対策が要望されていた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、EGRクーラを流通するEGRガスを十分に冷却でき、もってEGR環流によるNOxの低減や燃費向上などの効果を十分に達成することができるハイブリッド車両の冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、駆動源としてのエンジン及びモータから発生する駆動力が駆動輪に伝達されるハイブリッド車両の冷却システムであって、第1の冷却器を第1の冷媒が循環することによりエンジンを冷却するエンジン冷却系と、第2の冷却器を第1の冷媒よりも低温の第2の冷媒が循環することによってモータを駆動するためのハイブリッド機器を冷却するハイブリッド機器冷却系と、エンジンの排気通路からエンジンの吸気通路にEGRガスを環流させるEGR通路と、EGR通路に設けられ、第1の冷媒が流通しEGRガスを冷却する第1のEGRクーラと、EGR通路の第1のEGRクーラよりも下流側に設けられ、第2の冷媒が流通し第1のEGRクーラで冷却したEGRガスをさらに冷却する第2のEGRクーラとを備えたものである。
請求項2の発明は、請求項1において、エンジンがターボ過給機付きエンジンであり、ターボ過給器のコンプレッサからエンジンの吸気マニホールド部まで吸入空気を送るための吸気通路に設けられ、ハイブリッド機器冷却系からの第2の冷媒が第2のEGRクーラに対して並列関係で流通し吸入空気を冷却するチャージドエアクーラを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように請求項1の発明のハイブリッド車両の冷却システムによれば、エンジンの排気通路から吸気通路にEGRガスを環流させるEGR通路に第1のEGRクーラを設けると共に、その下流側に第2のEGRクーラを設け、第1のEGRクーラにエンジン冷却系の第1の冷媒を流通させ、第2のEGRクーラに第1の冷媒よりも低温となるハイブリッド機器冷却系の第2の冷媒を流通させるようにした。
第1及び第2のEGRクーラは他のクーラに直列接続されていないため、他のクーラでの冷媒の受熱による影響を受けることなく、常にエンジン冷却系やハイブリッド機器冷却系の冷媒が直接的に流通する。このためEGRガスは、まず第1のEGRクーラで比較的高温の冷媒により冷却され、さらに第2のEGRクーラでより低温の冷媒却系の冷却水により冷却され、この2段階の冷却により十分に温度低下した後に吸気通路に環流される。結果としてEGRガスと吸入空気とが混合した空気についても十分に温度低下してエンジン筒内に導入され、EGR環流によるNOxの低減や燃費向上などの効果を十分に達成することができる。
【0007】
請求項2の発明のハイブリッド車両の冷却システムによれば、請求項1に加えて、ターボ過給器のコンプレッサからエンジンまでの吸気通路に設けられ、ハイブリッド機器冷却系からの第2の冷媒が第2のEGRクーラに対して並列関係で流通するチャージドエアクーラを備えた。従って、チャージドエアクーラにはハイブリッド機器冷却系からの第2の冷媒が直接的に流通して吸入空気を十分に冷却でき、エンジンの体積効率の向上、ひいてはNOxの低減や燃費向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のハイブリッド車両の冷却システムを示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化したハイブリッド車両の冷却システムの一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のハイブリッド車両の冷却システムを示す全体構成図である。ハイブリッド車両(以下、単に車両という)には駆動源としてディーゼルエンジン1(以下、単にエンジンという)及びモータ2が搭載され、これらのエンジン1及びモータ2の駆動力が図示しない車両の駆動輪に任意に伝達されて車両が走行するようになっている。図1にはエンジン1及びモータ2から駆動輪までの動力伝達経路が示されていないが、本発明のハイブリッド車両の形式は特定のものに限定されることなく、周知のパラレル式やスプリット式など種々の形式を採用することができる。
