説明

ハイブリッド酵素

本発明は、ポリペプチドおよびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、なかでも、炭水化物結合性モジュールを含んでなりかつエンド-アミラーゼ活性を有するハイブリッド酵素に関する。これらの酵素は、デンプンの変性および/または分解を含んでなる方法または練り粉を製造する方法において適用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細菌のエンド-アミラーゼは多数の方法、例えば、デンプンを変性し、および/または分解して、グルコースのより小さいポリマーまたはモノマーにする方法において、デンプンを液化するために使用される。分解生成物は、産業において、例えば、マルトースおよび/またはフルクトースのシロップとして使用することができるか、あるいは発酵生成物、例えば、エタノールへの発酵工程において処理することができる。細菌のエンド-アミラーゼは、パン粉に追加の柔軟性およびよりすぐれた湿気を与えるために、パン焼きにおいて使用される。しかしながら、エンド-アミラーゼは過剰使用が容易であり、この過剰使用は焼かれた製品においてゴムの性質を生じ、弾性を望ましくないほどに低下させることがある。種々の方法、例えば、デンプン処理およびパン焼きにおいて使用するために改良された性質を有するエンド-アミラーゼがこの分野において必要とされている。
【発明の開示】
【0003】
発明の要約
本発明者らは、驚くべきことには、エンド-アミラーゼに炭水化物結合性モジュール (CBM) を添加することによって、エンド-アミラーゼの触媒活性を変更し、これにより野生型酵素に比較してパン焼き性能を増加させることができることを発見した。焼かれた製品の味およびにおいに有意な変化は生じない。理論により拘束されないで、この効果はCBMにより与えられた練り粉における生デンプンに対する活性の増加、および/またはCBMにより与えられたパン焼きにおいて加熱されたデンプンに対する活性の減少のためであることが示唆される。CBMを有するエンド-アミラーゼは、CBMを含まない酵素に比較して、過剰使用の危険性が少ないパン焼き酵素として使用することができる。
【0004】
このようなハイブリッドは、エンド-アミラーゼ活性および炭水化物結合性モジュールを有する、主として、例えば、CBM20のようなデンプンに対するアフィニティーを有するポリペプチドから成り、現存するエンド-アミラーゼを超えた利点を有し、すなわち、必要な性質を有する触媒ドメインを選択することによって、例えば、pH分布、温度分布、酸化抵抗性、カルシウム安定性、基質アフィニティーまたは生成物分布を、より強いまたはより弱い結合アフィニティー、例えば、アミロースに対する特異的アフィニティー、アミロペクチンに対する特異的アフィニティーまたは炭水化物における特異的構造に対するアフィニティーを有する炭水化物結合性モジュールと組合わせることができる。このハイブリッドは、パン焼き添加物として、例えば、品質変化抵抗性酵素として使用することができる。
【0005】
さらに、本発明者らは、炭水化物結合性モジュール (CBM) をエンド-アミラーゼに添加することによって、活性および特異性を変更し、これにより種々のデンプン分解方法、例えば、生デンプン、例えば、非糊化デンプンおよび/または粒状デンプンの分解を含んでなる方法の効率を増加させることができることを驚くべきことには発見した。これらのCBMを有するエンド-アミラーゼはよりすぐれた加水分解活性を有するために、デンプンを糊化しないで全デンプン転化プロセスを実施することができる、すなわち、CBMを有するエンド-アミラーゼは生デンプンプロセスにおいて粒状デンプンを加水分解し、ならびに完全にまたは部分的に糊化したデンプンを伝統的デンプンプロセスにおいて加水分解することができる。
【0006】
したがって、本発明は、第1の面において、エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドを提供する。好ましくは、前記第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列は細菌に由来する。好ましくは、第2 アミノ酸配列は配列番号2中のアミノ酸残基485〜586として示すアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有し、および/または第1アミノ酸配列は配列番号35に示すアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有する。
【0007】
第2の面において、本発明は、第1面のポリペプチドを添加することを含んでなる、練り粉または練り粉から作られた食用製品を製造する方法を提供する。
第3の面および第4の面において、本発明は、第1面のポリペプチドを含んでなる組成物、および第1面のポリペプチドを含んでなる粒体または凝集粉末の形態の練り粉またはパンを改良する添加物を提供する。
【0008】
第5の面において、本発明は、パン焼きに適当なポリペプチドを設計する方法を提供し、前記方法は下記の工程を含んでなる: エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列、および炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を装備することを含んでなり、ここで前記第1アミノ酸配列は細菌に由来し、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を準備し、そして前記第1アミノ酸配列および前記第2 アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを構築する。
【0009】
第6の面において、本発明は、組成物を製造する方法を提供し、例えば、下記の工程を含んでなる方法においてパン改良添加物を製造する: a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列を準備し、b) 炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を準備し、c) 前記第1アミノ酸配列および第2 アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを構築し、d) 前記ポリペプチドをコードするDNA配列を準備し、e) 適当な宿主細胞において前記DNA配列を発現させそして前記ポリペプチドを回収し、そしてf) 前記ポリペプチドを穀粉または粒体または凝集粉末に添加する。
【0010】
第7の面において、本発明は、練り粉または練り粉から作られた食用製品を製造する方法を提供し、この方法は下記の工程を含んでなる: エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列を準備し、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を準備し、そして前記第1アミノ酸配列および第2 アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを構築し、前記ポリペプチドをコードするDNA配列を準備し、前記DNA配列を適当な宿主細胞において発現させ、そして前記ポリペプチドを回収し、そして前記ポリペプチドを練り粉に添加する。
【0011】
第8の面において、本発明は、デンプンを糖化する方法を提供し、ここでデンプンを第1面のポリペプチドで処理する。
【0012】
第9の面において、本発明は、下記の工程を含んでなる方法を提供する: エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドとデンプンを接触させ、ここで前記第1アミノ酸配列および/または前記第2 アミノ酸配列は細菌に由来し、デンプン基質の少なくとも90% w/wを発酵可能な糖に転化するために十分な時間の間および温度において、前記デンプンを前記ポリペプチドとインキュベート、発酵して発酵生成物を生成し、そして必要に応じて発酵生成物を回収し、ここで前記ポリペプチドは第1の面によるポリペプチドであることができる。
【0013】
第10の面において、本発明は、下記の工程を含んでなる方法を提供する: a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドを発現するように形質転換された酵母細胞とデンプン基質を接触させ、b) 前記デンプン基質の少なくとも90% w/wを発酵可能な糖に転化するために十分な時間の間および温度において、前記デンプン基質を前記ポリペプチドとともに保持し、c) 発酵させてエタノールを生成し、そして必要に応じてエタノールを回収し、ここで工程a、bおよびcを別々にまたは同時に実施し、そして前記ポリペプチドは第1の面によるポリペプチドであることができる。
【0014】
第11の面において、本発明は、下記の工程を含んでなる、発酵によりデンプン含有物質からエタノールを製造する方法を提供する: a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドで前記デンプン含有物質を液化し、ここで前記第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列は細菌に由来し、b) 得られた液化されたマッシュを糖化し、そしてc) 発酵生物の存在下に工程 (b) において得られた物質を発酵させる。
【0015】
なおそれ以上の面において、本発明は、第1の面によるポリペプチドをコードするDNA配列、前記DNA配列を含んでなるDNA構築物、前記DNA構築物を担持する組換え発現ベクター、前記DNA構築物または前記ベクターで形質転換された宿主細胞を提供し、前記宿主細胞は細菌細胞または真菌細胞、植物細胞または酵母細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
ハイブリッド酵素
本発明のポリペプチドは、エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュール (CBM) を含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるハイブリッド酵素であることができる。このハイブリッドは第1アミノ酸配列をコードする第1 DNA配列および第2 アミノ酸配列をコードする第2 DNA配列を融合することによって製造することができるか、あるいはこのハイブリッドは適当なCBM、リンカーおよび触媒ドメインのアミノ酸配列の知識に基づく完全に合成の遺伝子として製造することができる。
【0017】
用語 「ハイブリッド酵素」 (また、「融合タンパク質」 、「ハイブリッド」 、「ハイブリッドポリペプチド」 または 「ハイブリッドタンパク質」 と呼ぶ) は、少なくとも1つのエンド-アミラーゼ活性を有する触媒ドメインを含んでなる第1アミノ酸配列と、少なくとも1つの炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなる本発明のポリペプチドを特徴づけるために本明細書において使用し、ここで第1アミノ酸配列および第2 アミノ酸配列は異なる源に由来する。
【0018】
用語 「源」 は、例えば、下記のものとして理解されるが、これらに限定されない: 親酵素、またはその変異型、例えば、アミラーゼまたはグルコアミラーゼ、または適当な触媒モジュールおよび/または適当なCBMおよび/または適当なリンカーを含んでなる他の触媒活性。しかしながら、CBMはまた触媒活性を持たないポリペプチドに由来することができる。第1アミノ酸配列および第2 アミノ酸配列は同一細菌株、同一種内の菌株、密接に関係する種または関係する程度が低い生物に由来することができる。好ましくは、ハイブリッドの第1アミノ酸配列および第2 アミノ酸配列は、異なる源、例えば、同一の菌株および/または種からの異なる酵素に由来するか、あるいは、例えば、異なる種内の菌株に由来する。
【0019】
この明細書中で言及する酵素分類番号 (EC番号) は下記に従う: Recommendations of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology (http://www.chem.qmw.ac.uk/iubmb/enzyme/) 。
【0020】
本明細書において言及するハイブリッド酵素は、エンド-アミラーゼ、すなわち、炭水化物結合性モジュール (CBM) を含んでなるアミノ酸配列に結合した (すなわち、共有結合した) α-アミラーゼ (EC 3.2.1.1) のアミノ酸配列を含んでなる。こうして、ハイブリッド酵素はエンド-方式でデンプンの加水分解を触媒することができる酵素である。
【0021】
CBMを含有するハイブリッド酵素、ならびにそれらの製造および精製はこの分野において知られている [例えば、下記の文献を参照のこと: WO 90/00609、WO 94/24158およびWO 95/16782、ならびにGreenwood 他、Biotechnology and Bioengineering 44 (1994) pp. 1295-1305] 。それらは、例えば、次のようにして製造することができる: 問題の酵素をコードするDNA配列に、リンカーを使用するか、あるいは使用しないで、結合した炭水化物結合性モジュールをコードするDNAフラグメントを少なくとも含んでなるDNA構築物を宿主細胞の中に形質転換し、そして形質転換された宿主細胞を増殖させて融合遺伝子を発現させる。リンカーは結合 (すなわち、0残基を含んでなる) であるか、あるいは約2〜約100個の炭素原子、特に2〜40個の炭素原子を含んでなるリンカー基であることができる。
【0022】
しかしながら、リンカーは好ましくは0アミノ酸残基 (例えば、ちょうど結合) であるか、あるいは約2〜100アミノ酸残基、より好ましくは2〜40アミノ酸残基、例えば、2〜15アミノ酸残基である。好ましくは、リンカーはプロテアーゼによる加水分解に対して非感受性であるか、あるいは少なくとも低い感受性を有し、ここでプロテアーゼは、例えば、ハイブリッドの製造間におよび/またはハイブリッドの工業的適用間に存在することがある。問題の型のハイブリッド酵素中でCBMはハイブリッド酵素のC-末端、N-末端または内部に位置することができる。ある態様において、ポリペプチドは2以上のCBM、例えば、一方がC-末端に位置し、他方がN-末端に位置する2つのCBM、またはC-末端、N-末端または内部に縦列に位置する2つのCBMを含んでなることができる。しかしながら、3以上のCBMを有するポリペプチドが等しく考えられる。
【0023】
ポリペプチドの同一性
ポリペプチドの 「同一性」 は、第1配列が第2配列から偏っていることを示す、2配列間の同一性の程度として理解される。相同性はこの分野において知られているコンピュータプログラム、例えば、下記により適当に決定することができる: GCGプログラムパッケージで提供されるGAP (Program Manual for the Wisconsin Package、Version 8、1994年8月、Genetics Computer Group、575 Science Drive、米国 53711 ウィスコンシン州マディソン) (Needleman S. B. およびWunsch C. D. (1970) 、Journal of Molecular Biology 48、443-453。アミノ酸配列を比較するために下記の設定を使用する: 3.0のGAP生成ペナルティーおよび0.1のGAPエクステンションペナルティー。相同性を決定するアミノ酸配列の関係する部分は成熟ポリペプチド、すなわち、シグナルペプチドを含まないポリペプチドである。
【0024】
炭水化物結合性モジュール
炭水化物結合性モジュール (CBM) 、またはしばしば言及するように、炭水化物結合性ドメイン (CBD) は、多糖またはオリゴ糖 (炭水化物) に優先的に結合し、頻繁に、しかし必ずしも独占的にではなく、それらの水不溶性 (結晶質を包含する) 形態に結合するポリペプチドアミノ酸配列である。
【0025】
デンプン分解酵素に由来するCBMは、デンプン結合性モジュールまたはSBM (ある種のデンプン加水分解酵素、例えば、ある種のグルコアミラーゼ、またはシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼのような酵素、またはエンド-アミラーゼ中に存在することがあるCBM) をしばしば意味する。SBMはしばしばSBD (デンプン結合性ドメイン) と呼ばれる。デンプン結合性モジュールであるSBMは、本発明にとって好ましい。
【0026】
CBMは、特に典型的には基質加水分解のための活性部位を含有する触媒モジュールと、問題の炭水化物基質に結合するための炭水化物結合性モジュール (CBM) とを含んでなる加水分解酵素 (ヒドロラーゼ) において、2またはそれ以上のポリペプチドアミノ酸配列領域から成る大きいポリペプチドまたはタンパク質の一体的部分として見出される。このような酵素は2以上の触媒モジュールと、1、2または3つのCBMとを含んでなることができ、必要に応じて1または2以上のCBMを1または2以上の触媒モジュールに結合させる1または2以上のポリペプチドアミノ酸配列領域をさらに含んでなり、後者のタイプの領域は通常「リンカー」と呼ばれる。
CBMは、また、藻類、例えば、赤色藻ポルフィラ・プルプレア (Porphyra purpurea) 中に非加水分解性多糖結合性タンパク質の形態で見出された。
【0027】
CBMが存在するタンパク質/ポリペプチド (例えば、酵素、典型的には加水分解酵素) において、CBMはN末端またはC末端にまたは内部に位置することができる。
【0028】
CBMそれ自体を構成するポリペプチドまたはタンパク質 (例えば、加水分解酵素) の部分は、典型的には約30より多くかつ約250より少ないアミノ酸残基から成る。「ファミリー20の炭水化物結合性モジュール」またはCBM-20モジュールは、本発明の関係において、下記の文献に開示されているポリペプチドの炭水化物結合性モジュール (CBM) に対して少なくとも45%の相同性を有するほぼ100アミノ酸の配列として定義される: 第1図、Joergensen 他 (1997) Biotechnol. Lett. 19: 1027-1031。CBMはポリペプチドの最後の102アミノ酸、すなわち、アミノ酸582〜アミノ酸683のサブ配列を含んでなる。
【0029】
この開示において適用されるグリコシドヒドロラーゼファミリーのナンバリングは下記の概念に従う: Coutinho P. M. およびHenrissat B. (1999) CAZy-Carbohydrate-Active Enzymes server at URL: http://afmb.cnrs-mrs.fr/〜cazy/CAZY/index.htmlまたは選択的にCoutinho P. M. およびHenrissat B. 1999; The modular structure of cellulases and other carbohydrate-active enzymes: an integrated database approach、“Genetics, Biochemistry and Ecology of Cellulose Degradation”、 編者: K. Ohmiya、K. Hayashi、K. Sakka、Y. Kobayashi、S. KaritaおよびT. Kimura、Uni Publishers Co. 東京、pp. 15-23、およびBourne Y. およびHenrissat B. 2001; Glycoside hydrolase and glycosyltransferases: families and functional modules、Current Opinion in Structural Biology 11: 593-600。
