説明

ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウム含有酸化染毛剤第II剤、及び酸化染毛剤

【課題】酸化染毛剤において、油分量の多い高粘度クリーム状第I剤を用いた場合でも、容易且つ簡便に第II剤との混合時粘度を13000cps以下にすることができ、その結果、均一混合作業や施術(染毛処理)をスピードアップして素早く行うことができ、またコーミングが不要となり毛髪への負担を軽減でき、更には毛髪内部に染毛剤が浸透し易くなり染色力を向上でき、そして所謂、「ピンポイント」の施術も容易となる技術手段を提供することを目的とする。
【解決手段】酸化剤、及びハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウム0.3〜3.0重量%含有することを特徴とする酸化染毛剤第II剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、酸化染毛剤第II剤、及び酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化染料を含有する第I剤と酸化剤を含有する第II剤から成る酸化染毛剤において、第I剤としてはクリーム状タイプ、第II剤としては液状タイプが一般に知られている。
【0003】
クリーム状第I剤には、油分が配合されており、これにより種々の効能[毛髪の風合い・感触・明度、粘着性(毛髪への乗り具合)等]が付与される。従って、油分量を多くすると、これらの効能をより向上させ、より十分・高度に付与することができる。
【0004】
しかし、その一方、クリーム状第I剤の油分量を多くすると粘度が大きくなり、その結果、第II剤との混合時粘度も大きくなることがある。そのため、これら2剤の均一混合作業や施術(染毛処理)に時間がかかる、念入りなコーミングが必要となり毛髪を損傷する、毛髪内部に染毛剤が浸透しにくく染色力が低下する、或いは所謂、ピンポイントの施術が困難である、といった問題があった。
【0005】
ところで、特許文献1(請求項3)には、油分量を抑えることなく、これらの問題を解消するため、粒子状油分を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−77114号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記粒子状油分は、特殊な構成のものであり、入手が容易でなく、またその製造コスト・時間等もかかる、といった問題がある。
【0008】
上記事情に鑑み、本願発明は、油分量の多い高粘度クリーム状第I剤を用いた場合でも、容易且つ簡便に第II剤との混合時粘度を13000cps以下にすることができ、その結果、均一混合作業や施術(染毛処理)をスピードアップして素早く行うことができ、またコーミングが不要となり毛髪への負担を軽減でき、更には毛髪内部に染毛剤が浸透し易くなり染色力を向上でき、そして所謂、「ピンポイント」の施術も容易となる技術手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願発明者が鋭意、検討した結果、ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムが優れた低粘作用を有することを見出し、本願発明を成すに到った。
【0010】
即ち、本願第1発明は、酸化剤、及びハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウム0.3〜3.0重量%含有することを特徴とする酸化染毛剤第II剤を提供する。
【0011】
本願第2発明は、更に、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム及び/又はハロゲン化ステアリルトリメチルアンモニウムを含有することを特徴とする本願第1発明の酸化染毛剤第II剤を提供する。
【0012】
本願第3発明は、乳液状であることを特徴とする本願第1発明又は第2発明の酸化染毛剤第II剤を提供する。
【0013】
本願第4発明は、アルカリ剤を含有する第I剤と酸化剤を含有する第II剤とから成る酸化染毛剤において、第II剤が本願第1発明〜第3発明の何れかのものであることを特徴とする酸化染毛剤を提供する。
【0014】
本願第5発明は、第I剤と第II剤の混合物が、油分を混合物全体につき5重量%以上含有し且つ混合時粘度が13000cps以下であることを特徴とする本願第4発明の酸化染毛剤を提供する。
【0015】
本願第6発明は、第I剤が、油分を第I剤につき10重量%以上含有し且つ粘度20000cps以上のクリーム状であることを特徴とする本願第4発明又は第5発明の酸化染毛剤を提供する。
【0016】
本願第7発明は、油分が、C12〜22アルコール、炭化水素、エステル、トリグリセライド、シリコーン、油脂、及びロウの内、一種以上であることを特徴とする本願第5発明又は第6発明の酸化染毛剤を提供する。
【0017】
本願第8発明は、本願第4発明〜第7発明の何れかの酸化染毛剤に用いられる第II剤を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明により、油分量の多い高粘度クリーム状第I剤を用いた場合でも、容易且つ簡便に第II剤との混合時粘度を13000cps以下にすることができ、その結果、均一混合作業や施術(染毛処理)をスピードアップして素早く行うことができ、またコーミングが不要となり毛髪への負担を軽減でき、更には毛髪内部に染毛剤が浸透し易くなり染色力を向上でき、そして所謂、「ピンポイント」の施術も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第II剤中の塩化アルキルトリメチルアンモニウム含量と、第I剤と第II剤混合時の粘度、との関係を示す片対数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明を詳述する。
【0021】
