説明

ハードコート用組成物

【課題】 本発明は軟質フィルム上にコーティングする場合においても十分な表面硬度を達成し、かつ透明性、密着性に優れた活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、第1に下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物(A)と平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)と光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物を使用する。
nSi(OR)4−n (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線照射により硬化し、プラスチック表面に優れた硬度を発現する硬化物を与える活性エネルギー線硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、ディスプレイをはじめとする表示材料、電子機器、光学用レンズ等の表面ハードコート剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりプラスチックは軽量、機械特性に優れ、易加工性を有することから金属やガラスに替わる構造部材として使用されている。しかし金属やガラスに比べ表面硬度が劣る欠点がある。このため摩擦等によって表面がキズつきやすい。これを改良するためにプラスチック表面を処理(これをハードコート処理と呼んでいる)する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば硬化性組成物に、表面を修飾したシリカ粒子を配合したものが提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、特に硬度を高める手段としては、たとえばテトラアルコキシシランを使用してゾルーゲル法により、二酸化ケイ素薄膜を設ける方法がある。この方法では脆く、割れやすいという欠点をもつ。これを改良する方法としてポリエチレングリコールを添加し、脆弱性をなくす提案がなされている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−100111号公報
【特許文献2】特開2001−79980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ディスプレイなどの表示材料の用途においては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、三酢酸化セルロース(TAC)などを基材とすることが多く、これらの柔軟なフィルム上で満足な硬度を達成するに至っていない ため、ハードコート層のさらなる高硬度化が求められている。
また、特許文献2で提案されている方法では、ある程度の表面硬度と柔軟性を達成するものの、その加工法において加熱を長時間行うことが基材に対して悪影響を及ぼすことがある。
そこで、本発明は軟質フィルム上にコーティングする場合においても十分な表面硬度を達成し、かつ透明性、密着性に優れた活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は特定の化学構造式で表されるアルコキシシラン化合物(A)と平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)と光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物;特定の化学構造式で表される少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物(A2)、平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)および光ラジカル重合開始剤(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物;並びにこれらの活性エネルギー線硬化性組成物硬化させて得られるプラスチックハードコート用硬化物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明はプラスチック材料上にコーティングするハードコート剤であって、透明性に優れかつ非常に高硬度な層を形成させることができる。特に軟質フィルム上にコーティングする場合においても十分な表面硬度を達成し、かつ透明性、密着性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の第1発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物(A)と、平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)と、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)を必須成分として含有し、活性エネルギー線照射により透明性に優れかつ非常に高硬度な塗膜を得ることができる。
【0010】
本発明におけるアルコキシシラン化合物(A)としては、下記一般式(1)で表される。
【0011】
nSi(OR)4−n (1)
【0012】
式(1)中、Yは下記一般式(2)で表される1価の基であり、Rはアルキル基またはフェニル基であり、nは0〜2の整数を表す。
【0013】
−X−Z−W (2)
【0014】
式(1)中のRとしては、炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基が挙げられる。
好ましいのは炭素数1〜4であり、反応性の観点からより好ましいのはメチル基、エチル基である。
【0015】
Yを表す式(2)中、Xは炭素数1〜8のアルキレン基またはアルケニレン基であり、Zは酸素原子、硫黄原子または下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンを有する2価の有機基であり、Wは水素原子またはビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基を表す。
【0016】
【化1】

【0017】
式(3)中、Qはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルコキシ基、フェノキシ基、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、mは1〜50の整数を表す。
