バルブタイミング調整装置
【課題】 エンジン始動時におけるストッパピンの作動不良によるベーンロータのロック解除不良の発生を防止するバルブタイミング調整装置を提供する。
【解決手段】 バルブタイミング調整装置においてエンジン始動時ベーンロータの収容孔に収容されているストッパピンがハウジングの嵌合孔に嵌合することでハウジングとベーンロータとを拘束している。エンジン始動後、ECUは油圧制御弁に対して進角室及び遅角室に同じ圧力の作動油を供給する保持デューティ比を入力する(S106)。次に保持デューティ比が入力された時刻からクランクシャフトが720度回転するのに必要な時間が経過したか否かを判定する(S107)。当該時間において、ベーンロータに作用する進角油圧トルク、遅角油圧トルクおよびカムトルクの合成トルクの方向が遅角方向となるため、ストッパピンと嵌合孔とが接触しなくなる。
【解決手段】 バルブタイミング調整装置においてエンジン始動時ベーンロータの収容孔に収容されているストッパピンがハウジングの嵌合孔に嵌合することでハウジングとベーンロータとを拘束している。エンジン始動後、ECUは油圧制御弁に対して進角室及び遅角室に同じ圧力の作動油を供給する保持デューティ比を入力する(S106)。次に保持デューティ比が入力された時刻からクランクシャフトが720度回転するのに必要な時間が経過したか否かを判定する(S107)。当該時間において、ベーンロータに作用する進角油圧トルク、遅角油圧トルクおよびカムトルクの合成トルクの方向が遅角方向となるため、ストッパピンと嵌合孔とが接触しなくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブタイミング調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動軸としてのクランクシャフトから吸気弁および排気弁を開閉する従動軸としてのカムシャフトへ動力伝達部材としてのチェーンを介して駆動力を伝達し、吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置が公知である。バルブタイミング調整装置には、カムシャフトに接続されるベーンロータのベーンを正方向(遅角方向)と負方向(進角方向)に揺動するカムトルクが交互に作用している。このため、バルブタイミング調整装置は、ベーンに設けたストッパピンをハウジングの嵌合孔に嵌合することで、エンジン始動時等の低油圧時においてカムトルクにより正逆方向に揺動するベーンとハウジングとの打音を防止している。
【0003】
バルブタイミング調整装置では、エンジン始動時等の低油圧時から一定時間が経過した後にストッパピンによるベーンロータのロックを解除して、吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整する。ストッパピンによるベーンロータのロックを解除するとき、ストッパピンには油圧制御弁によって調整された油圧が作用することでストッパピンの嵌合が解除される。このとき、バルブタイミング調整装置の異常により、ストッパピンの嵌合が解除されないことによってベーンロータのロックが解除されないときがある。特許文献1には、油圧制御弁の弁体を往復移動することにより油圧制御弁が噛み込んだ異物を除去し、油圧制御弁の異常を解消する可変バルブタイミング制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−152888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の可変バルブタイミング制御装置では、油圧制御弁における異常を解消できるが、ストッパピンの作動不良によるバルブタイミング調整装置の異常は解消できない。
【0006】
本発明の目的は、エンジン始動時におけるストッパピンの作動不良によるベーンロータのロック解除不良の発生を防止するバルブタイミング調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明によると、内燃機関の吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置は、ハウジングおよびベーンロータ等を備える。ハウジングは、内燃機関の駆動軸、または吸気弁および排気弁の少なくとも一方を開閉する従動軸のいずれか一方とともに回転する。ベーンロータは、ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、ハウジングに対して相対回動が可能である。ハウジング内部の遅角室および進角室には作動油が供給され、これによりベーンロータの位相を変更する。作動油は圧力発生手段において発生する。圧力発生手段が発生する油圧は制御手段により制御される。ハウジングに対するベーンロータの相対回動を拘束する規制部材は、ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合する。また、従動軸の回転角度は従動軸角度検出手段が検出する。
【0008】
請求項1に記載のバルブタイミング調整装置は、制御手段により保持デューティ比を圧力発生手段に入力する時刻である第1時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第1判定手段を備える。ここで、保持デューティ比とは、進角室内の作動油の圧力と遅角室内の作動油の圧力とを同じにするように圧力発生手段を作動させるデューティ比である。バルブタイミング調整装置は、第1判定手段により第1時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0009】
バルブタイミング調整装置では、ハウジングに対するベーンロータの相対回動の拘束を解除するとき、ハウジング内に形成されている進角室および遅角室に同じ圧力の作動油を供給する。さらに、制御手段は、所定時間の間、圧力発生手段に対して保持デューティ比を保持する。当該所定時間では、カムトルクによるベーンロータへの作用方向は遅角方向である正方向、または進角方向である負方向に周期的に変化する。このとき、ベーンロータには、進角室の油圧により作用する進角油圧トルク、および遅角室の油圧により作用する遅角油圧トルクが作用している。すなわち、ベーンロータには、進角油圧トルク、遅角油圧トルクおよびカムトルクの3つのトルクが作用している。この3つのトルクの合成方向が正方向である場合、ベーンロータの収容孔に収容されている規制部材は嵌合孔の内壁面と接触していないため、嵌合を解除しやすい。したがって、規制部材の作動不良によるベーンロータのロック解除不良の発生を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置における所定時間は、制御手段が圧力発生手段に対して保持デューティ比を入力した時刻である第1時刻から駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長い時間である。駆動軸が2回転、すなわち720度回転することにより、従動軸は1回転、すなわち360度回転する。従動軸が1回転する間に、進角油圧トルク、遅角油圧トルクおよびカムトルクの合成トルクが正方向となる時間が存在する。そこで、バルブタイミング調整装置では、保持デューティ比を最初に入力した時刻から駆動軸が720度回転する時刻までの時間の間、保持デューティ比を維持することでベーンロータのロックを解除することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は制御手段が遅角室内の作動油の圧力に比べて進角室内の作動油の圧力が高くなる進角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する時刻である第2時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第2判定手段と、第2判定手段により第2時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第3判定手段を備えている。
【0012】
請求項3に記載のバルブタイミング調整装置では、第3判定手段によりベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる油圧を進角室または遅角室に供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
バルブタイミング調整装置では、ハウジングに対するベーンロータの相対回動の拘束を解除するとき、ハウジング内に形成されている進角室および遅角室に作動油を供給する。このとき、制御手段は、圧力発生手段に対して遅角油圧に比べて進角油圧が高くなるように作動油を供給する進角補正保持デューティ比を入力する。これにより、規制部材は前述の保持デューティ比が入力された場合に比べて進角方向に移動する。さらに、第2判定手段により第2時刻から所定時間が経過していないと判定するとき、ベーンロータの位相を第3判定手段において判定する。第3判定手段により、ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置から変化していると判定するとき、制御手段はベーンロータのロックが解除されているとし、ベーンロータを目標位相に進角または遅角させる。これにより、バルブタイミング調整装置は、所定時間が経過する前にベーンロータの進角または遅角させることができる。
請求項4に記載のバルブタイミング調整装置は、上記請求項2に記載のバルブタイミング装置と同様である。
【0013】
請求項5に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は従動軸角度検出手段により検出される従動軸の角度からカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第4判定手段を備えている。
バルブタイミング調整装置の制御手段は、第4判定手段によりカムトルクの作用方向が進角方向であると判定するとき、制御手段は進角室内の油圧に比べて遅角室内の油圧が高くなる遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。また、第4判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定するとき、制御手段は進角室内の油圧と遅角室内の油圧とを同じにする保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0014】
