説明

ハンドルバー用スイッチ装置

【課題】操作レバーのハンドルバーとの当接面に入り込んだ砂等の粒子状異物を当該操作レバーの回動操作に伴って除去することができ、その回動操作性を維持することができるハンドルバー用スイッチ装置を提供する。
【解決手段】車両におけるハンドルバーHに取り付けられ、運転者が操作し得る所定の操作スイッチが形成されたスイッチケース1と、ハンドルバーHの外周面と当接しつつ当該外周面の周方向に延びた当接面2bを有し、当該ハンドルバーHの周方向へ回動操作が可能とされた操作レバー2とを具備したハンドルバー用スイッチ装置において、操作レバー2は、その当接面2bに、ハンドルバーHの軸方向へ延びる溝a、bを有し、当該溝a、bは操作レバー2の少なくとも一方の側面(c又はd)まで延びて形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるハンドルバーに取り付けられ、運転者が操作し得る所定の操作スイッチが形成されたスイッチケースと、ハンドルバーの外周面と当接しつつ当該外周面の周方向に延びた当接面を有し、当該ハンドルバーの周方向へ回動操作が可能とされた操作レバーとを具備したハンドルバー用スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二輪車が具備する操舵用のハンドルバーの左側及び右側先端には、運転者が走行中に把持し得る把持グリップが取り付けられており、この把持グリップと隣接した位置にはハンドルバー用スイッチ装置が固定されている。かかるハンドルバー用スイッチ装置として、例えば図8で示すように、複数の操作スイッチ(ターンシグナルスイッチ、ホーンスイッチ、ディマースイッチ等)が形成されたスイッチケース101と、該スイッチケース101に形成された操作レバー102とを有したものがある。
【0003】
操作レバー102は、同図に示すように、運転者が摘んで操作し得る摘み部102aと、ハンドルバーH(ハンドルパイプ)の外周面と当接しつつ当該外周面の周方向に延びた当接面102bとを有し、全体として側面視略C字状に形成されており、摘み部102aを指で摘みつつ操作すると、操作レバー102全体が当該ハンドルバーHの周方向へ回動して所定の操作が可能とされている。この操作レバー102には、例えば図示しないワイヤが接続されており、回動操作することにより当該ワイヤを介して車両のチョークを操作し得るよう構成されている。
【0004】
かかるスイッチケース101内には、操作レバー102の外周面と当接する当接部材103と、該当接部材103を操作レバー102側へ付勢するコイルスプリング104とを有した保持手段が配設されており、操作レバー102がハンドルバーHの外周面に沿って回動する際に摩擦力を付与し、所定の位置で当該操作レバー102を保持し得るよう構成されている。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のハンドルバー用スイッチ装置においては、図9に示すように、例えば操作レバー102の当接面102bにおける端縁102c、102d側から砂等の粒子状異物が入り込んだ場合、そのままの状態で操作レバー102の回動操作を行ってしまうと、図10に示すように、当該砂等が当接面102b内側まで巻き込まれて入り込んでしまう虞があった。このように、砂等が当接面102bの内側まで入り込み、当該当接面102b全域とハンドルバーHとの間に残存してしまうと、その後の回動操作時に砂等を噛み込んでしまい、操作を良好に行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、操作レバーのハンドルバーとの当接面に入り込んだ砂等の粒子状異物を当該操作レバーの回動操作に伴って除去することができ、その回動操作性を維持することができるハンドルバー用スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両におけるハンドルバーに取り付けられ、運転者が操作し得る所定の操作スイッチが形成されたスイッチケースと、前記ハンドルバーの外周面と当接しつつ当該外周面の周方向に延びた当接面を有し、当該ハンドルバーの周方向へ回動操作が可能とされた操作レバーとを具備したハンドルバー用スイッチ装置において、前記操作レバーは、その当接面に、前記ハンドルバーの軸方向へ延びる溝を有し、当該溝は前記操作レバーの少なくとも一方の側面まで延びて形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のハンドルバー用スイッチ装置において、前記操作レバーは、前記ハンドルバーとの当接面が略C字状に形成されるとともに、当該当接面の端縁近傍のそれぞれに前記溝が形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のハンドルバー用スイッチ装置において、前記操作レバーが前記ハンドルバーの外周面に沿って回動する際に摩擦力を付与し、所定の位置で当該操作レバーを保持するための保持手段を具備するとともに、前記操作レバーは、回動操作により車両のエンジンに供給される燃料の濃さを調整するチョークレバーから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、操作レバーは、その当接面に、ハンドルバーの軸方向へ延びる溝を有し、当該溝は操作レバーの少なくとも一方の側面まで延びて形成されたので、操作レバーのハンドルバーとの当接面に入り込んだ砂等の粒子状異物