【0018】
式(2)中におけるXについて、アルキレン基としては、炭素数1〜8のものが挙げられ、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの直鎖アルキル基、エチリデン基、1−メチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基などの分岐アルキル基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基などの環状アルキル基が挙げられる。
好ましいのは炭素数1〜4であり、より好ましいのはメチレン基、エチレン基である。
【0019】
式(2)中におけるXについて、アルケニレン基としては炭素数2〜8のものが挙げられ、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基などが挙げられる。好ましいのは炭素数1〜4、より好ましいのは炭素数2〜3のビニレン基、プロペニレン基である。
【0020】
式(2)中においてZとしては、酸素原子、硫黄原子あるいは上記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンを有する2価の有機基が挙げられる。
【0021】
式(2)中においてWは、水素原子またはビニル基、アリル基、(メタ)アクロイル基、エポキシ基、オキセタニル基を表し、エポキシ基、オキセタニル基はその一部が置換されていてもよい。
【0022】
式(3)中における置換基Qの炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
反応性の観点から好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0023】
式(3)中における置換基Qの炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。好ましいのはメチル基、エチル基である。
【0024】
式(3)中におけるmは、置換基Qを有するシロキサンを構造単位とする個数のことであり、1〜50の整数を表す。好ましくは1〜40であり、特に好ましくは5〜30である。50を超えると塗膜の硬度が低下する。
【0025】
本発明における弾性ゴム粒子(B)としては、弾性を有していれば特にその化学組成は限定されず、市販のものを適宜使用することができる。
例えばローム&ハース社製のパラロイドKCA801、BTA731J、BTA705等;カネカ社製のカネエースB−11A、B−22、B−561等が挙げられる。
【0026】
本発明における弾性ゴム粒子(B)のガラス転移点は、十分な可とう性を得るための観点から、通常が50℃以下、好ましくは30℃以下である。
【0027】
本発明における弾性ゴム粒子(B)の平均粒径は1μ以下であることが必要である。1μmを超えると透明性が悪化する。特に好ましくは0.5μm以下である。
【0028】
本発明におけるアルコキシシラン化合物(A)と弾性ゴム粒子(B)SP値の差が、通常2.0以内であることが好ましい。さらに好ましくは1.9以内、特に好ましくは1.8以内である。SP値の差が、2.0を超えると、弾性ゴム粒子が塗膜中で相分離してしまい、透明性が悪化する。
ここでSP値とは、溶解度パラメーターを表し、その値はFedorsらが提案した下記文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(147〜154頁)」
【0029】
本発明におけるアルコキシシラン化合物(A)と弾性ゴム粒子(B)との重量比(A)/(B)は、通常99/1〜80/20、好ましくは95/5〜80/20である。弾性ゴム粒子(B)が多くなると塗膜の硬度が低下してしまう。
【0030】
本発明における弾性ゴム粒子(B)は樹脂溶液へ添加してもよいし、予め溶剤で分散させておいたものを樹脂溶液へ添加してもよい。均一分散性の観点から、予め溶剤で分散させておいたものを樹脂溶液へ添加が好ましい。
【0031】
本発明において、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)が必須成分である。これらは、活性エネルギー線照射により酸または塩基を発生し、硬化反応を促進する。
【0032】
本発明における光酸発生剤(C1)は、活性エネルギー線照射により酸を発生する化合物であり、硬化反応を促進するために添加されるものである。
(C1)としては、下記の(i)スルホン化合物、(ii)スルホン酸エステル化合物、(iii)スルホンイミド化合物、(iv)ジスルホニルジアゾメタン、(v)オニウム塩等が挙げられる。
(i)スルホン化合物
フェナシルフェニルスルホン、4−トリスフェナシルスルホン−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンおよびこれらのα−ジアゾ化合物等
【0033】
(ii)スルホン酸エステル化合物
ベンゾイントシラート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホナート、ピロガロールメタンスルホン酸トリエステル、α−メチロールベンゾイントシラートおよびα−メチロールベンゾインドデシルスルホナート等
【0034】
(iii)スルホンイミド化合物
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロオクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミドおよびN−(ベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド等
【0035】
(iv)ジスルホニルジアゾメタン
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタンおよびビス(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−7−スルホニル)ジアゾメタン等
【0036】
(v)オニウム塩
スルホニウム塩:トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、ビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモナート等