請求項5に記載のバルブタイミング調整装置では、カムトルクの作用方向によって圧力発生手段に入力されるデューティ比を変更する。カムトルクの作用方向が進角方向であると判定するとき、制御手段は遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。カムトルクの作用方向が進角方向である場合、ベーンロータには位相を進角方向に変化させるトルクが作用する。このとき、制御手段は遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。これにより、進角室内の油圧に比べて遅角室内の油圧が高くなるため、ベーンロータは最遅角位置付近に留まる。これにより、規制部材の嵌合が解除されていてもベーンロータは進角しない。したがって、ベーンロータのロックが解除された状態でのベーンロータの予期せぬ動きを防止し、ベーンロータの回転による異音の発生を防止することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は、制御手段により保持デューティ比、または遅角補正保持デューティ比が圧力発生手段に最初に入力される時刻である第3時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第5判定手段を備えている。
第5判定手段により第3時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。これにより、カムトルク、進角油圧トルクおよび遅角油圧トルクの合力の方向が正となるタイミングでベーンロータのロックを解除できる。
請求項7に記載のバルブタイミング調整装置は、上記請求項2および4に記載のバルブタイミング装置と同様である。
【0016】
請求項8に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段、駆動軸角度検出手段により検出される内燃機関の回転数が低回転か否かを判定する第6判定手段、および従動軸角度検出手段により検出される従動軸の角度から前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方の開閉によって従動軸に作用するカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第7判定手段を備える。
第6判定手段により内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ第7判定手段によりカムトルクの作用方向が進角室の方向であると判定したとき、制御手段は進角室内の油圧に比べて遅角室内の油圧が高くなる遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。一方、第6判定手段により内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ第7判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定したとき、制御手段は進角室内の油圧と遅角室内の油圧とを同じにする保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0017】
請求項8に記載のバルブタイミング調整装置では、駆動軸角度検出手段により検出される内燃機関の回転数からベーンロータのロック解除手順を使い分ける。内燃機関の回転数が低い場合、カムトルクの作用方向に応じて前述の遅角補正保持デューティ比または保持デューティ比のいずれか一方を圧力発生手段に入力する。これにより、所定時間内でのベーンロータの回転による異音の発生を防止する。一方、内燃機関の回転数が高い場合、前述の進角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。これにより、所定時間が経過する前にベーンロータの進角を開始する。すなわち、請求項8に記載のバルブタイミング調整装置では、内燃機関の回転数が低回転では静音性を重視したベーンロータのロック解除を行い、高回転ではベーンの位相変化において応答性を重視したベーンロータのロック解除を行う。
【0018】
請求項9に記載のバルブタイミング調整装置では、制御手段により保持デューティ比、または遅角補正保持デューティ比が最初に圧力発生手段に入力される時刻である第4時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第8判定手段を備える。第8判定手段により第4時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
請求項10に記載のバルブタイミング調整装置では、第6判定手段により内燃機関の回転数が高回転であると判定したとき、制御手段は遅角室内の油圧に比べて進角室内の油圧が高くなる進角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0019】
請求項11に記載のバルブタイミング調整装置では、制御手段により進角補正保持デューティ比が最初に圧力発生手段に入力される時刻である第5時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第9判定手段を備える。第9判定手段により第5時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
請求項12に記載のバルブタイミング調整装置では、第9判定手段により第5時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第10判定手段を備える。第10判定手段によりベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる油圧を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
請求項13に記載のバルブタイミング調整装置は、上記請求項2、4および7に記載のバルブタイミング装置と同様である。
【0020】
請求項14に記載の発明によると、制御手段は、制御手段が圧力発生手段に所定の圧力値を発生させるデューティ比を入力する入力時刻から圧力発生手段が発生する作動油の圧力が所定の圧力値となる時刻までの時間を圧力発生手段が発生する作動油の圧力を所定の圧力値に制御する時刻から遡って、デューティ比を入力する。
圧力発生手段では、制御手段からの所定の圧力を発生するデューティ比が入力された場合、当該所定の圧力を発生するまでに時間がかかる。そこで、制御手段は、所定のデューティ比が圧力発生手段に入力される入力時刻から圧力発生手段において所定の圧力が発生する圧力発生時刻までの時間を事前に算出する。制御手段は、所定の圧力を発生するデューティ比を入力する時刻から遡って所定のデューティ比を入力する。これにより、前述したカムトルクの作用方向が正方向となる時刻と圧力発生手段が所定の圧力を発生する時刻とにずれが発生しなくなるため、ベーンロータのロック解除を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を使った内燃機関の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置の断面図である。
【図3】図2のIII−III線の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置における(a)エンジン回転数と油温との関係を示す図、(b)ベーン、ストッパピンおよび嵌合孔の関係を示す図、である。
【図6】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を説明する図であって、(a)カムトルクの時間変化、(b)デューティ比の時間変化、(c)油圧トルクの時間変化、(d)ストッパピンの嵌合深さの時間変化、(e)ベーンロータの位相の時間変化、である。
【図7】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置における(a)ベーン、ストッパピンおよび嵌合孔の関係を示す図、(b)合成トルクの時間変化を示す図、である。
【図8】本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置を説明する図であって、(a)カムトルクの時間変化、(b)デューティ比の時間変化、(c)油圧トルクの時間変化、(d)ストッパピンの嵌合深さの時間変化、(e)ベーンロータの位相の時間変化、である。
【図10】本発明の第3実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態によるバルブタイミング調整装置を説明する図であって、(a)カムトルクの時間変化、(b)デューティ比の時間変化、(c)油圧トルクの時間変化、(d)ストッパピンの嵌合深さの時間変化、(e)ベーンロータの位相の時間変化、である。
【図12】本発明の第4実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態によるバルブタイミング調整装置におけるエンジン回転数と油温との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態のバルブタイミング調整装置について図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を図1から図7に示す。本実施形態のバルブタイミング調整装置は、作動流体として作動油を用いる油圧制御式である。
第1実施形態のバルブタイミング調整装置が設けられる駆動力伝達系では、図1に示すように、エンジン1の「駆動軸」としてのクランクシャフト2に固定されるギア3と、「従動軸」としてのカムシャフト4、5に固定されるギア6、191にチェーン7が巻き掛けられ、クランクシャフト2からカムシャフト4、5に駆動力が伝達される。一方のカムシャフト4はカム機構を経由して吸気弁8を開閉駆動し、他方のカムシャフト5はカム機構を経由して排気弁9を開閉駆動する。第1実施形態のバルブタイミング調整装置10は、ギア191をチェーン7に、ベーンロータをカムシャフト4に接続して、吸気弁8の開閉タイミングを調整する。カムシャフト4にはカムシャフト4の回転角度を検出するカム角センサ4aが取り付けられている。また、クランクシャフト2にはクランクシャフト2の回転角度を検出するクランク角センサ2aが取り付けられている。
【0023】
図2および図3に示すように、バルブタイミング調整装置10は、ハウジング11、ベーンロータ20、および「規制部材」としてのストッパピン30等を備えている。
ハウジング11は、環状の周壁12および仕切り部材としてのシュウ13、14、15、16から一体に形成されたシュウハウジング17、フロントプレート18、並びにスプロケット19等から構成されている。略台形に形成されたシュウ13、14、15、16は、周壁12から径方向内側へ延びており、周壁12の周方向に略等間隔に設けられている。周方向に隣接するシュウ同士の間隙には略扇状の圧力室50が形成されている。
【0024】
スプロケット19は、径外側にギア191を備え、周壁12の回転軸方向の一方に設けられている。スプロケット19は、軸方向にカムシャフト4を通す軸孔192を有している。
フロントプレート18は、略円盤状に形成され、周壁12の回転軸方向の他方に設けられている。フロントプレート18は、円盤の中心に板厚方向に通じる円孔181を有している。
シュウハウジング17、フロントプレート18およびスプロケット19は、ボルト111によって同軸上に固定されている。
【0025】
ベーンロータ20は、ハウジング11と略同軸に設けられ、ハウジング11の内側に相対回転可能に収容されている。ベーンロータ20は、略円筒状のロータ21、およびこのロータ21から径外方向に突出する4個のベーン22、23、24、25を有している。
