ハンドルロック装置
【課題】携帯キーとのコード認証の結果に基づいてハンドルロックの解錠動作および施錠動作を制御できるハンドルロック装置を提供する。
【解決手段】認証ECU20は、ロックピン11が没入状態にあるときにイグニッションスイッチ21によってIGN電源をオフへ切り替える操作が行われると、ハンドルロックECU18を介してハンドルロックソレノイド15を駆動して係止手段17によるロータ12の回動規制を解除し、該解除後にロックピン11が突出状態とされて該没入状態が施錠側スイッチ27に検知されると、係止手段17による回動規制を実行する(5)と共に、車両に固有のIDコードが記憶された携帯キー30とのコード認証を実行する(6)。該コード認証が正常に行われる(7)と、回動規制が保持されてロック状態となる。コード認証が正常に完了しない場合は、ロータ12の回動規制が解除されてアンロック状態に戻る。
【解決手段】認証ECU20は、ロックピン11が没入状態にあるときにイグニッションスイッチ21によってIGN電源をオフへ切り替える操作が行われると、ハンドルロックECU18を介してハンドルロックソレノイド15を駆動して係止手段17によるロータ12の回動規制を解除し、該解除後にロックピン11が突出状態とされて該没入状態が施錠側スイッチ27に検知されると、係止手段17による回動規制を実行する(5)と共に、車両に固有のIDコードが記憶された携帯キー30とのコード認証を実行する(6)。該コード認証が正常に行われる(7)と、回動規制が保持されてロック状態となる。コード認証が正常に完了しない場合は、ロータ12の回動規制が解除されてアンロック状態に戻る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルロック装置に係り、特に、携帯キーとのコード認証の結果に基づいてハンドルロックの施錠動作および解錠動作を制御することができるハンドルロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の停車時にその操向ハンドルを回動不能に保持するためのハンドルロック装置が知られている。このようなハンドルロック装置においては、操向ハンドルの回動軸等に設けられた係合孔に車体側から突出するロックピンを係合することで回動不能とするようにした構成である。
【0003】
特許文献1には、ICチップを内蔵した携帯キーとのコード認証を行う自動二輪車のハンドルロック装置において、前記コード認証が正常に実行されなければ、ハンドルロックが解錠されないようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特許3566736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハンドルロック装置の操作時におけるコード認証を、ハンドルロックの解錠時のみならず施錠時にも実行するようにすれば、ハンドルロック装置の利便性等をより高められる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、携帯キーとのコード認証の結果に基づいてハンドルロックの解錠動作および施錠動作を制御できるハンドルロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、乗員による操作部材の操作により施錠位置と解錠位置との間で移動可能なロックピンと、前記ロックピンを常に解錠位置に戻す方向の付勢力を与える付勢手段と、該ロックピンの突出と戻りの移動を規制する係止手段とを有するハンドルロック装置において、前記係止手段を駆動制御する制御部を具備し、ハンドルロック施錠時、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに車両の主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記操作部材の操作が検知されるか、あるいは、前記係止手段によるロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されたことが検出されると、前記車両に固有の携帯キーとのコード認証を実行し、前記コード認証が正常に行われた場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態とし、一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合には、再度、前記ロックピンの移動規制を解除し、ロックピンを戻すように構成されている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、ハンドルロック解錠時、前記制御部は、前記ロックピンが施錠位置にあるときに前記主電源をオフからオンに切り替える操作が行われると、前記携帯キーとのコード認証を実行し、前記コード認証が正常に行われた場合には、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除に伴って前記ロックピンが解錠位置に戻ると、再度、ロックピンの移動規制を実行し、一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態を保つように構成されている点に第2の特徴がある。
【0008】
また、前記ロックピンが施錠位置にあることを検知する施錠側スイッチと、前記ロックピンが解錠位置にあることを検知する解錠側スイッチとを具備する点に第3の特徴がある。
【0009】
また、ハンドルロック施錠時に、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに前記主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されることで前記施錠側スイッチまたは解錠側スイッチからの出力信号が検知されると、前記コード認証を実行する点に第4の特徴がある。
【0010】
さらに、前記ロックピンに連結される回動部材を具備し、前記回動部材は操作ケーブルを介して前記操作部材に接続され、前記ロックピンは、前記回動部材の回動に連動して往復運動を行うように前記回動部材に連結されると共に、前記往復運動によって没入状態から突出状態となることで車両の操向ハンドルを操舵不能にするように構成されており、前記係止手段は、前記回動部材の回動を規制すると共に、前記係止手段による前記ロックピンの移動規制状態を検知する係止スイッチを備え、前記付勢手段は、前記回動部材を前記ロックピンの戻り方向に回動させる付勢力を与えるように前記回動部材に取り付けられており、前記施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、前記ロックピンの位置を検知するように構成されている点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、ハンドルロック施錠時、制御部は、ロックピンが解錠位置にあるときに車両の主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記操作部材の操作が検知されるか、あるいは、係止手段によるロックピンの移動規制を解除し、該解除後に操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されたことが検出されると、車両に固有の携帯キーとのコード認証を実行し、コード認証が正常に行われた場合はロックピンの移動規制を保持し、ロック状態とし、一方、コード認証が正常に行われなかった場合には、再度、ロックピンの移動規制を解除し、ロックピンを戻すように構成されているので、携帯キーを所持する乗員が車両から離れている場合には、ロックピンを解錠位置から施錠位置に切り替える、すなわち、ハンドルロック装置をアンロック状態からロック状態へ切り替えることができなくなり、利便性の高いハンドルロック装置を得ることが可能となる。また、主電源のオフ時に、操作部材の操作あるいは乗員によるロックピンの突出操作後に、すなわち、乗員の操作意思を確認した後で認証し、ロックするので、操作意思がないのにロックすることを防止できる。
