説明

ハッカの抽出物の化粧的使用

【課題】内的ストレスにより誘発される過剰な色素沈着に対して有効な化粧料組成物の提供。
【解決手段】シソ科植物の抽出物、特に、ウォーターミント(Mentha aquatica)、クールミント(Mentha arvensis)、ホースミント(Mentha longifolia)、セイヨウハッカ(Mentha piperita)、ペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)及びスペアミント(Mentha spicata)から選択された属のハッカに由来する抽出物を含有する化粧料組成物。さらに、美白剤(アスコルビン酸誘導体及び/又はカンゾウの抽出物)、角質溶解剤(フェノール誘導体、特にサリチル酸又はその誘導体の1つ、又はブナノキの芽の抽出物)、キレート剤(エデト酸4ナトリウム及び/又はクエン酸)、抗−NO剤(イチョウの抽出物)の少なくとも1つを含有する化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シソ科(Menthae family)の少なくとも1つの植物の細胞の抽出物を、情動タイプのストレスにより特に誘発されるメラニン生成の阻害剤、及び/又は脱色素剤として使用する方法に関する。
【0002】
メラニン生成はメラニンを合成する過程であり、メラニンは細胞の色素沈着の原因である。それは、L−チロシンアミノ酸のヒドロキシル化により開始される複雑な生化学的な過程であり、L−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)の形成をもたらす。L−DOPAは、今度は、特定のメラニン生成細胞関連酵素、すなわちチロシナーゼの作用によりDOPAクロームへ転換され、次の還元及び酸化反応によりDOPAクロームのメラニンへの転換がもたらされる。チロシナーゼの生産及びその活性は、生成されるメラニンの量を部分的に決定する。ケラチン生成細胞へ移動されるメラニンの量及びタイプがヒトの皮膚の視認される色素沈着の程度を部分的に決定する。
【0003】
メラニンは、主として皮膚に関しては、太陽、より一般的には、紫外線に対する保護機能を提供することが公知である。メラニンはこれらの線を吸収し、照射の間に発生した遊離基により起こされ得る損傷の顕在化のリスクを著しく減少させる。
【0004】
しかし、メラニンは、外因的な刺激、例えば汚染又は紫外線、及び/又は内因的な刺激、例えば老化又は内的ストレスによる刺激、への応答において、ケラチン生成細胞、内皮細胞、繊維母細胞、及びランゲルハンス細胞で過剰に又は異常にさえ、合成され得る。
【0005】
実際、これらの2つの刺激方法のいくつかは共存することができる。
【0006】
すなわち、UV照射は第一に、メラニン生成細胞を直接刺激することによりメラニン合成を刺激し、第二に、仲介物を介して、ケラチン生成細胞、内皮細胞、及び繊維細胞によるメッセージを開始する、及び/又はメッセージの通過を促進することにより、メラニン生成を間接的に刺激する。特に、ケラチン生成細胞は、合成仲介物、例えばアルファ−MSH(アルファ−メラニン生成細胞刺激ホルモン)、エンドセリン、E2プロスタグランジン及びNO、を介してメラニン生成細胞と伝達しているようである。
【0007】
特に外因的刺激により誘発される過剰な色素沈着の発現を阻むために、特に皮膚の正常な色を回復するために活性剤が既に提案されてきた。これらの活性剤の例として、特にL−アルコルビン酸、コージ酸、ハイドロキノンなどが挙げられ得る。しかしこれらの活性剤はより特に内的ストレスにより誘発される過剰な色素沈着を治療することを可能にしない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、後者の刺激方法により誘発される過剰な色素沈着を治療することを可能にする活性剤を有する需要が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、新しく記載される活性を示すところの、シソ科の植物の細胞の抽出物がメラニン生成過程、特に内的ストレスによる誘発される過程を阻害することのできる活性剤として使用されることができることを正確に、全く意外にも示した。
【0010】
セイヨウハッカ(Mentha piperita)の由来物は、皮膚に鎮静効果を有する活性剤として、既に国際公開第2004/058282号パンフレットにおいて提案されている。しかし、該パンフレットは内的ストレスにより誘発されるメラニン生成過程に関してこの同じタイプの抽出物の性質について何も言及しておらず、情動タイプのストレスにより誘発されるメラニン生成の過剰に関する皮膚疾患を予防する及び/又は治療することにおけるその有効性についてずっと少なく言及している。
【0011】
本発明者らにより発見された新規な活性は、メラニンの合成及び/又は放出を防ぐ及び/又は減少させ、内的ストレスに続いて起きる皮膚の色素沈着の過剰又は皮膚疾患と戦うのに有利である。
【0012】
本発明の文脈において、「内的ストレス」及び「情動タイプのストレス」という表現は等価であり、どちらも、心理的ストレス又は疲労により誘発された、すなわち引き起こされた又は増幅された内因性の変化を意味することを目的とする。
【0013】
情動タイプのストレスは特に、ホルモン、及び/又は神経ホルモン、例えばカテコールアミンの血液及び周辺組織への放出を通して、はっきり現れることができる。
【0014】
それはカテコールアミン、その中にはノルアドレナリンがある、の量の増加により特に反映され得る。ノルアドレナリンタイプのストレスを参照されたい。
【0015】
内的ストレスにより誘発されたメラニン生成に対するハッカの抽出物の効果を示すために、本発明者らは、インビトロの多細胞のケラチン生成細胞/メラニン生成細胞/神経細胞モデルを使用してきた。このノルアドレナリンで刺激されるインビトロのモデルは、情動タイプのストレスにより誘発されるメラニン生成に対する潜在的に活性剤の効果を評価するのに適することが見出されている。
【0016】
すなわち本発明者らは、このモデルにおけるハッカの抽出物の活性は、メラニン生成の別の間接的なパートナー、すなわちポリペプチドの化学要素であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)放出の阻害により反映されることに注目した。
【0017】
ケラチン生成細胞は、成長、メラニン合成及びメラニン生成細胞の樹状性(dendricity)を調節するメラニン親和性の因子を、CGRPによる刺激に応答して生産することが今、公知である(マサヒコトヨダら「研究皮膚科学会(The society for investigate dermatology)」第4巻、第2号、1999年、9月)。
【0018】