ベーンロータ20とカムシャフト4とはボルト26によって固定されている。ベーンロータ20とカムシャフト4とは、ノックピン27によって周方向の位置決めがされている。これにより、ベーンロータ20は、カムシャフト4とともに回転する。
各ベーン22、23、24、25は、各圧力室50を、それぞれ遅角室51、52、53、54と進角室55、56、57、58とに仕切っている。
【0026】
遅角室51、52、53、54に油圧を供給する遅角通路61、62は、ベーンロータ20のロータ21に形成されている。進角室55、56、57、58に油圧を供給する進角通路63、64は、ロータ21のスプロケット19側の外壁に形成されている。遅角通路61、62および進角通路63、64は、それぞれカムシャフト4に形成された遅角通路65および進角通路66に連通している。
【0027】
シール部材28、29は、例えば樹脂で形成され、各ベーン22、23、24、25の径外方向の外壁と、各シュウ13、14、15、16の径内方向の内壁とに嵌合している。各ベーン22、23、24、25の径外方向の外壁に嵌合するシール部材28は、板ばね281の弾性力により周壁12に押し付けられている。各シュウ13、14、15、16の径内方向の内壁に嵌合するシール部材29は、板ばね291の弾性力によりロータ21に押し付けられている。このため、シール部材28、29は、遅角室51、52、53、54と進角室55、56、57、58との間の作動油の漏れを抑制している。
【0028】
ストッパピン30は、有底円筒状に形成されベーン22を回転軸方向に通じる収容孔221に軸方向に往復移動可能に収容されている。
図3に示すように、スプロケット19にはベーンロータ20が最遅角位置に位相制御されている状態でストッパピン30に対応する位置に嵌合孔31が形成されている。この嵌合孔31にブッシュ32が設けられている。ストッパピン30は、一方の端部にブッシュ32の径内側に嵌合する嵌合部33を有している。
ストッパピン30の他方の端部には、嵌合孔31側に凹む凹部34が設けられている。この凹部34には、付勢部材としてのコイルスプリング35が収容されている。コイルスプリング35は、一端が凹部34の内壁に当接し、他端がフロントプレート18の内壁に当接する圧縮コイルスプリングであり、ストッパピン30をスプロケット19側へ付勢している。
【0029】
次に、バルブタイミング調整装置10の作動を説明する。
<エンジン始動時>
エンジン1が停止している状態では、図3に示すようにストッパピン30は嵌合孔31のブッシュ32に嵌合している。エンジン1を始動した直後の状態では、遅角室51、52、53、54及び進角室55、56、57、588に油圧ポンプ90から十分に作動油が供給されない。このため、ストッパピン30はブッシュ32に嵌合した状態を維持し、クランク軸2に対しカムシャフト4は最遅角位置に保持されている。
【0030】
<エンジン始動後>
エンジン始動後、図4に示すような手順に従ってベーンロータ20のロックを解除する。
最初のステップ(以下、「ステップ」を省略し、単に記号Sで示す)101において、バルブタイミング調整装置10を搭載する車両の運転条件を検出する。具体的には、エンジン1の回転数、エンジン1が出力するトルクの大きさ、エンジン1を冷却するラジエータの水温などである。これらの運転条件は、各種センサによって検出され、電子制御装置(以下、「ECU」という)91に入力される。ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第1判定手段」に相当する。
【0031】
次にS102において、ECU91はベーンロータ20の目標位相を算出する。このとき、ECU901は、S101で検出した運転条件を基にエンジン始動後のベーンロータ20の最適な位相を目標位相として算出する。
次にS103において、S102で算出したベーンロータ20の目標位相を実現するために「圧力発生手段」としての油圧制御弁92に入力される目標デューティ比を算出する。
【0032】
次にS104において、ストッパピン30がブッシュ32に嵌合しているか否かを判定する。ストッパピン30がブッシュ32に嵌合している場合、ベーンロータ20はハウジング11に対して最遅角に位置している。S104ではカムシャフト4に設置されているカム角センサ4aによって、ベーンロータ20のハウジング11に対する相対位相を検出する。これにより、ストッパピン30がブッシュ32に嵌合しているか否かを判断することができる。ストッパピン30がブッシュ32に嵌合していると判定する場合、S105に移行する。ストッパピン30がブッシュ32に嵌合していないと判定する場合、S108に移行する。
【0033】
次にS105において、ベーンロータ20のロックを解除する条件を満たしているか否かを判定する。ここで、図5を用いてベーンロータ20のロックを解除する条件について説明する。
図5(a)にエンジン1の回転数と油圧制御弁92の油温との関係から導かれるベーンロータ20のロック解除を制御する領域(以下、「ロック解除制御実施領域」とする)を示す。また、図5(b)には、ストッパピン30を収容するベーンロータ20に対して作用する力の関係を示す。図5(b)に示すように、ベーンロータ20には、吸気弁8の開閉によって発生するカムトルクTc、遅角室51、52、53、54に供給される作動油の圧力によって発生する遅角油圧トルクTrtd、および進角室55、56、57、58に供給される作動油の圧力によって発生する進角油圧トルクTadv、が作用する。このとき、遅角油圧トルクTrtdは遅角方向、すなわち図5(b)において左方向に作用する。また進角油圧トルクTadvは進角方向、すなわち図5(b)において右方向に作用する。また、カムトルクTcは、吸気弁8の作動状態によって進角方向、遅角方向いずれの方向にも作用する。
【0034】
ベーンロータ20のロックを解除するとき、作動油が進角室55、56、57、58に供給される。このとき、エンジン1の回転数が高いと油圧制御弁92に作動油を吐出するポンプ90の駆動力は大きくなるため、進角室55、56、57、58に供給される作動油の圧力は高くなる。これにより、進角油圧トルクTadvが大きくなる。進角油圧トルクTadvが大きくなると、ストッパピン30の側壁331がブッシュ32の内壁面321に当接するため、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しにくくなる。すなわち、ベーンロータ20のロックは解除しにくくなる。また、作動油の温度である油温が低いと作動油の粘度が高くなるため、油圧が高くなる。これによっても進角油圧トルクTadvは大きくなるため、ベーンロータ20のロックは解除しにくくなる。したがって、エンジン1の回転数が高い領域または油温が低い領域において、ベーンロータ20のロックを解除しにくい領域が存在する。したがって、図5(a)に示すようにエンジン1の回転数と油圧制御弁92の油温との関係においてベーンロータ20のロックを解除しにくい領域としてロック解除制御実施領域を設定する。
S105において、エンジン1の回転数と油圧ポンプ90における作動油の油温との関係がロック解除制御実施領域にある場合、S106に移行する。エンジン1の回転数と油圧ポンプ90における作動油の油温との関係がロック解除制御実施領域にない場合、S108に移行する。
【0035】
次にS106において、保持デューティ比D1が油圧制御弁92に入力される。保持デューティ比D1とは、図6(c)に示すように進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが0より大きい一定の値で同じになるように油圧制御弁92に入力されるデューティ比である。ECU91は、「第1時刻」としての時刻t1において保持デューティ比D1を油圧制御弁92に入力する。これにより、油圧制御弁92は作動油を供給し、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとは時刻t2において0より大きい同じ大きさのトルクとなる。このとき、ECU91は、エンジン1の回転数と作動油の油温から油圧を算出することで、進角油圧トルクTadvおよび遅角油圧トルクTrtdを算出する。また、ECU91は前回のバルブタイミング調整時にベーンロータ20の位相を保持したときに学習した値を保持デューティ比D1として記憶しておいてもよい。
【0036】
次にS107において、油圧制御弁92に保持デューティ比D1を入力した時刻t1から所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間として、図6(a)に示すようにクランクシャフト2の2回転、すなわち720度がカムシャフト4の1回転、すなわち360度に相当することから、クランクシャフト2が720度回転するのに要する時間以上とする。時刻t1から所定時間が経過していると判定した場合、S108に移行する。時刻t1から所定時間が経過していないと判定した場合、S106に戻り保持デューティ比D1が維持される。
【0037】
次にS108において、油圧制御弁92に目標デューティ比を入力する。具体的には図6(b)に示すように時刻t3において、ECU91は油圧制御弁92に目標デューティ比を入力する。これにより、時刻t4において進角油圧トルクTadvは大きくなり、遅角油圧トルクTrtdは小さくなる。バルブタイミング調整装置10では、時刻t3より前に嵌合孔31に供給された油圧により、図6(d)に示すように時刻t5においてストッパピン30の嵌合は解除されている。時刻t4においてストッパピン30の嵌合は解除されているので、図6(e)に示すようにベーンロータ20は進角する。これにより、ベーンロータ20とハウジング11とが相対回動可能となる。その後、遅角室51、52、53、54及び進角室55、56、57、58の油圧を制御することにより、クランク軸2に対するカムシャフト4の位相差が調整可能となる。
【0038】
<進角作動時>
バルブタイミング調整装置10を進角制御するとき、ECU91は、油圧制御弁92に供給する駆動電流を制御する。油圧制御弁92は、油圧ポンプ90と進角通路93とを接続し、遅角通路94とオイルパン95とを接続する。油圧ポンプ90が吐出する作動油は、進角通路93、66、63、64を経由し、進角室55、56、57、58に供給される。一方、遅角室51、52、53、54の作動油は、遅角通路61、62、65、94を経由し、オイルパン95に排出される。進角室55、56、57、58の油圧はベーン22、23、24、25に作用し、ベーンロータ20を進角方向に付勢するトルクを発生する。これにより、ベーンロータ20は、ハウジング11に対し進角方向に回転する。
【0039】
<遅角作動時>
バルブタイミング調整装置10を遅角制御するとき、ECU91は、油圧制御弁92に供給する駆動電流を制御する。油圧制御弁92は、油圧ポンプ90と遅角通路94とを接続し、進角通路93とオイルパン95とを接続する。油圧ポンプ90から吐出される作動油は、遅角通路94、65、61、62を経由し、遅角室51、52、53、54に供給される。一方、進角室55、56、57、58の作動油は進角通路63、64、66、93を経由し、オイルパン95に排出される。遅角室51、52、53、54の油圧がベーン22、23、24、25に作用し、ベーンロータ20を遅角方向に付勢するトルクを発生する。これにより、ベーンロータ20は、ハウジング11に対して遅角方向に回転する。