【0012】
第2の発明によれば、ハンドルロック解錠時、制御部は、ロックピンが施錠位置にあるときに主電源をオフからオンに切り替える操作が行われると、携帯キーとのコード認証を実行し、コード認証が正常に行われた場合には、ロックピンの移動規制を解除し、該解除に伴ってロックピンが解錠位置に戻ると、再度、ロックピンの移動規制を実行し、一方、コード認証が正常に行われなかった場合はロックピンの移動規制を保持し、ロック状態を保つように構成されているので、携帯キーを所持する乗員が車両から離れている場合には、ハンドルロック装置をロック状態からアンロック状態へ切り替えることができないようにすることが可能となる。また、主電源がオンである間、ロックピンを確実に解錠位置に保持することが可能となる。
【0013】
第3の発明によれば、ロックピンが施錠位置にあることを検知する施錠側スイッチと、前記ロックピンが解錠位置にあることを検知する解錠側スイッチとを具備するので、ロックピンの位置が明確になり、制御部による係止手段の駆動制御を確実に実行することが可能となる。
【0014】
第4の発明によれば、ハンドルロック施錠時に、制御部は、ロックピンが解錠位置にあるときに主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、ロックピンの移動規制を解除し、該解除後に操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されることで前記施錠側スイッチまたは解錠側スイッチからの出力信号が検知されると、コード認証を実行するので、ロックピンの突出操作が確実に実行されたことを確認した後にコード認証を開始することが可能となり、誤操作を防止できる。
【0015】
第5の発明によれば、ロックピンに連結される回動部材を具備し、回動部材は操作ケーブルを介して操作部材に接続され、ロックピンは、回動部材の回動に連動して往復運動を行うように回動部材に連結されると共に、往復運動によって没入状態から突出状態となることで車両の操向ハンドルを操舵不能にするように構成されており、係止手段は、回動部材の回動を規制すると共に、係止手段によるロックピンの移動規制状態を検知する係止スイッチを備え、付勢手段は、回動部材をロックピンの戻り方向に回動させる付勢力を与えるように回動部材に取り付けられており、施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、ロックピンの位置を検知するように構成されているので、例えば、回動部材の周縁部に係止手段を係止させるようにすれば、往復運動するロックピンを直接移動規制する方法に比して、施錠位置と解錠位置との間の移動幅を拡大しやすくなり、移動規制の確実性を高めると共に、部品の生産性を向上させることが可能となる。また、施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、ロックピンの位置を検知するように構成されているので、回動部材の位置を検知する構成に比して、簡単なスイッチ構成によってハンドルロック装置のロック状態およびアンロック状態を検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車のハンドルロック装置の構成を示すブロック図である。図1は、乗車時におけるハンドルロックの解錠状態(アンロック状態)、図2は、降車時におけるハンドルロックの施錠状態(ロック状態)を示す。自動二輪車のステアリング装置1は、前輪WFを回転自在に軸支する一対のフロントフォーク(不図示)を支持する支持部材2を、回動軸3において不図示の車体フレームに回動自在に取り付けた構成を有する。これにより、自動二輪車の乗員は、支持部材2に取り付けられた操向ハンドル5によって、前輪WFの操舵角を任意に変更することが可能である。支持部材2には、ステアリング装置1、すなわち操向ハンドル5を回動不能とするハンドルロック施錠時に使用されるロックピン係合孔4が形成されている。なお、ロックピン係合孔4は、1箇所のみに設けたり、支持部材2と一体的に回動する他の部品や回動軸3等に形成してもよい。
【0017】
ステアリング装置1に近接して車体側の所定位置に固定されるハンドルロックユニット10は、回動軸12aによって軸支される回動部材としてのロータ12と、ハンドルロックの施錠時に前記ロックピン係合孔4に係合するロックピン11とを備えている。ロックピン11は、前記回動軸12aの径方向外側に設けられる回動軸11aに連結されており、ロータ12の回動動作に伴って図示上下方向の往復動が可能とされる。また、前記回動軸11aに対向するように回動軸12aの径方向外側に設けられる取付孔12bには、金属等で形成された操作ケーブルであるワイヤ13の一端部が取り付けられており、その他端部には、回動軸14aによって車体に軸支される操作部材としてのロックレバー14が取り付けられている。
【0018】
上記したような構成により、自動二輪車の乗員は、ステアリング装置1の回動位置が、ロックピン11の突出方向とロックピン係合孔4とが一致する所定回動位置にある際に、操作部14bを用いてロックレバー14を図示時計方向に回動させることで、前記ロックピン11を没入状態から突出状態とすることが可能となる。本実施形態においては、自動二輪車の停車時に、ステアリング装置1を反時計方向に約45度回動させた場合(図2参照)および時計方向に約45度回動させた場合において、ロックピン11を突出させる操作が可能となる。
【0019】
ハンドルロックユニット10には、前記ロータ12の回動を規制する係止手段17を駆動するハンドルロックソレノイド15および該ハンドルロックソレノイド15を駆動制御するハンドルロックECU18が備えられている。本実施形態に係る係止手段17は、ハンドルロックソレノイド15の駆動子に係合されて、図示上下方向に移動可能な閂状部材からなる。
【0020】
ハンドルロックECU18と共に制御部を構成する認証ECU20は、車両に固有のIDコードが記憶された携帯キー30との無線通信によりコード認証を実行し、該コード認証の結果に基づいて、車両の主電源としてのIGN(イグニッション)電源23のオンオフを切り替えるイグニッションスイッチ21の操作受付判断や、ハンドルロックソレノイド15の駆動制御等を実行する。また、認証ECU20は、エンジンを始動するスタータボタン22からの操作信号を、IGN電源23がオン状態でかつロックピン11が没入状態、すなわち解錠位置にある際にのみ受け付けるように構成されている。
【0021】