ヨードニウム塩:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、4−(イソブチル)フェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド等
ホスホニウム塩:エチルトリフェニルホスソニウムテトラフェニルボレート等
ジアゾニウム塩:フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスファート等
アンモニウム塩:1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスファート等
【0037】
(C1)のうち好ましいのはオニウム塩、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタンであり、さらに好ましくは、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、ビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモナート、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンである。
【0038】
本発明における光塩基発生剤(C2)は、活性エネルギー線照射により塩基を発生する化合物であり、硬化反応を促進するために添加されるものである。
(C2)としては、下記の(i)ニフェジピン化合物、(ii)オキシム化合物、(iii)カルバメート化合物、(iv)金属錯体、(v)オニウム塩等が挙げられる。
(i)ニフェジピン化合物
3,5−ジカルボン酸ジメチル−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、N−メチル−3,5−ジカルボン酸ジメチル−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等
【0039】
(ii)オキシム化合物
2−アセトナフトン=O−フェニルアセチルオキシム、アセトフェノン=O−フェニルアセチルオキシム、2−アセトナフトン=O−シクロヘキシルカルバモイルオキシム、アセトフェノン=O−フェニルカルバモイルオキシム等
【0040】
(iii)カルバメート化合物
2−ニトロベンジル−N−シクロヘキシルカルバメート、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル−N−シクロヘキシルカルバメート等
【0041】
(iv)金属錯体
ヘキサアンミンコバルト(III)テトラフェニルボレート塩、カリウムテトラキスチオシアナートビスアンミンクロメート(III)、ビスアセチルアセトナート白金(II)等
【0042】
(v)オニウム塩等
2−(トリブチルアンモニオメチルカルボニル)ナフタレントリフェニルブチルボラート、トリフェニルベンズヒドリルアンモニウムヨーダイド、1−フェナシル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタニウムジメチルジチオカルバマート、1−(4−ベンゾイルフェニルメチル)1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデニウムテトラフェニルボレート、8−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等
【0043】
(C2)のうち好ましいのはニフェジピン化合物、オキシム化合物、カルバメート化合物、オニウム塩であり、さらに好ましくは、オキシム化合物、カルバメート化合物、オニウム塩である。
【0044】
光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)の含有量は、アルコキシシラン化合物(A)に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%である。20重量%を超えると塗膜の硬度が悪化する。
【0045】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、必要により多官能(メタ)アクリレートモノマー(F)を含有していてもよい。
【0046】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(F)としては、公知の多官能(メタ)アクリレートモノマーであれば特に限定されずに用いられ、2官能(メタ)アクリレート(F11)、3官能(メタ)アクリレート(F12)、4〜6官能(メタ)アクリレート(F13)が挙げられる。
【0047】
2官能(メタ)アクリレート(F11)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバレン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0048】
3官能(メタ)アクリレート(F12)としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0049】
4〜6官能(メタ)アクリレート(F13)としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0050】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(F)のうち好ましいのは(F12)及び(F13)であり、さらに好ましくはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびこれらの併用である。市場から容易に入手できる(F)としては、例えばアロニックスM−403(東亜合成(株)製)、ライトアクリレートPE−3A(共栄社化学(株)製)、ネオマーDA−600(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0051】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(F)の含有量は、アルコキシシラン化合物(A)と多官能(メタ)アクリレートモノマー(F)との重量比(A)/(F)として95/5〜40/60である。多官能(メタ)アクリレートモノマー(F)が多くなると十分な塗膜硬度を得ることができない。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、必要によりさらにその他成分(G)を含有していてもよい。(G)としては、増感剤(G1)、重合禁止剤(G2)、溶剤(G3)およびその他添加剤(例えばシランカップリング剤、レベリング剤等)が挙げられる。
