説明

ハニカム構造体の検査方法及びハニカム構造体の検査装置

【課題】ハニカム構造体のセル内の隔壁の欠陥を検出することが可能なハニカム構造体の検査方法を提供する。
【解決手段】一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体100を検査対象とし、ハニカム構造体100の一方の端面11を、一方の端面11との角度θが0°より大きく90°より小さくなる方向から、撮像装置21で撮像して、ハニカム構造体100のセル内の隔壁の欠陥を検査するハニカム構造体の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の検査方法及びハニカム構造体の検査装置に関し、更に詳しくは、ハニカム構造体のセル内で発生している隔壁の欠陥を検出することが可能なハニカム構造体の検査方法及びこのような検査を行うことができるハニカム構造体の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体、又はフィルタとして、耐熱性、耐食性に優れるセラミック製のハニカム構造体が採用されている。ハニカム構造体は、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有する筒状の構造物である。
【0003】
このようなセラミック製のハニカム構造体は、製造過程において、筒形状の端面に割れ等の欠陥が発生することがあった。これに対し、検査工程においてこのような欠陥を検出するために、ハニカム構造体の端面をカメラで撮像し、端面の欠陥を検出する方法(端面検査方法)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−257736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のハニカム構造体の端面検査方法は、ハニカム構造体の端面に垂直な方向から当該端面を撮像するため、セル内で発生している隔壁を撮像することができなかった。そのため、ハニカム構造体の端面の欠陥の検査には非常に適していたが、セル内で発生している隔壁の欠陥の検査を行うためには、更なる改良が望まれていた。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ハニカム構造体のセル内で発生している隔壁の欠陥を検出することが可能なハニカム構造体の検査方法及びこのような検査を行うことができるハニカム構造体の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のハニカム構造体の検査方法及びハニカム構造体の検査装置を提供する。
【0008】
[1] 一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体を検査対象とし、前記ハニカム構造体の一方の端面を、前記一方の端面との角度が0°より大きく90°より小さくなる方向から、撮像装置で撮像して、前記ハニカム構造体のセル内の隔壁の欠陥を検査するハニカム構造体の検査方法。
【0009】
[2] 前記撮像装置としてラインセンサカメラを用い、前記ハニカム構造体の一方の端面における前記ラインセンサカメラによる撮像箇所を移動させながら前記一方の端面全体を前記ラインセンサカメラで撮像し、前記撮像箇所を移動させる方法が、前記撮像装置を固定して前記ハニカム構造体を移動させるか、前記撮像装置を移動させて前記ハニカム構造体を固定させるか、又は、前記撮像装置及び前記ハニカム構造体の両方を移動させる方法である[1]に記載のハニカム構造体の検査方法。
【0010】
[3] 前記撮像装置として、2セットのラインセンサカメラを用い、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向としたときに、一方のセットの前記ラインセンサカメラの撮像方向が、前記一方の端面上において、前記撮像箇所の移動方向と同じ方向を向くようにし、他方のセットの前記ラインセンサカメラの撮像方向が、前記一方の端面上において、前記撮像箇所の移動方向に対して反対方向を向くようにして、2セットの前記ラインセンサカメラのそれぞれが前記一方の端面全体を撮像する[2]に記載のハニカム構造体の検査方法。
【0011】
[4] 前記撮像装置として、第1セット〜第4セットの4セットのラインセンサカメラを用い、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向とし、前記ハニカム構造体の前記一方の端面上において、撮像箇所の移動方向に対して反対方向を0°方向とし、前記0°方向から右回りに90°回転した方向を90°方向とし、前記0°方向から右回りに180°回転した方向を180°方向とし、前記0°方向から右回りに270°回転した方向を270°方向としたときに、前記第1セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記0°方向と前記90°方向との間の方向とし、前記第2セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記90°方向と前記180°方向との間の方向とし、前記第3セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記180°方向と前記270°方向との間の方向とし、前記第4セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記270°方向と前記0°方向との間の方向として、4セットの前記ラインセンサカメラのそれぞれが前記一方の端面全体を撮像する[2]に記載のハニカム構造体の検査方法。
【0012】
[5] 一方の端面においてセルの形状が多角形であるハニカム構造体を前記検査対象のハニカム構造体とし、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向とし、前記ハニカム構造体の前記一方の端面において、前記撮像方向が、前記多角形のセルのいずれか1つの対角線に対して±5°の範囲になるように前記ハニカム構造体を配置する[2]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体の検査方法。
【0013】
[6] 一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体を検査対象とし、前記ハニカム構造体の一方の端面を、前記一方の端面との角度が0°より大きく90°より小さくなる方向から撮像する位置に配置された撮像装置を備えたハニカム構造体の検査装置。
【0014】
[7] 前記撮像装置がラインセンサカメラであり、前記ハニカム構造体の一方の端面における前記ラインセンサカメラによる撮像箇所を移動させながら前記一方の端面全体を前記ラインセンサカメラで撮像するように、ハニカム構造体移動機構、撮像装置移動機構、又はハニカム構造体移動機構及び撮像装置移動機構の両方を備えた[6]に記載のハニカム構造体の検査装置。
【0015】
[8] 前記撮像装置が、2セットのラインセンサカメラであり、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向としたときに、一方のセットの前記ラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記撮像箇所の移動方向と同じ方向を向くように配置され、他方のセットの前記ラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記撮像箇所の移動方向に対して反対方向を向くように配置された[7]に記載のハニカム構造体の検査装置。
