説明

ハードコートフィルムおよびその製造方法、ならびにそれを用いた反射防止フィルム

【課題】 少ない工程で、低コストで、自己支持性を有し、従来のハードコートフィルムと同等以上の機能を有するハードコートフィルム、反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明のハードコートフィルムは、透明架橋フィルムと、前記透明架橋フィルムの少なくとも片面に積層されたハードコート層とを備えるハードコートフィルムであって、波長400nm〜600nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が、1%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムおよび反射防止フィルムに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネル(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の各種ディスプレイ用フィルム、あるいはカーナビや携帯情報端末(PDA)などのタッチパネルフィルムなどに用いられる光学フィルムの基材として用いられるポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリカーボネートフィルム(PC)、ポリメチルメタクリレートフィルム(PMMA)、トリアセチルセルロースフィルム(TAC)、非晶性ポリオレフィン(非晶PO)などの透明プラスチックフィルムは、ガラスと比べて、軽量・割れにくい・曲げられるといった好適な性質を有する。一方、フィルム表面の硬度が低く、また耐摩耗性も不足しているため、他の固い物質との接触、引っ掻きなどにより表面に損傷を受けやすく商品価値を著しく低下させる、あるいは使用不可能となる場合がある。
【0003】
このため、上記の基材フィルム上に耐擦傷性や耐摩耗性に優れたハードコート層を設ける方法が知られており、ハードコートフィルムとして汎用的に利用されている。しかしながら、このようなハードコートフィルムを光学フィルムとして、使用する場合には、設けたハードコート層と基材フィルムとの屈折率差が原因となり、虹色のむら(干渉縞)が発生する、といった問題が発生する。
【0004】
この干渉縞は、多積層体の各層の界面で反射する光の干渉により、3波長蛍光灯下で観察すると虹彩状模様が観察される現象で、ディスプレイ用途に用いる場合には視認性を低下させるひとつの原因となっている。
【0005】
干渉縞を改善する手段として、基材とハードコート層の屈折率差を小さくする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この文献では、基材とハードコート層の間に、両者の中間の屈折率をもつ中屈折率層を設けたものが提案されている。しかし、中屈折率層を設けても、屈折率が段階的に変化するに過ぎない。このため、干渉縞は低減しても無くなるまでには至らない。また中間層を設ける工程が必要となるためコスト高になるという問題もある。
【0006】
また、凹凸構造を設けた基材上にハードコート層を形成した表面保護シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この表面保護シートでは、凹凸構造がハードコート層と基材との界面での光の反射を散乱させる。この表面保護シートでは、基材上に凹凸構造を設ける工程が必要であり、コスト高になるという問題がある。
【0007】
さらに、基材フィルムを溶解または膨潤させる溶剤を含む樹脂を用いて、ハードコート層を基材に塗布してハードコート層を形成した光学フィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法では、基材フィルムを溶解または膨潤させる溶剤を用いなければならず、適用できる基材フィルムや溶剤が限られる。例えば、高度に二軸延伸したポリエステルフィルムなどでは、オルトクロロフェノールのような特殊な溶剤に限定される。また、溶剤の毒性により、作業環境が極めて悪くなる。また、この文献に記載の方法では、干渉縞の低減はできるが、ヘイズが高くなる。このため、ディスプレイ用途などで要求される低いヘイズを得ることができず、視認性が悪くなるという問題がある。
【0008】
また、これらの文献で開示されたハードコートフィルムは、基材フィルムを製膜後、ハードコート層を設けるという、2段階の工程と必要とする。このため、さらに少ない工程で、同等以上の機能を達成するハードコートフィルムが望まれる。
【特許文献1】特開2000−111706号公報
【特許文献2】特開平8−197670号公報
【特許文献3】特開2003−205563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明では、上記課題を解決し、少ない工程で、低コストで、自己支持性を有し、従来のハードコートフィルムと同等以上の機能を有するハードコートフィルム、反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
本発明のハードコートフィルムは、透明架橋フィルムと、前記透明架橋フィルムの少なくとも片面に積層されたハードコート層とを備えるハードコートフィルムであって、波長400nm〜600nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が、1%以下である。
【0012】
更には、上記ハードコートフィルムは、波長600nm〜740nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が、2%以下であるとより好ましい。
【0013】
上記透明架橋フィルムを構成する成分としては、ビスフェノール型または脂環式型のエポキシ化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とを、エステル反応させて得られるビニルエステル組成物100重量部と、多官能アクリレート5〜50重量部とを混合した混合物の硬化・架橋物であるのが好ましい。
【0014】
上記透明架橋フィルムのレターデーションが5nm以下であり、上記ハードコートフィルムの鉛筆硬度が2H以上であるのが好ましい。
【0015】
上記ハードコート層は、分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む多官能性(メタ)アクリル化合物と、導電性粒子とを含有する液状活性線硬化型組成物の硬化物であるのが好ましい。
【0016】
本発明の反射防止フィルムは、上記ハードコートフィルムの上記ハードコート層側に、さらに低屈折率層が積層された、反射防止フィルムであって、波長400〜700nmにおける上記低屈折率層側の表面反射スペクトルが次の2条件を充足するものであるのが特に好ましい形態である。
(1)最低反射率が1%以下、
(2)波長400nmおよび700nmにおける反射率が3%以下
【0017】
上記反射防止フィルムは、波長400nm〜600nmにおける前記低屈折率層側の表面反射スペクトルのうねりの振幅最大値が、0.5%以下であると好ましい。
【0018】
本発明のハードコートフィルムは、透明架橋フィルム形成混合物塗布液と液状活性線硬化型組成物塗布液とを、非混合的に、かつそれぞれ層状に吐出する工程と、吐出された塗布液を、基材上に流延する工程と、前記流延した塗布液に、活性線を照射する工程とを含み、製造される方法を用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハードコートフィルムでは、ハードコート層側の平均うねり振幅が所定の値以下である。これにより、虹彩模様が発生せず、ハードコート層と基材との接着性に優れるハードコートフィルムを提供することができる。
また、本発明のハードコートフィルムでは、透明架橋フィルムの材料に所定量の多官能アクリレートを用いるのが好ましく、これにより、十分な表面硬度と、自己支持性を有するハードコートフィルムを提供することができる。
本発明の本発明のハードコートフィルムは、透明架橋フィルムとハードコート層とを一工程で形成する方法を用いるのがコストの面で有利であるので望ましい製法である。
本発明のハードコートフィルムを用いれば、反射防止フィルム、偏向板保護フィルム、電磁波シールドフィルム、拡散フィルム、プリズムフィルムなどの光学用フィルム部材、銘板、化粧板などの基材フィルムや、各種ディスプレイの基材フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは、透明架橋フィルムと、この透明架橋フィルムの少なくとも片面に積層されたハードコート層とを備える。
【0022】
(透明架橋フィルム)
