説明

ハンドル装置及び該装置を備えた操舵システム

【課題】 良好な操作性が得られ、しかも小型化に適したハンドル装置を提供する。
【解決手段】 操作部材と一体的に回転可能に支持された回転軸と、回転軸が挿入される貫通孔を有し、回転軸の軸方向へ摺動可能に設けられる摺動部材と、摺動部材の、回転軸周りの回転を規制すると共に摺動を案内する案内部材と、摺動部材の摺動に連動して、回転軸の軸方向へ摺動可能に設けられる揺動部材と、揺動部材の揺動角度を検出する角度検出器とを備える。
回転軸の外周部には軸方向へ螺旋溝が形成され、案内部材には回転軸の軸方向へ案内溝が形成され、揺動部材には揺動中心に向けて係合溝を形成されており、摺動部材に設けた内突片を螺旋溝に挿入し、外突片を案内溝及び係合溝に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が操作するハンドル装置、及びハンドル装置の操作に応じて転舵輪を旋回させる操舵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトなどの車両では、運転者が操作するハンドルの回転を検出し、これに応じてモータなどのアクチュエータを作動させて、転舵輪の旋回を行う操舵システムが採用されている。このような操舵システムとしては、例えば特許文献1に示すように、ハンドルと転舵輪との機械的な連結がないものや、例えば特許文献2に示すように、ハンドルと転舵輪との機械的な連結があるものがある。
【0003】
又、操舵システムにおいてハンドルの回転を検出する手法としては、例えば特許文献1に示すように、回転軸の回転を直接検出する技術や、例えば特許文献2に示すように、回転軸に雄ねじを設けると共に、この雄ねじにピンが設けられたメタル(ナット)をねじ込み、回転軸の回転に伴うピンの上下動を検出する技術がある。又、例えば特許文献3に示すように、回転軸に渦巻き溝を設け、この渦巻き溝に検出装置の操作軸を係合させ、回転軸の回転に伴う操作軸の上下動を検出する技術もある。
【0004】
【特許文献1】特開平7−206399号公報
【特許文献2】特開平10−29553号公報
【特許文献3】特開平10−47952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操舵システムにおけるハンドルは、その回転に一定の限度を設けられることがあり、いわゆるロックトゥロックを数回転程度に制限したものがある。これにより、例えばハンドルが限界位置まで回転されたことを以って転舵輪が限界位置まで旋回されたことが分かるというように、運転者がハンドルの状態から転舵輪の状態を感得できるようにすることができ、操作性を向上させることができる。そして、ハンドルと転舵輪とを機械的に連結した構成のものであれば、ハンドル自体の回転を規制する以外にも、転舵輪の旋回に限度を設けることでハンドルのロックトゥロックを実現することができる。
【0006】
ところで、上記特許文献2に記載の技術ではハンドルを転舵輪と連結するために回転軸を長くしてあるが、上記の特許文献1に記載の技術のように、ハンドルと転舵輪との機械的な連結をなくした構成であれば、例えば回転軸の長さを短縮して小型化を図ることが可能である。但し、上記のようにハンドルのロックトゥロックを実現しようとする場合、転舵輪の旋回に限度を設けるといった手法を採ることができず、ハンドル自体の回転を規制する何らかの機構や装置が必要となるため、反って大型化を招くおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、良好な操作性が得られ、しかも小型化に適したハンドル装置を提供することを目的とする。