説明

バリア機能を強化することができるペプチド加水分解物を含む化粧品および/または医薬組成物

本発明は、皮膚バリア機能を強化し、表皮分化を刺激することができる、生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物に関する本発明はまた、生理学的に許容可能な媒体中に、活性成分として前記加水分解物を含む化粧品および/または医薬組成物にも関する。本発明はさらに、化粧品組成物において、角質細胞中のHMG-CoAレダクターゼを活性化し、加齢および光による加齢を防止し、対処する、本発明の活性成分の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、化粧品および医薬品分野、特に皮膚科分野におけるものである。本発明は、皮膚のバリア機能を強化し、表皮の分化を刺激することができる、生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物に関する。生物学的活性ペプチドは、少なくとも1個のグリシン残基、1個のロイシン残基、および1個のグルタミン酸残基を含む4個から6個のアミノ酸を含むことを特徴とする。好ましくは、活性成分は、ヒトツブコムギ、ジャガイモ、トウモロコシ、マメ、ダイズの中から選択される植物タンパク質またはSaccharomyces属由来の酵母タンパク質の加水分解物に由来する。本発明はまた、生理学的に許容可能な媒体中に、表皮のバリア機能を強化することができる活性成分として、生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物を含む組成物にも関する。本発明はまた、薬剤としてこの新規活性成分を含む医薬組成物にも関する。最後に、本発明は、HMG-CoAレダクターゼを活性化する活性成分としての前記ペプチド加水分解物の使用に関する。本発明はさらに、皮膚のバリア機能を強化し、表皮の分化を刺激することができる活性成分としての前記ペプチド加水分解物の使用に関する。本発明はさらに、外的ストレスおよび皮膚老化の兆候を防止および/または対処することを意図する化粧上の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮の第一の機能は、外部環境と内部環境との間にバリアを構築することである。表皮の最外部層、表皮の角質層または「角質層(stratum corneum)」は、この機能を保証する。それは、その分化の最終段階にあるケラチノサイト、角質細胞からなり、柔軟かつ不浸透性である厚い細胞間セメントにより相互に接着している。それゆえ、角質細胞から構成される細胞分画と、多重膜構造に組織されている、主に脂肪からなる細胞外分画とは、角質層において区別される。
【0003】
ヒト角質層の脂質含量は、個人間の変動が顕著であるが、15%のコレステロールエステル、16%の遊離長鎖飽和脂肪酸、32%のコレステロールおよび37%のセラミドと見積もられる(Norlen L. et al. J. Invest. Dermatol. 1999; 112(1) p. 72-77)。これらの脂質は、表皮の間の中間層に由来するケラチノサイトにより合成され、「多重層体(lamellar body)」またはオドランド体(Odland body)と呼ばれる特異的器官において分泌される。特に、表皮は、コレステロールの合成に関して非常に活性な部位である。この合成の速度限定ステップであって、最も精密に制御されるステップは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル- コエンザイムA (HMG-CoA)のメバロン酸への変換である。このステップは、HMG-CoA-リダクターゼ (E.C. 1.1.1.34)と呼ばれる膜結合酵素により触媒される。ヒトゲノム配列データには、第5染色体に位置する特異的遺伝子によりコードされる、少なくとも2つのHMG-CoA-リダクターゼアイソフォームが存在することが示されている(Luskey et al., J Biol Chem., 1985 260(18), p.10271-7)。
【0004】
皮膚において、コレステロールは、膜の流動性に役割を果たし、特に脂質二重層における炭水化物の移動性を保証するようである(Martini M.C., Pathol. Biol. 2003, (51), p. 267-270)。そして、生理学的条件において、コレステロールは、ホメオスタシスを維持するために必要なレベルで合成される。一方、皮膚バリアのにおける突発的な変化の後、コレステロールの合成において顕著でかつ迅速な増大が観察され、それはHMG-CoA-リダクターゼの発現および活性の増大に関連する(Menon G.K. et al., J. Lipid, Res., 1985, (26), P. 418-427)。
【0005】
HMG-CoA-リダクターゼの鍵となる役割は、生体におけるコレステロールの発現を制御するための第一の標的となる。それゆえ、スタチンと呼ばれる、HMG-CoA-リダクターゼを阻害することを意図した、あるクラスの医薬化合物が、コレステロールの循環を低下させることを目的として開発されてきた。スタチンのこの阻害効果はまた、ヒトの皮膚でも明白である。実際に、局所経路によるスタチンの実験的投与により、皮膚のバリア機能が破壊される(Proksch E. et al., British J. Dermatol., 1993, (128), p. 473-482)。これらの結果により、表皮バリア機能におけるコレステロールの重要性、ならびにその合成を制御するHMG-CoA-リダクターゼの中心的役割が確認される。
【0006】
皮膚が老化する際に、皮膚バリア機能の統合性、ならびにその修復能力が変化する。脂質の全体的な欠乏が観察され、角質層の細胞外分画の脂質多重層の減少がもたらされる。これらの機能変化は、老化した皮膚の、外部ストレスに対する感受性の増大に関連する(Ghadially R. et al., J Clin Invest., 1995 (95 (5), p. 2281-90)。
【0007】
固有のまたは光誘導加齢とは独立に、皮膚バリアの変化は、外部ストレスの間に生成されるかもしれない。
【0008】
この文脈において、改変を予防し、表皮のバリア機能を再構築する試みが望まれる。この特定の領域において、セラミドのような(EP 1272148, US2007576937)、または複数のコレステロール誘導体(FR 2 789 312)のような、脂質置換物の直接共旧が広く記載されている。一方、皮膚の脂質の合成を活性化する植物油の使用もまた記載されている(EP 1707189)。化粧品分野において、HMG-CoA-リダクターゼのの分子標的がすでに探索されているが、この鍵となる酵素の阻害の目的において、例えば、そのHMG-CoA阻害特性が公知であるスタチンを使用することによる、しかしながら、現在までに、本発明の目的、すなわち、本発明による生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物が、皮膚のバリア機能を強化し、表皮の分化を刺激する有利な特性を有するであろうことを記載または示唆する文献は存在しない。この作用により、バリア機能に連動する複数の病理学的機能不全(高血圧、炎症を起こした、または反応性の皮膚、アトピー性湿疹)を改善することもまた可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP 1272148
【特許文献2】US2007576937
【特許文献3】FR 2 789 312
【特許文献4】EP 1707189
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Luskey et al., J Biol Chem., 1985 260(18), p.10271-7
【非特許文献2】Norlen L. et al. J. Invest. Dermatol. 1999; 112(1) p. 72-77
【非特許文献3】Martini M.C., Pathol. Biol. 2003, (51), p. 267-270
【非特許文献4】Menon G.K. et al., J. Lipid, Res., 1985, (26), P. 418-427
【非特許文献5】Proksch E. et al., British J. Dermatol., 1993, (128), p. 473-482
【非特許文献6】Ghadially R. et al., J Clin Invest., 1995 (95 (5), p. 2281-90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第一の目的は、表皮のバリア機能を強化することができる生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物であり、加水分解物が、少なくとも1個のグリシン残基、1個のロイシン残基、および1個のグルタミン酸残基を含む4個から6個のアミノ酸を含むことを特徴とする。
【0012】
実際に、本発明により、以後生物学的活性ペプチドと呼ぶ、ある特定のペプチドを含むペプチド加水分解物の化粧品的および医薬的、特に皮膚科的な活性が示されている。