エンジン1の吸気通路3の上流側にはターボ過給器4のコンプレッサ4aが設けられ、下流側には水冷式のチャージドエアクーラ5が設けられている。図示しないエアクリーナから吸気通路3内に導入された吸入空気はコンプレッサ4aにより圧縮され、チャージドエアクーラ5により冷却された後に吸気マニホールド部3aで各気筒に分流されて各気筒の筒内に導入される。
【0010】
また、エンジン1の排気通路6の上流側には上記コンプレッサ4aと同軸に連結されたターボ過給器4のタービン4bが設けられ、下流側には排ガス中のパティキュレート除去用のDPF7及びNOx浄化用のSCR触媒8が設けられている。各気筒の筒内で燃焼後の排ガスは排気マニホールド部6aで互いに集合してタービン4bを回転駆動した後、DPF7及びSCR触媒8を経て浄化されて外部に排出される。
上記排気通路のタービン4bの入口側と吸気通路3のチャージドエアクーラ5の出口側とはEGR通路10により接続されている。EGR通路10の上流側(タービン4b側)にはEGR弁11が設けられ、下流側には水冷式の第1のEGRクーラ12及び第2のEGRクーラ13が直列配置されている。EGR弁11の開度は図示しないECU(制御装置)によりエンジン1の運転状態に基づき制御され、EGR弁11の開度に応じて排ガスの一部がEGRガスとして排気通路6からEGR通路10を経て吸気通路3に環流される。EGRガスは第1及び第2のEGRクーラ12,13を流通する際に冷却され、冷却後のEGRガスが吸入空気と共に各気筒の筒内に導入されてNOx生成抑制や燃費向上などに貢献する。
【0011】
また、上記排気通路6のSCR触媒8の出口側と吸気通路3のコンプレッサ4aの入口側とはLPL-EGR通路14により接続されている。LPL-EGR通路14の上流側(SCR触媒8側)にはEGR弁15が設けられ、下流側には水冷式のLPL-EGRクーラ16が設けられている。このEGR弁15の開度もECUにより制御され、SCR触媒8を流通した排ガスがLPL-EGRクーラ16による冷却後にEGRガスとしてコンプレッサ4a側に環流される。なお、EGR通路10とは別にLPL-EGR通路14を設けているのは、EGR通路10を経たEGRガスの環流がコンプレッサ4aへの排ガス流入量、ひいては加給効率の低下につながるため、その悪影響を極力軽減すべく一部のEGRガスをLPL-EGR通路14を経て環流させているのである。
なお、以上の吸入空気、排ガス、EGRガスの流れを図1では全て白抜き矢印で示している。
【0012】
一方、上記エンジン1及びモータ2を含めた各種機器を冷却するために車両には2つの冷却系が構築されている。一方はエンジン1の冷却を目的としたエンジン冷却系であり、エンジン1に付設されたポンプ20によりエンジン1とラジエータ21(第1の冷却器)との間で第1の冷却水(第1の冷媒)を循環させるように、その冷却水路22が形成されている。効率的な温度域でエンジン1を運転させるべく第1の冷却水の循環量は調整され、このためエンジン冷却系を循環する第1の冷却水は常に80〜90℃程度に保たれている。
他方の冷却系はモータ2を駆動するハイブリッド機器の冷却を目的としたハイブリッド機器冷却系であり、ハイブリッド機器としては上記モータ2、電力源のバッテリ23、電力制御用のインバータ24などある。ハイブリッド機器冷却系は、図示しないモータ2で駆動されるポンプ25により各バイブリッド機器2,23,24とモータ駆動の冷却ファン26aが付設されたラジエータ26(第2の冷却器)との間で第2の冷却水(第2の冷媒)を循環させるように、その冷却水路27が形成されている。各ハイブリッド機器が効率よく作動可能な温度域は上記エンジン1に比較して低温であり、このためハイブリッド機器冷却系を循環する第2の冷却水は常に40〜60℃程度に保たれている。
なお、双方の冷却水温度は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。また、エンジン冷却系及びハイブリッド機器冷却系を共に冷却水を循環させる水冷式として構成しているが、これに限るものではなく、例えば冷媒としてオイルを循環させる油冷式としてもよい。
【0013】
エンジン冷却系及びハイブリッド機器冷却系の冷却水路22,27を循環する第1及び第2の冷却水は、上記チャージドエアクーラ5の吸入空気の冷却、及び第1及び第2のEGRクーラ12,13やLPL-EGRクーラ16のEGRガスの冷却にも利用されている。そして、本実施形態では、第1及び第2の冷却水の温度差に着目し、最も効率良く吸入空気やEGRガスを冷却可能なように双方の冷却水を使い分けて各クーラ(5,12,13,16)に流通させており、以下、これらエンジン冷却系及びハイブリッド機器冷却系の冷却水路22,27について詳述する。