又、このようなハンドル装置を利用することにより、利便性に優れた操舵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係るハンドル装置は、運転者が把握する操作部材と、該操作部材と一体的に回転可能に支持される回転軸とを備え、上記操作部材と共に上記回転軸を回転させるハンドル装置であって、上記回転軸が挿入される貫通孔を有し、上記回転軸の軸方向へ摺動可能に設けられる摺動部材と、上記摺動部材の、上記回転軸周りの回転を規制すると共に摺動を案内する案内部材と、上記摺動部材の摺動に連動して、上記回転軸の軸方向へ摺動可能に設けられる揺動部材と、上記揺動部材の揺動角度を操作角度として検出する角度検出器とを備え、上記回転軸の外周部に軸方向へ螺旋溝が形成されると共に、上記案内部材に上記回転軸の軸方向へ案内溝が形成され、更に、上記揺動部材に揺動中心に向けて係合溝が形成されており、上記摺動部材に、上記回転軸に向けて突出させた内突片と、外方に向けて突出させた外突片とが設けられ、上記回転軸が上記貫通孔に挿入された上で、上記内突片が上記螺旋溝に挿入され、上記外突片が上記案内溝及び上記係合溝に挿入されてなることを特徴とする構成としている。
【0009】
これによれば、運転者が操作部材と共に回転軸を回転させると螺旋溝も回転することから、これに挿入された内突片と共に摺動部材も回転しようとする。しかし、外突片が案内部材の案内溝に挿入されて回転軸周りの回転を規制されているので、摺動部材は螺旋溝のピッチに応じて回転軸の軸方向へ摺動する。ここで、内突片はもちろん外突片も摺動部材と一体的に軸方向へ移動するが、外突片が揺動部材の係合溝に挿入されていることから、摺動部材の摺動が外突片を介して揺動部材に伝えられ、摺動部材の摺動に連動して揺動部材が揺動する。そして、このようにして揺動する揺動部材の揺動角度が角度検出器により検出される。
従って、運転者が操作部材をどれだけ回転させたかが角度検出器による操作角度から把握でき、この操作角度に応じて、例えば車体に設けられた転舵輪を旋回させるようにすれば、運転者の操作意図を適切に反映した操舵システムとすることができる。又、操作しようとする対象物(例えば転舵輪)と回転軸とが機械的に連結されていなくてもよいので、回転軸を、回転軸自体の支持や螺旋溝の形成、操作部材との連結などに必要な最低限の長さとして、ハンドル装置全体としての小型化を図ることができる。もちろん、内突片及び外突片を利用して、摺動部材の回転を規制すると共に摺動部材を回転軸の軸方向へ摺動させ、更に揺動部材を揺動させるようにしているので、簡単な構造とすることができる。尚、回転軸と摺動部材は必ずしも接触している必要はなく、摺動を円滑に行わせるために回転軸と摺動部材との間に微小な隙間を設けておいてもよい。
【0010】
上記のハンドル装置においては、上記回転軸を、上記摺動部材よりも該回転軸の各端部寄りの位置で支持する一対の支持部材を備え、上記螺旋溝は、上記両支持部材の間で末端を有し、上記摺動部材は、上記内突片が上記末端に到達する位置まで摺動可能とされており、上記位置において、上記支持部材と上記摺動部材とを、上記回転軸の軸方向へ所定距離だけ離間させてなることを特徴とする構成とすることができる。
【0011】
このようにすれば、内突片が螺旋溝の一方の末端に到達した位置と、他方の末端に到達した位置との間に摺動部材の摺動可能な範囲が制限され、これに伴って回転軸、延いては操作部材の回転可能な範囲を制限でき、いわゆるロックトゥロックを実現できる。そのため、運転者は操作部材の状態から操作しようとする対象物(例えば転舵輪)の状態を感得することができ、対象物を思い通りに動作させるようハンドル装置を操作することができる。又、摺動部材を利用して操作部材の回転可能な範囲を制限し、しかも螺旋溝に挿入された内突片によって制限しているので、簡単な構造とすることができると共に占有するスペースが比較的少なくて済む。更に、内突片が螺旋溝の末端に到達し摺動部材が限界の位置まで摺動しても、支持部材と摺動部材との間に所定距離の隙間が確保されるので、支持部材と摺動部材とが接触するのを防止することができる。
【0012】
又、上記の目的を達成するため、本発明に係る操舵システムは、運転者の操作に応じて、車体に旋回可能に設けられた転舵輪を旋回させる操舵システムであって、本発明に係るハンドル装置と、上記転舵輪を旋回駆動する駆動装置と、上記転舵輪の旋回角度を検出する検出装置と、上記ハンドル装置による操作角度及び上記検出装置による旋回角度に応じて上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、上記制御装置は、上記操作角度に基づいて目標旋回角度を導出し、該目標旋回角度と上記旋回角度とが一致するように上記駆動装置を制御することを特徴とする構成としている。
