説明

ハードディスクヘッドアーム用トレー及びその製造方法

【課題】 超薄型の金属板で形成されるヘッドアームでも、傷や変形の発生を防止し且つその移動を規制して安定状態で収容保持することができ、製造が容易で安価なハードディスクヘッドアーム用トレー及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 超薄型の金属板で形成されるヘッドアーム1の移動を規制した状態で整列収容する窪み部12を有するトレー6である。窪み部12は、硬質樹脂材で成形される基台8に、軟質樹脂材を射出成形により一体成形され、ヘッドアーム1を囲むようにその下面を密接状態で支持する支持面28a,28bと、ヘッドアーム1の一部と係合する係合部36を備えた構成である。搬送中の移動を規制し搬送中に生ずる振動を軟質樹脂材で吸収して傷の発生や変形を防止し、安価で容易に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブの磁気ヘッド搭載用に用いられ、超薄型の金属板で形成されるハードディスクヘッドアームを収容するためのハードディスクヘッドアーム用トレー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁気ヘッドのような微小電子部品の製造工程では、加工と洗浄を交互に行なうため、多数の微小電子部品の移動を規制して支持した状態で搬送するトレーが使用されている。
このようなトレーとしては、平面上に複数形成されたくぼみに加工後の微小電子部品(ワーク)を支持し、傷、変形等をつけずに最終工程で洗浄、乾燥などを行なうためフロンやイソプロピルアルコール等に対する耐薬品性を有する素材のものが使用されていた。
【0003】
詳しくは、この種のトレーは、洗浄時または水切り時にトレーからワークが離脱するのを防止するために、前記トレーの上面に複数連設された1列の矩形状くぼみを連ねる溝を設けて、1列のくぼみに落とし込んだ各ワークの上面を線体で抑えている。この線体の両端は、トレーを囲むように設置された外枠に張り渡されており、くぼみに落とし込んだ各ワークの前後、左右、上下各方向の動きを、くぼみの向合う二組の側面、底面及び線体により規制するようにしたものが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−261354号公報(段落0007〜0009、図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来のトレーは、ワークを支持するための線体と、この線体の両端を支持するために前記トレーにネジ止めされた外枠とを組合わせた複雑な構成となる。そして、このような複雑な構成であるため、ワークの取付け取外しの際、外枠の着脱に手間が掛りワークの取扱いが面倒になる等欠点を有していた。
【0005】
加えて、ワーク、微小電子部品が、ハードディスクドライブの磁気ヘッドを搭載するヘッドアームの場合には、ヘッドアームが超薄型の金属板で形成されるため、搬送中に傷や変形の発生を確実に防止する必要がある。特に、洗浄時において、ヘッドアームの移動が規制されて安定状態で収容保持されるトレーが要望されていた。
【0006】
本発明は、このような社会的、技術的背景に基づいてなされたもので、下記の目的を達成するものである。
本発明の目的は、超薄型の金属板で形成されるハードディスクヘッドアームにおいて、傷や変形の発生を防止し、且つ、その移動を規制して安定状態で収容保持することができるハードディスクヘッドアーム用トレー及びその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、製造が容易で、価格を安価にすることができるハードディスクヘッドアーム用トレー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、次の手段をとる。
本発明1に記載のハードディスクヘッドアーム用トレーは、ハードディスクドライブのヘッドアーム1を、移動を規制した状態で整列収容する窪み部を有するトレー6であって、前記トレー6は、上面に複数の窪み部10を並設した硬質樹脂材で成形される基台8と、前記窪み部10の内周面と前記基台8の下面に弾性を有する軟質樹脂材を射出成形により一体に成形される緩衝部SRとから成り、前記軟質樹脂材で構成される窪み部12は、前記ヘッドアーム1を囲むようにその下面を密接状態で支持する支持面28a,28bを底部に形成すると共に前記ヘッドアーム1の一部と係合する係合部36を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、射出成形により軟質樹脂材で一体に成形された窪み部12に収容されるヘッドアーム1が係合部36に係合された状態で支持面28a,28bに密接状態で支持されるので、搬送中の移動が規制されるだけでなく搬送中に生ずる振動が吸収されて傷の発生や自重による変形が防止される。
