説明

ハニカム構造体および排ガス処理装置

【課題】セル壁に担持されるアンモニア吸着材料の総量を増加させずに、アンモニアがハニカム構造体から系外に排出されにくいハニカム構造体および排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】第1の端面から第2の端面に延伸する複数のセルを区画するセル壁が長手方向に沿って形成された、柱状のハニカムユニットからなるハニカム構造体であって、前記セル壁は、NOx吸着材料と無機バインダを含み、前記セル壁には、アンモニア吸着材料が担持されており、前記アンモニア吸着材料は、第1の端部と第2の端部で、担持量が異なることを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の排ガス中に含まれるNOx等を処理するために使用される排ガス処理装置には、ハニカム構造体が使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このハニカム構造体は、例えば、長手方向に沿って、該ハニカム構造体の一方の端面から他方の端面まで延伸する複数のセル(貫通孔)を有し、これらのセルは、セル壁により相互に区画されている。
【0004】
ハニカム構造体のセル壁は、例えばコージェライト等のセラミックで構成され、セル壁には、NOx吸着材料とアンモニア吸着材料とが設置される。NOx吸着材料には、セリア等が用いられ、この層には、白金等の貴金属触媒が担持される。また、アンモニア吸着材料には、ゼオライト等が用いられる。
【0005】
このようなハニカム構造体に、例えば自動車等の排ガスが流通されると、排ガスが酸化雰囲気(例えば、ディーゼルエンジンの通常運転時)の時に、排ガス中のNOxをNOx吸着層に吸着させ、排ガスを還元雰囲気(例えば、ディーゼルエンジンのスパイク時)にしたときに、触媒上で、吸着させたNOxを還元し、アンモニアとして、アンモニア吸着層に吸着させる。排ガスが酸化雰囲気に戻る時には、再度、アンモニアを用いて、NOxを還元し、吸着されているアンモニアがなくなれば、NOx吸着層にNOxが吸着されるというサイクルで、NOxを浄化している。
【0006】
従って、ハニカム構造体中に排ガスを流通させることにより、排ガス中に含まれるNOxを処理することができる。一方、無機粒子と無機繊維と無機バインダとからなるハニカム構造体が知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−183477号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/063653パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のハニカム構造体は、前述のようにコージェライトを骨格材料とし、この材料により構成されたセル壁の表面に、NOx吸着材料とアンモニア吸着材料とを設置することにより構成されており、アンモニア吸着材料は、各セルの延伸方向に沿って、実質的に均一にセル壁に担持されている。
【0008】
ここで、特許文献1に記載のハニカム構造体において、骨格を形成するコージェライト自身は、NOxの浄化(処理)反応には関与しない。換言すれば、NOx吸着材料とアンモニア吸着材料によって、NOx処理に関与する全ての反応が行われることになる。従って、ハニカム構造体によるNOx浄化の効率を高めるためには、十分な量のNOx吸着材料およびアンモニア吸着材料をコージェライトのセル壁に担持させる必要がある。また、このためには、担持層厚さを厚くするか、コージェライトの全長を長くすることが必要となる。もしくは、リッチスパイクの頻度を高くする必要がある。
【0009】
しかしながら、担持層の厚さを厚くすると、セルの開口が小さくなるため、排ガスが流通した時の圧力損失が大きくなると言う問題がある。また、コージェライトの全長を長くした場合には、設置スペースおよび重量の点で問題となる。また、リッチスパイクの頻度を短くすると、燃費が悪くなるという問題がある。
【0010】
さらに上述のようなNOx浄化のサイクルにおいて、全てのアンモニア吸着材料が同等にアンモニアの吸着反応に活用されるわけではない。すなわち、NOx吸着材料に吸着されたNOxが還元され、これがアンモニアとしてアンモニア吸着材料に吸着される際には、排ガスの流れによって、下流側に移動してしまい、排ガスの流入側では、排ガスの流出側に比べて、アンモニアの吸着量が少なくなってしまう。アンモニアがハニカム構造体から系外に排出されること(アンモニアのスリップとも言う)を防止するためには、排ガス流出側のアンモニア吸着量が飽和した時点で、酸化雰囲気に戻す必要があり、リッチスパイクの頻度を高くする必要があり、さらに燃費が悪化してしまうという問題がある。
【0011】
一方、特許文献2に記載のハニカム構造体の無機粒子として、NOx吸着材料を用いた場合には、特許文献1に記載されているように、セル壁に実質的に均一にアンモニア吸着材料を嘆じさせた場合であっても、同様にアンモニアのスリップの問題を解決することができない。
【0012】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、セル壁に担持されるアンモニア吸着材料の総量を増加させずに、アンモニアがハニカム構造体から系外に排出されにくいハニカム構造体および排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、第1の端面から第2の端面に延伸する複数のセルが長手方向に沿って、形成された、柱状のハニカムユニットからなるハニカム構造体であって、
前記セル壁は、NOx吸着材料と無機バインダとを含み、
前記セル壁には、アンモニア吸着材料が担持されており、
前記アンモニア吸着材料は、第1の端部と第2の端部で、担持量が異なることを特徴とするハニカム構造体が提供される。
【0014】
また当該ハニカム構造体において、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって、前記アンモニア吸着材料の担持量が増加しても良い。
【0015】