【0016】
[9] 前記撮像装置が、第1セット〜第4セットの4セットのラインセンサカメラであり、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向とし、前記ハニカム構造体の前記一方の端面上において、撮像箇所の移動方向に対して反対方向を0°方向とし、前記0°方向から右回りに90°回転した方向を90°方向とし、前記0°方向から右回りに180°回転した方向を180°方向とし、前記0°方向から右回りに270°回転した方向を270°方向としたときに、前記第1セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記0°方向と前記90°方向との間の方向になるように配置され、前記第2セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記90°方向と前記180°方向との間の方向になるように配置され、前記第3セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記180°方向と前記270°方向との間の方向になるように配置され、前記第4セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記270°方向と前記0°方向との間の方向になるように配置された[7]に記載のハニカム構造体の検査装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体の検査方法によれば、ハニカム構造体の一方の端面を、「一方の端面との角度が0°より大きく90°より小さくなる」方向から、撮像装置で撮像するため、ハニカム構造体のセル内で発生している隔壁の欠陥(セル内の隔壁の欠陥)を検査することができる。
【0018】
本発明のハニカム構造体の検査装置によれば、「ハニカム構造体の一方の端面を、一方の端面との角度が0°より大きく90°より小さくなる方向から撮像する」位置に配置された撮像装置を備えるため、ハニカム構造体のセル内の隔壁の欠陥を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態を示す模式図である。
【図1B】本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の検査装置によって撮像されたハニカム構造体の一方の端面の画像の一部を拡大して示す模式図である。
【図3A】本発明のハニカム構造体の検査方法の検査対象であるハニカム構造体を模式的に示した斜視図である。
【図3B】図3Aのハニカム構造体の断面を示す模式図である。
【図4】ハニカム構造体の一方の端面上における撮像方向を示す模式図である。
【図5】本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図6】本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態の一部を示す模式図である。
【図7】実施例1で撮像されたハニカム構造体の一方の端面の一部を拡大して示す模式図である。
【図8】撮像対象であるハニカム構造体と、撮像方向との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
(1)ハニカム構造体の検査方法:
本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態は、図1A、図1Bに示されるように、ハニカム構造体100を検査対象とし、ハニカム構造体100の一方の端面11を、一方の端面11との角度(小さい側の角度)が0°より大きく90°より小さくなる方向から、撮像装置21(ラインセンサカメラセット21a)で撮像して、ハニカム構造体100のセル内の隔壁の欠陥を検査するものである。つまり、撮像装置21から撮像箇所28に向かう方向を撮像方向27としたときに、ハニカム構造体100の一方の端面11と、撮像方向27とにより形成される角度θが、0°より大きく90°より小さいということになる。撮像装置21で撮像された画像は、画像処理装置29で処理され、表示される。本実施形態のハニカム構造体の検査方法は、本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態によって実施することができる。尚、ハニカム構造体100は、ハニカム構造体の検査装置200の構成要素ではない。図1Aは、本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態を示す模式図である。図1Aは、本実施形態のハニカム構造体の検査装置を側面側から見た図である。図1Bは、本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態を示す模式図である。図1Bは、本実施形態のハニカム構造体の検査装置の平面図に相当する。尚、図1Bにおいては、枠体の一部、支持具、照明、画像処理装置等は省略されている。
【0022】
このように、本実施形態のハニカム構造体の検査方法によれば、ハニカム構造体100の一方の端面11を、「一方の端面との角度θが0°より大きく90°より小さくなる」方向から、撮像装置で撮像するため、図2に示すように、ハニカム構造体のセル2内の隔壁1の欠陥6を検査することができる。欠陥6は、隔壁が交差する部分1aに生じたものである。ここで、「ハニカム構造体のセル内の隔壁の欠陥」というときは、ハニカム構造体のセル内の隔壁に生じた欠陥であって、ハニカム構造体の端面(表面)まで達していない欠陥を意味する。また、本発明のハニカム構造体の検査方法は、「ハニカム構造体のセル内の隔壁に生じた欠陥であって、ハニカム構造体の端面まで達している欠陥(ハニカム構造体の端面(表面)のみを撮像しても検出される欠陥)」については、当然に撮像することができる。従って、本発明のハニカム構造体の検査方法は、「ハニカム構造体のセル内の隔壁に生じた欠陥であって、ハニカム構造体の端面まで達している欠陥(ハニカム構造体の端面(表面)のみを撮像しても検出される欠陥)」を撮像するとともに、「ハニカム構造体のセル内の隔壁に生じた欠陥であって、ハニカム構造体の端面まで達していない欠陥」をも撮像することができる。図2は、本発明のハニカム構造体の検査装置によって撮像されたハニカム構造体の一方の端面11の画像の一部を拡大して示す模式図である。図2に示されるハニカム構造体の一方の端面の画像は、一方のラインカメラセット21aで撮像したものである。
【0023】
ここで、図3Aは、本発明のハニカム構造体の検査方法の検査対象であるハニカム構造体100を模式的に示した斜視図である。図3Bは、図3Aのハニカム構造体100の断面を示す模式図である。ハニカム構造体100は、一方の端面11から他方の端面12まで貫通する複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するものである。また、図3A、図3Bのハニカム構造体100は、隔壁1と外周壁3とにより形成されたハニカム基材4を備え、一方の端面11の所定のセル2の開口部と他方の端面12の残余のセル2に目封止部5が形成されている。また、上記所定のセル2と残余のセル2とは交互に配置されており、ハニカム構造体100の両端面に市松模様が形成されている。尚、本実施形態のハニカム構造体の検査方法の検査対象であるハニカム構造体は、図3A、図3Bに示されるハニカム構造体100のように目封止部を有するものが好ましいが、目封止部を有さないハニカム構造体であってもよい。目封止部を有するハニカム構造体は、目封止部付近の隔壁に欠陥が生じやすいため、本実施形態のハニカム構造体の検査方法の検査対象として、より適したものである。