【0040】
<中間保持作動時>
ベーンロータ20が目標位相に到達すると、ECU91は油圧制御弁92に供給する駆動電流のデューティ比を制御する。油圧制御弁92は、油圧ポンプ90と、遅角通路94および進角通路93との接続を遮断し、遅角室51、52、53、54および進角室55、56、57、58からオイルパン95に作動油が排出されることを規制する。このため、ベーンロータ20は目標位相に保持される。
なお、進角作動時、遅角作動時及び中間保持作動時では、油圧ポンプ90からバルブタイミング調整装置10の遅角側圧力室37及び進角側圧力室38に供給される油圧は遅角解除圧及び進角解除圧よりも高いので、ストッパピン30と嵌合孔31との嵌合は解除されている。
【0041】
<エンジン停止時作動>
バルブタイミング調整装置10の作動中にエンジン停止が指示されると、上記遅角作動時と同じように、ベーンロータ20はハウジング11に対して遅角方向に回転し、ロック位相である最遅角位置に位相制御される。また、エンジン停止指示後、エンジンの回転低下に伴って、バルブタイミング調整装置10に供給される油圧は次第に低くなり、ストッパピン30に印加される遅角側圧力室37及び進角側圧力室38の圧力も低下する。
【0042】
(効果)
次に第1実施形態でのバルブタイミング調整装置10の効果について説明する。
(A)バルブタイミング調整装置10では、ベーンロータ20を目標位相に変更する前に、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが同じになるように保持する。前述したように、ストッパピン30を収容するベーンロータ20に対しては、カムトルクTc、遅角油圧Trtd、および進角油圧Tadvが作用している。これら3つの力の大きさより、ベーンロータ20のハウジング11に対する相対位置が変化する。図7に、カムトルクTc、遅角油圧トルクTrtd、および進角油圧トルクTadvがベーンロータ20に作用した場合のベーンロータ20のハウジング11に対する相対位置の変化を示す。図7(b)の横軸は、カムトルクTc、遅角油圧トルクTrtd、および進角油圧トルクTadvの総和である合成トルクTの大きさと方向を示している。ここで、合成トルクTが遅角方向に向いているときを正、進角方向に向いているときを負とする。合成トルクTが正である場合、ストッパピン30の中心軸30aはブッシュ32の中心軸32aに対して遅角方向にずれる。これにより、側壁331と内壁面321とは当接しないため、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しやすい。一方、合成トルクTが負である場合、ストッパピン30の中心軸30aは図7(a)に示すようにブッシュ32の中心軸32aに対して進角方向にずれる。このとき、側壁331と内壁面321とは当接するため、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しにくい。
【0043】
ここで、油圧制御弁92に遅角油圧トルクTrtdと進角油圧トルクTadvとが同じになる保持デューティ比D1が入力されると、カムトルクTcの変動によって合成トルクTが正となる時間が発生する。前述したように、合成トルクTが正となる場合、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しやすくなる。保持デューティ比D1が入力されている油圧制御弁92は、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが同じになるように保持する(図6(c)参照)。このとき、図6(a)に示すようにカムトルクTcの作用方向は吸気弁8の作動状態によって正または負を周期的に変化している。したがって、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが同じになるように保持されている場合であって、かつカムトルクTcが正となるとき、ストッパピン30とブッシュ32とは嵌合を解除しやすくなる。このとき、ストッパピン30に油圧が作用することにより、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合が解除される。これにより、エンジン始動時におけるストッパピン30の作動不良によるベーンロータ20のロック解除不良の発生を防止することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図8および図9に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、ベーンロータのロックを解除する手順が一部異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図8に第2実施形態におけるバルブタイミング調整装置でのベーンロータ20のロック解除の手順を示す。図8に示すように、S105でのYes判定の次にS206において、ECU91は油圧制御弁92に進角補正保持デューティ比D2を入力する。ここで、進角補正保持デューティ比D2とは、前述の保持デューティ比D1に比べてベーンロータ20が進角方向に位相を保持することができるデューティ比である。具体的には、図9(c)に示すように、進角補正保持デューティ比D2が入力されることにより、進角油圧トルクTadvが遅角油圧トルクTrtdより高い値となる。なお、進角補正保持デューティ比D2が入力されているとき、ストッパピン30の側壁331とブッシュ32の内壁面321とは当接していない。ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第2判定手段」、および「第3判定手段」に相当する。
【0046】
次にS207において、圧力制御弁92に進角補正保持デューティ比D2が入力された時刻t6から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間として、クランクシャフト2の2回転がカムシャフト4の1回転に相当することから、クランクシャフト2が720度回転するのに要する時間以上とする。時刻t6から所定時間が経過している場合、S108に移行する。時刻t6から所定時間が経過していない場合、S208に移行する。時刻t6は、特許請求の範囲に記載の「第2時刻」に相当する。
【0047】
次にS208において、ベーンロータ20が進角しているか否かを判定する。第2実施形態のバルブタイミング調整装置では、時刻t6から所定時間が経過する前の時刻t7においてストッパピン30の嵌合が解除されている場合、図9(e)に示すようにベーンロータ20は進角する。ベーンロータ20の位相が変化していることは、カム角センサ4aにより検出されたカム角に基づいて判定することができる。これにより、ストッパピン30が嵌合しているか否かを判定することができる。ベーンロータ20が進角していると判定されたとき、S108に移行する。ベーンロータ20が進角していないと判定されたとき、S206に戻り、進角補正保持デューティ比D2が再度入力される。
【0048】
第2実施形態のバルブタイミング調整装置では、ストッパピン30の側壁33とブッシュ32の内壁面321とが当接しない程度にベーンロータ20を進角させる進角補正保持デューティ比D2を入力する。進角補正保持デューティ比D2が入力された場合、ストッパピン30の嵌合が解除されるとベーンロータ20は進角する。これにより、進角補正保持デューティ比D2を入力した時刻t7において所定時間が経過する前にベーンロータ20は進角する。したがって、第1実施形態の効果(A)に加えて、所定時間の経過後に進角する第1実施形態に比べてベーンロータ20を早く進角することができる。ベーンロータ20の進角を早めることで、ベーンロータ20の目標位相に早く到達することができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図10および図11に基づいて説明する。第3実施形態は、第1実施形態に対して、ベーンロータのロックを解除する手順が一部異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、S105でのYes判定の次にS306において、ECU91は油圧制御弁92での油圧の立ち上がり遅れを算出する。油圧制御弁92では、ECU91からの所定の圧力を発生するデューティ比の入力に対して所定の圧力を発生するまでに時間を要する。S306では、ECU91で所定の圧力を発生するデューティ比を入力する時刻である入力時刻から実際に油圧制御弁92で指令された油圧が発生する時刻である圧力発生時刻までの時間を算出する。ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第4判定手段」、および「第5判定手段」に相当する。
【0051】
次にS307において、ベーンロータ20にかかるカムトルクの作用方向が負であるか否かを判定する。前述したようにカムトルクの作用方向は吸気弁8の作動状態によって周期的に正または負となる。ここでは、カム角センサ4aで検出したカム角よりカムトルクの作用方向が負であるか否かを判定する。カムトルクの作用方向が負であると判定されたとき、S308に移行する。カムトルクの作用方向が正であると判定されたとき、S106に移行する。
【0052】
次にS308において、ECU91は油圧制御弁92に対して遅角補正保持デューティ比D3を入力する。遅角補正保持デューティ比D3とは、前述の保持デューティ比に比べてベーンロータ20が遅角方向に位相を保持するデューティ比である。具体的には、図11(c)に示すように、遅角補正保持デューティ比D3が入力されることにより、遅角油圧トルクTrtdが進角油圧トルクTadvより高い値となる。これにより、ベーンロータ20はカムトルクの作用方向が負の場合にのみ、遅角方向に位相を変更する。
【0053】
次にS309において、S106での保持デューティ比D1、またはS308での遅角補正保持デューティ比D3のいずれかが最初に油圧制御弁92に入力された時刻t8から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間として、クランクシャフト2の2回転がカムシャフト4の1回転に相当することから、クランクシャフト2が720度回転するのに要する時間以上とする。時刻t8から所定時間が経過している場合、S108に移行する。時刻t8から所定時間が経過していない場合、S306に戻り油圧の立ち上がり遅れを算出する。時刻t8は、特許請求の範囲に記載の「第3時刻」に相当する。
【0054】
