説明

バッテリ直付けヒューズユニット及び該ヒューズユニットの製造方法

【課題】可溶体部の定格変更を容易に、且つ安価に実現することのできるバッテリ直付けヒューズユニットを提供すること。
【解決手段】バッテリ接続板部31の端縁から離間してタブ端子板部33a〜33dの一縁が配列された組み立て形態となるように、バッテリ接続板部31とタブ端子板部33a〜33dとをヒューズハウジング41のインサート成形により一体化した後、バッテリ接続板部31の端縁からタブ端子板部33a〜33dの一縁に連絡するヒューズハウジング41の可溶体保持溝50aに溶融状態の可溶体用母材61を流し込んで、バッテリ接続板部31とタブ端子板部33a,33b,33c,33dとの間を導通接続する可溶体部35を形成することで、可溶体部35の定格変更を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズボックスを介さずともバッテリ端子に対してヒューズを介した電線接続を可能にするバッテリ直付けヒューズユニット及び該ヒューズユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図39は、ヒューズボックスを介さずともバッテリ端子に対してヒューズを介した電線接続を可能にするバッテリ直付けヒューズユニットの従来例を示したものである。ここに示したヒューズユニット10は、下記特許文献1に開示されたもので、導電体性のヒューズエレメント1と、該ヒューズエレメント1を収容保持した絶縁樹脂製のヒューズハウジング3とを備えている。
【0003】
ヒューズエレメント1は、図40に示すように、車両等に搭載されるバッテリのバッテリ端子(図示せず)に導通接続されるバッテリ接続板部5と、外部回路の電線(ワイヤハーネス)が導通接続される複数個のタブ端子板部7と、これらのバッテリ接続板部5と各タブ端子板部7との間を導通接続した可溶体部9とを備えた構成になっている。可溶体部9は、低融点金属製で、定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断することにより、タブ端子板部7に接続されている回路を保護する。
【0004】
ヒューズハウジング3は、バッテリ接続板部5上のバッテリ端子等に導通接続される部位以外を収容した第1ハウジング部3aと、前記可溶体部9を外部から目視可能に収容する透明樹脂製の第2ハウジング部3bと、タブ端子板部7をワイヤハーネス等のコネクタ端子に嵌合接続可能に収容保持する第3ハウジング部3cとを具備した構成になっている。
【0005】
ここに示したヒューズユニット10の場合、ヒューズエレメント1は、図40に示す形状にプレス加工により一体形成する。そして、一体形成されたヒューズエレメント1の周囲には、ヒューズハウジング3を構成する各ハウジング部3a,3b,3cを、インサート成形により形成することで、図39に示した完成形態を得る。
【0006】
【特許文献1】特開2001−297683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、可溶体部9を含むヒューズエレメント1をプレス加工により一体形成する従来のヒューズユニット10の場合、ヒューズエレメント1に装備される複数個の可溶体部9の定格電流等を変更するには、各可溶体部9を打ち抜き形成するプレス型の変更が必要であり、可溶体部9の定格電流等を変更する仕様変更が簡単にできない、あるいは仕様変更に伴うプレス型の変更のために設備投資が必要になるなどの問題が生じた。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、例えば、プレス型の変更等の設備投資を行わずとも、可溶体部の定格電流等を容易に変更することができ、従って、可溶体部の定格変更を容易に、且つ安価に実現することのできるバッテリ直付けヒューズユニット及び該ヒューズユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットであって、
前記タブ端子板部が前記バッテリ接続板部とは別体に形成され、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化する絶縁樹脂製のヒューズハウジングを更に備え、
前記ヒューズハウジングは、前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製であり且つ、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝が備えられ、
前記可溶体部は、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、溶融状態の可溶体用母材を前記可溶体保持溝に流し込んで凝固させることによって形成されていることを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニット。
【0010】
(2) バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットであって、
前記タブ端子板部が前記バッテリ接続板部とは別体に形成され、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化する絶縁樹脂製のヒューズハウジングを更に備え、
前記ヒューズハウジングは、前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製であり且つ、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝が備えられ、
前記可溶体部は、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、低融点金属製の可溶体用母材片を前記可溶体保持溝内に投入し、前記可溶体保持溝内の前記可溶体用母材片を加熱処理により溶融させた後に凝固させることによって形成されていることを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニット。
【0011】
(3) 前記可溶体保持溝内に突出する前記バッテリ接続板部の端縁及び前記タブ端子板部の一縁には、先端側をL字状に折り曲げることによって、前記可溶体保持溝の底部側や開口部側に延出した可溶体接続板部が形成されたことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0012】
(4) 前記可溶体保持溝に流し込む溶融状態の可溶体用母材は、錫単体、又は錫、亜鉛、銀を成分とする共晶合金であって、各成分の含有率の調整により所定の融点の可溶体部が形成されていることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一つに記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0013】
(5) 前記可溶体保持溝は、当該溝の上部に向かって溝幅が広がるように、該溝の側面が傾斜面又は階段状の段差面に形成されていることを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか一つに記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0014】
(6) 前記可溶体部が融着する前記バッテリ接続板部及び前記タブ端子板部の少なくとも一方の端部には、前記可溶体保持溝の側面の傾斜又は段差形状に相応した凹部が備えられ、該凹部によって、前記可溶体部との間の融着面積の増大が図られていることを特徴とする前記(1)〜(5)の何れか一項記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0015】
(7) 前記可溶体部が融着する前記バッテリ接続板部及び前記タブ端子板部の少なくとも一方の端部には、前記可溶体保持溝に流し込む溶融状態の可溶体用母材が流入可能に、スリット又は凹凸が形成されていることを特徴とする前記(1)〜(6)の何れか一項記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0016】
(8) 可溶体保持溝には、前記可溶体保持溝に流し込まれた溶融状態の可溶体用母材の一部が流入して凝固する連通穴が設けられ、該連通穴で凝固した可溶体用母材が前記可溶体部における放熱特性を向上させる放熱板として機能することを特徴とする前記(1)〜(7)の何れか一項記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0017】