【0024】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法において、ハニカム構造体100の一方の端面11と、撮像方向27とにより形成される角度θは、0°より大きく90°より小さい。そして、角度θの好ましい範囲は以下の通りである。図8に示すように、検査が必要なセル2の深さ(長さ)をD(mm)とし、「撮像方向27の、一方の端面11に平行な成分(方向)」におけるセル2開口部の長さをC(mm)とし、撮像方向27におけるセル2内の距離をDof(mm)とする。また、撮像された画像の1画素の分解能をR(mm)とし、欠陥の検出に必要な「セルの深さ方向」の1画素の分解能をH(mm)とする。そして、角度θの下限値は、θmin1=tan−1(D/C)、及びθmin2=sin−1(D/Dof)の中で大きいほうの角度であることが好ましい。また、角度θの上限値は、θmax1=cos−1(R/H)、及びθmax2=70°の中で小さいほうの角度であることが好ましい。例えば、D=2mm、C=2.2mm、Dof=5.3mm、R=0.02mm、H=0.1mmの場合、θmin1=tan−1(2/2.2)、θmin2=sin−1(D/Dof)、θmax1=cos−1(0.02/0.1)となる。これより、θmin1は約42.3°、θmin2は約22.2°となり、角度θの下限値は、大きい方の角度である42.3°となる。また、θmax1は、78.5°となるため、角度θの上限値は、「78.5°」及び「70°」の中の小さい方の角度である70°となる。上記下限値から上限値までの範囲である42.3〜70.0°の範囲は、角度θの好ましい範囲である。角度θが、0°より小さいと、セル内を撮像することができなくなる。90°であると、ハニカム構造体の一方の端面のみが撮像され、セル内部を撮像することができなくなる。また、42.3°より小さいと、セル内の撮像される部分(隔壁)の深さが浅くなる傾向が出てくる。70.0°より大きいと欠陥が認識され難くなる傾向が出てくる。図8は、撮像対象であるハニカム構造体と、撮像方向との関係を示す模式図である。ハニカム構造体については、セルの延びる方向に平行な断面が示されている。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、撮像装置21としてラインセンサカメラを用い、ハニカム構造体100の一方の端面11におけるラインセンサカメラによる撮像箇所28を移動させながら、一方の端面11全体をラインセンサカメラで撮像することが好ましい。ここで、ラインセンサカメラとは、主に1次元のライン上に配列したCCDイメージングセンサ素子又はCMOSイメージング素子とレンズドライバ−・コントロール回路によって構成されており、対象物の映像をレンズによって素子面に結像させて、光の量をビデオ信号に変換して出力する機器のことである。また、ラインセンサカメラとしては、例えば、竹中システム機器社製、商品名:TL−7400RCL等を使用することができる。本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、ラインセンサカメラとして、3つのラインセンサカメラ単体21bを組み合わせたラインセンサカメラセット21aを用いている。ラインセンサカメラ単体21bは1つのラインセンサカメラを意味し、ラインセンサカメラセット21aは、ラインセンサカメラ単体21bを複数個組み合わせたものを意味する。撮像装置21としては、1つのラインセンサカメラであってもよいし、複数の「ラインセンサカメラ単体」が組み合わされたラインセンサカメラセットであってもよい。ラインセンサカメラセットに含まれるラインセンサカメラ単体の数は、特に限定されず、ハニカム構造体の大きさ、検出したい欠陥サイズおよびラインセンサカメラ単体の種類によって適宜決定することができる。ラインセンサカメラセットを用いることにより、各ラインセンサカメラ単体の撮像箇所を長さ方向に長くなるように繋げて、撮像箇所全体として、長さ方向に長くすることができる。
【0026】
ハニカム構造体の一方の端面における撮像箇所を移動させる方法は、特に限定されないが、撮像装置を固定してハニカム構造体を移動させるか、撮像装置を移動させてハニカム構造体を固定させるか、又は、撮像装置及び前記ハニカム構造体の両方を移動させて、ハニカム構造体の一方の端面におけるラインセンサカメラによる撮像箇所を移動させることが好ましい。撮像箇所を移動させる速度は、特に限定されないが、カメラのスキャンレートをf(Hz)、欠陥の検出に必要な「セルの深さ方向」の1画素の分解能をH(mm)、撮像方向とハニカム構造体の一方の端面との角度をθ(°)としたときに、移動速度V(mm/秒)が「V≦f×R×tanθ」の条件を満たすことが好ましい。移動速度V(mm/秒)が、「f×R×tanθ」(mm/秒)より大きいと、良好な画像を撮像し難くなることがある。また、移動速度V(mm/秒)は、ハニカム構造体の端面の直径をr(mm)としたときに、「V≧r/2」の条件を満たすことが好ましい。移動速度V(mm/秒)が、「r/2」(mm/秒)より小さいと、測定時間がかかりすぎる事がある。
【0027】
図1A、図1Bに示されるハニカム構造体の検査装置200は、ハニカム構造体100を載置するための載置台25が、枠体23に取り付けられたレール26上を往復移動することができるように形成されている。レール26は鉛直方向に直交する方向に延びるように配置されていることが好ましい。そして、載置台25の表面の法線が鉛直方向を向いていることが好ましい。そして、ハニカム構造体の検査装置200は、載置台25の上に、一方の端面11を上方に向けてハニカム構造体100を載置し、載置台25を移動させながら、枠体23に固定された撮像装置21でハニカム構造体100の一方の端面11を撮像するように形成されている。これにより、本実施形態のハニカム構造体の検査方法は、撮像装置を固定してハニカム構造体を移動させる方法により、ハニカム構造体の一方の端面における撮像箇所を移動させていることになる。ハニカム構造体100を移動させることにより、ハニカム構造体100の移動方向30と、撮像箇所の移動方向31とが逆方向になる。ここで、撮像箇所とは、ハニカム構造体の一方の端面において、撮像装置によって撮像されている領域を意味する。
【0028】
ラインセンサカメラは、撮像箇所の形状が、一の方向に長い線状(帯状)である。そして、撮像箇所は、ハニカム構造体の一方の端面の外周上の2点間を繋ぐように形成されることが好ましい。そして、撮像箇所が移動することにより、ハニカム構造体の一方の端面全体が撮像されることが好ましい。
【0029】
尚、本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、ラインセンサカメラによる撮像箇所を移動させながらハニカム構造体の一方の端面を撮像しているが、ハニカム構造体の一方の端面全体を撮像装置で一度に撮像してもよい。更には、ハニカム構造体の両端面を横方向に向けて(好ましくは、ハニカム構造体の両端面が、水平面に直交するようにして)、両端面を同時に撮像してもよい。