特に、前記アンモニア吸着材料の担持量は、直線的にまたはステップ状に増加しても良い。
【0016】
また、前記第2の端部におけるアンモニア吸着材料の担持量は、前記第1の端部におけるアンモニア吸着材料の担持量の1.2〜5倍であっても良い。
【0017】
ここで当該ハニカム構造体において、前記NOx吸着材料は、セリアを含み、前記アンモニア吸着材料は、ゼオライトを含んでも良い。
【0018】
また、前記セル壁には、さらに貴金属触媒が担持されていても良い。
【0019】
特に、前記貴金属触媒は、白金、パラジウムおよびロジウムからなる群から選定された少なくとも一つを含んでいても良い。
【0020】
また当該ハニカム構造体において、前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトからなる群から選定された少なくとも一つを含んでいても良い。
【0021】
また、前記ハニカムユニットは、さらに無機繊維を含んでも良い。
【0022】
特に、前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つであっても良い。
【0023】
ここで、前記NOx吸着材料は、Fe、Cu、Ni、Zn、Mn、またはCoでイオン交換されたゼオライトであっても良い。
【0024】
また当該ハニカム構造体は、複数の柱状のハニカムユニットと、該ハニカムユニット同士を接合する接着層とを有しても良い。
【0025】
さらに本発明では、排ガス中に含まれるNOxを処理する排ガス処理装置であって、
当該排ガス処理装置は、前述の特徴を有するハニカム構造体を備え、
前記第1の端部に担持されたアンモニア吸着材料の担持量は、前記第2の端部に担持されたアンモニア吸着材料の担持量よりも少なく、
前記ハニカム構造体は、前記第1の端部が排ガスの上流側となるようにして、当該排ガス処理装置内に設置されていることを特徴とする排気ガス処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、セル壁に担持されるアンモニア吸着材料の総量を増加させずに、従来のハニカム構造体に比べて、高いアンモニア吸着性能を発揮することが可能なハニカム構造体および排ガス処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面により本発明の形態を説明する。
【0028】
図1には、本発明によるハニカム構造体を模式的に示す。また、図2には、図1に示したハニカム構造体の基本単位である、ハニカムユニットの一例を模式的に示す。
【0029】
図1に示すように、本発明のハニカム構造体100は、2つの開口面110(第1の端面)および115(第2の端面)を有する。また、ハニカム構造体100の両端面を除く外周面には、コート層120が設置されている。
【0030】
ハニカム構造体100は、例えば、図2に示す柱状のセラミック製ハニカムユニット130を、接着層150を介して複数個(図1の例では、縦横4列ずつ16個)接合させた後、外周側を所定の形状(図1の例では、円柱状)に沿って切削加工することにより構成される。
【0031】
図2に示すように、ハニカムユニット130は、第1の端部810と、第2の端部820とを有する。またハニカムユニット130は、該ハニカムユニットの長手方向に沿って第1の端部810(第1の端面)から第2の端部820(第2の端面)まで延伸し、両端部で開口された複数のセル(貫通孔)121と、該セルを区画するセル壁123とを有する。
【0032】
ここで、本発明によるハニカム構造体100の特徴的効果をより明確に理解するため、まず最初に、従来のハニカム構造体の構成について説明する。
【0033】
図3には、従来のハニカム構造体のセル壁の断面の拡大模式図を示す。
【0034】
従来のハニカム構造体では、ハニカムユニット130Pのセル壁123Pは、コージェライトで構成される。また、ハニカムユニット130Pのセル壁123Pには、NOx吸着材料210と、アンモニア吸着材料220とが担持される。NOx吸着材料210は、セリアと、白金のような貴金属触媒とで構成される。また、アンモニア吸着材料220は、NOx吸着材料210の外側に担持され、通常ゼオライトのような材料で構成される。なお、実際には、NOx吸着材料210およびアンモニア吸着材料220は、図3に示したような均一な(連続的な)「層」としては構成されないことは、当業者には明らかである。すなわち、図3は、説明を分かり易くするため、模式的に示したものであり、実際の形態とは異なることに留意する必要がある。
【0035】
このような材料系で構成された従来のハニカム構造体をディーゼルエンジンの排ガスラインの途上に設置し、実際にハニカム構造体に排ガスを流通させた場合、以下のような現象が生じる。
【0036】
まず、排ガスが酸化雰囲気(例えば、ディーゼルエンジンの通常運転時)時に、排ガス中のNOxがNOx吸着材料210に吸着される。次に、リッチスパイクを行い、排ガスを還元雰囲気にすると、触媒によりHCが改質されて、生成したHと、NOx吸着材料210に吸着していたNOxとが、以下の(1)式の反応により、アンモニアを生成する。

2NO + 3H → 2NH + O (1)式

この反応により生じたアンモニアは、当該NOx吸着材料210と隣接するアンモニア吸着材料220に吸着される。
【0037】
一方、排ガスを酸化雰囲気(ディーゼルの通常運転)に戻すと、アンモニア吸着材料220に吸着されているアンモニアによって、排ガス中のNOxが以下の(2−1)式、(2−2)式により還元される。

4NH + 4NO + O →4N + 6HO (2−1)式
8NH + 6NO→7N + 12HO (2−2)式

さらにアンモニア吸着材料220に吸着しているアンモニアが消費されると、NOxは、再度、NOx吸着材料210に吸着される。このようなサイクルを繰り返すことにより、NOxが還元され、NOxが還元された排ガスは、セル121の他方の端部に達した後、ハニカム構造体の他方の端面から排出される。
【0038】