図3〜図8は、本実施形態に係るハンドルロック装置を施錠する際の動作の流れを示す説明図である。図1および図2に示した構成に対して詳細を追加した箇所および不図示とした箇所があるが、両者は同一の構成を有するものとする。前記ロータ12の周縁部には、周方向に所定の長さを有し、その前後で係止手段17と係止してロータ12の回動を規制するための凸部19が形成されている。係止手段17には、ロータ12に当接する方向の付勢力が付勢部材25によって与えられており、ハンドルロックソレノイド15が駆動子16を駆動させた時のみ前記凸部19と係止されない位置に移動し、駆動信号のオフに伴って初期位置に戻ることとなる。
【0022】
またロータ12の取付孔12bには、ロータ12を図示時計方向に回動させる、すなわちロックピン11を没入状態とする方向の付勢力を与える付勢手段24が取り付けられている。この付勢手段24は、金属等で形成されたバネで構成することができる。なお、前記凸部19を所定の凹形状とすることで係止手段17と係止させたり、駆動子16と係止手段17とを一体的に形成してもよい。
【0023】
前記係止手段17の近傍には、係止手段17の突出状態を検知する係止スイッチ26が配設されている。また、ロックピン11の近傍には、ロックピン11に形成された施錠側突起40と接触することでロックピン11の突出状態を検知する施錠側スイッチ27と、ロックピン11に形成された解錠側突起41と接触することでロックピン11の没入状態を検知する解錠側スイッチ28とが配設されている。なお、ロックピン11の突出状態および没入状態の検知は、ロータ12の回動位置を検知するスイッチ等で行うようにしてもよい。また、係止スイッチ26のオンオフを検知してもよい。あるいは、図5に示すように、ロックレバー14の操作を検知する検知スイッチ29を設け、ロックレバー14の操作が検知されることでコード認証を開始するようにしてもよい。この構成によれば、コード認証の開始を早めることができる。
【0024】
以下、本実施形態に係るハンドルロック装置を、乗員の降車時にアンロック状態からロック状態に切り替える際の流れを、図9のフローチャートと合わせて説明する。フローチャートと対応する部分には、そのステップ数を付す。まず、図3に示すアンロック状態は、例えば、自動二輪車の停車後に、まだIGN電源23がオンである状態を示す。該アンロック状態では、ロータ12に係止手段17が係止しており、ロックレバー14を操作してもロータ12を回動させることができない。
【0025】
このアンロック状態から、イグニッションスイッチ21を操作する((1):ステップS10)と、IGN電源23がオフにされる((2):ステップS11)。次に、図4を参照して、前記IGN電源23のオフに伴って、ハンドルロックECU18がハンドルロックソレノイド15を駆動して、係止手段17によるロータ12の回動規制が解除される((3):ステップS12)。これにより、ロータ12を回動させることができるロック可能状態となる。
【0026】
続いて、図5を参照して、乗員が操向ハンドル5のロックを開始するために、ロックピン11の突出方向と前記ロックピン係合孔4の位置とが一致する所定回動位置に操向ハンドル5を回動させてから、前記付勢手段24の付勢力に抗する力でロックレバー14を操作すると、ロータ12が回動してロックピン11が突出状態となると共に、施錠側突起40が施錠側スイッチ27に接触して、該施錠側スイッチ27がオン状態となる((4):ステップS13)。
【0027】
図6では、施錠側スイッチ27のオン状態が検知されることにより、ハンドルロックソレノイド15への通電がオフにされ、付勢部材25の付勢力によって係止手段17が突出される((5):ステップS14)。これにより、ロータ12の回動が規制されて、ロックレバー14から手を離してもロックピン11が戻らないロック状態となる。しかしながら、このロック状態は仮のロック状態であり、認証ECU20は、前記施錠側スイッチ27のオン状態の検知に伴って、携帯キー30とのコード認証を開始する((6):ステップS15)。そして、認証ECU20において、コード認証が正しく実行されたか否かが判定され(ステップS16)、肯定判定された、すなわち、車体に固有のIDコードを記憶した携帯キー30を所持する乗員がロックレバー14を操作したものと判定されると、係止手段17の突出が保持されて正式なロック状態となり、施錠動作を完了する((7):ステップS17)。この認証は、解錠側スイッチ28のオフを検出したり、または、係止スイッチ26のオンを検出することで実行してもよい。
【0028】
一方、図7を参照して、コード認証が正しく実行されなかったと判定されると、所定の携帯キー30を所持しない者がロックレバー14を操作したものとしてハンドルロックソレノイド15を駆動し、再度、ロータ12の回動規制を解除する((8):ステップS18)。図8を参照して、すると、ロータ12の回動規制の解除に伴い、付勢手段24の付勢力によってロックピン11が没入状態に戻され、アンロック状態に戻ることとなる((9):ステップS19)。施錠側スイッチ27のオンの検知と同時にコード認証を行うのは、乗員の施錠意思を確認した後に認証を行うことになり、施錠意思がないのにロックすることを防止するためである。なお、図6において、施錠側スイッチ27のオン状態検知と同時に係止手段17を突出させて仮のロック状態を得る理由は、例えば、コード認証の完了後に係止手段17を突出させる設定とすると、所定時間を要するコード認証が完了して係止手段17が突出するまで、ロックレバー14を回動させた状態を保つ必要が生じるためである。同時に、コード認証の完了前にロックレバー14が離されることで、係止部材17が突出できず、回動規制ができないという事態も防がれる。
【0029】
上記したように、本実施形態に係るハンドルロック装置においては、IGN電源23がオン状態の場合には、ロータ12が回動規制されていてロックピン11の突出動作が禁止される。また、IGN電源23がオフ状態の場合でも、電源オフの後に直ちに認証を行うのではなく、ロックレバー14が操作されたことを検出した後に、車両に固有の携帯キー30とのコード認証を実行するので、携帯キー30を所持しない者の操作によっては、アンロック状態からロック状態へ切り替えることができないようにするとともに、IGN電源オフ時においても施錠意思を確認することが可能となる。
【0030】
図10〜図12は、本実施形態に係る乗車時におけるハンドルロック装置を解錠する際の動作の流れを示す説明図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。以下、ロック状態からアンロック状態に切り替える際の流れを、図13のフローチャートと合わせて説明する。フローチャートと対応する部分には、そのステップ数を付す。図10に示すロック状態においては、前記施錠時の手順に示したように、IGN電源23はオフ状態にある。このロック状態からイグニッションスイッチ21を操作する((1):ステップS20)と、認証ECU20が、携帯キー30とのコード認証を開始する((2):ステップS21)。
【0031】
次に、コード認証が正しく実行されたか否かが判定され(ステップS22)、肯定判定された、すなわち、所定の携帯キー30を所持する乗員がイグニッションスイッチ21を操作したと判定されると、IGN電源23をオンにすると共に、ハンドルロックECU18がハンドルロックソレノイド15を駆動して、係止手段17によるロータ12の回動規制が解除される((3):ステップS23)。これにより、ロータ12が付勢手段24の付勢力によって図示時計方向に回動され、この回動運動に伴ってロックピン11が引っ込み、没入状態に切り替わることとなる((4):ステップS25)。