本発明において使用する透明架橋フィルムは、ビスフェノール型または脂環式型のエポキシ化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とを、エステル反応させて得られるビニルエステル組成物100重量部と、多官能アクリレート5〜50重量部とを混合した混合物の硬化・架橋物であるのが最も好ましいが特にこれに限定するものではない。
【0023】
ここで、ビニルエステル組成物とは、エポキシ基の開環反応により生成した2級水酸基と、(メタ)アクリロイル基とを同一分子中に共有する一連のオリゴアクリレートと定義する。かかるアクリレートは、ビスフェノール型または脂環式型のエポキシ化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とをエステル化反応させて得られるものであることが好ましい。
【0024】
かかるビスフェノール型または脂環式エポキシ化合物としては、以下の様なものを例示することができる。すなわち、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応物、水素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、シクロヘキサンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、ノルボルナンジアルコールとエピクロルヒドリンとの反応物、テトラブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、トリシクロデカンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカーボネート、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシカルボキシレートなどである。
【0025】
次に、透明架橋フィルムの第2の成分である多官能アクリレートとは、一分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系化合物としては、三菱レーヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”など)、東亜合成化学工業株式会社;(“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0026】
これらの多官能アクリレートはフィルムの表面硬度を向上させるのに有効である。多官能アクリレートの配合量は、上記のビニルエステル組成物100重量部に対し、5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部、更に好ましくは15〜25重量部である。この多官能アクリレートの配合量が、5重量部未満では表面硬度が不足し、逆に50重量部を超える場合にはフィルムの伸度が低下して、もろさが発現し、自己支持性に問題が生じる場合がある。
【0027】
なお、本発明の透明架橋フィルムの表面硬度は、好ましくは耐擦傷性の点から鉛筆硬度でH以上、より好ましくは2H以上である。かかる表面硬度も勘案して多官能アクリレートの配合量は決定される。
【0028】
また、本発明の透明架橋フィルムには、上記のビニルエステル組成物、多官能アクリレートの混合物以外に、アリルエステルモノマ−やアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーのような化合物を本発明の効果を阻害しない範囲内で、低粘度化などの目的で使用しても良い。
【0029】
すなわち、かかるアリルエステルモノマ−としては、オルソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、コハク酸ジアリルなどを使用することができる。
【0030】
また、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーとしては、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、モルホリンアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,6−ジブロム−4−tert−ブチルフェニルアクリレート、各種のウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどを使用することができる。
【0031】
また、本発明の透明架橋フィルム中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有してもよい。
【0032】
例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末、架橋高分子粒子など)、顔料、染料、界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩のようなイオン性導電剤、ポリチオフェンドープ体、ポリアニリンドープ体のような電子伝導性物質などの帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを含有してもよい。
【0033】
本発明の透明架橋フィルムは、リターデーションが好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下、特に好ましくは1.5nm以下であるのがよい。透明架橋フィルムのリターデーションをこのような値に制御することにより、光学的にも等方である特性を有することができる。本発明においては、光学的等方性の指標としてリターデーションを用いた。
【0034】
本発明にいうリターデーションとは、フィルム面内のリターデーション(Re)、およびフィルム厚み方向のリターデーション(Rth)の両方を表し、フィルムの主屈折率をn(面内幅方向)、n(面内長手方向)、n(厚み方向)とし、フィルムの厚さをd(nm)とすると、Re=|n−n|×d、Rth=|(n+n)/2−n|×dで求める。
【0035】
かかるRe、Rthは、市販の自動複屈折計(例えば王子計測社製、「KOBRA−21ADH」)を用いて測定することができる。
【0036】
本発明の透明架橋フィルムの厚みは、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは5〜200μm、より好ましくは20〜120μmであるのがよい。
【0037】
(ハードコート層)
本発明のハードコート層は、分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む多官能性(メタ)アクリル化合物と、導電性粒子とを、溶剤に溶解または分散させた液状活性線硬化型組成物を硬化させて形成させるのが好ましい。
【0038】
本発明のハードコートフィルムにおいては、透明架橋フィルムの少なくとも片面にハードコート層が積層される。本発明において、ハードコート層とは、透明架橋フィルムより表面硬度が高いことを意味する。本発明のハードコート層は、実用上、好ましくは本発明で規定する鉛筆硬度2H以上が望ましい。
【0039】
本発明において、ハードコート層を構成する活性線硬化型樹脂は、電子線または紫外線などを照射することによって硬化する透明な樹脂であればよく、特に(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性等が向上するので本発明においては特に好ましい。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
ハードコート層を構成する活性線硬化型樹脂成分は、粒子の分散性を向上させるため、カルボキシル基やリン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物とするのが好ましい。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、接着性向上成分としてアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性をもった結合を有する(メタ)アクリレート化合物やウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の、ウレタン結合を有している樹脂の添加が好ましい。
【0041】
ハードコート層に含まれる導電性粒子とは、金属微粒子、あるいは金属酸化物粒子をさす。なかでも金属酸化物微粒子は透明性が高く好ましい。金属酸化物微粒子としてはアンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、スズ含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等が特に好ましく、より好ましくはスズ含有酸化インジウム粒子(ITO)、アンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)である。
