説明

ハンガーラインへのワーク供給装置及び方法

【課題】移動する複数のハンガーのフックに、ハンガーの移動を停止することなく、かつフックの方向を制限することなく、特別な付帯設備を用いずに、ワークを安全かつ確実に吊下げることができ、ハンガーラインの速度を高めることができるハンガーラインへのワーク供給装置及び方法を提供する。
【解決手段】ワーク1を把持するハンド11を有し該ハンドを3次元的に移動可能なロボット12と、ロボットを制御するロボット制御装置と、ハンガーライン2内を移動するハンガー3の画像を撮影する撮像装置16と、ロボット制御装置へハンドの手先軌道を出力するリアルタイム計算機とを備える。撮影画像に基づきハンガー3に設けられたフック4の位置と姿勢を検出し、この検出結果に基づいてロボット12をフィードバック制御し、ワーク1を把持したハンド11をフック4の移動に追従させて移動しワーク1をフック4に吊下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーラインへのワーク供給装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の外面塗装などを行うための生産ラインとしてハンガーラインが知られている。
ハンガーラインは、ワークを吊り下げる複数のハンガーが搬送ライン(コンベア)に取り付けられ、ハンガーに設けられたフック(吊下げ部)にワーク(又はワークの吊下げ治具)を引っ掛けて、吊り下げられた状態とすることでワークを供給し搬送する装置である。以下、フックを有するハンガーを単に「ハンガー」と呼ぶ。
【0003】
ハンガーラインにおいて、ハンガーに吊り下げられた状態で搬送されたワークは、例えば塗装装置内の塗装ブースを通過し、人、ロボット、又は自動装置によりスプレーガン等を用いて塗装される。次にワークは、搬送されながら自然乾燥又は乾燥装置により塗装面が乾燥され、次いで、ハンガーのフックから取り外して回収される。
一般的にハンガーラインは、閉じたループ状になっており、ワークの供給位置と回収位置は近傍で行われる。また上述の例では、ハンガーラインは塗装ラインであるが、ハンガーラインは、これに限定されず、その他のライン、例えばラインサイドへの部品供給などにも利用される。
【0004】
従来、上述したハンガーラインにおけるワークの供給は、移動するハンガーの速度に合わせながら、作業員がワークをハンガーのフックに吊下げることで通常行なわれていた。
また、これを自動化する手段として、特許文献1,2が既に提案され、既に一部で実施されている。
【0005】
特許文献1は、ハンガーを一旦流れから切り離し、定位置に停止させてワークの供給を行うものである。
特許文献2は、搬送コンベアと同期して移動する位置決め装置でハンガーに吊るされたワークをガイドし、これと同期するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2500122号公報、「ロボットハンドおよび該ロボットハンドを用いたワーク吊り下げ方法」
【特許文献2】特許第3195689号公報、「部材の移載方法およびその装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のワーク供給手段には、以下のような問題点があった。
(1)ワークの供給を手作業で行う場合、一連の塗装工程の所要時間が短い場合に、その所要時間に見合うようにワークを供給する必要があり、そのために多数の作業員が必要となる。
また、ハンガーラインにより吊り下げられ、振れ動く状態のワークに近接しながらの作業のため、ワークと人が接触する可能性や、ワークの掛け損ないによるワークと人の接触やワークの損傷の可能性がある。またそのため、ハンガーラインの高速化が困難である。
【0008】
(2)特許文献1の場合、ハンガーを一旦流れから切り離し、定位置に停止させ、ワークの吊り下げ完了後にハンガーラインに戻すために、特別な付帯設備等が必要となる。
また、特許文献1の場合、フックの方向が限定される場合にしか対応できない、もしくはフックの方向を事前にある方向又はある範囲にするための付帯設備等が必要となる。
さらに、特許文献1の実施例に示される複数のワークを同一のハンガーに掛ける場合では、フックにワークを掛けた後でも、ハンガー全体がワークの自重等で傾かないようなハンガー構成が必要となる。
【0009】