第3実施形態のバルブタイミング調整装置では、ベーンロータ20に作用するカムトルクの作用方向が負であるとき、ECU91は油圧制御弁92にベーンロータ20の位相を遅角方向に変更する遅角補正保持デューティ比D3を入力する。遅角補正保持デューティ比D3が入力されると、進角油圧トルクTrtdに対して遅角油圧トルクTadvが大きくなる。これにより、カムトルクが負方向に作用してベーンロータ20の位相を進角方向に変化することを防止する。これにより、時刻t8から所定時間が経過するまでの間にベーンロータ20のロックが解除された場合でのベーンロータ20の予期せぬ動きを防止する。したがって、第1実施形態の効果(A)に加えて、ベーンロータ20による異音の発生を防止することができる。
【0055】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図12および図13に基づいて説明する。第4実施形態は、第2実施形態および第3実施形態に対して、ベーンロータのロックを解除する手順が一部異なる。なお、第2実施形態および第3実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図12に示すようにS105でのYes判定の次にS406において、エンジン1の回転数が低回転であるか否かを判定する。エンジン1の回転数が低回転であると判定するとき、S306に移行する。エンジン1の回転数が低回転でないと判定するとき、S206に移行する。このとき、ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第6判定手段」、「第7判定手段」、「第8判定手段」、「第9判定手段」および「第10判定手段」に相当する。
【0057】
第4実施形態のバルブタイミング調整装置10では、エンジン1の回転数に合わせてベーンロータ20のロック解除の手順を使い分ける。図13にエンジン1の回転数と油温との関係から示されるロック解除制御実施領域を示す。ロック解除制御実施領域において、エンジン1の回転数が低い領域では第3実施形態におけるバルブタイミング調整装置10での手順でベーンロータ20のロックを解除する。第3実施形態におけるベーンロータ20のロック解除手順では、カムトルクの作用によるベーンロータ20での異音発生を防止することができる。すなわち、エンジン1の回転数が低い領域では異音が発生しない静音性を重視した手順でベーンロータ20のロックを解除する。一方、エンジン1の回転数が高い領域では第2実施形態のバルブタイミング調整装置10における手順でベーンロータ20のロックを解除する。第2実施形態におけるベーンロータ20のロック解除手順では、進角補正保持デューティ比D2が入力されてから所定時間が経過する前にストッパピン30の嵌合が解除されている場合、ベーンロータ20は進角を開始する。すなわち、エンジン1の回転数が高い領域では早くベーンロータ20の進角を開始することができる。これにより、エンジン1の回転数にあわせた最適な手順でベーンロータ20のロックを解除することができる。
【0058】
(他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、バルブタイミング調整装置は吸気弁に適用するとした。しかしながら、本発明のバルブタイミング調整装置を適用する弁はこれに限定されない。排気弁に適用してもよいし、吸気弁および排気弁の両方に同時に適用してもよい。本発明のバルブタイミング調整装置を排気弁に適用したとき、ストッパピンがブッシュに嵌合しているか否かを判定する場合、ベーンロータが最進角の位置にあるか否かで判定する。また、最遅角でも最進角でもない中間位置にあるか否かで判定してもよい。
【0059】
(イ)上述の第3実施形態では、遅角補正保持デューティ比が入力されると図11に示すように変化しない進角油圧トルクに対して遅角油圧トルクが大きくなるとした。しかしながら、トルクの変化の関係はこれに限定されない。遅角油圧トルクは変化しないが進角油圧トルクが小さくなってもよいし、また遅角油圧トルクが大きくなり、かつ進角油圧トルクが小さくなってもよい。
【0060】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ・・・エンジン(内燃機関)、
2 ・・・クランクシャフト(駆動軸)、
2a ・・・クランク角センサ(駆動軸角度検出手段)、
4、5 ・・・カムシャフト(従動軸)、
4a ・・・カム角センサ(従動軸角度検出手段)、
8 ・・・吸気弁、
9 ・・・排気弁、
10 ・・・バルブタイミング調整装置、
11 ・・・ハウジング、
20 ・・・ベーンロータ、
221 ・・・収容孔、
30 ・・・ストッパピン(規制部材)、
31 ・・・嵌合孔、
51、52、53、54・・・遅角室、
55、56、57、58・・・進角室、
92 ・・・油圧制御弁(圧力発生手段)、
91 ・・・ECU(制御手段、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、第5判定手段、第6判定手段、第7判定手段、第8判定手段、第9判定手段、第10判定手段)、
D1 ・・・保持デューティ比、
D2 ・・・進角補正保持デューティ比、
D3 ・・・遅角補正保持デューティ比、
t1 ・・・時刻(第1時刻)、
t6 ・・・時刻(第2時刻)、
t8 ・・・時刻(第3時刻)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブタイミング調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動軸としてのクランクシャフトから吸気弁および排気弁を開閉する従動軸としてのカムシャフトへ動力伝達部材としてのチェーンを介して駆動力を伝達し、吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置が公知である。バルブタイミング調整装置には、カムシャフトに接続されるベーンロータのベーンを正方向(遅角方向)と負方向(進角方向)に揺動するカムトルクが交互に作用している。このため、バルブタイミング調整装置は、ベーンに設けたストッパピンをハウジングの嵌合孔に嵌合することで、エンジン始動時等の低油圧時においてカムトルクにより正逆方向に揺動するベーンとハウジングとの打音を防止している。
【0003】
バルブタイミング調整装置では、エンジン始動時等の低油圧時から一定時間が経過した後にストッパピンによるベーンロータのロックを解除して、吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整する。ストッパピンによるベーンロータのロックを解除するとき、ストッパピンには油圧制御弁によって調整された油圧が作用することでストッパピンの嵌合が解除される。このとき、バルブタイミング調整装置の異常により、ストッパピンの嵌合が解除されないことによってベーンロータのロックが解除されないときがある。特許文献1には、油圧制御弁の弁体を往復移動することにより油圧制御弁が噛み込んだ異物を除去し、油圧制御弁の異常を解消する可変バルブタイミング制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−152888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の可変バルブタイミング制御装置では、油圧制御弁における異常を解消できるが、ストッパピンの作動不良によるバルブタイミング調整装置の異常は解消できない。
【0006】
本発明の目的は、エンジン始動時におけるストッパピンの作動不良によるベーンロータのロック解除不良の発生を防止するバルブタイミング調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明によると、内燃機関の吸気弁および排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置は、ハウジングおよびベーンロータ等を備える。ハウジングは、内燃機関の駆動軸、または吸気弁および排気弁の少なくとも一方を開閉する従動軸のいずれか一方とともに回転する。ベーンロータは、ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、ハウジングに対して相対回動が可能である。ハウジング内部の遅角室および進角室には作動油が供給され、これによりベーンロータの位相を変更する。作動油は圧力発生手段において発生する。圧力発生手段が発生する油圧は制御手段により制御される。ハウジングに対するベーンロータの相対回動を拘束する規制部材は、ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合する。また、従動軸の回転角度は従動軸角度検出手段が検出する。
【0008】
請求項1に記載のバルブタイミング調整装置は、制御手段により保持デューティ比を圧力発生手段に入力する時刻である第1時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第1判定手段を備える。ここで、保持デューティ比とは、進角室内の作動油の圧力と遅角室内の作動油の圧力とを同じにするように圧力発生手段を作動させるデューティ比である。バルブタイミング調整装置は、第1判定手段により第1時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0009】
バルブタイミング調整装置では、ハウジングに対するベーンロータの相対回動の拘束を解除するとき、ハウジング内に形成されている進角室および遅角室に同じ圧力の作動油を供給する。さらに、制御手段は、所定時間の間、圧力発生手段に対して保持デューティ比を保持する。当該所定時間では、カムトルクによるベーンロータへの作用方向は遅角方向である正方向、または進角方向である負方向に周期的に変化する。このとき、ベーンロータには、進角室の油圧により作用する進角油圧トルク、および遅角室の油圧により作用する遅角油圧トルクが作用している。すなわち、ベーンロータには、進角油圧トルク、遅角油圧トルクおよびカムトルクの3つのトルクが作用している。この3つのトルクの合成方向が正方向である場合、ベーンロータの収容孔に収容されている規制部材は嵌合孔の内壁面と接触していないため、嵌合を解除しやすい。したがって、規制部材の作動不良によるベーンロータのロック解除不良の発生を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置における所定時間は、制御手段が圧力発生手段に対して保持デューティ比を入力した時刻である第1時刻から駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長い時間である。駆動軸が2回転、すなわち720度回転することにより、従動軸は1回転、すなわち360度回転する。従動軸が1回転する間に、進角油圧トルク、遅角油圧トルクおよびカムトルクの合成トルクが正方向となる時間が存在する。そこで、バルブタイミング調整装置では、保持デューティ比を最初に入力した時刻から駆動軸が720度回転する時刻までの時間の間、保持デューティ比を維持することでベーンロータのロックを解除することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は制御手段が遅角室内の作動油の圧力に比べて進角室内の作動油の圧力が高くなる進角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する時刻である第2時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第2判定手段と、第2判定手段により第2時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第3判定手段を備えている。