【0032】
図12を参照して、ロックピン11が没入状態となることにより、解錠側突起41が解錠側スイッチ28に接触して、該解錠側スイッチ28がオン状態となる((5):ステップS26)。そして、この解錠側スイッチ28のオン状態が検知されると、ロックソレノイド15の通電がオフ状態となり、再度、係止手段17によるロータ12の回動規制が実行されて((6):ステップS27)、解錠動作が完了することとなる(ステップS28)。なお、この回動規制は、IGN電源23がオン状態の間保持されるので、ロックピン11の没入状態を確実に保持することが可能となる。なお、コード認証が正しく実行されたか否かの判定(ステップS22)において否定判定されると、所定の携帯キー30を所持しない者がイグニッションスイッチ21を操作したものとして、IGN電源23のオフ状態およびロック状態を保持して一連の制御を終了する。
【0033】
上記したように、本実施形態に係るハンドルロック装置によれば、イグニッションスイッチ21が操作された際に車両に固有の携帯キー30とのコード認証を実行するので、携帯キー30を所持しない者の操作では、ロック状態からアンロック状態へ切り替えることができないようにすることが可能となる。また、主電源のオフ時に、乗員によるロックピンの突出操作後に、すなわち、乗員の操作意思を確認した後で認証し、ロックするので、操作意思がないのにロックすることを防止できる。
【0034】
本発明に係るハンドルロック装置は、自動二輪車のほか、3輪/4輪自動車等の種々の車両に適用可能である。なお、ハンドルロックユニットに含まれる部品の形態、ロータ、ロックピン、係止手段、施錠側スイッチ、解錠側スイッチ、係止スイッチ、操作レバー、付勢手段等の形状や配置等は、上記した実施形態に限られず、種々の変形が可能である。例えば、認証ECUにハンドルロックECUが含まれる構成としたり、また、イグニッションスイッチを、ICチップを内装した物理的キーで回動されるキーシリンダで構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車のハンドルロック装置の構成を示すブロック図(アンロック状態)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車のハンドルロック装置の構成を示すブロック図(ロック状態)である。
【図3】施錠時の動作の流れを示す説明図(アンロック状態)である。
【図4】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロック可能状態)である。
【図5】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロック開始)である。
【図6】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロック状態)である。
【図7】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロックNG)である。
【図8】施錠時の動作の流れを示す説明図(アンロック状態)である。
【図9】ハンドルロック装置をアンロック状態からロック状態に切り替える際の手順を示すフローチャートである。
【図10】解錠時の動作の流れを示す説明図(ロック状態)である。
【図11】解錠時の動作の流れを示す説明図(ロック解除)である。
【図12】解錠時の動作の流れを示す説明図(アンロック状態)である。
【図13】ハンドルロック装置をロック状態からアンロック状態に切り替える際の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
10…ハンドルロックユニット、11…ロックピン、12…ロータ(回動部材)、15…ハンドルロックソレノイド、13…ワイヤ(操作ケーブル)14…ロックレバー(操作部材)、16…駆動子、17…係止手段、18…ハンドルロックECU(制御部)、19…凸部、20…認証ECU(制御部)、21…イグニッションスイッチ、23…IGN電源(主電源)、24…付勢手段、26…係止スイッチ、27…施錠側スイッチ、28…解錠側スイッチ、30…携帯キー
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルロック装置に係り、特に、携帯キーとのコード認証の結果に基づいてハンドルロックの施錠動作および解錠動作を制御することができるハンドルロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の停車時にその操向ハンドルを回動不能に保持するためのハンドルロック装置が知られている。このようなハンドルロック装置においては、操向ハンドルの回動軸等に設けられた係合孔に車体側から突出するロックピンを係合することで回動不能とするようにした構成である。
【0003】
特許文献1には、ICチップを内蔵した携帯キーとのコード認証を行う自動二輪車のハンドルロック装置において、前記コード認証が正常に実行されなければ、ハンドルロックが解錠されないようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特許3566736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハンドルロック装置の操作時におけるコード認証を、ハンドルロックの解錠時のみならず施錠時にも実行するようにすれば、ハンドルロック装置の利便性等をより高められる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、携帯キーとのコード認証の結果に基づいてハンドルロックの解錠動作および施錠動作を制御できるハンドルロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、乗員による操作部材の操作により施錠位置と解錠位置との間で移動可能なロックピンと、前記ロックピンを常に解錠位置に戻す方向の付勢力を与える付勢手段と、該ロックピンの突出と戻りの移動を規制する係止手段とを有するハンドルロック装置において、前記係止手段を駆動制御する制御部を具備し、ハンドルロック施錠時、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに車両の主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記操作部材の操作が検知されるか、あるいは、前記係止手段によるロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されたことが検出されると、前記車両に固有の携帯キーとのコード認証を実行し、前記コード認証が正常に行われた場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態とし、一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合には、再度、前記ロックピンの移動規制を解除し、ロックピンを戻すように構成されている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、ハンドルロック解錠時、前記制御部は、前記ロックピンが施錠位置にあるときに前記主電源をオフからオンに切り替える操作が行われると、前記携帯キーとのコード認証を実行し、前記コード認証が正常に行われた場合には、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除に伴って前記ロックピンが解錠位置に戻ると、再度、ロックピンの移動規制を実行し、一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態を保つように構成されている点に第2の特徴がある。
