説明

バックグラインドテープ

【課題】 研削後のウエハにひび割れなどの欠陥を与えることのないバックグラインドテープを提供する。
【解決手段】 引張り弾性率が2GPa以上の基材フィルムに架橋されたポリマー層を形成し、その面に、剥離可能に調整されたウエハ貼付用の粘着剤層を積層したバックグラインドテープの反りが4mm以下であるバックグラインドテープ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種半導体の製造工程のうち半導体ウエハ(以下、単にウェハと称することもある)の裏面を研削するバックグラインド工程において用いる半導体ウエハ保護用粘着シートであるバックグラインドテープに関する。
【背景技術】
【0002】
各種半導体を製造する際、半導体ウエハの表(おもて)面にパターンを形成し、所定の厚さになるまでウエハ裏面をバックグラインダー等で研削するバックグラインド工程を経るのが一般的である。その際、ウエハの保護等の目的で、ウエハ表面に半導体ウエハ保護シート(テープ)なる粘着シートを貼り合わせた上で研削することが一般的に行われている。
最近、ウエハは8インチ、12インチに大型化されている。したがって、前記保護シートはウエハを保護した状態で、搬送する機会が非常に多くなってきている。またウエハは衝撃によって非常に割れやすく、また反り返っているのが通常である。ウエハを保護し、搬送するには保護シート自体として剛性のある保護シートを用いることができる。かかる剛性保護シートはウエハを強固に補強することができ、反りも抑えられることから、ウエハの破損を防ぎ、搬送も容易に行うことができる。この効果は保護シートの剛性が高い方が大きい。
【0003】
しかしながら、保護シートの剛性が高くなるほどウエハの保護、搬送は容易になるものの、剛性が高くなるほど保護シートは剥離し難くなり保護シートの除去面では好ましくない。言い換えると剛性が高い強固な保護シートではウエハを補強する効果は絶大であっても、ウエハの加工処理後にウエハから保護シートを剥離することが困難となる。
上記課題を解決する方法として、半導体ウエハ保護用粘着シートにおいて、基材フィルムを剥離可能な状態で複数枚化をして、研磨および搬送工程における剛性の確保をし、ウエハの剥離前に、まず、基材フィルム間での剥離を行い該基材フィルムの枚数を低減することによりウエハの剥離性を向上させる方法が開示されている(特許文献1および2等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−147290号公報
【特許文献2】特許第3905356号公報 上記特許文献2において、基材フィルムの引張り弾性率が0.1〜1.0GPaであることが好ましいことが開示されている。また、上記特許文献において、ウエハを研磨した後のウエハの反りが小さいことが重要であることが開示されている。しかし、ウエハを研磨した後のウエハの反りが小さいことは結果として望ましいが、それを実現する方法としては、基材フィルムの引張り弾性率が高いこととともに、基材フィルム自体の反りが小さい或は、基材フィルムがウエハの反りを打ち消す事が必要である。
【0005】
これらの半導体ウエハ保護用粘着シートであるバックグラインドテープは、従来品の改良がなされたものであり、研削(バックグラインド)後のウエハのそりが低減される効果や、搬送性と剥離性のバランスをとる点においてその効果が十分でなく、研磨時や研削後の搬送や剥離工程においてウエハにひびが入ることが起こる頻度が多い場合があるという等の課題が顕在化してきておりその解決が強く望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ウエハに貼着する際の反りと、その後のバックグラインド工程でのウエハの反りも抑制でき、得られた研削後の搬送やウエハの剥離時におけるウエハのひび割れなどがない半導体ウエハ保護用粘着シートであるバックグラインドテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題解決のためにはバックグラインドテープの反りがないことが必須であることを見出し本発明に到った。
すなわち本発明は、下記の構成になるものである。
1.基材フィルムの片面に架橋されたポリマー層が形成され、この架橋されたポリマー層が形成された面に、剥離可能に調整されているウエハ貼付用の粘着剤層が積層されているバックグラインドテープであって、基材フィルムの引っ張り弾性率がフィルムの長手方向と幅方向の平均値で2GPa以上であり、該バックグラインドテープの反りが4mm以下であることを特徴とするバックグラインドテープ。
2. 基材フィルムの厚みが35〜150μmである1.のバックグラインドテープ。
3. 粘着剤層厚みが35〜125μmである1.〜2.いずれかのバックグラインドテープ。