図4には、従来のハニカム構造体において、ハニカムユニットの第1の端部(端面)からの距離と、セル壁に担持されたアンモニア吸着材料の担持量の関係を模式的に示す。なお、図4において、Lは、ハニカムユニットの全長である。従って、Z=Lの位置は、ハニカムユニットの第2の端部(端面)に相当する。従来のハニカムユニットでは、アンモニア吸着材料220は、ハニカムユニットの長手方向に沿って、実質的に均一にセル壁123Pに設置される。
【0039】
しかしながら、従来のハニカムユニットでは、担持層の厚さを厚くすると、セルの開口が小さくなるため、排ガスが流通した時の圧力損失が大きくなると言う問題がある。また、コージェライトの全長を長くした場合には、設置スペースおよび重量の点で問題となる。また、リッチスパイクの頻度を短くすると、燃費が悪くなるという問題がある。
【0040】
さらに上述のようなNOx浄化のサイクルにおいて、全てのアンモニア吸着材料が同等にアンモニアの吸着反応に活用されるわけではない。すなわち、NOx吸着材料に吸着されたNOxが還元され、これがアンモニアとしてアンモニア吸着材料に吸着される際には、排ガスの流れによって、下流側に移動してしまい、排ガスの流入側では、排ガスの流出側に比べて、アンモニアの吸着量が少なくなってしまう。アンモニアがハニカム構造体から系外に排出されること(アンモニアのスリップとも言う)を防止するためには、排ガス流出側のアンモニア吸着量が飽和した時点で、酸化雰囲気に戻す必要があり、リッチスパイクの頻度を高くする必要があり、さらに燃費が悪化してしまうという問題がある。
【0041】
これに対して、本発明によるハニカム構造体は、セル壁に設置されるアンモニア吸着材料の担持量が、ハニカムユニットの第1の端部810と第2の端部820とで異なる点に特徴を有する。
【0042】
図5には、本発明によるハニカム構造体における、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)からの距離と、セル壁に担持されたアンモニア吸着材料の担持量の関係の一例を模式的に示す。本発明によるハニカム構造体では、図5に示すように、アンモニア吸着材料の担持量は、ハニカムユニットの全長に沿って変化している。すなわち、第2の端部820側(第2の端面)のアンモニア吸着材料の担持量T2は、第1の端部810側(第1の端面)のアンモニア吸着材料の担持量T1よりも多くなっている。
【0043】
ハニカムユニットの長手方向に沿ったこのようなアンモニア吸着材料の担持量の変化により、本発明によるハニカム構造体100は、NOxの処理に際し、従来のハニカム構造体に比べて、より有効にアンモニア吸着材料を活用することができる。(なお、実際にハニカム構造体を用いて、排ガス中のNOx処理を行う場合、ハニカムユニットの第1の端部810側(第1の端面)が排ガスの上流側となることに留意する必要がある。)
従って、本発明では、従来のハニカム構造体とアンモニア吸着材料の総量を同等とした場合であっても、アンモニアの吸着性能を向上させることが可能となる。
【0044】
なお、前述の例(図5)では、アンモニア吸着材料の担持量Tは、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)での値(T3)から第2の端部820(第2の端面)での値(T2)まで、連続的(特に直線的)に増加するように変化している。しかしながら、本発明の態様は、これに限られない。
【0045】
図6および図7は、本発明に適用し得る、ハニカムユニットの長手に対するアンモニア吸着材料の担持量Tの変化の別の一例を示したものである。
【0046】
図6の変化挙動では、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)〜第1の端部810(第1の端面)から距離p1の位置までの領域では、アンモニア吸着材料の担持量TがT5となっているのに対して、第1の端部810(第1の端面)から距離p1の位置〜ハニカムユニットの第2の端部820(第2の端面)の領域では、アンモニア吸着材料の担持量TがT4(T5<T4)となっている。
【0047】
また図7の変化挙動では、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)〜第1の端部(第1の端面)から距離p2の位置までの領域では、アンモニア吸着材料の担持量TがT7で一定となっているのに対して、第1の端部810(第1の端面)から距離p2の位置〜ハニカムユニットの第2の端部820(第2の端面)の領域では、アンモニア吸着材料の担持量Tは、T7からT6まで徐々に上昇している。
【0048】
アンモニア吸着材料の担持量をハニカムユニットの長手方向に対して、このように変化させた場合も、前述のような本発明の効果を発揮することができる。
【0049】
なお、図6および図7の場合、位置pの値は、基本的に0<(p1,p2)<Lの範囲であればいかなる値であっても良い。
【0050】
また、ハニカムユニットの第2の端部におけるアンモニア吸着材料の担持量は、ハニカムユニットの第1の端部におけるアンモニア吸着材料の担持量の1.2〜5倍であることが好ましい。この値が1.2倍未満の場合、従来と同様、多くの触媒が必要となる。また、この値が5倍を超えると、第1の端部の触媒量が不足して、処理が不十分となる。
【0051】
ハニカムユニットの端部におけるアンモニア吸着材料の担持量は、例えば、端面から10mmの位置で、ICP発光分析装置(例えば、島津製作所ICPS−8100で元素分析)することにより求められる。
【0052】
図6および図7には示さなかったが、この他、アンモニア吸着材料の担持量Tは、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)から第2の端部820(第2の端面)に向かって、複数のステップ状の変化で、上昇しても良い。また、例えば図5(0<Z<L)および図7のp2<Z<Lの領域に見られるようなアンモニア吸着材料の担持量の連続的な変化は、必ずしも直線的である必要はなく、担持量は、非直線的に増加しても良い。
【0053】
