説明

ハードコートフィルムの製造方法

【課題】セルロースエステル基材を用いた高硬度のハードコードフィルムを製造できること。
【解決手段】セルロースエステル基材上にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法であって、
電離放射線硬化型樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗料をセルロースエステル基材上に塗布する塗布工程と、
セルロースエステル基材上に塗布された塗料を乾燥する乾燥工程と、
該塗料に電離放射線を照射しハードコート層を形成する硬化工程と、
ハードコート層を備えるセルロースエステル基材を加熱する加熱工程とを含むハードコートフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイのようなディスプレイの表面を保護する目的で利用される基材上にハードコートフィルム層を設けたハードコートフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルムは、様々な機能を持たせるために樹脂層が形成されている。例えば帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、反射を抑えるための反射防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層といったものである。特にハードコート層についてはディスプレイ用途では必須になっており、単層で用いるだけでなく反射防止層の下層にもなり重要な技術となっている。
【0003】
偏光板の保護機能としてのハードコート層を備えるハードコートフィルムは近年高硬度化の需要が高くなっている。しかしながら、偏光板の保護フィルム用ハードコートフィルム基材としては、セルロースエステル系のフィルムが用いられるが、この基材が軟質なため、高硬度化が難しい。
【0004】
従来ハードコート層は、溶剤系を用いた塗料を基材に塗布し、乾燥させた後に、紫外線照射を用いて硬化させている。例えば特許文献1ではセルロースエステルフィルムを溶解もしくは膨潤するような溶剤を用いるハードコート剤を用いているが、その溶媒が低沸点酢酸エステル系や低沸点ケトン系であり、溶解しすぎることでフィルム成分がハードコート内に入ってきてしまい、硬度が低下してしまう。
【特許文献1】特開2006−182865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は斯かる背景技術に鑑みてなされたもので、セルロースエステル基材を用いた高硬度のハードコート層を備えるハードコードフィルムを製造できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、セルロースエステル基材上にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法であって、
電離放射線硬化型樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗料をセルロースエステル基材上に塗布する塗布工程と、
セルロースエステル基材上に塗布された塗料を乾燥する乾燥工程と、
該塗料に電離放射線を照射しハードコート層を形成する硬化工程と、
ハードコート層を備えるセルロースエステル基材を加熱する加熱工程とを含むハードコートフィルムの製造方法としたものである。
【0007】
また請求項2の発明では、前記加熱を、40℃〜150℃にて1分〜120時間行うことを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法としたものである。
【0008】
また請求項3の発明では、前記溶媒が、前記セルロースエステル基材を膨潤または溶解させないものを少なくとも1種類以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルムの製造方法としたものである。
【0009】
また請求項4の発明では、前記溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒のうち少なくとも1種類以上含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法としたものである。
【0010】
また請求項5の発明では、前記ハードコート層が、3官能性以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーの重合体からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法としたものである。
【0011】
また請求項6の発明では、前記ハードコート層が、平均粒子径10nm以上10μm以下の微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法としたものである。
【0012】
また請求項7の発明では、前記セルロースエステルフィルム基材の膜厚が、30〜90μmであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、セルロースエステル基材を用いた高硬度のハードコードフィルムを製造できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明者は、セルロースエステル基材でのハードコート層の高硬度化を検討した結果、電離放射線硬化型樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗料をセルロースエステル基材上に塗布する塗布工程、セルロースエステル基材上に塗布された塗料を乾燥する乾燥工程、該塗料に電離放射線を照射しハードコート層を形成する硬化工程を順に行った後に、ハードコート層を備えるセルロースエステル基材を加熱する加熱工程を加えることでハードコードフィルムの硬度が向上することを見出したものである。また、塗布工程において、セルロースエステル基材を膨潤または溶解させない溶媒を少なくとも1種類以上含む塗料を用いて塗布することで、さらにハードコードフィルムの硬度が向上することを見出したものである。
【0015】
ハードコート層に十分な鉛筆硬度を与えるためには、水分の基材への影響を考えることが必要となる。即ち、基材のセルロースエステルフィルムは吸水しやすく、そのために基材の硬度が落ちてしまう。基材の硬度は鉛筆硬度に大きな影響を及ぼし、その影響を除く必要がある。
【0016】
そのために本願発明者は、上記のような溶媒組成を用いた塗料によりハードコート層を加工後(硬化後)に加熱工程を加えることで鉛筆硬度が向上することを見出した。即ち、通常は、塗工工程、乾燥工程、硬化工程でハードコート加工工程は終わるが、硬化後に加熱工程を加えることにより基材の水分を減少させ、基材の硬度が硬くなり、ハードコートフィルムとしての鉛筆硬度も向上させることができる。つまり本願発明者は、できるだけ基材から受ける鉛筆硬度への影響を低減させ、ハードコートフィルムとしての鉛筆硬度を向上させることを見出したものである。
【0017】
またこのハードコート層加工後の加熱工程は残留溶媒を失くす効果や、ハードコート層の硬化収縮により反ってしまうフィルムを反った面に対し反対方向に力が加わる状態で加熱すれば、反りの低減につながるという効果も期待できる。
【0018】