【0053】
増感剤(G1)としては、カルボニル化合物(例えば、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、ベンズアントロン、4、4‘−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等)、ニトロ化合物(例えば、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、2−ニトロフルオレン等)、芳香族炭化水素(例えば、アントラセン、クリセン、ピレン等)、複素環化合物(例えば、キサントン、チオキサントン、キナゾリン等)が挙げられる。
【0054】
増感剤(G1)の含有量は、光酸発生剤(C1)及び光塩基発生剤(C2)の重量に対し通常0.1〜100%、好ましくは0.5〜80%、特に好ましくは1〜70%である。
【0055】
重合禁止剤(G2)としては、特に限定はなく公知のものが用いられる。具体的には、ジフェニルヒドラジル、トリ−p−ニトロフェニルメチル、N−(3−N−オキシアニリノ1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、p−ベンゾキノンp−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド及び塩化銅(II)等が挙げられる。
【0056】
重合禁止剤(G2)の含有量は、組成物中0.005〜1.0%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5%、特に好ましくは0.02〜0.1%である。
【0057】
溶剤(G3)は、塗工の際、塗工に適した粘度に調整するために用いることができる。溶剤の使用量としては組成物の重量に対し通常2000%以下、好ましくは10〜500%である。
【0058】
溶剤(G3)としては、本発明の樹脂成分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、脂肪族および芳香族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン等)、エーテル(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジn−ブチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール(メタノー、エタノール、イソプロパノール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、アミド(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、水、これらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0059】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化の観点から好ましいのは紫外線である。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を紫外線照射で硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置(例えば「CV−110Q−G」;フュージョンUVシステムズ製)、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を使用することができる。紫外線照射量は通常10〜10,000mJ/cm、好ましくは100〜5,000mJ/cmである。
【0061】
次に本願の第2発明について説明する。
本願の第2発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物(A2)と弾性ゴム粒子(B)と光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)、およびラジカル重合開始剤(D)を含有し、活性エネルギー線照射により第1の発明と同様、透明性に優れかつ非常に高硬度なコーティング膜を得ることができる。
【0062】
少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物(A2)としては、第1の発明中のアルコキシシラン化合物(A)で説明したとおりである。
【0063】
この少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物(A2)は下記一般式(4)で表される。
【0064】
nSi(OR)4−n (4)
[式(4)中、Yは下記一般式(5)で表され、Rはアルキル基またはフェニル基を表し、nは1または2の整数を表す。]
−X−Z−W’ (5)
[上式(5)中、Xは炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基を表す。Zは酸素原子、硫黄原子または下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンを有する2価の有機基を表す。W’は(メタ)アクリロイル基を表す。]
【0065】
【化2】

【0066】
[上式(3)中、Qはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルコキシ基、フェノキシ基、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表し、mは1〜50の整数を表す。]
【0067】
なお、この第2の発明のアルコキシシラン化合物(A2)を表す一般式(4)において、式(4)中のYとRは、第1発明の一般式(1)で説明したYとRと同様のものである。
さらに、一般式(5)中のXとZは、第1発明の一般式(1)で説明したXとZと同様のものである。
【0068】
一般式(5)のW’は、第1発明の一般式(2)のWと相違し、(メタ)アクリロイル基である。
従って、少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物(A2)は、第1の発明中のアルコキシシラン化合物(A)のうちの特定のものである。
【0069】
本発明におけるアルコキシシラン化合物(A2)と弾性ゴム粒子(B)SP値の差は、通常2.0以内であることが好ましい。さらに好ましくは1.9以内、特に好ましくは1.8以内である。SP値の差が、2.0を超えると、弾性ゴム粒子が塗膜中で相分離してしまい、透明性が悪化する。