CGRPは、カルシトニン遺伝子から製造される37のアミノ酸のペプチドであり、最も広く分布されており、最も豊富な感覚神経ペプチドである。外因性の刺激例えばUV照射に反応して、神経末端により分泌されること(Scholzenら、研究皮膚科学シンポジウム予稿集(Journal of investigative dermatology symposium proceedings)、1999年、第4巻、第1号、55〜60ページ)、及びその分泌は外部の攻撃、例えば汚染により刺激されることもまた示された。
【0019】
より最近、CGRPの生産は、情動タイプのストレスへに対する応答において、刺激され得ることもまた注目されてきた。すなわち、CGRP分泌は、ストレスホルモン、例えばノルアドレナリン及びアドレナリンにより刺激されることができることが示されてきた。
【0020】
結果的に、本発明者らは、ハッカの抽出物がCGRPの放出を阻害する性質を有し、その結果、メラニン生成を調節する、特に後者が情動タイプのストレスにより誘発される場合阻害することを可能にすることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この理由から、本発明の特徴の一つに従うと、本発明は、特に情動タイプのストレスにより誘発されるメラニンの合成及び/又は放出を予防する及び/又は減少させるための治療的又は非治療的処置、特に化粧的処置の方法において、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を活性剤として含む化粧料組成物が使用される方法に関する。
【0022】
本発明の別の特徴に従うと、本発明は、治療的又は非治療的処置の方法、特に化粧的処置の方法、特に情動タイプのストレスにより誘発される、過剰な皮膚色素沈着を予防する及び/又は処置するための方法において、上記で定義された組成物が使用される方法に関する。
【0023】
本発明のさらに別の特徴に従うと、本発明は、治療的又は非治療的処置の方法、特に化粧的処置の方法、特に情動タイプのストレスにより誘発される過剰なメラニン生成に関連する皮膚疾患を予防する及び/又は処置するための方法において、上記で定義された組成物が使用される方法に関する。
【0024】
本発明の別の特徴に従うと、本発明は、ハッカの抽出物が作用するメカニズムとは異なるメカニズムに従って、すなわちCGRPの阻害により、メラニン生成に作用する追加の脱色素剤と共にハッカの抽出物が有利に組み合わされることのできる新規な組成物にもまた関する。追加の脱色素剤は、例えばチロシナーゼの阻害又は第二のメッセンジャー、例えば間接的にメラニン生成を刺激するNO又はプロスタグランジン、の阻害のメカニズムに従って作用し得る。種々の作用の方法に従って同時に作用するそのような組み合わせは、色素の点又は欠点に、改善された総合的な効果を得ることを可能にする。
【0025】
すなわち、本発明の課題は、化粧料組成物及び/又は皮膚科学組成物において、生理学的に許容される媒体中に、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、チロシナーゼの阻害又は間接的にメラニン生成を刺激する第二メッセンジャー、例えばNO又はプロスタグランジンの阻害のメカニズムに従って作用する少なくとも1つの脱色素剤と組み合わせて含むことを特徴とする組成物でもある。
【0026】
特定の実施態様に従うと、本発明は、皮膚科学的及び/又は化粧料組成物において、生理学的に許容される媒体中に、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、角質溶解落屑剤、抗−NO剤及び/又はキレート剤の少なくとも1つと組み合わせて含むことを特徴とする組成物に関する。
前記の剤はアスコルビン酸及びその誘導体とは異なる。
【0027】
別の特定の実施態様に従うと、本発明は、皮膚科学的及び/又は化粧料組成物において、生理学的に許容される媒体中に、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物、及び少なくとも1つの脱色素剤を、角質溶解落屑剤、抗−NO剤、抗−UV剤、美白剤、抗炎症剤、キレート剤、及び/又は抗酸化剤の少なくとも1つと組み合わせて含むことを特徴とする組成物に関する。
【0028】
別の特定の実施態様に従うと、本発明は、皮膚科学的及び/又は化粧料組成物において、生理学的に許容される媒体中に、セイヨウハッカ属(Mentha piperita genus)の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、少なくとも1つのアスコルビン酸又はその少なくとも1つの誘導体、例えばリン酸アスコルビルマグネシウム(ビタミンC PMg)、アスコルビン酸グリコシル(ビタミンCG)、リン酸アスコルビルナトリウム(ビタミンCPNa)、及び3−O−エチルアスコルビン酸と組み合わせて含むことを特徴とする組成物に関する。
【0029】
すなわち、本発明の目的は、皮膚の色素沈着、例えばホクロ、(単純型又は太陽型又は老年期型)、PUVAホクロ、サンベッドホクロ、網目状ホクロ、太陽などにより引き起こされるソバカス又は肝斑症(melasmae)(シミ)を予防する及び処置する、より特にメラニン生成過程を阻害するために特に効果的であるところのハッカの抽出物及び/又は新規な組成物を提案することでもある。
【0030】
本発明者らは、ハッカの抽出物、特にシソ科の植物の細胞の抽出物及び以降に記載される追加の脱色素剤の組み合わせがそのような効果を提供するのに特に有用であることが分かったことを特に発見した。
【0031】
本発明は、皮膚科学的及び/又は化粧料組成物において、生理学的に許容される媒体中にシソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、組成物の合計重量に対して0.4重量%未満の乾燥活性物質の割合でを含むことを特徴とする組成物にもまた関する。
【0032】
本発明に従う組成物は、局所的経口投与のために配合されることができる。
【0033】
本発明は、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の抽出物及び/又は本発明に従う組成物を脱色素剤としてインビボ又はインビトロで使用する方法にもまた向けられる。
【0034】
本発明は、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の抽出物及び/又は本発明に従う組成物を、メラニン生成、特に情動タイプのストレスにより誘発されるメラニン生成を阻害するための剤としてインビボ又はインビトロで使用する方法にもまた関する。
【0035】
本発明は、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の抽出物及び/又は本発明に従う組成物を美白剤として使用する方法にもまた関する。
【0036】
本発明の目的のために、用語「メラニン生成」は、例えばメラニンの化学的前駆体を合成する方法に関するすべての酵素反応及び/又は非酵素反応、その中間体の一つ又は副生物を含む、メラニン合成の過程を意味する。