本願発明に係る酸化染毛剤第II剤には、酸化剤を含有する。酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等)、過ホウ酸塩(過ホウ酸ナトリウム等)、過炭酸塩(過炭酸ナトリウム等)、臭素酸塩(臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等)が挙げられ、これらの一種以上使用してよい。好ましくは、過酸化水素である。
【0022】
本願発明に係る酸化染毛剤第II剤には、ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムを含有することを特徴とする。ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムは、第I剤と混合したときの粘度を大きく低下させる機能を有する。
【0023】
具体的には、ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムとしては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム及び臭化ラウリルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、これらの何れか一種又は二種以上を用いることができる。
【0024】
本願発明に係る酸化染毛剤第II剤には、添加剤として、界面活性剤、油分、キレート剤、pH調整剤、多価アルコール、防腐剤、安定剤(フェナセチン等)、カチオン化ポリマー(ポリ塩化ジメチルピペリジニウム等)等の一種以上、用いることができる。
【0025】
界面活性剤としては、カチオン界面活性剤が挙げられる。カチオン界面活性剤を加えることにより、第I剤との混合時粘度がより良好になり、また毛髪に風合い(滑らかさ等)及び粘着性(毛髪への乗り)等を付与することができる。カチオン界面活性剤としては、例えばハロゲン化C14〜C22アルキルトリメチルアンモニウム(ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムを除く。)、具体的には塩化又は臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化又は臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化又は臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、これらの一種以上、用いることができる。
【0026】
他の界面活性剤としては、非イオン界面活性剤が挙げられる。非イオン界面活性剤は、乳化剤としての機能を有する。非イオン界面活性剤としては、例えば、POE(20〜50モル)C12〜C22アルキルエーテル[POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル等]及びPOE脂肪酸エステル[POEラウリン酸、POEステアリン酸等]等が挙げられ、これらの一種以上、用いることができる。
【0027】
油分としては、高級アルコール、炭化水素、エステル、トリグリセライド、シリコーン、油脂、及びロウ等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0028】
高級アルコールとしては、C12〜22アルコールが好ましい。具体的には、高級アルコールとしては、セタノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール、キミルアルコール、バチルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。粘着性(毛髪への乗り)等の観点から、特にセタノールが好ましい。
【0029】
炭化水素としては、固形又は流動パラフィン(ワックス)、スクワラン、スクワレン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0030】
エステルとしては、低級アルコール脂肪酸エステル類(オレイン酸エチル、アボカド油脂肪酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、ラノリン脂肪酸イソプロピル等);高級アルコール脂肪酸エステル類(ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、コハク酸ジオクチル等);高級アルコールオキシ酸エステル類(乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル等);多価アルコール脂肪酸エステル類(トリオレイン酸グリセリド、トリイソステアリン酸グリセリド、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリド、ジオレイン酸プロピレングリコール等)等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0031】
トリグリセライドとしては、C12〜C22アルキルのトリグリセライド、具体的にはミリスチン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0032】
シリコーンとしては、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、有機変性ポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0033】
油脂としては、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、アボカド油、ゴマ油、茶油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ククイナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、パーシック油、ティートリー油、ハッカ油、硬化ヒマシ油、カカオ脂、シア脂、木ロウ、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、乳脂、馬脂、卵黄油、ミンク油、タートル油等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0034】
