説明

バスの乗降口のステップ部構造

【課題】 前方からの荷重に対してステップ部材が変形することを抑制できるバスの乗降口のステップ部構造を提供する。
【解決手段】 バスの車体1の前部に形成された乗降口10のステップ部11に、ステップ部材20と、前側支持枠構体21と、後側支持枠構体22と、これら支持枠構体21,22間に配置されたステップリンフォース部材23とが設けられている。前側支持枠構体21は、上枠部材30と、下枠部材31と、外枠部材32と、内枠部材33と、上下方向に延びる角パイプ製の連結柱部材35と、ヘッドランプブラケット36とを備えている。後側支持枠構体22は、上枠部材40と、下枠部材41と、外枠部材42と、内枠部材43と、角パイプ製の荷重受け部材45とを備えている。ステップリンフォース部材23の前端23aは連結柱部材35の後面に固定されている。ステップリンフォース部材23の後端23bは荷重受け部材45の前面に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大型バス等のバスの乗降口に設けられるステップ部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部の乗降口にステップ部を有するバスでは、乗降口の下部に階段状のステップ部材が配置され、このステップ部材の前後に枠部材が設けられている(例えば下記特許文献1,2参照)。ステップ部の前記枠部材は、一般に、車体の幅方向外側に配置され上下方向に延びる外枠部材と、車体の幅方向内側に配置され上下方向に延びる内枠部材と、これら外枠部材と内枠部材との間に例えば斜め方向等に配置されたリンフォース部材などによって構成されている。
【特許文献1】特開2001−310770号公報
【特許文献2】特開2002−68011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
衝突時等に前方から大きな荷重が車体前部に入力したときに、ステップ部材が荷重によって変形する可能性がある。また車体の前部には、ヘッドランプユニットを取付けるためにヘッドランプブラケットを設ける必要があるが、前記枠部材の前側に剛性を高めるためのリンフォース部材を設けた場合には、ヘッドランプブラケットをリンフォース部材と干渉しないように配置する必要があり、フロントランプブラケットを設ける位置が制約されてしまうという問題があった。
【0004】
従って本発明の目的は、前方から入力する荷重に対してステップ部材が変形することを抑制でき、しかもステップ部材の前側の所定位置にヘッドランプユニットを取付けることができるバスの乗降口のステップ部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、バスの車体前部の乗降口の下部に設けられた階段状のステップ部材と、前記ステップ部材の前側に設けられた前側支持枠構体と、前記ステップ部材の後側に設けられた後側支持枠構体と、前記ステップ部材の下面に沿って前記前側支持枠構体と後側支持枠構体との間に配置されて車体の前後方向に延びるステップリンフォース部材とを有している。そして前記前側支持枠構体は、車体の幅方向に延びる前側の上枠部材と、前記上枠部材の下方に配置されて車体の幅方向に延びる前側の下枠部材と、車体の幅方向外側に配置されて上下方向に延びる前側の外枠部材と、車体の幅方向内側に配置されて上下方向に延びる前側の内枠部材と、上端が前記上枠部材に固定され下端が前記下枠部材に固定されて上下方向に延びる連結柱部材と、前記前側の内枠部材と前記連結柱部材との間に配置されたヘッドランプブラケットとを有している。前記後側支持枠構体は、車体の幅方向に延びる後側の上枠部材と、前記後側の上枠部材の下方に配置されて車体の幅方向に延びる後側の下枠部材と、車体の幅方向外側に配置されて上下方向に延びる後側の外枠部材と、車体の幅方向内側に配置されて上下方向に延びる後側の内枠部材と、前記後側の上枠部材と下枠部材との間に配置された荷重受け部材とを有している。そして前記ステップリンフォース部材の前端が前記連結柱部材の後面に固定され、前記ステップリンフォース部材の後端が前記荷重受け部材の前面に固定されたことを特徴とするものである。
【0006】
この発明の好ましい形態では、前記連結柱部材と前記荷重受け部材がそれぞれ角パイプからなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前方から入力する荷重に対し、前側支持枠構体の連結柱部材と、後側支持枠構体の荷重受け部材と、ステップリンフォース部材とが協働することにより、ステップ部材が変形することを効果的に抑制できる。しかも前側支持枠構体に設けたヘッドランプブラケットを利用して、ヘッドランプユニットを車体前部の所定位置に前記連結柱部材と干渉しないように取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の一実施形態に係るバスの乗降口のステップ構造について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、バスの車体1の前部の骨格構造体2を前側から見た斜視図である。この骨格構造体2は、乗降口10と、乗降口10の床部に配置されたステップ部11などを有している。図2は、骨格構造体2の一部をバスの後側から見た斜視図である。