【0042】
導電性粒子は、数平均1次粒子径(BET法により測定される球相当径)が0.1μm以下の粒子が好適に使用されるが、より好ましくは0.001〜0.07μm、さらに好ましくは0.005〜0.05μmの粒子径のものが用いられる。該数平均粒子径が、この範囲を超えると形成されるハードコート層の透明性を低下させ、所望のヘイズ値を得ることが困難になる場合がある。
【0043】
本発明のハードコート層形成において、好ましく使用される溶剤は、塗布または印刷作業性を改善し、また金属化合物粒子の分散性を改善するために配合するものであり、活性線硬化型樹脂を溶解するものであれば、従来から公知の各種有機溶媒を使用することができる。特に、本発明においては、樹脂組成物の粘度の安定性、乾燥性の観点から沸点が60〜180℃の有機溶媒が好ましく、さらに、そのうち酸素原子を有する有機溶媒が導電性粒子との親和性が良いので好適である。かかる有機溶剤としては、具体的には、例えば、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサンノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトン等が好適に挙げられる。これらは単一で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】
また有機溶剤の量は、塗布手段や、印刷手段に応じ作業性の良い状態の粘度に液状活性線硬化型樹脂組成物がなるように任意の量を配合すればよいが、本発明では液状電離放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が1〜60重量%、好ましくは、5〜50重量%程度とするのが適当である。ハードコート層の厚みは0.1〜30μm好ましくは1〜20μm、更に好ましくは2〜15μmとするのが表面硬度、反射防止機能の両方の点で望ましい。
【0045】
上記透明架橋フィルムおよびハードコート層には、上記組成物を架橋させるために硬化方法に応じて重合開始剤を添加することができる。架橋させる方法としては、加熱架橋または活性線架橋、例えば紫外線、電子線などによる架橋の、いずれかの方法または両者を併用して用いることができる。まず、加熱架橋する場合は、重合開始剤として有機過酸化物を用いるのが有効である。かかる有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステルなど公知のものを使用することができ、具体的には以下に示すようなものが例示しうる。すなわち、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1,3,3−トリメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキサンなどを使用することができる。
【0046】
また、紫外線架橋する場合は、重合開始剤として、以下に例示するような公知の光重合開始剤を使用することができる。
【0047】
すなわち、2,2−ジメトキシ−1,2−ジゲニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モンフォリノプロパノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチルー1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノンなどを使用することができる。また必要に応じて架橋促進剤を添加することもできる。これらの市販品としては、ESACURE KIP150、ESACURE KK、ESACURE 75LT、ESACURE KIP100F、ESACURE KIPIT、ESACURE KTO46(以上LAMBERTI社製)等をあげることができる。また必要に応じて増感剤などを使用することができる。
【0048】
透明架橋フィルムにおいて、かかる重合開始剤の添加量は、上記ビニルステル組成物と多官能アクリレートの混合物100重量部に対し、好ましくは0.05〜10.0重量部、より好ましくは1〜5重量部の範囲とするのがよい。また、ハードコート層において、かかる重合開始剤の添加量は、ハードコート層を構成する活性線硬化型樹脂成分100重量部に対し、好ましくは0.05〜10.0重量部、より好ましくは1〜5重量部の範囲とするのがよい。
【0049】
なお、電子線架橋の場合は特に開始剤を用い無くても良い。また紫外線によって架橋させる場合には、紫外線照射を窒素雰囲気下で行うのが効率的である。本発明においては、電子線または紫外線により架橋する方法が好ましく採用される。
【0050】
(平均うねり振幅)
本発明のハードコートフィルムでは、波長400nm〜600nmにおけるハードコート層側の平均うねり振幅が、1%以下であることが要求される。平均うねり振幅は、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下である。
【0051】
ハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が1%より大きくなると、蛍光灯などの波長強度分布を有する光が反射したときに虹彩模様が発生し、視認性が悪化する。また平均うねり振幅が1%を超える構成の場合には、ハードコート層と透明架橋フィルムとの接着性が低下する。
【0052】
本発明で述べる波長400〜600nmにおける反射率の平均うねり振幅とは、以下の方法で測定される。まずハードコートフィルムのハードコート面を測定面とし、その反対面を60℃光沢度(JIS Z 8741)が10以下になるようにサンドペーパーなどで粗面化する。次に粗面化した部分について波長400〜600nmにおける可視光線平均透過率が5%以下となるように黒色に着色して測定サンプルとする。測定面を分光光度計にて入射角10度で測定した時に観測される結果の一例を図1に示す。図1において曲線(c)は、各波長(nm)において、測定された反射率(%)との関係を表した結果である。反射率において、波長400〜600nmにおけるうねり、すなわち波長の変化に伴って反射率が上下に波打つ変動の微積分学的意味での極大値(一次微分係数=0、二次微分係数<0)と極小値(一次微分係数=0、二次微分係数>0)の差をうねり振幅(a)と定義する。図1で示すように波長400〜600nmにおける反射率のうねりの山頂部分頂点(極大点)を結んだ線(山頂線(b))とうねりの谷底部分(極小点)を結んだ線(谷底線(d))の2つの反射率の折れ線グラフの差、すなわち、うねり振幅(a)を境界点(400、600nm)を含めて20nm間隔のサンプル点11箇所(波長が(400+20*i(i=0〜10の整数))nmとなる箇所)で求め、この11個の値を平均した値を平均うねり振幅と定義する。
【0053】
本発明のハードコートフィルムは、上記に加え、同様にして測定した波長600〜740nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が2%以下、好ましくは1%以下である場合、より虹彩模様が低減できるので好ましい。
【0054】
波長600〜740nmにおけるうねりは、透明架橋フィルムとその上に設けたハードコート層との界面で生じる干渉反射によって生じる。従って、波長600〜740nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅を上記の値とすることで、透明架橋フィルムとその上に設けたハードコート層との界面で生じる干渉縞を目立たなくすることができるので、振幅が小さくなる。また、言い換えれば透明架橋フィルムとその上に設けたハードコート層との間の界面が不明確となれば干渉縞が抑制され振幅が小さくなる。
【0055】
本発明のハードコートフィルムは、可視光域での全光線透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上であって、ヘイズ(透明プラスチックの内部又は表面の不明瞭なくもり様の外観の度合い)が好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。このような値とすることで、本発明のハードコートフィルムは、透明性に優れる。
【0056】
[ハードコートフィルムの製造方法]
本発明のハードコートフィルムは、例えば以下の方法で製造できる。
【0057】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、透明架橋フィルム形成組成物塗布液と液状活性線硬化型組成物塗布液とを、非混合的にそれぞれ層状に吐出する工程と、吐出された塗布液を、基材上に流延する工程と、前記流延した塗布液に、活性線を照射する工程とを含む。