【0008】
本発明2のハードディスクヘッドアーム用トレーは、本発明1において、
前記トレー6は、上下面の端部に複数の積載係合部が配設されて上下に対応する前記複数の積載係合部同士が係合して積載可能に構成され、前記窪み部12の底面には前記ヘッドアーム1の一端に形成される基準孔4に挿通係止する位置決め軸30が一体形成されると共に、前記トレー6の下面には前記基準孔4を挿通した下段トレーの位置決め軸30に嵌合し、且つ下段トレーの平坦な支持面上に支持された前記基準孔4周縁の上面を押圧する押圧面34aを有する押圧ボス34が一体形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、前記トレー6が積載される際、上下に対応する複数の積載係合部同士が係合するので安定する。また、上段トレー下面に形成される押圧ボス34が下段トレーの位置決め軸30に嵌合した際、前記下段トレーの位置決め軸30に挿通係止されたヘッドアーム1は、その基準孔4周縁の上面が押圧ボス34の押圧面34aに押圧されるので移動が規制されて安定保持される。
【0009】
本発明3のハードディスクヘッドアーム用トレーは、本発明1又は2において、
前記ヘッドアーム1は、前記基準孔4を形成する一端が平坦面に形成されてその略中間部から所定の傾斜角度θで上方に折曲形成されて成り、前記トレー6は、平面視矩形に形成されて並設される複数の窪み部12の支持面28a,28bを、前記平坦状の支持面から連続する前記傾斜角度の支持面となるよう前記ヘッドアーム1の下面形状に合わせて形成し、前記トレー6の下面には一端に前記押圧ボス34と一体形成された突出部32が、下段に配置されるトレーの複数の窪み部12に挿入可能に対応して配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ヘッドアーム1が平坦面に形成される略中間部から緩い傾斜角度で上方に折曲形成されるものの場合、前記ヘッドアーム1が、平坦面から連続する前記傾斜角度θとなるよう前記ヘッドアーム1の下面形状に合わせて形成される窪み部12の支持面28a,28bに支持されるので、自重による変形が防止され、下段トレーの窪み部に収容されたヘッドアーム1の折曲先端は、窪み部12に挿入された上段トレーの突出部32により押圧保持されて安定保持される。
【0010】
本発明4のハードディスクヘッドアーム用トレーは、本発明1において、
前記硬質樹脂材及び/又は軟質樹脂材には、帯電防止材が混入されていることを特徴としている。
この特徴によれば、トレー6の素材に帯電防止材を混入した硬質樹脂材及び/又は軟質樹脂材を使用することで、静電気の帯電を防止することができる。
【0011】
本発明5のハードディスクヘッドアーム用トレーの製造方法は、本発明1のハードディスクヘッドアーム用トレーにおいて、
前記基台8では、射出成形機の固定金型40と移動金型42により形成される充填間隙に硬質樹脂材を充填することで、上面に複数の窪み部10を並設すると共に該それぞれの窪み部10に下面との間で連通する連通孔15a,15b,24a,24bを形成した第1成形品8を成形する工程と、前記第1成形品8を前記射出成形機の両金型40,42間にインサートすることで、前記第1成形品8の上面を覆う金型の各窪み部内周壁との間に充填間隙を形成すると共に、該窪み部の一端上面に有底穴を形設し、前記第1成形品8の下面を覆う金型上面に前記各窪み部に対応する複数の充填間隙を連通形成すると共に、該各充填間隙部に前記有底穴に対応すべく周囲に充填間隙を形成した突出部を形成する工程と、前記充填間隙部に形成されたピンゲートG2を介して前記第1成形品8の各間隙部に前記連通孔15a,15b,24a,24bを通して軟質樹脂材を充填して第2成形品6を成形する工程とから成っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の効果を奏する。
本発明のハードディスクヘッドアーム用トレーによれば、超薄型の金属板で形成されるヘッドアームでも、このヘッドアームの全面を支持する支持面や前記ヘッドアームの移動を規制する係合部が、基台を構成する硬質樹脂材と共に緩衝部となる軟質樹脂材で一体成形されるので、搬送中の移動が規制されるだけでなく搬送中に生ずる振動が吸収されて傷の発生や変形を防止することができる。
【0013】