ロウとしては、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、水素添加ホホバ油、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、オレンジラッフィー油等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0035】
キレート剤としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸、エデト酸、エデト酸・2Na、エデト酸四ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ(メチレンスルホン酸)・5Na、アミノトリ(メチレンスルホン酸)、ヒドロキシエチレンジアミントリ酢酸・3Na、クエン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、フィチン酸等が挙げられる。
【0036】
本願発明に係る酸化染毛剤第II剤において、上記添加剤の内、カチオン界面活性剤(特に、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム及び/又はハロゲン化ステアリルトリメチルアンモニウム)を含有するのが好ましい。
【0037】
本願発明に係る酸化染毛剤第II剤の組成において、第II剤につき、酸化剤は0.5〜6.5(特に2.0〜6.0)重量%、非イオン界面活性剤は0.3〜3.0(特に0.5〜2.0)重量%、油分は2〜6(特に3〜5)重量%[就中、高級アルコールは0.5〜5.0(特に1.0〜4.0)重量%]が、それぞれ好ましい。
【0038】
ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムは、第II剤につき、0.3〜3.0[好ましくは0.5〜2.5(最も好ましくは0.7〜2.0)]重量%である。ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムが多過ぎると、酸化染毛剤が毛髪に乗りにくく、また垂れることがある。
【0039】
ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムを含むカチオン界面活性剤全体の総量は、第II剤につき、0.3〜3.5(特に1.0〜2.5)重量%が好ましい。カチオン界面活性剤が多過ぎると、毛髪の風合い(滑らかさ等)が悪くなることがある。
【0040】
本願発明に係る酸化染毛剤第II剤の剤型としては、通常、乳液状であるが、液状、クリーム状、ジェル状、フォーム状、その他の剤型であってもよい。
【0041】
乳液状である場合、その粘度は500〜3000(特に1000〜2500)cpsが好ましい。
【0042】
本願発明に係る酸化染毛剤は、第I剤と第II剤から成る。第I剤には、アルカリ剤を含有する。アルカリ剤としては、具体的にはアンモニア、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミン又はその塩、水酸化ナトリウム等の水酸化物塩等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0043】
第I剤には、酸化染料を含有するのが好ましい。酸化染料としては、例えば染料中間体及び/又はカップラーが挙げられる。染料中間体としては、例えばフェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類およびそれらの塩等が挙げられる。具体的には酸化染料において染料中間体としては、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、2−クロロ−パラフェニレンジアミン、N−メトキシエチル−パラフェニレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、2−(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、2,6−ジメチル−パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、1,3−ビス(N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(4−アミノフェニル)アミノ)−2−プロパノール、PEG−3,2,2’−パラフェニレンジアミン、
【0044】
パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−アミノメチル−4−アミノフェノール、2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−4−アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2−アミノ−5−メチルフェノール、2−アミノ−6−メチルフェノール、2−アミノ−5−アセタミドフェノール、3,4−ジアミノ安息香酸、5−アミノサリチル酸、2,4,5,6−テトラアミノピリミジン、2,5,6−トリアミノ−4−ヒドロキシピリミジン、4,5−ジアミノ−1−(4’−クロロベンジル)ピラゾール、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0045】