【0058】
図2は、本発明のハードコートフィルムの製造方法において、透明架橋フィルム形成混合物塗布液と液状活性線硬化型組成物塗布液とを非混合的にそれぞれ層状に吐出するための塗布装置の一例を説明する概念図である。図2の例では、塗布装置は、2層の塗膜となる透明架橋フィルム形成組成物塗布液と液状活性線硬化型組成物塗布液を吐出する、1つの吐出口を有する2層ダイ3が用いられている。塗布装置内部の透明架橋フィルム形成混合物塗布液用マニホールド1と液状活性線硬化型組成物塗布液用マニホールド2とを用いて透明架橋フィルム形成混合物と液状活性線硬化型組成物とを吐出口4の長手方向に拡幅配分する。その拡幅配分され吐出された各塗布液を非混合的に吐出口4にて合流させ、吐出口4から吐出して、基材5に塗布する。本発明において、非混合的に合流させるとは、2つの塗液を合流させるに際し、一つの塗液の領域ともう一つの塗液の領域とが区別可能に残存するように合流させることをいう。なお、2つの塗液の領域の境界部において多少の塗液の混合が発生することは排除しない。
【0059】
より具体的には、上記2層ダイにおいて、吐出口2の一部から、透明架橋フィルムを構成するビニルエステル組成物と多官能アクリレートとの混合物塗布液を吐出し、吐出口2の他の部分からハードコート層を形成する液状活性線型樹脂組成物塗布液を吐出する。両組成物を非混合的に吐出し、フィルム、金属板、回転するドラム上、あるいは無端の駆動ベルトなどの基材5上に、ハードコート層が空気面となるように流延する。流延した組成物を乾燥した後、紫外線もしくは電子線を照射して架橋する。得られたフィルムは、ドラム、もしくは該ベルトから連続的に剥離し巻き取り、本発明のハードコートフィルムを得る。この過程において、上層側を形成するハードコート層の液状活性線型樹脂組成物が下層のビニルエステル組成物へ浸透することにより、ハードコート層の屈折率からビニルエステル組成物の屈折率へと段階的に屈折率が変化している混合領域が形成され、明確な界面がなくなる。これにより、虹彩模様の発生しないハードコートフィルムが、1工程で形成される。
【0060】
透明架橋フィルム形成混合物塗布液と液状活性線硬化型組成物塗布液とを非混合的にそれぞれ層状に吐出する方法は、図3の例に示す2つの吐出口を有するダイなどを用いたダイコート法やスプレーコート法なども用いることができる。図3の例では、上記2層ダイにおいて、一方の吐出口4から、透明架橋フィルムを構成する透明架橋フィルム形成組成物塗布液を吐出し、他方の吐出口4’からハードコート層を形成する液状活性線型樹脂組成物を吐出する。
【0061】
このように、本発明のハードコートフィルムの製造方法によれば、透明架橋フィルムとハードコート層を同時に形成することができる。この結果、従来よりも少ない工程数により虹彩模様のないハードコートフィルムを得ることができる。更には、透明架橋フィルムとハードコート層との接着性を向上させるという効果を奏する。
【0062】
本発明の製造方法において、得られたフィルムをドラムもしくは該ベルトから連続的に剥離し巻き取る際には、過剰な応力をかけないようにすることが重要である。すなわち、剥離などの際にフィルムに過剰な応力が作用するとフィルム面内に分子配向を生じ、リターデーションが大きくなるため、ドラムやベルトの表面に低応力で剥離可能な処理を施すのが有効である。このため、使用するフィルム、金属板、ドラムおよびベルト表面は、架橋後のフィルムの剥離応力を軽減し、フィルムの等方性を維持するためにシリコーン、フッ素化合物などにより表面処理されたものを用いるのが好ましい。
【0063】
[反射防止フィルム]
本発明のハードコートフィルムのハードコート層側にさらに低屈折率層を積層すると、反射防止フィルムを得ることができる。本発明において、低屈折率層とは、JIS K 7105(1981)に基づき、アッベ屈折率計により測定した屈折率が1.42以下の層であり、かつハードコート層との屈折率差が0.15以上である層をいう。
【0064】
本発明の低屈折率層は、シランカップリング剤〔1〕、アルコキシ基を有するフッ素化合物〔2〕を含むことが好ましく、更にシリカ粒子を含むのが好ましい。シランカップリング剤〔1〕成分としては、一般式R(1)R(2)SiX4−(a+b)で表される化合物ないしはその加水分解生成物である。ここで、R(2)はアルキル基、アルケニル基、アリル基、R(1)はハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基、ないしシアノ基から選ばれるものである。Xは炭素数1から4のアルコキシ基から選ばれた加水分解可能な置換基である。a、bは各々0、1または2であり、かつa+bが1,2または3である。アルコキシシリル基を有するフッ素化合物〔2〕は、一般式R(3)R(4)SiX4−(c+d)で表される化合物ないしはその加水分解生成物である。ここで、R(3)、R(4)、は各々フッ素置換したアルキル基、アルケニル基、アリル基、メタクリルオキシ基、ないし(メタ)アクリロイル基を有する炭化水素基である。Xは炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれた加水分解可能な置換基である。c、dは各々0,1,2または3であり、かつc+dが1,2または3である。本発明では低屈折率層を形成する組成物中に必要に応じて、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0065】
また本発明の低屈折率層には、硬度を高めるために、シリカ微粒子〔3〕を併用するのが好ましい。シリカ微粒子〔3〕成分は、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイド状に分散したシリカ微粒子等が挙げられるが、粒度分布が揃っている球状シリカ微粒子を含有させるのが好ましい。該シリカ微粒子〔3〕の粒径は平均1次粒子径(球相当径:BET法)が0.001〜0.1μm、好ましくは0.005〜0.07μmの粒子径のものが好適である。特に、前記シリカ微粒子〔3〕として、多孔質状、もしくは、中空シリカ微粒子は内部に空気を含有するため、屈折率低減効果が大きく好適に用いることができる。その場合、微粒子の空隙率としては低屈折率化と表面硬度の点から15%以上50%以下が好ましい。
【0066】
中空シリカ微粒子の例としては、例えば、特開2001−233611号公報、J.Am.Chem.soc.、2003、125、P316−317などの文献に記載がある、中空シリカ微粒子を用いることができる。
【0067】
上記のシリカ微粒子を低屈折率層に含有させることにより、表面硬度が向上し、更に、低屈折率層の表面に、シリカ微粒子に由来する微小な凹凸が形成される。この微細な凹凸により、画像鮮明性を損なうことなく反射防止と映り込み低減効果を付与することができる。
【0068】
このような低屈折率層を形成するには、低屈折率形成組成物中のシリカ微粒子の添加量を20〜70重量%、好ましくは30〜50重量%とし、低屈折率層の厚みを70〜150nm、好ましくは85〜125nmとするのが望ましい。
【0069】
また、低屈折率層を形成する方法としては、シランカップリング剤〔1〕、アルコキシ基を有するフッ素化合物〔2〕、もしくは、あらかじめこれらの混合物を共重合させたもの、およびシリカ微粒子〔3〕を含有する組成物を、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトンから選ばれる少なくとも1種以上の溶剤に分散させた液を、塗布した後、乾燥・硬化させ、低屈折率層を形成する方法を用いることが好ましい。硬化をさせる場合に、硬化触媒を用いてもよい。
【0070】
硬化触媒としては、シランカップリング剤〔1〕の縮合反応を促進するものが好ましく、このようなものとして酸化合物を挙げることができる。これらの中で、ルイス酸化合物が好ましい。ルイス酸化合物の例として、アセトアセトキシアルミニウム等の金属アルコキシドや金属キレートなどを挙げることができる。この硬化触媒の量は、適宜決定することができるが、例えば、シランカップリング剤〔1〕100重量部に対して、通常0.1〜1.0重量部である。
【0071】
本発明の反射防止フィルムは、波長400〜700nmにおける低屈折率層側の表面反射スペクトルが、(1)最低反射率が1%以下、(2)波長400nmおよび700nmにおける反射率が3%以下、の2条件を充足するのが特に好ましい形態である。
【0072】
可視光領域での最低反射率は、1%以下、好ましくは、0.8%以下、より好ましくは0.7%以下である。最低反射率が1%を超える場合には反射防止機能が不十分であり、写り込み等が顕著になる傾向にある。
【0073】