【0008】
また、前記ロックピンが施錠位置にあることを検知する施錠側スイッチと、前記ロックピンが解錠位置にあることを検知する解錠側スイッチとを具備する点に第3の特徴がある。
【0009】
また、ハンドルロック施錠時に、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに前記主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されることで前記施錠側スイッチまたは解錠側スイッチからの出力信号が検知されると、前記コード認証を実行する点に第4の特徴がある。
【0010】
さらに、前記ロックピンに連結される回動部材を具備し、前記回動部材は操作ケーブルを介して前記操作部材に接続され、前記ロックピンは、前記回動部材の回動に連動して往復運動を行うように前記回動部材に連結されると共に、前記往復運動によって没入状態から突出状態となることで車両の操向ハンドルを操舵不能にするように構成されており、前記係止手段は、前記回動部材の回動を規制すると共に、前記係止手段による前記ロックピンの移動規制状態を検知する係止スイッチを備え、前記付勢手段は、前記回動部材を前記ロックピンの戻り方向に回動させる付勢力を与えるように前記回動部材に取り付けられており、前記施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、前記ロックピンの位置を検知するように構成されている点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、ハンドルロック施錠時、制御部は、ロックピンが解錠位置にあるときに車両の主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記操作部材の操作が検知されるか、あるいは、係止手段によるロックピンの移動規制を解除し、該解除後に操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されたことが検出されると、車両に固有の携帯キーとのコード認証を実行し、コード認証が正常に行われた場合はロックピンの移動規制を保持し、ロック状態とし、一方、コード認証が正常に行われなかった場合には、再度、ロックピンの移動規制を解除し、ロックピンを戻すように構成されているので、携帯キーを所持する乗員が車両から離れている場合には、ロックピンを解錠位置から施錠位置に切り替える、すなわち、ハンドルロック装置をアンロック状態からロック状態へ切り替えることができなくなり、利便性の高いハンドルロック装置を得ることが可能となる。また、主電源のオフ時に、操作部材の操作あるいは乗員によるロックピンの突出操作後に、すなわち、乗員の操作意思を確認した後で認証し、ロックするので、操作意思がないのにロックすることを防止できる。
【0012】
第2の発明によれば、ハンドルロック解錠時、制御部は、ロックピンが施錠位置にあるときに主電源をオフからオンに切り替える操作が行われると、携帯キーとのコード認証を実行し、コード認証が正常に行われた場合には、ロックピンの移動規制を解除し、該解除に伴ってロックピンが解錠位置に戻ると、再度、ロックピンの移動規制を実行し、一方、コード認証が正常に行われなかった場合はロックピンの移動規制を保持し、ロック状態を保つように構成されているので、携帯キーを所持する乗員が車両から離れている場合には、ハンドルロック装置をロック状態からアンロック状態へ切り替えることができないようにすることが可能となる。また、主電源がオンである間、ロックピンを確実に解錠位置に保持することが可能となる。
【0013】
第3の発明によれば、ロックピンが施錠位置にあることを検知する施錠側スイッチと、前記ロックピンが解錠位置にあることを検知する解錠側スイッチとを具備するので、ロックピンの位置が明確になり、制御部による係止手段の駆動制御を確実に実行することが可能となる。
【0014】
第4の発明によれば、ハンドルロック施錠時に、制御部は、ロックピンが解錠位置にあるときに主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、ロックピンの移動規制を解除し、該解除後に操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されることで前記施錠側スイッチまたは解錠側スイッチからの出力信号が検知されると、コード認証を実行するので、ロックピンの突出操作が確実に実行されたことを確認した後にコード認証を開始することが可能となり、誤操作を防止できる。
【0015】
第5の発明によれば、ロックピンに連結される回動部材を具備し、回動部材は操作ケーブルを介して操作部材に接続され、ロックピンは、回動部材の回動に連動して往復運動を行うように回動部材に連結されると共に、往復運動によって没入状態から突出状態となることで車両の操向ハンドルを操舵不能にするように構成されており、係止手段は、回動部材の回動を規制すると共に、係止手段によるロックピンの移動規制状態を検知する係止スイッチを備え、付勢手段は、回動部材をロックピンの戻り方向に回動させる付勢力を与えるように回動部材に取り付けられており、施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、ロックピンの位置を検知するように構成されているので、例えば、回動部材の周縁部に係止手段を係止させるようにすれば、往復運動するロックピンを直接移動規制する方法に比して、施錠位置と解錠位置との間の移動幅を拡大しやすくなり、移動規制の確実性を高めると共に、部品の生産性を向上させることが可能となる。また、施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、ロックピンの位置を検知するように構成されているので、回動部材の位置を検知する構成に比して、簡単なスイッチ構成によってハンドルロック装置のロック状態およびアンロック状態を検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車のハンドルロック装置の構成を示すブロック図である。図1は、乗車時におけるハンドルロックの解錠状態(アンロック状態)、図2は、降車時におけるハンドルロックの施錠状態(ロック状態)を示す。自動二輪車のステアリング装置1は、前輪WFを回転自在に軸支する一対のフロントフォーク(不図示)を支持する支持部材2を、回動軸3において不図示の車体フレームに回動自在に取り付けた構成を有する。これにより、自動二輪車の乗員は、支持部材2に取り付けられた操向ハンドル5によって、前輪WFの操舵角を任意に変更することが可能である。支持部材2には、ステアリング装置1、すなわち操向ハンドル5を回動不能とするハンドルロック施錠時に使用されるロックピン係合孔4が形成されている。なお、ロックピン係合孔4は、1箇所のみに設けたり、支持部材2と一体的に回動する他の部品や回動軸3等に形成してもよい。
【0017】