また、本発明のハードディスクヘッドアーム用トレーの製造方法によれば、硬質樹脂材により成形された基台となる第1成形品を射出成形機の固定金型と移動金型との間にインサートし、第1成形品と両金型の各間隙部に軟質樹脂材を充填するだけで、第1成形品と一体化された第2成形品としてのトレーを容易に成形することができ、製造がたいへん容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を以下に説明する。
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1を図面に基いて説明する。図1は、ハードディスクヘッドアームを示し、図1(a)はハードディスクヘッドアームの平面図、(b)はハードディスクヘッドアームの側面図、(c)はハードディスクヘッドアームの底面図である。図2は、硬質樹脂材で成形されるトレーの第1成形品となる基台の平面図、図3(a)は、基台の右側面図、図3(b)は、図2のA−A断面図、図4は、図2のB−B断面図、図5は、基台の底面図、図6は、基台の正面図である。図7は、硬質樹脂材に軟質樹脂材が一体成形された第2成形品と成るトレーの平面図、図8(a)は、トレーの右側面図、図8(b)は、図7のD−D断面図、図9は、図7のC−C断面図、図10は、トレーの底面図である。図11は、ヘッドアームを窪みに収容保持したトレーの使用説明図である。
【0015】
最初に本発明のトレーの窪みに収容される対象物となるヘッドアームに付いて説明する。このヘッドアーム1は、モータの出力軸に連結された平面視で幅広の基部2a側に回転軸(不図示)を取付けるための基準孔4を有している。そして、この回転軸を中心としてハードディスクの面上を往復移動することにより、前記ヘッドアーム1先端の磁気ヘッドが所定のデータトラック上へ移動し、データの読み書きを行なうようになっている。
【0016】
このヘッドアーム1は、超薄型の金属材料で帯板状に形成され、幅方向が先細に形成される先端2b側には図示しない磁気ヘッドが固着されている。このヘッドアーム1は、ハードディスク上のデータの読み書きを行なう際にこのハードディスクの回転によって生じた風圧により僅かに浮上する。このヘッドアーム1は、重心のバランスを取った非接触状態で回転して所定のデータトラック上へ移動することでデータトラックに対し読み書きが行なわれる。
このようなことから、ヘッドアーム1には軽量化を図るため超薄型の帯状金属板が使用されている。そのため、変形や傷等の発生がしやすく、変形や傷等が発生した場合、ヘッドアーム1の機能を著しく低下する要因となっている。
【0017】
次に、前記ヘッドアーム用のトレーについて図2〜図10を参照して詳述する。
図7〜図10には、最終製品となるトレー6が示されており、このトレー6は、平面視で横長矩形状に形成されて上面に複数の窪み部12を並設した硬質樹脂材で成形される基台8と、弾性を有する軟質樹脂材を射出成形により前記硬質樹脂材に一体成形される緩衝部(後述する)とから構成されている。
【0018】
先に、トレーの一部を構成する第1成形品となる基台8に付き、図2〜図6を参照して説明する。この基台8は、図示しない移動金型と固定金型により成型される。硬質樹脂材としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等汎用プラスチック、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニリンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等エンジニアリングプラスチックなど樹脂材の何れか1種以上から成る熱可塑性樹脂を採用することができる。
好ましくは、前記硬質樹脂材にはカーボンパウダー、金属繊維、導電性合成繊維等帯電防止材を混入することで、静電気の帯電を防止することができる。
【0019】
この基台8は、図2〜図4に示すように平面視で横長矩形に形成されて上面には、矩形状をなす複数の窪み部10が並設されており、これらの窪み部10には、底面の前後および左右に連通孔14a,14b及び15a,15bが形成されている。
更に基台8の左右両端縁の上面には、前後(図2の上下)に積載係合部(積載係合溝部)となる一対の係合溝16a,16b及び18a,18bが形成されている。また、基台8の左右両端縁の下面には、トレー6を積載した際に下段側に配置されるトレー6の係合溝16a,16b及び18a,18bに係合すべく積載係合部となる一対の板状の舌片20a,20b及び22a,22bが突設配置されている。
【0020】
図5、図6に示すように、基台8の下面25は、周囲が縁部25aで囲まれて凹設されており、前記各窪み部10に対応する下面25には縦長の島部26が夫々所定間隔で並設されている。島部26の前後(図5の上下)には、各窪み部10支持面に設けた連通孔14a,14bに連通する一対の連通孔24a,24bが隣接して形成されている。また、所定間隔離間した特定の島部26間には一対のピンゲートG1が配設されている。