また、400nmにおける反射率が3%を超えると、反射光の色調が青みを帯びるため好ましくない。同様に、700nmにおける反射率が3%を超えると、反射光の色調が赤みを帯びるため好ましくない。本発明における400nmにおける反射率は3%以下、より好ましくは2%以下であるのが特に好ましい。
【0074】
また、本発明で述べる最低反射率とは、反射防止フィルムの波長400〜700nmでの表面反射率の最低の反射率をいう。最低反射率の測定方法を以下に述べる。測定面(反射防止層側表面)の反対面を60°光沢度(JIS Z 8741)が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、全光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色する。測定面を分光光度計にて、測定面から5°の入射角で、波長領域380〜800nmにおける絶対反射スペクトルを測定し、波長400〜700nmでの最低の反射率を求める。
【0075】
さらに、本発明における反射防止層を設けた反射防止フィルムは、波長400nm〜600nmにおける表面反射スペクトルのうねり振幅最大値が0.5%以下であると、干渉縞が目立たなくて好ましい。より好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。波長400nm〜600nmにおける表面反射スペクトルのうねり振幅最大値が小さくなると、干渉縞が観察されなくなる。
【0076】
本発明における反射防止フィルムにおいて、波長400〜700nmにおける表面反射率のボトム反射率を前記の範囲とするためには、低屈折率層(a)、およびハードコート層(b)の屈折率及び厚さを以下のように調整することが好ましい。低屈折率層(a)の屈折率(na)が1.42以下、かつ、低屈折率層(a)とハードコート層(b)の屈折率差が0.15以上であることが好ましい。さらには、ハードコート層(b)の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましく、さらに好ましくは1.55〜1.69である。また低屈折率層(a)の屈折率(na)は、1.25〜1.42であることが好ましく、さらに好ましくは1.30〜1.38である。
【0077】
さらに透明架橋フィルム(c)の屈折率も調整することが好ましい。透明架橋フィルムの屈折率(nc)は、1.45〜1.60が好ましい。
【0078】
本発明の反射防止フィルムに低反射性が付与されるためには、ハードコート層(b)の厚さは0.1〜30μmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜20μm、最も好ましくは2〜15μmである。また、低屈折率層(a)の厚さは70〜150nmが好ましく、さらに好ましくは85〜125nmである。ハードコート層(b)および低屈折率層(a)の厚さがこの好ましい範囲であると、低屈折率層(a)側の該フィルム表面反射率が低反射性となる。
【0079】
本発明における透明架橋フィルム、ハードコート層、低屈折率層の屈折率は、JIS K 7105(1981)に基づき、アッベ屈折率計により測定したものであり、ハードコート層の屈折率は、1.5〜2.5、更に好ましくは1.53以上2.0以下であることが更に好ましい。また低屈折率層の屈折率は、1.42以下、更には1.40以下が更に好ましい。
【0080】
本発明のハードコートフィルムは、表面硬度、透明性、光学的等方性に優れた自己支持性を有するフィルムである。このため、本発明のハードコートフィルムは、反射防止フィルム、偏向板保護フィルム、電磁波シールドフィルム、拡散フィルム、プリズムフィルムなどの光学用フィルム部材、銘板、化粧板などの基材フィルムとして好適に使用することができる。
【0081】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法として、以下に記載の方法を用いる。測定装置は、以下の測定方法および効果の評価方法と同等の結果が得られるものであれば、他の装置を用いてもよい。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルについて場所を変えて5回測定を行い、その平均値を用いた。
【0082】
1.透明架橋フィルムの評価方法
(1)光学的等方性(Re、Rth)
王子計測機器(株)製の自動複屈折計KOBRA−21ADHを用い、低位相差モードでサンプル中央部を測定する。測定波長は590nmとし、遅相軸を固定して、入射角を0°から50°まで10°ごとに変更して位相差の入射角依存性を測定する。入射角0°の値を面内位相差(Re)とし、厚み方向位相差(Rth)の算出には、入射角0°および40°の測定値を用いる。
【0083】
2.ハードコートフィルムの測定方法
(2)鉛筆硬度
HEIDON(新東科学株式会社製)を用いてJIS K−5400(1990)に従って測定荷重500gで測定する。
【0084】
(3)屈折率
JIS K 7105(1981)に基づき、アッベ屈折率計((株)アタゴ社製)を用いて測定を行う。測定は1つのサンプルについて場所を変えて10回行い、それらの平均値を用いる。
【0085】
(4)干渉縞の有無
干渉縞の評価は、以下に方法に従いサンプルにハードコート層を積層した状態で評価を行う。まず、サンプルの片面に、厚みが約5μmとなるようにハードコート層を設ける。ハードコート層は、ハードコート塗料(JSR社製 Z7528 濃度50%)を#10のメタリングバーを用いて、薄膜を形成し、90℃にしたオーブンに入れ1分間熱処理を行った後、高圧水銀灯一灯(120W)を備えた、コンベアー式UV照射装置に、5m/minの速度で一度通し紫外線照射を行う。このようにしてハードコート層が積層されたサンプルを得る。さらに、裏面の反射の影響をなくすために、裏面(ハードコート層面の反対面)を240番のサンドペーパーで粗面化する。その後、黒色マジックインキ(登録商標)にて着色して調整したサンプルを、暗室にて、3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX−N 15W))の直下30cmに置き、視点を変えながらサンプルを目視したときに、虹彩模様が視認できるか否かで評価する。なお、1つのサンプルについて場所を変えた5箇所について評価したうち、最も多い評価結果を採用する。
・虹彩模様がみえない : Aランク
・非常に弱い虹彩模様が見える : Bランク
・弱い虹色模様が見える : Cランク
・強い虹色模様がはっきり見える: Dランク
【0086】
(5)自己支持性
得られたフィルムを180度に折り曲げた時にフィルムが破断するかどうかで判断する。フィルムが破断しない場合は自己支持性ありと評価する。なお、1つのサンプルについて場所を変えた5箇所について評価したうち、最も多い評価結果を採用する。
【0087】
(6)反射率
裏面反射の影響をなくすために、測定面(反射防止層側表面)の反対面を60°光沢度(JIS Z 8741(1997))が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色する。測定面を島津製作所製の分光光度計(UV−3150)にて、測定面から5°の入射角で、波長領域380〜800nmにおける絶対反射スペクトルを測定し、波長400〜700nmでの最低の反射率(ボトム反射率)を求める。ボトム反射率1%未満を合格とする。
【0088】
(7)耐擦傷性;スチールウール硬度評価
耐擦傷性は、反射防止フィルムの低屈折率層表面を#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を5段階で評価し、4級以上を合格とする。なお、1つのサンプルについて場所を変えた5箇所について評価したうち、最も多い評価結果を採用する。
5級:全く擦り傷がつかない。
4級:10〜20本程度擦り傷がつく。
3級:30〜40本程度擦り傷がつく。
2級:全面に弱い擦り傷がつく。
1級:全面に強い擦り傷がつく。
【0089】
(8)接着性(常態)
常態下(23℃、相対湿度65%RH)で、ハードコートフィルムのハードコート層上に1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製セロハンテープをその上に貼り付ける。この上を、荷重19.6Nでゴムローラーを3往復させ、押し付ける。この後、90度方向に剥離し、ハードコート層の残存した個数により4段階評価(A:100、B:80〜99、C:50〜79、D:0〜49)する。評価:AとBのものを接着性良好とする。
【0090】
(9)表面反射率および平均うねり振幅測定
日立製作所製、60mmφ積分球を装備したU−3410型分光光度計を用いて、測定面から5度の入射角における反射率を測定する。
【0091】