(3)特許文献2の場合、ハンガーに吊るされたワークを案内するための付帯設備が必要となる。
また、特許文献2の場合、フックの方向が限定される場合にしか対応できない、もしくはフックの方向を事前にある方向又はある範囲にするための付帯設備等が必要となる。
さらに、ハンガーやワークの動きではなく、それに吊るされたコンベアの動きをモニタし、かつガイドはハンガー又はワークに接触するため、ガイド内で接触時に外乱等でハンガーやワークが振れてしまうと、装置が停止する原因となる。もしくはそれらを吸収した上で移載可能とする移載装置が必要となる。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。
すなわち、本発明の目的は、ハンガーラインにおいて移動する複数のハンガーのフックに、ハンガーの移動を停止することなく、かつフックの方向を制限することなく、特別な付帯設備を用いずに、ワークを安全かつ確実に吊下げることができ、これにより人手に頼らずにハンガーラインへのワーク供給が可能となるとともに、ハンガーラインの速度を高めることができるハンガーラインへのワーク供給装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ワークを把持するハンドを有し該ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
該ロボットを制御するロボット制御装置と、
ハンガーライン内を移動するハンガーの画像を撮影する撮像装置と、
ロボット制御装置へハンドの手先軌道を出力するリアルタイム計算機と、を備え、
前記画像に基づき前記ハンガーに設けられたフックの位置と姿勢を検出し、該検出結果に基づいてワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて移動しワークをフックに吊下げる、ことを特徴とするハンガーラインへのワーク供給装置が提供される。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記リアルタイム計算機は、前記フックにワークを吊下げる供給基本軌道を記憶する記憶装置と、
前記画像に基づき前記フックの位置と姿勢を検出する画像処理装置と、
前記フックの位置と姿勢から、ワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて供給動作の初期位置まで移動させるアプローチ動作と、前記供給基本軌道に基づき移動するフックにワークを吊下げる供給動作とに必要なハンドの手先軌道を出力する軌道計算装置と、を備える。
【0013】
また、前記ハンガー又はフックは、画像処理用のマーカー又は特徴点を有しており、
前記画像処理装置は、前記マーカー又は特徴点に基づき前記フックの位置と姿勢を検出する。
【0014】
また、前記ロボットの鉛直な旋回中心が、ハンガーライン内のフックの移動経路の真上もしくは真下又は真上もしくは真下の近傍に設定されている、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、ワークを把持するハンドを有し該ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
該ロボットを制御するロボット制御装置と、
ハンガーライン内を移動するハンガーの画像を撮影する撮像装置と、
ロボット制御装置へハンドの手先軌道を出力するリアルタイム計算機と、を備え、
前記画像に基づき前記ハンガーに設けられたフックの位置と姿勢を検出し、該検出結果に基づいてワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて移動しワークをフックに吊下げる、ことを特徴とするハンガーラインへのワーク供給方法が提供される。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記リアルタイム計算機により、
前記フックにワークを吊下げる供給基本軌道を記憶する基本軌道記憶ステップ(A)と、
前記画像に基づき前記フックの位置と姿勢を検出するフック検出ステップ(B)と、
前記フックの位置と姿勢から、ワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて供給動作の初期位置まで移動させるアプローチ動作と、前記供給基本軌道に基づき移動するフックにワークを吊下げる供給動作とに必要なハンドの手先軌道を出力する軌道出力ステップ(C)と、を実行する。