【0030】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、図1A、図1Bに示すように、撮像装置として、2セットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a,21a)を用い、ラインセンサカメラから撮像箇所に向かう方向を撮像方向27としたときに、一方のセットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a)の撮像方向27が、一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向と同じ方向を向くようにし、他方のセットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a)の撮像方向27が、一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向に対して反対方向を向くようにして、2セットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a,21a)のそれぞれが一方の端面11全体を撮像することが好ましい。このように、2セットのラインセンサカメラを対向する位置に配置して、ハニカム構造体の一方の端面を撮像することにより、例えば、一方のセットのラインセンサカメラによって図2に示されるハニカム構造体の一方の端面のような画像が撮像され、更に、図2で撮像されているセル2の内面に対して、対向する位置(図2では撮像されていない、セル2の内面)を撮像することができる。尚、2セットのラインセンサカメラのそれぞれの撮像箇所は、同じ領域(位置)であってもよいし、異なる領域(位置)であってもよい。また、2セットのラインセンサカメラのそれぞれは、ラインセンサカメラセットであってもよいし、ラインセンサカメラ単体であってもよい。また、ハニカム構造体の一方の端面上における撮像方向というときは、撮像方向をハニカム構造体の一方の端面上に投影したときの当該一方の端面上における方向を意味する。
【0031】
撮像装置と撮像箇所との距離は、特に限定されないが、撮像装置の1画素の大きさをp(mm)、欠陥検出に必要な幅方向(撮像方向の「ハニカム構造体の一方の端面に平行な」成分(方向))の1画素の分解能をW(mm)、撮像装置のレンズの焦点距離をf(mm)としたときに、距離X(mm)は、「X≦W×f/p」の条件を満たすことが好ましい。また、距離X(mm)は、25mm以上であることが好ましい。
【0032】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、ハニカム構造体を移動させて(撮像箇所を移動させて)、ハニカム構造体の一方の端面全体を撮像した後に、ハニカム構造体の一方の端面を90°回転させて、次に、ハニカム構造体を逆方向に移動させて(撮像箇所を移動させて)、ハニカム構造体の一方の端面全体を撮像して欠陥を検査することが好ましい。これにより、一回目の撮像により、セル内の対向する一対の壁面を撮像することができ、2回目の撮像により、一回目の撮像では撮像され難かった90°回転した位置の壁面を撮像することができる。これにより、セル内の壁面全体を撮像することができる。図2に示すような四角形セル(セルの延びる方向に直交する断面の形状が四角形のセル)のハニカム構造体は、隔壁が交差する位置に欠陥が生じやすいため、上記のように2回の撮像を行うことにより、セル内の4か所の「隔壁が交差する位置」を撮像することができ、欠陥を検知することができる。尚、ハニカム構造体の一方の端面を回転させる際には、ハニカム構造体を、中心軸を中心に回転させるのが好ましい。また、上記のように、複数回撮像する際のハニカム構造体の移動は、往復移動とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、2セットのラインセンサカメラを使用しているが、1セットのラインセンサカメラや3セットのラインセンサカメラであってもよい。例えば、1セットのラインセンサカメラを使用する場合には、1回の撮像が終わる毎にハニカム構造体を「中心軸を中心にして90°回転させて」再び撮像を行い、合計で4回の撮像を行うことが好ましい。更に、詳細に撮像を行う場合には、ハニカム構造体の回転角度を45°として、合計で8回の撮像を行ってもよい。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、図4に示されるように、一方の端面11においてセル2の形状が多角形(四角形)であるハニカム構造体を検査対象のハニカム構造体100とし、ラインセンサカメラから撮像箇所に向かう方向を撮像方向27とし、ハニカム構造体100の一方の端面11において、撮像方向27(ハニカム構造体の一方の端面上における方向)が、多角形(四角形)のセル2の「1つの対角線2a」に対して±5°の範囲になる(撮像方向27と対角線2aとの角度αが±5°の範囲になる)ようにハニカム構造体100を配置することが好ましい。これにより、セル内の隔壁が交差する部分の欠陥をより良好に撮像することができる。撮像方向27(ハニカム構造体の一方の端面上における方向)とは、撮像方向27の「ハニカム構造体の一方の端面に平行な」成分(方向)のことである。図4は、ハニカム構造体100の一方の端面11上における撮像方向27を示す模式図である。
【0035】
また、セル内の隔壁の中で、隔壁が交差する部分(多角形(四角形)セルの頂点部分)以外の隔壁表面(多角形(四角形)セルの「辺」に相当する部分の隔壁1b(図2参照)の表面)の欠陥は、撮像方向(ハニカム構造体の一方の端面上における方向)を、「セル内における撮像しようとする隔壁表面に直交する方向に対して±30°の範囲」とすることにより、より良好に撮像することができる。
【0036】
ハニカム構造体の欠陥は、通常隔壁が交差する部分に発生するため、通常は、撮像方向を、隔壁が交差する部分が良好に撮像される角度(ハニカム構造体の一方の端面上における角度)とすることが好ましい。そして、更に、ハニカム構造体の欠陥を詳細に検査する必要がある場合には、上記のように、多角形(四角形)セルの「辺」に相当する部分の隔壁1b(図2参照)も良好に撮像できるようにすることが好ましい。
【0037】