測定サンプルは裏面反射の影響をなくすために、測定面(ハードコート層を設けた側の面)の反対側の表面(裏面)を240番のサンドペーパーで粗面化した後、波長400〜600nmの可視光線平均透過率が5%以下となるように黒色マジックインキにて着色する。裏面反射の影響有無の判定は、処理後の裏面の光沢度(入射角60°、受光角60°)が10以下であれば、裏面反射の影響はないと判断する。光沢度はデジタル変角光沢度系UGV―5B(スガ試験機株式会社)を用いてJIS Z 8741に従って測定する。
【0092】
波長400〜600nmにおける反射率を測定し、そのうねり、すなわち波長の変化に伴って反射率が上下に波打つ変動の微積分学的意味での極大値(一次微分係数=0、二次微分係数<0)と極小値(一次微分係数=0、二次微分係数>0)の差であるうねり振幅を求め、波長400〜600nmにおける反射率のうねりの山頂部分頂点(極大点)を結んだ線(山頂線)とうねりの谷底部分(極小点)を結んだ線(谷底線)の2つの反射率の折れ線グラフの差、すなわち、うねり振幅を境界点(400、600nm)を含めて20nm間隔のサンプル点11箇所(波長が(400+20*i(i=0〜10の整数))nmとなる箇所)で求め、この11個の値の平均を平均うねり振幅とする。また、波長600〜740nmについても同様にして平均うねり振幅を求める。
【0093】
波長400〜600nmでの平均うねり振幅が1%以下を合格とする。また、波長600〜740nmでの平均うねり振幅が2%以下を合格とする。
【0094】
3.反射防止フィルムの測定方法
(10)反射率測定
測定面(反射防止層を設けた側の面)の反対側表面を60°光沢度(JIS Z 8741)が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化する。その後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色する。測定面を島津製作所製の分光光度計(UV−3150)にて、測定面から5度の入射角で、波長領域380〜800nmにおける絶対反射スペクトルを測定し、波長400nmおよび700nmでの反射率および400〜700nmの領域での最低の反射率を求める。なお、測定した反射スペクトルにうねりのある場合は、うねりの山(極大点)と谷(極小点)の中間地点を結んでいった曲線からそれぞれの反射率を求める。
【0095】
(11)うねり振幅最大値測定
反射率測定により求めた波長領域400〜700nmの絶対反射スペクトルにおいて、一つのうねりの山(極大点A)から、その両端にある谷(極小点B,C)を結ぶ線分BCに向かって垂線を下ろして、該垂線と線分BCが直交する点Dまでの距離ADを振幅値(単位は反射率と同じく〔%〕)と定義する。波長領域400〜700nmの範囲にあるうねりの振幅値の最大値を求め、うねり振幅最大値と定義する。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0097】
(塗剤の調整)
[透明架橋フィルム形成混合物用塗剤]
(塗剤1:ビニルエステル組成物)
温度計、撹拌装置、分留コンデンサー、ガス導入管を取り付けた1Lのフラスコに、ビスフェノールAジエポキシ化合物 374.4g(1.20モル)、メタクリル酸 206.4g(2.4モル)、オクチル酸クロム 1.5g、亜リン酸0.15g、ハイドロキノン0.2gを加え、窒素ガスを吹き込みながら120〜125℃で2時間反応を行った。酸価11.0となった段階で、フラスコ内組成物を金属製バットに注入し、冷却したところ無色透明なビニルエステル組成物が得られた。(固形分100%)とした。
【0098】
(塗剤2:多官能アクリレート)
多官能アクリレートとしてDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬(株)製:固形分100%)を用いた。
【0099】
(塗剤3:その他のアクリレート)
反応希釈剤としてモルホリンアクリレート(興人(株)製:固形分100%)を用いた。
【0100】
[液状活性線硬化型組成物用塗剤]
(塗剤4:高屈折率塗料−1)
スズ含有酸化インジウム粒子(ITO)28.5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート16重量部、酢酸エチル25重量部と酢酸ブチル5.5重量部、イソプロピルアルコール25重量部の混合物を攪拌して塗膜屈折率1.62の塗料を調整した。
【0101】
(塗剤5:高屈折率塗料−2)
アンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)24.5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート16重量部、酢酸エチル25重量部、酢酸ブチル5.5重量部、イソプロピルアルコール25重量部の混合物を攪拌して塗膜屈折率1.60の塗料を調整した。
【0102】
[反射フィルム用塗剤]
(塗剤6:低屈折率塗料−1)
メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 KBM−7103)219重量部を20℃±5℃で撹拌しながら、0.5N蟻酸89重量部で加水分解した。60分後にイソプロピルアルコール412重量部を混合して処理液(X1)を調整した。
【0103】
同様に、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 KBM−7103)158重量部を30℃±10℃で攪拌しながら、1N蟻酸41重量部で加水分解した。60分後にイソプロピルアルコール521重両部を混合して処理液(X2)を調整した。
【0104】
次に、平均1次粒子径50nmの外殻を有する空隙率30%の中空シリカ粒子(触媒化成工業株式会社製 スルーリア)144重量部、イソプロピルアルコール560重量部からなるシリカスラリー(X3)を準備した。
【0105】
処理液(X1)720重量部、処理液(X2)720重量部、シリカスラリー(X3)704重量部、メタノール356重量部、イソプロピルアルコール4272重量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713重量部を攪拌混合した後、硬化触媒としアセトアセトキシアルミニウムを15重量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.38の塗料を調整した。
【0106】
(塗剤7:低屈折率塗料−2)
メチルトリメトキシシラン219重量部、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン158重量部、中空シリカスラリー(X5:触媒化成工業株式会社製スルーリアS特殊品(空隙率50%)の中空シリカ粒子を用いX3と同様に作製したもの)704重量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713重量部を攪拌混合し、燐酸1重量部と水130重量部を配合して、30℃±10℃で攪拌しながら60分加水分解し、さらに温度を80℃±5℃に上げて60分間攪拌しながら重合し、シリカ粒子含有オリゴマー(X4)を得た。
【0107】
次に、シリカ粒子含有オリゴマー(X4)1200重量部、イソプロピルアルコール5244重量部を攪拌混合した後、効果触媒としてアセトキシアルミニウムを15重量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.37の塗料を調整した。
【0108】
(開始剤)
オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチルー1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン}(“ESACURE KIP150”:LAMBERTI社製)を用いた。
【0109】
上記の材料を表1に示す混合比率(固形分重量比)で混合して透明架橋フィルム形成混合物用塗布液(塗布液1)である塗剤A〜Dを作成した。
【表1】

【0110】
[ハードコートフィルム]
(実施例1)
図4の装置を用いて、ハードコートフィルムを作成した。ハードコート層用塗布液(塗布液2)として塗剤Aと透明架橋フィルム用塗布液(塗布液1)として塗剤4とを、それぞれ、タンク〜ポンプ〜2層ダイまで満たし、エアー抜きを完全に行った。この後、2層ダイとフッ素処理無端ベルトの間隙が110μmになるまで、2層ダイを近接させた。無端ベルトを10m/minの速度で回転させ、無端ベルト側に透明架橋フィルム用塗剤Aが、空気側へハードコート層用塗剤4がくるように、吐出し、長さ5mの乾燥機で100℃にて乾燥した後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して組成物を硬化し、無端ベルトより剥離してフィルムを得た。このようにして得られた、ハードコートフィルムは、透明架橋フィルム部の厚みが100μm、ハードコート層および混合層の厚みが5μmであり、透明性に優れたものであった。結果を表2に示す。