4. 基材フィルムが延伸されてなるポリエチレンテレフタレートフィルムである1.〜3.いずれかのバックグラインドテープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の、基材フィルムの片面に架橋されたポリマー層が形成され、この架橋されたポリマー層が形成された面に、剥離可能に調整されているウエハ貼付用の粘着剤層が積層されているバックグラインドテープであって、基材フィルムの引っ張り弾性率がフィルムの長手方向と幅方向の平均値で2GPa以上であり、該バックグラインドテープの反りが4mm以下であるバックグラインドテープは、粘着剤コート工程で、粘着剤の収縮応力などが入らないようにして作成し、基材フィルムに粘着剤層をつけた状態で反りが発生することなく、そのためウエハにこの反りが応力を及ぼすことがなく、さらにウエハなどに貼り付ける際にそれ自身反りがないためにウエハに簡単に密着でき、無理な圧着を施さなくてもウエハに十分に密着し、かつウエハに無理なひずみを与えないことから、グラインド(研削)時にも、研削後のこのバックグラインドテープを剥離する際に粘着剤層が基材フィルムの架橋されたポリマー層と密着性が高く反面でウエハとの剥離がスムースになされ、粘着剤層がウエハに残存することがなく、剥離が無理なく実施でき、また研削後のウエハにひび割れなどの欠陥を与えることのない性能を備えることができる。本発明のバックグラインドテープは、ウエハを貼着する時にウエハの表面に形成されているバンプの形状に対する形状追従性に優れているのでウエハ研磨時にウエハと粘着層の間への水の進入が抑制される等の効果を有し、ウエハへの粘着剤の転移、いわゆる糊残りによるウエハの汚染が抑制され、ウエハや回路を備えたウエハの製造にとってきわめて有意義である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明におけるバックグラインドテープにおける基材フィルムの種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム;2軸延伸ポリプロピレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルムなどのポリオレフィン系フィルム;ポリカーボネートフィルム;延伸ポリアミドフィルム;ポリエーテルエーテルケトンフィルム;ポリスチレンフィルムなどのスチレン系ポリマーフィルムなどが挙げられる。
中でも引張弾性率が2GPa以上のものであることが必要である。該引張弾性率、他の物性やコストなどからポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
【0010】
本発明のバックグラインドテープにおける基材フィルムの引張り弾性率は2GPa以上であることが必要であり、3GPaを超えるものがより好ましい。上限値は特に限定されないが、実現可能な範囲として9GPa以下である。該基材フィルムの厚みおよび厚み構成は、反り、搬送性および剥離性等に大きく影響するので重要である。該点に関しては後ほど詳述する。
上記のごとく引張り弾性率の大きい基材フィルムを用いることで、同一の力が作用しても基材フィルムの変形が小さく、それゆえバックグラインドテープの反りを小さく抑制できる。引張り弾性率の大きいフィルムは曲げ弾性率も大きく、フィルムの剛性によってウエハ自体の回路作成過程、及びバックグラインド工程でウエハに蓄積した応力による反りをおさえ、反りを低減する効果が発現される。
本発明においては、以下に示す方法により測定されるバックグラインドテープの反りが4mm以下であることが重要である。3.5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
該反りが4mmを超えると研磨時、搬送時および剥離時のいずれの工程においてもウエハの割れの発生が増大するので好ましくない。該反りの下限値は0mmであることが最も好ましい。
【0011】
〔バックグラインドテープの反りの測定方法〕 バックグラインドテープを巻き方向および巻き方向と直交する方向にそれぞれ15mm×100mmの大きさに切り取り試験片とする。バックグラインドテープの面方向に対する厚さ方向への変形度合を意味し、具体的には、図1に示すように、15mm×100mmの試験片の15mmの辺の中心を、紐で支持し、100mmの辺の上部の角と下部の角を結ぶ線からの変位の最も大きい部分までの変位を反り量とする。それぞれ計10点をサンプリングし、測定値は10点の平均値とする。上記測定は第1粘着層表面に積層さているセパレートフィルムを剥離した状態で測定をした。巻き方向および巻き方向と直交する方向の両方の測定値の大きい方の値をバックグラインドテープの反りとする。
【0012】
バックグラインドテープの反りが少ないことでウエハと貼り合せる際に無理なく貼り合わせすることができる。貼り合わせ時、その後の工程においてウエハに無理な歪力を与えないこととなる。バックグラインドテープを貼りあわせたウエハが厚いときには反りとしては顕在化しない応力も、ウエハを薄くしたときには、反りとなって見えてくるが、ウエハ自体が研削されることや、デバイス面の持つ歪によって応力を持ち反りがあるときに、このウエハの反りの方向とフィルム自体のもつ反りの方向とが一致すると、バックグラインドテープを貼りあわせたウエハの反りが強調されることとなる。このとき、フィルムの持つ反りが少なければ、ウエハの反りを強調することなく、むしろ反りを低減することになる。このバックグラインドテープを貼りあわせたウエハ反りの低減という効果は、最終的なバックグラインドテープを剥がしたウエハの反りがバックグラインドテープ側或は研削面側に関わらず湾曲するすべての場合に発現すると考えられる。例えば、ウエハ自体研削面を内側に湾曲している場合でも最終的な反りがバックグラインドテープを内側にして湾曲する場合でも、前記反りの低減効果が得られるものと考えられる。
【0013】
軟質基材のバックグラインドテープではバックグラインドテープの製造工程における強力な引張り張力などによってバックグラインドテープ自体に残存応力が蓄積され、ウエハ研削後に反りとなって現れる。