【0013】
これによれば、運転者がハンドル装置を操作、つまり操作部材を回転させると、どれだけ回転させたかに応じた操作角度が角度検出器により検出され、制御装置は、この検出された操作角度に対応する目標旋回角度を導出し、目標旋回角度と実際の旋回角度とが一致するように駆動装置を制御する。つまり、実際の旋回角度の方が小さければ旋回角度が大きくなるように転舵輪を旋回させ、実際の旋回角度の方が大きければ旋回角度が小さくなるように転舵輪を旋回させる。
従って、操作角度に対し旋回角度が一対一で対応するように制御されるので、運転者は違和感なくハンドル装置を操作でき、ハンドル装置を操作して転舵輪を思い通りに旋回させることができる。もちろん、ハンドル装置と転舵輪、及びハンドル装置と駆動装置を機械的に連結する必要がないので設計上これらを自由に配置することが可能であり、ハンドル装置と転舵輪との位置関係が状況によって変化する車両にも簡単に適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明に係るハンドル装置によれば、操作しようとする対象物(例えば転舵輪)と回転軸とが機械的に連結されていなくてもよく、運転者が操作部材をどれだけ回転させたかが角度検出器による操作角度から把握できるので、回転軸を必要最低限の長さとしてハンドル装置全体としての小型化を図ることができる。更に、摺動部材に設けられた内突片及び外突片を利用して、摺動部材の回転の規制及び摺動、揺動部材の揺動をなすようにしているので、簡単な構造とすることができる。
又、本発明に係る操舵システムによれば、ハンドル装置を転舵輪や駆動装置と機械的に連結する必要がないので、設計上これらを自由に配置することが可能であり、運転者はハンドル装置を操作して転舵輪を思い通りに旋回させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を産業車両の一種であるフォークリフトに適用した実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように、この実施例1に係るフォークリフトは、車体1の後部に左右一対で後方へ向けて延設されたストラドルレッグ2を備えており、各ストラドルレッグ2の先端部に後輪3が設けられている。車体1の前部には前輪4が設けられ、この前輪4が走行駆動輪及び転舵輪として機能する。ストラドルレッグ2の基端部にはマスト装置5が設けられ、このマスト装置5に運転台6が昇降可能に支持されている。運転台6には荷を扱うフォーク7が後方へ向けて延設されており、運転台6の前部に立設された側壁に、このフォークリフトを運転するための操作ボックス8やアクセルレバー9、ハンドル装置10が設けられている。
【0017】
図2と図3に示すように、ハンドル装置10は、円盤状のホイール11と、ホイール11に連結されたシャフト12と、シャフト12をその中心軸回りに回転可能に支持する上下のサポート13を備えている。又、上下のサポート13の間で、シャフト12にスライダ14が嵌められており、後述するように、スライダ14はシャフト12の回転に伴ってシャフト12の軸方向へ摺動可能とされている。このスライダ14には、2本の円柱状に形成されたピン15が対向するように挿入されている。更に、ハンドル装置10には、上下のサポート13を連結して左右のガイド16が設けられ、右側のガイド16にポテンショメータからなる角度センサ17が設けられている。角度センサ17にはアーム18が取り付けられており、このアーム18とピン15が係合させてある。尚、ホイール11には操作をし易くするために上方に向けてノブ19が取り付けられており、運転者がこのノブ19を持って回転操作を行えるようになっている。
【0018】