【0012】
請求項3に記載のバルブタイミング調整装置では、第3判定手段によりベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる油圧を進角室または遅角室に供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
バルブタイミング調整装置では、ハウジングに対するベーンロータの相対回動の拘束を解除するとき、ハウジング内に形成されている進角室および遅角室に作動油を供給する。このとき、制御手段は、圧力発生手段に対して遅角油圧に比べて進角油圧が高くなるように作動油を供給する進角補正保持デューティ比を入力する。これにより、規制部材は前述の保持デューティ比が入力された場合に比べて進角方向に移動する。さらに、第2判定手段により第2時刻から所定時間が経過していないと判定するとき、ベーンロータの位相を第3判定手段において判定する。第3判定手段により、ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置から変化していると判定するとき、制御手段はベーンロータのロックが解除されているとし、ベーンロータを目標位相に進角または遅角させる。これにより、バルブタイミング調整装置は、所定時間が経過する前にベーンロータの進角または遅角させることができる。
請求項4に記載のバルブタイミング調整装置は、上記請求項2に記載のバルブタイミング装置と同様である。
【0013】
請求項5に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は従動軸角度検出手段により検出される従動軸の角度からカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第4判定手段を備えている。
バルブタイミング調整装置の制御手段は、第4判定手段によりカムトルクの作用方向が進角方向であると判定するとき、制御手段は進角室内の油圧に比べて遅角室内の油圧が高くなる遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。また、第4判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定するとき、制御手段は進角室内の油圧と遅角室内の油圧とを同じにする保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0014】
請求項5に記載のバルブタイミング調整装置では、カムトルクの作用方向によって圧力発生手段に入力されるデューティ比を変更する。カムトルクの作用方向が進角方向であると判定するとき、制御手段は遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。カムトルクの作用方向が進角方向である場合、ベーンロータには位相を進角方向に変化させるトルクが作用する。このとき、制御手段は遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。これにより、進角室内の油圧に比べて遅角室内の油圧が高くなるため、ベーンロータは最遅角位置付近に留まる。これにより、規制部材の嵌合が解除されていてもベーンロータは進角しない。したがって、ベーンロータのロックが解除された状態でのベーンロータの予期せぬ動きを防止し、ベーンロータの回転による異音の発生を防止することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は、制御手段により保持デューティ比、または遅角補正保持デューティ比が圧力発生手段に最初に入力される時刻である第3時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第5判定手段を備えている。
第5判定手段により第3時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。これにより、カムトルク、進角油圧トルクおよび遅角油圧トルクの合力の方向が正となるタイミングでベーンロータのロックを解除できる。
請求項7に記載のバルブタイミング調整装置は、上記請求項2および4に記載のバルブタイミング装置と同様である。
【0016】
請求項8に記載の発明によると、バルブタイミング調整装置は駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段、駆動軸角度検出手段により検出される内燃機関の回転数が低回転か否かを判定する第6判定手段、および従動軸角度検出手段により検出される従動軸の角度から前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方の開閉によって従動軸に作用するカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第7判定手段を備える。
第6判定手段により内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ第7判定手段によりカムトルクの作用方向が進角室の方向であると判定したとき、制御手段は進角室内の油圧に比べて遅角室内の油圧が高くなる遅角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。一方、第6判定手段により内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ第7判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定したとき、制御手段は進角室内の油圧と遅角室内の油圧とを同じにする保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0017】
請求項8に記載のバルブタイミング調整装置では、駆動軸角度検出手段により検出される内燃機関の回転数からベーンロータのロック解除手順を使い分ける。内燃機関の回転数が低い場合、カムトルクの作用方向に応じて前述の遅角補正保持デューティ比または保持デューティ比のいずれか一方を圧力発生手段に入力する。これにより、所定時間内でのベーンロータの回転による異音の発生を防止する。一方、内燃機関の回転数が高い場合、前述の進角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。これにより、所定時間が経過する前にベーンロータの進角を開始する。すなわち、請求項8に記載のバルブタイミング調整装置では、内燃機関の回転数が低回転では静音性を重視したベーンロータのロック解除を行い、高回転ではベーンの位相変化において応答性を重視したベーンロータのロック解除を行う。
【0018】
請求項9に記載のバルブタイミング調整装置では、制御手段により保持デューティ比、または遅角補正保持デューティ比が最初に圧力発生手段に入力される時刻である第4時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第8判定手段を備える。第8判定手段により第4時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
請求項10に記載のバルブタイミング調整装置では、第6判定手段により内燃機関の回転数が高回転であると判定したとき、制御手段は遅角室内の油圧に比べて進角室内の油圧が高くなる進角補正保持デューティ比を圧力発生手段に入力する。
【0019】
請求項11に記載のバルブタイミング調整装置では、制御手段により進角補正保持デューティ比が最初に圧力発生手段に入力される時刻である第5時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第9判定手段を備える。第9判定手段により第5時刻から所定時間が経過したと判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
請求項12に記載のバルブタイミング調整装置では、第9判定手段により第5時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第10判定手段を備える。第10判定手段によりベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、制御手段はベーンロータが目標位相となる油圧を進角室および遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を圧力発生手段に入力する。
請求項13に記載のバルブタイミング調整装置は、上記請求項2、4および7に記載のバルブタイミング装置と同様である。
【0020】
請求項14に記載の発明によると、制御手段は、制御手段が圧力発生手段に所定の圧力値を発生させるデューティ比を入力する入力時刻から圧力発生手段が発生する作動油の圧力が所定の圧力値となる時刻までの時間を圧力発生手段が発生する作動油の圧力を所定の圧力値に制御する時刻から遡って、デューティ比を入力する。
圧力発生手段では、制御手段からの所定の圧力を発生するデューティ比が入力された場合、当該所定の圧力を発生するまでに時間がかかる。そこで、制御手段は、所定のデューティ比が圧力発生手段に入力される入力時刻から圧力発生手段において所定の圧力が発生する圧力発生時刻までの時間を事前に算出する。制御手段は、所定の圧力を発生するデューティ比を入力する時刻から遡って所定のデューティ比を入力する。これにより、前述したカムトルクの作用方向が正方向となる時刻と圧力発生手段が所定の圧力を発生する時刻とにずれが発生しなくなるため、ベーンロータのロック解除を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を使った内燃機関の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置の断面図である。
【図3】図2のIII−III線の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置における(a)エンジン回転数と油温との関係を示す図、(b)ベーン、ストッパピンおよび嵌合孔の関係を示す図、である。
【図6】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を説明する図であって、(a)カムトルクの時間変化、(b)デューティ比の時間変化、(c)油圧トルクの時間変化、(d)ストッパピンの嵌合深さの時間変化、(e)ベーンロータの位相の時間変化、である。
【図7】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置における(a)ベーン、ストッパピンおよび嵌合孔の関係を示す図、(b)合成トルクの時間変化を示す図、である。