すなわち、本発明において重要なことは、ハニカムユニットの第2の端部820側のアンモニア吸着材料の担持量が第1の端部810側のアンモニア吸着材料の担持量よりも多くなるように、セル壁にアンモニア吸着材料が担持されていることであり、これが満たされる限り、ハニカムユニットの長手方向におけるアンモニア吸着材料の担持量の変化は、いかなる態様であっても良い。
【0054】
本発明では、セル壁がセリア等のNOx吸着材料を主体とする材料で構成されるため、セル壁には、貴金属触媒の他、ゼオライト等で構成されるアンモニア吸着材料が担持される。
【0055】
ここで、本発明によるハニカム構造体において、セル壁には、貴金属触媒が担持されることが好ましい。貴金属触媒としては、特に限られないが、白金、パラジウムまたはロジウムが使用される。また、NOx吸着材料は、Fe、Cu、Ni、Zn、Mn、またはCoでイオン交換されたゼオライトであっても良い。ゼオライトとしては、β型、Y型、フェリエライト、ZSM−5型、モンデナイト、フォージサイト、ゼオライトAまたはゼオライトL等が挙げられる。
【0056】
ここで、本発明では、ハニカムユニット130は、セリア等のNOx吸着材料を含む無機粒子の他、無機バインダを含む。本発明によるハニカムユニットは、さらに無機繊維を含んでも良い。
【0057】
無機バインダとしては、無機ゾルや粘土系バインダ等を用いることができ、上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の複鎖構造型粘土等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0058】
これらのなかでは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライトおよびアタパルジャイトからなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。
【0059】
また、ハニカムユニットに無機繊維を加える場合、無機繊維の材料としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等が望ましい。これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。上記材料の中では、アルミナが望ましい。
【0060】
ハニカムユニットに含まれる無機粒子の総量について、望ましい下限は30重量%であり、より望ましい下限は40重量%であり、さらに望ましい下限は50重量%である。一方、望ましい上限は90重量%であり、より望ましい上限は80重量%であり、さらに望ましい上限は75重量%である。これらの粒子の総量が30重量%未満では、NOx浄化に寄与する粒子の量が相対的に少なくなるため、NOx浄化性能が低下する場合がある。一方、90重量%を超えると、ハニカムユニットの強度が低下する可能性がある。
【0061】
無機バインダは、固形分として、5重量%以上含まれることが好ましく、10重量%以上含まれることがより好ましく、15重量%以上含まれることがさらに好ましい。一方、無機バインダの含有量は、固形分として、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。無機バインダの固形分の量が5重量%未満では、製造したハニカムユニットの強度が低くなることがある。一方、無機バインダの固形分の量が50重量%を超えると、原料組成物の成型性が悪くなることがある。
【0062】
ハニカムユニットに無機繊維が含まれる場合、無機繊維の合計量について、望ましい下限は3重量%であり、より望ましい下限は5重量%であり、さらに望ましい下限は8重量%である。一方、望ましい上限は50重量%であり、より望ましい上限は40重量%であり、さらに望ましい上限は30重量%である。無機繊維の含有量が3重量%未満ではハニカムユニットの強度の向上の寄与が小さくなり、50重量%を超えるとNOx浄化に寄与する無機粒子の量が相対的に少なくなるため、NOx浄化性能が低下する場合がある。
【0063】
前述のハニカムユニット130の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限定されるものではなく、ハニカムユニットを接着層を介して接合することが可能であれば、いかなる形状であっても良い。ハニカムユニット130の形状は、正方形、長方形、六角形、扇形などであっても良い。
【0064】
また、ハニカムユニット130のセル121の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限られず、正方形以外に、例えば三角形、多角形としても良い。
【0065】
ハニカムユニット130のセル密度は、15.5〜186個/cm(100〜1200cpsi)の範囲であることが好ましく、46.5〜170個/cm(300〜1100cpsi)の範囲であることがより好ましく、62.0〜155個/cm(400〜1000cpsi)の範囲であることがさらに好ましい。
【0066】
ハニカムユニット130のセル壁123の厚さは、特に限定されないが、強度の点から望ましい下限は、0.1mmであり、望ましい上限は、0.4mmである。
【0067】
一方、本発明のハニカム構造体100の形状は、いかなる形状であっても良い。例えば、ハニカム構造体100の形状は、図1に示すような円柱の他、楕円柱、四角柱、多角柱等であっても良い。
【0068】
ハニカム構造体100のコート層120は、無機粒子、無機繊維および無機バインダを含み、さらに有機バインダを含むペースト(コート層ペースト)を原料として形成される。無機粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライトまたはゼオライト等からなる粒子が使用される。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。無機繊維および無機バインダには、前述のものが使用できる。また有機バインダには、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等を使用することができ、これらは単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。有機バインダの中では、カルボキシルメチルセルロースが望ましい。