【0111】
表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅0.1%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅0.5%、表面硬度2H、耐擦傷性4級、常態下接着性A、虹彩模様がなく、自己支持性のある、優れた特性を示した。
【0112】
(実施例2)
実施例1において、塗布液1として塗剤Aの代わりにDPHAの添加量が15重量部である塗剤Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0113】
表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅0.1%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅0.6%、表面硬度2H、耐擦傷性5級、常態下接着性A、虹彩模様がなく、自己支持性のある、優れた特性を示した。
【0114】
(実施例3)
実施例1において、塗布液1として塗剤Aの代わりにDPHAの添加量が20重量部である塗剤Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0115】
表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅0.1%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅0.5%、表面硬度3H、耐擦傷性5級、常態下接着性A、虹彩模様がなく、自己支持性のある、優れた特性を示した。
【0116】
(実施例4)
実施例1において、塗布液1として塗剤Aの代わりにDPHAの添加量が25重量部である塗剤Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0117】
表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅0.1%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅0.5%、表面硬度3H、耐擦傷性5級、常態下接着性A、虹彩模様がなく、自己支持性のある、優れた特性を示した。
【0118】
(実施例5)
実施例1において、塗布液2として、塗剤4の代わりに、塗剤5を用いた以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作成した。
【0119】
表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅0.2%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅0.6%、表面硬度2H、耐擦傷性4級、常態下接着性A、虹彩模様がなく、自己支持性のある、優れた特性を示した。
【0120】
(比較例1)
A4サイズにカットした厚み100μmの二軸配向PETフィルム(“ルミラー”(登録商標)T60(東レ株式会社製))の表面に、塗布液2として塗剤4を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、100℃1分間乾燥した後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して組成物を硬化し、ハードコート層を積層したハードコートフィルムを作成した。表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅2.6%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅4.3%、表面硬度2H、耐擦傷性4級と優れていたが、常態下接着性はCであり、虹彩模様があるものであった。
【0121】
(比較例2)
A4サイズにカットした厚み60μmの二軸配向PPフィルム(“トレファン”(登録商標)2500H(東レ株式会社製))の表面に、塗布液2として塗剤4を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、100℃1分間乾燥した後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して組成物を硬化し、ハードコート層を積層したハードコートフィルムを作成した。表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅1.7%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅3.4%、表面硬度2H、耐擦傷性4級と優れていたが、常態下接着性はCであり、虹彩模様があるものであった。
【0122】
(比較例3)
A4サイズにカットした厚み75μmの離型フィルム(“セラピール”(登録商標)MD(軽剥離グレード)(東レフィルム加工株式会社製))の表面に、実施例1で用いた透明架橋フィルム用塗布液Aを厚みが100μmとなるようにアプリケーターにより塗布した後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して組成物を硬化し、離型フィルムを剥離し、透明架橋フィルムを作成した。さらに、透明架橋フィルムの表面に、塗布液2として塗剤4を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、100℃1分間乾燥した後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して組成物を硬化し、ハードコート層を積層したハードコートフィルムを作成した。表2に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅1.4%、600〜740nm反射率の平均うねり振幅2.8%、表面硬度2H、耐擦傷性4級と優れていたが、常態下接着性はCであり、虹彩模様があるものであった。
【0123】
表2は、実施例1〜5、比較例1〜3における、使用した透明架橋層塗料(A〜Dは、表1に示す塗剤A〜D、PET:ポリエチレンテレフタレート、PP:ポリプロピレン)、使用したハードコート層の液状活性線硬化型組成物用塗剤である塗料(塗剤4、5)、波長400nm〜600nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅、波長600nm〜740nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅、表面硬度、耐摩擦性、耐擦傷性、常態下接着性、虹彩模様、自己支持性の評価を示す表である。
【表2】

【0124】
表2から、実施例1〜5のハードコートフィルムは、耐擦傷性、常態下接着性に優れ、虹彩模様を発生せず、自己支持性を有することがわかる。一方、比較例1〜3のハードコートフィルムは、耐擦傷性、常態下接着性のいずれかが劣り、虹彩模様を生ずることがわかる。
【0125】
[反射防止フィルム]
(実施例6)
実施例1で得たハードコートフィルムのハードコート面上にマイクログラビアコーターを用いて反射フィルム用塗剤である塗剤6を塗工し、100℃1分間乾燥した後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して組成物を硬化し、塗工膜を硬化させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成して、反射防止フィルムを作成した。
【0126】
表3に示すとおり、最低反射率は0.5%であり、波長400nmにおける反射率は1.9%、波長700nmにおける反射率は1.8%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は4級と良好な特性を示した。
【0127】
(実施例7)
実施例2で得たハードコートフィルムを用いた以外は、実施例6と同様に反射防止層が積層されたハードコートフィルムを作成した。
【0128】
表3に示すとおり、最低反射率は0.5%であり、波長400nmにおける反射率は1.7%、波長700nmにおける反射率は1.8%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は4級と良好な特性を示した。
【0129】
(実施例8)
実施例3で得たハードコートフィルムを用いた以外は、実施例6と同様に反射防止層が積層されたハードコートフィルムを作成した。
【0130】