引張り弾性率の大きいフィルムを有するバックグラインドテープは製造工程における引張り張力の影響を受け難く、反りの低減効果を見ることができる。本発明のバックグラインドテープにおけるフィルムの引張り弾性率は2GPa以上であることが必要であり、3GPaを超えるものがより好ましい。
【0014】
本発明においては、上記のバックグラインドテープの反りを4mm以下にする方法は限定されない。該反りはバックグラインドテープの有している歪により引き起こされているものと推察される。従って、複数の要因が複雑に絡み合っておりその抑制手段は単純明快ではない。経験的には、基材フィルムの厚み構成比や基材フィルムやバックグラインドテープ製造時の熱の掛かり方やフィルムの張力および張力バランス、ラミネート工程における張力および張力バランス等の影響を受けることが判っており、これらの最適化を行うことが好ましい実施態様である。
張力バランスの点では、張力の絶対値を低くするのが好ましい。しかしながら、テンションの絶対値を下げると製品ロールの巻き形状等に悪影響がでることがある。従って、該製品ロールの巻き形状等に悪影響が出ない範囲の低いテンションで行うのが好ましい実施態様の一つである。
また、工程内での各所のテンションの差を小さくするのが好ましい。
テンションの絶対値はフィルム幅等により異なるので、数値としての最適範囲を示すことは難しいが、例えば、フィルム400mmにおいては、3〜12kgが好ましい。
また、工程内の各所における張力の最大値と最小値に対する最大値の比が1〜2.5の範囲が好ましい。
製造工程における基材フィルムに掛かるテンションは巻き等に悪影響がでない範囲で低い方が好ましい。本発明の反り範囲になるように各種要因を最適化することが最も好ましい実施態様である。
【0015】
本発明においては、基材フィルムの片面に架橋されたポリマー層が形成されてなり、該架橋されたポリマー層側に粘着剤層が積層されてなることが必須である。
該対応により剥離したウエハに粘着剤が残る現象である汚染性(以下耐汚染性と称することがある)が抑制される。
【0016】
上記の架橋されたポリマー層としては、特に限定されず、各種ポリマーを架橋剤で架橋した層、自己架橋型ポリマーを用いた層などが挙げられる。
例えば、基材フィルムがポリエステル系フィルムの場合は、架橋剤で架橋する方法においてはポリエステル、ポリウレタンおよびアクリル酸系ポリマーよりなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。上記ポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、また、異なる2種または3種を組み合わせて用いてもよい。 また、上記ポリマーを架橋するための架橋剤としては、上記したポリマーに存在する官能基、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メチロール基、アミド基等と架橋反応し得るものを用いればよい。例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂、アミドエポキシ化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤等を用いることができる。特に、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が、上記ポリマーとの相溶性や粘着層との密着性の点から好適に用いることができる。
これらポリマー(ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系ポリマー)と架橋剤は任意の比率で混合して用いることができるが、前記した耐汚染性を効率よく抑制するためには、架橋剤は、ポリマー100質量部に対し、固形分質量比で2質量部以上、50質量部以下の添加が好ましく、より好ましくは3〜25質量部である。上記範囲において耐汚染性を効率よく抑制することができる。
【0017】
上記方法以外にも、例えば、前記したポリマーに架橋性の官能基を導入した自己架橋型のポリマーを用いてもよい。自己架橋型のポリマーを用いる場合の架橋方法は、例えば、熱架橋であってもよく、紫外線、電子線およびγ線等のような高エネルギーの活性線による架橋であってもよい。
上記の架橋されたポリマー層には、粘着層との密着性が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤等が配合されていてもよいが、無機滑材を含有せしめることが最も好ましい。
特に、架橋されたポリマー層に無機滑材粒子を添加したものは、例えば、ポリエステル系基材フィルムの該架橋されたポリマー層を積層して、一端巻き取る場合などの易滑性や耐ブロッキング性が向上するので好ましい。この場合、添加する無機滑材粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等を用いることができる。用いられる無機滑材粒子は、平均粒径0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜3μm、最も好ましくは0.05〜2μmである。無機滑材粒子の使用量は特に限定されないが、架橋されたポリマー層中のポリマー100質量部に対し、固形分で0.05〜10質量部混合することが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0018】