(9) 前記ヒューズハウジングに装備される複数個の前記可溶体保持溝に融点が異なる前記可溶体部を形成する場合に、いずれの前記可溶体保持溝においても形成する前記可溶体部の幅は同一に維持し、前記可溶体部を形成する金属の組成の調整又は前記可溶体保持溝における堆積厚さ寸法の調整により断面積を調整することで融点を相異させることを特徴とする前記(1)〜(8)の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0018】
(10) 前記バッテリ接続板部の端縁及び前記タブ端子板部の一縁に形成された前記可溶体接続板部には、前記可溶体保持溝に流し込まれた溶融状態の前記可溶体用母材が流入可能なスリット又は凹部が形成されたことを特徴とする前記(3)に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0019】
(11) 前記可溶体保持溝に流し込まれた溶融状態の前記可溶体用母材が流入可能に前記可溶体接続板部に形成された前記スリット又は前記凹部は、前記可溶体保持溝から離れるに従って前記可溶体用母材が流入する空間が徐々に広がる楔形空間に形成されたことを特徴とする前記(10)に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0020】
(12) 前記可溶体部には、前記可溶体保持溝の底部に形成した隆起部により、断面積が小さくなるくびれ部が形成されたことを特徴とする前記(1)〜(11)の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【0021】
(13) バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法であって、
前記タブ端子板部を前記バッテリ接続板部とは別体に形成し、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化して前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製のヒューズハウジングを成形すると共に、
該成形時に、前記ヒューズハウジングに、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝を形成し、
前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、溶融状態の可溶体用母材を前記可溶体保持溝に流し込んで凝固させることによって前記可溶体部を形成することを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法。
【0022】
(14) バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法であって、
前記タブ端子板部を前記バッテリ接続板部とは別体に形成し、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化して前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製のヒューズハウジングを成形すると共に、
該成形時に、前記ヒューズハウジングに、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝を形成し、
前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、低融点金属製の可溶体用母材片を前記可溶体保持溝内に投入し、前記可溶体保持溝内の前記可溶体用母材片を加熱処理により溶融させた後に凝固させることによって前記可溶体部を形成することを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法。
【0023】
前記(1),(2)及び(12),(13)の構成によれば、ヒューズハウジングの可溶体保持溝が可溶体部の成形型となるので、可溶体部を成形するための専用の金型が不要である。また、可溶体保持溝に流し込む可溶体用母材の量を調整することにより可溶体の断面積が変わり、溶断する定格電流が変わる。従って、可溶体部の定格を容易に変更することができる。
【0024】
また、前記(2)の構成によれば、可溶体部は、可溶体保持溝に投入した低融点金属製の可溶体用母材片を、例えば高温槽内での暴露やレーザー照射による加熱処理により溶融させた後に凝固させることによって、可溶体保持溝の断面形状に相応する断面形状に仕上げるため、(1)に示したように溶融状態の可溶体用母材を可溶体保持溝に流し込んで凝固させる場合と比較すると、可溶体部を形成するまでのサイクルタイムを短くすることができる。
また、可溶体保持溝内に投入する可溶体用母材の量の管理が、溶融状態の可溶体用母材を流し込む場合よりも容易になり、可溶体保持溝への母材の投入量を高精度に管理して、可溶体部の溶断特性のばらつきを抑止することができる。
【0025】
前記(3)の構成によれば、可溶体保持溝内に成形された可溶体部に連結されるバッテリ接続板部の端縁や前記タブ端子板部の一縁は、可溶体部内に埋没する可溶体接続板部が延出形成されていることによって、可溶体部との接触面積が広がるため、通電時にこれらの端子板部と可溶体部との間の接続部における通電発熱を抑止することができる。
また、前記可溶体接続板部が延設される各端子板部の先端側は、L字状に折り曲げられた状態で可溶体部内に埋没するため、折り曲げ基端部の貫通孔へのアンカー効果により機械的な接続強度が大幅に向上する。したがって、例えば各端子板部の熱膨張や熱収縮によって各端子板部と可溶体部との接続部に滑りが生じることを確実に防止でき、各端子板部と可溶体部との間の電気的な接続特性を安定維持して、可溶体部に安定した溶断特性を確保することができる。
【0026】
前記(4)の構成によれば、合金を構成する各成分の含有率を調整することにより、可溶体部の定格を容易に変更することができる。
【0027】
前記(5)の構成によれば、溝の上部に行くほど、空間側への放熱面積が大きくなって放熱性が向上する。また、可溶体保持溝の側面を階段状にした場合には、流し込む可溶体用母材の表面高さが何番目の段差の位置に合っているかを目視確認することで、定格電流の判別が容易にできる。
【0028】
前記(6)の構成によれば、融着面積の増大を図ることによって、接続部の信頼性を向上させることができるだけでなく、接続部における通電発熱による温度上昇を抑止することも可能になる。
【0029】
前記(7)の構成によれば、可溶体保持溝に形成された可溶体部とタブ端子板部の各端部との接触面積が増え、接続部における通電発熱を抑止することができる。また、接触面積が増加することで、機械的な接続強度が向上し、接続の信頼性が向上する。
【0030】
前記(8)の構成によれば、可溶体部に発生する通電発熱を効率的に放熱することができ、また、可溶体部の溶断性能のばらつきを小さくすることもできる。また、各放熱板は、可溶体保持溝に可溶体用母材を流し込んで可溶体部を製造する鋳造処理で可溶体部と一緒に形成することができるため、放熱板の装備のために鋳造工程が増えることもない。
【0031】
ヒューズハウジングに装備される複数個の可溶体保持溝に融点が異なる可溶体部を形成する場合に、可溶体部の幅寸法の変更によって融点を調整しようとすると、可溶体保持溝の溝幅を調整する駒型が必要となり、この駒型の起工のために製造コストが高額化するという問題が生じた。
【0032】
しかし、前記(9)の構成によれば、成形する可溶体部は幅寸法が同一のため、可溶体保持溝の溝幅を調整する駒型が不要となり、駒型の起工が不要になる分、製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
前記(10)の構成によれば、可溶体部内に埋没する各端子板部の可溶体接続板部は、溶融状態の可溶体用母材が流入可能なスリット又は凹部を形成したことで、可溶体部との接触面積が増え、その分、可溶体部との接続部において通電発熱を抑止する効果が更に高くなる。
【0034】
前記(11)の構成によれば、各可溶体接続板部のスリット又は凹部内で凝固した可溶体部は、これらのスリット又は凹部からの抜けを防止する楔形となっていて、アンカー効果により各可溶体接続板部と可溶体部との間の機械的な接続強度を向上させる。従って、例えば各端子板部の熱膨張や熱収縮によって各端子板部と可溶体部との接続部に滑りが生じることを更に確実に防止できるようになり、各端子板部と可溶体部との間の電気的な接続特性を更に安定維持して、可溶体部の溶断特性を更に安定させることが可能になる。
【0035】
前記(12)の構成によれば、可溶体部は断面積が小さくなるくびれ部がその周囲よりも断面積が減少し、高抵抗になって、周囲よりも溶断し易くなるため、溶断位置を安定させることができ、溶断による回路保護性能の信頼性を高めることができる。