【0017】
また、前記アプローチ動作において、前記フックの位置と姿勢で決まるフック座標に逐次座標変換して、フックとロボットの相対的な位置と姿勢が、前記供給基本軌道の初期位置になるように、前記手先軌道を生成する。
【0018】
また、前記供給動作において、前記フックの位置と姿勢で決まるフック座標に逐次座標変換して、フックとロボットの相対的な位置と姿勢が、前記供給基本軌道になるように、前記手先軌道を生成する。
【0019】
また、前記フックの姿勢に応じた複数の供給動作を予め記憶し、
検出した前記フックの姿勢をパラメータとして、前記複数の供給動作のうち1つを選択し該供給動作に切り換える、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上記本発明の装置及び方法によれば、撮像装置によりハンガーの画像を撮影し、前記画像に基づき前記ハンガーに設けられたフックの位置と姿勢を検出し、該検出結果に基づいて、ワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて移動しワークをフックに吊下げるので、
ハンガーラインにおいて移動する複数のハンガーのフックに、ハンガーの移動を停止することなく、かつフックの方向を制限することなく、特別な付帯設備を用いずに、ワークを安全かつ確実に吊下げることができ、これにより人手に頼らずにハンガーラインへのワーク供給が可能となるとともに、ハンガーラインの速度を高めることができる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるワーク供給装置の全体構成図である。
【図2】本発明によるワーク供給装置のシステム構成図である。
【図3】本発明によるハンガーラインへのワーク供給のイメージ図である。
【図4】フックの位置と姿勢を検出する手段の説明図である。
【図5】フックにワークを吊下げる供給基本軌道の説明図である。
【図6】吊下げ治具を用いたワークの吊下げの模式図である。
【図7】本発明によるワーク供給方法の全体フロー図である。
【図8】フックの姿勢に応じた2種の供給動作の説明図である。
【図9】ロボットの鉛直な旋回中心が、ハンガーライン内のフックの移動経路の真下又は真下近傍に設定されている場合の供給動作の説明図である。
【図10】複数フックをもつハンガーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明によるワーク供給装置の全体構成図であり、図2は、本発明によるワーク供給装置のシステム構成図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明のワーク供給装置10は、ロボット12、ロボット制御装置14、撮像装置16、及びリアルタイム計算機18を備える。
【0025】
ロボット12は、ワーク1を把持するハンド11を有し、このハンド11を3次元的に6自由度に移動可能なロボットである。
ワーク1は、その上部に吊下げリング1aを有する。吊下げリング1aは、ハンガーライン2内を移動するハンガー3に設けられたフック4に引っ掛けて、吊り下げるようになっている。
【0026】
この例でハンド11は、ロボット12のロボットアーム12aの手先部に搭載され、ワーク1を把持して移動できるようになっている。
ハンド11は、例えば吸着パッドであり、ワーク1を吸着して把持するようになっている。なおハンド11は、吸着パッドに限定されず、電磁パッドや機械的なハンドであってもよい。
【0027】
ロボット12は、この例では、所定の位置に固定された多関節ロボットであるが、本発明はこれに限定されず、その他のロボットであってもよい。
【0028】
ロボット制御装置14は、ロボット12を制御する。
すなわち、ロボット制御装置14は、ロボット12を制御してロボットアーム12aの手先軌道から各関節の回転量を算出し、ロボットアーム12aを動作させて、ハンド11を3次元的に6自由度に移動する。
【0029】
撮像装置16は、例えばCCDカメラ又はCMOSカメラであり、ハンガーライン2内を移動するハンガー3の画像を撮影する。
【0030】
なお、撮像装置16は、固定式のカメラに限定されず、ハンド又はロボットアームの手先部に取り付けたカメラであってもよい。また、撮像装置16は、1台に限定されず、2台以上が連携するようにしてもよい。
【0031】