【0037】
本発明の目的のために、用語「阻害する」は、過程の作用又は機能を低下させる、制限する、又はブロックすることを意味する。
【0038】
本発明の目的のために、もし物質が、メラニン生成が起きる表皮のメラニン生成細胞の活性(vitality)に直接作用する、及び/又は、もし物質が、メラニン生成に含まれる酵素の一つを阻害することによるか、又はメラニン合成鎖の化学物質の一つの構造類似体としてインターカレートし、次に該鎖はブロックされることができ、このようにして脱色素を確保することにより、メラニン生合成の段階の一つを阻むならば、該物質は脱色素していると認識される。
【0039】
抽出物の定義
用語「少なくとも1つのハッカの抽出物」は、「ハッカ細胞の抽出物」、従って「シソ科の少なくとも1つの植物の抽出物」としてとして理解されるべきである。
【0040】
少なくとも1つのハッカの抽出物は、シソ科から由来する任意の植物物質から製造された抽出物であることができ、該物質はインビトロ又はインビボでの培養により得られてきた。
【0041】
用語「インビトロにおける培養」は、植物又は植物の一部を人工的に得ることを可能にする、当業者に公知のすべての技術を意味する。
【0042】
すなわち、例えば本発明に従うと、抽出物は、インビトロでの培養により得られた少なくとも1つのハッカの器官(根、茎、葉)、又は器官の細胞の抽出物、又はさもなければ少なくとも1つのハッカの未分化の細胞の抽出物であり得る。好ましくはインビトロでの培養に得られた未分化の細胞から得られた抽出物が使用される。
【0043】
用語「未分化の植物細胞」は、特異的な分化の特徴をなんら示さず、かつそれ自身で生きることができ、他の細胞との依存の状態にない任意の植物細胞を意味することが意図される。これらの未分化の植物細胞は、誘起の効果下で、そのゲノムに従って任意の分化が可能であり得る。
【0044】
シソ科は、いくつかの種類(species)を含む。
【0045】
本発明に従って使用されることができるシソ科の属の中では、例えばウォーターミント(Mentha aquatica)、クールミント(Mentha arvensis)、ホースミント(Mentha longifolia)、セイヨウハッカ(Mentha piperita)、ペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)及びスペアミント(Mentha spicata)の属が挙げられ得る。
【0046】
本発明に従ってより特に考慮される種類は、セイヨウハッカ属から由来する。
【0047】
従来技術において当業者に公知である任意の抽出方法が本発明に従って使用されることができる。特にアルコール抽出、特にエタノール抽出、及び水性アルコール抽出が挙げられ得る。国際公開第04/058282号パンフレットに記載された方法によって製造された抽出物もまた使用され得る。そのような抽出物は、10〜110 g/l、又は45〜75 g/lさえの乾燥活性物質を含み得る。例えば、この抽出物は2〜30g/lの糖(M. Duboisらの方法により測定された、分析化学(Analytical Chemistry)、第28巻、第3号、350〜356ページ、1956年)及び0.2〜2.7 g/lのポリフェノール(フェリシアン化カリウムを用いる比色分析により測定された)を含み、ヒドロキシ桂皮化合物、フラボン、フラバノン、及びクマリンを含む。
【0048】
ハッカの抽出物は、市販入手もまた可能である。すなわち、GREENTECH社により販売されているカナディアンハッカの葉の水−グリコール抽出物、ALBANMULLER社により販売されているプロピレングリコールによるセイヨウハッカの葉の抽出物、及びSILAB社によりCALMISKIN(商標)の名前で販売されているセイヨウハッカの葉の抽出物が本発明に従って使用されることができる。
【0049】
ハッカの抽出物は、それが配合される組成物に本発明に従って必要とされる性質を与えるのに有効である量において存在する。
【0050】
他に述べられない限り、ハッカ抽出物の量は、乾燥活性物質として示される。用語「乾燥活性物質」は、従来技術において当業者に公知である任意の方法により測定されることができる、抽出物の乾燥後に残った物質の量を意味する。測定は、例えば国際公開第2004/058282号パンフレットに記載されたプロトコルに従って行われることができる。
【0051】
すなわち、本発明の化粧料組成物又は皮膚科学組成物は、組成物の合計重量に対して0.4重量%未満、特に0.1重量%未満、0.05重量%〜0.001重量%の範囲でさえのハッカの抽出物の乾燥活性物質を含む。
【0052】
明白な理由から、ハッカの抽出物のこの量は、かなりの程度まで変化することができ、特に所望されるCGRP阻害活性、及び/又は投与の方法、すなわち対応する組成物のために選択された局所投与又は経口投与に依存することができる。
【0053】
例えば、ハッカの抽出物は、0.001重量%〜0.4重量%の範囲、特に0.002重量%〜0.35重量%の範囲、特に0.003重量%〜0.1重量%の範囲の乾燥活性物質の量で本発明に従う組成物中において、より特に局所施与を意図されたものにおいて使用されることができる。
【0054】
脱色素剤とハッカの抽出物の組み合わせ
上で記載されたように、本発明は、CGRP阻害のメカニズムとは異なるメカニズムに従ってメラニン生成に作用する少なくとも1つの脱色素剤と組み合わされた少なくとも1つのハッカ抽出物を含む組成物に関する。特にチロシナーゼの阻害、又は間接的にメラニン生成を刺激する第二のメッセンジャーの阻害のメカニズムに従って作用する脱色素剤を含んでいてもよい。
【0055】
本発明に従って使用され得る脱色素剤の非制限的な例示として、コージ酸、アルブチン、エラグ酸、ルシノール、Sリノレン酸、トラネキサム酸、4−メトキシサリチル酸カルシウム、アデノシンモノリン酸二ナトリウムOT、又はジヒドロキシジプロピルビフェニル(DDB)が挙げられ得る。
【0056】
特定の実施態様に従うと、本発明は、セイヨウハッカ属の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、アスコルビン酸(ビタミンC)又はその一つの誘導体、例えばアスコルビルリン酸マグネシウム(ビタミンCPMg)、アスコルビン酸グリコシル(ビタミンCG)、アスコルビルリン酸ナトリウム(ビタミンCPMa)、及び3−Oエチルアスコルビン酸、少なくとも1つと組み合わせて含む組成物にもまた関する。
【0057】
本発明に従う組成物が、ハッカの少なくとも1つの抽出物を、チロシナーゼの阻害又は間接的にメラニン生成を刺激する第二メッセンジャーの阻害のメカニズムに従って作用する少なくとも1つの脱色素剤、特に上に列挙された脱色素剤と組み合わせて含むとき、それらは以降に記載される角質溶解落屑剤、抗−NO剤、抗−UV剤、美白剤、抗炎症剤、キレート剤、及び/又は抗酸化剤の少なくとも1つを追加的に含み得る。