本発明における加熱処理としては、可溶体用母材を高温槽内で高熱にさらす暴露や、可溶体用母材をレーザー照射する加熱を採用することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、定格以上の電流が流れた時に溶断することでバッテリに接続されている回路を保護する可溶体部は、該可溶体部により導通接続されるバッテリ接続板部とタブ端子板部とをインサート成形により絶縁樹脂製のヒューズハウジングに一体化した後に、溶融状態の可溶体用母材を前記可溶体保持溝に流し込んで凝固させることによって形成されるもので、前記可溶体保持溝に流し込む可溶体用母材の量を変更すれば、それに応じて可溶体保持溝に形成される可溶体部の断面積が変わり、溶断する定格電流が変わる。
【0037】
即ち、可溶体部の定格の変更は、可溶体保持溝に流し込む可溶体用母材の量を設定変更することで簡単に実現することができ、可溶体部の定格をプレス加工によって所定の断面積に打ち抜き成形することにより設定していた従来の場合と比較すると、プレス型の変更等の設備投資が不要になる。
【0038】
従って、可溶体部の定格変更を容易に、且つ安価に実現することが可能になり、車両等のバッテリに接続する回路の変更等に伴い、ヒューズユニットにおける可溶体部の定格変更が要求される場合でも、迅速に、且つ柔軟に対応することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係るヒューズユニットの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1は本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットの第1実施形態の正面図、図2は図1に示したバッテリ直付けヒューズユニットの側面図、図3は図1に示したバッテリ直付けヒューズユニットの平面図、図4は図1のA−A断面図、図5(a)は図4に示した要部拡大図に示した可溶体保持溝のB−B断面図、図5(b)は図5(a)に示した可溶体保持溝に溶融状態の可溶体母材が注入された状態の説明図、図6(a)は図5に示した可溶体保持溝に溶融状態の可溶体母材を注入する工程の説明図、図6(b)は可溶体保持溝の標準のレベルまで可溶体母材が注入された状態の説明図、図6(c)は可溶体保持溝の標準よりも高いレベルまで可溶体母材が注入された状態の説明図である。
【0041】
この第1実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21は、車両等に搭載されるバッテリ23のバッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部31と、外部回路の電線(ワイヤハーネス)が導通接続される複数個のタブ端子板部33a,33b,33c,33dと、図5(a)に示すようにバッテリ接続板部31の一方の端縁31aに対して所定の離間距離Lを隔てて前記タブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fが配列された組み立て形態となるように、バッテリ接続板部31とタブ端子板部33a,33b,33c,33dとをインサート成形により一体化する絶縁樹脂製のヒューズハウジング41と、を備えている。
【0042】
本実施形態の場合、バッテリ接続板部31や各タブ端子板部33a,33b,33c,33dは、金属板のプレス成形等により形成される。但し、各タブ端子板部33a,33b,33c,33dは、バッテリ接続板部31とは別体に形成されている。
【0043】
そして、ヒューズハウジング41により所定の離間状態に保持されたバッテリ接続板部31と各タブ端子板部33a,33b,33c,33dとの間は、図5(b)に示すように、定格以上の電流が流れた時に溶断する低融点金属製の可溶体部35により導通接続されている。
【0044】
可溶体部35となる低融点金属は、例えば、錫単体、又は錫、亜鉛、銀を成分とする共晶合金が好ましく、各成分の含有率の調整により、所定の融点の可溶体部が形成される。共晶合金としては、錫30%、亜鉛70%(融点200℃)の共晶合金や、錫95%、銀5%(融点245℃)の共晶合金が好ましいが、錫100%(融点232℃)を用いて、流入量により抵抗値を調整してもよい。
【0045】
ヒューズハウジング41は、可溶体部35の融点よりも高い耐熱性を持つ絶縁樹脂製で、例えば、分子構造中にテレフタル酸などの芳香環を持った結晶性ポリアミド樹脂(ナイロン)などが利用されている。絶縁樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製アーレン(商品名)を用いることができる。
【0046】
可溶体部35となる低融点金属が仮に錫だった場合、錫の融点は232℃である。これに対し、分子構造中に芳香環を持った結晶性ポリアミド樹脂は融点を310℃とすることができ、溶融状態の可溶体用母材を鋳込む鋳型として利用することが可能になる。
【0047】
ヒューズハウジング41は、図1〜図3に示すように、前記バッテリ接続板部31を収容した第1のハウジング部41aと、前記タブ端子板部33a,33b,33c,33dを収容して外部のワイヤハーネスをコネクタ接続するコネクタハウジングとして機能する第2のハウジング部41bと、これらの第1のハウジング部41aと第2のハウジング部41bとの間を繋ぐと共に前記可溶体部35の収容部となる第3のハウジング部41cとを一体成形したものである。
【0048】
図2に示すように、第1のハウジング部41aは、バッテリ端子が装備されているバッテリ23の上面23aに取り付けられている。
【0049】
そして、第3のハウジング部41cと第2のハウジング部41bは、バッテリ23の上面23aの角部からバッテリ23の側面に沿って配置されるように、第1のハウジング部41aの端部から垂直下方に延出して設けられている。
【0050】
可溶体部35の収容部となる第3のハウジング部41cが垂直下方に延出していることは、定格以上の電流が流れた時に可溶体部35の溶断によって回路を確実に切断状態にする上で優れている。なぜなら、垂直下方に延出した第3のハウジング部41c内の可溶体部35は、ハウジングの延出方向と同じ方向に延在しており、溶断時には重力で溶断部が脱落するため、溶断による回路切断が確実になるからである。
【0051】
第1のハウジング部41aは、バッテリ接続板部31の表面の内、バッテリ端子に導通接触させる領域やバッテリ接続板部31に導通接続されているスタッドボルト43,44の周辺領域を除く範囲を覆っている。上記スタッドボルト43,44は、オルタネータ等の外部回路の接続用にバッテリ接続板部31に接続されたものである。そして、バッテリ接続板部31の表面を覆う第1のハウジング部41aには、放熱用のフィン構造となる複数のリブ46が一体形成されている。
【0052】
第2のハウジング部41bは、外部のワイヤハーネスの端部に接続されたコネクタを嵌合接続できるコネクタ構造になっている。
【0053】
第3のハウジング部41cは、図5に示すように、可溶体保持溝50aが形成された可溶体成形部50と、この可溶体成形部50の上に空間51を画成すると共に該空間51の表面側に透明な窓板55が装着される可溶体目視部57とを具備している。
【0054】
なお、前記可溶体保持溝50aは、図5にも示したように、前記バッテリ接続板部31の端縁31aから前記タブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fに連絡するように、形成されている。
【0055】
本実施形態の場合、可溶体部35は、バッテリ接続板部31と前記タブ端子板部33a,33b,33c,33dとを前記ヒューズハウジング41のインサート成形により一体化した後に、図6(a)に示すように溶融状態の可溶体用母材61を可溶体保持溝50aに流し込んで、図6(b),(c)に示すように凝固させることによって形成されている。
【0056】
なお、可溶体保持溝50aは、図6にも示したように、溝の深さに余裕が持たせて設計されており、図6(b),(c)に示すように、可溶体用母材61の流し込む量を変えて、溝に堆積する可溶体用母材61の表面の位置(レベル)を変えれば、可溶体部35の断面積が変わって溶断する定格を変えることができる。
【0057】
例えば、図6(b)は、可溶体用母材61を標準の流し込み量で可溶体保持溝50aに流し込むことでレベルL1の高さまで堆積した可溶体部35を得た例である。また、図6(c)は、可溶体用母材61を標準よりも多い流し込み量で可溶体保持溝50aに流し込むことでレベルL2の高さまで堆積した可溶体部35を得た例である。図6(c)の可溶体部35は、図6(b)の可溶体部35と比較すると断面積が大きいため、溶断する時の熱容量が大きく、大きな定格電流になる。