【0030】
本発明の関係において使用するために適当なCBMを含んでなる酵素の例は、エンド-アミラーゼ (すなわち、α-アミラーゼ EC 3.2.1.3) 、マルトジェニックα-アミラーゼ (EC 3.2.1.133) 、グルコアミラーゼ (EC 3.2.1.3) またはCGTアーゼ (EC 2.4.1.19) である。
【0031】
炭水化物結合性モジュールファミリー20のCBMは本発明のために好ましい。本発明に適当な炭水化物結合性モジュールファミリー20のCBMは下記に由来することができる: バシラス・セレウス (Bacillus cereus) (SWISSPROT P36924) またはバシラス・サーキュランス (Bacillus circulans) (SWISSPROT P43379) のCGTアーゼ。また、前述のCBMアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%またはなお少なくとも90%の同一性を有するCBMは本発明のために好ましい。それ以上の適当な炭水化物結合性モジュールファミリー20は、URL: http://afmb.cnrs-mrs.fr/〜cazy/CAZY/index.htmlにおいて見出される。
【0032】
いったん基質結合性 (炭水化物結合性) 領域をコードするヌクレオチド配列が、cDNAまたは染色体DNAとして、同定されると、次いで種々の方法で操作して問題の酵素をコードするDNA配列にそれを融合することができる。次いで、リンカーを使用するか、あるいは使用しないで、炭水化物結合性アミノ酸配列をコードするDNAフラグメントおよび問題の酵素をコードするDNAを結合する。次いで、生ずる結合したDNAを種々の方法で操作して発現を達成する。
【0033】
細菌に由来するCBMは本発明の関係において一般に適当であるが、下記のCBMは好ましい: バシラス (bacillus) 由来のCBM、例えば、下記に由来するCBM20: バシラス・フラボテルムス (Bacillus flavothermus) (同義アノキシバシラス・コンタミナンス (Anoxybacillus contaminans)) 、好ましくはアミラーゼAMY1048 (本明細書において配列番号2) 、AMY1039またはAMY1079 (PCT/US 2004/023031 [NZ10474] 中にそれぞれ配列番号1、2および3として開示されている) 、Diversa、バシラス (Bacillus) 種TS23 (韓国) (Lin L.-L.; EMBL/GenBank/DDBJデータベースに1995年3月1日提出された。Long-Liu Un、Food Industry Research Institute、Culture Collection and Research Center、331 Food Road、Hsinchu、Taiwan 300、Republic of China) からのWO 2002068589に開示されているバシラス (Bacillus) アミラーゼ。
【0034】
特定の態様において、CBM配列は配列番号2中のアミノ酸残基485〜586として示すアミノ酸配列を有するか、あるいはCBM配列は前述のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%またはなお少なくとも90%の同一性を有する。
特定の態様において、CBM配列は配列番号2中のアミノ酸残基485〜586として示すアミノ酸配列と10位置以下、9位置以下、8位置以下、7位置以下、6位置以下、5位置以下、4位置以下、3位置以下、2位置以下またはなお1位置以下異なるアミノ酸配列を有する。
【0035】
エンド-アミラーゼ配列
本発明の関係において使用する型のCBM/アミラーゼハイブリッドのための基礎として適当であるエンド-アミラーゼは、細菌由来でありかつエンド-アミラーゼ活性を有するものを包含する。アミラーゼのエンド-活性は、この出願の 「材料および方法」 の節におけるアッセイにより決定される。バシラス (Bacillus) 種、特にバシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) 、バシラス・アミロリクファシエンス (B. amyloliquefaciens) 、バシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) またはバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) に由来するエンド-アミラーゼは好ましい。
【0036】
好ましくは、エンド-アミラーゼは、本明細書における配列番号35に示すバシラス・リヘニフォルミス (Bacillus licheniformis) からのアミラーゼ (BLA、WO 2002/010355中の配列番号8) に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%またはなお少なくとも90%の同一性を有する。
【0037】
これは下記のものを包含するが、これらに限定されない: 本明細書において配列番号41に示すバシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) 変異型LE429 (WO 2002/010355) 、本明細書において配列番号36に示すバシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) からのアミラーゼ (BSG、WO 2002/010355中の配列番号6) 、本明細書において配列番号37に示すバシラス・アミロリクファシエンス (B. amyloliquefaciens) からのアミラーゼ (BAN、WO 2002/010355中の配列番号10) 、本明細書において配列番号38に示すバシラス・ハロヅランス (Bacillus halodurans) SP722からのアミラーゼ (WO 2002/010355中の配列番号4) 、本明細書において配列番号39に示すSP690 (WO 9526397) 、本明細書において配列番号40に示す AA560 (WO 2002/010355中の配列番号12) 、例えば、SP707 (Tsukamoto 他、Biochemical and Biophysical Research Communications 151 (1988) 、pp. 25-31) のようなアルカリ性バシラス (Bacillus) 株からのアミラーゼ、アミラーゼKSM-AP1378 (WO 97/00324/KAO) 、アミラーゼKSM-K36およびKSM-K38 (EP 1,022,334-A/KAO) 、アミラーゼSP7-7 (WO 0210356/Henkel) およびアミラーゼAAI-6 (WO 0060058) 、AMRK385 (PCT/DK 01/00133) - 上記の変異型またはトランケーテッド形態。
【0038】
エンド-アミラーゼ配列は、また、シュードモナス ・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia) 、例えば、WO 2004111217中の配列番号1として開示されているアミラーゼに由来することができる。好ましいエンド-アミラーゼ配列は、本明細書において配列番号42に示すアミノ酸残基1〜417を含んでなる。
【0039】
好ましくは、エンド-アミラーゼは野生型酵素であるか、あるいはエンド-アミラーゼは活性の増加および/または低いpHおよび/または高いpHにおけるタンパク質安定性の増加、カルシウム低下に対する安定性の増加、および/または高温における安定性の増加に導くアミノ酸の修飾を含んでなる変異型エンド-アミラーゼである。このようなエンド-アミラーゼの化学的または遺伝的に修飾された突然変異体は、この関係において含まれる。
【0040】
配列番号35に示すバシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) エンド-アミラーゼBLAは、483アミノ酸の触媒フラグメントから構成された野生型アミラーゼである。触媒ドメインは、触媒中心を収容する中央のコア-ドメインおよび触媒ドメインに対してC-末端のCドメインに分割することができる。配列番号 8/NN10062において、触媒コアドメインは最初の396アミノ酸から成り、そしてCドメインはアミノ酸397〜483として規定される。
【0041】
バシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) エンド-アミラーゼの変異型、すなわち、配列番号41に示すLE429は、481アミノ酸の触媒フラグメントから成る。触媒ドメインは、触媒中心を収容する中央のコア-ドメインおよび触媒ドメインに対してC-末端のCドメインに分割することができる。配列番号41において、触媒コアドメインは最初の394アミノ酸から成り、そしてCドメインはアミノ酸395〜481として規定される。
【0042】
バシラス・アミロリクファシエンス (B. amyloliquefacience) エンド-アミラーゼ、すなわち、配列番号37に示すBANは、483アミノ酸の触媒フラグメントから構成された野生型アミラーゼである。触媒ドメインは、触媒中心を収容する中央のコア-ドメインおよび触媒ドメインに対してC-末端のCドメインに分割することができる。配列番号37において、触媒コアドメインは最初の396アミノ酸から成り、そしてCドメインはアミノ酸397〜483として規定される。
【0043】
バシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) エンド-アミラーゼ、すなわち、配列番号36に示すBSGは、483アミノ酸の触媒フラグメントおよびさらにC-末端のエクステンションから構成された野生型アミラーゼである。触媒ドメインは、触媒中心を収容する中央のコア-ドメインおよび触媒ドメインに対してC-末端のCドメインにさらに分割することができる。配列番号36において、触媒コアドメインは最初の396アミノ酸から成り、Cドメインはアミノ酸397〜483として規定され、そしてC-末端のエクステンションはアミノ酸484〜515として規定される。
【0044】
バシラス・ハロヅランス (B. halodurans) エンド-アミラーゼ、すなわち、配列番号38に示すSP 722は、485アミノ酸の触媒フラグメントから構成された野生型アミラーゼである。触媒ドメインは、触媒中心を収容する中央のAB-ドメインおよび触媒ドメインに対してC-末端のCドメインにさらに分割することができる。配列番号38において、触媒コアドメインは最初の398アミノ酸から成り、そしてCドメインはアミノ酸399〜483として規定される。
【0045】
アルカリ性バシラス (Bacillus) エンド-アミラーゼ、すなわち、配列番号40に示すAA560は、485アミノ酸の触媒フラグメントから構成された野生型アミラーゼである。触媒ドメインは、触媒中心を収容する中央のAB-ドメインおよび触媒ドメインに対してC-末端のCドメインにさらに分割することができる。配列番号40において、触媒コアドメインは最初の398アミノ酸から成り、そしてCドメインはアミノ酸399〜483として規定される。触媒コアドメインはヌクレオチド1〜1194によりコードされ、そしてCドメインはヌクレオチド1189〜1455によりコードされる。
【0046】
第1の面の特定の態様において、エンド-アミラーゼ配列は配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41および配列番号42を有するか、あるいはエンド-アミラーゼ配列は前記アミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはなお少なくとも99%の同一性を有する。
【0047】
第1の面のなお他の好ましい態様において、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41および配列番号42に示すアミノ酸配列と10位置以下、9位置以下、8位置以下、7位置以下、6位置以下、5位置以下、4位置以下、3位置以下、2位置以下またはなお1位置以下異なるアミノ酸配列を有する。
【0048】
第1の面の好ましい態様において、エンド-アミラーゼ配列は配列番号40 (AA560) に示すアミノ酸配列を有し、そして下記の変更の1または2以上を含んでなる: R118K、D183*、G184*、N195F、R320KおよびR458K。
第1の面の他の好ましい態様において、配列番号40に示すアミノ酸配列を有し、そして下記の変更の1または2以上、例えば、すべてを含んでなる: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458K、N33S、D36N、K37L、E391I、Q394R、K395D、T452YおよびN484P。
【0049】
第1の面の他の好ましい態様において、配列番号40に示すアミノ酸配列を有し、そして下記の変更の1または2以上、例えば、すべてを含んでなる: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458KおよびN484P。
第1の面のなお他の高度に好ましい態様において、配列番号37に示すアミノ酸配列を有し、そして下記の変更の1または2以上、例えば、すべてを含んでなる: S31A、D32N、I33L、E178*、G179*、N190F、K389I、K392R、E393DおよびV508A。
【0050】
好ましいハイブリッド
特定の態様において、本発明のハイブリッドは配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12および配列番号14に示すアミノ酸配列を有するか、あるいは本発明のハイブリッドは前述のアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%またはなお少なくとも90%の同一性を有する。
【0051】
なお他の好ましい態様において、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12および配列番号14に示すアミノ酸配列と10位置以下、9位置以下、8位置以下、7位置以下、6位置以下、5位置以下、4位置以下、3位置以下、2位置以下またはなお1位置以下異なるアミノ酸配列を有する。
【0052】
他の好ましい態様において、本発明のハイブリッドはa) 配列番号40中に示す触媒ドメインまたは相同的触媒ドメイン、およびb) 配列番号2のアミノ酸残基485〜585として示すCBMを含んでなり、ここで下記の置換の1または2以上、または好ましくはすべてが導入されている: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458K、N33S、D36N、K37L、E391I、Q394R、K395D、T452YおよびN484P、配列番号40のナンバリングを使用する。
【0053】
他の好ましい態様において、本発明のポリペプチドはa) 配列番号40中に示す触媒ドメインまたは相同的触媒ドメイン、およびb) 配列番号2のアミノ酸残基485〜585として示すCBMを含んでなり、ここで下記の置換の1または2以上、または好ましくはすべてが導入されている: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458KおよびN484P、配列番号40のナンバリングを使用する。
【0054】
なお他の好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号37中に示す触媒ドメインまたは相同的触媒ドメインを含んでなり、そして下記の変更の1または2以上、例えば、すべてを含んでなり: S31A、D32N、I33L、E178*、G179*、N190F、K389I、K392R、E393DおよびV508A、および配列番号2中のアミノ酸残基485〜586として示すアミノ酸配列を有するCBMを含んでなる。
【0055】
ハイブリッドの安定化
CBMおよび触媒ドメインのタンパク質が十分に緊密なタンパク質-タンパク質の相互作用を形成しない場合、本発明のハイブリッドはタンパク質分解的攻撃に対して不安定であることがある。しかしながら、ハイブリッドの安定性はタンパク質のいずれかの表面に置換基を導入して安定なハイブリッドをつくることによって改良することができる。
【0056】
本発明者らは、細菌のエンド-アミラーゼ、例えば、バシラス・リヘニフォルミス (Bacillus licheniformis) からのアミラーゼ (配列番号8) に対して少なくとも60%の同一性を有するポリペプチドの表面上の下記のアミノ酸残基が、本発明のハイブリッド中に含まれるときCBMと密接して、すなわち、5.0Åより小さい距離内で、接触していることを同定した。これらの残基は安定なハイブリッドを作るために突然変異に適当なターゲットである: 12、29、30、32、33、34、35、36、37、38、368、371、372、381、383、384、386、387、388、389、390、391、392、394、395、396、422、423、448、449、450、451、452、453、454、455、456、458、459、460、461、483、484、485、配列番号40のナンバリングを使用する。好ましくは、本発明のハイブリッドの触媒ドメインは、これらの残基に対応する位置に1または2以上の置換を含んでなる。
【0057】
好ましい態様において、本発明のハイブリッドはa) 配列番号40中に示す触媒ドメインまたは相同的触媒ドメイン、およびb) 配列番号2のアミノ酸残基485〜585として示すCBMを含んでなり、ここで下記の置換の1または2以上、または好ましくはすべてが導入されている: N33S、K35S/A、D36A/N/S、K37L、E391I、Q394R、K395DおよびN484A/P、配列番号40のナンバリングを使用する。
【0058】
ハイブリッドの触媒ドメインに向かって突起するCBMの表面上に、下記の残基が触媒ドメインと密接して、すなわち、5.0Åの距離内で、接触していることが発見され、そしてこれらの残基は安定なハイブリッドを作るための突然変異に適当なターゲットである: 485、486、487、488、507、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、526、538、539、540、541、553、554、555、556、557、558、559、配列番号2のナンバリングを使用する。
【0059】
発現ベクター