図3は、本発明によるハンガーラインへのワーク供給のイメージ図である。
この図において、撮像装置16は、ハンガーライン2の上部に下向きに固定されており、ワーク1をフック4に吊下げるためのワーク供給エリア内でハンガーライン2内を移動するハンガー3のデジタル画像5を撮影し、リアルタイム計算機18(図2参照)へ逐次出力するようになっている。
デジタル画像5の画素数は、任意であるが、例えば、約30万画素(横640ピクセル×縦480ピクセル)を有する。また、撮像装置16は、デジタル画像5を一定の制御周期(例えば30fps:1秒間に30回)で撮影するようになっている。以下、デジタル画像を単に画像という。
【0032】
図4は、フックの位置と姿勢を検出する手段の説明図である。この図において、(A)はハンガー3を上方から撮影した画像5の模式図である。
なお、図10に示すように、ハンガーには複数フックが固定されているような場合も存在する。
図10のような場合、本発明において「フックの位置と姿勢を検出する」とは、ハンガー内のフック位置が固定されて、位置姿勢関係が既知の場合はハンガーの位置と姿勢を検出して、ハンガーの基準位置の位置と姿勢から各フックの位置と姿勢を算出する場合も含むものとする。
【0033】
図4(A)において、ハンガー3の上部にフック4の姿勢を示すマーカー6が設けられている。この例でフック4は一端が開いたループ状であり、ハンガー3の下方に取り付けられ、鉛直軸を中心に自由に揺動するようになっている。
マーカー6は、この例では揺動中心と同心の白丸6aと、フック4の開口部の方向に位置する黒丸6bからなる。フック4の姿勢とは、この例ではフック4の開口部の方向である。
画像5において、フックの基準座標系として、フックの基準位置を原点Oとし、ラインの送り方向をx軸、これに直交する水平方向をy軸、フック4のy軸に平行な軸からの回転角をθと定義する。
また、フック座標系として、フックの開口部の方向をy軸、これに直交する水平方向をx軸、鉛直方向をz軸と定義する。
この場合、フック4の移動距離Lを、画像5上の基準位置Oからの白丸6aの中心位置から検出することができる。また、フック4の開口部を示す回転角θを、白丸6aと黒丸6bの相対角度から検出することができる。
【0034】
図4(B)(C)は、撮像装置16とマーカーの別の実施形態図である。
これらの例において、フック4はハンガー3の下方に紐状部材(ワイヤやロープ)で自由に揺動するように吊り下げられている。
また、図4(B)において、フック4の複数箇所(この例で3箇所)にマーカー6が設けられ、ステレオカメラ等の撮像装置16によりマーカー6の3次元位置を計測し、フック4の6自由度の位置と姿勢を算出するようになっている。
さらに、図4(C)において、フック4の上端に取り付けた円板上に複数(この例で3つ)のマーカー6が設けられ、撮像装置16によりマーカー6の3次元位置を計測し、フック4の6自由度の位置と姿勢を算出するようになっている。
【0035】
リアルタイム計算機18は、例えばコンピュータであり、ロボット制御装置14へハンド11の手先軌道7を出力する。
【0036】
図2において、リアルタイム計算機18は、記憶装置18a、画像処理装置18b、及び軌道計算装置18cを有する。
記憶装置18aは、フック4にワーク1を吊下げる供給基本軌道8を記憶する。
なお、リアルタイム計算機は、例えば以下の(1)(2)(3)ような構成であってもよい。
(1)画像処理装置18b、軌道計算装置18c、記憶装置18a、ロボット制御装置14が1つのPC上などに置かれる一体のハードウェア構成、
(2)画像処理装置18b、軌道計算装置18c(+記憶装置18a)+ロボット制御装置14が全て異なるハードウェア構成、
(3)画像処理装置18bのみが計算機上にあり、軌道計算装置18c(+記憶装置18a)+ロボット制御装置14が同一のハードウェア構成。
そのほかに画像処理装置18bと軌道計算装置18cはハードウェア上、一体的に扱い、記憶装置18aだけロボット制御装置側にあって、リアルタイム通信等を利用してリアルタイム計算機側の追従軌道計算装置に逐次読み込むような構成であってもよい。
【0037】
図5は、フック4にワーク1を吊下げる供給基本軌道8の説明図である。
供給基本軌道8は、フック4の鉛直な揺動軸とフック4の開口部を含む鉛直平面内(すなわち、フック座標系におけるy軸−z軸を含む鉛直平面内)において、ワークの初期位置8aから供給動作の初期位置8bを経て供給動作の最終位置8cまでの軌道である。