【0058】
以上に説明したバッテリ直付けヒューズユニット21によれば、定格以上の電流が流れた時に溶断することでバッテリ23に接続されている回路を保護する可溶体部35は、該可溶体部35により導通接続されるバッテリ接続板部31とタブ端子板部33a,33b,33c,33dとをインサート成形により絶縁樹脂製のヒューズハウジング41に一体化した後に、溶融状態の可溶体用母材61を前記可溶体保持溝50aに流し込んで凝固させることによって形成されるもので、前記可溶体保持溝50aに流し込む可溶体用母材61の量を変更すれば、それに応じて可溶体保持溝50aに形成される可溶体部35の断面積が変わり、溶断する定格電流が変わる。
【0059】
即ち、可溶体部35の定格の変更は、可溶体保持溝50aに流し込む可溶体用母材61の量を設定変更することで簡単に実現することができ、可溶体部35の定格をプレス加工によって所定の断面積に打ち抜き成形することにより設定していた従来の場合と比較すると、プレス型の変更等の設備投資が不要になる。
【0060】
従って、可溶体部35の定格変更を容易に、且つ安価に実現することが可能になり、車両等のバッテリ23に接続する回路の変更等に伴い、ヒューズユニット21における可溶体部35の定格変更が要求される場合でも、迅速に、且つ柔軟に対応することが可能になる。
【0061】
なお、可溶体保持溝50aの横断面形状は、単純な矩形に限らない。例えば、溝の上部に向かって溝幅が広がるように、図7(a),(b)に示すような横断面形状にすることもできる。
【0062】
図7(a)に示した横断面形状は、溝の側面を傾斜面50bにしたものである。また、図7(a)に示した横断面形状は、溝の側面を階段状の段差面50cにしたものである。
【0063】
これらの図7(a),(b)に示したように、上部に向かって溝幅が広がる可溶体保持溝50aを備えたバッテリ直付けヒューズユニットでは、可溶体用母材61の流し込み量を増大させて堆積高さを大きくした場合に、溝の上部に行くほど、空間51側への放熱面積が大きくなって放熱性が向上し、例えば、オルタネータのロック電流(スパイク電流)に対する耐久性を向上させることができる。
【0064】
また、図7(b)に示すように、可溶体保持溝50aの側面を階段状にした場合には、流し込む可溶体用母材61の表面高さが何番目の段差の位置に合っているかを目視確認することで、定格電流の判別が容易にできる。
【0065】
また、図8に示すように、可溶体部35が融着するバッテリ接続板部31やタブ端子板部33a,33b,33c,33dの端部31a,33fには、可溶体保持溝50aの側面の傾斜や段差形状に相応した凹部65が備えられ、該凹部65によって、可溶体部35との間の融着面積の増大を図ることが望ましい。
【0066】
このようにして融着面積の増大を図ることによって、接続部の信頼性を向上させることができるだけでなく、接続部における通電発熱による温度上昇を抑止することも可能になる。
【0067】
なお、図8に示した可溶体保持溝50aの構造において、溝の底面から高さh1まで可溶体用母材61を流し込んで形成した可溶体部35の横断面積は第1の定格断面積(W1×h1)となり、溝の底面から高さh2まで可溶体用母材61を流し込んで形成した可溶体部35の横断面積は第2の定格断面積(W1×h1+W2×h2)となり、溝の底面から高さh3まで可溶体用母材61を流し込んで形成した可溶体部35の横断面積は第3の定格断面積(W1×h1+W2×(h2+h3))となる。即ち、図8に示した形態の可溶体保持溝50aを利用することで、3種の定格の可溶体部35が形成可能になる。
【0068】
また、可溶体部35が融着するバッテリ接続板部31やタブ端子板部33a,33b,33c,33dの端部31a,33fには、前記可溶体保持溝50aに流し込む溶融状態の可溶体用母材61が流入可能に、図9に示すようにスリット67を設けたり、あるいは、図10に示すように凹凸68を形成するようにしても良い。
【0069】
また、図11に図10のE−E断面図を示すように、図10に示した凹凸68は、図11(a)に示すように打ち抜き(パンチング)加工による貫通穴68aでも良く、図11(b)に示すように、貫通しない凹部68bにしても良い。
【0070】
このようにバッテリ接続板部31やタブ端子板部33a,33b,33c,33dの端部31a,33fにスリット67や凹凸68を設けた構成とすると、可溶体保持溝50aに形成された可溶体部35と各端部31a,33fとの接触面積が増え、接続部における通電発熱を抑止することができる。また、接触面積が増加することで、機械的な接続強度が向上し、接続の信頼性が向上する。
【0071】
更に、本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットでは、図12(a),(b)に示すように、可溶体保持溝50aには、前記可溶体保持溝50aに流し込まれた溶融状態の可溶体用母材61の一部が繋ぎ溝71を介して流入して凝固する連通穴72を設けておき、連通穴72で凝固した可溶体用母材61が前記可溶体部35における放熱特性を安定化させる放熱板74として機能させるようにしても良い。
【0072】
このように、放熱板74を装備した構成にすると、可溶体部35に発生する通電発熱を効率的に放熱することができ、また、可溶体部35の溶断性能のばらつきを小さくすることもできる。
【0073】
また、各放熱板74は、可溶体保持溝50aに可溶体用母材61を流し込んで可溶体部35を製造する鋳造処理で可溶体部35と一緒に形成することができるため、放熱板74の装備のために鋳造工程が増えることもない。
【0074】
なお、放熱板74を鋳込む連通穴72は、図12(c)のように、可溶体保持溝50a及び繋ぎ溝71と比較して、これらの溝の上部側にのみ連通した薄型に形成しておいて、可溶体保持溝50aに注入される可溶体用母材61の堆積高さが大きくなる時にのみ、連通穴72側に可溶体用母材61が流れて放熱板74が形成されるようにしても良い。
【0075】
また、図12では、可溶体保持溝50aから側方に分岐するように連通穴72を設けた。しかし、連通穴72は、図13(a),(b)に示すように、可溶体保持溝50aの底面に連通する凹み状に形成して、可溶体部35の下面に放熱板74が形成されるようにしても良い。
【0076】
また、以上に示した実施形態では、可溶体保持溝50aの底面が平坦で、溝の深さは一定であった。しかし、図14に示すように、可溶体保持溝50aの底面50dを山形にしても良い。
【0077】
このようにすると、山形の底面50dの頂部付近Tにおいて可溶体部35が最も薄肉になり、定格以上の電流が流れた時にこの薄肉部で溶断し易いため、溶断点を安定させることができる。
【0078】
図15〜図24は本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットの第2実施形態を示したものであり、図15は第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニットの斜視図、図16は図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットに使用されるタブ端子板部とバッテリ接続板部の斜視図、図17(a)は図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットの可溶体保持溝内でのタブ端子板部とバッテリ接続板部との配置説明図、(b)はその変形例の配置説明図、図18は図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットの可溶体部を形成する工程の説明図である。
【0079】
また、図19は図18に示したように可溶体保持溝に可溶体用母材片が投入されたヒューズハウジングを高温槽に設置した状態を示す側面図、図20は図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットの正面図,図21は図20のF−F断面図、図22は図20のG−G断面図、図23は図20のH−H断面図、図24は図20のI−I断面図である。
【0080】
この第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aは、図1〜図5に示した第1実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21の一部を改良したもので、第1実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21と共通する構成については、同番号を付して説明を省略、又は簡略化する。
【0081】