を溝内に収容させ、当該操作レバーの回動操作に伴って溝内に収容した砂等の粒子状異物を側面から排出して除去することができ、その回動操作性を維持することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、操作レバーは、ハンドルバーとの当接面が略C字状に形成されるとともに、当該当接面の端縁近傍のそれぞれに溝が形成されたので、当接面の両端縁から入り込む砂等の粒子状異物をそれぞれの溝内に収容させて排出させることができ、より確実に砂等の粒子状異物を除去することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、操作レバーがハンドルバーの外周面に沿って回動する際に摩擦力を付与し、所定の位置で当該操作レバーを保持するための保持手段を具備するとともに、操作レバーは、回動操作により車両のエンジンに供給される燃料の濃さを調整するチョークレバーから成るものに良好に適用し、当該チョークレバーの回動操作に伴って溝内に収容した砂等の粒子状異物を側面から排出して除去することができ、その回動操作性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るハンドルバー用スイッチ装置は、二輪車のハンドルバーに取り付けられて各種操作が可能とされたものであり、図1〜3に示すように、ハンドルバーHの左側先端近傍であって把持グリップGに隣接した位置に締め付け固定されたスイッチケース1と、該スイッチケース1の一方の側面(図1における左側面)に配設されて回動操作可能な操作レバー2とから主に構成されている。
【0014】
把持グリップGは、ハンドルバーHの先端に固定されるとともに、弾力を有しつつ運転者が把持可能なものであり、通常はハンドルバーHの外周面に接着剤等で接着固定されている。この把持グリップGは、運転者の把持を良好に行わせるべく、弾力を有した樹脂、ゴムの材料で形成されている。この把持グリップGを運転者が把持しつつ指を延ばしてスイッチケース1の操作スイッチ(1a〜1c)及び操作レバー2に対する操作が可能とされている。
【0015】
スイッチケース1は、本ハンドルバー用スイッチ装置の筐体を成すもので、運転者が操作し得る所定の操作スイッチ(本実施形態においては、ディマースイッチ1a、ターンシグナルスイッチ1b、ホーンスイッチ1c)が形成されている。このスイッチケース1は、例えば上下半割状のアルミダイカスト、亜鉛ダイカスト或いは樹脂にて成形されたものであり、ハンドルバーHにおける把持グリップGの隣接した位置にボルトにて締め上げられて強固に固定されたものである。
【0016】
スイッチケース1における一方の側面には、図3に示すように、円弧状の案内溝1dが形成されており、当該案内溝1dに操作レバー2が回動自在に嵌め込まれている。かかる操作レバー2は、同図に示すように、ハンドルバーHの外周面と当接しつつ当該外周面の周方向に延びた当接面2bを有し、当該ハンドルバーの周方向(図4における矢印方向及びその逆方向)へ回動操作が可能とされたものである。
【0017】
また、操作レバー2は、ハンドルバーHとの当接面2bが略C字状に形成されるとともに、その一端から上方に摘み部2aが一体的に突出形成されている。当接面2bは、ハンドルバーHの外周面に倣って端縁2cから端縁2dまで略C字形状に延びて形成されており、当該端縁2cと2dの間が離間した形状(操作レバー2の全体形状も側面視で略C字形状)とされている。
【0018】
そして、摘み部2aを指で摘みつつ操作すると、操作レバー2全体がハンドルバーHの周方向へ回動し得るようになっている。而して、操作レバー2には、図5に示すように、嵌合溝2eが形成され、かかる嵌合溝2eにワイヤ(不図示)の一端が係止されるよう構成されており、操作レバー2を回動操作すると当該ワイヤを介して車両のチョークを操作し得るようになっている。
【0019】
即ち、本実施形態に係る操作レバー2は、回動操作により車両のエンジンに供給される燃料の濃さを調整するチョークレバーから成るのである。更に、スイッチケース1内には、操作レバー2がハンドルバーHの外周面に沿って回動する際に摩擦力を付与し、所定の位置で当該操作レバー2を保持するための保持手段3を具備している。具体的には、保持手段3は、図3に示すように、操作レバー2の外周面と当接する当接部材4と、該当接部材4を操作レバー2側へ付勢するコイルスプリング5とを有して構成されており、これにより、操作レバー2の回動操作時に適度な重みを付与するとともに、回動した任意位置で当該操作レバー2を保持させることができる。
【0020】
ここで、本実施形態に係る操作レバー2は、その当接面2bに、ハンドルバーHの軸方向(図3、4における紙面垂直方向)へ延びる溝a、bが形成され、当該溝a、bは操作レバー2の両側面c、dまで延びて形成されている。即ち、溝a、bは、図5に示すように、当接面2bにおいて操作レバー2の幅方向に亘って直線状に延びた凹形状から成るものであり、当該当接面2bの端縁2c、2d近傍のそれぞれに形成されている。
【0021】
これにより、操作レバー2を回動操作する過程で、端縁2cと端縁2dとの間から当接面2bに砂等の粒子状異物が入り込んだ場合、図6に示すように、当該当接面2bに入り込んだ砂等の粒子状異物を溝a、b内にそれぞれ収容させ、当該操作レバー2の回動操作(往復動操作)に伴って溝a、b内に収容した砂等の粒子状異物を側面c、dから排出して除去することができ、その回動操作性を維持することができる。
【0022】