図3に示すように、ホイール11は、シャフト12に固定され、ノブ19が固定される芯材11Aと、この芯材11Aを上方及び側方から覆うように設けられる被覆材11Bとからなり、被覆材11Bが芯材11Aに固定されることでホイール11全体及びシャフト12、ノブ19が一体化されている。シャフト12は、軸方向を上下に向けてその上端部を芯材11Aの中央部に連結されており、ホイール11よりも幾分下方の位置で上側のサポート13に支持されると共に、その下端部が下側のサポート13に支持されている。又、シャフト12の外周部には、上下のサポート13の間に位置するように一条の螺旋溝12aが形成されている。この螺旋溝12aは、方形断面でシャフト12の軸方向へ所定のピッチで形成されており、ここでは上側の末端から下側の末端までシャフト12回りに8周半分の螺旋溝12aが形成されている。
【0019】
このようなシャフト12に嵌められるスライダ14は、中央部に上下に貫通する貫通孔を有する円筒状に形成されている。スライダ14に挿入された各ピン15は、軸方向を左右に向けて一端側をスライダ14の内壁面(以下、内縁)よりも内側に突出させ、他端側をスライダ14の外壁面(以下、外縁)よりも外側に突出させてある。ここで、ピン15の、内縁よりも突出した部分が本発明における内突片に相当し、外縁よりも突出した部分が本発明における外突片に相当する。ピン15の内縁よりも突出した部分はいずれも螺旋溝12aに挿入されており、2本のピン15は螺旋溝12aに沿って半周分ずらせた位置に配置され、一方のピン15(図3において左側のピン15)が他方のピン15(図3において右側のピン15)に対し螺旋溝12aのピッチの1/2だけ上方に位置している。これにより、スライダ14の摺動可能な範囲は、左側(上側)のピン15の内縁よりも突出した部分が螺旋溝12aの上側の末端に到達した位置と、右側(下側)のピン15の内縁よりも突出した部分が下側の末端に到達した位置との間に制限されている。
【0020】
各ガイド16には、シャフト12の軸方向と平行に(つまり上下方向に)案内溝16aが形成されている。角度センサ17は、回転可能な入力軸をガイド16から外方(この実施例1では右外方)へ突出させてガイド16の内側(シャフト12側)に取り付けられており、入力軸のガイド16から突出させた部分にアーム18が取り付けられている。アーム18は基端部で角度センサ17の入力軸に取り付けられ、アーム18の先端部には、アーム18の長手方向(アーム18の揺動中心である角度センサ17の入力軸の中心とアーム18の先端部とを結ぶ方向)に係合溝18aが形成されている。そして、左側のピン15の外縁よりも突出した部分が、左側のガイド16の案内溝16aに挿入され、右側のピン15の外縁よりも突出した部分が、右側のガイド16の案内溝16aに挿入されると共にアーム18の係合溝18aに挿入されて係合されている。
【0021】
尚、案内溝16a及び係合溝18aは、ピン15の外縁よりも突出した部分の外径と実質的に同じ幅で形成されており、ピン15が挿入された状態で、案内溝16aは、ガイド16に対するピン15の上下方向への移動(摺動)を許容しつつ、ピン15の軸方向に対し直角で、かつ上下方向に対し直角となる方向(前後方向)への移動を規制する。
又、図3と図4に示すように、アーム18の長手方向を水平にした状態で、左側のピン15から上側の末端までの螺旋溝12aが4周分、右側のピン15から下側の末端までの螺旋溝12aも同じく4周分となるように取り付けられている。
【0022】
図4に示すように、運転者がノブ19を持ってホイール11と共にシャフト12を回転させると、ピン15の内縁よりも突出した部分が螺旋溝12aに挿入されているため、螺旋溝12aの回転に伴ってピン15と共にスライダ14も回転しようとする。しかし、ピン15の外縁よりも突出した部分は案内溝16aに挿入されているので、回転が阻止され、スライダ14はシャフト12の軸方向へ摺動する。つまり、図4に示すように、螺旋溝12aが平面視右回りに形成されていれば、シャフト12が平面視左回りに回転すればスライダ14は下方へ移動し、平面視右回りに回転すればスライダ14は上方へ摺動する。又、ピン15の外縁よりも突出した部分が係合溝18aに挿入されているので、このスライダ14の摺動に伴って、スライダ14が下方へ移動すればアーム18は下方へ揺動し、スライダ14が上方へ移動すればアーム18は上方へ揺動する。
【0023】
このようにして揺動するアーム18の揺動角度が角度センサ17により検出され、後述する制御装置24に入力される。角度センサ17は、アーム18の長手方向を水平にした状態を中心として揺動角度を検出し、ここでは、アーム18が上方へ揺動したときの角度を正の値、下方へ揺動したときの角度を負の値としている。