次に、本発明のハニカム構造体の検査方法の他の実施形態は、図5、図6に示すように、撮像装置21として、第1セット〜第4セットの4セットのラインセンサカメラ21x,21y,21z,21wを用い、ラインセンサカメラから撮像箇所28に向かう方向を撮像方向27とし、ハニカム構造体100の一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向31に対して反対方向を0°方向32とし、0°方向32から右回りに90°回転した方向を90°方向33とし、0°方向32から右回りに180°回転した方向を180°方向34とし、0°方向32から右回りに270°回転した方向を270°方向35としたときに、第1セットのラインセンサカメラ21xの撮像方向27を、一方の端面11上において0°方向32と90°方向33との間の方向とし、第2セットのラインセンサカメラ21yの撮像方向27を、一方の端面11上において90°方向33と180°方向34との間の方向とし、第3セットのラインセンサカメラ21zの撮像方向27を、一方の端面11上において180°方向34と270°方向35との間の方向とし、第4セットのラインセンサカメラ21wの撮像方向27を、一方の端面11上において270°方向35と0°方向32との間の方向として、4セットのラインセンサカメラ21x,21y,21z,21wのそれぞれが一方の端面11全体を撮像するものである。本実施形態のハニカム構造体の検査方法は、本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態(ハニカム構造体の検査装置300)によって実施することができる。また、第1セットのラインセンサカメラ21xの撮像方向27を、一方の端面11上において40°方向と50°方向との間の方向とし、第2セットのラインセンサカメラ21yの撮像方向27を、一方の端面11上において130°方向と140°方向との間の方向とし、第3セットのラインセンサカメラ21zの撮像方向27を、一方の端面11上において220°方向と240°方向との間の方向とし、第4セットのラインセンサカメラ21wの撮像方向27を、一方の端面11上において310°方向と320°方向との間の方向とすることが更に好ましい。ハニカム構造体の移動方向に対して、4セットのラインセンサカメラ21x,21y,21z,21wを配置する順番は、特に限定されない。図5は、本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態を示す模式図である。図6は、本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態の一部を示す模式図である。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法は、このように4つの方向からハニカム構造体の一方の端面を撮像するため、四角形セル内の4箇所の「隔壁が交差する部分1a(図2参照)」を、ハニカム構造体を一方向に移動させるだけで(往復移動させることなく)撮像することができる。4セットのラインセンサカメラ21x,21y,21z,21wのそれぞれの撮像方向(ハニカム構造体の一方の端面上における方向)は、いずれも、図4に示すように、ハニカム構造体100の一方の端面11において、多角形(四角形)のセル2の「1つの対角線2a」に対して±5°の範囲である(撮像方向27と対角線2aとの角度αが±5°の範囲になる)ことが好ましい。これにより、四角形セル内の4箇所の「隔壁が交差する部分1a(図2参照)」を、より良好に撮像することができる。尚、ラインセンサカメラ21x,21y,21z,21wのそれぞれは、ラインセンサカメラ単体であってもよいし、ラインセンサカメラセットであってもよい。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法においては、ハニカム構造体を載置台に載置する際に、撮像装置によってセル内が良好に撮像されるように、ハニカム構造体の一方の端面におけるセルの向きを調整することが好ましい。ハニカム構造体の一方の端面におけるセルの向きとは、撮像箇所の移動方向(ハニカム構造体の移動方向)に対するセルの向き(セルの対角線又は辺の向き)であって、ハニカム構造体を、中心軸を中心にして回転することにより調整されることが好ましい。
【0040】
例えば、本発明のハニカム構造体の検査方法の一実施形態の場合には、図1A、図1Bに示すように、「一方のセットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a)の撮像方向27が、一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向と同じ方向を向くようにし、他方のセットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a)の撮像方向27が、一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向に対して反対方向を向くようにして、2セットのラインセンサカメラが配置されている」ため、ハニカム構造体(四角形セル)を載置台に載置する際には、ハニカム構造体の一方の端面においてセルの対角線が撮像箇所の移動方向(ハニカム構造体の移動方向)に平行になるようにすることが最も好ましい。また、「平行」に対して±5°の範囲とすることも好ましい態様である。
【0041】
また、本発明のハニカム構造体の検査方法の他の実施形態の場合には、図5に示すように、4つの撮像装置が、ハニカム構造体の一方の端面上において、撮像箇所の移動方向(ハニカム構造体の移動方向)に対して斜めの方向から撮像しているため、ハニカム構造体の一方の端面において、各撮像装置の撮像方向がセルの1つの対角線と平行になるようにしてハニカム構造体を載置台に載置することが最も好ましい。また、「平行」に対して±5°の範囲とすることも好ましい態様である。
【0042】
また、本実施形態のハニカム構造体の検査方法では、ハニカム構造体を一方向に移動させてハニカム構造体の一方の端面全体を撮像した後に、ハニカム構造体を45°回転させて、ハニカム構造体を上記一の方向に対して反対方向に移動させながら一方の端面全体を撮像することにより、四角形セル内の4箇所の「隔壁が交差する部分1a(図2参照)」だけでなく、四角形セルの「辺」に相当する部分の隔壁1b(図2参照)の欠陥も撮像することができる。
【0043】
また、本発明のハニカム構造体の検査方法においては、上記本発明のハニカム構造体の検査方法における4つの撮像装置の他に、更に4つの撮像装置を用いて(全体で8つの撮像装置を用いて)、ハニカム構造体の一方の端面全体を撮像することが好ましい。これにより、四角形セル内の4箇所の「隔壁が交差する部分1a(図2参照)」の欠陥と、四角形セルの「辺」に相当する部分の隔壁1b(図2参照)の欠陥とを、ハニカム構造体を一方向に移動させることにより撮像することができる。
【0044】
(2)ハニカム構造体の検査装置:
次に、本発明のハニカム構造体の検査装置について説明する。本発明のハニカム構造体の検査装置によって、上記本発明のハニカム構造体の検査方法を実施することができる。
【0045】
本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態は、図1A、図1Bに示すように、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体100を検査対象とし、ハニカム構造体の一方の端面を、一方の端面との角度が0°より大きく90°より小さくなる方向から撮像する位置に配置された撮像装置21を備えたものである。本実施形態のハニカム構造体の検査装置は、上記本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態を実施するための構成及び機能の全てを有する。
【0046】
このように、本実施形態のハニカム構造体の検査装置によれば、ハニカム構造体100の一方の端面11を、「一方の端面との角度θが0°より大きく90°より小さくなる」方向から、撮像装置で撮像するため、図2に示すように、ハニカム構造体のセル2内の隔壁1の欠陥6を検査することができる。
【0047】