本発明は、また、ハイブリッド酵素をコードするDNA配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、および転写および翻訳停止シグナルを含んでなることができる組換え発現ベクターに関する。前述の種々のDNA配列および調節配列を一緒に結合して組換え発現ベクターを生成することができ、この発現ベクターは、ポリペプチドエンコーディングDNA配列の挿入または置換を可能とする、1または2以上の好都合な制限部位を含むことができる。選択的に、DNA配列または前記配列を含んでなるDNA構築物を発現に適当なベクター中に挿入することによって、本発明のDNA配列を発現させることができる。発現ベクターをつくるとき、コーディング配列が発現に、かつ可能ならば分泌に、適当なコントロール配列に作用可能に連鎖されるように、コーディング配列はベクター中に位置する。
【0060】
組換え発現ベクターは、組換えDNA手順に好都合に付すことができかつDNA配列の発現を生ずることができる、任意のベクター (例えば、プラスミドまたはウイルス) であることができる。典型的には、ベクターの選択はベクターを導入すべき宿主細胞とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは線状または閉じた円のプラスミドであることができる。ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち、その複製が染色体に対して独立である、染色体外実在物として存在するベクター、例えば、プラスミド、染色体外因子、ミニ染色体、コスミドまたは人工的染色体であることができる。ベクターは自己複製を
【0061】
保証する任意の手段を含有することができる。選択的に、ベクターは、宿主細胞中に挿入したとき、ゲノム中に組込まれ、それが組込まれた1または2以上の染色体と一緒に複製するものであることができる。ベクター系は単一のベクターまたはプラスミドであるか、あるいは宿主細胞のゲノム中に導入すべき全DNAを一緒に含有する2またはそれ以上のベクターまたはプラスミド、またはトランスポゾンであることができる。
【0062】
宿主細胞
DNA構築物を含んでなるか、あるいは第1面のポリペプチド、例えば、ハイブリッド酵素をコードするDNA配列を含んでなる発現ベクターを含んでなる本発明の宿主細胞は、ハイブリッド酵素、野生型酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素の組換え産生において宿主細胞として好都合に使用される。この細胞を発現ベクターで形質転換することができる。選択的に、宿主染色体中にDNA構築物 (1または2以上のコピー) を組込むことによって、ハイブリッド酵素または遺伝的に修飾された野生型酵素をコードする本発明のDNA構築物で細胞を形質転換することができる。宿主染色体中へのDNA構築物の組込みは、慣用法、例えば、相同的または異種的組換えにより実施することができる。
宿主細胞は、任意の適当な原核生物または真核生物の細胞、例えば、細菌細胞、フィラメント状真菌細胞、植物細胞または哺乳動物細胞であることができる。
【0063】
親酵エンド-アミラーゼをコードするDNA配列の単離およびクローニング
第1面のポリペプチド、例えば、ハイブリッド酵素をコードするDNA配列を単離またはクローニングするために使用する技術はこの分野において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、またはそれらの組合わせを包含する。このようなゲノムDNAからの本発明のDNA配列のクローニングは、例えば、よく知られているポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) または構造的特徴を共有するクローニングされたDNAフラグメントを検出する発現ライブラリーの抗体スクリーニングを使用することによって、実施することができる。例えば、下記の文献を参照のこと:Innis 他、PCR: A Guide to Methods and Application、Academic Press、New York。他のDNA増幅手法、例えば、リガーゼ連鎖反応 (LCR) 、結合活性化転写 (LAT) およびDNA配列に基づく増幅 (NASBA) を使用することができる。
【0064】
親エンド-アミラーゼをコードするDNA配列は、この分野においてよく知られている種々の方法を使用して、問題のエンド-アミラーゼを産生する細胞または微生物から単離することができる。まず、研究すべきエンド-アミラーゼを産生する生物からの染色体DNAまたはメッセンジャーDNAを使用して、ゲノムDNAおよび/またはcDNAライブラリーを構築すべきである。次いで、エンド-アミラーゼのアミノ酸配列が既知である場合、標識化オリゴヌクレオチドプローブを合成し、問題の生物から調製したゲノムライブラリーからエンド-アミラーゼンコーディングクローンを同定するために使用することができる。選択的に、非常に低い〜非常に高いストリンジェンシイのハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を使用する、エンド-アミラーゼンコーディングクローンの同定に、他の既知のエンド-アミラーゼ遺伝子に対して相同性である配列を含有する標識化オリゴヌクレオチドプローブをプローブとして使用することができる。
【0065】
エンド-アミラーゼンコーディングクローンを同定するなお他の方法は、発現ベクター、例えば、プラスミド中にゲノムDNAフラグメントを挿入し、生ずるゲノムDNAライブラリーでエンド-アミラーゼ陰性細菌を形質転換し、次いでエンド-アミラーゼの基質 (すなわち、マルトース) を含有する寒天上に形質転換された細菌をプレートし、これによりエンド-アミラーゼを発現するクローンを同定する方法を包含する。
【0066】
選択的に、確立された方法、例えば、下記の文献に記載されているホスホロアミダイト法により、酵素をコードするDNA配列を合成することができる: S. L. BeaucageおよびM. H. Caruthers (1981) 、Tetrahedron Letters 22、p. 1859-1869、またはMatthes 他 (1984) ENBO J. 3、p. 801-805。ホスホロアミダイト法において、オリゴヌクレオチドを、例えば、自動化DNA合成装置により合成し、精製し、アニールし、結合し、適当なベクター中でクローニングする。
【0067】
最後に、DNA配列は、標準的技術に従い合成、ゲノムまたはcDNA由来のフラグメント (適当ならば、全DNA配列の種々の部分に対応するフラグメント) を結合することによって製造された、混合ゲノムおよび合成由来、混合合成およびcDNA由来または混合ゲノムおよびcDNA由来であることができる。また、DNA配列は、例えば、下記の文献に記載されているように、特別のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)により製造することができる: 米国特許第4,683,202号またはR. K. Saiki 他 (1988) 、Science 239、1988、pp. 487-491。
【0068】
単離されたDNA配列
本発明は、なかでも、第1面のポリペプチドをコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA配列に関する。
用語 「単離されたDNA配列」 は、本明細書において使用するとき、他のDNA配列を本質的に含まない、例えば、アガロース電気泳動により決定して、少なくとも約20%の純度、好ましくは少なくとも約40%の純度、より好ましくは少なくとも約60%の純度、なおより好ましくは少なくとも約80%の純度、最も好ましくは少なくとも約90%の純度のDNA配列を意味する。
【0069】
例えば、単離されたDNA配列は、遺伝子操作において使用される標準的クローニング手法を使用して、DNA配列をその天然の位置からそれが産生される異なる部位に再配置することによって、得ることができる。クリーニング手法は、問題のポリペプチドをコードするDNA配列を含んでなる必要なDNAフラグメントの切除および単離、ベクター分子の中へのフラグメントの挿入、および宿主細胞の中への組換えベクターの組込みを包含し、宿主細胞においてDNA配列の複数のコピーまたはクローンが複製される。単離されたDNA配列を種々の方法で操作して、問題のポリペプチドを発現させることができる。ベクターの中への挿入前のDNA配列の操作は、発現ベクターに依存して望ましいか、あるいは必要であることがある。組換えDNA法を使用してDNA配列を修飾する技術は、この分野においてよく知られている。
【0070】
DNA構築物
本発明は、なかでも、第1面のポリペプチドをコードするDNA配列を含んでなるDNA構築物に関する。「DNA構築物」 は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、あるいはそうでなければ天然に存在しないような方法で組合わせかつ並置された、DNAのセグメントを含有するように修飾された、一本鎖または二本鎖のDNA分子として定義される。用語 「DNA構築物」 は、DNA構築物が本発明のコーディング配列の発現に要求されるすべてのコントロール配列を含有するとき、用語 「発現カセット」 と同義である。
【0071】
位置指定突然変異誘発
いったん第1面のポリペプチドにおいて使用するために適当な親エンド-アミラーゼをコードするDNA配列が単離され、かつ必要な突然変異部位が同定されると、合成オリゴヌクレオチドを使用して突然変異を導入することができる。これらのオリゴヌクレオチドは必要な突然変異部位をフランキングするヌクレオチド配列を含有する。特別の方法において、エンド-アミラーゼ遺伝子を担持するベクター中に、DNAの1本鎖ギャップ、すなわち、エンド-アミラーゼンコーディング配列をつくる。
【0072】
次いで、必要な突然変異を支持する合成ヌクレオチドを1本鎖DNAの相同的部分にアニールする。次いで、残りのギャップをDNAポリメラーゼI (クレノウフラグメント) で充填し、T4リガーゼを使用して、この構築物を結合する。この方法の特別の例は下記の文献に記載されている: Morinaga 他 (1984) Biotechnology 2、p. 646-639。米国特許第4,760,025号には、カセットの小さい変更を実施することによって、複数の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドを導入することが開示されている。しかしながら、Morinagaの方法よれば、種々の長さのオリゴヌクレオチドを導入することができるので、より大きい種類の突然変異を1回で導入ことができる。
【0073】
エンド-アミラーゼンコーディングDNA配列中に突然変異を導入する他の方法は下記の文献に記載されている: NelsonおよびLong (1989) 、Analytical Biochemistry 180、p. 147-151。この方法は、PCR反応におけるプライマーの1つとして化学的に合成されたDNA鎖を使用することによって、導入された必要な突然変異を含有するPCRフラグメントの3工程の発生を含む。PCR発生したフラグメントから、制限エンドヌクレアーゼを使用する切断により、突然変異を担持するDNAフラグメントを単離し、発現プラスミド中に再挿入することができる。
【0074】
局在化ランダム突然変異誘発
ランダム突然変異誘発は、問題の親エンド-アミラーゼの部分に好都合に局在化させることができる。これは、例えば、酵素のある領域が酵素の所定の性質について特定の重要性を有することが同定されたとき、そして修飾された酵素が改良された性質を有する変異型を生ずることが期待されるとき、好都合であることがある。このような領域は、親酵素の三次構造が解明されかつ酵素の機能に関係づけられたとき、通常同定することができる。
【0075】
局在化または領域特異的ランダム突然変異誘発は、前述したPCR発生突然変異誘発技術またはこの分野において知られている他の適当な技術を使用することによって、好都合に実施される。選択的に、DNA配列の修飾すべき部分をコードするDNA配列は、例えば、適当にベクター中に挿入することによって、単離し、引き続いて前記部分を前述の突然変異誘発法のいずれかにより突然変異誘発させることができる。
【0076】
植物における酵素の発現
問題の酵素、例えば、本発明のハイブリッド酵素をコードするDNA配列は、後述するように形質転換し、トランスジェニック植物において発現させることができる。
トランスジェニック植物は双子葉植物または単子葉植物、略して双子葉または単子葉であることができる。単子葉植物の例は、イネ科植物、例えば、ナカハグサ (イチゴツナギ、イネ科イチゴツナギ科) 、飼料の草、例えば、フェスツカ (Festuca) 、ロリウム (Lolium) 、温帯のイネ科植物、例えば、アグロスチス (Agrostis) 、および穀物、例えば、コムギ、カラスムギ、ライムギ、オオムギ、イネ、モロコシおよびトウモロコシ (コーン) である。
【0077】
双子葉植物の例は、タバコ、マメ科植物、例えば、ハウチワマメ、ジャガイモ、テンサイ、エンドウマメ、ソラマメ・インゲン・ササゲの類およびダイズ、およびアブラナ科植物 (アブラナ科 (Brassicaceae)) 、例えば、カリフラワー、セイヨウアブラナおよび密接に関係するモデル生物アラビドプシス・タリアナ (Arabidopsis thaliana) である。
【0078】
植物部分の例は、幹、カルス、葉、根、果実、種子、および塊茎ならびにこれらの部分を含んでなる個々の組織、例えば、表皮、葉肉、柔組織、脈管組織、分裂組織である。本発明の関係において、また、特別の植物細胞内区画、例えば、葉緑体、アポプラスト、ミトコンドリア、液胞、ペルオキシソームおよび細胞質は植物部分であると考えられる。さらに、どの組織から由来しても、植物細胞は植物部分であると考えられる。同様に、本発明の利用を促進するために単離された植物部分、例えば、特定の組織および細胞は、また、植物部分、例えば、胚、内乳、アリューロンおよび種子皮膜であると考えられる。
【0079】
また、このような植物、植物部分および植物細胞の子孫は本発明の範囲内に入る。
この分野において知られている方法に従い、問題の酵素を発現するトランスジェニック植物または植物細胞を構築することができる。簡単に述べると、植物または植物部分は、問題の酵素をコードする1または2以上の発現構築物を植物宿主ゲノム中に組込み、生ずる修飾された植物または植物細胞をトランスジェニック植物または植物細胞に増殖させることによって構築される。
【0080】
好都合には、発現構築物は、選択した植物または植物部分中の遺伝子の発現に要求される適当な調節配列と操作的にアソシエートした問題の酵素をコードする遺伝子を含んでなるDNA構築物である。さらに、発現構築物は発現構築物が組込まれている宿主細胞を同定するために有効な選択可能なマーカーと、問題の植物中に構築物を導入するために必要なDNA配列とを含んでなる (後者は使用すべきDNA導入法に依存する) 。
【0081】
調節配列、例えば、プロモーターおよびターミネーター配列および必要に応じてシグナルまたはトランシット配列の選択は、例えば、酵素をいつ、どこでかつどのようにして発現させるかを基準にして決定される。例えば、本発明の酵素をコードする遺伝子の発現は構成的または誘導可能であるか、あるいは発生、段階または組織特異的であることができ、そして遺伝子産物を特定の細胞内区画、組織または植物部分、例えば、種子または葉にターゲッティングすることができる。調節配列は、例えば、下記の文献に記載されている:Tague 他、Plant Phys. 86、506、1988。
【0082】
構成的発現のために、35S-CaMV、トウモロコシユビクイチンおよびイネアクチン1プロモーターを使用することができる (Franck 他、1980、Cell 21: 285-294、Christensen AH、Sharrock RAおよびQuail 1992、Maze polyubiquitin genes: thermal perturbation of expression and transcript splicing, and promoter activity following transfer to protoplasts by electroporation. Plant Mol. Biol. 18、675-689; Zhang W、McElroy D. およびWu R 1991、Analysis of rice Act1 5’ region activity in transgenic rice plants. Plant Cell 3、1155-1165) 。
【0083】
器官特異的プロモーターは、例えば、下記のプロモーターであることができる: 貯蔵シンク組織、例えば、種子、ジャガイモ塊茎および果実からのプロモーター (EdwardsおよびCoruzzi、1990、Annu. Rev. Genet. 24: 275-303) 、または代謝シンク組織、例えば、分裂組織からのプロモーター (Ito 他、1994、Plant Mol. Biol. 24: 863-878) 、種子特異的プロモーター、例えば、イネからのグルテリン、プロラミン、グロブリンまたはアルブミンプロモーター (Wu 他、Plant and Cell Physiology Vol. 39、No. 8 pp. 885-889 (1998)) 、レグミンB4からのソラマメ・ナンテンハギ (Vicia faba) プロモーターおよびソラマメ・ナンテンハギ (Vicia faba) からの未知の種子タンパク質遺伝子 (Conrad U. 他、Journal of Plant Physiology Vol. 152、No. 6 pp. 708-711 (1998)) 、種子油体タンパク質からのプロモーター (Chen 他、Plant and Cell Physiology Vol. 39、No. 9 pp. 935-941 (1998)) 、ブラシカ・ナプス (Brassica napus) からの貯蔵タンパク質napAプロモーター、または分野において知られている、例えば、WO 91/14772に記載されている、他の種子特異的プロモーター。
【0084】
さらに、プロモーターは葉特異的プロモーター、例えば、下記のプロモーターであることができる: イネまたはトマトからのrbcsプロモーター (Kyozuka 他、Plant Physiology Vol. 102、No. 3 pp. 991-1000 (1993) 、クロレラウイルスのアデニンメチルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーター (Mitra A. およびHiggins DW、Plant Molecular Biology Vol. 26、No. 1 pp. 85-93 (1994)) 、またはイネからのaldP遺伝子のプロモーター (Kagaya 他、Molecular and General Genetics Vol. 240、No. 6 pp. 668-674 (1995) 、または傷害誘導可能なプロモーター、例えば、ジャガイモpin2プロモーター (Xu 他、Plant Molecular Biology Vol. 22、No. 4 pp. 573-588 (1993)) 。プロモーターは、非生命的処理、例えば、温度、乾燥または塩分変更により誘導可能であるか、あるいは外因的に適用されたプロモーター活性化物質、例えば、エタノール、エストロゲン、植物ホルモン、例えば、エチレン、アブシジン酸およびジベレリン酸および重金属により誘導される。
【0085】