【0069】
その後、コート層ペーストをハニカム構造体の外周面に設置した後、乾燥処理することにより、コート層が形成される。原料となるペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。コート層の厚さは、0.1mm〜2.0mmが好ましい。
【0070】
また、本発明のハニカム構造体100において、接着層150には、コート層120と同じ材料が使用される。ただし、接着層150は、コート層120と異なる材料であっても良い。
【0071】
図8に、本発明のハニカム構造体の別の例を示す。なお、ハニカム構造体200は、複数のセル122がセル壁124を隔てて、長手方向に並設された単一のハニカムユニットから構成されることを除いて、ハニカム構造体100と同様の構成を有する。なお、ハニカム構造体200の外周面には、コート層を設置しても、設置しなくても良い。
【0072】
このようなハニカム構造体100、200は、例えば、ディーゼルエンジン等から排出される排気ガスの処理装置に適用することができる。この場合、ハニカム構造体は、セル壁のアンモニア吸着材料の担持量の少ない端面側が排気ガスの導入側となるようにして、使用される。
(ハニカム構造体の作製方法)
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法の一例を説明する。
【0073】
まず、無機粒子および無機バインダを主成分とし、さらに必要に応じて無機繊維を添加した原料ペーストを用いて押出成形等を行い、ハニカムユニット成形体を作製する。無機粒子は、主としてセリア粒子(NOx吸着材料)を含むが、さらにゼオライト粒子(アンモニア吸着材料)を含んでも良い。
【0074】
原料ペーストには、これらの他に有機バインダ、分散媒および成形助剤を成形性にあわせて適宜加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂などから選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。有機バインダの配合量は、無機粒子、無機バインダおよび無機繊維の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0075】
分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(ベンゼンなど)およびアルコール(メタノールなど)などを挙げることができる。成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸およびポリアルコールなどを挙げることができる。
【0076】
原料ペーストは、特に限定されるものではないが、混合・混練することが好ましく、例えば、ミキサーやアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練してもよい。原料ペーストを成型する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0077】
次に、得られた成形体は、乾燥することが好ましい。乾燥に用いる乾燥機は、特に限定されるものではないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機および凍結乾燥機などが挙げられる。また、得られた成形体は、脱脂することが好ましい。脱脂する条件は、特に限定されず、成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択されるが、おおよそ400℃、2時間が好ましい。さらに、得られた成形体は、焼成することが好ましい。焼成条件としては、特に限定されるものではないが、600〜1200℃が好ましく、600〜1000℃がより好ましい。この理由は、焼成温度が600℃未満では、焼結が進行せずハニカムユニットとしての強度が低くなり、1200℃を超えると、焼結が過剰に進行し、ハニカムユニットの単位体積あたりの比表面積が小さくなるためである。
【0078】
次に、得られたハニカムユニットのセル壁に、貴金属触媒が担持される。担持される貴金属触媒は、特に限られず、例えば白金、パラジウム、ロジウム等が使用される。例えば貴金属触媒は、白金イオンを含む硝酸溶液中にハニカムユニットを含浸させることにより、セル壁に担持することができる。
【0079】
次に、ハニカムユニットのセル壁に、アンモニア吸着材料が担持される。アンモニア吸着材料は、例えばゼオライトで構成される。アンモニア吸着材料は、例えば、アンモニア吸着材料を含む溶液中に、ハニカムユニットを含浸させることにより、各セル壁に担持させることができる。
【0080】
ただし、本発明では、ハニカムユニットの長手方向に対して、アンモニア吸着材料の担持量を変化させるため、以下の方法により、セル壁にアンモニア吸着材料が担持される。
【0081】
図9(a)〜(d)では、円柱状のハニカムユニット(評価サンプル)の例を示しているが、ハニカムユニットは、四角柱状のハニカムユニット、ハニカム構造体等であっても良い。
(手順1)まず、図9(a)に示すように、ハニカムユニット130の第1の端部810(第1の端面)から第2の端部820(第2の端面)までの全部分を、第1の含浸溶液を含む浴槽300Aに所定の時間浸漬して、全ての領域にアンモニア吸着材料を担持させる。
(手順2)次に、図9(b)に示すように、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)から、長手方向に沿って所定の距離Aまでの部分を除き、第2の含浸溶液を含む浴槽300Bに所定の時間浸漬して、浸漬領域にさらにアンモニア吸着材料を担持させる。これにより、アンモニア吸着材料の担持量の異なる2つの領域、すなわち第1の領域R(第1の端部(第1の端面)〜位置A)および第2の領域R〜R(位置A〜第2の端部(第2の端面)の間の領域)が得られる。