また、本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態は、撮像装置21がラインセンサカメラであり、ハニカム構造体100の一方の端面11におけるラインセンサカメラによる撮像箇所28を移動させながら一方の端面11全体をラインセンサカメラで撮像するように、ハニカム構造体移動機構を備えたものである。ハニカム構造体移動機構は、レール26と、レール26上を移動する載置台25と、載置台25移動させるモーターとを備えた機構である。撮像箇所28を移動させる機構としては、撮像装置を移動させる撮像装置移動機構であってもよいし、ハニカム構造体移動機構及び撮像装置移動機構の両方であってもよい。また、本実施形態のハニカム構造体の検査装置は、撮像装置21で撮像された画像を画像処理、表示するための画像処理装置29を備えている。画像処理装置29としては、具体的には、パソコンと市販画像処理ソフトウェア等を用いることができる。レール26の材質は、特に限定されず、ステンレス鋼、鉄等の金属が好ましい。
【0048】
撮像装置と撮像箇所との距離は、特に限定されないが、撮像装置の1画素の大きさをp(mm)、欠陥検出に必要な幅方向(撮像方向の「ハニカム構造体の一方の端面に平行な」成分(方向))の1画素の分解能をW(mm)、撮像装置のレンズの焦点距離をf(mm)としたときに、距離X(mm)は、「X≦W×f/p」の条件を満たすことが好ましい。また、距離X(mm)は、25mm以上であることが好ましい。
【0049】
また、本実施形態のハニカム構造体の検査装置200は、図1A、図1Bに示されるように、レール26は、枠体23に取り付けられている。レール26は鉛直方向に直交する方向に延びるように配置されていることが好ましい。そして、載置台25の表面の法線が鉛直方向を向いていることが好ましい。そして、ハニカム構造体の検査装置200は、載置台25の上に、一方の端面11を鉛直方向上方に向けてハニカム構造体100を載置し、載置台25を移動させながら、枠体23に固定された撮像装置21でハニカム構造体100の一方の端面11を撮像するように形成されている。これにより、本実施形態のハニカム構造体の検査方法は、撮像装置を固定してハニカム構造体を移動させる方法により、ハニカム構造体の一方の端面における撮像箇所を移動させている。
【0050】
また、枠体23は、底部23aと、底部23a上に形成された枠部23bとを備えることが好ましい。また、枠部23bの一部には、外乱光の影響を遮断するための板状の合成樹脂が嵌め込まれていることが好ましい。底部23aは、板状のステンレス鋼により形成されていることが好ましい。また、枠部23bは、棒状のステンレス鋼により形成されていることが好ましい。
【0051】
また、撮像装置21は、枠体23に取り付けられた支持具24に固定されている。また、支持具24には、ハニカム構造体の一方の端面を照らすために照明22,22が固定されている。照明は、「当該照明から照射される光の方向と、ハニカム構造体の一方の端面とにより形成される角度βが、0°より大きく且つ90°より小さくなる」ように、支持具に固定されることが好ましい。また、「照明から照射される光の方向と、ハニカム構造体の一方の端面との角度β」が、「撮像方向と、ハニカム構造体の一方の端面との角度θ」より小さいことが好ましい。これにより、セル内に影ができ易くなるため、画像処理を行う際に、セル(開口セル)を特定し易くなる。
【0052】
枠体23及び支持具24の構造は特に限定されず、ハニカム構造体の一方の端面を撮像装置で撮像するのに適した構造とすることが好ましい。枠体23及び支持具24の材質は特に限定されず、ステンレス鋼、鉄等の金属や、合成樹脂等とすることが好ましい。また、照明22としては、特に限定されず、LED照明等を用いることができる。
【0053】
本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態は、撮像装置が、2セットのラインセンサカメラであり、ラインセンサカメラ(撮像装置)から撮像箇所に向かう方向を撮像方向としたときに、一方のセットのラインセンサカメラが、一方の端面上において「撮像方向が撮像箇所の移動方向と同じ方向を向く」ように配置され、他方のセットのラインセンサカメラが、一方の端面上において「撮像方向が撮像箇所の移動方向に対して反対方向を向く」ように配置されたものである。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体の検査装置は、ハニカム構造体100の一方の端面11と、撮像方向27とにより形成される角度θが0°より大きく90°より小さくなるように撮像装置が設置される。角度θの好ましい範囲は、「上記本発明のハニカム構造体の検査方法の一実施形態における、ハニカム構造体100の一方の端面11と、撮像方向27とにより形成される角度θの好ましい範囲」と同じであることが好ましい。
【0055】
本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態は、図5、図6に示すように、撮像装置21が、第1セット〜第4セットの4セットのラインセンサカメラ21x,21y,21z,21wであり、ラインセンサカメラ21から撮像箇所28に向かう方向を撮像方向27とし、ハニカム構造体100の一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向31に対して反対方向を0°方向32とし、0°方向32から右回りに90°回転した方向を90°方向33とし、0°方向32から右回りに180°回転した方向を180°方向34とし、0°方向32から右回りに270°回転した方向を270°方向35としたときに、第1セットのラインセンサカメラ21xが、一方の端面11上において撮像方向27が0°方向32と90°方向33との間の方向になるように配置され、第2セットのラインセンサカメラ21yが、一方の端面11上において撮像方向27が90°方向32と180°方向34との間の方向になるように配置され、第3セットのラインセンサカメラ21zが、一方の端面11上において撮像方向27が180°方向34と270°方向35との間の方向になるように配置され、第4セットのラインセンサカメラ21wが、一方の端面11上において撮像方向27が270°方向35と0°方向32との間の方向になるように配置されたものである。
【0056】
本実施形態のハニカム構造体の検査装置300は、上記本発明のハニカム構造体の検査方法の他の実施形態を実施するための構成及び機能の全てを有する。尚、図5においては、枠体の一部、支持具、照明、画像処理装置等は省略されている。また、ハニカム構造体100は、ハニカム構造体の検査装置300の構成要素ではない。
【0057】
また、本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態の場合には、図5に示すように、4つの撮像装置が、ハニカム構造体の一方の端面上において、撮像箇所の移動方向(ハニカム構造体の移動方向)に対して斜めの方向から撮像しているため、ハニカム構造体の一方の端面において、各撮像装置の撮像方向がセルの「いずれか1つの対角線」と平行になるようにしてハニカム構造体を載置台に載置することが最も好ましい。また、「平行」に対して±5°の範囲とすることも好ましい態様である。
【0058】
このように、本実施形態のハニカム構造体の検査装置300は、4つの方向からハニカム構造体の一方の端面を撮像することができるため、四角形セル内の4箇所の「隔壁が交差する部分1a(図2参照)」を、ハニカム構造体を一方向に移動させるだけで(往復移動させることなく)撮像することができる。尚、ラインセンサカメラ21x,21y,21z,21wのそれぞれは、ラインセンサカメラ単体であってもよいし、ラインセンサカメラセットであってもよい。