【0070】
本発明におけるアルコキシシラン化合物(A2)と弾性ゴム粒子(B)との重量比(A2)/(B)は、通常99/1〜80/20、好ましくは95/5〜80/20である。弾性ゴム粒子(B)が多くなると塗膜の硬度が低下してしまう。
【0071】
本願の第2発明で必須成分の光ラジカル重合開始剤(D)としては、例えばベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォルメート、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ベンジル−2,4,6−(トリハロメチル)トリアジン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、トリブロモメチルフェニルスルホン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。(D)は1種で用いても良いし、2種以上用いても良い。
【0072】
光ラジカル重合開始剤(D)は、市販のものが容易に入手可能であり、例えば2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンとしては「イルガ907」、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとしては「イルガ369」(以上チバ・ジャパン製)等が挙げられる。
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、以下の3つの活性エネルギー線硬化性組成に分類される。
(1)第3発明
第1発明のアルコキシシラン化合物(A)と平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)を、酸(E1)または塩基(E2)の存在下で、加水分解と縮合反応により硬化させて得られるプラスチックハードコート用硬化物
(2)第4発明
光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)を含む第1発明の活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線を照射して硬化させて得られるプラスチックハードコート用硬化物
(3)第5発明
光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)、およびラジカル重合開始剤(D)を含む第2発明の活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線を照射して硬化させて得られるプラスチックハードコート用硬化物
以下に、説明する。
【0074】
本願の第3発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、アルコキシシラン化合物(A)と平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)を、酸(E1)または塩基(E2)の存在下で、加水分解と縮合反応により硬化させることにより、光照射を用いなくとも同様の塗膜を得ることができる。
【0075】
酸(E1)としては、蟻酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸、フッ酸、臭素酸、過塩素酸などの無機酸などが挙げられる。
入手の容易さ、扱いやすさの観点から、有機酸としては酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、無機酸としては塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。さらに無機酸は水溶液で用いることが扱いやすくより好ましい。
【0076】
塩基(E2)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類水酸化物、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
入手の容易さ、扱いやすさの観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等第4級アンモニウム塩が好ましく、常温下で気体であるアンモニア、メチルアミン等あるいはアルカリ金属水酸化物、第4級アンモニウム塩は水溶液で用いることが扱いやすくより好ましい。
【0077】
本発明において、酸(E1)または塩基(E2)のいずれかを存在させることにより、アルコキシシラン化合物(A)を加水分解と縮合反応により硬化させることができる。
酸触媒では加水分解と脱水縮合が同じくらいの頻度で進み、どちらかというと線状ポリマーになりやすい。一方、塩基触媒では加水分解が優先するので架橋が進みやすく、架橋ポリマーになりやすく、その結果、シリカ粒子ができやすい。
酸(E1)または塩基(E2)のいずれを存在させてもよいが、均一塗膜形成の容易さの観点で酸(E1)を用いることが好ましい。
【0078】
酸(E1)または塩基(E2)の添加量はアルコキシシラン化合物(A)の重量に対し
0.01%〜10%、好ましくは0.1%〜1.0%である。
【0079】
硬化させる好ましい温度としては20℃〜150℃である。ただし塗布するプラスチック基材の耐熱性に応じて適宜設定できる。また硬化時間としては1〜24時間、好ましくは5時間〜18時間である。
【0080】
本願の第4発明のプラスチックハードコート用硬化物は、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)を含む第1発明の活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線を照射して硬化させることで得られる。
【0081】
本願の第5発明のプラスチックハードコート用硬化物は、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)、およびラジカル重合開始剤(D)を含む第2発明の活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線を照射して硬化させることで得られる。
【0082】
本願の第4および第5発明のプラスチックハードコート用硬化物は、より強固な塗膜を得るために必要に応じ活性エネルギー線を照射後加熱することが好ましい。硬化させる好ましい温度としては20℃〜150℃である。ただし塗布するプラスチック基材の耐熱性に応じて適宜設定できる。
