説明

ハニカム触媒体

【課題】製造コストが低く、圧力損失の増加率が小さいハニカム触媒体を提供する。
【解決手段】二つの端面11a,11bを連通するセル12が形成されるように配置された、多数の細孔を持った多孔質の隔壁26を有する修飾ハニカム構造体10と、所定箇所に担持された触媒28aと、を備えたハニカム触媒体100であり、ハニカム触媒体100は、細孔の内表面に多数の微粒子が付着した修飾隔壁を有し、一方の端面11aの少なくとも一部を包摂する第一の領域21と、第微粒子が付着していない未修飾隔壁を有し、他方の端面の少なくとも一部を包摂する第二の領域22と、を含み、修飾隔壁の気孔率は、前記未修飾隔壁の気孔率に比して小さく、第一の領域21の単位体積当りの触媒28aの担持量が、第二の領域22の単位体積当りの触媒28aの担持量に比して少ないハニカム触媒体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム触媒体に関し、更に詳しくは、効果的に粒子状物質を捕捉して除去することができ、触媒を選択的に担持させているため触媒の使用量が少なり、製造コストが低く、圧力損失の増加率が小さく、容易に製造することができるハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
公害を防止し環境の改善を図るため、排気ガスの処理にフィルタや触媒が使用されている。そして、その排気ガス処理用のフィルタとしてあるいは触媒担体として、触媒スラリーを用いて触媒を隔壁に担持させたハニカム構造体(ハニカム触媒体)が多用されている。このようなハニカム触媒体は、具体的には、ディーゼルエンジン等からの排気ガスに含まれている粒子状物質、例えば、PM(パティキュレートマター)(具体的には、有機溶媒可溶成分とスートとサルフェートの3成分として検出されるもの)を捕捉して除去するために、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)としてディーゼルエンジンの排気系等に組み込まれて使用される。
【0003】
また、最近では、DPFとして、ハニカム構造体のセルをハニカム構造体のいずれかの端面において互い違いになるように、具体的には、ハニカム構造体の端面が市松模様状を呈するように、目封止することにより、一方の端面側から流入した排ガスが、濾過層となる多孔質の隔壁を通過して他方の端面側から外部へと流出するようにしたウォールフロー型のフィルタが広く使用されている。
【0004】
このようなハニカム構造体(フィルタ)を長期間継続して使用するためには、定期的にフィルタに再生処理を施す必要がある。すなわち、フィルタ内部に経時的に堆積したPMにより増大した圧力損失を低減させてフィルタ性能を初期状態に戻すため、フィルタ内部に堆積したPMを燃焼させて除去する必要がある。このフィルタ再生時には、フィルタ内部に堆積したPMが流体(排ガス)の入口側から順に燃焼するため、出口側に近い部位ほど、前方で発生した熱とその場でPMが燃焼した熱とによる温度上昇が激しくなる。そのため、フィルタ各部の温度上昇が不均一になりやすく、熱応力によってクラック等の欠陥を発生させるという問題があった。
【0005】
ウォールフロー型のフィルタとしては、フィルタ再生時における燃焼熱の偏りを抑制するため隔壁の平均気孔径が、流体の入口側から出口側に向かうに従って段階的または連続的に小さくなるように形成されたもの(例えば、特許文献1参照)や、DPF後流部に排ガス不通過領域を有するDPF(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−145378号公報
【特許文献2】特開2006−231116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このようなウォールフロー型のフィルタでは十分な効果が得られにくいのが実情であった。
【0008】
そこで、DPF後流部、隔壁内の細孔の内表面の少なくとも一部に多数の微粒子を付着することにより、再生時の温度上昇が激しい箇所の熱容量を増加させ、加えて、PM堆積量を部分的に減少することにより再生時における燃焼熱の偏りを抑制する方法が考えられている。
【0009】
しかし、前記フィルタは、触媒担持後、圧力損失の増加率が大きくなる問題が存在する。また、再生時に高温となる箇所のPM堆積量を部分的に減少させているため、従来の触媒担持方法では余分な触媒を担持しているため製造コストが高くなっていた。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、効果的に粒子状物質を捕捉して除去することができ、触媒を選択的に担持させているため触媒の使用量が少なり、製造コストが低く、圧力損失の増加率が小さく、容易に製造することができるハニカム触媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム触媒体が提供される。
【0012】
[1] 二つの端面間を連通する複数のセルが形成されるように配置された、多数の細孔を持った多孔質の隔壁を有する修飾ハニカム構造体と、前記隔壁の所定箇所に担持された触媒と、を備えたハニカム触媒体であり、前記ハニカム触媒体は、前記細孔の内表面に多数の微粒子が付着した修飾隔壁を有し、一方の端面の少なくとも一部を包摂する第一の領域と、前記微粒子が付着していない未修飾隔壁を有し、他方の端面の少なくとも一部を包摂する第二の領域と、を含み、前記修飾隔壁の気孔率は、前記未修飾隔壁の気孔率に比して小さく、前記第一の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量が、前記第二の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量に比して少ないハニカム触媒体。
【0013】
[2] 前記ハニカム触媒体が、前記一方の端面の一部を包摂する、前記微粒子が付着されない非修飾隔壁を有する第三の領域を更に含む前記[1]に記載のハニカム触媒体。
【0014】
[3] 前記第一の領域は、前記ハニカム触媒体の中央から外周に向かって前記ハニカム触媒体の半径の2/5〜1/1までの部分であるとともに、前記ハニカム触媒体の一方の端面から、前記セルの連通方向に沿って、前記ハニカム触媒体全長の1/10〜1/2の長さまでの部分である前記[1]に記載のハニカム触媒体。
【0015】
[4] 複数個のセグメントを組み合わせて接合一体化することにより形成された前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0016】
[5] 外周部に位置する外周セグメントと、その内側に位置する中央セグメントと、を備え、前記第一の領域は、前記中央セグメントの一方の端面から、前記セルの連通方向に沿って、前記中央セグメント全長の1/10〜1/2の長さまでの部分である前記[4]に記載のハニカム触媒体。
【0017】
[6] 前記修飾ハニカム構造体の前記隔壁の気孔率が、30〜80%である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0018】
[7] 前記修飾ハニカム構造体の前記隔壁の平均細孔径が、5〜40μmである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0019】
[8] 前記第二の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量が、5〜50g/Lである前記[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0020】
[9] 前記第一の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量が、0〜40g/Lである前記[1]〜[8]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0021】
[10] 下記式(1)を満たす前記[1]〜[9]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
式(1):2≦X−Y≦20
(但し、Xは、前記未修飾隔壁の気孔率(%)であり、Yは、前記修飾隔壁の気孔率(%)である)