【0058】
本発明の化粧料組成物及び/又は皮膚科学組成物は、組成物の合計重量に対して0.1重量%〜7重量%、好ましくは0.5重量%〜7重量%の脱色素剤を含むことができる。
【0059】
もちろん、この量自身は特に使用される脱色素剤の性質に依存して、かなりの程度まで変化することができ、所望される脱色素活性及び/又は対応する組成物のために選択される投与の方法にもまた依存し得る。
【0060】
皮膚疾患
上に記載されたように、ハッカの抽出物及び/又は本発明に従う組成物は、過剰の皮膚色素沈着を予防する及び/又は処置するために、特に情動タイプのストレスにより誘発される過剰のメラニン生成に特に関連する皮膚の疾患に特に有利であることがわかる。
【0061】
さらに、ハッカの抽出物及び/又は本発明に従う組成物は、色素沈着症(hypermelanoses)を予防する及び/又は処置するために使用されることができる。
【0062】
色素沈着症は、過負担のメラニン又は皮膚におけるメラニンの 異常な分布に対応する。
【0063】
色素沈着症、褐色性色素沈着症(melanoderma)、真皮に関係する異常は、青色性色素沈着症、皮膚異常とは区別されることができる。
【0064】
褐色性色素沈着は、真皮の基底層中の活性なメラニン生成細胞の数の増加から生じるか、又はメラニン生成細胞の数の変化なしに真皮中のメラニンの量の増加から生じる。後者の場合がほとんどの皮膚の高色素沈着を構成する。
【0065】
チロシナーゼの増加された合成、メラノソームのメラニン化の増加、ケラチン生成細胞への移動の増加、及び/又はケラチン生成細胞のメラノゾームの残存の増加により誘発されることができる。
【0066】
色素沈着症の例として、ホクロ、PUVAホクロ、サンベッドホクロ、網目状ホクロ、ソバカス、及び黒皮症(又はシミ)が挙げられ得る。
【0067】
ホクロは、表皮の高色素沈着症(hypermelanocytoses)である。ホクロは、もしその色が太陽光によって変化されないならば単純型であり、又は太陽型、又は老年期型である。後者は、一般的にサイズが大きい。それらは光が過剰な地域において観察される。それらは日焼けした後の若い人、及び太陽への暴露を追う高齢の人において現れる。70歳以上の人の90%超が、特に手の裏側、顔、腕、背中の上方部、及び首及び肩に太陽ホクロを呈する。いくつかの太陽ホクロは合併し、広い被覆を形成することができる。
【0068】
PUVAホクロは、太陽ホクロとは少し異なるシミであり、長い間PUVA治療を受けている患者に現れる。それらはUVA照射に暴露されている領域に見出される。
【0069】
サンベッドホクロは、ソラレンなしにサンベッドを使用する明るいフォトタイプ(light phototype)を有する患者に、一回の強い暴露の後に、又は習慣的かつ規則的な暴露の後に現れる。
【0070】
網目状ホクロは、太陽ホクロの変形であり、非常に色が濃く、ほとんど黒である。
【0071】
夏日斑、すなわちソバカスは、光に暴露される領域(顔、手の甲、前腕)、最も特に、非常に明るい皮膚を有する人に現れる。それらの着色は太陽への暴露の後、目立つ。
【0072】
肝斑症(melasma)又は肝斑症(chloasma)に関して、光に暴露される領域にもっぱら存在する高色素沈着である。妊娠又はホルモン治療中に、又はある種の医薬を飲んでいるときに現れる。
【0073】
ハッカの抽出物及び/又は本発明に従って考慮される組成物は、すべてのこれらの表皮の高色素沈着症を予防する及び/又は処置するために有効であることが見出された。本発明の有利な実施態様に従って、ハッカの抽出物は、皮膚上で活性であり、特に所望される脱色素効果と一緒に協力することのできる別の剤と混合されることもまたできる。
【0074】
この活性剤は特に、角質を溶解する落屑剤、抗−NO剤、抗−UV剤、美白剤、抗炎症剤、キレート剤及び/又は酸化剤から選択されることができ、同じ化合物がこれらの性質のいくつかを有することができることが理解される。
【0075】
本発明の目的のために、角質を溶解する剤又は落屑剤は、表皮の上層を剥離し、かつメラニンが入っている、死んだ細胞を除く剤である。
【0076】
この点において、フェノール誘導体、より特にサリチル酸又はその誘導体の一つ、及び/又はブナノキの芽の抽出物が最も特に適する。
【0077】
すなわち、フェノール誘導体は好ましくは、N−(4−ヒドロキシフェノール)アセトアミド又はアセトアミノフェノンと呼ばれるパラセタモール、サリチル酸、及びサリチル酸誘導体から選択される。
【0078】
フェノール誘導体がサリチル酸誘導体であるとき、5−n−オクタノイルサリチル酸、5−n−デカノイルサリチル酸及び5−n−ドデカノイルサリチル酸、又はそれらの塩の一つから好ましく選択される。
【0079】
AHA、BHA、及び誘導体、アミノ酸及び酸誘導体もまた挙げられ得る。
【0080】
UV線吸収剤(すなわち抗UV剤)の非制限的な例として、p−アミノ安息香酸(PABA)、p−アミノ安息香酸グリセリル、p−アミノ安息香酸エチルジヒドロキシプロピル、桂皮酸オクチルメトキシ、p−メトキシ桂皮酸2−エトキシエチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4−メチルベンジンベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4−メチルベンゾフェノン−5−スルホネート、エチルウロカネート、2−フェニル−5−メチルベンゾオキサゾール、4−メトキシ−4−t−ブチルジベンゾイルメタン及びp−メトキシ桂皮酸エチルヘキシル、及び類縁体が挙げられ得る。
【0081】
抗酸化剤として、特にポリフェノール誘導体が挙げられ得る。
【0082】
本発明の組成物において使用されることのできるポリフェノール化合物は、例えば
a)フラボノイド、
b)カルノシン酸又はカルノソール、
c)場合により置換されていてもよい(2,5−ジヒドロキシフェニル)カルボン酸及び(2,5−ジヒドロキシフェニル)アルキレンカルボン酸、及びその誘導体、特にその塩、エステル、又はアミド、
d)カフェイン酸エステル又はアミド、
e)タンニン酸及びそれらの混合物、
から選択されることができる。
【0083】
本発明に従って使用されることのできるフラボノイドの中で、タクシフォリン、カテキン、エピカテキン、エリオジクチオール、ナリンゲニン、ルチン、トロキセルチン、クリシン、タンゲレチン、ルテオリン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、クェルセチン、フィセチン、ケンフェロール、ガランギン、ガロカテキン、及びエピカテキンガレートが特に挙げられ得る。
【0084】
使用されることができるポリフェノールのあるものは、公知の方法で抽出されることのできる植物の形態で存在する。茶葉の抽出物(チャノキ(Camellia sinensis又はCamellia japonica)が使用されることができる。ニッコー社によりSunphenonの名前で販売されている特にフラボノイドを含む緑茶の抽出物が特に挙げられ得る。