【0014】
まず、エンジン冷却系の冷却水路22には、第1のEGRクーラ12及びLPL-EGRクーラ16が配設され、これらのクーラ12,16の冷却のために第1の冷却水が利用される。このため冷却水路22は、エンジン1のポンプ20、LPL-EGRクーラ16、ラジエータ21、第1のEGRクーラ12及びエンジン1を接続するように形成されている。従って、図中に破線の矢印で示すように、エンジン1のポンプ20から吐出された第1の冷却水はLPL-EGRクーラ16、ラジエータ21、第1のEGRクーラ12の順に流通して再びエンジン1に戻される。このため第1の冷却水はラジエータ21で放熱され、エンジン1では受熱により冷却すると共に、第1のEGRクーラ12及びLPL-EGRクーラ16では受熱により内部を流通するEGRガスを冷却する。
【0015】
また、ハイブリッド機器冷却系の冷却水路27には、チャージドエアクーラ5及び第2のEGRクーラ13が配設され、これらのクーラ5,13の冷却のために第2の冷却水が利用される。このため冷却水路27は、ポンプ25、バッテリ23、チャージドエアクーラ5、ラジエータ26を接続するように形成されると共に、バッテリ23に対して並列にインバータ24を接続するように形成されている。また冷却水路27は、バッテリ23の出口とラジエータ26の入口との間においてモータ2と第2のEGRクーラ13とを並列関係で接続するように形成されている。
従って、図中に実線の矢印で示すように、ポンプ25から吐出された第2の冷却水はバッテリ23及びインバータ24を流通した後、モータ2、第2のEGRクーラ13、チャージドエアクーラ5に分流してそれぞれの内部を流通し、その後に合流してラジエータ26を流通して再びポンプ25に戻される。このため第2の冷却水はラジエータ26で放熱され、バッテリ23、インバータ24、モータ2では受熱により冷却すると共に、チャージドエアクーラ5及び第2のEGRクーラ13では受熱により内部を流通する吸入空気やEGRガスを冷却する。
【0016】
そして、本実施形態のチャージドエアクーラ5と第2のEGRクーラ13は、分流後の第2の冷却水が流入することからも明らかなように並列関係にあり、この点でチャージドエアクーラとEGRクーラを直列配置した特許文献1の技術と大きく相違している。
一方、LPL-EGRクーラ16、チャージドエアクーラ5及び第2のEGRクーラ13は任意に第1及び第2の冷却水を流通させることなく迂回させ得るように構成されている。具体的には、エンジン冷却系の冷却水路22ではLPL-EGRクーラ16の入口側に開閉弁B1inが設けられ、開閉弁B1in及びLPL-EGRクーラ16に対して並列となるように開閉弁B1bpを備えたバイパス路31が形成されている。また、ハイブリッド機器冷却系の冷却水路27ではチャージドエアクーラ5の入口側に開閉弁B2inが設けられ、開閉弁B2in及びチャージドエアクーラ5に対して並列となるように開閉弁B2bpを備えたバイパス路32が形成されている。同様に、第2のEGRクーラ13の入口側にも開閉弁B3inが設けられ、開閉弁B3in及び第2のEGRクーラ13に対して並列となるように開閉弁B3bpを備えたバイパス路33が形成されている。
【0017】
各開閉弁B1in〜B3in,B1bp〜B3bpの開閉状態は上記ECUにより制御される。表1は各開閉弁B1in〜B3in,B1bp〜B3bpの開閉状態をまとめたものであり、エンジン1が冷態(暖機完了前)か温態(暖機完了後)かに応じた各クーラ5,13,16による冷却の要否に基づき、各開閉弁B1in〜B3in,B1bp〜B3bpの開閉状態が切り換えられる。なお、エンジン1の冷態・温態の判別はエンジン冷却水温や排気温度などに基づき行われる。
基本的にエンジン1の冷態時には各クーラ5,13,16による冷却を必要としないと見なし、クーラ入口側の開閉弁B1in〜B3inを閉弁すると共にバイパス路31〜33の開閉弁B1bp〜B3bpを開弁する。従って、LPL-EGRクーラ16、チャージドエアクーラ5及び第2のEGRクーラ13への第1及び第2の冷却水の流通が中断される。
【0018】