【0022】
[11] 下記式(2)を満たす前記[1]〜[10]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
式(2):0.1≦A−B≦10
(但し、Aは、前記未修飾隔壁の平均細孔径(μm)であり、Bは、前記修飾隔壁の平均細孔径(μm)である)
【0023】
[12] 所定のセルにおける一方の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける他方の開口端部を目封止する目封止部を備えた前記[1]〜[11]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0024】
[13] 前記一方の端面側のセルの開口率が、前記他方の端面側のセルの開口率より大きい前記[12]に記載のハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0025】
本発明のハニカム触媒体は、二つの端面間を連通する複数のセルが形成されるように配置された、多数の細孔を持った多孔質の隔壁を有する修飾ハニカム構造体と、隔壁の所定箇所に担持された触媒と、を備えたハニカム触媒体であり、ハニカム触媒体は、細孔の内表面に多数の微粒子が付着した修飾隔壁を有し、一方の端面の少なくとも一部を包摂する第一の領域と、微粒子が付着していない未修飾隔壁を有し、他方の端面の少なくとも一部を包摂する第二の領域と、を含み、修飾隔壁の気孔率は、未修飾隔壁の気孔率に比して小さく、第一の領域の単位体積当りの触媒の担持量が、第二の領域の単位体積当りの触媒の担持量に比して少ないものであるため、効果的に粒子状物質を捕捉して除去することができ、触媒を選択的に担持させているため触媒の使用量が少なくなり、製造コストが低く、圧力損失の増加率が小さく、容易に製造することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0027】
[1]ハニカム触媒体:
本発明のハニカム触媒体の一実施形態は、二つの端面間を連通する複数のセルが形成されるように配置された、多数の細孔を持った多孔質の隔壁を有する修飾ハニカム構造体と、隔壁の所定箇所に担持された触媒と、を備えたハニカム触媒体であり、ハニカム触媒体は、細孔の内表面に多数の微粒子が付着した修飾隔壁を有し、一方の端面の少なくとも一部を包摂する第一の領域と、微粒子が付着していない未修飾隔壁を有し、他方の端面の少なくとも一部を包摂する第二の領域と、を含み、修飾隔壁の気孔率は、未修飾隔壁の気孔率に比して小さく、第一の領域の単位体積当りの触媒の担持量が、第二の領域の単位体積当りの触媒の担持量に比して少ないものである。
【0028】
このようなハニカム触媒体は、効果的に粒子状物質を捕捉して除去することができ、触媒を選択的に担持させているため触媒の使用量が少なくなり、製造コストが低く、圧力損失の増加率が小さく、容易に製造することができる。なお、本実施形態のハニカム触媒体は、粒子状物質を含む排出ガスを、一方の端面側から流入させ、他方の端面側に排出するように配置して使用することが好ましい。
【0029】
図1は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態を示す斜視図である。本実施形態のハニカム触媒体100は、図1に示すように、二つの端面11a,11b間を連通する複数のセル12が形成されるように配置された、多数の細孔を持った多孔質の隔壁を有する修飾ハニカム構造体と、隔壁の所定箇所に担持された触媒と、を備えているものである。本実施形態のハニカム触媒体の形状は、図1に示す四角柱状に限らず、例えば、円柱状、楕円柱状、三角柱状、多角柱状などを挙げることができる。
【0030】
[1−1]修飾ハニカム構造体:
本実施形態のハニカム触媒体に備えられる修飾ハニカム構造体は、二つの端面間を連通する複数のセルが形成されるように配置された、多数の細孔を持った多孔質の隔壁を有するものであり、所定のセルにおける一方の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける他方の開口端部を目封止する目封止部を備えたものであることが好ましく、端面が市松模様状を呈するように目封止部を備えることが更に好ましい。例えば、図1及び図2に示すように、複数のセル12のうち、所定のセルにおける開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける開口端部を目封止するものであって、端面が市松模様状を呈するように、即ち、隣接するセルが互いに反対側となる端部に目封止部14を配置していることが好ましい。このような目封止部を備えたハニカム触媒体は、目封止部を備えていないハニカム触媒体に比べて、排ガスと触媒の接触頻度が向上し、効率的に排ガスを浄化することができる。目封止部を形成する材料は、特に制限はなく、後述する隔壁の材料と同様のものを好適に用いることができる。
【0031】
目封止部を備えた修飾ハニカム構造体(即ち、目封止部を備えたハニカム触媒体)は、一方の端面側のセルの開口率が、他方の端面側のセルの開口率より大きいことが好ましい。このようにすることで、PM堆積時の圧力損失を低減することができる。
【0032】
[1−1−1]隔壁:
修飾ハニカム構造体が有する隔壁の材料は、特に制限されないが、強度、耐熱性等の観点から、セラミックスであることが好ましい。セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ムライト、コージェライト、炭化珪素(SiC)、窒化珪素、炭化珪素を骨材とし珪素を結合材として形成された珪素−炭化珪素系複合材料、炭化珪素−コージェライト系複合材料、スピネル、アルミニウムチタネート、リチウムアルミニウムシリケート(LAS)、及び、Fe−Cr−Al系金属からなる群より選択される少なくとも一種の材料を主成分とするものであることが好ましい。ここで、「主成分」とは、全量に対して、50質量%以上含まれる成分を意味する。これらの中でも、強度、耐熱性等の観点から、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、アルミニウムチタネートが好ましい。
【0033】
隔壁の厚さは、特に制限されないが、7〜20mil(178〜508μm)であることが好ましく、8〜16mil(203〜406μm)であることが更に好ましく、10〜12mil(254〜305μm)であることが特に好ましい。上記隔壁の厚さが7mil未満であると、ハニカム構造体としての強度が不足するおそれがある。一方、20mil超であると、圧力損失が大きくなるおそれがある。ここで、本明細書において、「隔壁の厚さ」は、隔壁の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)、または、マイクロスコープを用いた画像解析によって測定される値である。
【0034】
隔壁を配置することによって形成される複数のセルは、その形状、即ち、ハニカム触媒体の中心軸方向に垂直な断面の形状は、特に制限はなく、三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形、円形、楕円形、レーシングトラック形、これらの一部が変形した形状などを挙げることができる。これらの中でも、作製が容易であるという観点から、三角形、四角形、六角形が好ましい。なお、各セルの上記断面形状は、同じであっても、異なっていてもよい。即ち、例えば、四角形と八角形の組み合わせであってもよい。四角形と八角形とを組み合わせた場合、八角形のセルを流体入口側にすることによって、流体入口側の表面積を多くすることが可能となり、PM堆積時の圧力損失を低減することができる。
【0035】
セル密度は、特に制限はないが、140〜350セル/in(cpsi)であることが好ましく、160〜320cpsiであることが更に好ましく、200〜300cpsiであることが特に好ましい。上記セル密度が140cpsi未満であると、フィルタの幾何学的表面積が不足するおそれがある。一方、350cpsi超であると、圧力損失が大きくなるおそれがある。ここで、「セル密度」とは、ハニカム触媒体の中心軸方向に垂直な断面における単位面積あたりのセルの数を意味する。なお、「cpsi」は「cells per square inch」の略であり、1平方インチ当りのセル数を表す単位である。例えば10cpsiは、約1.55セル/cmである。