【0021】
次に、第2成形品として成形される最終製品となるトレーについて、図7〜図10にしたがって説明する。
符号6で示されるトレーは、第1成形品となる基台8をベースにして射出成形機の固定金型と移動金型との間にインサートすることで、基台8と共に緩衝部SRとなる軟質樹脂材を一体的に射出成形して第2成形品として形成されるものである。
【0022】
軟質樹脂材としては、例えばオレフィン系、スチレン系、エステル系、ウレタン系、アミド系及び塩化ビニル系の何れか1種以上から成る熱可塑性エラストマーから射出成形により一体成形される。前記軟質樹脂材には、カーボンパウダー、金属繊維、導電性合成繊維等帯電防止材を混入することで、静電気の帯電を防止することができる。
【0023】
このトレー6には、ヘッドアーム1を収容すべく平面視で矩形状の複数の窪み部12が並設されている。窪み部12の内周面は、軟質樹脂材によりヘッドアーム1の基部外周形状に併せて形成される。また、窪み部12の底部は平坦な支持面28aとして形成されており、支持面28aの手前側(図8における下側)にはヘッドアーム1の基準孔4に挿通係止する係合部としての位置決め軸30が一体形成されている。
ここで、窪み部12に収容されるヘッドアーム1は、図1に示すように基準孔4を形成する基部2aが平坦面に形成され、その略中間部から先端2b側が緩い傾斜角度θ(例えば10度)で上方に折曲形成されている。また、基部2aの片側端面には下方に向く折曲片2cが形成されている。
【0024】
従って、窪み部12の底部は、平坦な支持面28aの略中間部位から先端(図8における上方)に向けてヘッドアーム1の傾斜角度θと同じ傾斜角度θ(10度)の支持面28bが形成されている。この支持面28aの片側にはヘッドアーム1の折曲片2cを逃げるための逃し穴R2が別の逃し穴R1と共に離間して形成されている。傾斜した支持面28bの両側には、ヘッドアーム1の幅方向先細の先端部両側を挟んでその横移動を規制する係合部としての一対の突出片36が支持面28bと共に軟質樹脂材で一体成形されている。
【0025】
一方、トレー6の下面には、基台8の下面に所定間隔で並設された縦長の島部26の全面が軟質樹脂材で覆われて複数の突出部としての緩衝島部32が形成され、これら緩衝島部32の手前側(図10における上方側)の一端には、トレー6の支持面28a上の位置決め軸30に対応する嵌合穴35を設けた押圧ボス34が一体形成されている。また、押圧ボス34には、押圧部34aが形成されている。
また、複数の緩衝島部32間は、全て軟質樹脂材で成形される連通部38で連結されている。また、特定の緩衝島部32には、所定間隔毎に一対のピンゲートG2が配設されている。
【0026】
従って、このように構成されたトレー6によれば、射出成形により軟質樹脂材SRで一体に成形された窪み部12に収容されるヘッドアーム1が、位置決め軸30に挿通支持されると共に先細の先端2b側が一対の突出片36で挟まれて移動が規制されている。ヘッドアーム1は、平坦な支持面上に密接状態で全面が支持されるので、搬送や洗浄による移動が規制されるだけでなく搬送中に生ずる振動が吸収されて傷の発生や自重による変形を防止することができる。
【0027】
また、ヘッドアーム1が、その略中間部から緩い傾斜角度θ(例えば10度)で上方に折曲形成されているものの場合は、このヘッドアーム1が、平坦面から連続する前記傾斜角度θとなるよう前記ヘッドアーム1の下面形状に合わせて形成される窪み部12の支持面28a,28bに全面が支持されるので、自重による変形が防止される。
【0028】
次に、前述した構成のトレーの使用方法について図11を参照して説明する。図11に示すように、前述したトレー6は上下に積載可能に構成されている。最下段に配置されたトレー6の複数の窪み部12内の支持面28a,28bに支持されたヘッドアーム1は、基部2aの基準孔4が位置決め軸30により挿通係止されている。さらに、ヘッドアーム1の幅方向が先細の先端部2bの両側は、一対の突出片36により挟まれてその横移動が規制されている。
次いで、最下段のトレー6上に2段目のトレーを載置するに際し、この2段目のトレー6下面の舌片20a,20b及び22a,22bが最下段のトレー6上面の係合溝16a,16b及び18a,18bに係合する。
【0029】
これにより、位置決めされた2段目のトレーを最下段のトレー6上に載置すると、ヘッドアーム1の基準孔4を挿通した位置決め軸30が2段目のトレー6の下面に設けた押圧ボス34の嵌合穴35に嵌合する。
従って、下段トレー6の窪み部12内に収容されるヘッドアーム1基準孔4周縁上面が上段トレーの押圧ボス34の押圧部34aで押圧されるので、前記ヘッドアーム1は安定保持される。