然るに、微視的に観察すると、図7に示すように、溝a(溝bも同様)の角aaで砂等の粒子状異物を掻き分け、その砂等を操作レバー2の回動動作に伴って当該溝aに沿って移動させ、側面c、dから排出して除去することができるようになっている。従って、当接面2bに入り込んだ砂等の粒子状異物は、溝a、bより更に進んだ位置に移動することができず、当該当接面2b全域に砂等が残存してしまうのを回避できるのである。
【0023】
また、操作レバー2は、ハンドルバーHとの当接面2bが略C字状に形成されるとともに、当該当接面2bの端縁2c、2d近傍のそれぞれに溝a、bが形成されたので、当接面2bの両端縁2c、2dから入り込む砂等の粒子状異物をそれぞれの溝a、b内に収容させて排出させることができ、より確実に砂等の粒子状異物を除去することができる。尚、当接面2bの端縁2c、2d近傍のそれぞれに溝a、bが形成されたので、図6に示すように、当該当接面2bにおける矢印で示す範囲に砂等の粒子状異物が進入してしまうのを回避できる。
【0024】
更に、本実施形態によれば、操作レバー2がハンドルバーHの外周面に沿って回動する際に摩擦力を付与し、所定の位置で当該操作レバー2を保持するための保持手段3を具備するとともに、操作レバー2は、回動操作により車両のエンジンに供給される燃料の濃さを調整するチョークレバーから成るものに良好に適用し、当該チョークレバーの回動操作に伴って溝ab内に収容した砂等の粒子状異物を側面c、dから排出して除去することができ、その回動操作性を維持することができる。
【0025】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば溝a、bは操作レバー2の少なくとも一方の側面(側面c又はdの何れか一方)まで延びて形成されていれば足りる。また、溝a、bは、本実施形態の如く水平面内で直線状に形成されるものに限らず、一方向へ傾斜したもの、円弧状に延設されたもの等であってもよい。更に、本実施形態においては、操作レバー2がチョークレバーから成るものであるが、他の操作が可能なものであってもよい。尚、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、ATVなど他のハンドルバーを具備した車両に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
操作レバーは、その当接面に、ハンドルバーの軸方向へ延びる溝を有し、当該溝は操作レバーの少なくとも一方の側面まで延びて形成されたハンドルバー用スイッチ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るハンドルバー用スイッチ装置を示す正面図
【図2】同ハンドルバー用スイッチ装置を示す右側面図
【図3】図1におけるIII−III線断面図
【図4】図3における操作レバーを回動操作した状態の模式図
【図5】同ハンドルバー用スイッチ装置における操作レバーを示す正面図、右側面図、背面図
【図6】同ハンドルバー用スイッチ装置の操作レバーにおいて、その当接面に砂等の粒子状異物が進入した状態を示す模式図
【図7】図6の溝近傍を示す拡大図
【図8】従来の同ハンドルバー用スイッチ装置を示す模式図
【図9】従来の操作レバーにおいて、その当接面に砂等の粒子状異物が進入した状態を示す模式図
【図10】従来の操作レバーにおいて、その当接面全域に砂等の粒子状異物が進入した状態を示す模式図
【符号の説明】
【0028】
1 スイッチケース
2 操作レバー(チョークレバー)
2b 当接面
2c、2d 端縁
3 保持手段
4 当接部材
5 コイルスプリング
H ハンドルバー
G 把持グリップ
a、b 溝
c、d (操作レバーの)側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるハンドルバーに取り付けられ、運転者が操作し得る所定の操作スイッチが形成されたスイッチケースと、
前記ハンドルバーの外周面と当接しつつ当該外周面の周方向に延びた当接面を有し、当該ハンドルバーの周方向へ回動操作が可能とされた操作レバーと、
を具備したハンドルバー用スイッチ装置において、
前記操作レバーは、その当接面に、前記ハンドルバーの軸方向へ延びる溝を有し、当該溝は前記操作レバーの少なくとも一方の側面まで延びて形成されたことを特徴とするハンドルバー用スイッチ装置。
【請求項2】
前記操作レバーは、前記ハンドルバーとの当接面が略C字状に形成されるとともに、当該当接面の端縁近傍のそれぞれに前記溝が形成されたことを特徴とする請求項1記載のハンドルバー用スイッチ装置。
【請求項3】
前記操作レバーが前記ハンドルバーの外周面に沿って回動する際に摩擦力を付与し、所定の位置で当該操作レバーを保持するための保持手段を具備するとともに、前記操作レバーは、回動操作により車両のエンジンに供給される燃料の濃さを調整するチョークレバーから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のハンドルバー用スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−255675(P2009−255675A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105693(P2008−105693)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】