上記架橋されたポリマー層を形成方法は限定されない。例えば、上記したポリエステル、ポリウレタンおよびアクリル系ポリマーよりなる群から選択される1種以上のポリマーと架橋剤との混合物の水分散体や、自己架橋型ポリマーの水分散体から形成されるのが好ましい。従って、塗工法で形成するのが最も簡便であり、ポリエステル系基材フィルムの表面に塗工すればよい。好適なのは、ポリエステル系基材フィルムの未延伸フィルムに塗布し、次いで少なくとも一方向に延伸する方法、縦延伸後に塗布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法等、いずれの方法も可能である。なかでも、ポリエステル系基材フィルムを製造する際、フィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる、いわゆるインラインコート法が、容易に薄膜を形成できるため、本発明の効果をより顕著に発現させることができ、好ましい。
ポリエステル系基材フィルムへ塗工液を塗布する場合は、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等を用いることができる。
【0019】

本発明における粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの粘着剤が挙げられる。なかでも、ウエハへの接着性、剥離後のウエハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどの炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)、及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどが挙げられる。
【0020】
アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0021】
アクリル系ポリマーにおいて、架橋処理等を目的として、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として用いうる。このようなモノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30質量%以下が好ましい。
【0022】
アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。粘着剤層はウエハの汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である。ポリマーの数平均分子量を高めるため、内部架橋方式又は外部架橋方式などの適宜な方法により架橋された架橋型ポリマーを用いることもできる。
【0023】
さらに、粘着剤層中に放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を加えることにより、粘着剤層を放射性硬化型の粘着剤で構成することもできる。このようなモノマー及びオリゴマーとして、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。オリゴマーの配合量は、粘着剤を構成する主ポリマー100質量部に対して、例えば5〜500質量部、好ましくは40〜150質量部程度である。また、オリゴマーの分子量は100〜30000程度の範囲が適当である。
【0024】
放射線硬化型のモノマー成分等を含む混合物を紫外線等により硬化させる場合に使用される光重合開始剤として、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α、α′−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
【0025】
粘着剤層の弾性率は、例えば0.1〜3MPa程度である。また、粘着剤層の接着力は、使用目的等に応じて適宜設定できるが、一般には、半導体ウエハに対する密着維持性やウエハからの剥離性などの点から、ウエハミラー面に対する接着力(常温、180°ピール値、剥離速度300mm/分)が、例えば500g/20mm以上、放射線照射後のウエハミラー面に対する接着力が、例えば40g/20mm以下であるのが好ましい。
粘着剤層の厚さは適宜に決定してよいが、35〜125μmが好ましく、40〜120μmがより好ましい。 粘着層厚みが35μm未満では、バンプ付きウエハの研磨を行う場合に、粘着層のバンプ形状に対する形状追従性が悪化し、該バンプ部に気泡の噛み込み等が起こり、ウエハと粘着剤層の間に研磨時の冷却水の発生や研磨時のウエハ割れの増大等に繋がるので好ましくない。
逆に、125μmを超えた場合は、上記のバンプ部形状の追従性向上が飽和して経済的に不利になるので好ましくない。また、剥離性が劣る場合がある。
【0026】