表3に示すとおり、最低反射率は0.4%であり、波長400nmにおける反射率は2.0%、波長700nmにおける反射率は1.9%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は4級と良好な特性を示した。
【0131】
(実施例9)
実施例4で得たハードコートフィルムを用いた以外は、実施例6と同様に反射防止層が積層されたハードコートフィルムを作成した。
【0132】
表3に示すとおり、最低反射率は0.4%であり、波長400nmにおける反射率は1.8%、波長700nmにおける反射率は1.7%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は4級と良好な特性を示した。
【0133】
(実施例10)
塗剤4の代わりに塗剤5を用いた以外は、実施例1と同様にハードコートフィルムを作成した。得られたハードコートフィルム面上にマイクログラビアコーターを用いて塗剤6を塗工し、100℃1分間乾燥した後、照射強度が800mJ/cmとなる紫外線を照射して組成物を硬化し、塗工膜を硬化させ、厚さ0.1μmの低屈折率層を形成して、反射防止層が積層されたハードコートフィルムを作成した。
【0134】
表3に示すとおり、最低反射率は0.5%であり、波長400nmにおける反射率は 1.4%、波長700nmにおける反射率は1.5%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は4級と良好な特性を示した。
【0135】
(実施例11)
実施例6において、塗剤6の代わりに塗剤7を用いた以外は、実施例6と同様に反射防止層が積層されたハードコートフィルムを作成した。
【0136】
表3に示すとおり、最低反射率は0.3%であり、波長400nmにおける反射率は1.6%、波長700nmにおける反射率は1.6%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は4級と良好な特性を示した。
【0137】
(実施例12)
実施例10において、塗剤6の代わりに塗剤7を用いた以外は、実施例10と同様に反射防止層が積層されたハードコートフィルムを作成した。
【0138】
表3に示すとおり、最低反射率は0.3%であり、波長400nmにおける反射率は1.9%、波長700nmにおける反射率は1.9%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は4級と良好な特性を示した。
【0139】
(比較例4)
比較例1で得たハードコートフィルムを用いた以外は、実施例6と同様に反射防止フィルムを作成した。
【0140】
表3に示すとおり、最低反射率は0.4%であり、耐擦傷性が4級と良好であったが、波長400nmにおける反射率は2.3%、波長700nmにおける反射率は2.2%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.8%で虹彩模様があるものであった。
【0141】
(比較例5)
比較例2で得たハードコートフィルムを用いた以外は、実施例6と同様に反射防止フィルムを作成した。
【0142】
表3に示すとおり、最低反射率は0.4%であり、耐擦傷性が4級と良好であったが、波長400nmにおける反射率は2.2%、波長700nmにおける反射率は2.1%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.6%で虹彩模様があるものであった。
【0143】
(比較例6)
比較例3で得たハードコートフィルムを用いた以外は、実施例6と同様に反射防止フィルムを作成した。
【0144】
表3に示すとおり、最低反射率は0.4%であり、耐擦傷性が4級と良好であったが、波長400nmにおける反射率は2.0%、波長700nmにおける反射率は1.9%、400〜700nmにおけるうねり振幅最大値は0.7%で虹彩模様があるものであった。
【0145】
表3は、実施例6〜12、比較例4〜6における、使用した透明架橋層塗料の種類(A〜Dは、表1に示す塗剤A〜D、使用したハードコート層塗料の種類(塗剤4,5)、使用した低屈折率層塗料(塗剤6,7)、反射率(最低反射率、波長400nmおよび700nmにおける反射率)、うねり振幅最大値、耐擦傷性、虹彩模様の評価を示す表である。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の透明架橋フィルムは、光学用フィルムとして満足しうる透明性、光学的等方性があり、虹彩模様が抑制され、かつ表面硬度にも優れる自己支持性のフィルムであり、各種ディスプレイの基材フィルムとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1は、反射率の平均うねり振幅を求めるために、測定面を分光光度計にて入射角10度で測定した時の各波長(nm)において、測定された反射率(%)との関係を示す図である。
【図2】図2は、本発明のハードコートフィルムの製造方法において、透明架橋フィルム形成混合物と液状活性線硬化型組成物とを非混合的にそれぞれ層状に吐出するための塗布装置の一例を説明する概念図である。
【図3】図3は、本発明のハードコートフィルムの製造方法において、透明架橋フィルム形成組成物と液状活性線硬化型組成物とを非混合的に吐出する塗布装置の別の一例を説明する概念図である。
【図4】図4は、本発明のハードコートフィルムの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0148】
1 透明架橋フィルム形成組成物塗布液用マニホールド
2 液状活性線硬化型組成物塗布液用マニホールド
3 ダイ
3’ ダイ
4、4’ 吐出口
5 基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明架橋フィルムと、
前記透明架橋フィルムの少なくとも片面に積層されたハードコート層と
を備えるハードコートフィルムであって、
波長400nm〜600nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が、1%以下である、ハードコートフィルム。
【請求項2】
波長600nm〜740nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が、2%以下である、請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記透明架橋フィルムは、
ビスフェノール型または脂環式型のエポキシ化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とを、エステル反応させて得られるビニルエステル組成物100重量部と、
多官能アクリレート5〜50重量部と
を混合した混合物の硬化・架橋物である、請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記透明架橋フィルムのレターデーションが5nm以下であり、
前記ハードコートフィルムの鉛筆硬度が2H以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層は、
分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む多官能性(メタ)アクリル化合物と、導電性粒子とを含有する液状活性線硬化型組成物の硬化物である、請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のハードコートフィルムの前記ハードコート層側に、さらに低屈折率層が積層された、反射防止フィルムであって、
波長400〜700nmにおける前記低屈折率層側の表面反射スペクトルが次の2条件を充足する、反射防止フィルム。
(1)最低反射率が1%以下、
(2)波長400nmおよび700nmにおける反射率が3%以下
【請求項7】
波長400nm〜600nmにおける前記低屈折率層側の表面反射スペクトルのうねりの振幅最大値が、0.5%以下である、請求項6に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
透明架橋フィルム形成混合物塗布液と液状活性線硬化型組成物塗布液とを、非混合的に、かつそれぞれ層状に吐出する工程と、
吐出された塗布液を、基材上に流延する工程と、
前記流延した塗布液に、活性線を照射する工程とを
含む、請求項1〜5のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−39926(P2009−39926A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206444(P2007−206444)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】