この供給基本軌道8は、フック4の位置を原点とするフック座標系において予め教示し、記憶装置18aに記憶する。
【0038】
図6は、吊下げ治具を用いたワークの吊下げの模式図である。
この例において、フック4は一端が開いたループ状であり、ハンガー3の下方に取り付けられ、鉛直軸を中心に自由に揺動するようになっている。
またワーク1は、吊り下げ治具9を介して、ハンガーライン2内を移動するハンガー3に設けられたフック4に引っ掛けて、吊り下げるようになっている。
また、この場合、ロボット12は、吊り下げ治具9を把持するハンド11を有し、このハンド11を3次元的に6自由度に移動するようになっている。
その他の構成は、上述した図1〜図5と同様である。
【0039】
図2において、画像処理装置18bは、撮像装置16で撮影した画像5に基づき、上述したように、フック5の位置(移動距離L)と姿勢(回転角θ)を検出する。
【0040】
軌道計算装置18cは、画像処理装置18bで検出したフック4の位置と姿勢から、アプローチ動作と供給動作に必要なハンドの手先軌道7を出力する。
ここで、アプローチ動作は、ワーク1を把持したハンド11をフック4の移動に追従させてワークの初期位置8aから供給動作の初期位置8bまで移動させる動作である。また、供給動作は、上述した供給基本軌道8に基づき、移動するフック4にワーク1を吊下げる動作である。
なお、ロボット(アーム)を軌道制御する場合、TCP(ツールセンターポイント)を設定して、TCPの軌道を与える。また、ロボット制御装置は予め較正されたTCP−ロボットフランジ間の位置姿勢情報を用いて変換する。この際、ワークに引っ掛ける場所があるとすると、そのワークを引っ掛ける点をTCPとして軌道を与える等を行うのが、教示などの際、合理的である。
従って、本発明において、ハンドの手先軌道7とは、ハンドに把持されたワークの軌道であってもよく、任意に設定したTCPの軌道であってもよく、その両方を含むものとする。
【0041】
上述した構成により、本発明のワーク供給装置10は、画像5に基づきハンガー3に設けられたフック4の位置と姿勢を検出し、この検出結果に基づいてロボット12をフィードバック制御し、ワーク1を把持したハンド11をフック4の移動に追従させて移動しワーク1をフック4に吊下げるようになっている。
【0042】
図7は、本発明によるワーク供給方法の全体フロー図である。
この図に示すように、本発明のワーク供給方法は、上述した装置を用いて、S1〜S9の各工程(ステップ)を実施し、画像5に基づきハンガー3に設けられたフック4の位置と姿勢を検出し、この検出結果に基づいてロボット12をフィードバック制御し、ワーク1を把持したハンド11をフック4の移動に追従させて移動しワーク1をフック4に吊下げる。
【0043】
すなわち、リアルタイム計算機18により、フック4にワーク1を吊下げる供給基本軌道を記憶する基本軌道記憶ステップ(A)を予め実施する。この段階では、事前準備として、フック4の位置を原点とするフック座標系において供給基本軌道を教示しておく。
また、ロボット12はワーク供給位置でワーク1を把持し、動作初期位置で待機する(S1)。
【0044】
次いで、S2において、フック4が撮像装置16の視野内に入ったことを検出する。
次いで、S3において、撮像装置16によりハンガーライン2内を移動するハンガー3の画像5を撮影し、画像処理装置18bによるフック4の位置と姿勢を検出する逐次計算(フック検出ステップ(B))を開始する。
【0045】
次いで、検出されたフック4の位置と姿勢から、ワーク1を把持したハンド11をフック4の移動に追従させてワークの初期位置8aから供給動作の初期位置8bまで移動させるアプローチ動作(S4)を、初期相対位置の偏差が閾値以内になるまで実施する(S5)。
このアプローチ動作(S4)において、フック4の位置と姿勢で決まるフック座標系に逐次座標変換して、フック4とロボット12の相対的な位置と姿勢が、上述した供給基本軌道の初期位置8bになるように、手先軌道7を生成する。
【0046】
S5において、初期相対位置の偏差が閾値以内になった後に、上述した供給基本軌道8に基づき、移動するフック4にワーク1を吊下げる供給動作(S6)を、終了相対位置の偏差が閾値以内になるまで実施する(S7)。