プロモーターエンハンサー因子を使用して、植物における酵素の発現をより高くすることができる。例えば、プロモーターエンハンサー因子は、プロモーターと酵素をコードするヌクレオチド配列との間のイントロンであることができる。例えば、Xu 他 (前掲引用書中) は、発現を増強するためにイネアクチン1の第1イントロンを使用することを開示している。
【0086】
選択可能なマーカー遺伝子および任意の他の発現構築物部分は、この分野において入手可能なものから選択することができる。
この分野において知られている慣用技術、例えば、下記の技術に従い、DNA構築物を植物ゲノム中に組込む: アグロバクテリウム (Agrobacterium) 仲介形質転換、ウイルス仲介形質転換、マイクロインジェクション、粒子衝撃、生物分解形質転換およびエレクトロポレーション (Gasser 他、Science 244、1293; Potrykus、Bio/Tech. 8、535、1990; Shimamoto 他、Nature 338、274、1989) 。
【0087】
現在、アグロバクテリウム・ツメファシエンス (Agrobacterium tumefaciens) 仲介遺伝子トランスファーはトランスジェニック双子葉植物を発生させるために選択される方法であり (概観については、下記の文献を参照のこと: HooykasおよびSchilperoort、1992、Plant Mol. Biol. 19: 15-38) 、また、単子葉植物の形質転換に使用できるが、他の形質転換法がこれらの植物にしばしば使用されている。
【0088】
現在、アグロバクテリウム (Agrobacterium) のアプローチを補充する単子葉植物を発生させるために選択される方法は、胚カルスまたは発育する胚の粒子衝撃法 (形質転換するDNAで被覆した微視的金またはタングステン粒子) である (Christou、1992、Plant J. 2: 275-281; Shimamoto、1994、Cur. Opin. Biotechnol. 5: 158-162; Vasil 他、1992、Bio/Technology 10: 667-674) 。単子葉植物を形質転換する別の方法は、下記の文献に記載されているようなプロトプラストの形質転換にに基づく: Omirulleh S. 他、Plant Molecular Biology Vol. 21、No. 3 pp. 415-428 (1993) 。
【0089】
形質転換後、この分野においてよく知られている方法に従い、発現構築物を組込んで有する形質転換体を選択し、完全植物に再生する。しばしば、再生間または再生後に、例えば、2つの別々のT-DNA構築物を使用する共形質転換により、または特別のリコンビナーゼを使用する選択遺伝子の部位特異的切除により、選択遺伝子を選択的に排除するように、形質転換手順は設計される。
【0090】
練り粉に基づく製品
本発明のハイブリッド酵素は、練り粉に基づく食用製品、例えば、パン、トルティーヤ、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、パイ皮、より好ましくは焼かれた製品、例えば、パン製品の製造に使用することができる。
練り粉に基づく製品を製造するために使用する練り粉は、一般に、穀粉、例えば、穀粒からの穀粉、例えば、小麦粉、トウモロコシ粉、ライムギ粉、カラスムギ粉およびモロコシ粉を含んでなる。一般に、練り粉は適当な酵母培養物、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) (パン酵母) の培養物または化学的パン種の添加により発酵を起こさせる。
【0091】
練り粉に基づく食用製品は、柔軟性またはさくさくした特性の、白色、淡色または暗色の型の練り粉から製造された、任意の種類の焼かれた製品であることができる。好ましい練り粉に基づく食用製品は、典型的にはローフ、丸パンまたはロールの形態の、パン (特に白色、全粗びき粉、低炭水化物、褐色、多穀粒、暗色およびライムギパン) 、より好ましくはパンブレッド (pan bread) 、ハンバーガー丸パン、フランスバゲットパン、ピーターパン、トルティーヤ、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、パイ皮、クリプスブレッド、蒸しパン、ピザ皮およびその他を包含する。
【0092】
練り粉に基づく食用製品は、練り粉を加熱することによって、例えば、焼くかまたは蒸すことによって作る。例は典型的にはローフまたはロールの形態の、蒸したまたは焼かれたパン (特に白色、全粗びき粉またはライムギパン) である。また、練り粉に基づく食用製品は、フライにする (例えば、熱い脂肪または油中のディープフライ) ことによって調製できる。このような食用製品はドーナツである。
【0093】
本発明の第1の面のハイブリッド酵素は、好ましくは過剰使用に対して高い許容度を有する。本発明のポリペプチド、例えば、または脂肪酸のポリペプチドを前記ポリペプチドの有効使用量の2倍、3倍、好ましく4倍、より好ましくは5倍、より好ましくは6倍で練り粉に添加すると、15%より小さい、10%より小さい、7%より小さい、6%より小さい、5%より小さい、4%より小さいまたはなお3%より小さいELRまたはELRNが生ずる。
【0094】
それ以上の面において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に、少なくとも20%、例えば、少なくとも25%または30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の残留活性を有する。
さらに、本発明のポリペプチドは、この明細書においてIEF1またはIEF2として規定した改良されたエキソ対エンド比を有する。このポリペプチドのIEF1またはIEF2は1より大きい、例えば、1.1または1.5、好ましくは2または2.5または3、より好ましくは3.5または4、最も好ましくは5または7または10であることができる。
【0095】
それ以上の態様において、本発明は、パン焼きの目的に特に重要である特性を有する、すなわち、この明細書に記載する試験条件下に70℃において少なくとも25%の残留活性、増加したエキソ対エンド比 (IEF) (ここでIEFは1より大きい) および最後に5%より小さい凝着性の減少 (この明細書に記載する試験条件下に) を有するが、硬度の変化が少なくとも85単位であり (この明細書に記載する試験条件下に) および/または遊離水の移動度の変化が少なくとも1100単位である (この明細書に記載する試験条件下に) という特徴を有する、ポリペプチドを提供する。
【0096】
パン焼きの目的で、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも5%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度 (dHardness) は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも85単位、例えば、90単位または100単位、好ましくは150単位または200単位、より好ましくは250単位または300単位、最も好ましくは400単位または600単位である。それ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも4%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも85単位、例えば、90単位または100単位、好ましくは150単位または200単位、より好ましくは250単位または300単位、最も好ましくは400単位または600単位である。
【0097】
さらにそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも2%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも85単位、例えば、90単位または100単位、好ましくは150単位または200単位、より好ましくは250単位または300単位、最も好ましくは400単位または600単位である。なおそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも85単位、例えば、90単位または100単位、好ましくは150単位または200単位、より好ましくは250単位または300単位、最も好ましくは400単位または600単位である。
【0098】
本発明のポリペプチドは300 MANUのノバミル (Novamyl(商標))/kgの穀粉と一緒に添加したとき、それは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも5%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも15単位、例えば、20単位または30単位、好ましくは40単位または50単位、より好ましくは60単位または70単位、最も好ましくは85単位または100単位である。それ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも4%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも15単位、例えば、20単位または30単位、好ましくは40単位または50単位、より好ましくは60単位または70単位、最も好ましくは85単位または100単位である。
【0099】
さらにそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも2%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも15単位、例えば、20単位または30単位、好ましくは40単位または50単位、より好ましくは60単位または70単位、最も好ましくは85単位または100単位である。なおそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1%の凝着性の減少を与えることができるが、d硬度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも15単位、例えば、20単位または30単位、好ましくは40単位または50単位、より好ましくは60単位または70単位、最も好ましくは85単位または100単位である。
【0100】
パン焼きの目的で、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも5%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度 (dMobility) は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも300単位、例えば、400単位または500単位、好ましくは600単位または700単位、より好ましくは800単位または900単位、最も好ましくは1000単位または1200単位である。それ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも4%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも300単位、例えば、400単位または500単位、好ましくは600単位または700単位、より好ましくは800単位または900単位、最も好ましくは1000単位または1200単位である。
【0101】
さらにそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも2%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも300単位、例えば、400単位または500単位、好ましくは600単位または700単位、より好ましくは800単位または900単位、最も好ましくは1000単位または1200単位である。なおそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも300単位、例えば、400単位または500単位、好ましくは600単位または700単位、より好ましくは800単位または900単位、最も好ましくは1000単位または1200単位である。
【0102】
本発明のポリペプチドは300 MANUのノバミル (Novamyl(商標))/kgの穀粉と一緒に添加したとき、それは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも5%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1000単位、例えば、1100単位または1200単位、好ましくは1400単位または1500単位、より好ましくは1800単位または2000単位、最も好ましくは2200単位または2500単位である。それ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも4%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1000単位、例えば、1100単位または1200単位、好ましくは1400単位または1500単位、より好ましくは1800単位または2000単位、最も好ましくは2200単位または2500単位である。
【0103】
さらにそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも2%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1000単位、例えば、1100単位または1200単位、好ましくは1400単位または1500単位、より好ましくは1800単位または2000単位、最も好ましくは2200単位または2500単位である。なおそれ以上の態様において、本発明のポリペプチドは、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1%の凝着性の減少を与えることができるが、d移動度は、この明細書に記載する試験条件下に測定したとき、少なくとも1000単位、例えば、1100単位または1200単位、好ましくは1400単位または1500単位、より好ましくは1800単位または2000単位、最も好ましくは2200単位または2500単位である。
【0104】
凝着性の減少、d硬度およびd移動度についての前述の値は、特にパンに関係し、特にスポンジおよび練り粉法により製造されたパンに関係する。凝着性の減少およびd硬度およびd移動度の間の同様な相関は実施例7、任意の追加の酵素、に開示されている。
本発明のハイブリッド酵素は、必要に応じて1種または2種以上の追加の酵素および/またはステーリング防止剤と一緒に使用することができる。
【0105】
ステーリング防止剤は下記を包含するが、これらに限定されない: 乳化剤、ヒドロコロイドおよび酵素のステーリング防止剤。本明細書において使用するとき、用語 「ステーリング防止剤」 は、練り粉に基づく製品の品質変化を遅延することができる、すなわち、貯蔵間の練り粉に基づく製品の柔軟性の劣化速度を減少できる、化学的、生物学的または酵素的因子を意味する。練り粉に基づく生成物の柔軟性 (およびステーリング防止剤のステーリング防止作用) は、訓練した試験パン・菓子類製造業者により実験的に評価することができるか、あるいはこの分野において知られているように、テキスチャー分析器 (例えば、TAXT2) を使用して測定できる。
【0106】
化学的ステーリング防止剤の例は、極性脂質、例えば、脂肪酸およびそれらのモノグリセリドエステル、例えば、米国特許第4,160,848号に記載されているものである。
【0107】
好ましい態様において、ステーリング防止剤はステーリング防止酵素であり、これは好ましくは料理 (例えば、パン焼き) 前に練り粉に添加される。ステーリング防止酵素の例は下記を包含するが、これらに限定されない: エンド-アミラーゼ、例えば、本発明のハイブリッド、エキソ-エンド-アミラーゼ、例えば、米国特許第6,667,065号およびUS 2004/0043109に記載されているエキソ-アミラーゼ、プルラナーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、アミログルコシダーゼ、分枝酵素 (1,4-α-グルカン分枝酵素) 、4-α-グルカノトランスフェラーゼ (デキストリントランスフェラーゼ) 、β-アミラーゼ、マルトジェニックα-アミラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ、アシルトランスフェラーゼ、ペクチン酸リアーゼ、キシラナーゼ、キシログルカンエンドトランスグリコシラーゼ、プロテアーゼ、例えば、WO 2003/084331に記載されているもの、ペプチダーゼおよびそれらの組合わせ。
【0108】
アミラーゼは、真菌、細菌または植物に由来することができる。それは下記のアミラーゼであることができる: エンド-アミラーゼ、例えば、バシラス (Bacillus) 、特にバシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) またはバシラス・アミロリクファシエンス (B. amyloliquefaciens) 由来のエンド-アミラーゼ、β-アミラーゼ、例えば、植物 (例えば、大豆) または微生物源 (例えば、バシラス (Bacillus)) 由来、例えば、WO 9950399A2に開示されている非マルトジェニックバシラス・クラウシイ (Bacillus clausii) α-アミラーゼ、WO 2004111217の配列番号1に示すシュードモナス ・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia) アミラーゼ、またはグルコアミラーゼ、または真菌のエンド-アミラーゼ、例えば、アスペルギルス・ニガー (A. niger) またはアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 由来のエンド-アミラーゼ。
【0109】
より好ましくは、追加の酵素はステーリング防止酵素はであり、好ましくはステーリング防止酵素はマルトジェニックアミラーゼ (EC 3.2.1.133) である。マルトジェニックアミラーゼは、製品の品質変化を遅延するために十分な量、例えば、少なくとも500 MANU/kg穀粉、より好ましくは少なくとも500〜1500 MANU/kg穀粉の量で練り粉に添加される。マルトジェニックアミラーゼは、任意の安定な源から得ることができ、例えば、バシラス (Bacillus) 、好ましくはバシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) 、例えば、NCIB11837菌株またはアミノ酸の修飾 (EP 494233 B1、米国特許第6,162,628号) により作られた、それらの変異型に由来することができる。
【0110】
好ましくは、マルトジェニックアミラーゼは20〜2000 MANU/kg穀粉、好ましくは500〜1000 MANU/kg穀粉、より好ましくは少なくとも750 MANU/kg穀粉、少なくとも1000 MANU/kg穀粉の使用量で添加することができる。好ましいマルトジェニックアミラーゼはノバミル (Novamyl(商標)、Novozymes A/S) である。
【0111】