【0030】
このようにして、複数のトレー6は数段積載された状態で搬送され、搬送工程においてこのまま洗浄槽内の洗浄液に浸漬することで、複数の窪み部12に収容されたヘッドアーム1を一度に洗浄することができる。
【0031】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2に係るヘッドアーム用トレーの製造方法について説明する。図12は固定金型と移動金型が分離された状態であって、固定金型上に基台となる第1成形品を支持した状態を示す断面図、図13は互いに密閉接合された固定金型と移動金型間に第1成形品をインサートした状態を示す断面図である。尚、この金型にインサートされる第1成形品となる基台8、及び第2成形品となる緩衝部SRを形成する充填間隙(キャビティ)の断面形状は図9(図7のC−C断面)に示されている。
【0032】
図示しない射出成形機の固定金型40と移動金型42により形成される充填間隙に硬質樹脂材を充填することで、上面に複数の窪み部10を並設すると共に該それぞれの窪み部10に下面との間で連通する連通孔14a,14b及び15a,15bを形成した第1成形品となる基台8(図2〜図6参照)が成形される。
【0033】
次に、この基台8を図12に示すように移動金型42が分離された固定金型40上面に載置し、両金型42,40間にインサートする。両金型42,40の対向面には、該両金型42,40が密接接合した際にインサートされる基台8との間に軟質樹脂材を充填するための充填間隙となるキャビティが形成されている。固定金型40には、所定箇所に前記キャビティに連通する一対のピンゲートG2が形成されている。
【0034】
詳しくは、これらピンゲートG2は、第2成形品となるトレー6の下面に複数並設された縦長の緩衝島部32の一部に連通しており、これら縦長の緩衝島部32間は連通部38で連結されている。従って、ピンゲートG2から供給される軟質樹脂材SRは、連通部38を介して各縦長の緩衝島部32に充填されることになる。
移動金型42の対向面には、位置決め軸用キャビティ30’、支持面用キャビティ12’,12a’,12b’等が形成されている。また、固定金型40の対向面にも押圧ボス及びその嵌合穴用のキャビティ34’,35’並びに緩衝島部用キャビティ32’がそれぞれ形成されている。
【0035】
そこで、第1成形品となる基台8をインサートした両金型40,42間のキャビティにピンゲートG2を介して緩衝部となる軟質樹脂材SRを充填することで、第2成形品となるトレー6が基台8と共に一体成形される。
従って、硬質樹脂材及び軟質樹脂材は、トレーの大きさ、重量、窪みに収容されるヘッドアームの材質、強度に応じて適宜選択して使用することができる。
【0036】
尚、前述した実施の形態では、第1成形品となる基台8の下面を固定金型40の対向面に支持した形態について説明したが、この基台8の下面を移動金型42に支持することも可能である。
【0037】
また、第1成形品と第2成形品を射出成形により異なる樹脂材でトレーを一体的に成形する形態で説明をしたが、異なる樹脂材を熱融着により接合しても良く、また機械的に接続することも可能であり、具体的な構成はこれら実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明のトレーに収容されるハードディスクヘッドアームであって、(a)はハードディスクヘッドアームの平面図、(b)はハードディスクヘッドアームの側面図、(c)はハードディスクヘッドアームの底面図である。
【図2】図2は、本発明のトレーで、硬質樹脂材で成形されるトレーの第1成形品と成る基台の平面図である。
【図3】図3(a)は基台の右側面図、図3(b)は基台のA−A断面図である。
【図4】図4は、図2のB−B断面図である。
【図5】図5は、基台の底面図である。
【図6】図6は、基台の正面図である。
【図7】図7は、硬質樹脂材と共に軟質樹脂材で成形される第2成形品と成るトレーの平面図である。
【図8】図8(a)はトレーの右側面図、図8(b)は図7のD−D断面図である。
【図9】図9は、図7のC−C断面図である。
【図10】図10は、トレーの底面図である。
【図11】図11は、ヘッドアームを窪みに収容保持したトレーの使用説明図である。
【図12】図12は、固定金型と移動金型が分離された状態であって、固定金型上に基台となる第1成形品を支持した状態を示す断面図である。
【図13】図13は、互いに密閉接合された固定金型と移動金型間に第1成形品をインサートした状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…ヘッドアーム
4…基準孔