(手順3)次に、図9(c)に示すように、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)から、長手方向に沿って所定の距離Bまでの部分を除き、ハニカムユニットを第3の含浸溶液を含む浴槽300Cに所定の時間浸漬して、浸漬領域にさらにアンモニア吸着材料を担持させる。これにより、アンモニア吸着材料の担持量の異なる3つの領域、すなわち第1の領域R(第1の端部(第1の端面)〜位置A)と、第2の領域R(位置A〜位置Bの間の領域)と、第3の領域R〜R(位置B〜第2の端部(第2の端面)の間の領域)とが得られる。
(手順4)以下、同様の手順により、それぞれが所定のアンモニア吸着材料の担持量を有する複数の領域、すなわち第1の領域R(第1の端部(第1の端面)〜Aまでの部分)、第2の領域R(A〜Bの部分)、第3の領域R(B〜Cの部分)、第4の領域R(C〜Dの部分)…第nの領域Rを得ることができる。また、これにより、最終的に、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)から第2の端部820(第2の端面)に向かって、セル壁に担持されたアンモニア吸着材料の担持量が変化するハニカムユニットを容易に製作することができる(図9(d))。
【0082】
このような方法では、A〜Dの各位置の間隔を短くすることにより、アンモニア吸着材料の担持量が、長手方向に沿ってより連続的に変化するハニカムユニットを作製することができることは明らかであろう。また、ハニカムユニットの第1の端部810(第1の端面)〜所定の位置までの部分を、含浸溶液に全く浸漬させないようにしても良い。この場合、第1の端部810(第1の端面)近傍では、前述の図6または図7において、T1=0となるハニカムユニットが作製される。
【0083】
なお、上記手順では、アンモニア吸着材料の濃度の異なる複数の含浸溶液を予め調製しておき、それぞれの含浸溶液に対して、ハニカムユニットの浸漬深さを変化させることにより、セル壁の第1の端部810(第1の端面)から第2の端部820(第2の端面)まで、アンモニア吸着材料の担持量の異なるハニカムユニットを作製する方法について説明した。また、単一の含浸溶液を使用して、これに浸漬させるハニカムユニットの深さを徐々に変化させることにより、セル壁の第1の端部810(第1の端面)から第2の端部820(第2の端面)まで、アンモニア吸着材料の担持量の異なるハニカムユニットを作製しても良い。
【0084】
なお、アンモニア吸着材料の担持は、本段階ではなく、ハニカムユニットの段階、複数のハニカムユニットを接合した段階、外周部を切削加工した段階等のうち、いずれの段階で実施しても良い。
【0085】
次に、以上の工程で得られたハニカムユニットの側面に、後に接着層となる接着層用ペーストを均一な厚さで塗布した後、この接着層用ペーストを介して、順次他のハニカムユニットを積層する。この工程を繰り返し、所望の寸法の(例えば、ハニカムユニットが縦横4個ずつ配列された)ハニカム構造体を作製する。なお前記接着層用ペーストには、前述の原料ペーストを使用しても良い。
【0086】
接着層用ペーストとしては、特に限定されるものではないが、例えば、無機バインダと無機粒子を混ぜたものや、無機バインダと無機繊維を混ぜたものや、無機バインダと無機粒子と無機繊維を混ぜたものなどを用いることができる。また、これらにさらに有機バインダを加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0087】
ハニカムユニットを接合させる接着層の厚さは、0.3〜2mmが好ましい。接着層の厚さが0.3mm未満では十分な接合強度が得られないおそれがあるためである。また接着層の厚さが2mmを超えると、圧力損失が大きくなることがある。なお、接合させるハニカムユニットの数は、ハニカム構造体の大きさに合わせて適宜選定される。
【0088】
次にこのハニカム構造体を加熱して、接着層用ペーストを乾燥、固化させて、接着層を形成させるとともに、ハニカムユニット同士を固着させる。
【0089】
次にダイヤモンドカッター等を用いて、ハニカム構造体を、例えば円柱状に切削加工し、必要な外周形状のハニカム構造体を作製する。
【0090】
次に、ハニカム構造体の外周面(側面)にコート層用ペーストを塗布後、これを乾燥、固化させて、コート層を形成する。コート層用ペーストは、特に限定されないが、接着層用のペーストと同じものであっても異なるものであっても良い。また、コート層用ペーストは、接着層用のペーストと同じ配合比としてもよく、異なる配合比としても良い。コート層の厚みは、特に限定されるものではない。
【0091】
複数のハニカムユニットを接着層によって接合させた後(ただし、コート層を設けた場合は、コート層を形成させた後)に、このハニカム構造体を加熱処理することが好ましい。この処理により、接着層用のペーストおよびコート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合、これらの有機バインダを脱脂除去することができる。脱脂条件は、含まれる有機物の種類や量によって適宜選定されるが、通常の場合、700℃、2時間程度である。
【0092】
以上の工程により、図1に示す形状のハニカム構造体を作製することができる。
(排ガス処理装置)
次に、本発明の排ガス処理装置について説明する。
【0093】
本発明の排ガス処理装置は、上述したハニカム構造体を金属容器(シェル)に収容した排ガスの流通経路に配置されるものである。
【0094】
具体的には、ハニカム構造体の側面を覆うように、ハニカム構造体と金属容器の間に、保持シール材が配置され、ハニカム構造体が金属容器に収容される。保持シール材は、主として、無機繊維から構成されている。
【0095】
本発明の排ガス処理装置は、上述したハニカム構造体を備え、ハニカム構造体は、アンモニア吸着材料の担持量の少ない端部(端面)が流通される排ガスの上流側となるようにして、排ガス処理装置内に設置されている。
【0096】
上述のように、本発明によるハニカム構造体が排ガス処理装置に配置されているので、セル壁に担持されるアンモニア吸着材料の総和を増加させずに、アンモニアがハニカム構造体から系外に排出されにくい排ガス処理装置を提供することができる。
【実施例】