他の好ましい態様において、ステーリング防止酵素はキシラナーゼである。キシラナーゼは安定な源、例えば、下記から得ることができる: バシラス (Bacillus) 、例えば、バシラス・サチリス (Bacillus subtilis) (WO 2003/010923、WO 2001/066711またはWO 2000/039289に記載されている) 、およびアスペルギルス (Aspergillus) 、特にアスペルギルス・アクレアツス (A. aculeatus) 、アスペルギルス・ニガー (A. niger) 、アスペルギルス・アワモリ (A. awamori) またはアスペルギルス・ツビゲンシス (A. tubigensis) およびテルモマイセス (Thermomyces) (WO 96/32472に記載されている) 、例えば、トリコデルマ・リーセイ (T. reesei) またはフミコラ (Humicola) 菌株、例えば、フミコラ・インソレンス (H. insolens) 。
【0112】
必要に応じて、追加の酵素、例えば、下記の酵素を上記ステーリング防止酵素と一緒に使用することができる: 脂肪分解酵素、特にホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼおよび/またはトリアシルグリセロールリパーゼ活性 (例えば、WO 9953769、WO 0032758、WO 0200852またはWO 2002066622に記載されている) または、例えば、トランスグルタミナーゼ、セルロース分解酵素、例えば、セルラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、タンパク質ジサルファイドイソメラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、オキシドレダクターゼ。この酵素は任意の由来、例えば、哺乳動物、植物、好ましくは微生物 (細菌、酵母または真菌) 由来であることができ、そしてこの分野において慣用されている技術により得ることができる。
【0113】
また、追加の酵素は脂肪分解酵素、特にホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼおよび/またはトリアシルグリセロールリパーゼ活性 (例えば、WO 9953769、WO 0032758、WO 0200852またはWO 2002066622) であることができる。
【0114】
さらに、追加の酵素は第2 酵素、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、プロテアーゼまたはペプチダーゼ、特にエキソペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、分枝酵素 (1,4-α-グルカン分枝酵素) またはオキシドレダクターゼであることができる。追加の酵素は哺乳動物、植物または微生物 (細菌、酵母または真菌) 由来であることができる。
【0115】
第2 アミラーゼは真菌、細菌または植物に由来することができる。それは下記のアミラーゼであることができる: マルトジェニックアミラーゼ (EC 3.2.1.133) 、例えば、バシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) 由来のマルトジェニックアミラーゼ、エンド-アミラーゼ、例えば、 バシラス (Bacillus) 、特にバシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) またはバシラス・アミロリクファシエンス (B. amyloliquefaciens) からのエンド-アミラーゼ、β-アミラーゼ、例えば、植物 (例えば、大豆) または微生物源 (例えば、バシラス (Bacillus)) からのβ-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、例えば、アスペルギルス・ニガー (A. niger) 由来のグルコアミラーゼ、または真菌エンド-アミラーゼ、例えば、アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) またはシュードモナス ・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia) からのエンド-アミラーゼ、例えば、WO 9950399A2に開示されているマルトジェニックα-アミラーゼ。
【0116】
ヘミセルラーゼはペントサナーゼ、例えば、微生物由来であることができるキシラナーゼ、例えば、細菌または真菌、例えば、アスペルギルス (Aspergillus) 菌株、特にアスペルギルス・アクレアツス (A. aculeatus) 、アスペルギルス・ニガー (A. niger) 、アスペルギルス・アワモリ (A. awamori) またはアスペルギルス・ツビゲンシス (A. tubigensis) 由来、トリコデルマ (Trichoderma) 菌株、例えば、トリコデルマ・リーセイ (T. reesei) 由来、またはフミコラ (Humicola) 、例えば、フミコラ・インソレンス (H. insolens) 由来。
【0117】
プロテアーゼはバシラス (Bacillus) 、例えば、バシラス・アミロリクファシエンス (B. amyloliquefaciens) 由来であることができる。
オキシドレダクターゼは、グルコースオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、リポキシダーゼ、ペルオキシダーゼまたはラッカーゼであることができる。
【0118】
練り粉および/またはパン改良添加物
本発明のハイブリッド酵素は、粒体または凝集粉末の形態の、練り粉および/またはパン改良添加物として提供ことができる。練り粉および/またはパン改良添加物は、25〜500 μmの範囲の粒子が95重量%より多い、狭い粒度分布を有することが好ましい。
【0119】
好ましい態様において、組成物、例えば、パン改良添加物は下記の工程を含んでなる方法により製造される: a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列を準備し、b) 炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を準備し、c) 前記第1アミノ酸配列および前記第2 アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを構築し、d) 前記ポリペプチドをコードするDNA配列を準備し、e) 前記DNA配列を適当な宿主細胞中で発現させ、そして前記ポリペプチドを取出し、そしてf) 前記ポリペプチドを穀粉または粒体または凝集粉末に添加する。
【0120】
粒体および凝集粉末は、慣用法により、例えば、アミラーゼ、すなわち、ハイブリッド酵素を流動床粒状化装置中の中心に噴霧することによって製造することができる。担体は適当な粒度を有する粒状コアから成ることができる。担体は可溶性または不溶性であることができ、例えば、塩 (例えば、NaClまたは硫酸ナトリウム) 、糖 (例えば、スクロースまたはラクトース) 、糖アルコール (例えば、ソルビトール) 、デンプン、米、トウモロコシ粗粒または大豆であることができる。
【0121】
デンプン加工
本発明のポリペプチド、すなわち、CBMを有するエンド-アミラーゼは、種々の工業的用途を可能とする有益な性質を有する。特に、第1の面の酵素は、洗浄、皿洗浄および硬質表面のクリーニング洗剤組成物における1成分として使用できる。多数の変異型がデンプンからの甘味料およびエタノールの製造において、および/または繊維材料の糊抜きに特に有効である。本発明の酢酸エチルを使用できる、エタノールを製造する1つの例は、米国特許第5,231,017号 (これは引用することによって本明細書の一部とされる) に開示されている。
【0122】
さらに、本発明のエンド-アミラーゼを使用できる方法は、DK特許出願PA 2003 01568 (引用することによって本明細書の一部とされる) に開示されている。前記方法は、粒状デンプンの初期糊化温度より低い温度においてデンプンを可溶性デンプン加水分解物に加水分解することを含んでなる。他の適当な方法はWO 2004081193 (引用することによって本明細書の一部とされる) に開示されている。
【0123】
デンプン液化および/または糖化方法を含む、慣用のデンプン転化方法のための条件は、例えば、米国特許第3,912,590号およびEP 特許公開No. 252,730およびNo. 63,909に記載されている。
【0124】
好ましい使用は発酵プロセスであり、ここでCBMを有するエンド-アミラーゼの存在下にデンプン基質を液化および/または糖化してグルコースおよび/またはマルトースを製造し、これらは甘味料として使用するか、あるいは発酵生物、好ましくは酵母により発酵生成物に転化するために適当である。このような発酵プロセスは下記の方法を包含する: 燃料または飲用エタノール (飲用アルコール) のためのエタノールを製造する方法、飲料を製造する方法、有機化合物、例えば、クエン酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸; ケトン; アミノ酸、例えば、グルタミン酸 (ナトリウムモノグルタメート) 、およびいっそう複雑な化合物、例えば、抗生物質、例えば、ペニシリン、テトラサイクリン; 酵素; ビタミン、例えば、リボフラビン、B12、β-カロテン; ホルモン (これらは合成的に製造が困難である) を製造する方法。
【0125】
デンプンからの甘味料の製造:
デンプンをフルクトースシロップに転化する 「伝統的」 方法は、通常3つの連続的酵素的プロセス、すなわち、液化プロセス、引き続く糖化プロセスおよび異性化プロセスから成る。液化プロセス間に、デンプンはエンド-アミラーゼにより、好ましくはCBMを有するエンド-アミラーゼ、例えば、本発明のポリペプチドによりpH 5.5〜6.2および95〜160℃の温度においてほぼ2時間デキストリンに分解される。これらの条件下に酵素の安定性を最適化するために、1 mMのカルシウムを添加する (40 ppmの遊離カルシウムイオン) 。
【0126】
液化プロセス後、グルコアミラーゼ (例えば、AMGTM) および脱分枝酵素、例えば、イソアミラーゼまたはプルラナーゼ (例えば、PromozymeTM) を添加して、デキストリンをデキシトロースに転化する。この工程前に、pHを4.5以下の値に低下させ、高温 (95℃以上) を維持し、そして液化エンド-アミラーゼ活性を変性する。温度を60℃に低下させ、グルコアミラーゼおよび脱分枝酵素を添加する。糖化プロセスを24〜72時間進行させる。
【0127】
糖化プロセス後、pHを6〜8の範囲の値、好ましくはpH 7.5に増加させ、カルシウムをイオン交換により除去する。次いで、例えば、固定化グルコースイソメラーゼ (例えば、SweetzymeTM) を使用して、デキシトロースシロップを高フルクトースシロップに転化する。
本発明のデンプンプロセスの態様において、第1面のポリペプチドを使用して微粉砕全穀粒原料の糊化物を主として4より高いDEのマルトデキストリン (デキストリン) に分解する。本発明の1つの態様において、原料は (全) 穀粒微粉砕物である。
【0128】
本発明の態様において、酵素的液化は3工程のホットスラリープロセスとして実施される。スラリーを60〜95℃、好ましくは80〜85℃に加熱し、そして1種または2種以上の酵素を添加して液化 (減粘) を開始し、少なくとも第1面のポリペプチドを添加する。次いで、このスラリーを95〜140℃、好ましくは105〜125℃の温度においてジェット煮沸して、このスラリーの糊化を完結する。次いで、このスラリーを60〜95℃に冷却し、さらに1種または2種以上の酵素、好ましくは第1面のポリペプチドを含んでなる酵素を添加して、加水分解 (二次液化) を終結させる。この液化プロセスはpH 4.5〜6.5、特にpH 5〜6において実施する。微粉砕しかつ液化した全穀粒はマッシュとして知られている。第1面のポリペプチドは当業者によく知られている有効量で添加することができる。
【0129】
1つの面において、この方法は下記の工程を含んでなる: a) CBMを有するエンド-アミラーゼ、例えば、第1面のポリペプチドとデンプン基質を接触させ、b) 前記デンプン基質の少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%を発酵可能な糖の液化および糖化を達成するために十分な時間の間および温度において、前記デンプン基質を前記ポリペプチドおよび真菌α-アミラーゼおよび/またはグルコアミラーゼとインキュベートし、c) 発酵させて発酵生成物を生成し、そしてd) 必要に応じて発酵生成物を回収する。
【0130】
なお他の面において、この方法は、粒状デンプンの初期糊化温度より低い温度において、 糊化デンプンまたは粒状デンプンを液化および/または加水分解して、特に粒状デンプンを液化および/または加水分解して、可溶性デンプン加水分解物にすることを含んでなる。本発明のポリペプチド、例えば、第1面のポリペプチドと接触することに加えて、デンプンは下記から成る群から選択される酵素と接触させることができる: 真菌α-アミラーゼ (EC 3.2.1.1) 、β-アミラーゼ (EC 3.2.1.2) およびグルコアミラーゼ (EC 3.2.1.3) 。ある態様において、さらに脱分枝酵素、例えば、イソアミラーゼ (EC 3.2.1.68) またはプルラナーゼ (EC 3.2.1.41) を添加することができる。
【0131】
ある態様において、この方法は初期糊化温度より低い温度において実施する。好ましくは、この方法を実施する温度は、少なくとも30℃、少なくとも31℃、少なくとも32℃、少なくとも33℃、少なくとも34℃、少なくとも35℃、少なくとも36℃、少なくとも37℃、少なくとも38℃、少なくとも39℃、少なくとも40℃、少なくとも41℃、少なくとも42℃、少なくとも43℃、少なくとも44℃、少なくとも45℃、少なくとも46℃、少なくとも47℃、少なくとも48℃、少なくとも49℃、少なくとも50℃、少なくとも51℃、少なくとも52℃、少なくとも53℃、少なくとも54℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも57℃、少なくとも58℃、少なくとも59℃、少なくとも60℃において実施する。
【0132】
この方法を実施するpHは3.0〜7.0、好ましくは3.5〜6.0、より好ましくは4.0〜5.0の範囲である。好ましい態様において、この方法は、例えば、酵母を使用して、例えば、約32℃、例えば、30〜35℃の温度において発酵させてエタノールを生成することを含んでなる。この温度の間に、エタノール含有率は少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、例えば、少なくとも16%のエタノール (w/w) に到達する。
【0133】
前述のいずれかの面において使用するデンプンスラリーは、20〜55%の乾燥固形分の粒状デンプン、好ましくは25〜40%の乾燥固形分の粒状デンプン、より好ましくは30〜35%の乾燥固形分の粒状デンプンである。CBMを有するエンド-アミラーゼ、例えば、第1面のポリペプチドとの接触後、粒状デンプンの乾燥固形分の少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%が可溶性デンプン加水分解物に転化される。
【0134】
他の好ましい態様において、CBMを有するエンド-アミラーゼ、例えば、第1面のポリペプチドを、糊化デンプン (例えば、ジェット煮沸による糊化、しかしこれに限定されない) の液化、糖化のプロセスにおいて使用する。この方法は発酵して発酵生成物、例えば、エタノールを生成することを含んでなる。発酵によりデンプン含有物質からエタノールを製造するこのような方法は下記の工程を含んでなる: (i) CBMを有するエンド-アミラーゼ、例えば、第1面のポリペプチドで前記デンプン含有物質を液化し、(ii) 得られた液化マッシュを糖化し、(iii) 工程 (ii) において得られた物質を発酵生物の存在下に発酵させる。必要に応じて、この方法はエタノールの回収をさらに含んでなる。糖化および発酵を同時の糖化および発酵として実施することができる (SSFプロセス) 。発酵の間に、エタノール含有率は、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、例えば、少なくとも16%のエタノールに到達する。
【0135】
前述の面の方法において加工すべきデンプンは、特に塊茎、根、幹、莢、穀物または全穀粒から得ることができる。より詳しくは、粒状デンプンはトウモロコシ、穂軸、オオムギ、ライムギ、マイロ、サゴヤシ、カッサバ、タピオカ、モロコシ、イネ、エンドウマメ、ソラマメ・インゲン・ササゲの類、バナナまたはジャガイモから得ることができる。詳しくは、トウモロコシおよびオオムギの両方の蝋質および非蝋質の型が考えられる。
【0136】
本発明の組成物:
本発明は、また、第1面のポリペプチドを含んでなる組成物に関する。この組成物は、下記から成る群から選択される酵素をさらに含んでなることができる: 真菌α-アミラーゼ (EC 3.2.1.1) 、β-アミラーゼ (EC 3.2.1.2) 、グルコアミラーゼ (EC 3.2.1.3) およびプルラナーゼ (EC 3.2.1.41) 。グルコアミラーゼは好ましくは下記に由来することができる: アスペルギルス (Aspergillus) 種の菌株、例えば、アスペルギルス・ニガー (A. niger) 、またはタラロマイセス (Talaromyces) 種の菌株、特にタラロマイセス・レイセタヌス (Talaromyces leycettanus) 、例えば、米国特許No. Re. 32,153に開示されているグルコアミラーゼ、タラロマイセス・ズポンチ (Talaromyces duponti) および/またはタラロマイセス・サーモピレス (Talaromyces thermopiles) 、例えば、米国特許第4,587,215号に開示されているグルコアミラーゼ、より好ましくはタラロマイセス・エメルソニイ (Talaromyces emersonii) 。
【0137】
最も好ましくは、グルコアミラーゼはタラロマイセス・エメルソニイ (Talaromyces emersonii) CBS 793.97に由来しおよび/またはWO 99/28446中の配列番号7を有する。前記アミノ酸配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、なお少なくとも95%の同一性を有するグルコアミラーゼはさらに好ましい。商業的タラロマイセス (Talaromyces) グルコアミラーゼ調製物はSpirizyme Fuel (Novozymes A/S) として供給される。
【0138】
また、トラメテス (Trametes) 属の菌株、好ましくはトラメテス・シングラタ (Trametes cingulata) に由来するグルコアミラーゼ活性を有するポリペプチドは、第1面のポリペプチドおよびグルコアミラーゼを含んでなる組成物のために好ましい。グルコアミラーゼ活性を有し、そして米国特許出願60/650,612中の配列番号5の成熟ポリペプチドのアミノ酸1〜575のアミノ酸に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、なお少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドはさらに好ましい。