【図8】本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置を説明する図であって、(a)カムトルクの時間変化、(b)デューティ比の時間変化、(c)油圧トルクの時間変化、(d)ストッパピンの嵌合深さの時間変化、(e)ベーンロータの位相の時間変化、である。
【図10】本発明の第3実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態によるバルブタイミング調整装置を説明する図であって、(a)カムトルクの時間変化、(b)デューティ比の時間変化、(c)油圧トルクの時間変化、(d)ストッパピンの嵌合深さの時間変化、(e)ベーンロータの位相の時間変化、である。
【図12】本発明の第4実施形態によるバルブタイミング調整装置を使ったベーンロータのロック解除を行う手順のフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態によるバルブタイミング調整装置におけるエンジン回転数と油温との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態のバルブタイミング調整装置について図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を図1から図7に示す。本実施形態のバルブタイミング調整装置は、作動流体として作動油を用いる油圧制御式である。
第1実施形態のバルブタイミング調整装置が設けられる駆動力伝達系では、図1に示すように、エンジン1の「駆動軸」としてのクランクシャフト2に固定されるギア3と、「従動軸」としてのカムシャフト4、5に固定されるギア6、191にチェーン7が巻き掛けられ、クランクシャフト2からカムシャフト4、5に駆動力が伝達される。一方のカムシャフト4はカム機構を経由して吸気弁8を開閉駆動し、他方のカムシャフト5はカム機構を経由して排気弁9を開閉駆動する。第1実施形態のバルブタイミング調整装置10は、ギア191をチェーン7に、ベーンロータをカムシャフト4に接続して、吸気弁8の開閉タイミングを調整する。カムシャフト4にはカムシャフト4の回転角度を検出するカム角センサ4aが取り付けられている。また、クランクシャフト2にはクランクシャフト2の回転角度を検出するクランク角センサ2aが取り付けられている。
【0023】
図2および図3に示すように、バルブタイミング調整装置10は、ハウジング11、ベーンロータ20、および「規制部材」としてのストッパピン30等を備えている。
ハウジング11は、環状の周壁12および仕切り部材としてのシュウ13、14、15、16から一体に形成されたシュウハウジング17、フロントプレート18、並びにスプロケット19等から構成されている。略台形に形成されたシュウ13、14、15、16は、周壁12から径方向内側へ延びており、周壁12の周方向に略等間隔に設けられている。周方向に隣接するシュウ同士の間隙には略扇状の圧力室50が形成されている。
【0024】
スプロケット19は、径外側にギア191を備え、周壁12の回転軸方向の一方に設けられている。スプロケット19は、軸方向にカムシャフト4を通す軸孔192を有している。
フロントプレート18は、略円盤状に形成され、周壁12の回転軸方向の他方に設けられている。フロントプレート18は、円盤の中心に板厚方向に通じる円孔181を有している。
シュウハウジング17、フロントプレート18およびスプロケット19は、ボルト111によって同軸上に固定されている。
【0025】
ベーンロータ20は、ハウジング11と略同軸に設けられ、ハウジング11の内側に相対回転可能に収容されている。ベーンロータ20は、略円筒状のロータ21、およびこのロータ21から径外方向に突出する4個のベーン22、23、24、25を有している。
ベーンロータ20とカムシャフト4とはボルト26によって固定されている。ベーンロータ20とカムシャフト4とは、ノックピン27によって周方向の位置決めがされている。これにより、ベーンロータ20は、カムシャフト4とともに回転する。
各ベーン22、23、24、25は、各圧力室50を、それぞれ遅角室51、52、53、54と進角室55、56、57、58とに仕切っている。
【0026】
遅角室51、52、53、54に油圧を供給する遅角通路61、62は、ベーンロータ20のロータ21に形成されている。進角室55、56、57、58に油圧を供給する進角通路63、64は、ロータ21のスプロケット19側の外壁に形成されている。遅角通路61、62および進角通路63、64は、それぞれカムシャフト4に形成された遅角通路65および進角通路66に連通している。
【0027】
シール部材28、29は、例えば樹脂で形成され、各ベーン22、23、24、25の径外方向の外壁と、各シュウ13、14、15、16の径内方向の内壁とに嵌合している。各ベーン22、23、24、25の径外方向の外壁に嵌合するシール部材28は、板ばね281の弾性力により周壁12に押し付けられている。各シュウ13、14、15、16の径内方向の内壁に嵌合するシール部材29は、板ばね291の弾性力によりロータ21に押し付けられている。このため、シール部材28、29は、遅角室51、52、53、54と進角室55、56、57、58との間の作動油の漏れを抑制している。
【0028】
ストッパピン30は、有底円筒状に形成されベーン22を回転軸方向に通じる収容孔221に軸方向に往復移動可能に収容されている。
図3に示すように、スプロケット19にはベーンロータ20が最遅角位置に位相制御されている状態でストッパピン30に対応する位置に嵌合孔31が形成されている。この嵌合孔31にブッシュ32が設けられている。ストッパピン30は、一方の端部にブッシュ32の径内側に嵌合する嵌合部33を有している。
ストッパピン30の他方の端部には、嵌合孔31側に凹む凹部34が設けられている。この凹部34には、付勢部材としてのコイルスプリング35が収容されている。コイルスプリング35は、一端が凹部34の内壁に当接し、他端がフロントプレート18の内壁に当接する圧縮コイルスプリングであり、ストッパピン30をスプロケット19側へ付勢している。
【0029】
次に、バルブタイミング調整装置10の作動を説明する。
<エンジン始動時>
エンジン1が停止している状態では、図3に示すようにストッパピン30は嵌合孔31のブッシュ32に嵌合している。エンジン1を始動した直後の状態では、遅角室51、52、53、54及び進角室55、56、57、588に油圧ポンプ90から十分に作動油が供給されない。このため、ストッパピン30はブッシュ32に嵌合した状態を維持し、クランク軸2に対しカムシャフト4は最遅角位置に保持されている。
【0030】
<エンジン始動後>
エンジン始動後、図4に示すような手順に従ってベーンロータ20のロックを解除する。
最初のステップ(以下、「ステップ」を省略し、単に記号Sで示す)101において、バルブタイミング調整装置10を搭載する車両の運転条件を検出する。具体的には、エンジン1の回転数、エンジン1が出力するトルクの大きさ、エンジン1を冷却するラジエータの水温などである。これらの運転条件は、各種センサによって検出され、電子制御装置(以下、「ECU」という)91に入力される。ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第1判定手段」に相当する。
【0031】
次にS102において、ECU91はベーンロータ20の目標位相を算出する。このとき、ECU901は、S101で検出した運転条件を基にエンジン始動後のベーンロータ20の最適な位相を目標位相として算出する。
次にS103において、S102で算出したベーンロータ20の目標位相を実現するために「圧力発生手段」としての油圧制御弁92に入力される目標デューティ比を算出する。
【0032】
次にS104において、ストッパピン30がブッシュ32に嵌合しているか否かを判定する。ストッパピン30がブッシュ32に嵌合している場合、ベーンロータ20はハウジング11に対して最遅角に位置している。S104ではカムシャフト4に設置されているカム角センサ4aによって、ベーンロータ20のハウジング11に対する相対位相を検出する。これにより、ストッパピン30がブッシュ32に嵌合しているか否かを判断することができる。ストッパピン30がブッシュ32に嵌合していると判定する場合、S105に移行する。ストッパピン30がブッシュ32に嵌合していないと判定する場合、S108に移行する。
【0033】
次にS105において、ベーンロータ20のロックを解除する条件を満たしているか否かを判定する。ここで、図5を用いてベーンロータ20のロックを解除する条件について説明する。
図5(a)にエンジン1の回転数と油圧制御弁92の油温との関係から導かれるベーンロータ20のロック解除を制御する領域(以下、「ロック解除制御実施領域」とする)を示す。また、図5(b)には、ストッパピン30を収容するベーンロータ20に対して作用する力の関係を示す。図5(b)に示すように、ベーンロータ20には、吸気弁8の開閉によって発生するカムトルクTc、遅角室51、52、53、54に供給される作動油の圧力によって発生する遅角油圧トルクTrtd、および進角室55、56、57、58に供給される作動油の圧力によって発生する進角油圧トルクTadv、が作用する。このとき、遅角油圧トルクTrtdは遅角方向、すなわち図5(b)において左方向に作用する。また進角油圧トルクTadvは進角方向、すなわち図5(b)において右方向に作用する。また、カムトルクTcは、吸気弁8の作動状態によって進角方向、遅角方向いずれの方向にも作用する。
【0034】
ベーンロータ20のロックを解除するとき、作動油が進角室55、56、57、58に供給される。このとき、エンジン1の回転数が高いと油圧制御弁92に作動油を吐出するポンプ90の駆動力は大きくなるため、進角室55、56、57、58に供給される作動油の圧力は高くなる。これにより、進角油圧トルクTadvが大きくなる。進角油圧トルクTadvが大きくなると、ストッパピン30の側壁331がブッシュ32の内壁面321に当接するため、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しにくくなる。すなわち、ベーンロータ20のロックは解除しにくくなる。また、作動油の温度である油温が低いと作動油の粘度が高くなるため、油圧が高くなる。これによっても進角油圧トルクTadvは大きくなるため、ベーンロータ20のロックは解除しにくくなる。したがって、エンジン1の回転数が高い領域または油温が低い領域において、ベーンロータ20のロックを解除しにくい領域が存在する。したがって、図5(a)に示すようにエンジン1の回転数と油圧制御弁92の油温との関係においてベーンロータ20のロックを解除しにくい領域としてロック解除制御実施領域を設定する。
S105において、エンジン1の回転数と油圧ポンプ90における作動油の油温との関係がロック解除制御実施領域にある場合、S106に移行する。エンジン1の回転数と油圧ポンプ90における作動油の油温との関係がロック解除制御実施領域にない場合、S108に移行する。
【0035】