【0059】
また、本発明のハニカム構造体の検査装置は、上記本発明のハニカム構造体の検査装置の他の実施形態における4つの撮像装置の他に、更に4つの撮像装置を備えてもよい(全体で8つの撮像装置を備えてもよい)。これにより、四角形セル内の4箇所の「隔壁が交差する部分1a(図2参照)」の欠陥と、四角形セルの「辺」に相当する部分の隔壁1b(図2参照)の欠陥とを、ハニカム構造体を一方向に移動させることにより撮像することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
図1A、図1Bに示すような、ハニカム構造体の検査装置(本発明のハニカム構造体の検査装置の一実施形態)を作製した。具体的には、板状のステンレス鋼により底部23a(1800mm×800mm×20mm)を作製し、棒状のステンレス鋼により枠部23b(1290mm×800mm×1200mm)を作製し、枠部23bに板状の合成樹脂を嵌め込んで箱状の枠体23を作製した。また、ステンレス鋼によりレール26を作製し、枠体23の底部23aの上に取り付けた。また、ステンレス鋼により円板状の載置台25を作製し、レール26の上に取り付けた。載置台25には、モーターでレール上を移動するように車輪を取り付けた。また、載置台25は、ハニカム構造体を回転させるために、中心軸を中心にして回転することができるように形成した。枠体23に、棒状のステンレス鋼からなる支持具24を2つ取り付け、それぞれの支持具24に撮像装置21及び照明22を取り付けた。撮像装置としては、竹中システム機器社製、商品名:TL−7400RCLを使用し、照明としては、日星電気社製、商品名:ライコムラインLSを使用した。また、撮像装置は、画像処理装置29に接続した。画像処理装置としては、パソコンと市販画像処理ソフトウェアを使用した。
【0062】
図1A、図1Bに示すように、撮像装置として、2セットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a,21a)を用いた。そして、ラインセンサカメラから撮像箇所に向かう方向を撮像方向27としたときに、一方のセットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a)の撮像方向27が、一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向と同じ方向を向くようにし、他方のセットのラインセンサカメラ(ラインセンサカメラセット21a)の撮像方向27が、一方の端面11上において、撮像箇所28の移動方向に対して反対方向を向くようにして、2セットのラインセンサカメラを配置した。そして、照明22の向きは、「照明から照射される光の方向と、ハニカム構造体100の一方の端面11との角度が、30°となる」ようにした。
【0063】
図1Bに示されるように、2セットのラインセンサカメラセット21aは、それぞれ、3つのラインセンサカメラ単体21bにより構成されるようにした。
【0064】
また、それぞれの撮像装置の撮像方向27と、ハニカム構造体100の一方の端面11との角度θは、45°とした。また、撮像装置と撮像箇所との距離は、250mmとした。
【0065】
作製されたハニカム構造体の検査装置を用い、ハニカム構造体を検査対象として、ハニカム構造体のセル内の欠陥の検査を行った。検査対象としたハニカム構造体は、以下に示す方法で作製した。
【0066】
検査を行うに際しては、ハニカム構造体を載置した載置台を、レールの一方の端から、他方の端まで移動させながら撮像装置でハニカム構造体の一方の端面を撮像し、その後、ハニカム構造体を中心軸を中心にして90°回転させ、その後、ハニカム構造体を載置した載置台を、レールの上記「他方の端」から上記「一方の端」まで移動させながら撮像装置でハニカム構造体の一方の端面を撮像した。
【0067】
このとき、初めに、レールの一方の端において載置台にハニカム構造体を載置する際に、ハニカム構造体の一方の端面において、セルの対角線がハニカム構造体の移動方向に平行になるようにした。また、ハニカム構造体を載置した載置台の移動速度は、250mm/秒とした。
【0068】
(ハニカム構造体の作製)
タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化カルシウム、及びシリカのうちから複数を組み合わせて、その化学組成が、SiO(シリカ)42〜56質量%、Al(アルミナ)30〜45質量%、及びMgO(マグネシア)12〜16質量%となるように所定の割合で調合されたコージェライト化原料100質量部に対して、造孔材としてグラファイトを12〜25質量部、及び合成樹脂を5〜15質量部を添加した。さらに、メチルセルロース類、及び界面活性剤をそれぞれ適当量添加した後、水を加えて混練することにより坏土を調製した。調製した坏土を真空脱気した後、押出成形することによりハニカム成形体を得た。次に、ハニカム成形体を焼成することによってハニカム焼成体(多孔質基材)を得た。焼成条件は、1400〜1430℃、10時間とした。次に、得られたハニカム焼成体に目封止を施した。得られたハニカム焼成体の一方の端面のセル開口部に、市松模様状に交互にマスクを施し、マスクを施した側の端部をセラミック原料としてコージェライト材を含有する目封止スラリーに浸漬し、市松模様状に交互に配列された目封止部を形成した。更に、他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成した。目封止部を形成したハニカム焼成体を乾燥、焼成してハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体は、底面の直径140mm、中心軸方向長さ150mmの円筒形であり、隔壁厚さは0.3mm、セル密度は、31セル/cmであった。また、得られたハニカム構造体は、セルがハニカム構造体の中心軸方向に延び、両端面が中心軸に垂直に形成されたものであった。また、セルの延びる方向に直交する断面において、セル形状は正方形であった。
【0069】
検査の結果、セル内の隔壁の欠陥(ハニカム構造体の端面(表面)までは、到達していない欠陥)は、32箇所見つかった。また、図7に、撮像された「ハニカム構造体の一方の端面」の一部を拡大して示す。図7に示すように、隔壁が交差する部分1aに欠陥6が生じていた。図7は、実施例1で撮像されたハニカム構造体の一方の端面の一部を拡大して示す模式図である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のハニカム構造体の検査方法及びハニカム構造体の検査装置は、セラミック製のハニカム構造体の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1:隔壁、1a:隔壁が交差する部分、1b:四角形セルの辺に相当する部分の隔壁、2:セル、2a:対角線、3:外周壁、4:ハニカム基材、5:目封止部、6:欠陥、11:一方の端面、12:他方の端面、21:撮像装置、21a:ラインセンサカメラセット、21b:ラインセンサカメラ単体、21x:第1セットのラインセンサカメラ、21y:第2セットのラインセンサカメラ、21z:第3セットのラインセンサカメラ、21w:第4セットのラインセンサカメラ、22:照明、23:枠体、23a:底部、23b:枠部、24:支持具、25:載置台、26:レール、27:撮像方向、28:撮像箇所、29:画像処理装置、30:ハニカム構造体の移動方向、31:撮像箇所の移動方向、32:0°方向、33:90°方向、34:180°方向、35:270°方向、100:ハニカム構造体、200,300:ハニカム構造体の検査装置、α:角度、θ:角度、D:検査が必要なセルの深さ(長さ)、C:「撮像方向の、一方の端面に平行な成分(方向)」におけるセル開口部の長さ、Dof:撮像方向におけるセル内の距離、R:撮像された画像の1画素の分解能、H:欠陥の検出に必要な「セルの深さ方向」の1画素の分解能。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体を検査対象とし、前記ハニカム構造体の一方の端面を、前記一方の端面との角度が0°より大きく90°より小さくなる方向から、撮像装置で撮像して、前記ハニカム構造体のセル内の隔壁の欠陥を検査するハニカム構造体の検査方法。