【0097】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0098】
(実施例1)
まず、セリア粒子(平均粒径2μm)2180重量部、アルミナ粒子(平均粒径2μm)500重量部、アルミナ繊維(平均繊維径6μm、平均繊維長100μm)345重量部、アルミナゾル2200重量部(固形分30重量%)を混合し、得られた混合物に対して、有機バインダとしてメチルセルロース320重量部、可塑剤、界面活性剤および潤滑剤を少量加え、さらに、混合、混練して混合組成物を得た。次に、この混合組成物を用いて、押出成形機により押出成形を行い、生の成形体を得た。
【0099】
次に、マイクロ波乾燥機および熱風乾燥機を用いて、生の成形体を十分乾燥させた後、400℃で2時間保持し、脱脂を行った。その後、700℃で2時間保持して焼成を行い、四角柱状の多孔質ハニカムユニット(寸法:縦35mm×横35mm×長さ150mm)を得た。この多孔質ハニカムユニットのセル密度は、93個/cmであり、セル壁厚は、0.2mmであった。
【0100】
次に、ダイヤモンドカッターを用いて、四角柱状の多孔質ハニカムユニットを軸方向および軸と垂直な方向に沿って切断し、その後切削加工を行い、円柱状の多孔質ハニカムユニット(寸法:直径25mm×長さ60mm)の評価用サンプルを得た。
【0101】
次に、得られた円柱状ハニカムユニットを白金硝酸溶液に含浸させた後、このハニカムユニットを600℃で1時間保持し、セル壁に白金を担持した。円柱状ハニカムユニットの単位体積当たりの白金重量は、3g/Lとした。
【0102】
次に、図9を参照して示したような含浸処理により、円柱状ハニカムユニットのセル壁ゼオライトを担持した。含浸溶液には、ゼオライト濃度の異なる2種類の溶液を使用した。まず、所定のゼオライト濃度の含浸溶液に、ハニカムユニット(評価用サンプル)全体を浸漬し、その後異なるゼオライト濃度の含浸溶液に、ハニカムユニット(評価用サンプル)の第2の端面から30mmまでの領域を浸漬し、含浸処理を行った。ハニカムユニットは、最終的に2種類の担持領域(領域R〜R、および領域R〜R)を有した。それぞれの領域の位置と、該領域におけるゼオライト担持量を表1に示す。
【0103】
【表1】

(実施例2)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例2に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例2においては、実施例1とは異なる2種類の含浸溶液の濃度を使用し、該含浸溶液に含浸するハニカムユニットの位置を変化させた。それぞれの領域の位置と、該領域におけるゼオライト担持量を表1に示す。
(実施例3)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例3に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例3においては、実施例1とは異なり、3種類の含浸溶液の濃度を使用し、該含浸溶液に含浸するハニカムユニットの位置を変化させた。それぞれの領域の位置と、該領域におけるゼオライト担持量を表1に示す。
(実施例4)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例4に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例4においては、実施例1とは異なり、4種類の含浸溶液の濃度を使用し、該含浸溶液に含浸するハニカムユニットの位置を変化させた。それぞれの領域の位置と、該領域におけるゼオライト担持量を表1に示す。
(実施例5)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例5に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例5においては、実施例1とは異なり、6種類の含浸溶液の濃度を使用し、該含浸溶液に含浸するハニカムユニットの位置を変化させた。それぞれの領域の位置と、該領域におけるゼオライト担持量を表1に示す。
(比較例1)
次に、実施例1と同様の方法により、比較例1に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、比較例1においては、1種類の含浸溶液を使用し、該含浸溶液に対して、ハニカムユニット(評価用サンプル)の全体を含浸させた。各領域該におけるゼオライト担持量を表1に示す。
(NOx処理性能の評価)
上記方法で作製した実施例1〜実施例5および比較例1に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を用いて、NOx処理性能の評価を行った。NOx処理性能の評価は、車両用ディーゼルエンジンのリーンとリッチスパイクのそれぞれの運転条件を模擬した混合ガスをハニカムユニットに流通させ、NOx処理を行い、ハニカム構造体から排出されたガス中に含まれるNO(一酸化窒素)量を測定することにより実施した。なお測定の際には、各ハニカムユニットにおいて、ゼオライト担持量の少ない端部側(端面側)を、排気ガスの流入側とした。
【0104】
表2には、リーン運転時のガスとリッチスパイク時のガスのそれぞれの組成を示す。試験の際には、最初にハニカムユニット(評価用サンプル)の第1の端部にリーンガスを55秒間導入し、次にリッチガスを5秒間導入するサイクルを、排出ガス中に含まれるNO濃度がほとんど変化しなくなるまで繰り返した。
【0105】
【表2】

NO濃度の測定には、HORIBA製の装置(MEXA−7100D)を使用した。この装置のNOの検出限界は、0.1ppmである。
【0106】
試験温度(ハニカムユニットおよびガス温度)は、300℃とし、試験期間中一定とした。
【0107】
NOx処理性能の評価には、NOx浄化率Nを用いた。ここでNOx浄化率Nは、

N(%)={(ハニカムユニットに導入する前の混合ガス中のNO濃度−
ハニカムユニットから排出された排出ガス中のNO濃度)}/
(ハニカムユニットに導入する前の混合ガス中のNO濃度)×100 (3)