また、エンジン1の温態時には各クーラ5,13,16による冷却を必要とするものと見なし、クーラ入口側の開閉弁B1in〜B3inを開弁すると共にバイパス路31〜33の開閉弁B1bp〜B3bpを閉弁する。従って、このときLPL-EGRクーラ16にはエンジン冷却系の第1の冷却水が流通し、チャージドエアクーラ5及び第2のEGRクーラ13にはハイブリッド機器冷却系の第2の冷却水が流通する。なお、第1のEGRクーラ12は開閉弁が付設されていないため、エンジン1の冷態・温態に関わらず常に第1の冷却水の流通が継続される。
【0019】
【表1】

【0020】
次に、以上のように構成されたハイブリッド車両の冷却システムによる作用、具体的にはチャージドエアクーラ5による吸入空気の冷却作用と、第1及び第2のEGRクーラ12,13やLPL-EGRクーラ16によるEGRガスの冷却作用について詳述する。
まず、エンジン1の冷態時にはECUにより開閉弁B1in〜B3inが閉弁され、開閉弁B1bp〜B3bpが開弁される。このため、エンジン冷却系では第1の冷却水がLPL-EGRクーラ16を迂回してバイパス路31を流通し、これと並行してハイブリッド機器冷却系では第2の冷却水がチャージドエアクーラ5及び第2のEGRクーラ13を迂回してバイパス路32,33を流通する。
従って、チャージドエアクーラ5による吸入空気の冷却、LPL-EGRクーラ16及び第2のEGRクーラ13によるEGRガスの冷却は行われない。このため吸入空気及びEGRガスの温度は高いものとなり、エンジン1の暖機が促進されていち早く暖機完了可能となる。なお、本実施形態では、エンジン冷態時でもEGRガスの冷却はある程度必要であるとの観点から、第1のEGRクーラ12に第1の冷却水を流通させている。但し、これに限ることなく第1のEGRクーラ12にもバイパス路及び開閉弁を付設して、冷態時に冷却を中止するようにしてもよい。
【0021】
一方、エンジン1の温態時にはECUにより開閉弁B1in〜B3inが開弁され、開閉弁B1bp〜B3bpが閉弁される。このため、エンジン冷却系では第1の冷却水がLPL-EGRクーラ16及び第1のEGRクーラ12を流通し、これと並行してハイブリッド機器冷却系では第2の冷却水がチャージドエアクーラ5及び第2のEGRクーラ13を流通する。
従って、ターボ過給器4のコンプレッサ4aにより圧縮された吸入空気は吸気通路3を案内されて、チャージドエアクーラ5により冷却された後に各気筒の筒内に導入されて燃焼に供される。チャージドエアクーラ5は、第2のEGRクーラ13を含めた何れのクーラとも直列関係になく、ハイブリッド機器冷却系の冷却水路27を循環する第2の冷却水、即ちエンジン冷却系の第1の冷却水と比較して低温の第2の冷却水がチャージドエアクーラ5に直接的に流通する。よって、チャージドエアクーラ5により吸入空気は十分に冷却され、エンジン1の体積効率の向上、ひいてはNOxの低減や燃費向上を達成することができる。
【0022】
また、EGR弁11の開度に応じて排気通路6の排ガスの一部がEGRガスとしてEGR通路10を経て吸気通路3に環流され、その際に、第1及び第2のEGRクーラ12,13により冷却される。上記のように第2のEGRクーラ13はチャージドエアクーラ5に対して並列関係にある。このため第2のEGRクーラ13には、特許文献1の技術のようなチャージドエアクーラ5での受熱により温度上昇した冷却水ではなく、常にハイブリッド機器冷却系の冷却水路27を循環する第2の冷却水が直接的に流通する。なお、当然であるが、チャージドエアクーラ5とは別系統に設けられた第1のEGRクーラ12にはエンジン冷却系の冷却水路22を循環する第1の冷却水が直接的に流通し、チャージドエアクーラ5での第2の冷却水の受熱による影響は一切受けない。
【0023】
このためEGRガスは、まず第1のEGRクーラ12で比較的高温のエンジン冷却系の第1の冷却水により冷却され、さらに第2のEGRクーラ13でより低温のハイブリッド機器冷却系の第2の冷却水により冷却され、この2段階の冷却により十分に温度低下した後に吸気通路3に環流される。結果として、EGRガスと吸入空気とが混合した空気(以下、筒内導入空気という)についても十分に温度低下してエンジン筒内に導入されることになる。