この第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aは、基本的な構成は第1実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21と共通である。
【0082】
即ち、この第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aの場合も、バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部31と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部33a,33b,33c,33dと、を備え、バッテリ接続板部31とタブ端子板部33a,33b,33c,33dとの間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部35Aにより導通接続される構成になっている。
【0083】
また、タブ端子板部33a,33b,33c,33dがバッテリ接続板部31とは別体に形成され、バッテリ接続板部31の端縁31aに対して所定の離間距離を隔ててタブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fが配列された組み立て形態となるように、バッテリ接続板部31とタブ端子板部33a,33b,33c,33dとをインサート成形により一体化する絶縁樹脂製のヒューズハウジング41を更に備えている。
【0084】
ヒューズハウジング41は、図21〜図24に示すように、バッテリ接続板部31を収容した第1のハウジング部41aと、タブ端子板部33a,33b,33c,33dを収容して外部のワイヤハーネスをコネクタ接続するコネクタハウジングとして機能する第2のハウジング部41bと、これらの第1のハウジング部41aと第2のハウジング部41bとの間を繋ぐと共に前記可溶体部35の収容部となる第3のハウジング部41cとを一体成形したものである。
【0085】
そして、ヒューズハウジング41の第3のハウジング部41cには、可溶体部35Aの融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製であり且つ、図18にも示しているように、バッテリ接続板部31の端縁31aからタブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fに連絡するように、可溶体部35Aを収容する複数個の可溶体保持溝50aが並列に備えられている。
【0086】
この第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aにおける改良点の一つであるが、可溶体保持溝50a内に突出するバッテリ接続板部31の端縁31a及びタブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fには、図16及び図17に示したように先端側をL字状に折り曲げることによって、可溶体保持溝50aの底部側や開口部側に延出した可溶体接続板部81を形成している。
【0087】
なお、第1実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21では、図1や図4に示したように、複数個の可溶体保持溝50aは溝幅を相異させた設定になっていて、これにより幅寸法の異なる可溶体部35を形成することで、定格の異なる複数の可溶体部35を得るようにしていた。
【0088】
しかし、この第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aでは、図15及び図20に示したように、並列に装備される複数個の可溶体保持溝50aは、いずれも溝幅が同一に設定されていて、これらの複数個の可溶体保持溝50aに融点が異なる可溶体部35Aを形成する場合に、いずれの可溶体保持溝50aにおいても形成する可溶体部35Aの幅は同一に維持し、可溶体部35Aを形成する錫、亜鉛、銀等の金属の組成の調整又は前記可溶体保持溝50aにおける堆積厚さ寸法の調整により断面積を調整することで融点を相異させる。
【0089】
更に、この第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aにおける改良点の一つであるが、可溶体部35Aを形成する方法が第1実施形態とは異なっている。
【0090】
この第2実施形態では、バッテリ接続板部31とタブ端子板部33a,33b,33c,33dとをヒューズハウジング41のインサート成形により一体化した後に、図18に示すように、低融点金属製の可溶体用母材片83を各可溶体保持溝50a内に投入する。次いで、そのヒューズハウジング41を、図19に示したように前記可溶体保持溝50aが上方に開放した水平姿勢のまま、高温槽85内に設置し、高温槽85内での所定温度への加熱処理によって可溶体用母材片83を溶融させた後に凝固させることによって、可溶体部35Aを形成する。
【0091】
本実施形態の場合は、複数個の可溶体保持溝50aに形成する各可溶体部35Aに、異なった定格を設定するため、図18に示すように、各可溶体保持溝50aに投入する可溶体用母材片83は、大きさを相異させている。
【0092】
図18では、下側の可溶体保持溝50aに行くほど、大きい可溶体用母材片83が投入されている。従って、それぞれの可溶体用母材片83を高温槽85で溶融させた後に凝固させると、図21〜図24に示すように、各可溶体保持溝50aに形成される可溶体部35Aは、下側の可溶体保持溝50aに形成されるものほど、厚さ寸法が大きく、大きな定格を有するものとなる。
【0093】
また、本実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aでは、各可溶体保持溝50aの底部には、図17にも示すように、可溶体部35Aの長さ方向の略中間となる位置に、山形に隆起した隆起部87を形成している。この隆起部87によって、各可溶体保持溝50aに形成する可溶体部35Aには、図21〜図24に示すように、断面積が小さくなるくびれ部88を形成している。
【0094】
以上に説明した第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aでは、可溶体部35Aは、可溶体保持溝50aに投入した低融点金属製の可溶体用母材片83を高温槽85内での加熱処理により溶融させた後に凝固させることによって、可溶体保持溝50aの断面形状に相応する断面形状に仕上げるため、溶融状態の可溶体用母材を可溶体保持溝50aに流し込んで凝固させる第1実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21の場合と比較すると、可溶体部35Aを形成するまでのサイクルタイムを短くすることができる。加熱処理の手段は高温槽に限らず、可溶体用母材をレーザー照射し加熱しても良い。
【0095】
また、可溶体用母材片83を使用する場合には、可溶体保持溝50a内に投入する可溶体用母材の量の管理が、溶融状態の可溶体用母材を流し込む場合よりも容易になり、可溶体保持溝50aへの母材の投入量を高精度に管理して、可溶体部35Aの溶断特性のばらつきを抑止することができる。
【0096】
更に、上記第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aでは、可溶体保持溝50a内に成形された可溶体部35Aに連結されるバッテリ接続板部31の端縁31aやタブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fは、可溶体部35A内に埋没する可溶体接続板部81が延出形成されていることによって、可溶体部35Aとの接触面積が広がるため、通電時にこれらの端子板部と可溶体部35Aとの間の接続部における通電発熱を抑止することができる。
【0097】
また、前記可溶体接続板部81が延設される各端子板部31,33a,33b,33c,33dの先端側は、図17にも示したようにL字状に折り曲げられた状態で可溶体部35A内に埋没するため、折り曲げ基端部の貫通孔36,37へのアンカー効果により機械的な接続強度が大幅に向上する。したがって、例えば各端子板部31,33a,33b,33c,33dの熱膨張や熱収縮によって各端子板部と可溶体部35Aとの接続部に滑りが生じることを確実に防止でき、各端子板部と可溶体部35Aとの間の電気的な接続特性を安定維持して、可溶体部35Aに安定した溶断特性を確保することができる。
【0098】