【0139】
更に、第一の観点のポリペプチド及びグルコアミラーゼを含んである組成物として好ましいのは、パチキトスポラ(Pachykytospora)属、好ましくはパチキトスポラ・パピラッセ(Pachykytospora papyracea)由来のグルコアミラーゼ活性を有するポリペプチドである。更に、グルコアミラーゼ活性を有し且つ米国特許出願60/650,612に記載の配列番号:2のアミノ酸1−556の成熟ポリペルチドに対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の相同性を有するポリペプチドが好ましい。
【0140】
前述の組成物は、糊化デンプンまたは粒状デンプン、ならびに部分的に糊化されたデンプンの液化および/または糖化に、例えば、甘味料の製造に、または発酵プロセス、例えば、エタノールの製造に使用できる。部分的に糊化されたデンプンはある程度まで糊化されたデンプン、すなわち、デンプンの一部分が不可逆的に膨潤しかつ糊化されかつデンプンの一部分が粒状デンプンでなお存在するデンプンである。
【0141】
前述の組成物は、また、0.01〜10 AFAU/g DS、好ましくは0. 1〜5 AFAU/g DS、より好ましくは0.5〜3 AFAU/AGU、最も好ましくは0.3〜2 AFAU/g DSの量で存在する酸性真菌α-アミラーゼを含んでなることができる。この組成物は前述の任意のデンプンプロセスにおいて適用することができる。
【0142】
発酵生成物の製造
糊化されたデンプンから: この面において、本発明は、デンプン含有物質から発酵生成物、特にエタノールを製造する方法に関し、この方法は液化工程および同時にまたは別々に実施される1または2以上の糖化および発酵工程を含む。発酵生成物、例えば、エタノールは、必要に応じて発酵後、例えば、蒸留により回収できる。適当なデンプン含有物質は下記の節 「材料および方法」 に列挙されている。考えられる酵素は下記の節 「酵素」 に列挙されている。発酵は酵母、好ましくはサッカロマイセス (Saccharomyces) 菌株の存在下に実施することが好ましい。適当な発酵生物は下記の節 「発酵生物」 に列挙されている。
【0143】
好ましい方法は、下記の工程を含んでなる: a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドと水性デンプンスラリーを接触させ、b) 前記デンプンスラリーを前記ポリペプチドとインキュベートし、c) 発酵して発酵生成物を生成し、そしてd) 必要に応じて発酵生成物を回収する。好ましくは、工程b) は前記デンプン基質の少なくとも90% w/wを発酵可能な糖に転化するために十分な時間の間および温度において実施する。好ましくは、前記ポリペプチドの前記第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列は細菌に由来する。前記ポリペプチドは第1面のポリペプチドであることができる。
【0144】
水性スラリーは10〜40重量%、好ましくは25〜35重量%デンプン含有物質を含有することができる。このスラリーを糊化温度以上に加熱し、そして細菌および/または真菌のα-アミラーゼを添加して液化 (減粘) を開始する。ある態様において、このスラリーをジェット煮沸してスラリーをさらに糊化した後、本発明の工程 (a) におけるα-アミラーゼに暴露する。
【0145】
より詳しくは、液化は3工程のホットスラリープロセスとして実施することができる。スラリーを60〜95℃、好ましくは80〜85℃に加熱し、そしてα-アミラーゼを添加して液化 (減粘) を開始する。次いで、スラリーを95〜140℃、好ましくは105〜125℃の温度に1〜15分間、好ましくは3〜10分間、特に約5分間ジェット煮沸することができる。スラリーを60〜95℃に冷却し、そしてさらにα-アミラーゼを添加して加水分解 (二次液化) を完成させる。液化プロセスは通常pH 4.5〜6.5、特にpH 5〜6において実施する。微粉砕しかつ液化した全穀粒はマッシュとして知られている。
【0146】
この工程における糖化はよく知られている条件下に実施することができる。例えば、完全な糖化プロセスは約24〜約72時間の間持続されるが、典型的には40〜90分間30〜65℃、典型的には約60℃の温度において前糖化を実施し、次いで同時の糖化および発酵プロセス (SSFプロセス) における発酵間に完全な糖化を実施することだけが普通である。典型的には、糖化は30〜65℃、典型的には約60℃の温度およびpH 4〜5、通常pH 4.5において実施する。
【0147】
エタノール製造において最も広く使用されている方法は同時の糖化および発酵 (SSF) プロセスであり、ここで糖化のための保持段階が存在せず、発酵生物、例えば、酵母、および1種または2種以上の酵素を一緒に添加する。SSFを実施するとき、発酵直前に、50℃以上の温度において前糖化工程を導入することが普通である。
【0148】
本発明よれば、発酵工程 (c) は、限定されずに、下記を製造するために使用する発酵プロセスを包含する: アルコール (例えば、エタノール、メタノール、ブタノール); 有機酸 (例えば、クエン酸、酢酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸); ケトン (例えば、アセトン); アミノ酸 (例えば、グルタミン酸); 気体 (例えば、H2およびCO2); 抗生物質 (例えば、ペニシリンおよびテトラサイクリン); 酵素; ビタミン (例えば、リボフラビン、B12、β-カロテン); ホルモン。好ましい発酵プロセスは、この分野においてよく知られているように、嫌気的発酵プロセスである。
【0149】
非糊化デンプンから: この態様において、本発明は、デンプン含有物質を糊化しないでデンプン含有物質から発酵生成物を製造する方法に関する。1つの態様において、本発明のポリペプチド、例えば、第1の面のハイブリッド酵素、および必要に応じてグルコアミラーゼを糖化および発酵間に使用する。本発明によれば、デンプン含有物質を含有する水性スラリーを液化しないで、必要な発酵生成物、例えば、エタノールを製造することができる。1つの態様において、本発明の方法は、第1の面のハイブリッド酵素およびグルコアミラーゼの存在下に粒状デンプンの初期糊化温度より低い温度においてデンプン含有物質の微粉砕物を糖化して糖を製造することを包含し、この糖は適当な発酵生物により必要な発酵生成物に発酵させることができる。
【0150】
好ましい方法下記の工程を含んでなる: a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドと水性粒状デンプンスラリーを接触させ、b) 前記デンプンスラリーを前記ポリペプチドとインキュベートし、c) 発酵して発酵生成物を生成し、そしてd) 必要に応じて発酵生成物を回収する。好ましくは、工程b) は前記デンプン基質の少なくとも90% w/wを発酵可能な糖に転化するために十分な時間の間および温度において実施する。好ましくは、前記ポリペプチドの前記第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列は細菌に由来する。前記ポリペプチドは好ましくは第1の面のハイブリッドであることができる。
【0151】
用語 「初期糊化温度」 は、デンプンの糊化が開始する最低温度を意味する。水中で加熱されたデンプンは50℃〜75℃において糊化し始める; 糊化の正確な温度は特定のデンプンに依存し、当業者はそれを容易に測定することができる。こうして、初期糊化温度は植物種、植物種の特定の変種、ならびに成長条件に従い変化することがある。本発明の関係において、所定のデンプンの初期糊化温度は、下記の文献に記載されている方法を使用してデンプン粒体の5%において複屈折が喪失する温度である: Gorinstein S. およびLii C.、Starch/Staerke、Vol. 44 (12) pp. 461-466 (1992) 。
【0152】
工程 (a) 前に、デンプン含有物質の20〜55重量%の乾燥固形分、好ましくは25〜40重量%の乾燥固形分、より好ましくは30〜35重量%の乾燥固形分を有する、デンプン含有物質、例えば、粒状デンプンのスラリーを調製することができる。このスラリーは、水および/またはプロセス水、例えば、スチレージ (逆流) 、スクラバー水、蒸発器凝縮物または蒸留物、蒸留装置からの副ストリッパー水、または発酵生成物のプラント水を含むことがある。本発明の方法は糊化温度以下において実施され、こうして有意な粘度増加が起こるので、高いレベルのスチレージを必要に応じて使用できる。ある態様において、水性スラリーは約1〜約70容量%のスチレージ、好ましくは15〜60容量%のスチレージ、ことに約30〜50容量%のスチレージを含有する。
【0153】
デンプン含有物質の微粉砕物は、デンプン含有物質を0.05〜3.0 mm、好ましくは0.1〜0.5 mmの粒度に微粉砕することによって製造できる。本発明の方法に付した後、デンプン含有物質の乾燥固形分の少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または好ましくは少なくとも99%が可溶性デンプン加水分解物に転化される。
【0154】
本発明の方法は、初期糊化温度より低い温度において実施される。好ましくは、工程 (a) を実施する温度は30〜75℃、好ましくは45〜60℃において実施される。
好ましい態様において、工程 (a) および (b) は同時の糖化および発酵プロセスにおいて実施される。このような好ましい態様において、この方法は典型的には28℃〜36℃、例えば、29℃〜35℃、例えば、30℃〜34℃、例えば、約32℃の温度において実施される。本発明によれば、温度は発酵間に上下に調節できる。
【0155】
ある態様において、同時の糖化および発酵は、糖レベル、例えば、グルコースレベルが低いレベル、例えば、約3重量%以下、約2重量%以下、より好ましくは約1重量%以下、さらにより好ましくは約0.5重量%以下、またはさらにより好ましくは約0.1重量%以下に保持されるように実施される。このような低いレベルの糖は調節された量の酵素および発酵生物を単に使用することによって達成することができる。当業者は酵素および発酵生物の使用量を容易に決定することができる。酵素および発酵生物の使用量は、また、発酵ブロス中のマルトースの低濃度を維持するように選択することができる。例えば、マルトースのレベルは約0.5重量%以下または約0.2重量%以下に保持することができる。
【0156】
本発明の方法は、pH 3〜7、好ましくはpH 3.5〜6、より好ましくはpH 4〜5において実施することができる。
【0157】
デンプン含有物質
粒状デンプンを包含する、任意の適当なデンプン含有出発物質を本発明に従い使用することができる。一般に、出発物質は必要な発酵生成物に基づいて選択される。本発明の方法において使用するために適当なデンプン含有出発物質の例は次の通りである: 塊茎、根、幹、全穀粒、トウモロコシ、穂軸、コムギ、オオムギ、ライムギ、マイロ、サゴヤシ、カッサバ、タピオカ、モロコシ、イネ、エンドウマメ、ソラマメ・インゲン・ササゲの類、または穀物、糖含有原料、例えば、糖蜜、果実、サトウキビ、またはテンサイ、ジャガイモ、およびセルロース含有物質、例えば、木材または植物残留物。トウモロコシおよびオオムギの蝋質および非蝋質の両方のタイプが考えられる。
【0158】
用語 「粒状デンプン」 は、原料の煮沸されていない生デンプン、すなわち、穀物、塊茎または穀粒中に見出される天然の形態のデンプンを意味する。デンプンは水中に不溶性である小さい粒体として植物細胞中で形成される。デンプン粒体は、冷水中に入れると、少量の液体を吸収し、膨潤する。50℃〜75℃までの温度において、膨潤は可逆的である。しかしながら、より高い温度において、「糊化」 と呼ばれる不可逆的膨潤が開始する。
【0159】
加工すべき粒状デンプンは、高度に精製されたデンプン品質、好ましくは少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99.5%の純度であることができるか、あるいは非デンプン画分、例えば、胚芽残留物および繊維を含む全穀粒微粉砕物を含んでなる、いっそう粗製のデンプン含有物質であることができる。原料、例えば、全穀粒を微粉砕して構造を開き、それ以上の加工を可能とする。
【0160】
2種類の微粉砕法は本発明において好ましい: 湿式微粉砕生物および乾式微粉砕。乾式微粉砕において、全仁を微粉砕し、使用する。湿式微粉砕は胚芽および粉末 (デンプンの粒子およびタンパク質) を非常に良好に分離し、シロップの製造においてデンプン加水分解物を使用する位置においてしばしば適用される。乾式微粉砕および湿式微粉砕の両方はデンプン加工の分野においてよく知られており、そして本発明の方法において等しく考えられる。
【0161】
デンプン含有物質はより多い表面積を暴露させるために微粉砕される。ある態様において、粒度は0.05〜3.0 mm、好ましくは0.1〜0.5 mmであるか、あるいはデンプン含有物質の微粉砕物が少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも90%が0.05〜3.0 mmの篩、好ましくは0.1〜0.5 mmの篩を通過するような大きさである。
【0162】
発酵生成物
用語 「発酵生成物」 は、発酵生物を使用して発酵工程を含む方法することによって製造された生成物を意味する。本発明に従い考えられる発酵生成物は下記を包含する: アルコール (例えば、エタノール、メタノール、ブタノール); 有機酸 (例えば、クエン酸、酢酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸); ケトン (例えば、アセトン); アミノ酸 (例えば、グルタミン酸); 気体 (例えば、H2およびCO2); 抗生物質 (例えば、ペニシリンおよびテトラサイクリン); 酵素; ビタミン (例えば、リボフラビン、B12、β-カロテン); ホルモン。
【0163】
好ましい態様において、発酵生成物は次の通りである: エタノール、例えば、燃料エタノール; 飲用エタノール、例えば、飲用中性スピリット; または工業用エタノールまたは消費可能なアルコール産業 (例えば、ビールおよびワイン) 、乳製品産業 (例えば、発酵乳製品) 、革産業およびタバコ産業。好ましいビールの種類は、アレス、スタウト、ポーター、ラーガー、ビター、モルトリカー、ハッポウシュー、高アルコールビール、低アルコールビール、低カロリービールまたはライトビールを含んでなる。好ましい発酵プロセスは、この分野においてよく知られているように、アルコール発酵プロセスである。好ましい発酵生成物は、この分野においてよく知られているように、嫌気性発酵プロセスである。
【0164】
発酵生物
「発酵生成物」 は、発酵プロセスにおいて使用するために適当であり、必要な発酵生成物を産生することができる、細菌および真菌の生物を包含する、任意の生物を意味する。特に適当な生物は、糖、例えば、グルコースまたはマルトースを必要な発酵生成物に直接的または間接的に発酵、すなわち、転化することができる。発酵生物の例は真菌生物、例えば、酵母を包含する。好ましい酵母は、サッカロマイセス (Saccharomyces) 種の菌株、特にサッカロマイセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) を包含する。
【0165】
好ましい態様において、発酵生物、例えば、酵母は、第1面のポリペプチドで形質転換することができ、そして下記の工程を含んでなる方法において適用することができる: a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドを発現するように形質転換された発酵生物とデンプン基質を接触させ、b) 前記デンプン基質の少なくとも90% w/wを発酵可能な糖に転化するために十分な時間の間および温度において、前記デンプンを前記酵母とともに保持し、c) 発酵させて発酵生成物、例えば、エタノールを生成し、そしてd) 必要に応じて発酵生成物、例えば、エタノールを回収する。工程a、bおよびcは、別々にまたは同時に実施することができる。特定の態様において、第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列は細菌に由来する。
【0166】
材料および方法
KNUデンプン分解活性:
デンプン分解活性は基質としてジャガイモデンプンを使用して決定できる。この方法は変性されたジャガイモデンプンの酵素による分解に基づき、そして反応はデンプン/酵素溶液の試料をヨウ素溶液と混合することによって追跡する。最初に、黒みがかった青色が発生するが、デンプンの破壊間に、青色は薄くなり、徐々に赤みがかった褐色になり、これを着色したガラス標準と比較する。
【0167】
1キロノボ (Novo) α-アミラーゼ単位 (KNU) は、標準条件 (すなわち、37℃ ± 0.05; 0.0003 MのCa+2; およびpH 5.6) 下に5.26 gのデンプン乾燥基質 (Merck Amylum solubile) をデキストリン化する酵素の量であると定義される。この分析法をいっそう詳しく記載するフォルダーAF 9/6は、ノボザイムA/S (Novozymes A/S、デンマーク) に対する要求に応じて入手可能であり、引用することによって本明細書の一部とされる。
【0168】
エンド活性のアッセイ:
エンドエンド-アミラーゼ活性はエンド活性のアッセイにより決定することができる。1 mlの再懸濁したファデバス (Phadebas) 基質 (0.25 タブレット/mlの50 mM の酢酸ナトリウム、1 mMのCaCl2、pH 5.7に調節した) を、25 μlの酵素と40℃において攪拌しながら15分間インキュベートする。反応を0.5 mlの1 MのNaOHの添加により停止させ、そしてこの混合物をテーブル遠心機中で14,000 rpmにおいて遠心する。上清の620 nmにおける吸収を測定する。明示された活性を有する標準 (BAN 480 L、480 KNU/g) に対して比較することによって、活性を決定する。
【0169】
マルトジェニックアミラーゼ活性:
1 MANU (Maltogenic Novo Unit) は、10 mgのマルトトリオース (Sigma M 8378) 基質/mlの0.1 Mのクエン酸塩緩衝液の濃度、pH 5.0、37℃において30分間に1μmolのマルトースを解放するために必要な酵素の量であると定義することができる (MANU単位は米国特許第6,162,628号においてさらに規定されており、これは引用することによって本明細書の一部とされる) 。
【0170】
DNAの操作
特記しない限り、DNAの操作および形質転換は、下記の文献に記載されている分子生物学の標準的方法を使用して実施した: Sambrook 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー; Ausubel F. M. 他 (編者) “Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley & Sons、1995; Harwood C. R. およびCutting S. M. (編者) 。
【0171】