【0013】
特に、生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物は、皮膚に適用される場合、皮膚のバリア機能を強化し、表皮の分化を刺激する。これらの特性は、外部ストレスに関する皮膚組織のより良好な保護により、および表皮の角質層を構成する脂質の生成の増大により示されている。
【0014】
本発明において、「生物学的活性ペプチド」は、ペプチド結合により、または修飾ペプチド結合により連結され、本発明による活性成分の活性のin vivoもしくはin vitro活性特性を有する、少なくとも4個のアミノ酸の連結として理解される。
【0015】
本発明に特徴的な生物学的活性は、HMG-CoAレダクターゼを活性化するペプチドの能力により、(HMG-CoAレダクターゼ遺伝子発現の直接または間接的制御による)HMG-CoAレダクターゼのタンパク質合成の増大により、あるいはHMG-CoAレダクターゼの酵素活性の増大により、あるいはHMG-CoAレダクターゼを安定化させる、またはメッセンジャーRNA転写物を安定化させるような、他の生物学的プロセスにより、in vitroで規定される。
【0016】
皮膚は、表皮付属物(髪、睫毛、体毛、眉毛)を含む、皮膚および粘膜を構成する変換組織の全てを指すと理解される。
【0017】
「ペプチド加水分解物」は、主にペプチドもしくはオリゴペプチドにより示される化合物の混合物を指すと理解される。本発明において、「ペプチド加水分解物」または「活性成分」の語は、同等に使用される。
【0018】
「天然ペプチド化合物」は、本発明のペプチド加水分解物中に存在するタンパク質の断片、ペプチドおよび遊離アミノ酸を指すと理解される。
【0019】
「局所適用」は、皮膚もしくは粘膜の表面に、またはその上に、本発明の活性成分、もしくはそれを含む組成物を適用もしくは塗布する作用を指すと理解される。「生理学的に受容可能」は、本発明のペプチド加水分解物もしくはそれを含む組成物が、毒性もしくは不寛容応答を引き起こすことなく、皮膚もしくは粘膜と接触して導入することができることを意味すると理解される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の実施態様の特に有利な方法によると、加水分解物に含まれる生物学的活性ペプチドは、一般式I
X1-[Gly, Glu, Leu]- X2-X3
の配列を有する。
[前記式中、
X1はアラニン、バリン、イソロイシンまたはアミノ酸なしであり、
X2はセリンまたはスレオニンであり、
X3はロイシン、イソロイシンまたはアミノ酸なしである]
【0021】
本発明の実施態様の特に好ましい方法によると、生物学的活性ペプチドは、配列:
(配列番号1) Ala-Glu-Gly-Leu-Ser-Ile
(配列番号2) Leu-Gly-Glu-Ser-Leu
(配列番号3) Val-Gly-Glu-Leu-Thr
(配列番号4) Ile-Gly-Glu-Leu-Ser
(配列番号5) Ala-Gly-Glu-Leu-Ser
(配列番号6) Gly-Glu-Leu-Thr-Ile
(配列番号7) Gly-Glu-Leu-Ser
を有する。
【0022】
特に興味深い実施態様によると、生物学的に活性なペプチドは、配列番号5の配列に相当する。
【0023】
本発明による活性成分を、植物もしくは酵母起源のタンパク質の抽出後、天然ペプチド化合物を放出する制御された加水分解を行い、その中に生物学的に活性なペプチドを発見することにより取得してよい。
【0024】
ペプチド加水分解物、特に低分子量ペプチド加水分解物の使用は、化粧品において、多くの有利性を提示する。出発タンパク質混合物に前もって存在しなかった天然ペプチド化合物を製造することに加えて、加水分解および精製により、より安定な混合物を得ることが可能になり、それにより標準化することが容易になり、皮膚科学的もしくは化粧品アレルギー反応を引き起こさないようにすることが可能となる。
【0025】
本発明の生物学的活性ペプチドに相当する天然ペプチド化合物を精製しないが、適切な解析手法により前記ペプチドの存在を確証することにより、ある加水分解抽出物を使用することも可能である。
【0026】
植物および酵母に見出された非常に多くのタンパク質は、その構造中に生物学的活性ペプチドを含むようである。制御加水分解により、これらのペプチド特性の特定の化合物が放出されるのを可能とする。本発明の実行には必要ではないが、最初に関連タンパク質のいずれかを抽出しその後それらを加水分解する、あるいは最初に粗抽出物で加水分解し、その後天然ペプチド化合物を精製することが可能である。
【0027】
好ましい実施態様によれば、前記活性成分は、ヒトツブコムギ、ジャガイモ、トウモロコシ、マメ、ダイズの中から選択される植物タンパク質またはSaccharomyces属由来の酵母タンパク質の加水分解物に由来する。好ましくは、使用される植物は、前もって発酵されていない。
【0028】
そして、本願発明を、特に高いレベルのタンパク質を含む、非常に古い二倍体コムギである、微小ヒトツブコムギの種子(Triticum monococcum)を使用することにより実行してよい(Vallega 1992)。
【0029】
本発明をまた、Solanum属、特にSolanum tuberosum種のジャガイモ塊茎を使用することにより実行してもよい。塊茎は、植物の根ではなく埋没した茎に属し、そこから地下茎と呼ばれる細い枝が伸長し、その末端に塊茎が形成する。
【0030】
本発明をまた、Zea属、特にZea mays L種の多くの植物の一つに由来する種子を使用することにより実行してもよい。本発明によれば、使用する植物物質は、種子であり、優先的には、種子の外皮は、外皮除去工程により除去されている。
【0031】
本発明をまた、マメファミリー(マメ科)由来の多くの植物の一つを使用することにより実行してもよい。本発明によれば、マメ種Pisum sativum L由来の植物が使用される。マメの語はまた、種子を指し、それ自体タンパク質が豊富(25%)である。本発明をまた、Glycine属(ダイズ)もしくは豆腐のマメ科種子、優先的にはGlycine Max L.種のマメ科種子を使用することにより実行してもよい。本発明によれば、使用する植物物質は種子であり、優先的には、種子の外皮は、外皮除去工程により除去されている。
【0032】
本発明をまた、Saccharomyces属の、優先的にはSaccharomyces cerevisiae種の酵母を使用することにより実行してもよい。
【0033】
当業者に公知の抽出もしくは精製方法のいずれかを、本発明の加水分解物を調製するために使用してよい。
【0034】
第一の工程において、種子、または植物の特異的な一部(葉、地下茎、根など)を、植物製粉器を使用して製粉する。そうして得られた粉末を、続けて、慣用的な有機溶媒(例えばアルコール、ヘキサンまたはアセトン)を使用することにより「脱脂」してよい。
【0035】
酵母を使用する場合、第一の工程において、好ましくはラクトースの存在下で、その生育に適する培地中で酵母を慣用的に培養する。酵母を遠心して回収し、その後バッファー溶液、優先的にはリン酸バッファー中に懸濁する。
【0036】
第二の工程において、加圧型細胞破壊装置(French press)を使用して、またはボールミルを使用して、細胞を破裂させ、不溶性膜成分の大部分を、遠心または濾過により分離する。
【0037】
その後、改変した慣用的方法によりタンパク質を抽出する(Osborne, 1924)。粉末化植物物質または酵母溶解物を、不溶性ポリビニルポリピロリジン(PVPP)タイプの吸着生成物(0.01 -20 %)を含むアルカリ性溶液中に懸濁する。実際に、連続した加水分解および精製操作は、この手法により容易になったことが観察された。特に、タンパク質と相互作用する、フェノールタイプの基質の濃度が、顕著に減少する。
【0038】
タンパク質、炭水化物、およびおそらく脂質を含む可溶性画分を、遠心および濾過工程の後回収する。その後、この粗生成物を、制御された条件下で加水分解し、可溶性ペプチドを製造する。加水分解は、水による切断に関する化学反応として規定され、この反応は、中性、酸性、もしくは塩基性媒体中でなされてよい。本発明によれば、加水分解を、化学的におよび/または有利にはタンパク質分解酵素により、実行する。その後、植物起源のエンドプロテアーゼ(パパイン、ブロメリン、フィシン)および微生物(Aspergillus, Rhizopus, Bacillusなど)の使用が引用されてよい。加水分解条件は、生物学的活性ペプチド富化を促進するよう選択される。
【0039】
上記と同じ理由、すなわち、ポリフェノール基質の除去のため、一定量のポリビニルポリピロリドンを、この制御加水分解工程の間に反応媒体に添加する。濾過の後、酵素とポリマーの除去を可能とするよう、得られる濾過物(溶液)は、第一の形態の本発明の活性成分を構成する。
【0040】
この段階で得られる加水分解物を、好ましくは6 kDaより小さい、低分子量画分、およびその特性により製造されるペプチドを選択するために再度精製してよい。有利には、画分化を、生物学的活性ペプチド中の加水分解物を特異的に富化するために、空隙率を減少するフィルターを通す連続的限外濾過により、各工程の濾過物を保存することにより、および/またはクロマトグラフィータイプの方法により、実行してよい。