ステアリング装置1に近接して車体側の所定位置に固定されるハンドルロックユニット10は、回動軸12aによって軸支される回動部材としてのロータ12と、ハンドルロックの施錠時に前記ロックピン係合孔4に係合するロックピン11とを備えている。ロックピン11は、前記回動軸12aの径方向外側に設けられる回動軸11aに連結されており、ロータ12の回動動作に伴って図示上下方向の往復動が可能とされる。また、前記回動軸11aに対向するように回動軸12aの径方向外側に設けられる取付孔12bには、金属等で形成された操作ケーブルであるワイヤ13の一端部が取り付けられており、その他端部には、回動軸14aによって車体に軸支される操作部材としてのロックレバー14が取り付けられている。
【0018】
上記したような構成により、自動二輪車の乗員は、ステアリング装置1の回動位置が、ロックピン11の突出方向とロックピン係合孔4とが一致する所定回動位置にある際に、操作部14bを用いてロックレバー14を図示時計方向に回動させることで、前記ロックピン11を没入状態から突出状態とすることが可能となる。本実施形態においては、自動二輪車の停車時に、ステアリング装置1を反時計方向に約45度回動させた場合(図2参照)および時計方向に約45度回動させた場合において、ロックピン11を突出させる操作が可能となる。
【0019】
ハンドルロックユニット10には、前記ロータ12の回動を規制する係止手段17を駆動するハンドルロックソレノイド15および該ハンドルロックソレノイド15を駆動制御するハンドルロックECU18が備えられている。本実施形態に係る係止手段17は、ハンドルロックソレノイド15の駆動子に係合されて、図示上下方向に移動可能な閂状部材からなる。
【0020】
ハンドルロックECU18と共に制御部を構成する認証ECU20は、車両に固有のIDコードが記憶された携帯キー30との無線通信によりコード認証を実行し、該コード認証の結果に基づいて、車両の主電源としてのIGN(イグニッション)電源23のオンオフを切り替えるイグニッションスイッチ21の操作受付判断や、ハンドルロックソレノイド15の駆動制御等を実行する。また、認証ECU20は、エンジンを始動するスタータボタン22からの操作信号を、IGN電源23がオン状態でかつロックピン11が没入状態、すなわち解錠位置にある際にのみ受け付けるように構成されている。
【0021】
図3〜図8は、本実施形態に係るハンドルロック装置を施錠する際の動作の流れを示す説明図である。図1および図2に示した構成に対して詳細を追加した箇所および不図示とした箇所があるが、両者は同一の構成を有するものとする。前記ロータ12の周縁部には、周方向に所定の長さを有し、その前後で係止手段17と係止してロータ12の回動を規制するための凸部19が形成されている。係止手段17には、ロータ12に当接する方向の付勢力が付勢部材25によって与えられており、ハンドルロックソレノイド15が駆動子16を駆動させた時のみ前記凸部19と係止されない位置に移動し、駆動信号のオフに伴って初期位置に戻ることとなる。
【0022】
またロータ12の取付孔12bには、ロータ12を図示時計方向に回動させる、すなわちロックピン11を没入状態とする方向の付勢力を与える付勢手段24が取り付けられている。この付勢手段24は、金属等で形成されたバネで構成することができる。なお、前記凸部19を所定の凹形状とすることで係止手段17と係止させたり、駆動子16と係止手段17とを一体的に形成してもよい。
【0023】
前記係止手段17の近傍には、係止手段17の突出状態を検知する係止スイッチ26が配設されている。また、ロックピン11の近傍には、ロックピン11に形成された施錠側突起40と接触することでロックピン11の突出状態を検知する施錠側スイッチ27と、ロックピン11に形成された解錠側突起41と接触することでロックピン11の没入状態を検知する解錠側スイッチ28とが配設されている。なお、ロックピン11の突出状態および没入状態の検知は、ロータ12の回動位置を検知するスイッチ等で行うようにしてもよい。また、係止スイッチ26のオンオフを検知してもよい。あるいは、図5に示すように、ロックレバー14の操作を検知する検知スイッチ29を設け、ロックレバー14の操作が検知されることでコード認証を開始するようにしてもよい。この構成によれば、コード認証の開始を早めることができる。
【0024】
以下、本実施形態に係るハンドルロック装置を、乗員の降車時にアンロック状態からロック状態に切り替える際の流れを、図9のフローチャートと合わせて説明する。フローチャートと対応する部分には、そのステップ数を付す。まず、図3に示すアンロック状態は、例えば、自動二輪車の停車後に、まだIGN電源23がオンである状態を示す。該アンロック状態では、ロータ12に係止手段17が係止しており、ロックレバー14を操作してもロータ12を回動させることができない。
【0025】
このアンロック状態から、イグニッションスイッチ21を操作する((1):ステップS10)と、IGN電源23がオフにされる((2):ステップS11)。次に、図4を参照して、前記IGN電源23のオフに伴って、ハンドルロックECU18がハンドルロックソレノイド15を駆動して、係止手段17によるロータ12の回動規制が解除される((3):ステップS12)。これにより、ロータ12を回動させることができるロック可能状態となる。
【0026】
続いて、図5を参照して、乗員が操向ハンドル5のロックを開始するために、ロックピン11の突出方向と前記ロックピン係合孔4の位置とが一致する所定回動位置に操向ハンドル5を回動させてから、前記付勢手段24の付勢力に抗する力でロックレバー14を操作すると、ロータ12が回動してロックピン11が突出状態となると共に、施錠側突起40が施錠側スイッチ27に接触して、該施錠側スイッチ27がオン状態となる((4):ステップS13)。
【0027】
図6では、施錠側スイッチ27のオン状態が検知されることにより、ハンドルロックソレノイド15への通電がオフにされ、付勢部材25の付勢力によって係止手段17が突出される((5):ステップS14)。これにより、ロータ12の回動が規制されて、ロックレバー14から手を離してもロックピン11が戻らないロック状態となる。しかしながら、このロック状態は仮のロック状態であり、認証ECU20は、前記施錠側スイッチ27のオン状態の検知に伴って、携帯キー30とのコード認証を開始する((6):ステップS15)。そして、認証ECU20において、コード認証が正しく実行されたか否かが判定され(ステップS16)、肯定判定された、すなわち、車体に固有のIDコードを記憶した携帯キー30を所持する乗員がロックレバー14を操作したものと判定されると、係止手段17の突出が保持されて正式なロック状態となり、施錠動作を完了する((7):ステップS17)。この認証は、解錠側スイッチ28のオフを検出したり、または、係止スイッチ26のオンを検出することで実行してもよい。
【0028】