【0036】
本実施形態のハニカム触媒体に備える修飾ハニカム構造体は、細孔の内表面に多数の微粒子が付着した修飾隔壁を有し、一方の端面の少なくとも一部を包摂する第一の領域と、前記微粒子が付着していない未修飾隔壁を有し、他方の端面の少なくとも一部を包摂する第二の領域と、を含むものである。図2に示す修飾ハニカム構造体10(ハニカム触媒体100)は、ハニカム触媒体100の中央から外周に向かってハニカム触媒体の半径の1/1までの部分である(即ち、一方の端面11aの全部を包摂する)とともに、ハニカム触媒体100の一方の端面11aから、セル12の連通方向に沿って、ハニカム触媒体100の全長の1/2の長さまでの部分である第一の領域21と、上記第一の領域21以外の部分である第二の領域22と、を有するものである。図2は、図1に示すハニカム触媒体100の中心軸に沿う方向の断面図である。
【0037】
第一の領域は、ハニカム触媒体の中央から外周に向かってハニカム触媒体の半径の2/5〜1/1までの部分であるとともに、ハニカム触媒体の一方の端面から、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体全長の1/10〜1/2の長さまでの部分であることが好ましい。上記ハニカム触媒体の半径の2/5未満であると、修飾隔壁の割合が少なく、熱応力によるクラック等の欠陥の発生を防止することが困難になるおそれがある。また、十分に触媒の使用量を少なくすることにならずに、製造コストを低くする効果が十分に得られないおそれがある。
【0038】
また、ハニカム触媒体全長の1/10未満の長さであると、後流部の再生時における温度低減効果が十分に得られず、また、十分に触媒の使用量を少なくすることにならずに、製造コストを低くする効果が十分に得られないおそれがある。一方、ハニカム触媒体全長の1/2超の長さであると、圧力損失が増大し、実用上問題が生じるおそれがある。
【0039】
[1−1−2]微粒子:
第一の領域にある隔壁(修飾隔壁)には、その細孔の内表面の少なくとも一部に多数の微粒子が付着している。このような微粒子を細孔の内表面に付着させることによって、隔壁内部に形成された空隙(気孔)の体積が、微粒子を付着させていない隔壁内部に形成された空隙(気孔)の体積に比して小さくなる。即ち、細孔の内表面に微粒子が付着することによって、細孔が狭くなるため、この細孔は、排気ガスなどのガスや水分などの気体は通過できるが、所定以上の大きさの粒子(例えば、触媒)などは通過しづらくなる。従って、微粒子の粒子径や付着量を調整することによって、触媒を担持させる領域、その担持量を設定することができる。
【0040】
また、排気ガス中の粒子状物質を捕捉するフィルタとして使用した場合、その使用時や再生時に、排気ガスの出口側の温度が、入口側の温度に比べて、高くなりやすいということがあった。このようなことに起因して、出口側の隔壁が溶損し、または熱衝撃破壊が生じるという問題があった。しかし、微粒子を付着させることによって、隔壁の熱容量が増加することに加えて、修飾部は未修飾部に比べ排気ガスが通過しづらくなり、部分的なスス堆積量(PM堆積量)が減少するため、上記問題を発生させ難くすることができる。
【0041】
微粒子の材料は、例えば、炭化珪素(微粒SiC)、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材、珪素−炭化珪素複合材、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネート、及び、チタニアよりなる群から選ばれる少なくとも一種からなるセラミックス、Fe−Cr−Al系金属、ニッケル系金属、金属Si、SiC等の無機粉体を含むことが好ましい。更に、γ−アルミナ、セリア、ジルコニア、セリア系複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物等のようなハニカム構造体に触媒を担持させる際のウォッシュコートに含まれる粒子を用いることもできる。なお、微粒子は、上記材料単独でまたは2種以上を使用することもできる。これらの中でも、ハニカム構造体と同じ材料であること、または、上記ウォッシュコートに含まれる粒子であることが好ましい。
【0042】
修飾隔壁には、微粒子以外に、微粒子を隔壁に固定させるための結合材を配設してもよい。結合材としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等のコロイダルゾルや、膨潤して結合性を示す粘土化合物等を挙げることができる。具体的には、コロイダルゾルとしては、コロイダルシリカを挙げることができ、粘土化合物としては、モンモリロナイトを挙げることができる。
【0043】
本実施形態のハニカム触媒体に備える修飾ハニカム構造体は、一方の端面の一部を包摂する、微粒子が付着されない非修飾隔壁を有する第三の領域を更に含むことが好ましい。このように第三の領域を更に含むことによって、触媒の使用量を低減することができるとともに、圧力損失の増加を防止することができる。
【0044】
修飾ハニカム構造体は、修飾隔壁の気孔率が、未修飾隔壁の気孔率に比して小さいものである。このように修飾隔壁の気孔率が未修飾隔壁の気孔率に比して小さいことによって、ハニカム触媒体に排ガスを流入させた場合、排ガスは、修飾隔壁に比べて、気孔率の大きい未修飾隔壁を通過しやすくなる。そのため、排ガスの通過量が多い未修飾隔壁に触媒を多く担持させることによって効果的に排ガスを浄化することができる。
【0045】
なお、修飾ハニカム構造体は、その隔壁(即ち、微粒子が付着せず、触媒も担持していない隔壁)の気孔率が、30〜80%であることが好ましく、40〜70%であることが更に好ましく、45〜65%であることが特に好ましい。上記隔壁の気孔率が30%未満であると、圧力損失の増加率が大きくなりすぎるおそれがある。一方、80%超であると、フィルタ再生時の最高温度が上昇しすぎるため、実用上問題が生じるおそれがある。ここで、本明細書において「気孔率」とは、修飾ハニカム構造体から隔壁厚みの平板を試験片として切り出し、アルキメデス法で測定したものである。
【0046】
また、修飾ハニカム構造体は、その隔壁(即ち、微粒子が付着せず、触媒も担持していない隔壁)の平均細孔径が、5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることが更に好ましく、5〜20μmであることが特に好ましい。上記隔壁の平均細孔径が5μm未満であると、圧力損失の増加率が大きくなりすぎるおそれがある。一方、40μm超であると、ディーゼルエンジン等からの排気ガスに含まれている粒子状物質を効果的に捕捉して除去することが困難になるおそれがある。ここで、本明細書において「平均細孔径」とは、修飾ハニカム構造体から所定形状(□5×15mm)の試験片を切り出し、水銀ポロシメーターで測定したものである。
【0047】
[1−2]触媒:
本実施形態のハニカム触媒体に備えられる触媒は、修飾ハニカム構造体の隔壁の所定箇所に担持されるものであり、第一の領域の単位体積当りの触媒の担持量は、第二の領域の単位体積当りの触媒の担持量に比して少ないことが必要である。このように触媒を担持させると、急激な圧力損失の上昇を抑制することができる。また、触媒の担持量を減少させることができるため、製造コストを減少させることができる。
【0048】
第二の領域の単位体積当りの触媒の担持量は、5〜50g/Lであることが好ましく、5〜30g/Lであることが更に好ましい。上記触媒の担持量が5g/L未満であると、隔壁に付着した粒子状物質や排気ガス中のHC、CO等を十分に浄化することが困難になるおそれがある。一方、50g/L超であると、触媒の使用量が多くなりすぎ、圧力損失の増加率が高くなるおそれがある。
【0049】
第一の領域の単位体積当りの触媒の担持量は、0〜40g/Lであることが好ましく、0〜20g/Lであることが更に好ましい。40g/L超であると、触媒の使用量が多くなりすぎ、圧力損失の増加率が高くなるおそれがある。また、必要以上の量の触媒を担持しているため、製造コストが高くなるおそれがある。
【0050】