【0085】
上で定義されたポリフェノールは組成物の合計重量に対して0.1〜1重量%の割合で存在してもよい。
【0086】
抗−NO剤はより特に、イチョウ、サンザシ、オリーブの木、葡萄、バジル、ショウガ、ニンニク、及び緑茶及びそれらの混合物の抽出物から選択される。
【0087】
イチョウの抽出物は最も特に有利であることが見出される。そのような抽出物は、特に市販の形態で流通されている。本発明に従う化粧料組成物又は皮膚科学組成物においてイチョウの抽出物は固体ベースで組成物の合計重量に対して0.01重量%〜10重量%の濃度で一般的に存在する。
【0088】
本発明に従って使用されることのできるキレート剤の非制限的な例示として、特にエデト酸4ナトリウム(tetrasodium hedetate)、及び/又はクエン酸が挙げられ得る。
【0089】
本発明に従って使用されることのできる美白剤の非制限的な例として、特にアスコルビン酸(ビタミンC)及び誘導体、例えばリン酸アスコルビルマグネシウム(ビタミンC PMg)、アスコルビン酸グリコシル(ビタミンCG)、リン酸アスコルビルナトリウム(ビタミンCPNa)、及び3−O−エチルアスコルビン酸、カモミール、ポリフェノール例えばエラグ酸、コージ酸、又はカンゾウの抽出物が挙げられ得る。
特に少なくともビタミンCG及び/又はカンゾウの抽出物を含み得る。
【0090】
ビタミンCGはビタミンCから由来し、このビタミンからバイオテクノロジーにより、及びシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)酵素を用いて澱粉から得られる。それは美白剤、遊離基捕捉剤及びケラチンを溶解させる剤としてもまた同時に作用する。
【0091】
一つの実施態様に従うと、特に局所施与を意図された化粧料組成物及び/又は皮膚科学組成物は、ハッカの抽出物に加えて、少なくとも1の抗−NO剤、例えばイチョウの抽出物及び美白剤、例えばビタミンCGを含むことができる。
【0092】
例えば本発明に従う組成物は、少なくとも1のセイヨウハッカの抽出物、イチョウの抽出物、ビタミンCG、カンゾウの抽出物、サリチル酸、及びブナノキの芽の抽出物を含み得る。
【0093】
もちろん、本発明に従う組成物は、ハッカの抽出物に加えて、適切であれば、1以上の他の活性剤と組み合わせて、組成物の考慮下の投与方法に関してより特に選択された配合物のための添加剤及び/又は担体を含み得る。
【0094】
特に、本発明に従う組成物は、選択された施与の方法又は投与の方法に従って、通常使用される任意の剤形であり得る。
【0095】
より具体的には、本発明に従う組成物は局所的施与又は経口投与のために配合され得る。
【0096】
より特に局所施与を意図されている組成物に関して、該組成物は、水性溶液、水性アルコール溶液、又は油性溶液、溶液タイプの分散物、又はローション又は美溶液タイプの分散物、ミルクタイプの液体、又は半液体の凋度を有するエマルジョン、クリーム又は水性又は無水のゲルタイプの懸濁物又はエマルジョン、ミクロエマルジョン、ミクロカプセル、ミクロ粒子、又はイオン及び/又はノニオンタイプのベシクルの分散物であり得る。
【0097】
それらは、例えばケアクリーム、ケアゲル、支持体上のマスク、ファンデーション、カモフラージュ製品、コンシーラー、アイシャドウ、アイペンシル、コール、マスカラ、又はメイクアップ除去製品であり得る。
【0098】
本発明の組成物がエマルジョンであるとき、脂肪相の割合は、組成物の合計重量に対して5重量%〜80重量%、好ましくは5重量%〜50重量%の範囲であり得る。エマルジョンの形態の組成物において使用されるオイル、乳化剤、及び共乳化剤は、化粧料及び/又は皮膚科学の分野で慣用的に使用されるものから選択される。乳化剤及び共乳化剤は、組成物の合計重量に対して0.3重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%の範囲の割合で存在し得る。
【0099】
本発明の組成物が油性溶液又はゲルであるとき、脂肪相は組成物の合計重量の90重量%超を占めうる。
【0100】
これらの組成物は通常の方法に従って製造される。
【0101】
公知の方法で、本発明の化粧料組成物又は皮膚科学組成物は、化粧料又は皮膚科学の分野で通常の助剤、例えば脂肪物質、乳化剤、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性活性剤、保存剤、抗酸化剤、香料、フィラー、スクリーニング剤、及び染料を含み得る。
【0102】
本発明において使用されることができる脂肪物質として、鉱物オイル、例えば水素化されたポリイソブテン及び液状石油ゼリー、植物オイル、例えばシアバターの液状フラクション、ヒマワリオイル、及びアプリコット核オイル、動物性オイル、例えばパーヒドロスクワレン、合成オイル、特にプルセリンオイル、ミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸エチルヘキシル、及びフルオロオイル例えばパーフルオロポリエーテルが挙げられ得る。脂肪族アルコール、脂肪酸、例えばステアリン酸、例えばワックス、例えばパラフィンワックス、カルナウバ蝋、及び蜜蝋もまた使用され得る。シリコーン化合物、例えばシリコーンオイル、例えばシクロメチコーン、及びジメチコーン及びシリコーンガム、樹脂及びワックスが使用され得る。
【0103】
本発明において使用され得る乳化剤として、例えばステアリン酸グリセリル、ポリソルベート60、HENKEL社によりSinnowax AO(商標)の名前で販売されているセチルステアリルアルコール/33モルのエチレンオキシドを含むオキシエチレン化セチルステアリルアルコール、GATTEFOSSE社によりTefose(商標)63の名前で販売されているPEG−6/PEG−32/ステアリン酸グリコールの混合物、PPG−3ミリスチルエーテル、シリコーン乳化剤、例えばセチルジメチコーンコポリオール、及びソルビタンモノ又はトリステアレート、PEG−40ステアレート、又はオキシエチレン化ソルビタンモノステアレート(20EO)が挙げられ得る。
【0104】
本発明において使用され得る溶媒として、低級アルコール、特にエタノール及びイソプロパノール、及びプロピレングリコールが挙げられ得る。
【0105】
親水性ゲル化剤として、カルボキシルポリマー、例えばCARBOMER(商標)、アクリルコポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、特にSEPPIC社によりSepigel 305(商標)の名前で販売されているポリアクリルアミド、C13〜14イソパラフィン、及びLaureth−7の混合物、多糖類、例えばセルロースの誘導体、例えばヒドロキシアルキルセルロース、特にヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース、天然のガム、例えばグアーガム、キャロブガム、キサンタンガム、及び粘土が挙げられ得る。