一方、図7を参照して、コード認証が正しく実行されなかったと判定されると、所定の携帯キー30を所持しない者がロックレバー14を操作したものとしてハンドルロックソレノイド15を駆動し、再度、ロータ12の回動規制を解除する((8):ステップS18)。図8を参照して、すると、ロータ12の回動規制の解除に伴い、付勢手段24の付勢力によってロックピン11が没入状態に戻され、アンロック状態に戻ることとなる((9):ステップS19)。施錠側スイッチ27のオンの検知と同時にコード認証を行うのは、乗員の施錠意思を確認した後に認証を行うことになり、施錠意思がないのにロックすることを防止するためである。なお、図6において、施錠側スイッチ27のオン状態検知と同時に係止手段17を突出させて仮のロック状態を得る理由は、例えば、コード認証の完了後に係止手段17を突出させる設定とすると、所定時間を要するコード認証が完了して係止手段17が突出するまで、ロックレバー14を回動させた状態を保つ必要が生じるためである。同時に、コード認証の完了前にロックレバー14が離されることで、係止部材17が突出できず、回動規制ができないという事態も防がれる。
【0029】
上記したように、本実施形態に係るハンドルロック装置においては、IGN電源23がオン状態の場合には、ロータ12が回動規制されていてロックピン11の突出動作が禁止される。また、IGN電源23がオフ状態の場合でも、電源オフの後に直ちに認証を行うのではなく、ロックレバー14が操作されたことを検出した後に、車両に固有の携帯キー30とのコード認証を実行するので、携帯キー30を所持しない者の操作によっては、アンロック状態からロック状態へ切り替えることができないようにするとともに、IGN電源オフ時においても施錠意思を確認することが可能となる。
【0030】
図10〜図12は、本実施形態に係る乗車時におけるハンドルロック装置を解錠する際の動作の流れを示す説明図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。以下、ロック状態からアンロック状態に切り替える際の流れを、図13のフローチャートと合わせて説明する。フローチャートと対応する部分には、そのステップ数を付す。図10に示すロック状態においては、前記施錠時の手順に示したように、IGN電源23はオフ状態にある。このロック状態からイグニッションスイッチ21を操作する((1):ステップS20)と、認証ECU20が、携帯キー30とのコード認証を開始する((2):ステップS21)。
【0031】
次に、コード認証が正しく実行されたか否かが判定され(ステップS22)、肯定判定された、すなわち、所定の携帯キー30を所持する乗員がイグニッションスイッチ21を操作したと判定されると、IGN電源23をオンにすると共に、ハンドルロックECU18がハンドルロックソレノイド15を駆動して、係止手段17によるロータ12の回動規制が解除される((3):ステップS23)。これにより、ロータ12が付勢手段24の付勢力によって図示時計方向に回動され、この回動運動に伴ってロックピン11が引っ込み、没入状態に切り替わることとなる((4):ステップS25)。
【0032】
図12を参照して、ロックピン11が没入状態となることにより、解錠側突起41が解錠側スイッチ28に接触して、該解錠側スイッチ28がオン状態となる((5):ステップS26)。そして、この解錠側スイッチ28のオン状態が検知されると、ロックソレノイド15の通電がオフ状態となり、再度、係止手段17によるロータ12の回動規制が実行されて((6):ステップS27)、解錠動作が完了することとなる(ステップS28)。なお、この回動規制は、IGN電源23がオン状態の間保持されるので、ロックピン11の没入状態を確実に保持することが可能となる。なお、コード認証が正しく実行されたか否かの判定(ステップS22)において否定判定されると、所定の携帯キー30を所持しない者がイグニッションスイッチ21を操作したものとして、IGN電源23のオフ状態およびロック状態を保持して一連の制御を終了する。
【0033】
上記したように、本実施形態に係るハンドルロック装置によれば、イグニッションスイッチ21が操作された際に車両に固有の携帯キー30とのコード認証を実行するので、携帯キー30を所持しない者の操作では、ロック状態からアンロック状態へ切り替えることができないようにすることが可能となる。また、主電源のオフ時に、乗員によるロックピンの突出操作後に、すなわち、乗員の操作意思を確認した後で認証し、ロックするので、操作意思がないのにロックすることを防止できる。
【0034】
本発明に係るハンドルロック装置は、自動二輪車のほか、3輪/4輪自動車等の種々の車両に適用可能である。なお、ハンドルロックユニットに含まれる部品の形態、ロータ、ロックピン、係止手段、施錠側スイッチ、解錠側スイッチ、係止スイッチ、操作レバー、付勢手段等の形状や配置等は、上記した実施形態に限られず、種々の変形が可能である。例えば、認証ECUにハンドルロックECUが含まれる構成としたり、また、イグニッションスイッチを、ICチップを内装した物理的キーで回動されるキーシリンダで構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車のハンドルロック装置の構成を示すブロック図(アンロック状態)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車のハンドルロック装置の構成を示すブロック図(ロック状態)である。
【図3】施錠時の動作の流れを示す説明図(アンロック状態)である。
【図4】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロック可能状態)である。
【図5】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロック開始)である。
【図6】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロック状態)である。
【図7】施錠時の動作の流れを示す説明図(ロックNG)である。
【図8】施錠時の動作の流れを示す説明図(アンロック状態)である。
【図9】ハンドルロック装置をアンロック状態からロック状態に切り替える際の手順を示すフローチャートである。
【図10】解錠時の動作の流れを示す説明図(ロック状態)である。
【図11】解錠時の動作の流れを示す説明図(ロック解除)である。
【図12】解錠時の動作の流れを示す説明図(アンロック状態)である。
【図13】ハンドルロック装置をロック状態からアンロック状態に切り替える際の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
10…ハンドルロックユニット、11…ロックピン、12…ロータ(回動部材)、15…ハンドルロックソレノイド、13…ワイヤ(操作ケーブル)14…ロックレバー(操作部材)、16…駆動子、17…係止手段、18…ハンドルロックECU(制御部)、19…凸部、20…認証ECU(制御部)、21…イグニッションスイッチ、23…IGN電源(主電源)、24…付勢手段、26…係止スイッチ、27…施錠側スイッチ、28…解錠側スイッチ、30…携帯キー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員による操作部材の操作により施錠位置と解錠位置との間で移動可能なロックピンと、前記ロックピンを常に解錠位置に戻す方向の付勢力を与える付勢手段と、該ロックピンの突出と戻りの移動を規制する係止手段とを有するハンドルロック装置において、
前記係止手段を駆動制御する制御部を具備し、
ハンドルロック施錠時、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに車両の主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記操作部材の操作が検知されるか、あるいは、前記係止手段によるロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されたことが検知されると、前記車両に固有の携帯キーとのコード認証を実行し、