酸化触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。貴金属の他に、他の触媒や浄化材が更に担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【0051】
例えば、酸化触媒にはCeとそれ以外の少なくとも1種の希土類金属酸化物、アルカリ土類金属、または遷移金属を添加した希土類複合酸化物を含んでもよい。希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,Zr,Ca,La,Pr等から適宜選択することができる。
【0052】
触媒に貴金属を含有させる場合、第二の領域の単位体積当りの触媒中の貴金属の担持量は、0.5〜20g/Lであることが好ましく、0.5〜12g/Lであることが更に好ましい。上記触媒中の貴金属の担持量が0.5g/L未満であると、隔壁に付着した粒子状物質や排気ガス中のHC、CO等を十分に浄化することが困難になるおそれがある。一方、20g/L超であると、貴金属の使用量が多くなりすぎ、製造コストが高くなるおそれがある。
【0053】
また、触媒に貴金属を含有させる場合、第一の領域の単位体積当りの触媒中の貴金属の担持量は、0〜15g/Lであることが好ましく、0〜7.5g/Lであることが更に好ましい。15g/L超であると、貴金属の使用量が多くなりすぎ、製造コストが高くなるおそれがある。
【0054】
本実施形態のハニカム触媒体は、下記式(1)を満たすものであることが好ましい。下記式(1)を満たすと、再生時の出口側付近の温度上昇を適度に抑えることができるとともに、圧力損失も過度に上昇せず、バランスに優れるという利点がある。下記式(1)の下限値未満、即ち、2未満であると、再生時の出口側端面付近の過剰な昇温を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。一方、下記式(1)の上限値超、即ち、20超であると、圧力損失が増大するおそれがある。
式(1):2≦X−Y≦20
(但し、Xは、前記未修飾隔壁の気孔率(%)であり、Yは、前記修飾隔壁の気孔率(%)である)
【0055】
更に、本実施形態のハニカム触媒体は、下記式(1−1)を満たすものであることが更に好ましい。
式(1−1):3≦X−Y≦12
(但し、Xは、前記未修飾隔壁の気孔率(%)であり、Yは、前記修飾隔壁の気孔率(%)である)
【0056】
また、本実施形態のハニカム触媒体は、下記式(2)を満たすものであることが好ましい。下記式(2)を満たすと、再生時の出口側付近の温度上昇を適度に抑えることができるとともに、圧力損失も過度に上昇せず、バランスに優れるという利点がある。下記式(2)の下限値未満、即ち、0.1未満であると、再生時の出口側端面付近の過剰な昇温を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。一方、下記式(2)の上限値超、即ち、10超であると、圧力損失が増大するおそれがある。
式(2):0.1≦A−B≦10
(但し、Aは、前記未修飾隔壁の平均細孔径(μm)であり、Bは、前記修飾隔壁の平均細孔径(μm)である)
【0057】
更に、本実施形態のハニカム触媒体は、下記式(2−1)を満たすものであることが好ましい。
式(2−1):0.1≦A−B≦5
(但し、Aは、前記未修飾隔壁の平均細孔径(μm)であり、Bは、前記修飾隔壁の平均細孔径(μm)である)
【0058】
なお、本実施形態のハニカム触媒体は、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)としてディーゼルエンジンの排気系等に組み込まれて使用される際には、粒子状物質を含む排出ガスを他方の端面側(第二の領域側)から流入させて一方の端面側(第一の領域側)に排出するように配置することが好ましい。
【0059】
[2]ハニカム触媒体の製造方法:
本実施形態のハニカム触媒体は、以下のようにして製造することができる。
【0060】
まず、坏土を調製する。坏土は、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、Fe−Cr−Al系金属等の材料に、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等のバインダを加え、更に、界面活性剤、溶媒としての水等を添加して、可塑性のものとして得ることができる。
【0061】
次に、調製した坏土をハニカム形状に成形して複数のハニカム成形体を得る。ハニカム形状に成形する手段としては、例えば、押出成形法を用いることができる。
【0062】
次に、ハニカム成形体を乾燥した後、焼成してハニカム焼成体を得る。ハニカム成形体の乾燥方法は、特に制限はなく、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることができる。また、ハニカム焼成の条件(例えば、温度・時間)は、成形原料の種類によって異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。
【0063】
次に、得られたハニカム焼成体の隔壁に微粒子を付着させて修飾ハニカム構造体を得る。なお、このように、ハニカム焼成体の隔壁に微粒子を付着させることを、微粒子による修飾と記す場合がある。微粒子は、既に上述したものを好適に用いることができる。
【0064】
微粒子を付着させる方法は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、細孔内に浸入可能な微粒子を含有する修飾用スラリーにハニカム焼成体を所望の深さまで浸漬させた後、乾燥させて行うことができる。このようにして、ハニカム焼成体の所望の位置(領域)に微粒子を容易に配置することができる。修飾用スラリーは、結合材、及び、水を含有してもよい。結合材は、微粒子同士を結合させることができるとともに、微粒子を隔壁に付着させるものであり、水によって修飾用スラリーの固形分濃度を調整することできる。結合材を含有させることによって、微粒子を所望の位置に確実に付着、固定させることができる。修飾用スラリーは、更に、分散剤、消泡剤などを含有するものであってもよい。
【0065】
修飾用スラリーに含有させる微粒子は、細孔内に浸入可能なものである限り特に制限はないが、その大きさ(直径)は、細孔の平均細孔径に対して、1〜20%であることが好ましく、2〜10%であることが更に好ましい。上記微粒子の大きさが1%未満であると、細孔の内表面に付着させる微粒子の量が多くなるため、乾燥などの時間がかかり、製造に手間がかかるおそれがある。一方、20%超であると、細孔内に粒子が入りづらくなり隔壁の表面を閉塞するおそれがある。
【0066】
微粒子の材質は、特に制限はなく、既に上述した微粒子と同様のものを好適に用いることができる。
【0067】
修飾用スラリーに含有させることのできる結合材は、特に制限はないが、既に上述した結合材と同様のものを好適に用いることができる。結合材の使用量は、微粒子100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、15〜50質量部であることが更に好ましい。上記使用量が5質量部未満であると、微粒子を細孔の内表面に固定する効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、100質量部超であると、粘度が高くなり細孔内に粒子が入りづらくなるおそれがある。
【0068】
次に、得られた修飾ハニカム構造体のセルの目封止を行う。即ち、得られた修飾ハニカム構造体の複数のセルのうち、所定のセルにおける開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける開口端部を目封止して、その端面が市松模様状を呈するように、即ち、隣接するセルが互いに反対側となる端部に目封止部を形成する。目封止は、目封止をしないセルをマスクフィルムなどによってマスキングした状態で、修飾ハニカム構造体の端面を目封止用スラリーに浸漬し、マスキングされていないセルに目封止用スラリーを充填し、乾燥させることによって行う。このようにして、所定のセルに目封止を施した修飾ハニカム構造体(目封止修飾ハニカム構造体)を得る。なお、目封止は、ハニカム焼成体を得た後であって微粒子による修飾前に行ってもよい。
【0069】