実施例1エンド-アミラーゼとAMY 1048からのCBMとの間のハイブリッドの構築
アミラーゼAMY 1048は、484アミノ酸の触媒フラグメントおよびさらに101アミノ酸のCBM20フラグメントから構成された野生型バシラス (Bacillus) アミラーゼである。AMY 1048をコードするDNA配列を配列番号1として含め、そして成熟AMY 1048配列を配列番号2として含める。配列番号1において、CBMはアミノ酸残基485〜586として規定され、これは配列番号2中のヌクレオチド1540〜1845に対応する。CBMを含むアミラーゼは、他のアミラーゼについて記載されたもの、すなわち、例えば、構成的活性プロモーターの制御下にベクター中に挿入され、バシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) エンド-アミラーゼのシグナル配列 (配列番号15) およびターミネーター配列によりフランクされたものに類似する構築物から発現させることができる。
【0172】
AMY 1048エンド-アミラーゼの触媒フラグメントを他のエンド-アミラーゼの触媒フラグメントと置換し、こうして2つのオリゴヌクレオチドを使用するPCRにより新しいアミラーゼの触媒ドメインをコードするDNAフラグメントを増幅することによって、AMY 1048からのCBMおよび新しいエンド-アミラーゼのハイブリッドをつくる。センスオリゴヌクレオチドはその5’ 末端においてAMY 1048成熟配列前のシグナル配列をコードするDNA配列の最後の20ヌクレオチドと同一であり、そしてさらにその3’ 末端において必要なアミラーゼDNAの成熟部分をコードするDNA配列の最初の20ヌクレオチドと同一である。アンチセンスオリゴヌクレオチドはその5’ 末端においてAMY 1048からのCBMをコードするDNA配列の最初の20ヌクレオチドのアンチセンスDNAと同一であり、そしてさらにその3’ 末端において必要なDNAアミラーゼの成熟部分をコードするDNA配列の最後の20ヌクレオチドのアンチセンスと同一である。
【0173】
増幅されたアミラーゼDNAおよびAMY 1048アミラーゼを収容するベクターの両方をSacIIおよびScaIで消化し、そしてベクターおよびPCRフラグメントを結合した後、バシラス・サチリス (Bacillus subtilis) 株SHA 273中に移す。下記のプライマーにおいて、制限酵素の認識部位を下線で示す。
【0174】
バシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) エンド-アミラーゼ (配列番号35) およびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) アミラーゼからのCBM20のハイブリッドを構築するために、下記のオリゴヌクレオチドを本発明において使用した:
センス: 5’-ctcattctgcagccgcggcagcaaatcttaatgggacgct-3’ (P1s 配列番号19) 。
アンチセンス: 5’-atttgggaagtagtacttattctttgaacataaattgaaa-3’ (P1as 配列番号20) 。
成熟ポリペプチドをコードする、生ずるDNA配列および成熟ポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3および配列番号4として含める。
【0175】
バシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) エンド-アミラーゼのLE429変異型 (配列番号41) およびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) アミラーゼからのCBM20のハイブリッドを構築するために、下記のオリゴヌクレオチドを本発明において使用した:
センス: 5’-ctcattctgcagccgcggcagtaaatggcacgctgatgca-3’ (P2s 配列番号21) 。
アンチセンス: 5’-atttgggaagtagtacttatttttggaacataaattgaaa-3’ (P2as 配列番号22) 。
成熟ポリペプチドをコードする、生ずるDNA配列および成熟ポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号5および配列番号6として含める。
【0176】
バシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) エンド-アミラーゼ (配列番号36) およびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) アミラーゼからのCBM20のハイブリッドを構築するために、下記のオリゴヌクレオチドを本発明において使用した:
センス: 5’-ctcattctgcagccgcggcagcaccgtttaacggctttaa-3’ (P3s 配列番号23) 。
アンチセンス: 5’-atttgggaagtagtacttattttaggaacccaaaccgaaa-3’ (P3as 配列番号24) 。
成熟ポリペプチドをコードする、生ずるDNA配列および成熟ポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号7および配列番号8として含める。
【0177】
アルカリ性バシラス (Bacillus) 種SP722エンド-アミラーゼ (配列番号38) およびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) アミラーゼからのCBM20のハイブリッドを構築するために、下記のオリゴヌクレオチドを本発明において使用した:
センス: 5’ctcattctgcagccgcggcacatcataatgggacaaatgg-3’ (P4s 配列番号25) 。
アンチセンス: 5’-atttgggaagtagtacttatccatttgtcccattatgatg-3’ (P4as 配列番号26) 。
成熟ポリペプチドをコードする、生ずるDNA配列および成熟ポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号9および配列番号10として含める。
【0178】
アルカリ性バシラス (Bacillus) 種AA560エンド-アミラーゼ (配列番号40) およびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) アミラーゼからのCBM20のハイブリッドを構築するために、下記のオリゴヌクレオチドを本発明において使用した:
センス: 5’-ctcattctgcagccgcggcacaccataatggtacgaacgg-3’ (P5s 配列番号27) 。
アンチセンス: 5’-atttgggaagtagtacttattttgtttacccaaatagaaa-3’ (P5as 配列番号28) 。
成熟ポリペプチドをコードする、生ずるDNA配列および成熟ポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号11および配列番号12として含める。
【0179】
バシラス・アミロリクファシエンス (Bacillus amyloliquefaciens) エンド-アミラーゼの変異型 (配列番号37) およびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) アミラーゼからのCBM20のハイブリッドを構築するために、下記のオリゴヌクレオチドを本発明において使用した:
センス: 5’-ctcattctgcagccgcggcagtaaatggcacgctgatgca-3’ (P6s 配列番号29) 。
アンチセンス: 5’-atttgggaagtagtacttatttttggaacataaatggaga-3’ (P6as 配列番号30) 。
成熟ポリペプチドをコードする、生ずるDNA配列および成熟ポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号13および配列番号14として含める。
【0180】
前述のハイブリッド酵素を震蘯フラスコ中で増殖するバシラス・サチリス (B. subtilis) により72時間発現させ、上清中に分泌させた。上清中のハイブリッド酵素の存在はSDS-PAGEにより証明された。
【0181】
実施例2炭水化物結合性ドメインを有するハイブリッドアミラーゼの構築
バシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) エンド-アミラーゼAMY 1048の触媒フラグメントを、触媒中心を収容する中央のABドメインおよび触媒ドメインに対してC-末端であるが、CBMの前に位置するCドメインにさらに分割した。配列番号2において、触媒コアドメインは最初の397アミノ酸残基から成り、Cドメインはアミノ酸残基398〜484として規定し、そしてCBMはアミノ酸残基485〜586として規定する。配列番号1において、シグナル配列はヌクレオチド1〜87によりコードされ、触媒コアドメインはヌクレオチド86〜1278によりコードされ、Cドメインはヌクレオチド1279〜1539によりコードされ、そしてCBMはヌクレオチド1540〜1845によりコードされる。
【0182】
CBMを含むアミラーゼは、WO 0060060A2の実施例4に記載されているもの、すなわち、アミラーゼ遺伝子がアミラーゼプロモーターの制御下にベクター中に挿入されかつバシラス・リヘニフォルミス (B. licheniformis) エンド-アミラーゼのシグナル配列およびターミネーター配列によりフランクされているものに類似するベクター構築物から発現させることができる。
【0183】
プラスミド上に遺伝子を収容する代替法として、抗生物質マーカーをコードするDNA配列、プロモーター、シグナル配列、成熟タンパク質およびターミネーターを含むカセットを、相同的in vivoクロスオーバーにより、バシラス・サチリス (B. subtilis) DNAの非必須部分に高度に類似するフランクした上流および下流のゲノムDNAにより、バシラス・サチリス (B. subtilis) のゲノムの中に組込むことができる。有効なDNA領域は、ペクチン酸リアーゼまたはエンド-アミラーゼの遺伝子座であろう。この実施例において、AMY 1048およびハイブリッドをアミラーゼの遺伝子座中に、もとのバシラス・サチリス (B. subtilis) アミラーゼに関して反対方向に挿入する。
【0184】
AMY 1048エンド-アミラーゼの触媒コアドメインをバシラス・ステアロサーモフィラス (Bacillus stearothermophilus) (BSG) エンド-アミラーゼの触媒コアドメインと置換し、こうしてAMY 1048からのCドメインおよびCBMと新しいエンド-アミラーゼからの触媒コアドメインとのハイブリッドをつくった。
【0185】
バシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) アミラーゼ (配列番号36) の触媒コアをコードするDNAフラグメントを、2つのオリゴヌクレオチドを使用するPCRにより増幅した。このセンスオリゴヌクレオチドはその5’ 末端においてAMY 1048成熟配列 (配列番号1) の前のシグナル配列をコードするDNA配列 (配列番号15) の最後の20ヌクレオチドと同一であり、そしてさらにその3’ 末端において必要なアミラーゼDNAの成熟部分をコードするDNA配列の最初の20ヌクレオチドと同一であった。アンチセンスオリゴヌクレオチドはその5’ 末端においてAMY 1048からのCドメインをコードするDNA配列の最初の20ヌクレオチドのアンチセンスDNAと同一であり、そしてさらにその3’ 末端においてBSGアミラーゼDNAの触媒コアをコードするDNA配列の最後の20ヌクレオチドのアンチセンスと同一であった。
【0186】
バシラス・ステアロサーモフィラス (B. stearothermophilus) エンド-アミラーゼ のコアドメインおよびCドメインおよびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) アミラーゼからのCBM20のハイブリッドを構築するために、下記のオリゴヌクレオチドを本発明において使用した:
センス: 5’-ctcattctgcagccgcggcagcaccgtttaacggctttaa-3’ (P7s 配列番号31) 。
アンチセンス: 5’-atatagtcgtgctgtgttccgtaagcataatccctgcgcg-3’ (P7as 配列番号32) 。
【0187】
ゲノムの組込みを促進するために、テンプレートとしてAMY 1048ゲノム構築物、およびアンチセンスプライマーの逆プライマーおよび下記のゲノム特異的プライマーを使用するPCRにより、シグナル配列から上流およびアミラーゼゲノム配列の中への5 kgのフラグメントをつくる: 5’-ctgcatcagggctgcggcatcc-3’ (P8 配列番号33) 。
テンプレートとしてAMY 1048ゲノム構築物、およびセンスプライマーの逆プライマーおよび下記のゲノム特異的プライマーを使用するPCRにより、遺伝子の停止からかつゲノムバシラス・サチリス (B. subtilis) アミラーゼの上流の他のフラグメントをつくる: 5’-ctgcatcagggctgcggcatcc-3’ (P9 配列番号34) 。
【0188】
40 bpのオーバーラップを利用して、3つのPCRフラグメントをPCRにより組立て、生ずる生成物をゲノム特異的プライマーを使用する他のPCRにより増幅した後、バシラス・サチリス (Bacillus subtilis) 株SHA273 (WO 92/11357およびWO 95/10603に記載されている) の中に移した。
成熟ポリペプチドをコードする生ずるDNA配列および成熟ポリペプチドを、それぞれ配列番号17および配列番号18として含める。
【0189】
震蘯フラスコ内のPS1培地中で増殖するバシラス・サチリス (B. subtilis) により37℃において72時間ハイブリッド酵素を発現させ、上清の中に分泌させた。上清中のハイブリッド酵素の存在はSDS-PAGEにより証明された。
【0190】
実施例3エキソ-エンド改良因子 (EIF) の決定
EIFは親酵素に関するエキソ/エンド比の増分の測度である、すなわち、EIF = (変異型のエキソ/エンド) / (親酵素のエキソ/エンド) 。EIF > 1である場合、酵素は親酵素に比較して増加したエキソ/エンド比を有する。EIFは下記の方法の1つに基づくことができる。
【0191】
EIF1エンド活性アッセイ:
ファデバス (Phadebas) アミラーゼ試験 (Pharmacia Diagnostics) を供給会社の推奨に従い実施し、そしてエンド単位を供給された式から計算し、ここで活性に対して自然対数 = N、ここでN = A + 平方根 [B + C×In (Abs)] 。Absは620 nmにおける吸収であり、A = -13.3235、B = 243.3293およびC = 26.73797。
【0192】
エキソ活性アッセイ:
50 μlの50 mMのクエン酸ナトリウム、5 mMのCaCl2、pH 6.5を25 μlの同一緩衝液中の酵素および25 μlのベタミル (Betamyl) 基質 (Betamyl Method、Megazyme) (供給会社の推奨に従い溶解した) と混合する。このアッセイ混合物を40℃において30分間インキュベートし、150 μlの4% (w/w) のトリズマ (Trizma) 塩基 (トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン) の添加により反応を停止させる。マイクロタイタープレートリーダーを使用して測定した420 nmにおける吸収として、活性を直接表す。
【0193】
EIF2エンド活性アッセイ:
1 mlの再懸濁させたファデバス基質 (Pharmacia Diagnostics) (0.25タブレット/mlの50 mMの酢酸ナトリウム、1 mMのCaCl2、pH 5.7に調節した) を、25 μlの酵素と40℃において攪拌しながら15分間インキュベートする。0.25 mlの 1 MのNaOHの添加により、反応を停止させ、この混合物をテーブル遠心機中で14,000 rpmにおいて遠心する。620 nmにおける上清の吸収を測定する。明示された活性を有する標準 (BAN 480 L、480 KNU/g) に対して比較することによって、活性を決定する。
【0194】
エキソ活性アッセイ:
900 μlの可溶化蝋質トウモロコシ澱粉 (3.3%のデンプンを50 mMの酢酸ナトリウム、1 mMのCaCl2、pH 5.7中で5分間沸騰させ、40℃に冷却する) を、100 μlの酵素と40℃において攪拌しながらインキュベートする。適当な反応時間後、450 μlの4℃の96%エタノールの添加により、残りのデンプンを沈殿させる。3000 Gにおいて20分間遠心することによって、沈殿を直ちに除去する。2000 μlの上清を50 μlの2%トリプトファンおよび900 μlの64%硫酸と混合することによって、上清中の全炭水化物を決定する。この混合物を95℃に15分間加熱し、そして温室に冷却した後、630 nmにおける吸収を測定する。同一アッセイにおいてグルコース標準の吸収と比較することによって、活性を決定する。初期速度で1 mg/分のオリゴマー生成物 (エタノールにより沈殿しない生成物) を遊離する酵素の量として、1単位を規定する。
【0195】
実施例4CBMを有するエンド-アミラーゼを使用する液化および糖化
この実施例において、CBMをもつ細菌エンド-アミラーゼ (配列番号4) またはCBMをもたない同一細菌エンド-アミラーゼ (配列番号35) をグルコアミラーゼおよび酸性真菌アミラーゼと一緒に使用して、粒状コムギデンプンをグルコースに転化することを例示する。247.5 gのコムギデンプンを攪拌下に502.5 mlの水に添加することによって、乾燥固形分 (DS) 33%の粒状デンプンを含むスラリーを調製した。pHをHClで4.5に調節する。この粒状デンプンのスラリーを100 mlのエルレンマイヤーフラスに各フラスコにつき75 gずつ分配した。フラスコを60℃の水浴中で磁気的に攪拌しながらインキュベートした。時間ゼロにおいて、表1に記載する酵素活性をフラスコに使用した。24、48、73および94時間後に、試料を抜き出す。使用した酵素レベルは次の通りであった: エンド-アミラーゼ±CBM 100 KNU/kg DS、グルコアミラーゼ 200 AGU/kg DSおよび真菌α-アミラーゼ 50 AFAU/g DS。
【0196】
下記の方法を使用して、全乾燥固形分のデンプンを決定した。過剰量のエンド-アミラーゼ (300 KNU/kg 乾燥固形分) を添加し、そして試料を95℃の油浴中に45分間入れることによって、デンプンを完全に加水分解した。引き続いて、試料を60℃に冷却し、過剰量のグルコアミラーゼ (600 AGU/kg DS) を添加し、次いで60℃において2時間インキュベートした。
【0197】
0.22 μmのフィルターに通して濾過した後、試料について屈折率を測定することによって、デンプン加水分解物中の可溶性乾燥固形分を決定した。糖分布をHPLCにより決定した。グルコースの量をDXとして計算した。結果を表1および表2に示す。
【0198】
【表1】