【0106】
親水油性ゲル化剤として、変性された粘土、例えばベントン、脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸アルミニウム、及び疎水性シリカ、又はエチルセルロース、及びポリエチレンが挙げられ得る。
【0107】
これらの種々の助剤の量は、化粧料及び/又は皮膚科学の分野において慣用的に使用されている量であり、例えば組成物の合計重量に対して0.01〜20重量%である。その性質に依存して、これらの助剤は脂肪相、水性相、及び脂質ベシクルに導入され得る。
【0108】
本発明に従う化粧方法は、例えばゲル、ローション、又はエマルジョンの形で配合されていてもよいところの本発明に従う組成物の例えば毎日の局所施与により、実施され得る。
【0109】
すなわち、本発明に従う方法は単純な施与を含み得る。
【0110】
別の実施態様に従うと、施与は例えば、1以上の日に毎日2〜3回、かつ一般的に少なくとも4週間、又はさらに4〜15週間の持続期間に渡って、かつ適切であれば1以上の停止期間とともに繰り返される。
【0111】
本発明に従う組成物の経口投与の場合、摂取可能な支持体の使用が好まれる。
【0112】
摂取のために、経口組成物の数多くの実施態様、特に栄養補助食品、が可能である。それらの配合はドラジェ、ゼラチンカプセル、ゲル、エマルジョン、タブレット又はカプセルの製造のための通常の方法により行われる。粉末は、経口的に投与される前に、摂取可能な液体、例えば水に希釈されることができる。
【0113】
以降に記載の実施例は、本発明の分野の非制限的な例として提示されている。
【実施例】
【0114】
実施例1
活着状況(survival conditions)下に保たれたヒトの皮膚のモデルにおける色素沈着及び、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に誘発されるメラニン生成の、本発明に従う抽出物による変化の評価。
【0115】
物質及び方法
使用された抽出物は、CALMISKIN(商標)の商品名でSILAB社により販売されている製品である。それは水中の100%(体積/体積)におけるハッカ(セイヨウハッカ)の葉の抽出物の溶液である。それは2重量%の割合で使用される。
【0116】
皮膚の色素沈着は、フォンタナ−マッソン染色による暴露後に光学顕微鏡の下で、メラニン生成細胞及び隣接するケラチン生成細胞のレベルにおいて組織学的に評価される。活性メラニン生成細胞の数は、表皮全体上でのドーパ反応後にもまた数えられる。
【0117】
脱色素する生成物又は色素化を進める生成物(propigmenting product)の客観化は、該生成物で処置された皮膚のメラニン生成細胞、及び隣接するケラチン生成細胞中に存在するメラニン色素の量を、処置されていない皮膚と比較して評価することから成る。
【0118】
試験プロトコル
6人の異なるドナーからの正常なヒトの皮膚の断片がインサートに入れられ、該インサート自身は培養ウェル中に置かれる。活着状況下の維持に特異的に適する培養培地(抗生物質、FCS)が、ウェルの底に添加され、多孔質の膜(3μm)を通して2つの区画の間の遅い拡散により通過が行われる。
【0119】
CGRPが10−7 Mの濃度においてD0に培養培地に添加される。本発明に従う生成物が2%において局所的に施与される(D0、D1及びD2)。
【0120】
以下の比較が行われた:
対照の(未処置の)皮膚
皮膚+10−7 M CGRP
皮膚+10−7 M CGRP+2%ハッカの抽出物
【0121】
全体が72時間、活着状況下に保たれる。
【0122】
フォンタナ−マッソン染色による組織学的暴露
皮膚断片は、上記のプロトコルの終わりに、ブアン液中に固定され、フォンタナ−マッソン染色の後に組織学的研究のためにパラフィンに埋め込まれる。メラニン粒子を含む細胞の数の定量的評価が、基底層の300〜400細胞上で顕微鏡下行われる。3つカテゴリーの細胞が数えられる。
スコアー1:色素沈着のない細胞又はいくつかの粒子を示す細胞、小胞の外観を有する細胞;
スコアー2:中程度のメラニン量を示す細胞(分散されており、非均一であるメラニンの粒子);
スコアー3:かなりのメラニン量を示す細胞(細胞の細胞質の半分超を覆う均一な黒い沈着物)。
【0123】
ドーパ反応によるメラニン生成細胞の組織学的暴露
活性なメラニン生成細胞の数は、0.5 M、pH7.5において(90秒、60℃において)EDTA2Naの溶液によりはがされた新鮮な表皮を使用して評価される。
【0124】
メラニン生成細胞は0.1%のドーパ溶液で暴露される(37℃における終夜インキュベーション)。
【0125】
ドーパに陽性な細胞の数が光学顕微鏡下の視域の単位(unit of field)ごとに評価される(40倍において10〜12の視域)。視域ごとに存在する活性なメラニン生成細胞の平均の数が各条件に対して計算される。
【0126】
統計的分析
6つの皮膚について得られた結果に基づいて各パラメーターに対して平均が出される。統計的分析は、5%の危険率で、Zスコアと呼ばれるスチューデント検定、又は対応のある標本試験により行われる。
【0127】
結果
フォンタナ−マッソン染色による組織学的暴露
【0128】
表1は、各色素沈着スコアーに対する上皮細胞の百分率を示す。
【表1】

表1:フォンタナ−マッソン染色後の組織学的分析。結果は分析された総数に対する細胞の百分率として表されている(n=6の異なる皮膚)。
:対照の皮膚と比較された統計的に有意な差(対応のあるスチューデントの検定、p<0.05)。
**:皮膚+CGRPと比較された統計的に有意な差(対応のあるスチューデントの検定、p<0.05)。
【0129】
活着状況下に維持されたCGRPで刺激されたヒトの皮膚のモデルにおいて、メラニン生成細胞から隣接するケラチン生成細胞へのメラニン粒子の移動の増加が注目される。特異的に、非常に顔料の多い細胞(スコアー3)の割合が、10−7 M CGRPによる刺激後、かなり増加する:対照皮膚における19.7%に対して30.3%のフォンタナ陽性細胞。同時に、顔料が全くない、又はほとんどない細胞(スコアー1)の百分率はCGRPの施与後、対照皮膚に比較されてかなり減少する(24.9%対39.8%、p=0.03)。スコアー2の細胞の百分率は、CGRPの施与後変化しない。
【0130】
その結果、2%において試験されたハッカの抽出物は、CGRPに誘発される色素沈着をかなり阻害する(スコアー1の細胞の50.1%対CGRPありの24.9%、p=0.004)。平行して、非常に色素の沈着した細胞(スコアー3)の数はかなり減少する(17.3%対CGRPによる30.3%)。
【0131】
2のスコアーを有する細胞の百分率における統計的に有意な減少もまた見出される(32.6%対CGRPのみの45%)。
【0132】
【表2】

表2:表皮層上のメラニン生成細胞の数(Dopa反応後)(n=8)。