カップラーとしては、具体的にはメタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4−ジアミノ−5−メチルフェネトール、2,4−ジアミノ−5−(2−ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4−ジメトキシ−1,3−ジアミノベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4−ジアミノ−5−フルオロトルエン、1,3−ビス(2,4−ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2−メチル−5−アミノフェノール、2−メチル−5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4−ジクロロ−3−アミノフェノール、2−クロロ−3−アミノ−6−メチルフェノール、2−メチル−4−クロロ−5−アミノフェノール、N−シクロペンチル−メタアミノフェノール、2−メチル−4−メトキシ−5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2−メチル−4−フルオロ−5−アミノフェノール、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、4−クロロレゾルシン、
【0046】
1−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、4−ヒドロキシインドール、5−ヒドロキシインドール、6−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシインドール、6−ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4−メチレンジオキシフェノール、2−ブロモ−4,5−メチレンジオキシフェノール、3,4−メチレンジオキシアニリン、1−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3,4−メチレンジオキシベンゼン、2,6−ジヒドロキシ−3,4−ジメチルピリジン、2,6−ジメトキシ−3,5−ジアミノピリジン、2,3−ジアミノ−6−メトキシピリジン、2−メチルアミノ−3−アミノ−6−メトキシピリジン、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン、2,6−ジアミノピリジン、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
【0047】
第I剤には、油分を含有するのが好ましい。油分を含有することにより、剤型をクリーム状とすることができ、更に所望の毛髪の風合い・感触・明度、粘着性(毛髪への乗り具合)等を付与することができる。油分としては、前記酸化染毛剤第II剤において例示したものが挙げられる。
【0048】
第I剤には、添加剤として、前述の酸化染毛剤第II剤において例示したもの(界面活性剤、キレート剤、多価アルコール、防腐剤、安定剤、カチオン化ポリマー等)を含有することができる。
【0049】
第I剤には、更に他の添加剤として、酸化防止剤(L−アスコルビン酸等、亜硫酸ナトリウム、L−システイン、アセチルシステイン、チオ乳酸、システアミン、チオグリコール酸、BHT、トコフェロール等)を含有することができる。
【0050】
尚、第I剤には、ハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウムを含有してもよい。但し、第II剤に含有せず第I剤のみに含有させた場合、第I剤と第II剤の混合時に十分な粘度低下が起こらないことがある。
【0051】
第I剤の組成において、アルカリ剤を第I剤のpHが7.5〜13.0(特に8.0〜12.0)となる量、含有するのが好ましい。また、第I剤につき、酸化染料を0重量%以上[特に0.1〜6.0(就中0.3〜3.0)重量%]、油分を10重量%以上(特に15〜40重量%)、界面活性剤を2.0〜10.0(特に3.0〜7.0)重量%、それぞれ含有するのが好ましい。
【0052】
第I剤の剤型としては、クリーム状が好ましい。クリーム剤型は、油分量が多く、その結果、優れた毛髪の風合い・感触・明度、粘着性(毛髪への乗り具合)等を十分且つ高度に付与することができる。
【0053】
第I剤の粘度は、20000cps以上(特に25000〜60000cps)が好ましい。粘度が低過ぎると、クリーム剤型が安定せず、また、第II剤との混合時、粘度が低すぎ毛髪に乗りにくく、垂れることがある。
【0054】
本願発明に係る酸化染毛剤において、第II剤としては、前述の本願発明に係る酸化染毛剤第II剤が用いられる。
【0055】
本願発明に係る酸化染毛剤において、第I剤と第II剤の構成(又は使用)重量比(第I剤/第II剤)は、1/1〜1/2(特に1/1)が好ましい。
本願発明に係る酸化染毛剤は、第I剤と第II剤に加え、更に他剤を含んでもよい。
【0056】
本願発明に係る酸化染毛剤の組成において、第I剤と第II剤の混合物全体につき、油分含量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、最も好ましくは12.5〜20.0重量%である。油分が少な過ぎると、優れた毛髪の風合い・感触・明度、粘着性(毛髪への乗り具合)等を十分且つ高度に付与することができないことがある。
【0057】
上記のようにして構成される本願発明に係る酸化染毛剤は、第I剤と第II剤の混合時において、混合物[例えば、1/1(重量比)混合物]の粘度は、13000cps以下が良く、好ましくは800〜8000cps、より好ましくは1000〜5000cps、最も好ましくは1000〜2500cpsである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例にて、本願発明を更に具体的に詳述する。
<酸化染毛剤第I剤の調製>
表1に従って、各配合成分を均一混合して、クリーム状第I剤(各調製例I−1〜I−3)を調製した。
【0059】
<酸化染毛剤第II剤の調製>
表2〜5に従って、各配合成分を均一混合して、乳液状第II剤(各実施例II−1〜II−17、及び比較例II−1〜II−9)を調製した。
【0060】
<酸化染毛剤の作製>