【0009】
ステップ部11は、階段状に形成されたステップ部材20と、ステップ部材20の前側に設けられた前側支持枠構体21と、ステップ部材20の後側に設けられた後側支持枠構体22と、ステップ部材20の下面に沿って前側支持枠構体21と後側支持枠構体22との間に配置されたステップリンフォース部材23とを有している。図3に示すようにステップリンフォース部材23は、車体1の前方から見てコ字形の断面を有している。ステップリンフォース部材23は車体1の前後方向に沿って略水平方向に延びている。
【0010】
図1に示すように前側支持枠構体21は、車体1の幅方向(車幅方向)に延びる前側の上枠部材30と、上枠部材30の下方に配置されて車体1の幅方向に延びる前側の下枠部材31と、車体1の幅方向外側に配置されて上下方向に延びる前側の外枠部材32と、車体1の幅方向内側に配置されて上下方向に延びる前側の内枠部材33と、上下方向に延びる連結柱部材35とを含んでいる。
【0011】
連結柱部材35は角パイプのように曲げ剛性の高い金属材料(例えば鋼製の角パイプ)からなる。連結柱部材35の上端35aは、例えば溶接等の固定手段によって上枠部材30に固定されている。連結柱部材35の下端35bは、例えば溶接等の固定手段によって下枠部材31に固定されている。
【0012】
この前側支持枠構体21は、ヘッドランプブラケット36を備えている。ヘッドランプブラケット36は、前記内枠部材33に沿って、内枠部材33と連結柱部材35との間に配置されている。このヘッドランプブラケット36は上下方向に延びる縦長の形状であり、内枠部材33および連結柱部材35と略平行となるように、例えば溶接等の固定手段によって内枠部材33に固定されている。
【0013】
図3に示すようにヘッドランプブラケット36には、後述するヘッドランプユニット50のヒンジ機構部51を取付けるためのナット部材37が設けられている。前側支持枠構体21の前方にフロントバンパ38(図4と図5に示す)が設けられている。
【0014】
図1と図2に示すように後側支持枠構体22は、車体1の幅方向に延びる後側の上枠部材40と、この上枠部材40の下方に配置されて車体1の幅方向に延びる後側の下枠部材41と、車体1の幅方向外側に配置されて上下方向に延びる後側の外枠部材42と、車体1の幅方向内側に配置されて上下方向に延びる後側の内枠部材43と、上下方向に延びる荷重受け部材45と、斜め方向に延びるダイアゴナル部材46などによって構成されている。荷重受け部材45とダイアゴナル部材46は、上枠部材40と下枠部材41との間に配置されている。
【0015】
荷重受け部材45は、角パイプのように曲げ剛性の高い金属材料(例えば鋼製の角パイプ)からなり、上枠部材40とダイアゴナル部材46との間に配置され、上下方向に延びている。荷重受け部材45の上端は上枠部材40に溶接等によって固定されている。荷重受け部材45の下端は溶接等によってダイアゴナル部材46に固定されている。ダイアゴナル部材46の一端は下枠部材41に固定されている。ダイアゴナル部材46の他端は外枠部材42に固定されている。
【0016】
図5に示されるように、ステップリンフォース部材23の前端23aは、連結柱部材35の後面に溶接によって固定されている。ステップリンフォース部材23の後端23b(図1と図2に示す)は、荷重受け部材45の前面に溶接によって固定されている。そしてこのステップリンフォース部材23は、連結柱部材35と荷重受け部材45との間に、略水平となるように、車体1の前後方向に沿って配置されている。従って前側支持枠構体21の前方から連結柱部材35に入力する荷重は、ステップリンフォース部材23を介して後側支持枠構体22の荷重受け部材45に伝わることになる。
【0017】
ステップリンフォース部材23の上側に、階段状に形成されたステップ部材20の上下方向中間部が配置されている。このため乗降時にステップ部材20に加わる上方からの荷重の一部がステップリンフォース部材23に入力され、荷重の一部がステップリンフォース部材23を介して前側支持枠構体21と後側支持枠構体22によって支持される。
【0018】
図4と図5に示すように、ヘッドランプブラケット36に、ヘッドランプユニット50のヒンジ機構部51のベース部材52が固定用部材53によって固定されている。固定用部材53は、ヘッドランプブラケット36に設けられたナット部材37に螺合され、締付けることによって固定されている。ヘッドランプユニット50は、ヒンジ機構部51によって、車体1に対し水平方向に回動可能に支持されている。
【0019】
ヘッドランプユニット50の端部50aは、ボルト等の固定用部材54によって、外枠部材32のランプユニット支持部55に固定されている。このヘッドランプユニット50は、ランプ交換時などに、固定用部材54を外すことにより、ヒンジ機構部51を中心として図5に矢印Aで示す方向に回動させることが可能である。
【0020】