:対照皮膚と比較された統計的に有意な差(対応のあるスチューデントの検定、p<0.05)。
**:皮膚+CGRPと比較された統計的に有意な差(対応のあるスチューデントの検定、p<0.05)。
【0133】
Dopa反応により示されたメラニン生成細胞の数は、CGRPにより著しく誘発されたメラニン生成を明らかにする:Dopa陽性細胞56に対して対照皮膚31(p=0.01)。
【0134】
2%において試験されたハッカの抽出物はこのCGRPに誘発されるメラニン生成を著しく阻害する(それぞれ38の陽性細胞)。
【0135】
実施例2
多細胞のインビトロでのケラチン生成細胞/メラニン生成細胞/神経細胞モデルにおける、情動的ストレスの状況におおける皮膚の色素沈着及びCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に誘発されるメラニン生成のハッカの抽出物を用いての変化の評価。
【0136】
使用された抽出物はSILAB社によりCALMISKIN(商標)の商品名で販売されている製品である。それはハッカ(セイヨウハッカ)の葉の抽出物の100%(体積/体積)における水中の溶液である。それは0.03重量%の割合で使用される。
【0137】
多細胞ケラチン生成細胞/メラニン生成細胞/神経細胞モデル
第一の培養物は、2mMのL−グルタミン(インビトロジェン社、25030024)、50 IU/mlのペニシリン−50 μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン社、15070063)、N2サプルメント(17502−048)、神経成長因子(神経成長因子、NGF、インビトロジェン社、13290.010)及びニューロトロフィン3(NT−3、テブ社、450−03−b)を補強されたDMEM−HAM F12培養培地(インビトロジェン社、21331−020)中で、デポジット(ThinCert(商標)、グライナーバイオワン、参照662 610)ごとに20000細胞の割合で、24ウェルプレートについて、培養インサート中で培養された神経細胞から調製され、そして37℃及び水蒸気で飽和された5%COのインキュベーター中で5日間維持された。
【0138】
第二の培養物は、PMAなしのHMGS−2(テブ058S−016−5)と、50 IU/mlのペニシリンと50 μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン社、15070063)との混合物で補強された培地(Medium 254(テブ社058M−254−500))中で、24ウェルプレートにおいて、100000細胞/ウェルの割合で接種されたケラチン細胞(K)(形成外科手術から単離され、第三代継代において使用される正常なヒトケラチン生成細胞(NHEK)(R3 K015))及びケラチン生成細胞培養において50000細胞/ウェルの割合で接種されたメラニン生成細胞(M)(第六代継代において使用される正常なヒト表皮メラニン生成細胞(NHEM−2))を用いて調製された。
【0139】
4日の培養の後、神経細胞を含むインサートがケラチン生成細胞/メラニン生成細胞共培養物を含むウェルの中に入れられて(共培養物の培養の1日後)、N/K/M培養培地の存在下、多細胞の神経細胞−ケラチン生成細胞−メラニン生成細胞(N/K/M)モデルを得た。
【0140】
N/K/M培養培地は、2mMのL−グルタミン(インビトロジェン社、25030024)、50 IU/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン社、15070063)、N2サプリメント(17502−048)、神経成長因子(NGF、インビトロジェン社)、及びニューロトロフィン3(NT−3)で補強された50%DMEM−HAM F12(インビトロジェン社、21331−020)、0.2 mMのCaCl(テブ社、S−013−154)及びケラチン細胞成長因子(ヒトケラチン細胞成長サプリメント(HKGS)テブ社、S−001−5)で補強された33%のM 154培地(テブ社M 154 CF/PRF)、及び17%のM 154培地(テブ社、M 154 CF/PRF)を含む。
【0141】
このようにして得られた多細胞モデルは少なくとも10日間培養液中で維持された。
【0142】
ウェル及びインサートの培養培地は毎日50%更新された。
【0143】
メラニン生成へのノルアドレナリンタイプの情動的ストレスの効果
【0144】
上記のようにして得られた多細胞モデルの細胞は、上記のプロトコルに類似するプロトコルに従って、0.03%のCALMISKIN(商標)又は10−6 MのCGRP8−37が添加されている、又は添加されていないところの10−5 Mのノルアドレナリンの不存在下又は存在下で10日間維持された。
【0145】
CGRP8−37は、参照のCGRP−レセプターアンタゴニストである。
【0146】
インキュベーションの終わりに、メラニンは0.5 NのNaOH溶液でケラチン生成細胞/メラニン生成細胞の共培養物から抽出され、それから光学密度405nm)を測定することにより分析されて、外因的なメラニン(0.39−100μg/mlのメラニン、Sigma M8631)の標準曲線と比較された。
【0147】
実験データは、PRISM(商標)ソフトウェア(グラフパッドソフトウェア)により解析された。
【0148】
集団間の比較は、Dunnettの多重比較検定を用いる分散の解析(ANOVA)により行われた。
【0149】
2つの試料の間の比較は、T検定を用る分析により行われた。
【0150】
得られた結果は下の表に与えられる。結果は4つの独立した実験の平均を表す。それらはメラニンのμg/mlで表される。
【0151】
【表3】

【0152】
10−5 Mのノルアドレナリンの存在は、共培養において合成されたメラニンの量を有意に(#;p<0.01)刺激する(+15%)。
【0153】
0.03%の濃度におけるCALMISKIN(商標)製品、及びCGRP−レセプターアンタゴニストCGRP8−37は、ノルアドレナリンの存在下、メラニンの量を有意に(;p<0.05及び#;p<0.01)減少させる(それぞれ−7.3%及び−17.2%)。
【0154】
CGRP放出の測定
【0155】
上記の実験の最後において、ウェルから、及びインサートからの上澄みが別々に集められ、CGRP濃度を分析するために、−80℃において直ちに凍結された。
【0156】
CGRP濃度は、培養物の上澄み液においてELISA分析により、供給元により推薦されたプロトコルに従って測定された(ラットのCGRP酵素免疫分析キット、Spi Bio A05482)。
【0157】
結果は、培地1ml当たりのCGRPのpgで表わされる。
【0158】
結果の分析は、上記のように行われた。
【0159】
【表4】

【0160】
ノルアドレナリンの存在下、対照の培養インサート中に放出されたCGRPの量は、非常に多い。CALMISKIN(商標)生成物はCGRP放出を少し変化させた。