本発明の硬化後加熱条件としては、40℃〜150℃にて1分〜120時間、さらに好ましくは40〜69℃では24〜120時間、70〜150℃では1〜10分である。加熱温度が低いときに加熱時間が短いと本発明の効果がである硬度の向上が発現せず、そしてさらに加熱温度が高いときに加熱時間が長い場合は基材が変形してしまうので好ましくない。
【0019】
ところで、セルロースエステル基材にハードコートを加工する際、生産性や塗工適正から有機溶剤を用いた塗料がよく用いられるが、セルロースエステル基材は塗工する塗料成分中の溶媒成分によっては膨潤もしくは溶解されてしまう場合があり、フィルム基材の軟質成分がハードコート内に入り、硬度が低下してしまう。そこで膨潤もしくは溶解させない溶媒を使用することが好ましい。
【0020】
従って、本発明で用いる有機溶媒としては、セルロースエステルフィルム基材を実質上膨潤もしくは溶解させない溶媒を少なくとも1種類以上含むことが好ましく、該基材を膨潤または溶解させない溶媒を塗料全体に占める割合が10〜95重量%であることが好ましい。
【0021】
基材を膨潤もしくは溶解させない溶媒としては、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンといった高沸点ケトン類溶媒、トルエン、キシレンといった芳香族炭化水素溶媒、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロペンタノール、ジアセトンアルコールといったアルコール類溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルといったエーテルアルコール類溶媒、酢酸イソブチル、酢酸ブチルといった高沸点エステル系溶媒が挙げられる。
【0022】
このような有機溶媒の中で好ましく用いられるものとしては、高沸点ケトン類溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒、高沸点酢酸エステル溶媒が好ましく、特にメチルイソブチルケトン、トルエン、2−プロパノールが好ましい。
【0023】
本発明に用いられるセルロースエステル基材としては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートを挙げることができ、中でもセルローストリアセテートが好ましい。
【0024】
またそのセルロースエステルフィルムには可塑剤を含有していることが好ましく、その種類には特に制限はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤を挙げることができる。
【0025】
リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどが挙げられる。フタル酸エステル系としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、シクロヘキシルフタレート等が挙げられる。ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテートが挙げられ、グリコール酸エステル系としては、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフテリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートが挙げられる。
【0026】
これらの可塑剤を単独あるいは併用するのが好ましく、また添加量としてはフィルムの性能、加工の面でセルロースエステルに対し1〜30重量%であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いられるセルロースエステル基材には屋外用途の際における紫外線劣化の観点から紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0028】
このような紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物を挙げることができる。
【0029】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができ、市販品としてはチヌビン109、チヌビン171、チヌビン326(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)等を挙げることができる。
【0030】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0031】
本発明で用いるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステル及び添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する工程、ドープを移行する金属支持体上に流延する工程、伸縮または幅保持する工程、さらには乾燥工程、巻取り工程を経て製造されるフィルムであり、その厚みは10〜300μmが好ましく、より好ましくは30〜90μmが好ましい。
【0032】
本発明で得られるハードコートは防眩層であってもクリアハードコート層であってもよい。また、その主成分は電離放射線硬化型樹脂である。
【0033】
ここで電離放射線硬化型樹脂とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする樹脂のことをいう。
【0034】
前記電離放射線硬化型樹脂としては、光重合性モノマーや光重合性プレポリマー、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。これらの電離放射線硬化型樹脂は1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0035】
光重合性モノマーとしては、例えば1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2、3−ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1、2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1、2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3、8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1、 4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの光重合製モノマーは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、これらは塗液において、モノマーであってもよいし、一部が重合したオリゴマーであってもかまわない。
【0036】
ウレタンアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有するアクリレートモノマーを反応させ容易に形成されるものを挙げることができる。
【0037】
ポリエステルアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させ容易に形成されるものを挙げることができる。
【0038】
エポキシアクリレートとしては、エポキシ樹脂のエポキシ基を開環しアクリル酸でアクリル化することにより得られるアクリレートであり、芳香環、脂環式のエポキシを用いたものがより好ましく用いられる。
【0039】