【0024】
図4に示すアーム18の長手方向を水平にした状態(アーム18の揺動角度が0の状態)からホイール11を平面視左回りに4回転させ、図5に示すように右側のピン15の内縁よりも突出した部分が螺旋溝12aの下側の末端まで到達すると、スライダ14が更に摺動することができなくなってシャフト12の回転が阻止され、運転者はホイール11をそれ以上平面視左回りに回転させることができなくなる。この状態からホイール11を平面視右回りに8回転させると、左側のピン15の内縁よりも突出した部分が螺旋溝12aの上側の末端まで到達し、シャフト12の回転が阻止され、運転者はホイール11をそれ以上平面視右回りに回転させることができなくなる。このようにして、このハンドル装置10のロックトゥロックは8回転とされている。
【0025】
尚、図5に示すように、右側のピン15の内縁よりも突出した部分が下側の末端まで到達した際には、下側のサポート13とスライダ14の下端との間に上下に距離Gだけの隙間が確保されるようになっており、左側のピン15の内縁よりも突出した部分が上側の末端まで到達した際には、上側のサポート13とスライダ14の上端との間に同様の隙間が確保される。これにより、上下のサポート13とスライダ14との接触が防止される。
【0026】
さて、図6に示すように、前輪4は、車体1の前部に設けられたドライブ装置20に支持されている。ドライブ装置20は、車体1に縦軸回りに旋回可能に支持されており、ドライブ装置20の上方には前輪4を駆動するための走行用モータ21と、ドライブ装置20を駆動するための操舵用モータ22とが配置されている。前輪4と走行用モータ21とはドライブ装置20に内蔵されたギヤを介して連結されており、走行用モータ21からの駆動トルクがドライブ装置20を介して前輪4に伝えられ、前輪4が回転する。ドライブ装置20と操舵用モータ22とも、上記とは異なるギヤを介して連結されており、操舵用モータ22からの駆動トルクがドライブ装置20に伝えられ、ドライブ装置20が旋回する。ここで、前輪4は、ドライブ装置20に支持されているので、前輪4とドライブ装置20とは一体的に旋回する。尚、前輪4とドライブ装置20は、操舵用モータ22が正転駆動されると平面視右回りに旋回し、逆転駆動されると平面視左回りに旋回するようになっている。
【0027】
又、図6に示すように、ドライブ装置20と操舵用モータ22とを連結するギヤのうち、ドライブ装置20に固定されたギヤには、ポテンショメータからなる角度センサ23が連結されており、前輪4及びドライブ装置20の旋回角度(以下、単に前輪4の旋回角度)がこの角度センサ23により検出され、車体1に搭載された制御装置24へ入力される。角度センサ23は、前輪4が直進状態にあるときを中心として前輪4の旋回角度を検出し、ここでは、前輪4が直進状態から平面視右側に旋回したときの角度を正の値、直進状態から平面視左側に旋回したときの角度を負の値としている。
【0028】
制御装置24には、ハンドル装置10の角度センサ17から操作角度(操作角度A)、及び角度センサ23から旋回角度(旋回角度C)が入力され、制御装置24は、これらに基づいて操舵用モータ22を制御する。
【0029】
制御装置24は、角度センサ17からの操作角度Aが入力されると、操作角度Aに対応する目標旋回角度Bを導出する。すなわち、制御装置24には、操作角度Aと目標旋回角度Bとの関係を定めた操舵モードが予め設定されており(幾つかの操舵モードの中から一つ選択して設定できるようにしてもよい。)、この操舵モードの下で目標旋回角度Bを導出する。例えば、図7において太い実線で示す操舵モードM1が設定されていれば、−A2≦A<−A1の範囲では、
B=(B2−B1)/(A2−A1)×(A+A1)−B1
−A1≦A≦A1の範囲では、
B=B1/A1×A
A1<A≦A2の範囲では、
B=(B2−B1)/(A2−A1)×(A−A1)+B1
の各演算により目標旋回角度Bを導出する。又、図7において細い実線で示す操舵モードM2が設定されていれば、−A2≦A<−A1の範囲では、
B=(B2−B0)/(A2−A1)×(A+A1)−B0