【0161】
(ケラチン生成細胞/メラニン生成細胞共培養物と接触している)ウェルの培養培地中で分析されたCGRPの量は、CGRPが分散した、又は多孔質のインサートを横断した神経末端により放出されたことを示す。このレベルにおいて、CALMISKIN製品はCGRPの放出を有意に減少させた(対照の−21%;p<0.05)。
【0162】
結論
本発明に従う多細胞モデルへのノルアドレナリンの添加は、培養培地中へ神経細胞により放出されるCGRPの量の増加を招く。
【0163】
この量は神経細胞のレベルにおいてより高いが、ケラチン生成細胞/メラニン生成細胞共培養の近くでも測定されることができる。
【0164】
すなわち、ノルアドレナリンはCGRP放出によるケラチン生成細胞/メラニン生成細胞共培養において、測定可能な態様でメラニン生成を増加させるようである(+15%)。
【0165】
この刺激は0.03%の濃度におけるCALMISKIN製品の施与により減少された。
【0166】
実施例3
すべてのタイプの皮膚に対する美白美溶液の配合の例。
【0167】
それは、当業者にとって慣用である方法で製造された水中油型エマルジョンであり、以下の組成を有する。
【0168】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情動タイプのストレスにより誘発されるメラニンの合成及び/又は放出を予防する及び/又は減少させるための非治療的処置の方法において、シソ科(Menthae family)の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を活性剤として含む化粧料組成物が使用される方法。
【請求項2】
情動タイプのストレスにより誘発される過剰な皮膚の色素沈着を予防する及び/又は処置するための非治療的処置の方法において、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を活性剤として含む組成物が使用される方法。
【請求項3】
情動タイプのストレスにより誘発される過剰なメラニン生成に関連する皮膚疾患を予防する及び/又は処置するための非治療的処置の方法において、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を活性剤として含む組成物が使用される方法。
【請求項4】
抽出物が、ウォーターミント(Mentha aquatica)、クールミント(Mentha arvensis)、ホースミント(Mentha longifolia)、セイヨウハッカ(Mentha piperita)、ペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)及びスペアミント(Mentha spicata)から選択された属のハッカから由来する細胞に由来するところの、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抽出物が、セイヨウハッカ(Mentha piperita)属のハッカから由来する細胞から由来するところの、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抽出物が、組成物の合計重量に対して0.001重量%〜0.4重量%の範囲の乾燥活性物質の量で使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
生理学的に許容される媒体中に、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、チロシナーゼの阻害のメカニズム、又は間接的にメラニン生成を刺激する第二のメッセンジャーの阻害のメカニズムに従って作用する少なくとも1つの脱色素剤と組み合わせて含む化粧料組成物。
【請求項8】
角質溶解落屑剤、抗−NO剤、抗UV剤、美白剤、抗炎症剤、キレート剤、及び/又は抗酸化剤の少なくとも1つをもまた含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
生理学的に許容される媒体中に、セイヨウハッカ(Mentha piperita)属の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、少なくともアスコルビン酸(ビタミンC)又はその少なくとも1つの誘導体、例えばリン酸アスコルビルマグネシウム(ビタミンC PMg)、アスコルビン酸グリコシル(ビタミンCG)、リン酸アスコルビルナトリウム(ビタミンC PNa)、及び3−O−エチルアスコルビン酸、と組み合わせて含む化粧料組成物。
【請求項10】
生理学的に許容される媒体中に、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物を、角質溶解落屑剤、抗−NO剤、及び/又はキレート剤の少なくとも1つと組み合わせて含む化粧料組成物。
【請求項11】
生理学的に許容される媒体中に、シソ科の少なくとも1つの植物の細胞の少なくとも1つの抽出物及び少なくとも1つの脱色素剤を、角質溶解落屑剤、抗−NO剤、抗UV剤、美白剤、抗炎症剤、キレート剤、及び/又は抗酸化剤の少なくとも1つと組み合わせて含む化粧料組成物。
【請求項12】
角質溶解剤が、フェノール誘導体、特にサリチル酸又はその誘導体の一つ、又はブナノキの芽の抽出物である、請求項8及び10〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
抗−NO剤がイチョウ(gingko biloba)の抽出物である、請求項8及び10〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
キレート剤がエデト酸 4ナトリウム及び/又はクエン酸である、請求項8及び10〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
美白剤がビタミンCG及び/又はカンゾウの抽出物である、請求項8及び10〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
セイヨウハッカ(Mentha piperita)の抽出物、イチョウ(gingko biloba)の抽出物、ビタミンCG、カンゾウの抽出物、サリチル酸、及びブナノキの芽の抽出物の少なくとも1つを含む、請求項7〜15のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2007−182444(P2007−182444A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−270(P2007−270)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(595100370)ロレアル (108)
【氏名又は名称原語表記】L′OREAL
【Fターム(参考)】