【0041】
本発明は、水中または水を含む混合物中の希釈のフェーズを実行し、その後0.5から5.5g/lのタンパク質含量を特徴とするペプチド加水分解物を得るために、限外濾過による滅菌を実行する。このペプチド加水分解物は、最も精製された形態の、本発明の活性成分に相当する。
【0042】
本発明により得られるペプチド加水分解物は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)において量的および質的に分析され、(適切な溶媒の勾配により)0.2から25kDaの分子量を有するタンパク質を分析することが可能となる。その後、単離することができる異なるペプチド画分を、それらの生物学的有効性に関して分析する。その後これらの多用な画分を、各ピークからペプチドのアミノ酸含量を特異的に同定するために、マススペクトロメトリーにより分析する。配列解析もまた実行し、生物学的活性ペプチドのペプチド配列を決定した。
【0043】
得られた加水分解物は、6 kDaより低い、優先的に6 kDaより低い分子量を有し、少なくとも1個のグリシン残基、1個のロイシン残基、および1個のグルタミン酸残基を含む4個から6個のアミノ酸由来の生物学的活性ペプチドに富むペプチドからなる。
【0044】
本発明の第二の目的は、生理学的に許容可能な媒体中に、表皮のバリア機能を強化することができる活性成分として、本発明の生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物を含む組成物である。
【0045】
本発明の有利な実施態様において、本発明の活性成分は、本発明の組成物中に、最終組成物の総重量に対して、およそ0.0001 %から20 %の濃度、優先的にはおよそ0.05 % から5 %の濃度で存在する。
【0046】
本発明の有利な実施態様において、本発明の活性成分は、水、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化もしくはプロポキシル化ジグリコール、環状ポリオール、白色ワセリン、植物油またはこれらの溶媒のいずれかの混合物のような、当業者に慣用的に使用される、1つ以上の生理学的に許容可能な溶媒中に可溶化される。
【0047】
本発明の別の有利な実施態様において、本発明の活性成分は、リポソーム、吸着もしくは粉末性有機ポリマー、タルクおよびベントナイトのような金属支持体のような化粧品もしくは薬剤担体中に前もって通うかされ、より一般的に、いずれかの生理学的に許容可能な担体中に可溶化されるか、その担体上に固定される。
【0048】
本発明により使用可能な組成物は、特に、毛のケア、特にシャンプー、コンディショナー、トリートメントローション、ヘアドレッシングクリームもしくはゲル、髪用再構成ローション、マスクなどのための組成物からなる。組成物はまた、ブラシまたは櫛により、特に睫毛、眉毛または髪に適用される、ヘアーティントもしくはマスカラの形態で存在してよい。
【0049】
本発明により使用可能な組成物を、適切な経路、特に経口、経皮もしくは局所的に適用され、組成物の配合物を、特に化粧品もしくは皮膚科学組成物用に、当業者が採用するであろう。有利には、本発明の組成物は、局所投与のために意図される。それゆえこれらの組成物は、生理学的に許容可能な媒体、すなわち、皮膚および皮膚付属物に適合可能な媒体を含まなければならず、かつ全ての化粧品もしくは皮膚科学形態をカバーしなければならない。
【0050】
本発明による活性成分は、単独で、もしくは他の活性成分と組み合わせて使用してよいことが理解されるべきである。
【0051】
有利には、本発明により使用可能な組成物はまた、活性成分の作用を促進および補填することを意図する種々の保護もしくは抗加齢活性成分もまた含んでよい。非限定的な方法において、以下の成分が引用されてよい:瘢痕形成薬、抗加齢剤、抗しわ剤、平滑剤、抗ラジカル剤、抗紫外線剤、真皮巨大分子の合成またはエネルギー代謝の刺激剤、加湿剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、皮膚分化制御剤、色素沈着剤もしくは色素脱着剤、爪もしくは毛髪増殖刺激剤。優先的には、抗ラジカル剤もしくは抗酸化剤のような、抗しわ活性を提示する薬剤、または真皮巨大分子の合成刺激剤、エネルギー代謝刺激剤、メタロプロテアーゼインヒビターが使用されるであろう。
【0052】
例えば、抗ラジカルもしくは抗酸化活性を有する他の活性成分、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、およびポリフェノール植物抽出物、レチノイドを添加してよい。
【0053】
本発明の組成物は、さらに本発明の活性成分に、真皮巨大分子(ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン)、例えばVincience社により「Collaxyl(登録商標)」の商品名で販売されているコラーゲンペプチドの合成を刺激する他の活性成分を関連付けてよい。
【0054】
本発明の組成物はまた、本発明の活性成分に、Vincience社により「GP4G (登録商標)」の商品名で販売されている活性成分のような、エネルギー代謝を刺激する他の活性成分を関連付けてよい。
【0055】
もちろん、本発明が、一般に哺乳動物、特にヒトを目的とすることは明らかである。
【0056】
これらの組成物は特に、水性溶液、水アルコール性もしくは油性溶液;水中油エマルション、油中水エマルション、もしくは複数のエマルションの形態で存在してよく;それらはまた、皮膚、粘膜、唇および/または表皮付属物への適用に適する、クリーム、懸濁物、もしくは他の粉末の形態で存在してもよい。これらの組成物は、多少流動性であってよく、クリーム、ローション、ミルク、血清、ポマード、ゲル、ペーストもしくはフォームの外観を有していてよい。それらはまた、スティックのような固体形態で存在してよく、またはエアロゾル形態で皮膚に適用されてよい。それらを、ケア製品として、および/または皮膚メークアップ製品として使用してよい。
【0057】
これら全ての組成物はまた、溶媒、増粘剤、希釈剤、抗酸化剤、着色剤、日焼け止め剤、セルフタンニング剤、色素剤、フィラー、保存剤、芳香剤、臭気吸着剤、他の化粧品活性成分、エッセンシャルオイル、ビタミン、必須脂肪酸、界面活性剤、膜形成ポリマーなどのような、考えられる適用分野で一般に使用される添加物のいずれか、ならびに、その配合物に必要なアジュバントも含んでよい。
【0058】
全ての場合において、当業者は、これらのアジュバントならびにその比率が、本発明の組成物の望ましい有利な特性を損なわないよう選択されることを確認するであろう。これらのアジュバントは、例えば、組成物の総重量の0.01から20%の範囲の濃度に相当する。本発明の組成物がエマルションである場合、脂肪相は、組成物の総重量の5から80重量%、好ましくは5から50重量%を占めてよい。組成物で使用される乳化剤および共乳化剤を、考えられる分野で慣用的に使用されるものの中から選択されるであろう。例えば、それらを、組成物の総重量の0.3から30重量%の比率で使用してよい。
【0059】
本発明の第三の目的は、有効量の本発明のペプチド加水分解物を、薬剤として含む医薬組成物である。例えば、医薬組成物は、高血圧、炎症を起こした、または反応性の皮膚、アトピー性湿疹のような、皮膚機能の改変を特徴とする病理を予防または治療することを意図していてよい。
【0060】
本発明のこの形態によると、組成物は、医薬用途のための経口投与に適するであろう。そして、組成物は特に、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、咀嚼可能なペースト、液体、シロップ、ゲルと使用直前に混合されるもしくは混合されることになるように消費される粉末の形態、または他の当業者に公知の形態のいずれかで存在してよい。これらの組成物はまた、溶媒、増粘剤、希釈剤、抗酸化剤、保存剤、他の医薬活性成分、エッセンシャルオイル、ビタミン、必須脂肪酸などのような、考えられる適用分野で一般に使用される添加物のいずれか、ならびに、その配合物に必要なアジュバントも含む。
【0061】
本発明の第四の目的は、化粧品組成物における、ヒトHMG-CoA-リダクターゼを活性化する活性成分としての、有効量のペプチド加水分解物の使用である。
【0062】
ペプチド加水分解物の有効量は、表皮のバリア機能を改善し、表皮分化を刺激する目的において、所望の結果を得る、すなわち、HMG-CoA-リダクターゼを活性化するために必要な量に相当する。
【0063】
「表皮のバリア機能を改善し、表皮分化を刺激する」は、表皮の角質層の保護能力の改善、およびケラチンのような生物学的分化マーカーの発現の改善を指すと理解される。
【0064】
そして、前記活性成分の特別な特性のおかげで、表皮のバリア機能を強化し、かつ表皮分化を刺激することを意図する化粧品組成物にそれを使用することができる。
【0065】