車体1の前方から前記ステップ部11に向って大きな荷重が入力すると、その荷重は、フロントバンパ38等によって吸収される。さらにその荷重が前側支持枠構体21に入力し、前方からの荷重が上枠部材30と下枠部材31および連結柱部材35に加わると、連結柱部材35が後方に押される。
【0021】
連結柱部材35の後面(真後ろ)に、ステップリンフォース部材23の前端23aがオフセットすることなく結合されている。ステップリンフォース部材23の後端23bには後側支持枠構体22の荷重受部材45がオフセットすることなく結合されている。このため連結柱部材35の前方から入力した荷重は、連結柱部材35からステップリンフォース部材23を介して、後側支持枠構体22の荷重受け部材45に伝わり、後側支持枠構体22によって支持される。このためステップ部材20が変形することを、前側支持枠構体21と、後側支持枠構体22と、ステップリンフォース部材23等によって効果的に抑制することができ、前方からの荷重をステップ部11の後方に伝えることができる。
【0022】
前記連結柱部材35は、前側支持枠構体21の上枠部材30と下枠部材31との間に配置されて上下方向に延びているため、上下方向に縦長な形状のヘッドランプブラケット36を内枠部材33と連結柱部材35との間に配置することが可能となった。そしてこのヘッドランプブラケット36にヘッドランプユニット50のヒンジ機構部51を取付けたことにより、ヒンジ機構部51を中心として水平方向に回動するヘッドランプユニット50が連結柱部材35と干渉することを回避できる。このため本実施形態では、ステップ部11の前側支持枠構体21に取付けられたヘッドランプブラケット36を用いて、ヘッドランプユニット50のヒンジ機構部51を車体1の前部の所定位置に配置することが可能となった。
【0023】
なお本発明を実施するに当たって、ステップ部材や前側支持枠構体、後側支持枠構体、ステップリンフォース部材、連結柱部材、ヘッドランプブラケット、荷重受け部材等の発明の構成要素を、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変形して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るステップ部を有するバスの車体前部の骨格構造体を前側から見た斜視図。
【図2】図1に示された骨格構造体のステップ部を車体の後側から見た斜視図。
【図3】図1に示された骨格構造体のステップ部の前側支持枠構体の正面図。
【図4】図3に示された前側支持枠構体にヘッドランプユニットを取付けた状態の正面図。
【図5】図4中のF5−F5線に沿うヘッドランプユニットと車体の一部の断面図。
【符号の説明】
【0025】
1…車体
10…乗降口
11…ステップ部
20…ステップ部材
21…前側支持枠構体
22…後側支持枠構体
23…ステップリンフォース部材
30…前側の上枠部材
31…前側の下枠部材
32…前側の外枠部材
33…前側の内枠部材
35…連結柱部材
36…ヘッドランプブラケット
40…後側の上枠部材
41…後側の下枠部材
42…後側の外枠部材
43…後側の内枠部材
45…荷重受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスの車体前部の乗降口の下部に設けられた階段状のステップ部材と、
前記ステップ部材の前側に設けられた前側支持枠構体と、
前記ステップ部材の後側に設けられた後側支持枠構体と、
前記ステップ部材の下面に沿って前記前側支持枠構体と後側支持枠構体との間に配置されて車体の前後方向に延びるステップリンフォース部材とを有し、
前記前側支持枠構体は、
車体の幅方向に延びる前側の上枠部材と、
前記上枠部材の下方に配置されて車体の幅方向に延びる前側の下枠部材と、
車体の幅方向外側に配置されて上下方向に延びる前側の外枠部材と、
車体の幅方向内側に配置されて上下方向に延びる前側の内枠部材と、
上端が前記上枠部材に固定され下端が前記下枠部材に固定されて上下方向に延びる連結柱部材と、
前記前側の内枠部材と前記連結柱部材との間に配置されたヘッドランプブラケットとを有し、
前記後側支持枠構体は、
車体の幅方向に延びる後側の上枠部材と、
前記後側の上枠部材の下方に配置されて車体の幅方向に延びる後側の下枠部材と、
車体の幅方向外側に配置されて上下方向に延びる後側の外枠部材と、
車体の幅方向内側に配置されて上下方向に延びる後側の内枠部材と、
前記後側の上枠部材と下枠部材との間に配置された荷重受け部材とを有し、
前記ステップリンフォース部材の前端が前記連結柱部材の後面に固定され、
前記ステップリンフォース部材の後端が前記荷重受け部材の前面に固定されたことを特徴とするバスの乗降口のステップ部構造。
【請求項2】
前記連結柱部材と前記荷重受け部材がそれぞれ角パイプからなることを特徴とする請求項1に記載のバスの乗降口のステップ部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−308044(P2008−308044A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157894(P2007−157894)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】