この供給動作(S6)において、フック4の位置と姿勢で決まるフック座標に逐次座標変換して、フック4とロボット12の相対的な位置と姿勢が、上述した供給基本軌道8になるように、手先軌道7を生成する。
【0047】
S7において、終了相対位置の偏差が閾値以内になった後に、撮像装置16と画像処理装置18bによるフック4の位置と姿勢を検出する逐次計算(フック検出ステップ(B))を終了し(S8)、ロボット12がワーク1を開放し、初期位置へ移動して(S9)、本発明によるワーク供給が終了する。
【0048】
図8は、フックの姿勢に応じた2種の供給動作の説明図である。この図において、(A)はロボット12とハンガーライン2上のフック4の方向(開口部の向き)との関係図、(B)はフック4の方向がロボット側に位置する場合、(C)はフック4の方向がロボットの反対側に位置する場合の模式図である。
【0049】
図8(A)からわかるように、フック4の方向(開口部の向き)と、ハンガーライン2とロボット12の位置関係によっては、基本となる供給基本軌道8とアプローチ動作を座標変換のみで変更するだけでは、ロボット12とハンガー3との干渉、ロボット12の可動範囲の限界等から、上述したアプローチ動作と供給動作の実施が困難となる場合がある。
そこで、本発明では、フック4の姿勢に応じた複数の供給動作(図8(B)(C))を予め記憶し、検出したフック4の姿勢をパラメータとして、複数の供給動作のうち1つを選択しその供給動作に切り換えるようになっている。
【0050】
図9は、ロボット12の鉛直な旋回中心が、ハンガーライン内のフック4の移動経路の真下又は真下近傍に設定されている場合の供給動作の説明図である。
この図において、(A)はロボット12とハンガーライン2上のフック4の方向(開口部の向き)との関係図、(B)はフック4の方向がロボット側に位置する場合、(C)はフック4の方向がロボットの反対側に位置する場合の模式図である。
【0051】
この構成により、図8の例のように、フックの姿勢に応じた複数の供給動作(図8(B)(C))を予め記憶することなく、単にロボット12が旋回するだけで、上述したアプローチ動作と供給動作の実施が可能となる。
なお、ロボット12の鉛直な旋回中心が、ハンガーライン内のフック4の移動経路の真上又は真上近傍に天吊り等で設定されている場合も同様となる。
【0052】
上述した本発明の装置及び方法によれば、撮像装置16によりハンガー3の画像5を撮影し、この画像5に基づきハンガー3に設けられたフック4の位置と姿勢を検出し、この検出結果に基づいてロボット12をフィードバック制御し、ワーク1を把持したハンド11をフック4の移動に追従させて移動し、ワーク1をフック4に吊下げる。
従って、本発明の装置及び方法によれば、ハンガーライン2において移動する複数のハンガー3のフック4に、ハンガー3の移動を停止することなく、かつフック4の方向を制限することなく、特別な付帯設備を用いずに、ワーク1を安全かつ確実に吊下げることができ、これにより人手に頼らずにハンガーラインへのワーク供給が可能となるとともに、ハンガーライン2の速度を高めることができる。
【0053】
さらに、本発明の装置及び方法により以下の効果が得られる。
(1) 人とワーク1との接触の可能性を低減し、ワーク1の掛け損ないによるワーク1の破損等を低減することができる。
(2) ハンガーライン2から一旦切り離す特別な付帯設備を用いずに、ハンガーライン2へのワーク1の供給を自動化できる。
(3) ハンガー3に掛けた際のワーク1の自重でのハンガー自体の傾きや、フックの向きに左右されずに動作ができる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0055】
1 ワーク、1a 吊下げリング、2 ハンガーライン、
3 ハンガー、4 フック、5 デジタル画像、
6 マーカー、6a 白丸、6b 黒丸、7 手先軌道、
8 供給基本軌道、8a ワークの初期位置、
8b 供給動作の初期位置、8c 供給動作の最終位置、
9 吊り下げ治具、
10 ワーク供給装置、11 ハンド、
12 ロボット、12a ロボットアーム、
14 ロボット制御装置、16 撮像装置(カメラ)、
18 リアルタイム計算機、18a 記憶装置、
18b 画像処理装置、18c 軌道計算装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するハンドを有し該ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