【請求項2】
前記撮像装置としてラインセンサカメラを用い、前記ハニカム構造体の一方の端面における前記ラインセンサカメラによる撮像箇所を移動させながら前記一方の端面全体を前記ラインセンサカメラで撮像し、
前記撮像箇所を移動させる方法が、前記撮像装置を固定して前記ハニカム構造体を移動させるか、前記撮像装置を移動させて前記ハニカム構造体を固定させるか、又は、前記撮像装置及び前記ハニカム構造体の両方を移動させる方法である請求項1に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項3】
前記撮像装置として、2セットのラインセンサカメラを用い、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向としたときに、一方のセットの前記ラインセンサカメラの撮像方向が、前記一方の端面上において、前記撮像箇所の移動方向と同じ方向を向くようにし、他方のセットの前記ラインセンサカメラの撮像方向が、前記一方の端面上において、前記撮像箇所の移動方向に対して反対方向を向くようにして、2セットの前記ラインセンサカメラのそれぞれが前記一方の端面全体を撮像する請求項2に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項4】
前記撮像装置として、第1セット〜第4セットの4セットのラインセンサカメラを用い、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向とし、前記ハニカム構造体の前記一方の端面上において、撮像箇所の移動方向に対して反対方向を0°方向とし、前記0°方向から右回りに90°回転した方向を90°方向とし、前記0°方向から右回りに180°回転した方向を180°方向とし、前記0°方向から右回りに270°回転した方向を270°方向としたときに、
前記第1セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記0°方向と前記90°方向との間の方向とし、前記第2セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記90°方向と前記180°方向との間の方向とし、前記第3セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記180°方向と前記270°方向との間の方向とし、前記第4セットのラインセンサカメラの撮像方向を、前記一方の端面上において前記270°方向と前記0°方向との間の方向として、4セットの前記ラインセンサカメラのそれぞれが前記一方の端面全体を撮像する請求項2に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項5】
一方の端面においてセルの形状が多角形であるハニカム構造体を前記検査対象のハニカム構造体とし、前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向とし、
前記ハニカム構造体の前記一方の端面において、前記撮像方向が、前記多角形のセルのいずれか1つの対角線に対して±5°の範囲になるように前記ハニカム構造体を配置する請求項2〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項6】
一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体を検査対象とし、前記ハニカム構造体の一方の端面を、前記一方の端面との角度が0°より大きく90°より小さくなる方向から撮像する位置に配置された撮像装置を備えたハニカム構造体の検査装置。
【請求項7】
前記撮像装置がラインセンサカメラであり、
前記ハニカム構造体の一方の端面における前記ラインセンサカメラによる撮像箇所を移動させながら前記一方の端面全体を前記ラインセンサカメラで撮像するように、ハニカム構造体移動機構、撮像装置移動機構、又はハニカム構造体移動機構及び撮像装置移動機構の両方を備えた請求項6に記載のハニカム構造体の検査装置。
【請求項8】
前記撮像装置が、2セットのラインセンサカメラであり、
前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向としたときに、一方のセットの前記ラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記撮像箇所の移動方向と同じ方向を向くように配置され、他方のセットの前記ラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記撮像箇所の移動方向に対して反対方向を向くように配置された請求項7に記載のハニカム構造体の検査装置。
【請求項9】
前記撮像装置が、第1セット〜第4セットの4セットのラインセンサカメラであり、
前記ラインセンサカメラから前記撮像箇所に向かう方向を撮像方向とし、前記ハニカム構造体の前記一方の端面上において、撮像箇所の移動方向に対して反対方向を0°方向とし、前記0°方向から右回りに90°回転した方向を90°方向とし、前記0°方向から右回りに180°回転した方向を180°方向とし、前記0°方向から右回りに270°回転した方向を270°方向としたときに、
前記第1セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記0°方向と前記90°方向との間の方向になるように配置され、
前記第2セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記90°方向と前記180°方向との間の方向になるように配置され、
前記第3セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記180°方向と前記270°方向との間の方向になるように配置され、
前記第4セットのラインセンサカメラが、前記一方の端面上において撮像方向が前記270°方向と前記0°方向との間の方向になるように配置された請求項7に記載のハニカム構造体の検査装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−103187(P2012−103187A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253528(P2010−253528)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】