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物およびプラスチックハードコート用硬化物は、各種のハードコート加工用に有用である。
例えば、プラスチックレンズ用ハードコート(光学レンズ、サングラス等)、光ディスク用ハードコート、自動車ヘッドランプレンズ用ハードコート、光学フィルム保護用ハードコート、各種ディスプレイ用ハードコートに適用できる。

【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0085】
製造例1(アクリレート基を有するオルガノポリシロキサン(A−2)の製造方法)
加熱冷却・攪拌装置、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン(「KBM5103」、信越化学製)46部(0.2モル部)、ジフェニルジメトキシシラン(「KBM202SS」、信越化学製)160部(0.65モル部)とイオン交換水45g(2.5モル部)と、シュウ酸0.1部(0.001モル部)を仕込み、60℃、6時間の条件で加熱攪拌し、さらにエバポレーターを用いて、加水分解により副生したメタノールを減圧下で、40℃にて2時間かけて留去し透明液状物を得た。
H−NMR、IR、GPCにより、この液状物は数平均分子量Mn2,100、アクリル基含有オルガノポリシロキサン(A−2)であった。
【0086】
製造例2
(光塩基発生剤C2−1の製造法)
4−ブロモメチルベンゾフェノン(アルドリッチ製)7.76gと1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7(「DBU」サンアプロ製)4.33mLをアセトニトリル30mLに溶解させた。液温を25℃で温調したまま24時間攪拌した。その後アセトニトリルを減圧下で留去し、黄色固体を得た。それにメタノール50mLを加え溶解させ、テトラフェニルホウ酸ナトリウム10gをメタノール20mLに溶解させたものと混合した。液温を25℃に温調したまま3時間攪拌した。生じた沈殿物を濾過で除去し、メタノールを減圧下で留去した。ノルマルヘキサンにより洗浄することで白色固体を得た。
H−NMR、IRによりこの白色固体が塩基発生剤(C2−1)であることを確認した。
【0087】
実施例1
ガラス製容器にテトラメトキシシランの部分縮合物(「MKCシリケート MS−56」、三菱化学製、テトラメトキシシランの一部を加水分解し、脱水縮合させて得られたもの)(A−1)90部、弾性ゴム粒子(B−1;「BTA705」、ローム&ハース製を10重量%メチルエチルケトン分散液としたもの)100部、光酸発生剤(「CPI−110P」、サンアプロ製)(C1−1)5部、メチルエチルケトン10部を仕込み、均一になるまで攪拌することにより本発明の組成物(S−1)を得た。
【0088】
実施例2
実施例1において、アルコキシシラン(A−1)を製造例1で製造した(A−2)80部、多官能モノマーとしてネオマーDA−600(三洋化成製、平均官能基数5である多官能アクリレートモノマー)(F−1)10部、光酸発生剤(C1−1)の代わりにラジカル重合開始剤(「イルガキュア184」チバ・ジャパン製)(D−1)5部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の組成物(S−2)を得た。
【0089】
実施例3
実施例1において、光酸発生剤(C1−1)の代わりに光塩基発生剤(C2−1)5部とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、本発明の組成物(S−3)を得た。
【0090】
実施例4
実施例2において、さらに光酸発生剤(C1−1)5部を加えた以外は、実施例2と同様な操作を行い、本発明の組成物(S−4)を得た。
【0091】
比較例1
ガラス製容器にアルコキシシラン(A−1)100部、光酸発生剤(C1−1)5部、メチルエチルケトン100部を仕込み、均一になるまで攪拌することにより比較のための組成物(S’−1)を得た。
【0092】
比較例2
比較例1において、アルコキシシラン(A−1)を(A−2)90部、さらにネオマーDA−600(三洋化成製)10部、光酸発生剤(C1−1)をラジカル重合開始剤(D−1;「イルガキュア184」チバ・ジャパン製)5部とした以外は、比較例1と同様な操作を行い、比較のための組成物(S’−2)を得た。
【0093】
比較例3
比較例2において、さらに光酸発生剤(C1−1)5部を加えた以外は、比較例2と同様な操作を行い、比較のための組成物(S’−3)を得た。
【0094】
比較例4
ガラス製容器にネオマーDA−600(三洋化成製)80部、シリカ粒子(「デソライトZ−7503」JSR製20部、ラジカル重合開始剤(D−1;「イルガキュア184」チバ・ジャパン製)5部、メチルエチルケトン100部を仕込み、均一になるまで攪拌することにより比較のための組成物(S’−4)を得た。
【0095】
比較例5
ガラス製容器にアルコキシシラン(A−1;「MKCシリケート MS−56」三菱化学製)50部、可とう性付与剤としてPEG−1000(三洋化成工業社品、数平均分子量1,000のポリエチレングリコール)を5部、溶剤としてメタノール/水の混合溶媒(重量比=1/5)120部を仕込み、均一になるまで攪拌することにより比較のための組成物(S’−5)を得た。
【0096】
<塗膜の形成>
TAC(セルロース三酢酸)フィルムに実施例1〜4、および比較例1〜5で作成した組成物(S−1)〜(S’−5)をバーコーター(No.8、安田精機製作所)にて塗布し、70℃で1分間乾燥後、ベルトコンベア式UV照射機(「CV−110Q−G」;フュージョンUVシステムズ製)を用いて150mJ/cmの露光量にて露光した。さらに70℃にて6時間加熱処理を行い、塗膜を作成した。
なお、比較例5においてはUV照射を行わず、70℃で加熱乾燥後、さらに70℃で6時間加熱処理を行った。
【0097】
<塗膜均一形成性>
上記の方法で作成した塗膜の均一形成性について、外観(ひび割れ、白濁等)を目視で確認した。
透明で均一な塗膜が形成されるものについて○、ひび割れなどが起こり、均一透明な塗膜が形成されないものについて×とした。
【0098】
<鉛筆硬度>
JIS K−5400に基づき塗膜表面硬度を測定した。
【0099】
<耐折度>
作成した塗膜を90°に繰り返し折り曲げ、割れ等 が起こるまでの回数を測定した。
以下の判定基準で判定した。
○:50回以上折り曲げても割れと折り曲げ痕として白化現象が認められない
△:11〜49回で割れまたは白化現象が発生