一方、有利にはペプチド加水分解物を、皮膚加齢、特に光誘導皮膚老化(光加齢)の兆候を、予防的および/または治療的に対処することを意図した化粧品組成物において活性成分として使用してよい。老化もしくは光老化の皮膚兆候は、例えば、表皮の角質層の表面のあれ、しわおよび微細なしわのような、老化による皮膚および表皮付属物の外見におけるいずれかの改変のみでなく、例えば紫外線(UV)照射への曝露後の真皮の薄化もしくは他の皮膚の内部分解のような、体系的な改変した外観をもたらさない皮膚の内部改変のいずれかを指すと理解される。
【0066】
本発明の他の態様によれば、有利にはペプチド加水分解物を、全てのタイプの外部ストレスから皮膚を保護することを意図した化粧品組成物中の活性成分として使用することができる。
【0067】
「外部ストレス」の表現は、環境が生み出すであろうストレスを指すと理解される。例として、大気汚染、紫外線照射、または、界面活性剤、保存剤もしくは芳香剤のような刺激性製品、あるいは、擦り傷、髭剃りもしくは脱毛のような力学的ストレスが引用されてよい。大気汚染は、例えばディーゼル粒子、オゾンもしくは重金属による「外部」汚染、ならびに、特に(トルエン、スチレン、キシレンもしくはベンズアルデヒドのような)塗料、接着剤、もしくは壁紙溶媒による、またはタバコの煙によるものであろう、「内部」汚染の両方を指すと理解される。大気の乾燥もまた、皮膚ストレスの重要な原因である。これらの外部ストレスにより、皮膚の不快さ、猛烈な痛みもしくはかゆみのような不愉快な感覚現象、ならびに過度のもろさおよび赤みをもたらす、皮膚機能の改変がもたらされる。
【0068】
特に、本発明の目的は、髭剃りもしくは脱毛のような機械的処理、界面活性剤による過剰に強度な洗浄、温度および湿度における過度の気候条件または突然の変動から選択される、皮膚の外部ストレスにより、皮膚に引き起こされる損傷を予防もしくは治療することを意図する化粧品組成物における、本発明の加水分解物の使用である。
【0069】
本発明の第五の目的は、それにより有効量の本願発明のペプチド加水分解物を含む組成物が処理される領域に適用される、老化および/または光老化の皮膚兆候を予防および/または対処することを意図する、化粧処理方法である。
【0070】
この化粧処理方法の特定の実施態様はまた、前述の記載からももたらされる。本発明の他の有利な点および特徴は、例示的および非限定的な目的で与えられる実施例を読むことにより、より明確に示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ヒトツブコムギ加水分解物における生物学的活性ペプチドに相当するピークを示す、HPLCにより得られたクロマトグラフィー例。
【図2】ジャガイモ加水分解物における生物学的活性ペプチドに相当するピークを示す、HPLCにより得られたクロマトグラフィー例。
【図3】トウモロコシ加水分解物における生物学的活性ペプチドに相当するピークを示す、HPLCにより得られたクロマトグラフィー例。
【図4】マメ加水分解物における生物学的活性ペプチドに相当するピークを示す、HPLCにより得られたクロマトグラフィー例。
【図5】ダイズ加水分解物における生物学的活性ペプチドに相当するピークを示す、HPLCにより得られたクロマトグラフィー例。
【図6】Saccharomyces cerevisiae加水分解物における生物学的活性ペプチドに相当するピークを示す、HPLCにより得られたクロマトグラフィー例。
【発明を実施するための形態】
【0072】
実施例1:ヒトツブコムギ(Triticum monococcum)からのペプチド加水分解物の調製
ヒトツブコムギ種子(Triticum monococcum)を、2 % POLYCLAR(登録商標)10 (ポリビニルピロリドン-PVPP - 不溶性)の存在下で10倍容量の水の溶液中に入れる。混合物を、1M水酸化ナトリウム水溶液で、pH 6から8に調節する。
【0073】
pHを調節したあと、アミラーゼ(ハシダーゼ(hasidase) (登録商標))およびプロテアーゼ(2%のパパイン)を、反応媒体に添加する。50°Cで2時間撹拌後、加水分解物を得る。その後、溶液を80°Cで2時間加熱することにより、酵素を不活性化する。遠心後、粗ヒトツブコムギ加水分解物に相当する、上清水性溶液を回収する。Gly、Leuおよびグルタミン酸残基を含む、4個から6個のアミノ酸の生物学的活性ペプチドの富化を可能とするように、加水分解条件を選択した。
【0074】
加水分解粗精製プロセスは、加水分解物1として記載される、明るく清澄な溶液を得るために、(0.2μmまで)空隙率を減少させたSeitz-Orionフィルタープレートを使用する、連続的な濾過によりスタートする。
【0075】
この工程で、ヒトツブコムギ加水分解物1は、薄い黄色の色、ならびに20から25 g/kgの乾燥抽出物滴定値、10から12 g/lのタンパク質レベル、および5から8 g/lの糖レベルを特徴とする。
【0076】
NuPAGE(登録商標)ビストリスプレキャスト(Invitrogen)ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動解析後、加水分解物1のタンパク質特性を示す。ヒトツブコムギタンパク質加水分解物を、NuPAGE(登録商標) LDSサンプル調製バッファー中、還元変性条件下、70°Cで10分間加熱する。NuPAGE(登録商標)アンチオキシダント溶液を、内部タンク(陽極)に添加し、電気泳動中の還元タンパク質の再酸化を防止する。タンパク質移動を、分子量マーカーとして標準SeeBlue Plus2をとともに、NuPAGE(登録商標) MES移動バッファー中で実行する。タンパク質着色を、クーマシーブルー(登録商標) R-250を使用することにより実行する。これらの条件下で、酵素に相当する24kDaのバンドが観察され、タンパク質は6kDaより小さかった。
【0077】
その後加水分解物1を、酵素の痕跡を除去するために、Pellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 5 kDaを使用して超遠心することにより精製する。精製の最後に、黄オレンジ色で、明るくクリアなペプチド加水分解物が得られる。タンパク質含量1.5から3.5 g/lを特徴とするペプチド加水分解物を得るために、希釈フェーズを実行する。このペプチド加水分解物は、本発明による活性成分に相当する。
【0078】
その後このペプチド加水分解物を、ChemStationソフトウェアにより稼動するHP1100装置を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析する。加水分解物の溶出中に使用するカラムは、Nucleosil(登録商標) 300-5 C4 MPN (125 x 4 mn) カラムであり、これにより0.2kDaから25kdaの分子量を有するタンパク質を以下の条件でクロマトグラフ化することが可能となる。
メタノール勾配:
- Uptisphere OPB 125 x 3 mmカラム
- 溶媒A:0.1%ヘプタフルオロブチリル酸(HFBA)を含むHPLCグレード水
- 溶媒B:HPLCグレードメタノール
- 勾配:13分間に100%から40%溶媒A、その後5分間に40%から10%。
【0079】
これらのクロマトグラフィー条件下で、複数のペプチド画分を単離することができた。HPLCにより得られたクロマトグラム(高圧液相におけるクロマトグラフィー)の例は、ペプチド加水分解物に相当するピークが、図1に示される。
【0080】
その後これらの多様な画分を、各ピーク由来のペプチドのアミノ酸含量を特異的に同定するために、マススペクトロメトリーにより解析する。配列解析もまた実行し、生物学的活性ペプチドのペプチド配列を決定する。
【0081】
本発明の活性成分のアミノ酸における組成物の決定もまた実行した。これは、アミノ酸加水分解およびPICT(フェニルイソチオシアネート)でのプレ誘導化を使用する高圧液相クロマトグラフィーにより同定して実行した。
【0082】
加水分解物のアミノ酸組成物の例は、以下の表に(%で)示される。
【0083】
【表1】

【0084】
実施例2:Solanum tuberosum種に属する塊茎由来のペプチド加水分解物の調製
ジャガイモ塊茎(Solanum tuberosum)を、2 % POLYCLAR(登録商標)10 (ポリビニルピロリドン-PVPP - 不溶性)の存在下で10倍容量の水の溶液中に入れる。混合物を、1M水酸化ナトリウム水溶液で、pH 6から8に調節する。その後酸性媒体における沈殿を実行する。ペレットを溶液に戻し、pHの調節後、2%のパパインを反応媒体に添加する。55°Cで2時間撹拌後、加水分解物を得る。その後、溶液を80°Cで2時間加熱することにより、酵素を不活性化する。遠心後、粗ジャガイモ加水分解物に相当する、上清水性溶液を回収する。Gly、Leuおよびグルタミン酸残基を含む、4個から6個のアミノ酸の生物学的活性ペプチドの富化を可能とするように、加水分解条件を選択した。
【0085】
加水分解粗精製プロセスは、加水分解物1として記載される、明るく清澄な黄色溶液を得るために、(0.2μmまで)空隙率を減少させたSeitz-Orionフィルタープレートを使用する、連続的な濾過によりスタートする。
【0086】