タブ端子板部31,33a,33b,33c,33dの母材である銅の線膨張係数は16.8×10−6〜17.8×10−6であり、可溶体部35Aの材料である錫の線膨張係数は23×10−6であるのに対して、これらの周辺を覆う絶縁性樹脂の線膨張係数は9×10−5と1オーダー大きいため、通電時に、可溶体部35Aが溶断しなくても通電発熱が発生する。すると、通電のオン・オフでヒュージブルリンク全体に熱衝撃がかかり、膨張・収縮を繰り返す中で、タブ端子板部31,33a,33b,33c,33dと可溶体部35Aとの接合部に応力が働き、接続部の耐久性を悪化させるおそれがある。
【0099】
しかし、タブ端子板部31,33a,33b,33c,33dがL字形状であることや折り曲げ基端部に貫通孔36,37を有する構成であることによりアンカー効果が生じ、ヒュージブルリンクに熱衝撃がかかっても、接続部の機械的保持力を確保することができるので、タブ端子板部31,33a,33b,33c,33dと可溶体部35Aとの接続信頼性を向上させることができる。
【0100】
また、ヒューズハウジング41に装備される複数個の可溶体保持溝50aに融点が異なる可溶体部35Aを形成する場合に、第1実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21のように可溶体部35Aの幅寸法の変更によって融点を調整しようとすると、可溶体保持溝50aの溝幅を調整する駒型が必要となり、この駒型の起工のために製造コストが高額化するという問題が生じる。
【0101】
しかし、この第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21では、成形する可溶体部35Aは幅寸法が同一のため、可溶体保持溝50aの溝幅を調整する駒型が不要となり、駒型の起工が不要になる分、製造コストの低減を図ることができる。
【0102】
更に、上記第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aでは、各可溶体部35Aには、可溶体保持溝50aの底部に形成した隆起部87によって、断面積が小さくなるくびれ部88が形成されており、このくびれ部88がその周囲よりも高抵抗になって、周囲よりも溶断し易くなるため、各可溶体部35Aにおける溶断位置を安定させることができ、溶断による回路保護性能の信頼性を高めることができる。
【0103】
図25〜図31は本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットの第3実施形態を示したものであり、図25は本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットの第3実施形態の斜視図、図26(a)は図25に示したバッテリ直付けヒューズユニットに使用されるタブ端子板部33a,33b,33c,33d及びバッテリ接続板部31の斜視図、図25(b)は図25(a)に示したタブ端子板部33a,33b,33c,33d及びバッテリ接続板部31の端縁の拡大図、図27は図26に示した各端子板部の可溶体接続板部81に形成された楔形の凹部を示す拡大斜視図、図28は図25に示したバッテリ直付けヒューズユニットの正面図、図29は図28のJ−J断面図、図30は図28のK−K断面図、図31は図28のL−L断面図である。
【0104】
この第3実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Bは、第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aを更に改良したものである。
【0105】
改良した点は、図26に示すように、バッテリ接続板部31の端縁31a及び各タブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fに折り曲げ形成された可溶体接続板部81には、可溶体保持溝50aに流し込まれた溶融状態の可溶体用母材が流入可能なスリット91を形成した点と、図27に示すように前記スリット91の形状を可溶体保持溝50aから離れるに従って可溶体用母材が流入する空間が徐々に広がる楔形空間に形成した点である。
【0106】
以上の改良点以外の構成は、上記第2実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Aと共通で良く、共通の構成には、同番号を付して説明を省略する。
【0107】
なお、この第3実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Bの場合も、図28に示すように、複数個の可溶体保持溝50aに形成する各可溶体部35Bはいずれも同一の幅寸法wに形成されている。そして、図29〜図31に示すように、それぞれの可溶体保持溝50aに形成される可溶体部35Bは、可溶体保持溝50aへの堆積厚さ寸法t1,t2,t3を相異させることで、断面積を調整し、異なる定格を得るようにしている。
【0108】
本実施形態の場合、可溶体接続板部81おける楔形のスリット91は、図32に示すように、プレス加工により形成する。
図32は、バッテリ接続板部31の一方の端縁31aにスリット91を形成する場合を示している。
【0109】
まず、図32(a)に示すように、プレス機の下型101の上に、加工するバッテリ接続板部31をセットし下型101に向かって昇降可能なプレスピン103により、孔径が一定の基礎スリット105をバッテリ接続板部31に貫通形成する。
【0110】
次いで、図32(b),(c)に示すように、基礎スリット105を形成したバッテリ接続板部31を上型107にセットし、バッテリ接続板部31の下面側に昇降可能に装備されている楔形の加工ピン109を基礎スリット105に圧入することによって、基礎スリット105を楔形のスリット91に仕上げる。
【0111】
次いで、図32(d)に示すように、スリット91の貫通形成が終わったバッテリ接続板部31の一方の端縁31aが下型101の縁から突出するように、バッテリ接続板部31を下型101上にセットし、下型101の外側を昇降する折り曲げ型111により一方の端縁31aを下方に折り曲げることで、スリット91を有した可溶体接続板部81に仕上げる。
【0112】
各タブ端子板部33a,33b,33c,33dの一縁33fにスリット91を形成する場合も、同様の加工法で行う。
【0113】
以上のように楔形のスリット91を形成したバッテリ接続板部31やタブ端子板部33a,33b,33c,33dをインサート成形するヒューズハウジング41の成形時には、樹脂材料がスリット91内に流入しないように、図33に示すように、インサート成形用の上型121のボス部121aと、下型123に突設した封止ピン123aとで、スリット91の開口部を塞ぐ。
【0114】
図33において、上型121や下型123が各接続板部の周囲に画成する空間131,132,133,134は、ヒューズハウジング41用の樹脂が充填される空間である。
【0115】
ヒューズハウジング41のインサート成形が完了したら、図34に示すように、ヒューズハウジング41を可溶体用母材充填用の治具141の上にセットして、可溶体保持溝50aに可溶体用母材61の流し込みを実施して、スリット91にも充填された可溶体部35Bを形成する。
【0116】
治具141には、インサート成形時に封止ピン123aによって形成された空間143に嵌合して、スリット91の背面側の開口を塞ぐ封止突起部141aが装備されている。この封止突起部141aは、溶融状態の可溶体用母材がスリット91の背面側に漏れるのを防止すると同時に、ヒューズハウジング41の位置決め固定を果たす。
【0117】
以上に説明した第3実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Bでは、可溶体部35B内に埋没する各端子板部の可溶体接続板部81は、溶融状態の可溶体用母材が流入可能なスリット91を形成したことで、可溶体部35Bとの接触面積が増え、その分、可溶体部35Bとの接続部において通電発熱を抑止する効果が更に高くなる。
【0118】
更に、上記第3実施形態のバッテリ直付けヒューズユニット21Bでは、各可溶体接続板部81のスリット91内で凝固した可溶体部35Bは、これらのスリット91からの抜けを防止する楔形となっていて、各可溶体接続板部81と可溶体部35Aとの間の機械的な接続強度を向上させる。
【0119】
従って、例えば各端子板部の熱膨張や熱収縮によって各端子板部と可溶体部35Bとの接続部に滑りが生じることを更に確実に防止できるようになり、各端子板部と可溶体部35Bとの間の電気的な接続特性を更に安定維持して、可溶体部35Bの溶断特性を更に安定させることが可能になる。
【0120】
また、第2実施形態と同様に、ヒュージブルリンクに熱衝撃がかかっても、接続部の機械的保持力を確保することができるので、タブ端子板部31,33a,33b,33c,33dと可溶体部35Aとの接続信頼性を更に向上させることができる。
【0121】