低温のEGRガスの環流がNOxの低減や燃費向上などに直接的に貢献することは無論であるが、この要因は筒内導入空気の温度変動を抑制することによってもNOx低減や燃費向上に貢献する。即ち、周知のようにEGR制御では、エンジン1の運転状態から求めた目標EGR率に基づきEGR弁11,15の開度(即ち実EGR率)を制御しているが、アイドル運転などを除く過渡運転では、EGR率と共に吸入空気とEGRガスとの混合割合が常に変化している。吸入空気に対してEGRガスは格段に高温であるため、吸入空気とEGRガスとの混合割合の変化は筒内導入空気の温度変動に繋がる。よって、EGRガスを十分に冷却して吸入空気との温度格差を縮小すれば、過渡運転時においてEGR率が急激に変化したとしても、筒内導入空気はそれほど温度変動しなくなる。
【0024】
このように第1及び第2のEGRクーラ12,13によりEGRガスを十分に冷却して温度低下することにより、筒内導入空気の低温化及び温度変動の抑制を達成できることから、EGR環流によるNOxの低減や燃費向上などの効果を十分に得ることができる。
加えて、例えばEGRガスの冷却を第2のEGRクーラ13のみで実施した場合には、第2のEGRクーラ13での第2の冷却水の受熱量が増加するため、例えばラジエータ21の容量増加などのようなハイブリッド機器冷却系の仕様変更を要する。これに対して本実施形態のように第1及び第2のEGRクーラ12,13により2段階でEGRガスを冷却した場合、第2のEGRクーラ13に到達した時点で既にEGRガスが第1のEGRクーラ12の冷却により温度低下している。このため第2のEGRクーラ13での第2の冷却水の受熱量が低下し、ラジエータの容量増加などの対策を講じることなくEGRガスを十分に冷却できるという利点も得られる。
【0025】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではターボ過給器4を備えた加給式エンジン1に具体化してチャージドエアクーラ5を設けたが、これに限ることはなく、自然吸気式エンジンに具体化してチャージドエアクーラ5を省略してもよい。また、LPL-EGR通路14やLPL-EGRクーラ16についても同様であり、これらを省略してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジン
2 モータ
3 吸気通路
3a 吸気マニホールド部
4 ターボ過給器
4a コンプレッサ
5 チャージドエアクーラ
6 排気通路
10 EGR通路
12 第1のEGRクーラ
13 第2のEGRクーラ
21 ラジエータ(第1の冷却器)
26 ラジエータ(第2の冷却器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのエンジン及びモータから発生する駆動力が駆動輪に伝達されるハイブリッド車両の冷却システムであって、
第1の冷却器を第1の冷媒が循環することにより上記エンジンを冷却するエンジン冷却系と、
第2の冷却器を上記第1の冷媒よりも低温の第2の冷媒が循環することによって上記モータを駆動するためのハイブリッド機器を冷却するハイブリッド機器冷却系と、
上記エンジンの排気通路から当該エンジンの吸気通路にEGRガスを環流させるEGR通路と、
上記EGR通路に設けられ、上記第1の冷媒が流通し上記EGRガスを冷却する第1のEGRクーラと、
上記EGR通路の上記第1のEGRクーラよりも下流側に設けられ、上記第2の冷媒が流通し上記第1のEGRクーラで冷却したEGRガスをさらに冷却する第2のEGRクーラと
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の冷却システム。
【請求項2】
上記エンジンはターボ過給機付きエンジンであり、
上記ターボ過給器のコンプレッサから上記エンジンの吸気マニホールド部まで吸入空気を送るための吸気通路に設けられ、上記ハイブリッド機器冷却系からの第2の冷媒が上記第2のEGRクーラに対して並列関係で流通し上記吸入空気を冷却するチャージドエアクーラを備えたことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の冷却システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−86756(P2013−86756A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231793(P2011−231793)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】