−A1≦A≦A1の範囲では、
B=B0/A1×A
A1<A≦A2の範囲では、
B=(B2−B0)/(A2−A1)×(A−A1)+B0
の各演算により目標旋回角度Bを導出する。尚、ここでB0<B1であるから、操舵モードM2が設定されている場合、−A1≦A≦A1の範囲では操舵モードM1よりも操作角度Aの変化に対する目標旋回角度Bの変化が緩やかなものとなり、−A2≦A<−A1及びA1<A≦A2の範囲では操舵モードM1よりも操作角度Aの変化に対する目標旋回角度Bの変化が急なものとなる。
【0030】
上記のようにして目標旋回角度Bを導出すると、制御装置24は、この目標旋回角度Bと角度センサ23からの旋回角度Cとの角度偏差(|B−C|)を求めると共に、目標旋回角度Bに対し旋回角度Cが大きいのか、小さいのかを判定する。そして、制御装置24は、旋回角度Cの方が目標旋回角度Bよりも小さい場合には旋回角度Cが大きくなる向き、つまり平面視右回りに前輪4及びドライブ装置20が旋回するよう操舵用モータ22を正転駆動し、旋回角度Cの方が目標旋回角度Bよりも大きい場合には旋回角度Cが小さくなる向き、つまり平面視左回りに前輪4及びドライブ装置20が旋回するよう操舵用モータ22を逆転駆動する。こうして、目標旋回角度Bと旋回角度Cとが一致し角度偏差が0になれば、制御装置24は操舵用モータ22の駆動を停止させる。
【0031】
このような実施例1によれば、運転者がハンドル装置10を操作、つまりホイール11を回転させると、それに応じた操作角度Aが角度センサ17により検出されるので、ホイール11をどれだけ回転させたかが把握でき、制御装置24が、検出された操作角度Aに対応する目標旋回角度Bを導出し、目標旋回角度Bと実際の旋回角度Cとが一致するように操舵用モータ22を制御することで、運転者は前輪4を思い通りに旋回させることができる。特に、操作角度Aに対し旋回角度Cが一対一で対応するように制御され、又、ロックトゥロックを8回転に制限してあるので、運転者は違和感なくハンドル装置10を操作でき、ホイール11の状態から前輪4の状態を感得することができる。
尚、操舵モードM1、M2の何れに設定されたとしても、−A1≦A≦A1の範囲では操作角度Aの変化に対する目標旋回角度Bの変化が比較的緩やかであるので前輪4を直進状態を維持しやすく、それ以外の範囲では操作角度Aの変化に対する目標旋回角度Bの変化が比較的急であるので、少ない操作で大きく前輪4を旋回させることができる。
【0032】
又、この実施例1のハンドル装置10によれば、シャフト12を必要最小限の長さとしてハンドル装置10を小型化することができる上、ピン15を利用して、スライダ14の回転を規制すると共にスライダ14を摺動させ、アーム18を揺動させるようにしているので、簡単な構造とすることができる。更に、スライダ14を利用して、シャフト12、延いてはホイール11の回転可能な範囲を制限しており、しかも螺旋溝12aに挿入されたピン15によって制限しているので、簡単な構造とすることができると共に占有するスペースを抑えることができる。もちろん、ハンドル装置10を前輪4やドライブ装置20、操舵用モータ22と機械的に連結する必要がないのでこれらを自由に配置でき、この実施例1に係るフォークリフトのように運転台6が昇降する車両にも好適に適用することができる。
【実施例2】
【0033】
上記の実施例1では、ホイール11はシャフト12の上端部に固定されており、ホイール11とシャフト12とが常に一体的に回転するようにしているが、これに代えて、ホイール11をシャフト12に相対的に回転可能に取り付け、このホイール11の動きとシャフト12に固定されたホイール30の動きとを連動させることにより、ホイール11とシャフト12とが一体的に回転するようにしてもよい。以下、このようにした実施例2につき説明する。
尚、この実施例2では、ハンドル装置10以外は上記の実施例1の同じ構成であるので説明を省略し、又、ハンドル装置10に関し上記の実施例1と同じ構成については同一符号を用い説明を簡略化して行う。
【0034】