により算出した。
【0108】
評価の結果、実施例1〜5のいずれのハニカムユニット(評価用サンプル)においても、NOx浄化率Nは、80%を超えることが確認された。
【0109】
また、NOx処理性能の評価に合わせて、ハニカムユニット(評価用サンプル)から排出されるガス中のアンモニア量を測定した。アンモニア量の測定には、測定限界が0.1ppmのアンモニア検出器(HORIBA製MEXA−1170NX)を使用した。
【0110】
結果を前述の表1の右端の欄に示す。これらの結果に示す通り、比較例1に係るハニカムユニット(評価用サンプル)では、排気ガス中にアンモニアが検出されたが、実施例1〜5に係るハニカムユニット(評価用サンプル)では、排気ガス中にアンモニアは検出されなかった。
【0111】
このように、本発明によるハニカム構造体では、NOxの処理性能が向上するとともに、アンモニアの漏洩もなく、良好な特性を示すことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1のハニカム構造体を構成するハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】従来のハニカム構造体のセル壁の断面構造を模式的に示した図である。
【図4】従来のハニカムユニットの第1の端部からの距離とアンモニア吸着材料の担持量の関係を模式的に示した図である。
【図5】本発明ハニカムハニカムユニットの第1の端部からの距離とアンモニア吸着材料の担持量の関係を模式的に示した図である。
【図6】本発明ハニカムハニカムユニットの第1の端部からの距離とアンモニア吸着材料の担持量の別の関係を模式的に示した図である。
【図7】本発明ハニカムハニカムユニットの第1の端部からの距離とアンモニア吸着材料の担持量のさらに別の関係を模式的に示した図である。
【図8】本発明のハニカム構造体の別の例を模式的に示した斜視図である。
【図9】セル壁に担持されるアンモニア吸着材料の量が長手方向に沿って変化するハニカムユニットを作製する方法の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0113】
100、200 ハニカム構造体
110 第1の端面
115 第2の端面
120 コート層
121、122 セル
123、124 セル壁
130 ハニカムユニット
150 接着層
200 ハニカム構造体。
【0114】
810 ハニカムユニットの第1の端部
820 ハニカムユニットの第2の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端面から第2の端面に延伸する複数のセルを区画するセル壁が長手方向に沿って形成された、柱状のハニカムユニットからなるハニカム構造体であって、
前記セル壁は、NOx吸着材料と無機バインダを含み、
前記セル壁には、アンモニア吸着材料が担持されており、
前記アンモニア吸着材料は、第1の端部と第2の端部で、担持量が異なることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記第1の端部から前記第2の端部に向かって、前記アンモニア吸着材料の担持量が増加することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記アンモニア吸着材料の担持量は、直線的にまたはステップ状に増加することを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記第2の端部におけるアンモニア吸着材料の担持量は、前記第1の端部におけるアンモニア吸着材料の担持量の1.2〜5倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記NOx吸着材料は、セリアを含み、前記アンモニア吸着材料は、ゼオライトを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記セル壁には、さらに貴金属触媒が担持されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記貴金属触媒は、白金、パラジウムおよびロジウムからなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトからなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記ハニカムユニットは、さらに無機繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つであることを特徴とする請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記アンモニア吸着材料は、Fe、Cu、Ni、Zn、Mn、またはCoでイオン交換されたゼオライトであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記ハニカム構造体は、複数の柱状のハニカムユニットと、該ハニカムユニット同士を接合する接着層とを有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項13】
排ガス中に含まれるNOxを処理する排ガス処理装置であって、
当該排ガス処理装置は、請求項1乃至12のいずれか一つに記載のハニカム構造体を備え、
前記第1の端部に担持されたアンモニア吸着材料の担持量は、前記第2の端部に担持されたアンモニア吸着材料の担持量よりも少なく、
前記ハニカム構造体は、前記第1の端部が排ガスの上流側となるようにして、当該排ガス処理装置内に設置されていることを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−255034(P2009−255034A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290275(P2008−290275)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】