なお、第3実施形態に示したバッテリ直付けヒューズユニット21Bにおいて、各端子板部の可溶体接続板部81には、溶融状態の可溶体用母材が流入可能な空間として、前述した貫通型のスリット91の代わりに、貫通しない凹部を設けるようにしても良い。
【0122】
図35は、バッテリ接続板部31の端縁において、可溶体接続板部81を形成した折り曲げ部151に、非貫通型の凹部93を形成した例を示している。
この凹部93は、溶融状態の可溶体用母材を流入させるもので、内奥側に向かって空間が徐々に広がる楔形の空間を形成している。
【0123】
図35に示した楔形の凹部93は、図36に示すように、傘刃形のフライス刃153による切削加工により形成することができる。
【0124】
内奥が広がる楔形のスリットは、図37に示すように、バッテリ接続板部31の一端に折り曲げ形成された可溶体接続板部81の背面から、円板形のフライス刃155を当てることでも形成することができる。
【0125】
図38(a)は、図37に示した加工方法によりバッテリ接続板部31の可溶体接続板部81に形成したスリット95であり、このスリット95は内部空間が円弧状に徐々に広がる形状になっている。
【0126】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットの第1実施形態の正面図である。
【図2】図1に示したバッテリ直付けヒューズユニットの側面図である。
【図3】図1に示したバッテリ直付けヒューズユニットの平面図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】(a)は図4に示した要部拡大図に示した可溶体保持溝のB−B断面図、(b)は(a)に示した可溶体保持溝に溶融状態の可溶体母材が注入された状態の説明図である。
【図6】(a)は図5に示した可溶体保持溝に溶融状態の可溶体母材を注入する工程の説明図、(b)は可溶体保持溝の標準のレベルまで可溶体母材が注入された状態の説明図、(c)は可溶体保持溝の標準よりも高いレベルまで可溶体母材が注入された状態の説明図である。
【図7】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットに装備される可溶体保持溝の他の実施形態で、(a)は溝の側面を傾斜面にした場合の溝の断面構造の説明図、(b)は溝の側面を階段状の段差構造にした場合の溝の断面構造の説明図である。
【図8】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットにおいて、可溶体部に導通接続されるバッテリ接続板部やタブ端子板部の端部の構造の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットにおいて、可溶体部に導通接続されるバッテリ接続板部やタブ端子板部の端部にスリットを形成した更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットにおいて、可溶体部に導通接続されるバッテリ接続板部やタブ端子板部の端部に凹凸構造を形成した更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】図10に示した凹凸構造の具体例を表す図10のE−E断面図で、(a)はパンチングによって形成する貫通穴によって凹凸構造を形成した例の断面図、(b)はプレスによる凹凸加工により凹凸構造を形成した例の断面図である。
【図12】(a)は本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットにおいて、可溶体保持溝に連通する連通穴によって可溶体部の側部に放熱板を一体形成する実施形態の概略構成図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(b)の放熱板の装備位置を変更した例の断面図である。
【図13】(a)は本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットにおいて、可溶体保持溝に連通する連通穴によって可溶体部の底面に放熱板を一体形成する実施形態の概略構成図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図14】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットにおいて、定格以上の電流が流れたときに可溶体部の溶断を確実にするべく改良された可溶体保持溝の底面形状を示す断面図である。
【図15】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットの第2実施形態の斜視図である。
【図16】図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットに使用されるタブ端子板部とバッテリ接続板部の斜視図である。
【図17】(a)は図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットの可溶体保持溝内でのタブ端子板部とバッテリ接続板部との配置説明図、(b)はその変形例の配置説明図である。
【図18】図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットの可溶体部を形成する工程の説明図である。
【図19】図18に示したように可溶体保持溝に可溶体用母材片が投入されたヒューズハウジングを高温槽に設置した状態を示す側面図である。
【図20】図15に示したバッテリ直付けヒューズユニットの正面図である。
【図21】図20のF−F断面図である。
【図22】図20のG−G断面図である。
【図23】図20のH−H断面図である。
【図24】図20のI−I断面図である。
【図25】本発明に係るバッテリ直付けヒューズユニットの第3実施形態の斜視図である。
【図26】(a)は図25に示したバッテリ直付けヒューズユニットに使用されるタブ端子板部及びバッテリ接続板部の斜視図、(b)は(a)に示したタブ端子板部及びバッテリ接続板部の端縁の拡大図である。
【図27】図26に示した各端子板部の可溶体接続板部に形成された楔形の凹部を示す拡大斜視図である。
【図28】図25に示したバッテリ直付けヒューズユニットの正面図である。
【図29】図28のJ−J断面図である。
【図30】図28のK−K断面図である。
【図31】図28のL−L断面図である。
【図32】図26に示した各端子板部の可溶体接続板部に楔形のスリットを形成する加工方法の説明図であり、(a)は孔径が一定の基礎スリットを貫通形成する工程の説明図、(b)は基礎スリットを楔形のスリットに加工する工程の説明図、(c)は(b)のM−M断面図、(d)はスリットを形成した部位を折り曲げて可溶体接続板部を形成する工程の説明図である。
【図33】可溶体接続板部に楔形の凹部を形成したタブ端子板部及びバッテリ接続板部を、ヒューズハウジングの樹脂でモールドする工程の説明図である。
【図34】ヒューズハウジングにより所定の位置関係に保持されたタブ端子板部及びバッテリ接続板部との間に、可溶体用母材を流し込む工程の説明図である。
【図35】本発明に係るタブ端子板部及びバッテリ接続板部の可溶体接続板部に形成する楔形の凹部の他の実施形態を示す拡大斜視図である。
【図36】図35に示した楔形の凹部の加工方法の説明図である。
【図37】本発明に係るタブ端子板部及びバッテリ接続板部の可溶体接続板部にフライス加工により楔形の凹部を形成する他の例の説明図である。
【図38】(a)は図37に示した加工法により形成した楔形の凹部の縦断面図で,(b)は(a)のN−N断面図である。
【図39】従来のバッテリ直付けヒューズユニットの外観図である。
【図40】図39に示したバッテリ直付けヒューズユニットに使用されるヒューズエレメントの展開図である。
【符号の説明】
【0128】
21 バッテリ直付けヒューズユニット
21A バッテリ直付けヒューズユニット
21B バッテリ直付けヒューズユニット
23 バッテリ
23a 上面
31 バッテリ接続板部
31a 端縁
33a,33b,33c,33d タブ端子板部
33f 一縁
35 可溶体部
35A 可溶体部
35B 可溶体部
41 ヒューズハウジング
41a 第1のハウジング部
41b 第2のハウジング部
41c 第3のハウジング部
43,44 スタッドボルト
46 リブ
50 可溶体成形部
50a 可溶体保持溝
50b 傾斜面
50c 段差面
50d 底面
51 空間
55 窓板
57 可溶体目視部
61 可溶体用母材
65 凹部
67 スリット
68 凹凸
71 繋ぎ溝
72 連通穴
74 放熱板
81 可溶体接続板部
83 可溶体用母材片
85 高温槽
87 隆起部
88 くびれ部
91 スリット
93 凹部
95 スリット