本発明においては、基材フィルムの厚みが35〜150μmが好ましい。40〜125μmがより好ましい。40〜100μmが更に好ましい。150μmを越えた場合はウエハからの剥離性が低下するので、ウエハを剥離する場合のウエハの割れの発生が増大するので好ましくない。35μm未満の場合は、搬送性を確保するためには、バックグラインドテープの反りが大きくなることがあるので好ましくない。 本発明においては、粘着層厚みが35〜100μmであることが好ましい。40〜90μmがより好ましい。粘着層厚みが35μm未満では、バンプ付きウエハの研磨を行う場合に、粘着層のバンプ形状に対する形状追従性が悪化し、該バンプ部に気泡の噛み込み等が起こり、ウエハと粘着剤層の間に研磨時の冷却水の発生や研磨時のウエハ割れの増大等に繋がるので好ましくない。また、後述の予備剥離性が悪化する場合がある。100μmを超えた場合は、上記のバンプ部形状の追従性向上が飽和して経済的に不利になるので好ましくない。
【0027】
本発明においては、搬送性と剥離性とを両立させるために、基材フィルムの剛性を確保し、搬送性を向上させ、ウエハの剥離性を向上させるため粘着剤層形成面に架橋されたポリマー層を設ける方法により該二律背反の課題を解決しているので、ウエハのグラインド後に剥離がスムースに行われる。この剥離がスムースに行われないとウエハの割れの発生に繋がるので好ましくない。
本発明においては、粘着剤層は、剥離可能に調整されていることが必要である。該対応により良好な剥離性が付与でき、剥離時のウエハの割れを抑制することができる。一方、ウエハを研磨時にはできるだけ強固に粘着されていることが好ましい。該工程別に粘着剤層の粘着性を変化させる方法として、粘着剤層を形成する粘着剤として放射線硬化型の粘着剤を使用して、剥離前に紫外線や電子線等の放射線を粘着剤層に照射して粘着力を制御する方法が好ましい実施態様である。
【0028】
本発明のバックグラインドテープの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、粘着剤、及び必要に応じて、慣用の添加剤、架橋剤、光重合開始剤等を含む粘着剤液をフィルム上にコーティングし、必要に応じて硬化処理することにより製造できる。また、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記コーティング液を塗布して粘着剤層を形成し、これを前記基材フィルム上に転写(移着)することにより製造することもできる。
本発明のバックグラインドテープは、各種半導体の製造工程のうち半導体ウエハの裏面を研削するバックグラインド工程において半導体ウエハの保護のために用いることができる。本発明のバックグラインドテープは、特に研削時に反りが発生しやすい大型ウエハ(例えば、直径8インチ又は12インチのウエハ)、とりわけ、研削により、ウエハの厚み(μm)をウエハの直径(インチ)で割った値が27(μm/インチ)以下である半導体ウエハを得る際の保護用シートとして好適である。
【0029】
半導体ウエハには、シリコンウエハのほか、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、アルミニウム−ガリウム−インジウム、これらに加える元素として窒素、リン、ヒ素、アンチモンがよく用いられている。InP(インジウム燐)、InGaAs、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(カドミウムテルル)、ZnSe(セレン化亜鉛) などの汎用の半導体ウエハが含まれる。また、TiO、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、アルミナ、MgO、ステアタイト、
BaTi、BaTiO、Ba(TiZr)O、PMN-PT PFN-PFWなどのキャパシター材料、PbNb、PbO.5BeO.5Nb、 PbTiO 、BaTiO、PZT、0.855PZT−.95PT−0.5BT、 0.873PZT−0.97PT−0.3BT、 PLZTなどの圧電材料も含まれる。また、ガラス基板、半導体内蔵の回路基板や、半導体チップ内蔵ガラス基板、なども含まれる。バックグラインドテープの半導体ウエハ表面への貼着は、公知の方法、例えば、自動貼付装置などにより行うことができる。また、このようにして表面にバックグラインドテープが貼付された半導体ウエハの裏面の研削(研磨)は、バックグラインダーなどの慣用の研削装置により行うことができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の評価方法は以下の通りである。
【0031】
1、バックグラインドテープの反りの測定方法 バックグラインドテープを巻き方向および巻き方向と直交する方向にそれぞれ15mm×100mmの大きさに切り取り試験片とした。バックグラインドテープの面方向に対する厚さ方向への変形度合を意味し、具体的には、図1に示すように、15mm×100mmの試験片の15mmの辺の中心を、紐で支持し、100mmの辺の上部の角と下部の角を結ぶ線からの変位の最も大きい部分までの変位を反り量とした。それぞれ計10点をサンプリングし、測定値は10点の平均値とした。
【0032】
2.ウエハ割れの測定
ウエハ割れとして、研削中、搬送中および、テープ剥離中にウエハに割れがあるものを目視で観察した。25枚のウエハを研削、搬送、テープ剥がしを行い、一枚の割れもなかったものを○とした。
3.基材フィルムの引張弾性率
基材フィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、引張弾性率、引張強度及び破断伸度を測定して、MD方向とTD方向の平均値を測定値とした。
【0033】
4.耐汚染性