次に、得られた目封止修飾ハニカム構造体の所望の位置に、公知の方法によって触媒を担持させて、本実施形態のハニカム触媒体を得る。
【0070】
触媒の担持方法は、特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の隔壁に対して、触媒を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法や吸引法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁の上流層表面や上流層内部に付着させ、乾燥、熱処理する方法等により、隔壁を構成する粒子の表面や隔壁の細孔内に触媒層を形成すること(即ち、触媒を担持させること)ができる。担持する触媒量やその形状は、触媒液の濃度やコートに要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。
【0071】
[3]ハニカム触媒体:
本実施形態のハニカム構造体は、複数個のセグメントを組み合わせて接合一体化することにより形成されたもの(以下、「第二のハニカム構造体」と記す場合がある)であることが好ましい。更に、本実施形態のハニカム構造体(第二のハニカム構造体)は、外周部に位置する外周セグメントと、その内側に位置する中央セグメントと、を備え、第一の領域が、中央セグメントの一方の端面から、セルの連通方向に沿って、中央セグメント全長の1/10〜1/2の長さまでの部分であることが更に好ましい。なお、このようなハニカム構造体としては、具体的には、後述する第四の態様、及び第五の態様を挙げることができる。
【0072】
セグメントとしては、上述した修飾ハニカム構造体を挙げることができる。即ち、修飾ハニカム構造体(ハニカムセグメント)が複数個積層された、全体としてハニカム形状をなす積層体と、各ハニカムセグメントを接合する接合材層と、上記積層体の周面を被覆する外周コート層と、を更に備えるものである。このようなハニカム触媒体であると、耐熱衝撃性が向上する利点がある。
【0073】
例えば、図3は、全体としてハニカム形状となるように4×4(縦×横)に組み合わせた16個の四角柱状の修飾ハニカム構造体(ハニカムセグメント)103からなる積層体110と、この積層体110の各ハニカムセグメント103を接合する接合材層31と、上記積層体の周面を被覆する外周コート層32と、を備える円柱状のハニカム触媒体200を示す例である。図3は、本発明のハニカム触媒体の別の実施形態を示す斜視図である。
【0074】
接合材層の材料としては、例えば、無機繊維、無機バインダ、有機バインダ、無機粒子など挙げることができる。なお、これらは一種単独でまたは2種以上を使用することができる。無機繊維としては、例えば、アルミナシリケート、アルミナ等の酸化物繊維、その他の繊維(例えば、SiC繊維)等を挙げることができる。無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、粘土等を挙げることができる。有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等を挙げることができる。無機粒子としては、例えば、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライト等のセラミックスを挙げることができる。
【0075】
外周コート層の材料としては、例えば、SiC粉末、アルミナシリケート質繊維、シリカゾルなどを挙げることができる。
【0076】
本実施形態のハニカム触媒体(第二のハニカム構造体)としては、以下に示す5つの態様を例示することができる。なお、図4〜図8は、柱状のハニカム触媒体の中心軸方向に平行であって、この中心軸を通る断面を模式的に示す断面図である。なお、図4〜図8は、ハニカム触媒体のセル及び隔壁は省略し、表していない。図4〜図8中、斜線で示す部分は、微粒子が付着していることを示し、塗りつぶして示す部分は、触媒が担持されていることを示す。また、斜線の数が多いことは、その領域の単位体積当りの微粒子の付着量が多いことを示し、濃く塗りつぶすことは、その領域の単位体積当りの触媒の担持量が多いことを示す。
【0077】
まず、第一の態様のハニカム触媒体としては、例えば、図4に示すハニカム触媒体200のように、第一の領域21が、ハニカム触媒体200の中央から外周に向かってハニカム触媒体200の半径の1/1までの部分である(即ち、一方の端面の全てを包摂する)とともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111aから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分であり、第二の領域22が、上記第一の領域21以外の部分であって、多数の微粒子が第一の領域21にあるハニカムセグメント103の隔壁の細孔の内表面に付着しており、触媒は、第一の領域21及び第二の領域22の両方の隔壁の表面及び細孔の内表面に担持されており、第一の領域21の単位体積当りの触媒の担持量が、第二の領域22の単位体積当りの触媒の担持量に比して少ないものを例示することができる。
【0078】
次に、第二の態様のハニカム触媒体としては、例えば、図5に示すハニカム触媒体201のように、第一の領域21が、ハニカム触媒体200の中央から外周に向かってハニカム触媒体200の半径の1/1までの部分である(即ち、一方の端面の全てを包摂する)とともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111aから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分であり、第二の領域22が、上記第一の領域21以外の部分であって、多数の微粒子が第一の領域21にあるハニカムセグメント103の隔壁の細孔の内表面に付着しており、触媒は、第二の領域22の隔壁の表面及び細孔の内表面に担持されているものを例示することができる。
【0079】
次に、第三の態様のハニカム触媒体としては、例えば、図6に示すハニカム触媒体202のように、第一の領域21が、ハニカム触媒体200の中央から外周に向かってハニカム触媒体200の半径の1/1までの部分である(即ち、一方の端面の全てを包摂する)とともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111aから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分であり、第二の領域22が、上記第一の領域21以外の部分であって、多数の微粒子が第一の領域21にあるハニカムセグメント103の隔壁の細孔の内表面に付着しており、触媒は、第一の領域21及び第二の領域22の両方の隔壁の表面及び細孔の内表面に担持されており、第一の領域21の単位体積当りの触媒の担持量が、第二の領域22の単位体積当りの触媒の担持量に比して少ないものを例示することができる。なお、本態様のハニカム触媒体は、第一の態様のハニカム触媒体に比べて、第一の領域21の単位体積当りの触媒の担持量が、第二の領域22の単位体積当りの触媒の担持量に比して更に少ないものである。
【0080】
次に、第四の態様のハニカム触媒体としては、例えば、図7に示すハニカム触媒体202のように、第一の領域21が、ハニカム触媒体200の中央から外周に向かってハニカム触媒体200の半径の1/2までの部分であるとともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111aから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分であり、第二の領域22が、ハニカム触媒体200の中央から外周に向かってハニカム触媒体200の半径の1/1までの部分である(即ち、他方の端面の全てを包摂する)とともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111bから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分であり、第三の領域が、ハニカム触媒体200の外周から中央に向かってハニカム触媒体200の半径の1/2までの部分であるとともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111aから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分(図7中、破線で囲まれた部分)であって、多数の微粒子が第一の領域21にあるハニカムセグメント103の隔壁の細孔の内表面に付着しており、触媒は、第二の領域22の隔壁の表面及び細孔の内表面に担持されているものを例示することができる。