×:10回以下で割れまたは白化現象が発生
【0100】
実施例1〜4で作成した本発明の組成物(S−1)〜(S−4)、および比較例1〜5で作成した比較のための組成物(S’−1)〜(S’−5)について、均一塗膜形成性、)鉛筆硬度、および耐折度を前述した方法で測定した。
その結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
表1の結果から、本発明の組成物が従来から提案されている組成物と比較し、高硬度でありかつ均一塗膜形成性および耐折度に優れた、プラスチック表面のハードコート剤であることが分かる。
比較用の組成物のうち、弾性ゴム微粒子を含まない(S’−1)〜(S’−3)では、均一な塗膜を得られなかった。
従来から提案されているシリカ粒子を添加した(S’−4)では塗膜硬度と耐折度が不十分であった。また可とう付与剤としてポリエチレングリコールを加えた(S’−5)では耐折度が不足した。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のハードコート用組成物は、表面硬度ならびに均一塗膜形成性が優れているため、プラスチック材料上にコーティングするハードコート剤として有用である。また、本発明の組成物用いたハードコート剤は特にディスプレイをはじめとする表示材料等の表面ハードコート剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物(A)、平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)、および光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
nSi(OR)4−n (1)
[式(1)中、Yは 下記一般式(2)で表される1価の基;Rはアルキル基またはフェニル基;nは0〜2の整数を表す。]
−X−Z−W (2)
[式(2)中、Xは炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基;Zは酸素原子、硫黄原子または下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンを有する2価の有機基;Wは水素原子またはビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基を表す。]
【化1】

[式(3)中、Qはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルコキシ基、フェノキシ基、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基;mは1〜50の整数を表す。]
【請求項2】
下記一般式(4)で表される少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン化合物(A2)、平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)、および光ラジカル重合開始剤(D)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
nSi(OR)4−n (4)
[式(4)中、Yは下記一般式(5)で表され、Rはアルキル基またはフェニル基を表し、nは1または2の整数を表す。]
−X−Z−W’ (5)
[上式(5)中、Xは炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基を表す。Zは酸素原子、硫黄原子または下記一般式(3)で表される オルガノポリシロキサンを有する2価の有機基を表す。W’は(メタ)アクリロイル基を表す。]
【化2】

[上式(3)中、Qはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルコキシ基、フェノキシ基、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表し、mは1〜50の整数を表す。]
【請求項3】
該アルコキシシラン化合物(A)と該弾性ゴム粒子(B)のSP値の差が2.0以下であるである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該アルコキシシラン化合物(A2)と該弾性ゴム粒子(B)のSP値の差が2.0以下であるである請求項2記載の組成物。
【請求項5】
該弾性ゴム粒子のガラス転移点が50℃以下である請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
(A)と(B)との重量比(A)/(B)または(A2)と(B)との重量比(A2)/(B)が95/5〜80/20である請求項1〜5いずれか記載の組成物。
【請求項7】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物(A)と平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)を、酸(E1)または塩基(E2)の存在下で、加水分解と縮合反応により硬化させて得たことを特徴とするプラスチックハードコート用硬化物。
【請求項8】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物(A)と平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)を、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)の存在下で、活性エネルギー線を照射して硬化させて得たことを特徴とするプラスチックハードコート用硬化物。
【請求項9】
上記一般式(4)で表される少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン化合物(A2)、平均粒子径が1μm以下の弾性ゴム粒子(B)、光酸発生剤(C1)または光塩基発生剤(C2)、およびラジカル重合開始剤(D)の存在下で、活性エネルギー線を照射して硬化させて得たことを特徴とするプラスチックハードコート用硬化物。

【公開番号】特開2011−6620(P2011−6620A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153125(P2009−153125)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】