さらに光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0040】
また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0041】
これらの樹脂および光重合開始剤は溶媒に溶かし固形分を30〜80重量%、より好ましくは40〜60重量%に調整しセルロースエステル基材に塗工することができる。
【0042】
調製した塗料には、防汚性、滑り性付与、欠陥防止、粒子の分散性向上のために添加剤を用いることができる。例えば、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー、アクリル系共重合物、ポリエステル変性アクリル含有ポリジメチルシロキサン、シリコン変性ポリアクリル等が挙げられる。
【0043】
また塗工方式としては公知の方法を用いることができる。具体的にはバーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等である。
【0044】
電離放射線硬化型樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。照射条件として紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm2である。
【0045】
こうして得た硬化樹脂層には、ブロッキング防止や硬度付与、防眩性、帯電防止性能付与、または屈折率調整のために無機あるいは有機化合物の微粒子を加えることができる。
【0046】
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、五酸化アンチモンといった酸化物やアンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ等複合酸化物が挙げられる他、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等も使用することができる。
【0047】
また、有機微粒子としては、ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリル−スチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン樹脂粉末、ポリスチレン系粉末、ポリカーボネート粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末等を挙げることができる。
【0048】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、5nm〜20μmが好ましく、より好ましくは10nm〜10μmが好ましい。また、これらの微粒子は二種類以上を複合して用いることもできる。
【0049】
本発明で製造されるハードコートフィルムは、必要に応じて、ハードコート層上に反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、防眩性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能等を有する機能層が設けられる。これらの機能層としては、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防眩層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。なお、これらの機能層は単層であってもかまわないし、複数の層であってもかまわない。例えば、反射防止層にあっては、低屈折率層単層から構成されても構わないし、低屈折率層と高屈折率層の繰り返しによる複数層から構成されていても構わない。また、機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していても構わない。ハードコートフィルム及び透明基材上にハードコート層が形成された機能性フィルムは、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイといった各種のディスプレイ表面と貼りあわせることができ、耐擦傷性に優れたディスプレイを提供することが可能となる。
【0050】
反射防止層である低屈折率層としては、バインダマトリックス中に低屈折率剤を分散させたものを例示できる。このとき、低屈折率剤の種類は特に限定されるものではないが、フッ化マグネシウム、空気を含有する中空粒子、フッ素樹脂等の低屈折率材料を用いることができる。これらの低屈折率剤を、バインダマトリックス材料であるUV硬化型材料、珪素アルコキシド等の金属アルコキシドに分散させ、必要に応じて溶媒を加えたものを塗液とし、ハードコートフィルムのハードコート層上に塗工する。そして、ハードコート層上に塗液を塗布した後、バインダマトリックス材料として紫外線硬化型材料を用いた場合には紫外線照射することにより、金属アルコキシドを用いた場合には焼成することにより、低屈折率層を形成することができ、反射防止フィルムとすることができる。なお、UV硬化型材料としては、先ほど例示した多官能性モノマーを用いることができ、このとき、光重合開始剤を配合できる。塗工方法としては、ロールコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、バーコータ、スロットダイコータを用いた塗工方法を使用することができる。コスト面から、反射防止層は低屈折率層と高屈折率層の繰り返しによる複数層で構成されるのではなく、低屈折率層単層で構成されることが好ましい。また、低屈折率層を形成する前に、ハードコート層と反射防止層との密着性の向上を目的として高硬度ハードコートフィルムのハードコート層に対してアルカリ溶液によるケン化処理をおこなうこともできる。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。ハードコートフィルムの性能は,下記の方法に従って評価した。
Haze…日本電色製NDH−2000を用いJIS−K7105に準じ測定を行った。全光線透過率…日本電色製NDH−2000を用いJIS−K7105に準じ測定を行った。
鉛筆硬度…JIS−K5400に準じ評価を行った。
耐擦傷性…#0000のスチールウールを用いて250g/cm2の荷重をかけながら10往復し、傷の発生の有無を確認した。
【0052】
<実施例1>
80μmトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレートUA−306H(共栄社化学) 30重量部
アクリルモノマーPE−3A(共栄社化学) 20重量部
イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 2.5重量部
メチルイソブチルケトン 50重量部
BYK−307(ビックケミー) 0.15重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、その後100℃にて3分加熱を行った。このハードコートフィルムの全光線透過率は92%で、Hazeは0.2%、耐擦傷性試験は傷なし、鉛筆硬度は5Hだった。
【0053】
<実施例2>
80μmトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート1700B(日本合成化学) 50重量部
イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 2.5重量部