【0081】
次に、第五の態様のハニカム触媒体としては、例えば、図8に示すハニカム触媒体202のように、第一の領域21が、ハニカム触媒体200の中央から外周に向かってハニカム触媒体200の半径の1/2までの部分であるとともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111aから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分であり、第二の領域22が、ハニカム触媒体200の中央から外周に向かってハニカム触媒体200の半径の1/1までの部分である(即ち、他方の端面の全てを包摂する)とともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111bから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分であり、第三の領域が、ハニカム触媒体200の外周から中央に向かってハニカム触媒体200の半径の1/2までの部分であるとともに、ハニカム触媒体200の一方の端面111aから、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体200全長の1/2の長さまでの部分(図8中、破線で囲まれた部分)であって、多数の微粒子が第一の領域21にあるハニカムセグメント103の隔壁の細孔の内表面に付着しており、触媒は、第一の領域21、第二の領域22、及び第三の領域の隔壁の表面及び細孔の内表面に担持されており、第一の領域21及び第三の領域の単位体積当りの触媒の担持量が、第二の領域22の単位体積当りの触媒の担持量に比して少ないものを例示することができる。
【0082】
なお、本実施形態のハニカム触媒体は、粒子状物質を含む排出ガスを、一方の端面側から流入させ、他方の端面側に排出するように配置して使用することが好ましい。
【0083】
本実施形態のハニカム触媒体(第二のハニカム構造体)は、例えば、以下のように製造することができる。
【0084】
まず、坏土を調製し、調製した坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得、得られたハニカム成形体を乾燥した後、焼成してハニカム焼成体を得るまでの工程は、既に上述したハニカム焼成体を得るまでの工程と同様にして行うことができる。本実施形態では、この工程によって、複数のハニカム焼成体を得る。
【0085】
次に、得られた複数のハニカム焼成体の隔壁に微粒子を付着させて、複数の修飾ハニカムセグメントを得る。なお、このように、ハニカム焼成体の隔壁に微粒子を付着させることを、微粒子による修飾と記す場合がある。微粒子は、既に上述したものを好適に用いることができる。微粒子を付着させる方法は、既に上述した方法と同様の方法を好適に採用することできる。
【0086】
なお、本実施形態のハニカム触媒体(第二のハニカム構造体)は、各修飾ハニカムセグメントによって積層されて得られるものであるため、例えば、上述した5つの態様のハニカム触媒体を形成するように、各修飾ハニカムセグメント毎に微粒子の付着量、及び、付着領域を変えることができる。
【0087】
次に、得られた修飾ハニカムセグメントのセルの目封止を行う。即ち、得られた修飾ハニカムセグメントの複数のセルのうち、所定のセルにおける一方の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける他方の開口端部を目封止して目封止部を形成する。なお、その端面が市松模様状を呈するように、即ち、隣接するセルが互いに反対側となる端部に目封止部を形成することが好ましい。目封止は、目封止をしないセルをマスクフィルムなどによってマスキングした状態で、修飾ハニカムセグメントの端面を目封止用スラリーに浸漬し、マスキングされていないセルに目封止用スラリーを充填し、乾燥させることによって行う。
【0088】
次に、得られた複数の目封止修飾ハニカムセグメント(目封止部を形成した修飾ハニカムセグメント)を、全体としてハニカム形状となるように所望の位置に配置して積層体を形成するとともに、この積層体の各ハニカムセグメントを接合材層用スラリーによって接合してハニカム接合体を得る。各目封止修飾ハニカムセグメントを接合材層用スラリーによって接合する際には、具体的には、目封止修飾ハニカムセグメントの周面に接合材層用スラリーを塗布し、所定の立体形状(例えば、図3に示すハニカム触媒体のような形状)となるように複数の目封止修飾ハニカムセグメントを組み付け、この組み付けた状態で圧着した後、加熱乾燥する。接合材層用スラリーは、上述した接合材層の材料として例示したものを含有するものである。接合材層用スラリーの固形分濃度は、特に制限はなく、目封止修飾ハニカムセグメントの周面に塗布し易い濃度を適宜選択することができる。
【0089】
次に、ハニカム接合体を、必要に応じて所定の形状(例えば、円柱状など)に研削加工した後に、その周面に外周コート層用スラリーを塗布し、乾燥させて、外周コート層で被覆して修飾ハニカム構造体を得る。外周コート層用スラリーとしては、上述した外周コート層の材料を含有するスラリーを用いることができる。外周コート層用スラリーの固形分濃度は、特に制限はなく、ハニカム接合体の周面に塗布し易い濃度を適宜選択することができる。外周コート層用スラリーの塗布量は、適宜選択することができるが、得られる外周コート層の厚さが、0.1〜1.5mmの範囲になる量であることが好ましい。
【0090】
次に、得られた修飾ハニカム構造体の所望の位置に触媒スラリーを公知の方法(例えば、上述した方法)により担持させる。このようにして、本実施形態のハニカム触媒体を得ることができる。
【0091】
なお、微粒子による修飾は、上述したように、全て修飾していないハニカムセグメントを接合した後に行ってもよいし、接合する前の各ハニカムセグメントに対して行ってもよい。また、目封止用スラリーの充填は、ハニカム成形体の成形後であって焼成前に行ってもよい。焼成前に行うと、焼成工程を減らすことが可能である。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
[気孔率(%)]
修飾ハニカム構造体から隔壁厚みの平板を試験片として切り出し、アルキメデス法で測定する。
【0094】
[平均細孔径(μm)]
修飾ハニカム構造体から所定形状(□5×15mm)の試験片を切り出し、水銀ポロシメーターで測定する。
【0095】
[気孔率減少量(%)]
式:X−Yにより算出される値を気孔率減少量(%)とする。但し、Xは、前記未修飾隔壁の気孔率(%)であり、Yは、前記修飾隔壁の気孔率(%)である。
【0096】
[平均細孔径減少量(μm)]
式:A−Bにより算出される値を平均細孔径減少量(μm)とする。但し、Aは、前記未修飾隔壁の平均細孔径(μm)であり、Bは、前記修飾隔壁の平均細孔径(μm)である。
【0097】
[修飾高さ比]
微粒子によって修飾されている隔壁の一方の端面からの、全体に対する距離の割合を算出する。
【0098】
[触媒担持量(g/L)]
まず、初期のハニカム構造体(修飾ハニカム構造体)の重さを測定する。次に、後述する実施例1で調製する触媒スラリーと同様のものを第二の領域となるべき部分に含浸し、乾燥する。その後、得られた修飾ハニカム構造体の重さを測定する。次に、第一の領域となるべき部分に上記触媒スラリーを含浸し、乾燥する。その後、得られた修飾ハニカム構造体の重さを測定する。次に、触媒スラリーに含浸した部分の修飾ハニカム構造体の体積から焼付け前の触媒量をg/Lにて算出する。次に、第一の領域と第二の領域の単位体積当りの触媒含浸量(g/L)の比を算出する。触媒焼付け後、重さを測定し、初期のハニカム構造体に対する重さの増加量を算出する。触媒焼付け前に算出した上記比、及び触媒焼付け後に算出した比から触媒量を算出する。