表2〜5に従って、第I剤と第II剤(1/1重量比)から構成される酸化染毛剤(各実施例1〜17、並びに比較例1a、1b及び2〜9)を作製した。
【0061】
<各種評価試験>
下記の試験方法により、各種評価試験を行った。評価試験結果を表1〜5に示す。
・粘度測定(B型粘度計、測定時間1分)
【0062】
第I剤の粘度測定条件:
測定範囲5000〜50000cps、ロータNo.4、12rpm。
【0063】
第II剤の粘度測定条件:
測定範囲100〜1000cps、ロータNo.2、30rpm。測定範囲400〜4000cps、ロータNo.3、30rpm。
【0064】
混合時粘度測定条件:
測定範囲100〜1000cps、ロータNo.2、30rpm。測定範囲400〜4000cps、ロータNo.3、30rpm。測定範囲5000〜50000cps、ロータNo.4、12rpm。
【0065】
以下の各種評価試験においては、ウィッグとして市販のものを用いた。また、専門パネラー(美容師)が、以下の各評価基準に従い、評価した。
【0066】
・酸化染毛剤の塗布性
アプリケーターにて第I剤と第II剤の混合物を毛髪上に塗布し、指の腹にて延ばして、官能評価した。「5」は「塗布時の伸びが非常に良く、毛髪への付着性も高い」、「4」は「塗布時の伸びが良く、毛髪への付着性も高い」、「3」は「塗布時の伸び及び付着性が適度にある」、「2」は「塗布時の伸び及び毛髪への付着性の、少なくとも何れかが悪い」、「1」は「塗布時の伸び及び毛髪への付着性の、少なくとも何れかが非常に悪い」、を表す。
【0067】
・酸化染毛剤の染色力
JIS 染色堅ろう度試験用・添付白布に第I剤と第II剤の混合物を塗布し25℃で20分間放置した後、水洗、乾燥(風乾)して、評価した。尚、比較例5の酸化染毛剤の染色力を基準にした。「5」は「基準より非常に良い」、「4」は「基準より良い」、「3」は「基準と同程度」、「2」は「基準より悪い」、「1」は「基準より非常に悪い」、を表す。
【0068】
・第I剤と第II剤の混合物の垂れ
第I剤と第II剤(重量比1/1)を均一混合したクリームをウィッグの毛髪に塗布し、塗布時のクリームの垂れを、目視観察により評価した。「5」は「全く垂れない」、「4」は「殆ど垂れない」、「3」は「やや垂れる」、「2」は「垂れる」、「1」は「非常に垂れる」、を表す。
【0069】
・毛髪の風合い(滑らかさ)
第I剤と第II剤(重量比1/1)を均一混合したクリームをウィッグの毛髪に塗布し、塗布後20〜30分放置後、濯ぎ、シャンプー、濯ぎ、タオルドライ、そして乾燥の各毛髪処理を行った後、風合いを官能評価した。「5」は「非常に滑らか」、「4」は「滑らか」、「3」は「未処理のウィッグと同程度」、「2」は「やや軋みがある」、「1」は「軋みがある」、を表す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
図1は、横軸を第II剤中の塩化アルキルトリメチルアンモニウム含量,縦軸(対数目盛り)を第I剤と第II剤混合時の粘度として、表2〜5の結果をプロットして作成したものである。
【0076】
図1から明らかなように、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムを用いた場合、約0.2wt%近傍から粘度の急激な低下が始まり、約0.3wt%近傍で約13000cps、即ち混合が容易な粘度レベルにまで低下する。
【0077】
一方、他の塩化アルキル(セチル、ステアリル、ベヘニル等)トリメチルアンモニウムを用いた場合、その含量を増やしていっても、粘度の急激な低下は見られない(比較例1a、1b、5〜7)。
【0078】
このことから、塩化アルキルトリメチルアンモニウムの内、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムのみが特異的な挙動を示すことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤、及びハロゲン化ラウリルトリメチルアンモニウム0.3〜3.0重量%含有することを特徴とする酸化染毛剤第II剤。
【請求項2】
更に、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム及び/又はハロゲン化ステアリルトリメチルアンモニウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の酸化染毛剤第II剤。
【請求項3】
乳液状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化染毛剤第II剤。
【請求項4】
アルカリ剤を含有する第I剤と酸化剤を含有する第II剤とから成る酸化染毛剤において、第II剤が請求項1〜3の何れかに記載のものであることを特徴とする酸化染毛剤。
【請求項5】
第I剤と第II剤の混合物が、油分を混合物全体につき5重量%以上含有し且つ混合時粘度が13000cps以下であることを特徴とする請求項4に記載の酸化染毛剤。
【請求項6】
第I剤が、油分を第I剤につき10重量%以上含有し且つ粘度20000cps以上のクリーム状であることを特徴とする請求項4又は5に記載の酸化染毛剤。
【請求項7】
油分が、C12〜22アルコール、炭化水素、エステル、トリグリセライド、シリコーン、油脂、及びロウの内、一種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の酸化染毛剤。
【請求項8】
請求項4〜7の何れかに記載の酸化染毛剤に用いられる第II剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−20988(P2011−20988A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185209(P2009−185209)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(591028980)山栄化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】