6…トレー(第2成形品)
8…基台(第1成形品)
10…窪み部
12…窪み部
16a,16b…係合溝(積載係合部)
18a,18b…係合溝(積載係合部)
20a,20b…舌片(積載係合部)
22a,22b…舌片(積載係合部)
28a,28b…支持面
30…位置決め軸
32…緩衝島部(突出部)
34…押圧ボス
35…嵌合穴
40…固定金型
42…移動金型
G1,G2… ピンゲート
SR… 緩衝部(軟質樹脂材)
θ…傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスクドライブのヘッドアーム(1)を、移動を規制した状態で整列収容する窪み部を有するトレー(6)であって、
前記トレー(6)は、上面に複数の窪み部(10)を並設した硬質樹脂材で成形される基台(8)と、この基台(8)の前記窪み部(10)の内周面と下面に弾性を有する軟質樹脂材を射出成形することにより一体に成形される緩衝部(SR)とから成り、
前記軟質樹脂材で構成される窪み部(12)は、前記ヘッドアーム(1)を囲むようにその下面を密接状態で支持する支持面(28a,28b)を底部に形成すると共に前記ヘッドアーム(1)の一部と係合する係合部(36)を備えていることを特徴とするハードディスクヘッドアーム用トレー。
【請求項2】
請求項1記載のハードディスクヘッドアーム用トレーにおいて、
前記トレー(6)は、上下面の端部に複数の積載係合部が配設されて上下に対応する前記複数の積載係合部同士が係合して積載可能に構成され、前記窪み部(12)の底面には前記ヘッドアーム(1)の一端に形成される基準孔(4)に挿通係止する位置決め軸(30)が一体形成されると共に、前記トレー(6)の下面には前記基準孔(4)を挿通した下段トレーの位置決め軸(30)に嵌合し、且つ下段トレーの平坦な支持面上に支持された前記基準孔(4)周縁の上面を押圧する押圧面(34a)を有する押圧ボス(34)が一体形成されることを特徴とするハードディスクヘッドアーム用トレー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハードディスクヘッドアーム用トレーにおいて、
前記ヘッドアーム(1)は、前記基準孔(4)を形成する一端が平坦面に形成されてその略中間部から所定の傾斜角度θで上方に折曲形成されて成り、前記トレー(6)は、平面視矩形に形成されて並設される複数の窪み部(12)の支持面(28a,28b)を、前記平坦状の支持面とこの支持面から連続する前記傾斜角度の支持面となるよう前記ヘッドアーム(1)の下面形状に合わせて形成し、前記トレー(6)の下面には一端に前記押圧ボス(34)と一体形成された突出部(32)が、下段に配置されるトレーの複数の窪み部(12)に挿入可能に対応して配設されていることを特徴とするハードディスクヘッドアーム用トレー。
【請求項4】
請求項1記載のハードディスクヘッドアーム用トレーにおいて、
前記硬質樹脂材及び/又は軟質樹脂材には、帯電防止材が混入されていることを特徴とするハードディスクヘッドアーム用トレー。
【請求項5】
請求項1に記載のハードディスクヘッドアーム用トレーの製造方法において、
射出成形機の固定金型と移動金型により形成される充填間隙に硬質樹脂材を充填することで、上面に複数の窪み部(10)を並設すると共に、この複数の窪み部(10)に下面との間で連通する連通孔(15a,15b,24a,24b)を形成した第1成形品(8)を成形する工程と、
前記第1成形品(8)を前記射出成形機の固定金型(40)と移動金型(42)との間にインサートすることで、前記第1成形品(8)の上面を覆う金型の各窪み部内周壁との間に充填間隙を形成し、該窪み部の一端上面に有底穴を形設し、前記第1成形品(8)の下面を覆う金型上面に前記各窪み部に対応する複数の充填間隙を連通形成すると共に、該各充填間隙部に前記有底穴に対応すべく周囲に充填間隙を形成した突出部を形成する工程と、
前記充填間隙部に形成されたピンゲート(G2)を介して前記充填間隙に前記連通孔(15a,15b,24a,24b)を通して軟質樹脂材を充填して第2成形品(6)を成形する工程とから成るハードディスクヘッドアーム用トレーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−21812(P2006−21812A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202940(P2004−202940)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000206141)大成プラス株式会社 (87)
【出願人】(598109084)阿部電材株式会社 (1)
【Fターム(参考)】