この工程で、ジャガイモ加水分解物1は、40から60 g/kgの乾燥抽出物滴定値、20から25 g/lのタンパク質レベル、および1から3 g/lの糖レベルを特徴とする。
【0087】
NuPAGE(登録商標)ビストリスプレキャスト(Invitrogen)ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動解析後、加水分解物1のタンパク質特性を示す。ジャガイモタンパク質加水分解物を、NuPAGE(登録商標) LDSサンプル調製バッファー中、還元変性条件下、70°Cで10分間加熱する。NuPAGE(登録商標)アンチオキシダント溶液を、内部タンク(陽極)に添加し、電気泳動中の還元タンパク質の再酸化を防止する。タンパク質移動を、分子量マーカーとして標準SeeBlue Plus2をとともに、NuPAGE(登録商標) MES移動バッファー中で実行する。タンパク質着色を、クーマシーブルー(登録商標) R-250を使用することにより実行する。これらの条件下で、得られるタンパク質が6kDaより小さい分子量を有することが観察される。
【0088】
その後加水分解物1を、接線流体濾過を使用することにより、5kDaより小さい分子量を有するペプチドのみを保持するために、精製する。このために加水分解物1を、Pellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 5 kDaを装着したPellicon(登録商標)サポートを通した圧力下でポンピングする。精製の最後に、明るくクリアなペプチド加水分解物が得られる。タンパク質含量3.5から5.5 g/lを特徴とするペプチド加水分解物を得るために、希釈フェーズを実行する。このペプチド加水分解物は、本発明による活性成分に相当する。
【0089】
その後このペプチド加水分解物を、ChemStationソフトウェアにより稼動するHP1100装置を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析する。加水分解物の溶出中に使用するカラムは、Nucleosil(登録商標) 300-5 C4 MPN (125 x 4 mn) カラムであり、これにより(実施例1と同一の条件で)0.2kDaから25kdaの分子量を有するタンパク質をクロマトグラフ化することが可能となる。これらのクロマトグラフィー条件下で、複数のペプチド画分を単離することができた。
【0090】
その後これらの多様な画分を、各ピーク由来のペプチドのアミノ酸含量を特異的に同定するために、マススペクトロメトリーにより解析する。配列解析もまた実行し、生物学的活性ペプチドのペプチド配列を決定する。
【0091】
HPLCにより得られたクロマトグラム(高圧液相におけるクロマトグラフィー)の例は、ペプチド加水分解物に相当するピークが、図2に示される。
【0092】
本発明の活性成分のアミノ酸における組成物の決定もまた実行した。これは、アミノ酸加水分解およびPICT(フェニルイソチオシアネート)でのプレ誘導化を使用する高圧液相クロマトグラフィーにより同定して実行した。
【0093】
加水分解物のアミノ酸組成物の例は、以下の表に(%で)示される。
【0094】
【表2】

【0095】
実施例3:トウモロコシ胚ケーキ(Zea mays L.)由来のペプチド加水分解物の調製
トウモロコシ胚ケーキ(Zea mays L.)を、2 % POLYCLAR(登録商標)10 (ポリビニルピロリドン-PVPP - 不溶性)の存在下で10倍容量の水の溶液中に入れる。混合物を、1M水酸化ナトリウム水溶液で、pH 6から8に調節する。
【0096】
pHの調節後、2%のパパインを反応媒体に添加する。55°Cで2時間撹拌後、加水分解物を得る。その後、溶液を80°Cで2時間加熱することにより、酵素を不活性化する。遠心後、粗トウモロコシ加水分解物に相当する、上清水性溶液を回収する。Gly、LeuおよびGlu残基を含む、4個から6個のアミノ酸の生物学的活性ペプチドの富化を可能とするように、加水分解条件を選択した。
【0097】
加水分解粗精製プロセスは、加水分解物1として記載される、明るく清澄な黄色溶液を得るために、(0.2μmまで)空隙率を減少させたSeitz-Orionフィルタープレートを使用する、連続的な濾過によりスタートする。
【0098】
この工程で、トウモロコシ加水分解物1は、20から30 g/kgの滴定値、20から25 g/lのタンパク質レベル、および2から5 g/lの糖レベルを特徴とする。
【0099】
NuPAGE(登録商標)ビストリスプレキャスト(Invitrogen)ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動解析後、加水分解物1のタンパク質特性を示す。トウモロコシタンパク質加水分解物を、NuPAGE(登録商標) LDSサンプル調製バッファー中、還元変性条件下、70°Cで10分間加熱する。NuPAGE(登録商標)アンチオキシダント溶液を、内部タンク(陽極)に添加し、電気泳動中の還元タンパク質の再酸化を防止する。タンパク質移動を、分子量マーカーとして標準SeeBlue Plus2をとともに、NuPAGE(登録商標) MES移動バッファー中で実行する。タンパク質着色を、クーマシーブルー(登録商標) R-250を使用することにより実行する。これらの条件下で、6kDa以下の分子量を有するタンパク質が観察される。
【0100】
その後加水分解物1を、5kDaより小さい分子量を有するペプチドのみを保持するために、Pellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 5 kDaによる限外濾過により高分子量タンパク質を除去して精製する。
【0101】
この最後の精製後、タンパク質レベル3.5から5.5 g/lを特徴とするペプチド加水分解物を得るために、希釈フェーズを実行する。このペプチド加水分解物は、本発明による活性成分に相当する。
【0102】
その後このペプチド加水分解物を、ChemStationソフトウェアにより稼動するHP1100装置を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析する。加水分解物の溶出中に使用するカラムは、Nucleosil(登録商標) 300-5 C4 MPN (125 x 4 mn) カラムであり、これにより(実施例1と同一の条件で)0.2kDaから25kdaの分子量を有するタンパク質を以下の条件でクロマトグラフ化することが可能となる。これらのクロマトグラフィー条件下で、複数のペプチド画分を単離することができた。
【0103】
HPLCにより得られたクロマトグラム(高圧液相におけるクロマトグラフィー)の例は、ペプチド加水分解物に相当するピークが、図3に示される。
【0104】
その後これらの多様な画分を、各ピーク由来のペプチドのアミノ酸含量を特異的に同定するために、マススペクトロメトリーにより解析する。配列解析もまた実行し、生物学的活性ペプチドのペプチド配列を決定する。
【0105】
本発明の活性成分のアミノ酸における組成物の決定もまた実行した。これは、アミノ酸加水分解およびPICT(フェニルイソチオシアネート)でのプレ誘導化を使用する高圧液相クロマトグラフィーにより同定して実行した。加水分解物のアミノ酸組成物の例は、以下の表に(%で)示される。
【0106】
【表3】

【0107】
実施例4:マメ(Pisum sativum L.)由来のペプチド加水分解物の調製
ペプチド加水分解物を、Pisum sativum L種の植物抽出物より得る。もちろん、抽出物を、Pisum属に属する多くの変種、および種の少なくともいずれか一つの植物から調製してよい。
【0108】
最初の工程において、外皮除去したマメ1 kgを、有機溶媒:ヘキサンの作用により脱脂する。
【0109】
そして、得られたマメ粉末を、2 % POLYCLAR(登録商標)10 (ポリビニルピロリドン-PVPP-不溶性)の存在下で10倍容量の水の溶液中に入れる。混合物を、1M水酸化ナトリウム水溶液で、pH 6から7に調節する。
【0110】
pHの調節後、2%のflavourzyme(登録商標)を反応媒体に添加する。50°Cで2時間撹拌後、加水分解物を得る。その後、溶液を80°Cで2時間加熱することにより、酵素を不活性化する。そして得られた反応混合物は、マメ抽出物に相当する。Gly、Leuおよびグルタミン酸残基を含む、4個から6個のアミノ酸の生物学的活性ペプチドの富化を可能とするように、加水分解条件を選択した。
【0111】
加水分解粗精製プロセスは、明るく清澄な黄色溶液を得るために、(0.2μmまで)空隙率を減少させたSeitz-Orionフィルタープレートを使用する、連続的な濾過によりスタートする。この工程で、マメ加水分解物は、70から80 g/kgの乾燥抽出物、55から65 g/lのタンパク質レベル、および2から5 g/lの糖レベルを特徴とする。
【0112】
ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により、この加水分解物のタンパク質特性を示す。この解析のために、NuPAGE(登録商標)ビストリスプレキャスト(Invitrogen)ゲルを使用する。マメペプチド加水分解物を、NuPAGE(登録商標) LDSサンプル調製バッファー中、還元変性条件下、70°Cで10分間加熱する。NuPAGE(登録商標)アンチオキシダント溶液を、内部タンク(陽極)に添加し、電気泳動中の還元タンパク質の再酸化を防止する。タンパク質移動を、分子量マーカーとして標準SeeBlue Plus2をとともに、NuPAGE(登録商標) MES移動バッファー中で実行する。タンパク質着色を、クーマシーブルー(登録商標) R-250を使用することにより実行する。これらの条件下で、2つの大きなタンパク質ファミリーが観察される:第一のファミリーは、25から20 kDaの分子量のタンパク質に相当し、最後のファミリーは、5 kDaより小さい分子量のタンパク質に相当する。
【0113】
その後溶液を、接線流体濾過を使用することにより、5kDaより大きい分子量を有するペプチドを除去し、精製する。
【0114】
このためにマメ加水分解物を、Pellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 30 kDaを装着したPellicon(登録商標)サポートを通した圧力下でポンピングする。この第一の濾過物を、Pellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 5 kDaを通じて濾過し、回収する。精製の最後に、明るくクリアな黄色-ベージュ色のマメペプチド加水分解物が得られる。それは、50から55 g/kgの乾燥抽出物、50から52 g/lのタンパク質含量を特徴とする。
【0115】
その後この溶液を、ChemStationソフトウェアにより稼動するHP1100装置を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析する。マメ加水分解物の溶出中に使用するカラムは、Nucleosil(登録商標) 300-5 C4 MPN (125 x 4 mn) カラムである。このカラムにより(実施例1と同一の、適切な溶媒勾配で)0.2kDaから25kdaの分子量を有するタンパク質をクロマトグラフ化することが可能となる。これらのクロマトグラフィー条件下で、複数のペプチド画分を単離することができた。
【0116】
その後これらの多様な画分を、各ピーク由来のペプチドのアミノ酸含量を特異的に同定するために、マススペクトロメトリーにより解析する。配列解析もまた実行し、生物学的活性ペプチドのペプチド配列を決定する。HPLCにより得られたクロマトグラム(高圧液相におけるクロマトグラフィー)の例は、ペプチド加水分解物に相当するピークとして、図4に示される。
【0117】
本発明の活性成分のアミノ酸における組成物の決定もまた実行した。これは、アミノ酸加水分解およびPICT(フェニルイソチオシアネート)でのプレ誘導化を使用する高圧液相クロマトグラフィーにより同定して実行した。
【0118】
実施例5:ダイズケーキ(Glycine Max L.)由来のペプチド加水分解物の調製
活性成分を、Glycine Max L. 種由来のの植物抽出物より得る。もちろん、抽出物を、Glycine属に属する多くの変種、および種の少なくともいずれか一つの植物から調製してよい。ケーキ(cake)は、ダイズマメから油を抽出した後に得られる固体残余物である。それらは、マメ重量の50から75%を占める。
【0119】
最初の工程において、ダイズケーキ1 kgを、穀物製粉器で製粉する。得られた粉末を、有機溶媒:ヘキサンの作用により脱脂する。濾過および真空乾燥後、得られた粉末を、1%ポリビニルポリピロリドン(Polyclar V ISP)を含む、アルカリ水性溶液(1:10希釈)pH 10中に懸濁する。この混合物を、可溶性画分の可溶化を可能にするために十分に長い時間撹拌で保持する。抽出温度は変動可能であり(4から80°C);優先的には、操作を冷たい状態で実行するであろう。この抽出フェーズの後、媒体を、遠心して清澄化し、その後プレートフィルター上でろ過する。その後可溶性ダイズ画分を含むこの濾過物を、可溶性糖成分、脂質および核酸を除去できるようにする、中性または酸性媒体中でイオン強度を変動させることによるタンパク質沈殿にかける。媒体を、pH 3.5にする。上清を除去し、その後沈殿物を、例えばエタノールまたはメタノールのような溶媒を使用して洗浄し、その後溶媒を、真空乾燥により脱気する。
【0120】
この段階で、
- タンパク質:75 %
- 炭水化物:20 %
- 脂質:5 %
を含むおよそ50グラムの、薄い黄色のタンパク質粗抽出物粉末が得られる。
【0121】
タンパク質に富む沈殿物を、水または他の溶媒中の溶液に戻す。
【0122】
その後、タンパク質粗抽出物を、0.5 % PVPP (Polyclar V)およびシステインエンドペプチダーゼ(パパイン、フィチン)の存在下で、化学的および酵素的加水分解からなる、制御され、選択的な一連の加水分解にかける。反応後、加水分解物を、プレート上、その滅菌カートリッジ(0.2 μm) 上で濾過する。
【0123】
その後、15から30 g/l乾燥抽出物を滴定する薄い加水分解物が得られ、Lowry法により決定される天然ペプチド化合物の濃度が、0.1から5g/l、優先的には0.5から2 g/lとなるように、加水分解物を希釈する。活性成分を構成するペプチド加水分解物の物理化学的解析により、そのpHが4から7、優先的には5から6であり、乾燥抽出物の力価が1から8 g/l、優先的には2から5 g/lであり、その天然ペプチド加水分解物の含量が0.1から5g/l、優先的には0.5から2 g/lであり、その等含量が0.5から2.5 g/lであることが示される。加水分解条件は、Gly、Leuおよびグルタミン酸残基を含む、4個から6個のアミノ酸の生物学的活性ペプチドの富化を可能とするように、選択されている。
【0124】
その後溶液をMillipore Helicon濾過カートリッジ(カットオフ値1 kDa)で限外濾過する。残留物中の高分子量物質が分離され、濾過物が保持される。
【0125】
その後この溶液を、ChemStationソフトウェアにより稼動するHP1100装置を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析する。ダイズ加水分解物の溶出中に使用するカラムは、Nucleosil(登録商標) 300-5 C4 MPN (125 x 4 mn) カラムである。このカラムにより、0.2kDaから25kdaの分子量を有するタンパク質を、(実施例1と同じ、適切な溶媒勾配によって)クロマトグラフ化することが可能となる。これらのクロマトグラフ化条件下において、複数のペプチド画分を単離した。
【0126】
その後これらの多様な画分を、各ピーク由来のペプチドのアミノ酸含量を特異的に同定するために、マススペクトロメトリーにより解析する。配列解析もまた実行し、生物学的活性ペプチドのペプチド配列を決定する。HPLCにより得られたクロマトグラム(高圧液相クロマトグラフィー)の例は、ペプチド加水分解物に相当するピークが、図5に示される。
【0127】
本発明の活性成分のアミノ酸における組成物の決定もまた実行した。これは、アミノ酸加水分解およびPICT(フェニルイソチオシアネート)でのプレ誘導化を使用する高圧液相クロマトグラフィーにより同定して実行した。
【0128】
プロトコルのバリエーションは、生物学的活性ペプチド中のペプチド加水分解物を富化するために、pH 7のリン酸バッファーで、TSKゲルカラム(TosoHaas)上のイオン交換クロマトグラフィーにより、前記プロトコルにより得られる活性成分を精製することからなる。
【0129】
実施例6:Saccharomyces cerevisiae酵母由来のペプチド加水分解物の調製
ペプチド加水分解物を、Saccharomyces cerevisiae種由来の酵母の抽出物から取得してよい。酵母を、その生育のために適した培地中で、特にラクトースの存在下で培養し、その後遠心してバイオマスを回収する。サッカロミセスバイオマスを、2 % POLYCLAR(登録商標)10 (ポリビニルピロリドン-PVPP-不溶性)および0.2%活性炭素の存在下で10倍容量の水の溶液中に入れる。混合物を、1M水酸化ナトリウム水溶液で、pH 6から7に調節する。
【0130】
pHの調節後、2%のパパインを反応媒体に添加する。55°Cで2時間撹拌後、加水分解物を得る。その後、溶液を80°Cで2時間加熱することにより、酵素を不活性化する。遠心後、サッカロミセス抽出物に相当する反応混合物が得られる。Gly、Leuおよびグルタミン酸残基を含む、4個から6個のアミノ酸の生物学的活性ペプチドの富化を可能とするように、加水分解条件を選択した。
【0131】
精製プロセスは、明るく清澄な溶液を得るために、(0.2μmまで)空隙率を減少させたSeitz-Orionフィルタープレートを使用する、連続的な濾過によりスタートする。この工程で、サッカロミセス抽出物は、25から35 g/kgの乾燥抽出物、10から15 g/lのタンパク質レベル、および5から10 g/lの糖レベルを特徴とする。
【0132】
ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により、この抽出物のタンパク質特性を示す。この解析のために、NuPAGE(登録商標)ビストリスプレキャスト(Invitrogen)ゲルを使用する。ペプチド加水分解物を、NuPAGE(登録商標) LDSサンプル調製バッファー中、還元変性条件下、70°Cで10分間加熱する。NuPAGE(登録商標)アンチオキシダント溶液を、内部タンク(陽極)に添加し、電気泳動中の還元タンパク質の再酸化を防止する。タンパク質移動を、分子量マーカーとして標準SeeBlue Plus2をとともに、NuPAGE(登録商標) MES移動バッファーを使用して実行する。タンパク質着色を、クーマシーブルー(登録商標) R-250を使用することにより実行する。これらの条件下で、3つの大きなタンパク質ファミリーが観察される:第一のファミリーは、75 kDaより大きい分子量のタンパク質に相当し、第二のファミリーは、20から25 kDaの分子量のタンパク質に相当し、最後のファミリーは、5 kDaより小さい分子量のタンパク質に相当する。
【0133】
その後溶液を、接線流体濾過を使用することにより、5kDaより大きい分子量を有するペプチドを除去し、精製する。
【0134】
このためにサッカロミセスペプチド加水分解物を、Pellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 50 kDaを装着したPellicon(登録商標)サポートを通した圧力下でポンピングする。この第一の濾過物を、Pellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 10 kDaを通じて濾過し、回収する。第二の濾過物を、最後のPellicon(登録商標) 2 Biomax cassette 5 kDaを通じて再度溶出し、回収する。精製の最後に、ベージュ色の明るくクリアなサッカロミセス植物抽出物が得られる。それは、35から45 g/kgの乾燥抽出物、30から40 g/lのタンパク質含量を特徴とする。
【0135】
その後この溶液を、ChemStationソフトウェアにより稼動するHP1100装置を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析する。サッカロミセス加水分解物の溶出中に使用するカラムは、Nucleosil(登録商標) 300-5 C4 MPN (125 x 4 mn) カラムである。このカラムにより(実施例1と同一の、適切な溶媒勾配で)0.2kDaから25kdaの分子量を有するタンパク質をクロマトグラフ化することが可能となる。これらのクロマトグラフィー条件下で、複数のペプチド画分を単離することができた。
【0136】
その後これらの多様な画分を、各ピーク由来のペプチドのアミノ酸含量を特異的に同定するために、マススペクトロメトリーにより解析する。配列解析もまた実行し、生物学的活性ペプチドのペプチド配列を決定する。
【0137】
本発明の活性成分のアミノ酸における組成物の決定もまた実行した。これは、アミノ酸加水分解およびPICT(フェニルイソチオシアネート)でのプレ誘導化を使用する高圧液相クロマトグラフィーにより同定して実行した。
【0138】
実施例7:実施例1による加水分解物により処理したヒトケラチノサイトにおけるラメラ体の超構造研究
この研究の目的は、超構造的な手法で、透過電子顕微鏡において、1%の実施例1による加水分解物により処理したヒトケラチノサイトを研究することである。
【0139】
プロトコール:培養中の正常ヒトケラチノサイトを、実施例1による1%加水分解物溶液で48時間処理する(活性成分が存在する培地を、24時間ごとに交換する)。細胞をPBS中で洗浄し、その後Karnosky高張固定(0.08 Mリン酸バッファー中の4%パラホルムアミド、5%グルタルアルデヒド)で、1時間周辺温度、その後4°Cで24時間固定する。細胞を、掻き取ることにより支持体から脱着させ、1000 rpmで5分間遠心する。上清を除去し、1Mカコジル酸ナトリウムバッファーで残余物を沈殿させる。細胞を2 %アガーと混合し、その後オスミウムテトラオキシドにより1時間、後固定する。その後試料を、連続して一連のアルコール(50%から100%)中に通過させることにより、脱水する。その後細胞を樹脂中で被覆する重合を、60°Cでおよそ12時間実行する。0.5 μmの半薄切片を、ウルトラミクロトームで作製する。切片を、熱結合スライドに置き、その後トルイジンブルーで着色する。その後スライドを、再び脱水し、適切な媒体中にマウントする。最適な研究ゾーンを選択したあと、ブロックを所望のサイズに再びカットし、超薄切片を作製し、銀灰色で適切なサイズの切片のみを、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛の両方でラベルした電子顕微鏡グリッド上にマウントし、60または80 KVで透過電子顕微鏡により試験する。
【0140】
結果:超構造研究により、コントロール細胞よりも、ゴルジ複合体が実質的により発達していることが示される。この増大は、脂質合成の増大の兆候であるラメラ体(またはOdland体)の過剰な生成に関連付けられる。
【0141】
結論:1%の実施例1による加水分解物は、正常ヒトケラチノサイトにおいて脂質合成の増大を誘導することができる。
【0142】
実施例8:実施例2による加水分解物により処理したヒト線維芽細胞における「カベオラ(caveolae)」の超構造研究
この研究の目的は、ヒト表皮線維芽細胞におけるカベオラを超構造レベルで研究することである。
【0143】
プロトコール:培養中の正常ヒト表皮線維芽細胞を、実施例2による加水分解物1%で48時間処理する(活性成分を含む培地を、24時間ごとに交換する)。
【0144】
結果:超構造研究により、非処理コントロール細胞に比較して、実施例2による加水分解物1%で処理した細胞のカベオラが顕著に増大していることが示される。カベオラは、コレステロールのような分子の外化を可能とする細胞膜の陥入であるため、これらの結果は、活性成分の陽性効果の兆候である。
【0145】
結論:1%の実施例2による加水分解物は、コレステロールの外化を伴う膜構造の増大をもたらす。
【0146】
実施例9:実施例2による加水分解物により処理したヒトケラチノサイトの分化研究
この研究の目的は、表皮分化に対する、特に、ケラチノサイト分化マーカーである、全てのサイトケラチン(またはパンケラチン)の発現に対する、実施例による加水分解物の影響を決定することである。
【0147】
プロトコール:培養中の正常ヒトケラチノサイトを、実施例2による加水分解物1%で48時間処理する(活性成分が存在する培地を、24時間ごとに交換する)。その後細胞を洗浄し、4°Cで4分間、冷メタノールで固定する。細胞を、1:200の抗サイトパンケラチンモノクローナル抗体の存在下、周辺温度で1時間インキュベートし、その後蛍光染料「Alexa 488」と接合した1:50の2次抗体により、周辺温度で1時間、暴露する。その場の培地中にマウントした後、スライドを落射蛍光顕微鏡により観察する。
【0148】
結果:実施例2による加水分解物は、処理細胞でパンケラチンの発現を増大する。
【0149】
結論:1%の実施例2による加水分解物は、正常ヒトケラチノサイトにおいてサイトケラチンの発現を増大することができる。実施例2による加水分解物の存在下において、細胞は刺激され、分化の経路にある。
【0150】
実施例10:紫外線(UVB)照射された皮膚細胞に対する実施例2による加水分解物の保護効果の研究
この研究の目的は、UVB照射によるストレスに暴露された正常ヒトケラチノサイトに関連する、実施例2による加水分解物の保護効果を決定することである。このために、細胞の生存試験を、MTT技術により実行した。
【0151】
プロトコール:正常ヒトケラチノサイトを、実施例2による加水分解物0.5%で24時間処理し、UVB (50 mJ/cm2)により照射し、その後同じ濃度の実施例2による加水分解物の存在下で再び24時間培養する。非処理および非照射コントロールを、同じ条件で実行する。実験の最後に、細胞を0.1 mg/mlのMTT (3-[4, 5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2, 5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を含む溶液中でインキュベートする。この化合物は、生きた細胞により吸収され、ミトコンドリアの酵素により青紫色の化合物ホルマザンに代謝され、それは540 nmで吸光光度計によりアッセイされる。そして光学濃度(O.D.)は、ミトコンドリア酵素活性ならびに生きた細胞の数に直接比例する。
【0152】
結果:MTT技術による細胞生存度の評価により、実施例2による加水分解物が、UVB照射後の細胞生存度を16%増大させることが示される。
【0153】
結論:0.5%の実施例2による加水分解物は、UVB照射の細胞毒性効果から皮膚細胞を効果的に保護し、細胞の生存度を増大させる。
【0154】
実施例11:実施例1による加水分解物の存在下における皮膚生検中のHMG-CoAレダクターゼの発現の研究
この研究の目的は、0.5%の実施例1による加水分解物の、HMG-CoAレダクターゼの発現に対する影響を決定することである。
【0155】
プロトコール:ヒト皮膚のサンプルを、空気/液体界面の培養中に設置する。0.5%の実施例1による加水分解物を、局所的に適用し、その後サンプルを24時間または48時間インキュベートする。