図8に示すように、この実施例2のハンドル装置10は、円盤状のホイール11と、ホイール11に連結されたシャフト12と、シャフト12をその中心軸回りに回転可能に支持する上下のサポート13を備えており、更に、上下のサポート13の間でシャフト12に嵌められた円筒状のスライダ14と、スライダ14に挿入された左右のピン15を備えている。又、ハンドル装置10は、左右のガイド16と、右側のガイド16に設けられた角度センサ17と、角度センサ17に取り付けられたアーム18を備えており、アーム18と右側のピン15は係合させてある。尚、19はホイール11に取り付けられているノブである。
【0035】
図9に示すように、ホイール30は、ホイール11の下方位置でシャフト12の上部に固定されており、ホイール30には、ホイール11に向けてピン31が突設されると共に、係合孔30aが形成されている。ホイール11は、芯材11Aと被覆材11Bとからなり、芯材11Aにはホイール30に向けてピン32が突設されている。そして、芯材11Aとホイール30との間には、図10に示すように、これらと同心円状にスプリング33が配置され、このスプリング33の両端部がピン31及びピン32に係止されている。更に、芯材11Aにはホイール30に向けてピン34が突設されており、このピン34がホイール30の係合孔30aに挿入されている。
【0036】
図8と図9に示すように、上側のサポート13は下側サポート13よりも運転者から見て手前側に突出させてあり、この突出部には上下に貫通したねじ穴が形成されている。そして、このねじ穴に、下方からホルダ35が取り付けられている。ホルダ35は、上部がねじ軸とされると共に下部がノブとされており、その中央に貫通孔が形成されている。このホルダ35に、スプリング36を介してシュー37が取り付けられている。シュー37は円盤状の接触部と、ホルダ35の貫通孔に挿入される円柱状の案内部とからなり、スプリング36により上方に付勢され、接触部の上面をホイール30の下面に押し付けられている。図9に示すように、ホルダ35をねじ込み上方へ移動させると、スプリング36がシュー37を押し上げてシュー37がより強く押し付けられ、逆に、ホルダ35を下方へ移動させるとシュー37にかかる押し付け力は弱まる。
【0037】
図9に示すように、運転者がノブ19を持ってホイール11を回転させると、スプリング33を介してホイール30に回転が伝わるのでホイール11と一体的にホイール30及びシャフト12が回転する。そのため、ホイール30とシュー37との間に動摩擦が生じ、これがホイール30、延いてはホイール11を回転させる際の負荷として作用する。又、ピン15の内縁よりも突出した部分が螺旋溝12aに挿入されているため、螺旋溝12aの回転に伴ってピン15と共にスライダ14も回転しようとする。しかし、ピン15の外縁よりも突出した部分は案内溝16aに挿入されているので、回転が阻止され、スライダ14はシャフト12の軸方向へ摺動する。又、ピン15の外縁よりも突出した部分が係合溝18aに挿入されているので、このスライダ14の摺動に伴ってアーム18は揺動し、アーム18の揺動角度が角度センサ17により検出され、制御装置24に入力される。スライダ14が摺動して行き、ピン15の内縁よりも突出した部分が螺旋溝12aの上側又は下側の末端まで到達すると、スライダ14が更に摺動することができなくなり、シャフト12及びホイール30の回転が阻止され、運転者はホイール11をそれ以上回転させることができなくなる。
【0038】
このような実施例2のハンドル装置10によれば、ホイール30を設けるため上記の実施例1よりも幾分長くなるものの、シャフト12を必要最小限の長さとしてハンドル装置10を小型化することができる。又、実施例1と同様に、ピン15を利用して、スライダ14の回転を規制すると共にスライダ14を摺動させ、アーム18を揺動させるようにし、更に、シャフト12、延いてはホイール11の回転可能な範囲を制限しているので、簡単な構造とすることができると共に占有するスペースを抑えることができる。もちろん、ハンドル装置10は、前輪4やドライブ装置20、操舵用モータ22と機械的に連結する必要がないので自由に配置することができる。
【0039】