【0099】
[圧力損失増加率(%)]
まず、スート(PM)を含む200℃の排ガスを2.27Nm/分の流量で、修飾ハニカム構造体に流して、その内部にスートを徐々に堆積させる。スートの堆積量が4g/Lに達した時点における修飾ハニカム構造体の圧力損失を測定して、これをスート堆積後の修飾ハニカム構造体圧力損失とした。次に、修飾ハニカム構造体に代えて、ハニカム触媒体について上記と同様の操作を行い、ハニカム触媒体の圧力損失を測定して、これをスート堆積後のハニカム触媒体圧力損失とした。その後、以下の式によって圧力損失増加率(%)を算出する。
圧力損失増加率(%)={(ハニカム触媒体圧力損失/修飾ハニカム構造体圧力損失)−1}×100
【0100】
[再生効率向上量(%)]
まず、エンジン(2.0Lエンジン、2000rpm、60Nm)にスス(6g/L)を付ける。次に、サンプルの重さを測定する。エンジン条件2000rpm、60Nmでエンジンを駆動し、ハニカム触媒体の入口側のガスの温度が安定したら、再生を10分間行う。次に、再生後のハニカム触媒体の重さを測定し、初期の重さに対する、燃焼したススの割合を算出する。なお、ポスト噴射量を調節することにより、再生時のハニカム触媒体の温度を調節し、600〜650℃の間の数点の温度における、再生温度と再生効率との関係により、ある温度における再生効率を算出する。
再生効率向上量(%)=ハニカム触媒体の再生効率−修飾ハニカム構造体の再生効率
【0101】
(実施例1)
まず、ハニカム焼成体を得た。具体的には、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これに造孔材、有機バインダ、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を作製した。そして、この坏土を押出成形し、乾燥して隔壁の厚さが12mil、セル密度が約300セル/平方インチ、断面が一辺35mmの正四角形、(中心軸方向の)長さが152mmの、四角柱(柱状体)のハニカム成形体を得た。このハニカム成形体を、端面が市松模様状を呈するように、セルの両端面を目封止した。即ち、隣接するセルが、互いに反対側の端部で封じられるように目封止を行った。目封止するための材料(充填する目封止用スラリーの材料)は、上記坏土の原料と同じ材料を用いた。セルの両端面を目封止し、乾燥させた後、大気雰囲気中、約400℃で脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気において約1450℃で焼成して、SiC結晶粒子をSiで結合させた、多孔質構造を有するハニカム焼成体を得た。
【0102】
次に、修飾スラリーを調製した。具体的には、粒子径2μmのSiC粒子150質量部、コロイダルシリカ(固形分40%の溶液)150質量部、水200質量部を加え、よく撹拌して、修飾スラリーを調製した。調製に際し、分散剤、及び消泡剤を適宜加えた。
【0103】
次に、修飾ハニカム構造体を得た。具体的には、まず、得られた修飾スラリーに、ハニカム焼成体を、一方の端面から1/2の深さまで浸漬させ、その後、エアーブローによって過剰な修飾スラリーを除去した。次に、ハニカム焼成体を乾燥させ、その後、700℃の熱処理を行って、修飾ハニカム構造体を得た。なお、この修飾ハニカム構造体は、第一の領域が、ハニカム触媒体の中央から外周に向かってハニカム触媒体の半径の1/1まで(全て)の部分であるとともに、ハニカム触媒体の一方の端面から、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体全長の1/2の長さまでの部分である。
【0104】
次に、修飾ハニカム構造体の所定の位置に触媒を担持させた。具体的には、まず、触媒スラリーは、Ptを担持したγ−Al触媒とCeO粉末(助触媒)にAlゾルと水分を添加して調製した。次いで、触媒スラリーをウォッシュコートにより、白金成分を含む触媒の、修飾ハニカム構造体の単位体積当りの担持量が1.06g/Lとなるよう担持させた。その後、乾燥後600℃で熱処理を行うことにより、本実施例のハニカム触媒体を得た。
【0105】
得られたハニカム触媒体の各種評価結果は、気孔率が42%であり、平均細孔径が14μmであり、気孔率減少量が7.0%であり、平均細孔径減少量が2.0μmであり、未修飾部の触媒担持量(W/C量)が53.5g/Lであり、修飾部W/C量が33g/Lであり、圧力損失増加率が84%であり、再生効率向上量が14%であった。
【0106】
なお、表1〜3中、「触媒担持量(g/L)」の欄中「未修飾部」とは、第二の領域の単位体積当りの触媒の担持量を示し、「修飾部」とは、第一の領域の単位体積当りの触媒の担持量を示す。
【0107】
(実施例2〜40,比較例1〜20)
可塑性坏土に加えるSiC粒子の粒子径、造孔材の種類、粒子径、添加量、有機バインダの種類、添加量を変化させること以外は、実施例1と同様な方法で修飾ハニカム構造体を得、得られた修飾ハニカム構造体について、表1〜3に示す触媒担持量(W/C量)となるように触媒を担持させて、ハニカム触媒体を得た。得られたハニカム触媒体の各種評価結果を表1〜表3に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
(実施例41)
まず、表4に示す、気孔率、平均細孔径、気孔率減少量、平均細孔径減少量、修飾高さ比となるように、可塑性坏土に加えるSiC粒子の粒子径、造孔材の種類、粒子径、添加量、有機バインダの種類、添加量を変化させること以外は、実施例1と同様な方法で、16個の修飾ハニカム構造体を得た。その後、得られた修飾ハニカム構造体について、各ハニカムセグメントを組み合わせたときに、表4に示す触媒担持量(W/C量)となるように触媒を担持させて各ハニカムセグメントを作製した。
【0112】
次に、作製したハニカムセグメントを組み合わせて、全体がハニカム形状である4×4(縦×横)の積層体を得た。このとき、各ハニカムセグメントは、接合材層用スラリーを用いて接合して、ハニカムセグメント接合体を得た。なお、接合は、接合材層用スラリーを、あるハニカムセグメントの外周壁に、厚さ約1mmとなるように塗布して接合材層を形成し、その上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、適宜、外部より圧力を加える等して、全体を接合させた後、120℃、2時間、乾燥させることにより行った。接合材層用スラリーは、無機粒子としてSiC粉末、酸化物繊維としてアルミナシリケート質繊維、コロイド状酸化物として、シリカゾル水溶液及び粘土を混合し、水を加え、ミキサーを用いて30分間混練を行って調製した。
【0113】
次に、ハニカムセグメント接合体を、外形が円筒状になるように切削した後、外周コート層用スラリーを塗布し、700℃、2時間、乾燥させて、硬化させた。このようにして、φ144mm×152.4mmの本実施例のハニカム触媒体を得た。
【0114】
得られたハニカム触媒体の各種評価結果は、ベース基材の気孔率が42%、平均細孔径が14μmであり、中央セグメントの気孔率減少量が6.9%、平均細孔径減少量が2.4μmであり、中央セグメントに隣接するセグメントの気孔率減少量が6.7%、平均細孔径減少量が2.3μmであり、上流1/2の触媒担持量(W/C量)が52.7g/Lであり、下流1/2の触媒担持量(W/C量)が52.5g/Lであり、圧力損失増加率が129%であり、再生効率向上量が17%であった。
【0115】
なお、表4中、「ベース基材」とは、修飾ハニカム構造体を示し、「中央セグメント」とは、4×4(縦×横)に組み合わされた積層体のハニカムセグメントのうち、中心軸を取り囲む4個のハニカムセグメントを示し、「中央セグメント」の欄の「気孔率減少量」、及び「平均細孔径減少量」の各値は、上記4個のハニカムセグメントの平均値である。「中央セグメント」の欄の「修飾高さ比」の値は、4個のハニカムセグメントを一つのセグメント(中央セグメント)としたときの「修飾高さ比」である。即ち、「修飾高さ比」の欄中、「1/2」とは、第一の領域が、上記「中央セグメント」の一方の端面(即ち、本実施例のハニカム触媒体の一方の端面)から、セルの連通方向に沿って、前記ハニカム触媒体全長の1/2の長さまでの部分であることを示す。
【0116】