該ロボットを制御するロボット制御装置と、
ハンガーライン内を移動するハンガーの画像を撮影する撮像装置と、
ロボット制御装置へハンドの手先軌道を出力するリアルタイム計算機と、を備え、
前記画像に基づき前記ハンガーに設けられたフックの位置と姿勢を検出し、該検出結果に基づいてワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて移動しワークをフックに吊下げる、ことを特徴とするハンガーラインへのワーク供給装置。
【請求項2】
前記リアルタイム計算機は、前記フックにワークを吊下げる供給基本軌道を記憶する記憶装置と、
前記画像に基づき前記フックの位置と姿勢を検出する画像処理装置と、
前記フックの位置と姿勢から、ワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて供給動作の初期位置まで移動させるアプローチ動作と、前記供給基本軌道に基づき移動するフックにワークを吊下げる供給動作とに必要なハンドの手先軌道を出力する軌道計算装置と、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のハンガーラインへのワーク供給装置。
【請求項3】
前記ハンガー又はフックは、画像処理用のマーカー又は特徴点を有しており、
前記画像処理装置は、前記マーカー又は特徴点に基づき前記フックの位置と姿勢を検出する、ことを特徴とする請求項2に記載のハンガーラインへのワーク供給装置。
【請求項4】
前記ロボットの鉛直な旋回中心が、ハンガーライン内のフックの移動経路の真上もしくは真下又は真上もしくは真下の近傍に設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のハンガーラインへのワーク供給装置。
【請求項5】
ワークを把持するハンドを有し該ハンドを3次元的に移動可能なロボットと、
該ロボットを制御するロボット制御装置と、
ハンガーライン内を移動するハンガーの画像を撮影する撮像装置と、
ロボット制御装置へハンドの手先軌道を出力するリアルタイム計算機と、を備え、
前記画像に基づき前記ハンガーに設けられたフックの位置と姿勢を検出し、該検出結果に基づいてワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて移動しワークをフックに吊下げる、ことを特徴とするハンガーラインへのワーク供給方法。
【請求項6】
前記リアルタイム計算機により、
前記フックにワークを吊下げる供給基本軌道を記憶する基本軌道記憶ステップ(A)と、
前記画像に基づき前記フックの位置と姿勢を検出するフック検出ステップ(B)と、
前記フックの位置と姿勢から、ワークを把持したハンドをフックの移動に追従させて供給動作の初期位置まで移動させるアプローチ動作と、前記供給基本軌道に基づき移動するフックにワークを吊下げる供給動作とに必要なハンドの手先軌道を出力する軌道出力ステップ(C)と、を実行することを特徴とする請求項5に記載のハンガーラインへのワーク供給方法。
【請求項7】
前記アプローチ動作において、前記フックの位置と姿勢で決まるフック座標に逐次座標変換して、フックとロボットの相対的な位置と姿勢が、前記供給基本軌道の初期位置になるように、前記手先軌道を生成する、ことを特徴とする請求項6に記載のハンガーラインへのワーク供給方法。
【請求項8】
前記供給動作において、前記フックの位置と姿勢で決まるフック座標に逐次座標変換して、フックとロボットの相対的な位置と姿勢が、前記供給基本軌道になるように、前記手先軌道を生成する、ことを特徴とする請求項6に記載のハンガーラインへのワーク供給方法。
【請求項9】
前記フックの姿勢に応じた複数の供給動作を予め記憶し、
検出した前記フックの姿勢をパラメータとして、前記複数の供給動作のうち1つを選択し該供給動作に切り換える、ことを特徴とする請求項6に記載のハンガーラインへのワーク供給方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−161616(P2011−161616A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30270(P2010−30270)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】