又、この実施例2によれば、ロックトゥロックを実現しているので、運転者はホイール11の状態から前輪4の状態を感得することができ、前輪4を思い通りに旋回させるようハンドル装置10を操作することができる。更に、ホルダ35のねじ込み具合を変えることで、シュー37とホイール30との接触圧を変えてホイール11の回転に対する負荷を調節することができるので、例えば運転者にとってホイール11が軽く回りすぎると感じられるときには、適当に負荷を増して操作性を高めることができる。もちろん、シュー37又はホイール30の磨耗によって負荷が低下したとしても、簡単に再調節して良好な操作性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例に係るフォークリフトの斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1の背面図である。
【図4】本発明の実施例1の側面図である。
【図5】本発明の実施例1の側面図である。
【図6】本発明の実施例1のシステム図である。
【図7】本発明の実施例1の制御特性図である。
【図8】本発明の実施例2の斜視図である。
【図9】本発明の実施例2の側面図である。
【図10】本発明の実施例2の平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車体
4 前輪
6 運転台
10 ハンドル装置
11 ホイール
12 シャフト
12a 螺旋溝
13 サポート
14 スライダ
15 ピン
16 ガイド
16a 案内溝
17 角度センサ
18 アーム
18a 係合溝
20 ドライブ装置
22 操舵用モータ
23 角度センサ
24 制御装置
30 ホイール
30a 係合孔
31 ピン
32 ピン
33 スプリング
34 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が把握する操作部材と、該操作部材と一体的に回転可能に支持される回転軸とを備え、上記操作部材と共に上記回転軸を回転させるハンドル装置であって、
上記回転軸が挿入される貫通孔を有し、上記回転軸の軸方向へ摺動可能に設けられる摺動部材と、上記摺動部材の、上記回転軸周りの回転を規制すると共に摺動を案内する案内部材と、上記摺動部材の摺動に連動して、上記回転軸の軸方向へ摺動可能に設けられる揺動部材と、上記揺動部材の揺動角度を操作角度として検出する角度検出器とを備え、
上記回転軸の外周部に軸方向へ螺旋溝が形成されると共に、上記案内部材に上記回転軸の軸方向へ案内溝が形成され、更に、上記揺動部材に揺動中心に向けて係合溝が形成されており、
上記摺動部材に、上記回転軸に向けて突出させた内突片と、外方に向けて突出させた外突片とが設けられ、上記回転軸が上記貫通孔に挿入された上で、上記内突片が上記螺旋溝に挿入され、上記外突片が上記案内溝及び上記係合溝に挿入されてなることを特徴とするハンドル装置。
【請求項2】
上記回転軸を、上記摺動部材よりも該回転軸の各端部寄りの位置で支持する一対の支持部材を備え、上記螺旋溝は、上記両支持部材の間で末端を有し、上記摺動部材は、上記内突片が上記末端に到達する位置まで摺動可能とされており、
上記位置において、上記支持部材と上記摺動部材とを、上記回転軸の軸方向へ所定距離だけ離間させてなることを特徴とする請求項1に記載のハンドル装置。
【請求項3】
運転者の操作に応じて、車体に旋回可能に設けられた転舵輪を旋回させる操舵システムであって、
請求項1又は請求項2に記載のハンドル装置と、上記転舵輪を旋回駆動する駆動装置と、上記転舵輪の旋回角度を検出する検出装置と、上記ハンドル装置による操作角度及び上記検出装置による旋回角度に応じて上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記操作角度に基づいて目標旋回角度を導出し、該目標旋回角度と上記旋回角度とが一致するように上記駆動装置を制御することを特徴とする操舵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−224815(P2006−224815A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41027(P2005−41027)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】