【0156】
その後これらの皮膚サンプルをホルムアルデヒドで固定し、その後パラフィンで封入する。その後2から3 μmの切片を作成する。マイクロウェーブ処理による特異的部位のアンマスキング後に免疫標識を行い、その後トリプシン中でインキュベートする。HMG-CoAレダクターゼに特異的なラビットポリクローナル抗体(Millipore, Upstate)、および蛍光染料に接合した二次抗体を使用して、免疫標識を実行する。
【0157】
結果:顕微鏡観察により、非処理コントロールに比較して、表皮の上層において、0.5%の実施例1による加水分解物により処理した皮膚において、より強い蛍光が示される。
【0158】
結論:実施例1による加水分解物は、表皮の上層においてHMG-CoAレダクターゼの発現を刺激する。
【0159】
実施例12:実施例2による加水分解物の存在下における正常ヒトケラチノサイト中のHMG-CoAレダクターゼの発現の研究
この研究の目的は、正常ヒトケラチノサイト中における、実施例2による加水分解物の、HMG-CoAレダクターゼの発現に対する影響を決定することである。
【0160】
プロトコール:培養物中の正常ヒトケラチノサイトを、0.5%の実施例2による加水分解物で24時間または48時間処理する(活性成分が存在する培地を、24時間ごとに交換する)。その後細胞を洗浄し、4°Cで4分間、冷メタノールで固定する。細胞を、HMG-CoAレダクターゼに特異的なラビットポリクローナル抗体(Millipore, Upstate) 、その後蛍光染料に接合した二次抗体の存在下でインキュベートする。その後細胞を、落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E600顕微鏡)により試験する。
【0161】
結果:顕微鏡観察により、0.5%の実施例2による加水分解物により処理した細胞において、より強い細胞質蛍光が示される。
【0162】
結論:0.5%の実施例2による加水分解物は、正常ヒトケラチノサイトにおいてHMG-CoAレダクターゼの発現を刺激する。
【0163】
実施例13:組成物の調製
1−日焼け止めクリーム
【表4】

【0164】
A相とB相の構成物を、別々に70°Cから 75°Cで加熱する。B相、撹拌しながらA相中にエマルション化する。撹拌を増大し、C相を45°Cで添加する。その後温度が40°Cより低いときにD相を添加する。強力に撹拌しながら、25°Cまで冷却を継続する。
【0165】
2−抗加齢クリーム:
【表5】

【0166】
65-70°CでA相を調製し融解させる。C相を65-70°Cに加熱する。B相を、B中にAをエマルション化する前にA相に添加する。およそ45°Cで、D相を添加することによりカルボマーを中和する。その後E相を、緩やかに撹拌しながら添加し、25°Cまで冷却を継続する。その後、所望によりF相を添加する。
【0167】
3−保護用デークリーム:
【表6】

【0168】
A相を調製し、撹拌しながら75°Cに加熱する。撹拌しながらカルボポール、その後キサンタンガムをを分散させてB相を調製する。75°Cに加熱する。
【0169】
その温度で、ローターステーターで撹拌しながら、B中にAをエマルション化する。迅速に撹拌しながら、C相で中和する。40°Cに冷却後、D相、その後F相を添加する。緩やかに撹拌しながら冷却を継続し、相Fを添加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮のバリア機能を強化することができる生物学的活性ペプチドに富むペプチド加水分解物であって、前記生物学的活性ペプチドが、少なくとも1個のグリシン残基、1個のロイシン残基、および1個のグルタミン酸残基を含む4個から6個のアミノ酸を含むことを特徴とするペプチド加水分解物。
【請求項2】
前記生物学的活性ペプチドが、一般式I
X1-[Gly, Glu, Leu]- X2-X3
[前記式中、
X1はアラニン、バリン、イソロイシンまたはアミノ酸なしであり、
X2はセリンまたはスレオニンであり、
X3はロイシン、イソロイシンまたはアミノ酸なしである]
のペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド加水分解物。
【請求項3】
前記生物学的活性ペプチドが、配列:
(配列番号1) Ala-Glu-Gly-Leu-Ser-Ile
(配列番号2) Leu-Gly-Glu-Ser-Leu
(配列番号3) Val-Gly-Glu-Leu-Thr
(配列番号4) Ile-Gly-Glu-Leu-Ser
(配列番号5) Ala-Gly-Glu-Leu-Ser
(配列番号6) Gly-Glu-Leu-Thr-Ile
(配列番号7) Gly-Glu-Leu-Ser
のペプチドであることを特徴とする、請求項2に記載のペプチド加水分解物。
【請求項4】
ヒトツブコムギ(トリチカム・モノコカム)、ジャガイモ(ソラナム・テュベロサム)、トウモロコシ(ズィー・マイズL.)、マメ(ピサム・サティバム)、またはダイズ(グリシン・マックスL.)の中から選択される植物の加水分解に由来することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のペプチド加水分解物。
【請求項5】
サッカロミセス属、特にサッカロミセス・セレビシエ種の酵母の加水分解に由来することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のペプチド加水分解物。
【請求項6】
0.5から5.5g/lの天然ペプチド化合物を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のペプチド加水分解物。
【請求項7】
生理学的に許容可能な媒体中に、表皮のバリア機能を強化することができる活性成分として、組成物の総重量に対して0.0001%から20%を占める量の、優先的には組成物の総重量に対して0.05%から5%を占める量の、請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチド加水分解物を含む、化粧品組成物。
【請求項8】
前記ペプチド加水分解物が、水、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化もしくはプロポキシル化ジグリコール、環状ポリオール、白色ワセリン、植物油またはこれらの溶媒のいずれかの混合物のような、1つ以上の生理学的に許容可能な溶媒中に可溶化されることを特徴とする、請求項7に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
局所適用に適する形態で存在することを特徴とする、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチド加水分解物の作用を促進する、少なくとも1つの他の活性成分もまた含むことを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
生理学的に許容可能な媒体中に、薬剤として、請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチド加水分解物を含む、医薬組成物。
【請求項12】
化粧品組成物中における、HMG-CoA-リダクターゼを活性化する活性成分としての、有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチド加水分解物の使用。
【請求項13】
表皮のバリア機能を強化し、表皮分化を刺激することを意図することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
加齢および光加齢の皮膚兆候を予防ならびにそれらに対処することを意図することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
外部ストレスから皮膚を保護することを意図することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
加齢および/または光加齢の皮膚顕在化を予防または処置することを意図する化粧品処置方法であって、有効量の請求項1から6のいずれか一項に記載のペプチド加水分解物を含む組成物が、処置される皮膚または皮膚付属物に局所適用されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524049(P2012−524049A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505195(P2012−505195)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000311
【国際公開番号】WO2010/119191
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511239100)アイエスピー・インヴェストメンツ・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】