また、「中央セグメントに隣接するセグメント」とは、上記「中央セグメント」に隣接する12個のハニカムセグメント(即ち、外周セグメント)を示し、「中央セグメントに隣接するセグメント」の欄の「気孔率減少量」、及び「平均細孔径減少量」の各値は、上記12個のハニカムセグメントの平均値である。「中央セグメントに隣接するセグメント」の欄の「修飾高さ比」の値は、12個のハニカムセグメントを一つのセグメント(隣接するセグメント)としたときの「修飾高さ比」である。即ち、「修飾高さ比」の欄中、「1/4」とは、第一の領域が、上記「隣接するセグメント」の一方の端面(即ち、本実施例のハニカム触媒体の一方の端面)から、セルの連通方向に沿って、前記ハニカム触媒体全長の1/4の長さまでの部分であることを示す。
【0117】
また、表4中、「触媒担持量(g/L)」の欄中「上流1/2」とは、第一の領域が、ハニカム触媒体の一方の端面から、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体全長の1/2の長さまでの部分であるハニカム触媒体の、第二の領域の単位体積当りの触媒の担持量を示し、「下流1/2」とは、第一の領域が、ハニカム触媒体の一方の端面から、セルの連通方向に沿って、ハニカム触媒体全長の1/2の長さまでの部分であるハニカム触媒体の、第一の領域の単位体積当りの触媒の担持量を示す。
【0118】
(実施例42〜81、比較例21〜39)
実施例41と同様な方法で、ハニカムセグメントを作製し、作製したハニカムセグメントを組み合わせて、ハニカム触媒体を作製した。得られたハニカム触媒体について上述した各種評価を行った。評価結果を表4〜表7に示す。
【0119】
【表4】

【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
【表7】

【0123】
表1〜7から明らかなように、実施例1〜81のハニカム触媒体は、比較例1〜39のハニカム触媒体に比べて、効果的に粒子状物質を捕捉して除去することができ、触媒を選択的に担持させているため触媒の使用量が少なり、製造コストが低く、圧力損失の増加率が小さいことが確認できた。また、容易に製造することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のハニカム触媒体は、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業機械用定置エンジン等の内燃機関、その他の燃焼機器等から排出される排ガス中の粒子状物質を排ガス中から除去するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明のハニカム触媒体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すハニカム触媒体の中心軸に沿う方向の断面図である。
【図3】本発明のハニカム触媒体の別の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3の実施形態のハニカム触媒体を模式的に示す断面図である。
【図5】図3の実施形態のハニカム触媒体の変形例を模式的に示す断面図である。
【図6】図3の実施形態のハニカム触媒体の変形例を模式的に示す断面図である。
【図7】図3の実施形態のハニカム触媒体の変形例を模式的に示す断面図である。
【図8】図3の実施形態のハニカム触媒体の変形例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0126】
11a,11b:端面、12:セル、14:目封止部、21:第一の領域、22:第二の領域、26:隔壁、31:接合材層、32:外周コート層、100,200,201,202,203,204:ハニカム触媒体、103:ハニカムセグメント、110:積層体、111a:一方の端面、111b:他方の端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの端面間を連通する複数のセルが形成されるように配置された、多数の細孔を持った多孔質の隔壁を有する修飾ハニカム構造体と、前記隔壁の所定箇所に担持された触媒と、を備え、
前記修飾ハニカム構造体は、
前記細孔の内表面に多数の微粒子が付着した修飾隔壁を有し、一方の端面の少なくとも一部を包摂する第一の領域と、
前記微粒子が付着していない未修飾隔壁を有し、他方の端面の少なくとも一部を包摂する第二の領域と、を含み、
前記修飾隔壁の気孔率は、前記未修飾隔壁の気孔率に比して小さく、
前記第一の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量が、前記第二の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量に比して少ないハニカム触媒体。
【請求項2】
前記修飾ハニカム構造体が、前記一方の端面の一部を包摂する、前記微粒子が付着されない非修飾隔壁を有する第三の領域を更に含む請求項1に記載のハニカム触媒体。
【請求項3】
前記第一の領域は、前記ハニカム触媒体の中央から外周に向かって前記ハニカム触媒体の半径の2/5〜1/1までの部分であるとともに、前記ハニカム触媒体の一方の端面から、前記セルの連通方向に沿って、前記ハニカム触媒体全長の1/10〜1/2の長さまでの部分である請求項1に記載のハニカム触媒体。
【請求項4】
複数個のセグメントを組み合わせて接合一体化することにより形成された請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
【請求項5】
外周部に位置する外周セグメントと、その内側に位置する中央セグメントと、を備え、
前記第一の領域は、前記中央セグメントの一方の端面から、前記セルの連通方向に沿って、前記中央セグメント全長の1/10〜1/2の長さまでの部分である請求項4に記載のハニカム触媒体。
【請求項6】
前記修飾ハニカム構造体の前記隔壁の気孔率が、30〜80%である請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
【請求項7】
前記修飾ハニカム構造体の前記隔壁の平均細孔径が、5〜40μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
【請求項8】
前記第二の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量が、5〜50g/Lである請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
【請求項9】
前記第一の領域の単位体積当りの前記触媒の担持量が、0〜40g/Lである請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
【請求項10】
下記式(1)を満たす請求項1〜9のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
式(1):2≦X−Y≦20
(但し、Xは、前記未修飾隔壁の気孔率(%)であり、Yは、前記修飾隔壁の気孔率(%)である)
【請求項11】
下記式(2)を満たす請求項1〜10のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
式(2):0.1≦A−B≦10
(但し、Aは、前記未修飾隔壁の平均細孔径(μm)であり、Bは、前記修飾隔壁の平均細孔径(μm)である)
【請求項12】
所定のセルにおける一方の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける他方の開口端部を目封止する目封止部を備えた請求項1〜11のいずれか一項に記載のハニカム触媒体。
【請求項13】
前記一方の端面側のセルの開口率が、前記他方の端面側のセルの開口率より大きい請求項12に記載のハニカム触媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−233582(P2009−233582A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83285(P2008−83285)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】