剥離性評価後のウエハ表面を光学顕微鏡で40倍倍率観察し、粘着剤残りがないか確認した。該評価をウエハの100箇所を5mmピッチでずらせながら観察して判定した。粘着剤残りの見られないものを○、粘着剤残りの見られるものを×とした。
【0034】
5.研磨実験
バックグラインドテープを8インチのバンプ高さ30μmのシリコンウエハに貼り、梨地となっている裏面側を#325、#2000のレジノイドダイヤモンド砥石によってバックグラインドし、その後にポリッシュすることにより、40μm厚のウエハとした。ウエハの研削はディスコ社製グラインダー、ポリッシャー複合機DGP8760を使用した。
【0035】
6.搬送実験
真空吸着ステーシ゛にて前述の研削実験を行ないウエハを吸着させた。その後、ウエハからのテープ剥がしをディスコ社製のグラインダー、ポリッシャー複合機DGP8760とインライン化したBGテープ剥がし機DFM2700を使い、その後にUVを照射量300mJ/cmにて照射し、ダイシングフレームに貼付け後にテープを剥がした。この装置内での搬送中にウェハー割れが発生する場合を、搬送割れとして、×とした。また、割れが起きない場合を○とした。10回の評価を行い一回でも割れた場合は×として判定した。
【0036】
7.剥離実験
真空吸着ステーシ゛にて前述の研削実験を行ないウエハを吸着させた。その後、ウエハからのテープ剥がしをディスコ社製のグラインダー、ポリッシャー複合機DGP8760とインライン化したBGテープ剥がし機DFM2700を使い、その後にUV照射して、ダイシングフレームに貼付け後にテープを剥がした。UV照射量は300mJ/cmとした。
このBGテープを剥がすときにウエハから剥がれる場合に、ウェハー割れのない場合を○とし、剥離性が悪くウエハの割れが発生する場合を×とした。10回の評価を行い一回でも割れた場合は×として判定した。
【0037】
8.バンプ追従性
上記方法で研磨後にウエハ表面を光学顕微鏡により倍率100倍で観察し、研磨中に半ウエハとバックグラインドテープとの間に浸入した水の有無および気泡の有無を確認し、以下の基準で判断した。水の浸入あるいは気泡が観察されず、バックグラインドテープ がウエハの表面の凹凸形状に対し優れた追従性を有しているものを○、水あるいは気泡が観察され、バックグラインドテープがシリコン半導体の凹凸形状に対し追従性に劣ることを示すものを×として判定した。バンプ100箇所を観察して判定した。
【0038】
9.フィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0039】
実施例1
〔基材フィルムの調製方法〕
(1)架橋されたポリマー層形成用塗工液の調製
a、水分散性共重合ポリエステルの調製
蒸留塔が付属した1個の加圧エステル化反応槽と、真空発生装置が付属した2個の重縮合反応槽を用い、バッチワイズ方式で共重合ポリエステルを合成した。
まず、エステル化反応槽にテレフタル酸229kg、イソフタル酸222kg、5−ソジウムスルホイソフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)エステル(34%含有エチレングリコール溶液)191kg、および窒素雰囲気下140℃で溶融したネオペンチルグリコール213kg、更に回収・精製されたエチレングリコールとネオペンチルグリコールの混合溶液(質量比45:55)87kgを仕込み、撹拌しながら更に三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液(三酸化アンチモン濃度1.3%)を39kg(酸成分に対して三酸化アンチモンとして0.05モル%)を加えてから窒素で加圧し、熱媒体で反応槽を昇温して塔頂温度を150℃に制御しながらグリコールを反応槽内に還流し、0.3MPaの圧力(ゲージ圧)下、235℃で130分間エステル化反応を行い、共重合ポリエステルのオリゴマーを得た。
次いで、オリゴマーを第一の重縮合反応槽に移送し、撹拌しながら減圧(40kPaまで減圧速度5kPa/分、その後0.3kPaまで減圧速度0.8kPa/分)し、255℃で160分初期縮合を行って、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。その後、0.13kPaの真空下で、螺旋状の撹拌翼を回転させた第二の重縮合反応槽にプレポリマーを移送し、265℃の温度で120分間後期縮合を行い、還元粘度0.41の共重合エステルポリマーとした。この第二の重縮合反応槽に窒素を導入し、ギアーポンプで共重合エステルポリマーを厚さ7mmのシート状で取り出し、水冷しながらシートカッターで破砕して共重合ポリエステルの破砕物を得た。
b、塗工液の調製
上記破砕物100部を、定法により水分散体化した。この水分散体の固形分100部に対し、平均粒子径0.3μmのカオリンを固形分で5部と、触媒として、「キャタリスト600」(三井サイテック社製)を0.025部加え、よく撹拌して塗工液とした。
【0040】
(2)ポリエステルフィルムの調製方法