【0199】
【表2】

【0200】
実施例5有効使用量
問題の酵素の 「有効使用量」 は、酵素を含まないパン (対照) の硬さに比較して、10%より大きい、例えば、10〜20%の硬さの減少を生じさせる使用量として規定される。室温において不活性雰囲気中で14日間貯蔵した後、硬さの減少を測定する。
弾性低下比 = ELRを使用することによって、過剰使用に対する許容度を測定する。パン焼き後1日またはその後、例えば、第5日、第10日または下記の実施例におけるように14日間貯蔵した後、ELRを測定し、次いで次のように規定する:
【0201】
【数1】

450 MANU/kg穀粉のノバミル (Novamyl(商標)) と組合わせて、過剰使用に対する許容度を測定する:
【0202】
【数2】

アミラーゼを過剰使用する場合、ELRおよび/またはELRNは > 5%であろう。
【0203】
パン焼きプロセス
パンをスポンジおよび練り粉法に従いパン焼きする。
スポンジ、穀粉に基づく%としての成分
大豆油 2.5
SSL 0.38
酵母 5
小麦粉 60
水 62
【0204】
練り粉、穀粉に基づく%としての成分
アスコルビン酸 各穀粉について最適化すべき
ADA 20 ppm
塩 2
シロップ 7 (乾燥物質)
水 各穀粉について最適化すべき
小麦粉 40
プロピオン酸カルシウム
+ 酵素 0.25
【0205】
スポンジの成分、酵母、水、穀粉、SSLおよび油を90 rpmにおいて1分間、150 rpmにおいて4分間混合する。スポンジを発酵のために27℃および86%のRHにおいて硬化する。
スポンジを練り粉成分に添加し、練り粉に対して90 rpmにおいて1分間および150 rpmにおいて14分間混合する。練り粉を各々340gの片に計量し、10分間静置する。
練り粉の部分をシートにし、塑造し、次いで42℃および86%のRHにおいて55分間発酵させる。練り粉を225℃において15分間焼く。焼いたパンを冷却し、分析するまで貯蔵する。
【0206】
CBM-ハイブリッドおよびCBMを含まない対応する酵素を使用して、パンを焼いた。450 MANU/kg 穀粉のノバミル (Novamyl(商標)) を添加するか、あるいはしないで、有効使用量を決定する。AACC法74-09に従いTA.XT2きめ分析装置により、パンの硬さおよび弾性を測定する。
【0207】
CBM-ハイブリッド酵素の有効使用量を決定し、そして450 MANU/kg 穀粉のノバミル (Novamyl(商標)) を添加するか、あるいはしないで、有効使用量の3倍および5倍で新しい組のパンを焼く。
14日間貯蔵した後、ELRを測定し、そしてELRならびにELRNは有効使用量の5倍を使用したCBMを有するアミラーゼについて5%より小さいが、それは有効使用量の3倍を使用したCBMを含まない対応する酵素について5%より大きいことが見出された。
【0208】
実施例6選択した変異型についてのELRの決定
500 MANU/kg 穀粉の使用量を使用した以外、実施例5に記載するように、実施例6を実施した。
アルカリ性バシラス (Bacillus) 種AA560エンド-アミラーゼ (配列番号40) およびバシラス・フラボテルムス (B. flavothermus) からのCBM (配列番号2中の残基485〜586) を含んでなるハイブリッドの変異型を使用した: アミラーゼ配列の中に下記の変更を含んでなる変異型BE1: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458K、N33S、D36N、K37L、E391I、Q394R、K395D、T452YおよびN484P、およびアミラーゼ配列の中に下記の変更を含んでなる変異型BE2: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458KおよびN484P。
【0209】
【表3】

【0210】
【表4】

【0211】
実施例7バターケーキ
ハイブリッドBE1、BE2、配列番号40に示すバシラス (Bacillus) アミラーゼ (CDドナー相同体) およびバシラス (Bacillus) アミラーゼ配列番号2 (CBMドナー) を使用して、バターケーキの練り粉を調製した。
【0212】
小麦粉、砂糖、パン焼き粉、乳化剤 (脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド) から成る商用バターケーキトウモロコシ混合物 「Tegral Allegro」 (Puratos) から練り粉を作った。ケーキ混合物、酵素 (4 mg/kg 穀粉) および水をボールに入れ、滑らかな均質な混合物が得られるまで、スパチュラ (Bear AR 5 A-Vari-ミキサー) により第3速度で十分にかき混ぜた (約2分) 。型に300 gの練り粉を充填し、180℃において45分間焼いた。焼いたケーキを温室に30分間冷却し、窒素中で詰めた後、分析するまで室温において貯蔵した。
【0213】
下記の文献に記載されているように、低磁場NMRにより、遊離水の移動度を決定した: P. L. Chen、Z. Long、R. RuanおよびT. P. Labuza、Nuclear Magnetic Resonance Studies of water Mobility in bread during Storage. Lebensmittel Wissenschaft unt Technologie 30、178-183 (1997) 。
【0214】
下記の文献に開示されている方法に従い、硬度および凝着性を測定した: Food Texture and viscosity、第2版、Malcolm Bourne、Food Science and Technology, International Series、Academic Press、pp. 182-186。
14日後に、すべてのデータを測定した。下記の結果が得られた:
【0215】
【表5】

【0216】
前述のデータに基づいて、下記のパラメーター (i) 〜 (iii) を計算した:
【数3】

(ii) d硬度 = 硬度参照−硬度アミラーゼ
(iii) d移動度 = 移動度アミラーゼ−移動度参照
【0217】
【表6】

【0218】
Amyl 1は下記の置換を有する配列番号40のアミラーゼと同一である: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458K、N33S、D36N、K37L、E391I、Q394R、K395D、T452YおよびN484P、配列番号40のナンバリングを使用する。
【0219】
実施例8スポンジおよび練り粉
スポンジおよび練り粉法に従い、パンを焼いた。パンを分析まで室温において14日間貯蔵した。硬度および凝着性を下記の文献に記載されている方法に従い測定し: Food Texture and viscosity、第2版、Malcolm Bourne、Food Science and Technology, International Series、Academic Press、pp. 182-186、そして遊離水の移動度を下記の文献に記載されている低磁場NMRにより決定した: P. L. Chen、Z. Long、R. RuanおよびT. P. Labuza、Nuclear Magnetic Resonance Studies of water Mobility in bread during Storage. Lebensmittel Wissenschaft unt Technologie 30、178-183 (1997) 。
【0220】
3種類のアミラーゼを使用した: 変異型BE1およびBE3およびバシラス (Bacillus) アミラーゼ配列番号2 (CBMドナー) 。変異型BE3は配列番号37に示すアミノ酸配列を有する触媒ドメインを有し、そして下記の変更の1または2以上、例えば、すべてを含んでなる: S31A、D32N、I33L、E178*、G179*、N190F、K389I、K392R、E393D、V508A、および配列番号2中のアミノ酸残基485〜586として示すアミノ酸配列を有するCBM。
14日後に、すべてのデータを測定した。下記の結果が得られた:
【0221】
【表7】

【0222】
上記データに基づいて、下記のパラメーター (i) 〜 (vi) を計算した:
ノバミル (Novamyl(商標)) を含まない処理について:
【0223】
【数4】

(ii) d硬度 = 硬度参照−硬度アミラーゼ
(iii) d移動度 = 移動度アミラーゼ−移動度参照
ノバミル (Novamyl(商標)) を含む処理について:
【0224】
【数5】

(v) d硬度 = 硬度ノバミル−硬度アミラーゼ+ノバミル
(vi) d移動度 = 移動度アミラーゼ+ノバミル−移動度ノバミル
【0225】
【表8】

【0226】
実施例9熱安定性の決定
熱安定性を60℃、65℃または70℃において50 mMのNaOAc、1 mMのCaCl2緩衝液、pH 5.7中で30分間決定した。試料を冷却し、決定を50℃において実施する以外、節 「材料および方法」 に記載するファデバス (Phadebas) 法により残留活性を測定した。残留活性 (R.A.) は下記の方程式に従い計算することができる:
【0227】
【数6】

下記の結果が得られた:
【0228】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のアミノ酸配列を含んでなるハイブリッドであるポリペプチド:
a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列、および
b) 炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列。
【請求項2】
前記第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列が細菌に由来する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
第2 アミノ酸配列が配列番号2中のアミノ酸残基485〜586として示すアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有する、請求項1〜2のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記第1アミノ酸配列が下記から成る群から選択されるいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有する請求項1〜3のいずれかに記載のポリペプチド: 配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41および配列番号42。
【請求項5】
下記から成る群から選択されるいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有する請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチド: 配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12および配列番号14。
【請求項6】
a) 配列番号40中に示す触媒ドメインまたは相同的触媒ドメイン、ここで下記の置換の1または2以上、または好ましくはすべてが導入されている: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458K、N33S、D36N、K37L、E391I、Q394R、K395D、T452YおよびN484P、配列番号40のナンバリングを使用する、およびb) 配列番号2のアミノ酸残基485〜585として示すCBMを含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項7】
a) 配列番号37中に示す触媒ドメインまたは相同的触媒ドメイン、ここで下記の変更の1または2以上、例えば、すべてを含んでなる: S31A、D32N、I33L、E178*、G179*、N190F、K389I、K392R、E393DおよびV508A、およびb) 配列番号2中のアミノ酸残基485〜586として示すアミノ酸配列を有するCBMを含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項8】
a) 配列番号40中に示す触媒ドメインまたは相同的触媒ドメイン、ここで下記の置換の1または2以上、または好ましくはすべてが導入されている: R118K、D183*、G184*、N195F、R320K、R458KおよびN484P、配列番号40のナンバリングを使用する、およびb) 配列番号2のアミノ酸残基485〜585として示すCBMを含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドが下記を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチド:
a) この明細書に記載する試験条件下に1.0より大きいEIF1または
b) この明細書に記載する試験条件下に1.0より大きいEIF2
【請求項10】
前記ポリペプチドがこの明細書に記載する試験条件下に70℃において少なくとも25%の残留活性を有する、請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
有効使用量の少なくとも2倍のポリペプチドを練り粉に添加して、15%より小さいELRを生じさせる、請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項12】
有効使用量の少なくとも2倍のポリペプチドを練り粉に添加して、15%より小さいELRNを生じさせる、請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチドを練り粉に添加することを含んでなる、練り粉または練り粉から作られた食用製品を製造する方法。
【請求項14】
食用製品が焼かれた製品、例えば、パンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有効使用量の少なくとも2倍のポリペプチドを練り粉に添加して、15%より小さいELRを生じさせる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
有効使用量の少なくとも2倍のポリペプチドを練り粉に添加して、15%より小さいELRNを生じさせる、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
使用したとき、この明細書に記載する試験条件下に少なくとも85単位のd硬度 (dHardness) を与えるように、ポリペプチドが5%より小さい凝着性の減少を与える、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
使用したとき、この明細書に記載する試験条件下に少なくとも15単位のd硬度を与えるように、ポリペプチドが300 MANU/kg穀粉のノバミル (Novamyl) と一緒に添加したとき5%より小さい凝着性の減少を与える、請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
使用したとき、この明細書に記載する試験条件下に少なくとも400単位のd移動度 (dMobility) を与えるように、ポリペプチドが5%より小さい凝着性の減少を与える、請求項13〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
使用したとき、この明細書に記載する試験条件下に少なくとも1100単位のd移動度を与えるように、ポリペプチドが300 MANU/kg穀粉のノバミル (Novamyl) と一緒に添加したとき5%より小さい凝着性の減少を与える、請求項13〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
エキソ-アミラーゼ活性、好ましくはマルトジェニックα-アミラーゼ活性、好ましくはノバミル (Novamyl) を添加することをさらに含んでなる、請求項13〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
酵素を添加することをさらに含んでなり、前記酵素がキシラナーゼ、プロテアーゼおよびエンド-アミラーゼから成る群から選択される、請求項13〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
パンをスポンジおよび練り粉法により製造する、請求項13〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチドを含んでなる組成物。
【請求項25】
穀粉を含んでなる、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
練り粉である、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチドを含んでなる粒体または凝集粉末の形態の練り粉またはパンを改良する添加物。
【請求項28】
95重量%より多くが25〜500マイクロメートルの粒度を有する、請求項27に記載の練り粉またはパンの添加物。
【請求項29】
下記の工程を含んでなる、パン焼きに適当なポリペプチドを設計する方法:
a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列を準備し、
b) 炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を準備し、そして
c) 前記第1アミノ酸配列および前記第2 アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを構築する。
【請求項30】
下記の工程を含んでなる、パン改良添加物として適当な組成物を製造する方法:
a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列を準備し、
b) 炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を準備し、
c) 前記第1アミノ酸配列および前記第2 アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを構築し、
d) 前記ポリペプチドをコードするDNA配列を準備し、
e) 前記DNA配列を適当な宿主細胞中で発現させ、そして前記ポリペプチドを回収し、そして
f) 前記ポリペプチドを穀粉または粒体または凝集粉末に添加する。
【請求項31】
下記の工程を含んでなる、練り粉または練り粉から作られた食用製品を製造する方法:
a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列を準備し、
b) 炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列を準備し、
c) 前記第1アミノ酸配列および前記第2 アミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを構築し、
d) 前記ポリペプチドをコードするDNA配列を準備し、
e) 前記DNA配列を適当な宿主細胞中で発現させ、そして前記ポリペプチドを回収し、そして
f) 前記ポリペプチドを練り粉に添加する。
【請求項32】
ポリペプチドが請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチドである、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
デンプンを請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチドで処理する、デンプンを糖化する方法。
【請求項34】
デキシトロースおよび/またはマルトースを含有するシロップにデンプンを転化する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
デンプンが糊化デンプンまたは粒状デンプンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
糖化デンプンを発酵生物と接触させて発酵生成物を生成する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
発酵生物が酵母であり、そして発酵生成物がエタノールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
下記の工程を含んでなる方法:
a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドをデンプンと接触させ、
b) 前記デンプン基質の少なくとも90% w/wを発酵可能な糖に転化するために十分な時間の間および温度において、前記デンプンを前記ポリペプチドとインキュベートし、
c) 発酵して発酵生成物を生成し、そして
d) 必要に応じて発酵生成物を回収する。
【請求項39】
前記ポリペプチドが請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
下記の工程を含んでなる方法:
a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドを発現するように形質転換された酵母細胞とデンプン基質を接触させ、ここで前記第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列は細菌に由来し、
b) 前記デンプン基質の少なくとも90% w/wを発酵可能な糖に転化するために十分な時間の間および温度において、前記デンプンを前記酵母とともに保持し、
c) 発酵させてエタノールを生成し、そして
d) 必要に応じてエタノールを回収し、
ここで工程a、bおよびcを別々にまたは同時に実施する。
【請求項41】
酵母細胞が請求項52に記載の酵母細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
下記の工程を含んでなる、発酵によりデンプン含有物質からエタノールを製造する方法:
a) エンド-アミラーゼ活性を有する第1アミノ酸配列と、炭水化物結合性モジュールを含んでなる第2 アミノ酸配列とを含んでなるポリペプチドで前記デンプン含有物質を液化し、ここで前記第1アミノ酸配列および/または第2 アミノ酸配列は細菌に由来し、
b) 得られた液化されたマッシュを糖化し、そして
c) 発酵生物の存在下に工程 (b) において得られた物質を発酵させる。
【請求項43】
ポリペプチドが請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
エタノールの回収をさらに含んでなる、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
糖化および発酵を同時の糖化および発酵プロセス (SSFプロセス) として実施する、請求項42または44に記載の方法。
【請求項46】
発酵間のエタノール含有率が少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、例えば、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、例えば、少なくとも16%のエタノールに到達する、請求項42または45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNA配列。
【請求項48】
請求項47に記載のDNA配列を含んでなるDNA構築物。
【請求項49】
請求項48に記載のDNA構築物を担持する組換え発現ベクター。
【請求項50】
請求項48に記載のDNA構築物または請求項49に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項51】
微生物、特に細菌細胞または真菌細胞である、請求項50に記載の宿主細胞。
【請求項52】
酵母である、請求項50または51に記載の宿主細胞。

【公表番号】特表2008−523830(P2008−523830A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547185(P2007−547185)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000819
【国際公開番号】WO2006/066596
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】