T 頂部付近

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットであって、
前記タブ端子板部が前記バッテリ接続板部とは別体に形成され、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化する絶縁樹脂製のヒューズハウジングを更に備え、
前記ヒューズハウジングは、前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製であり且つ、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝が備えられ、
前記可溶体部は、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、溶融状態の可溶体用母材を前記可溶体保持溝に流し込んで凝固させることによって形成されていることを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項2】
バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットであって、
前記タブ端子板部が前記バッテリ接続板部とは別体に形成され、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化する絶縁樹脂製のヒューズハウジングを更に備え、
前記ヒューズハウジングは、前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製であり且つ、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝が備えられ、
前記可溶体部は、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、低融点金属製の可溶体用母材片を前記可溶体保持溝内に投入し、前記可溶体保持溝内の前記可溶体用母材片を加熱処理により溶融させた後に凝固させることによって形成されていることを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項3】
前記可溶体保持溝内に突出する前記バッテリ接続板部の端縁及び前記タブ端子板部の一縁には、先端側をL字状に折り曲げることによって、前記可溶体保持溝の底部側や開口部側に延出した可溶体接続板部が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項4】
前記可溶体保持溝に流し込む溶融状態の可溶体用母材は、錫単体、又は錫、亜鉛、銀を成分とする共晶合金であって、各成分の含有率の調整により所定の融点の可溶体部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項5】
前記可溶体保持溝は、当該溝の上部に向かって溝幅が広がるように、該溝の側面が傾斜面又は階段状の段差面に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項6】
前記可溶体部が融着する前記バッテリ接続板部及び前記タブ端子板部の少なくとも一方の端部には、前記可溶体保持溝の側面の傾斜又は段差形状に相応した凹部が備えられ、該凹部によって、前記可溶体部との間の融着面積の増大が図られていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項7】
前記可溶体部が融着する前記バッテリ接続板部及び前記タブ端子板部の少なくとも一方の端部には、前記可溶体保持溝に流し込む溶融状態の可溶体用母材が流入可能に、スリット又は凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項8】
可溶体保持溝には、前記可溶体保持溝に流し込まれた溶融状態の可溶体用母材の一部が流入して凝固する連通穴が設けられ、該連通穴で凝固した可溶体用母材が前記可溶体部における放熱特性を向上させる放熱板として機能することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項9】
前記ヒューズハウジングに装備される複数個の前記可溶体保持溝に融点が異なる前記可溶体部を形成する場合に、いずれの前記可溶体保持溝においても形成する前記可溶体部の幅は同一に維持し、前記可溶体部を形成する金属の組成の調整又は前記可溶体保持溝における堆積厚さ寸法の調整により断面積を調整することで融点を相異させることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項10】
前記バッテリ接続板部の端縁及び前記タブ端子板部の一縁に形成された前記可溶体接続板部には、前記可溶体保持溝に流し込まれた溶融状態の前記可溶体用母材が流入可能なスリット又は凹部が形成されたことを特徴とする請求項3に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項11】
前記可溶体保持溝に流し込まれた溶融状態の前記可溶体用母材が流入可能に前記可溶体接続板部に形成された前記スリット又は前記凹部は、前記可溶体保持溝から離れるに従って前記可溶体用母材が流入する空間が徐々に広がる楔形空間に形成されたことを特徴とする請求項10に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項12】
前記可溶体部には、前記可溶体保持溝の底部に形成した隆起部により、断面積が小さくなるくびれ部が形成されたことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載のバッテリ直付けヒューズユニット。
【請求項13】
バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法であって、
前記タブ端子板部を前記バッテリ接続板部とは別体に形成し、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化して前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製のヒューズハウジングを成形すると共に、
該成形時に、前記ヒューズハウジングに、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝を形成し、
前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、溶融状態の可溶体用母材を前記可溶体保持溝に流し込んで凝固させることによって前記可溶体部を形成することを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法。
【請求項14】
バッテリ端子に導通接続されるバッテリ接続板部と、外部回路の電線が導通接続されるタブ端子板部と、を備え、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部との間が定格以上の電流が流れた時に通電発熱で溶断する低融点金属製の可溶体部により導通接続されるバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法であって、
前記タブ端子板部を前記バッテリ接続板部とは別体に形成し、前記バッテリ接続板部の端縁に対して所定の離間距離を隔てて前記タブ端子板部の一縁が配列された組み立て形態となるように、前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とをインサート成形により一体化して前記可溶体部の融点よりも高いか可溶体用母材の流入に耐えうる耐熱性を持つ絶縁樹脂製のヒューズハウジングを成形すると共に、
該成形時に、前記ヒューズハウジングに、前記バッテリ接続板部の端縁から前記タブ端子板部の一縁に連絡するように、前記可溶体部を収容する可溶体保持溝を形成し、
前記バッテリ接続板部と前記タブ端子板部とを前記ヒューズハウジングのインサート成形により一体化した後に、低融点金属製の可溶体用母材片を前記可溶体保持溝内に投入し、前記可溶体保持溝内の前記可溶体用母材片を加熱処理により溶融させた後に凝固させることによって前記可溶体部を形成することを特徴とするバッテリ直付けヒューズユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2009−193950(P2009−193950A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180539(P2008−180539)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】