実質的に無機微粒子を含まないポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65dl/g)のペレットを充分に真空乾燥した後、280℃に加熱された押し出し機に供給し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて、表面温度30℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムを95℃の加熱ロール群を通過させながら、長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムの片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ処理をした処理面に上記塗工液を塗布した。この一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、110℃で乾燥後、引続き連続的に125℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸した。さらに225℃で、幅方向に6%弛緩させながら、6秒間、熱処理を行い、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材フィルムの片面に、厚さ0.08μmの架橋されたポリマー層が積層されたトータル厚さ50μmの基材フィルムを得た。得られた基材フィルムの引っ張り弾性率はMD3.7GPa、TD3.8GPaであった。
【0041】
〔粘着剤の調製〕
2−エチルヘキシルアリレート35質量部,メチルアクリレート62質量部、アクリル酸3質量部からなる重合体を、酢酸エチル40質量部、トルエン60質量部の液でアクリルポリマー溶液を作った。
ペンタエリスリトールテトラアクリレーと76質量部に対して、得られたアクリルポリマー溶液24質量部、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.4質量部を加えて、紫外線硬化型粘着剤を得た。この粘着剤の固形分100質量部に対してポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)4.75質量部を加えて粘着剤層用塗液を得た。
【0042】
〔バックグラインドテープの調製方法〕
<*粘着層積層フィルムの調製>
シリコーン処理された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム(東洋紡績社製E7002 38μm)を巻き出し張力5kg/400mm幅(フィルム幅)の条件にて巻き出し後、シリコーン処理面に、上記方法で調製した粘着剤層用塗液(不揮発分 44.2%、粘度 2.3 Pa・s,25℃) 100質量部に対して、硬化剤(綜研化学社製 L-45)を2.1質量部配合した塗工液を、間口400μmのスロットダイを用いて、塗工幅350mmの条件にて塗工後、5m/分の速さで、95℃にコントロールした長さ10mの炉内を通過させて、乾燥後、アウトフィード(炉内から貼り合わせまでの間)張力10kg/400mm幅(フィルム幅)、ラミ巻き出し(ラミ側ロール巻き出しから貼り合わせまでの間)張力10kg/400mm幅(フィルム幅)の条件にて、上記方法で調製した基材フィルムの架橋されたポリマー層表面と貼り合わせをした後、巻き取り張力7kg/400mm幅(フィルム幅)にて巻き取った。粘着層厚みは乾燥後で45μmとした。
<*バックグラインドテープの調製方法>
上記方法で調製した粘着層積層フィルムのセパレートフィルムを剥離しながらラミネーターを用いての基材フィルムの架橋されたポリマー面にラミネーターを用いて積層してバックグラインドテープを得た。
得られたバックグラインドテープの特性を表1に示す。
本実施例で得られたバックグラインドテープはいずれの特性にも優れており高品質であった。
【0043】
比較例1
実施例1の方法において、基材フィルムを厚みが12μmのコロナ処理された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製 E5100)とした以外は、実施例1と同様の方法でバックグラインドテープを得た。得られたバックグラインドテープの特性値を表1に示す。
本比較例で得られたバックグラインドテープはラミネート時のテンションのバランスが崩れてバックグラインドテープの反りが大きいために、ウエハ研磨時のウエハ割れが多かった。また、粘着層と基材フィルムとの密着性が不足しており耐汚染性が劣っていた。また、基材フィルムの厚みが薄いため剛性が不足しており搬送時にウエハの変形が起こりウエハの割れが発生した。
【0044】
比較例2
実施例1の粘着層積層フィルムの調製方法において、粘着層厚みは乾燥後で130μmとして、かつセパレートフィルムの巻き出し張力15kg/400mm幅(フィルム幅)、アウトフィード(炉内から貼り合わせまでの間)張力を5kg/400mm(フィルム幅)、ラミ巻き出し(ラミ側ロール巻き出しから貼り合わせまでの間)張力8kg/400mm(フィルム幅)、巻き取り張力を5kg/400mm幅(フィルム幅)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で第1粘着層積層フィルムを得た。
得られた第1粘着層積層フィルムをバックグラインドテープとして用いた。特性を表1に示す。
本比較例で得られたバックグラインドテープは、バックグラインドテープの反りが大きくウエハ研磨時のウエハ割れが多かった。また、剥離性が劣っていた。
【0045】
比較例3
実施例1の方法において、第1基材フィルムを厚み45μmのコロナ処理されたポリプロピレンフィルム(東洋紡製 P1011 引張り弾性率TD0.7GPa、MD0.7GPa)に替え、かつコロナ処理面に粘着層が接するように積層するように変更する以外は、実施例1と同様の方法でバックグラインドテープを得た。得られたバックグラインドテープの特性値を表1に示す。