トルエン 50重量部
BYK−307(ビックケミー) 0.15重部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、その後100℃にて3分加熱を行った。このハードコートフィルムの全光線透過率は91.5%で、Hazeは0.2%、耐擦傷性試験は傷なし、鉛筆硬度は5Hだった。

<実施例3>
80μmトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレートUA−306H(共栄社化学) 30重量部
アクリルモノマーPE−3A(共栄社化学) 20重量部
イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 2.5重量部
イソプロピルアルコール 50重量部
BYK−307(ビックケミー) 0.15重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、その後100℃にて3分加熱を行った。このハードコートフィルムの全光線透過率は92%で、Hazeは0.2%、耐擦傷性試験は傷なし、鉛筆硬度は5Hだった。
【0054】
<実施例4>
80μmトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレートUA−306H(共栄社化学) 24重量部
アクリルモノマーPE−3A(共栄社化学) 12重量部
シリカ微粒子IPA−ST(日産化学工業、固形分30%) 30重量部
イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 2.25重量部
イソプロピルアルコール 24重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚14μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、その後100℃にて3分加熱を行った。このハードコートフィルムの全光線透過率は91.5%で、Hazeは0.15%、耐擦傷性試験は傷なし、鉛筆硬度は5Hだった。
【0055】
<実施例5>
80μmトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレートUA−306H(共栄社化学) 30重量部
アクリルモノマーPE−3A(共栄社化学) 20重量部
イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 2.5重量部
メチルイソブチルケトン 40重量部
メチルエチルケトン 10重量部
BYK−307(ビックケミー) 0.15重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、その後100℃にて3分加熱を行った。このハードコートフィルムの全光線透過率は91.5%で、Hazeは0.2%、耐擦傷性試験は傷なし、鉛筆硬度は5Hだった。
【0056】
<実施例6>
80μmトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレートUA−306H(共栄社化学) 30重量部
アクリルモノマーPE−3A(共栄社化学) 20重量部
イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 2.5重量部
メチルエチルケトン 50重量部
BYK−307(ビックケミー) 0.15重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射しハードコート層を形成し、40℃にて100時間加熱を行った。このハードコートフィルムの全光線透過率は92%で、Hazeは0.2%、耐擦傷性試験は傷なし、鉛筆硬度は3Hだった。
【0057】
<比較例1>
80μmトリアセチルセルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート1700B(日本合成化学) 50重量部
イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 2.5重量部
酢酸メチル 50重量部
BYK−307(ビックケミー) 0.15重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率は91.5%で、Hazeは0.2%、耐擦傷性試験は傷なし、鉛筆硬度は2Hだった。
【0058】
以上の実施例1〜6及び比較例1の評価結果を以下の表1にまとめて示す。
【0059】
【表1】

実施例6と比較例1とを比べると、塗布工程、乾燥工程、硬化工程を順に行った後に、加熱工程を加えると、Haze、透過率、耐擦傷性を全く或いはほとんど変化させずに、鉛筆硬度が向上することが分かる。
【0060】
実施例1〜5と実施例6とを比べると、セルロースエステル基材を膨潤または溶解させない溶媒を少なくとも1種類以上含む塗料を用いて塗布する塗布工程を行い、続いて、乾燥工程、硬化工程を行った後に、加熱工程を加えると、Haze、透過率、耐擦傷性を全く或いはほとんど変化させずに、さらに鉛筆硬度が向上することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル基材上にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法であって、
電離放射線硬化型樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗料をセルロースエステル基材上に塗布する塗布工程と、
セルロースエステル基材上に塗布された塗料を乾燥する乾燥工程と、
該塗料に電離放射線を照射しハードコート層を形成する硬化工程と、
ハードコート層を備えるセルロースエステル基材を加熱する加熱工程とを含むハードコートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記加熱を、40℃〜150℃にて1分〜120時間行うことを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記溶媒が、前記セルロースエステル基材を膨潤または溶解させないものを少なくとも1種類以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒のうち少なくとも1種類以上含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ハードコート層が、3官能性以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーの重合体からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ハードコート層が、平均粒子径10nm以上10μm以下の微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記セルロースエステルフィルム基材の膜厚が、30〜90μmであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−183794(P2008−183794A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19035(P2007−19035)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】