前記コード認証が正常に行われた場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態とし、
一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合には、再度、前記ロックピンの移動規制を解除し、ロックピンを戻すように構成されていることを特徴とするハンドルロック装置。
【請求項2】
ハンドルロック解錠時、前記制御部は、前記ロックピンが施錠位置にあるときに前記主電源をオフからオンに切り替える操作が行われると、前記携帯キーとのコード認証を実行し、
前記コード認証が正常に行われた場合には、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除に伴って前記ロックピンが解錠位置に戻ると、再度、ロックピンの移動規制を実行し、
一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態を保つように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドルロック装置。
【請求項3】
前記ロックピンが施錠位置にあることを検知する施錠側スイッチと、
前記ロックピンが解錠位置にあることを検知する解錠側スイッチとを具備することを特徴とする請求項1または2に記載のハンドルロック装置。
【請求項4】
ハンドルロック施錠時に、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに前記主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されることで前記施錠側スイッチまたは解錠側スイッチからの出力信号が検知されると、前記コード認証を実行することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のハンドルロック装置。
【請求項5】
前記ロックピンに連結される回動部材を具備し、
前記回動部材は操作ケーブルを介して前記操作部材に接続され、
前記ロックピンは、前記回動部材の回動に連動して往復運動を行うように前記回動部材に連結されると共に、前記往復運動によって没入状態から突出状態となることで車両の操向ハンドルを操舵不能にするように構成されており、
前記係止手段は、前記回動部材の回動を規制すると共に、前記係止手段による前記ロックピンの移動規制状態を検知する係止スイッチを備え、
前記付勢手段は、前記回動部材を前記ロックピンの戻り方向に回動させる付勢力を与えるように前記回動部材に取り付けられており、
前記施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、前記ロックピンの位置を検知するように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のハンドルロック装置。
【請求項1】
乗員による操作部材の操作により施錠位置と解錠位置との間で移動可能なロックピンと、前記ロックピンを常に解錠位置に戻す方向の付勢力を与える付勢手段と、該ロックピンの突出と戻りの移動を規制する係止手段とを有するハンドルロック装置において、
前記係止手段を駆動制御する制御部を具備し、
ハンドルロック施錠時、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに車両の主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記操作部材の操作が検知されるか、あるいは、前記係止手段によるロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されたことが検知されると、前記車両に固有の携帯キーとのコード認証を実行し、
前記コード認証が正常に行われた場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態とし、
一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合には、再度、前記ロックピンの移動規制を解除し、ロックピンを戻すように構成されていることを特徴とするハンドルロック装置。
【請求項2】
ハンドルロック解錠時、前記制御部は、前記ロックピンが施錠位置にあるときに前記主電源をオフからオンに切り替える操作が行われると、前記携帯キーとのコード認証を実行し、
前記コード認証が正常に行われた場合には、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除に伴って前記ロックピンが解錠位置に戻ると、再度、ロックピンの移動規制を実行し、
一方、前記コード認証が正常に行われなかった場合は前記ロックピンの移動規制を保持し、ロック状態を保つように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドルロック装置。
【請求項3】
前記ロックピンが施錠位置にあることを検知する施錠側スイッチと、
前記ロックピンが解錠位置にあることを検知する解錠側スイッチとを具備することを特徴とする請求項1または2に記載のハンドルロック装置。
【請求項4】
ハンドルロック施錠時に、前記制御部は、前記ロックピンが解錠位置にあるときに前記主電源をオンからオフに切り替える操作が行われると、前記ロックピンの移動規制を解除し、該解除後に前記操作部材の操作によってロックピンが施錠位置に突出されることで前記施錠側スイッチまたは解錠側スイッチからの出力信号が検知されると、前記コード認証を実行することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のハンドルロック装置。
【請求項5】
前記ロックピンに連結される回動部材を具備し、
前記回動部材は操作ケーブルを介して前記操作部材に接続され、
前記ロックピンは、前記回動部材の回動に連動して往復運動を行うように前記回動部材に連結されると共に、前記往復運動によって没入状態から突出状態となることで車両の操向ハンドルを操舵不能にするように構成されており、
前記係止手段は、前記回動部材の回動を規制すると共に、前記係止手段による前記ロックピンの移動規制状態を検知する係止スイッチを備え、
前記付勢手段は、前記回動部材を前記ロックピンの戻り方向に回動させる付勢力を与えるように前記回動部材に取り付けられており、
前記施錠側スイッチおよび解錠側スイッチは、前記ロックピンの位置を検知するように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のハンドルロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−240364(P2008−240364A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82558(P2007−82558)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】
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