本比較例で得られたバックグラインドテープは剥離時のウエハ割れおよびバンプ追従性以外の特性は全てが劣っており低品質であった。
【0046】
比較例4
比較例1の方法において、第1粘着層厚みを25μmに変更する以外は、比較例1と同様の方法でバックグラインドテープを得た。得られたバックグラインドテープの特性を表1に示す。
本比較例で得られたバックグラインドテープは、比較例1で得られたバックグラインドテープの課題に加え、バンプ追従性が劣っており低品質であった。
【0047】
比較例5
実施例1の方法において、基材フィルムを厚みを188μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法でバックグラインドテープを得た。得られたバックグラインドテープの特性値を表1に示す。
本比較例で得られたバックグラインドテープはウエハの剥離性が悪く、剥離時のウエハ割れが多かった。
【0048】
実施例2
実施例1の方法にいて、基材フィルム厚みを70μmとした以外は、実施例1と同様の方法でバックグラインドテープを得た。得られたバックグラインドテープの特性を表1に示す。
本実施例で得られたバックグラインドテープは、実施例1で得られたバックグラインドテープと同様に全ての特性に優れており高品質であった。
【0049】
実施例3
実施例2の方法において、基材フィルム厚みを75μmに、粘着層厚みを60μmに変更する以外は、実施例2と同様の方法でバックグラインドテープを得た。得られたバックグラインドテープの特性を表1に示す。
本実施例で得られたバックグラインドテープは、実施例2で得られたバックグラインドテープと同様に全ての特性に優れており高品質であった。
【0050】
実施例4
実施例1の方法において、粘着層厚みを120μmとし、かつアウトフィード(炉内から貼り合わせまでの間)の張力を5kg/400mm幅(フィルム幅)とする以外は、実施例1と同様の方法でバックグラインドテープを得た。得られたバックグラインドテープの特性を表1に示す。
本実施例で得られたバックグラインドテープは、実施例2で得られたバックグラインドテープと同様に全ての特性に優れており高品質であった。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の、基材フィルムの片面に架橋されたポリマー層が形成され、この架橋されたポリマー層が形成された面に、剥離可能に調整されているウエハ貼付用の粘着剤層が積層されているバックグラインドテープであって、基材フィルムの引っ張り弾性率がフィルムの長手方向と幅方向の平均値で2GPa以上であり、該バックグラインドテープの反りが4mm以下であるバックグラインドテープは、ウエハなどに貼り付ける際にそれ自身反りがないためにウエハに簡単に密着でき、無理な圧着を施さなくてもウエハに十分に密着し、かつウエハに無理なひずみを与えないことから、グラインド(研削)時にも、研削後のこのバックグラインドテープを剥離する際にも無理なく実施でき、また研削後のウエハにひび割れなどの欠陥を与えることのない性能を備えることがでる。また、本発明のバックグラインドテープは、ウエハを貼着する時にウエハの表面に形成されているバンプの形状に対する形状追従性に優れているのでウエハ研磨時にウエハと粘着層の間への水の進入が抑制される等の効果を有する。さらに、本発明のバックグラインドテープは、ウエハを固定する粘着層と基材フィルムとの密着性に優れており、ウエハへの粘着剤の転移、いわゆる糊残りによるウエハの汚染が抑制されているという特徴を有する。従って、ウエハや回路を備えたウエハの製造にとってきわめて有意義であり、産業界への寄与は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】バックグラインドテープの反りの測定方法の概略を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に架橋されたポリマー層が形成され、この架橋されたポリマー層が形成された面に、剥離可能に調整されているウエハ貼付用の粘着剤層が積層されているバックグラインドテープであって、基材フィルムの引っ張り弾性率がフィルムの長手方向と幅方向の平均値で2GPa以上であり、該バックグラインドテープの反りが4mm以下であることを特徴とするバックグラインドテープ。
【請求項2】
基材フィルムの厚みが35〜150μmである請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項3】
粘着剤層厚みが35〜125μmである請求項1〜2のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
【請求項4】
基材フィルムが延伸されてなるポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載のバックグラインドテープ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−34379(P2010−34379A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196062(P2008−196062)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】