次にS106において、保持デューティ比D1が油圧制御弁92に入力される。保持デューティ比D1とは、図6(c)に示すように進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが0より大きい一定の値で同じになるように油圧制御弁92に入力されるデューティ比である。ECU91は、「第1時刻」としての時刻t1において保持デューティ比D1を油圧制御弁92に入力する。これにより、油圧制御弁92は作動油を供給し、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとは時刻t2において0より大きい同じ大きさのトルクとなる。このとき、ECU91は、エンジン1の回転数と作動油の油温から油圧を算出することで、進角油圧トルクTadvおよび遅角油圧トルクTrtdを算出する。また、ECU91は前回のバルブタイミング調整時にベーンロータ20の位相を保持したときに学習した値を保持デューティ比D1として記憶しておいてもよい。
【0036】
次にS107において、油圧制御弁92に保持デューティ比D1を入力した時刻t1から所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間として、図6(a)に示すようにクランクシャフト2の2回転、すなわち720度がカムシャフト4の1回転、すなわち360度に相当することから、クランクシャフト2が720度回転するのに要する時間以上とする。時刻t1から所定時間が経過していると判定した場合、S108に移行する。時刻t1から所定時間が経過していないと判定した場合、S106に戻り保持デューティ比D1が維持される。
【0037】
次にS108において、油圧制御弁92に目標デューティ比を入力する。具体的には図6(b)に示すように時刻t3において、ECU91は油圧制御弁92に目標デューティ比を入力する。これにより、時刻t4において進角油圧トルクTadvは大きくなり、遅角油圧トルクTrtdは小さくなる。バルブタイミング調整装置10では、時刻t3より前に嵌合孔31に供給された油圧により、図6(d)に示すように時刻t5においてストッパピン30の嵌合は解除されている。時刻t4においてストッパピン30の嵌合は解除されているので、図6(e)に示すようにベーンロータ20は進角する。これにより、ベーンロータ20とハウジング11とが相対回動可能となる。その後、遅角室51、52、53、54及び進角室55、56、57、58の油圧を制御することにより、クランク軸2に対するカムシャフト4の位相差が調整可能となる。
【0038】
<進角作動時>
バルブタイミング調整装置10を進角制御するとき、ECU91は、油圧制御弁92に供給する駆動電流を制御する。油圧制御弁92は、油圧ポンプ90と進角通路93とを接続し、遅角通路94とオイルパン95とを接続する。油圧ポンプ90が吐出する作動油は、進角通路93、66、63、64を経由し、進角室55、56、57、58に供給される。一方、遅角室51、52、53、54の作動油は、遅角通路61、62、65、94を経由し、オイルパン95に排出される。進角室55、56、57、58の油圧はベーン22、23、24、25に作用し、ベーンロータ20を進角方向に付勢するトルクを発生する。これにより、ベーンロータ20は、ハウジング11に対し進角方向に回転する。
【0039】
<遅角作動時>
バルブタイミング調整装置10を遅角制御するとき、ECU91は、油圧制御弁92に供給する駆動電流を制御する。油圧制御弁92は、油圧ポンプ90と遅角通路94とを接続し、進角通路93とオイルパン95とを接続する。油圧ポンプ90から吐出される作動油は、遅角通路94、65、61、62を経由し、遅角室51、52、53、54に供給される。一方、進角室55、56、57、58の作動油は進角通路63、64、66、93を経由し、オイルパン95に排出される。遅角室51、52、53、54の油圧がベーン22、23、24、25に作用し、ベーンロータ20を遅角方向に付勢するトルクを発生する。これにより、ベーンロータ20は、ハウジング11に対して遅角方向に回転する。
【0040】
<中間保持作動時>
ベーンロータ20が目標位相に到達すると、ECU91は油圧制御弁92に供給する駆動電流のデューティ比を制御する。油圧制御弁92は、油圧ポンプ90と、遅角通路94および進角通路93との接続を遮断し、遅角室51、52、53、54および進角室55、56、57、58からオイルパン95に作動油が排出されることを規制する。このため、ベーンロータ20は目標位相に保持される。
なお、進角作動時、遅角作動時及び中間保持作動時では、油圧ポンプ90からバルブタイミング調整装置10の遅角側圧力室37及び進角側圧力室38に供給される油圧は遅角解除圧及び進角解除圧よりも高いので、ストッパピン30と嵌合孔31との嵌合は解除されている。
【0041】
<エンジン停止時作動>
バルブタイミング調整装置10の作動中にエンジン停止が指示されると、上記遅角作動時と同じように、ベーンロータ20はハウジング11に対して遅角方向に回転し、ロック位相である最遅角位置に位相制御される。また、エンジン停止指示後、エンジンの回転低下に伴って、バルブタイミング調整装置10に供給される油圧は次第に低くなり、ストッパピン30に印加される遅角側圧力室37及び進角側圧力室38の圧力も低下する。
【0042】
(効果)
次に第1実施形態でのバルブタイミング調整装置10の効果について説明する。
(A)バルブタイミング調整装置10では、ベーンロータ20を目標位相に変更する前に、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが同じになるように保持する。前述したように、ストッパピン30を収容するベーンロータ20に対しては、カムトルクTc、遅角油圧Trtd、および進角油圧Tadvが作用している。これら3つの力の大きさより、ベーンロータ20のハウジング11に対する相対位置が変化する。図7に、カムトルクTc、遅角油圧トルクTrtd、および進角油圧トルクTadvがベーンロータ20に作用した場合のベーンロータ20のハウジング11に対する相対位置の変化を示す。図7(b)の横軸は、カムトルクTc、遅角油圧トルクTrtd、および進角油圧トルクTadvの総和である合成トルクTの大きさと方向を示している。ここで、合成トルクTが遅角方向に向いているときを正、進角方向に向いているときを負とする。合成トルクTが正である場合、ストッパピン30の中心軸30aはブッシュ32の中心軸32aに対して遅角方向にずれる。これにより、側壁331と内壁面321とは当接しないため、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しやすい。一方、合成トルクTが負である場合、ストッパピン30の中心軸30aは図7(a)に示すようにブッシュ32の中心軸32aに対して進角方向にずれる。このとき、側壁331と内壁面321とは当接するため、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しにくい。
【0043】
ここで、油圧制御弁92に遅角油圧トルクTrtdと進角油圧トルクTadvとが同じになる保持デューティ比D1が入力されると、カムトルクTcの変動によって合成トルクTが正となる時間が発生する。前述したように、合成トルクTが正となる場合、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合は解除しやすくなる。保持デューティ比D1が入力されている油圧制御弁92は、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが同じになるように保持する(図6(c)参照)。このとき、図6(a)に示すようにカムトルクTcの作用方向は吸気弁8の作動状態によって正または負を周期的に変化している。したがって、進角油圧トルクTadvと遅角油圧トルクTrtdとが同じになるように保持されている場合であって、かつカムトルクTcが正となるとき、ストッパピン30とブッシュ32とは嵌合を解除しやすくなる。このとき、ストッパピン30に油圧が作用することにより、ストッパピン30とブッシュ32との嵌合が解除される。これにより、エンジン始動時におけるストッパピン30の作動不良によるベーンロータ20のロック解除不良の発生を防止することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図8および図9に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、ベーンロータのロックを解除する手順が一部異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図8に第2実施形態におけるバルブタイミング調整装置でのベーンロータ20のロック解除の手順を示す。図8に示すように、S105でのYes判定の次にS206において、ECU91は油圧制御弁92に進角補正保持デューティ比D2を入力する。ここで、進角補正保持デューティ比D2とは、前述の保持デューティ比D1に比べてベーンロータ20が進角方向に位相を保持することができるデューティ比である。具体的には、図9(c)に示すように、進角補正保持デューティ比D2が入力されることにより、進角油圧トルクTadvが遅角油圧トルクTrtdより高い値となる。なお、進角補正保持デューティ比D2が入力されているとき、ストッパピン30の側壁331とブッシュ32の内壁面321とは当接していない。ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第2判定手段」、および「第3判定手段」に相当する。
【0046】
次にS207において、圧力制御弁92に進角補正保持デューティ比D2が入力された時刻t6から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間として、クランクシャフト2の2回転がカムシャフト4の1回転に相当することから、クランクシャフト2が720度回転するのに要する時間以上とする。時刻t6から所定時間が経過している場合、S108に移行する。時刻t6から所定時間が経過していない場合、S208に移行する。時刻t6は、特許請求の範囲に記載の「第2時刻」に相当する。
【0047】
次にS208において、ベーンロータ20が進角しているか否かを判定する。第2実施形態のバルブタイミング調整装置では、時刻t6から所定時間が経過する前の時刻t7においてストッパピン30の嵌合が解除されている場合、図9(e)に示すようにベーンロータ20は進角する。ベーンロータ20の位相が変化していることは、カム角センサ4aにより検出されたカム角に基づいて判定することができる。これにより、ストッパピン30が嵌合しているか否かを判定することができる。ベーンロータ20が進角していると判定されたとき、S108に移行する。ベーンロータ20が進角していないと判定されたとき、S206に戻り、進角補正保持デューティ比D2が再度入力される。
【0048】
第2実施形態のバルブタイミング調整装置では、ストッパピン30の側壁33とブッシュ32の内壁面321とが当接しない程度にベーンロータ20を進角させる進角補正保持デューティ比D2を入力する。進角補正保持デューティ比D2が入力された場合、ストッパピン30の嵌合が解除されるとベーンロータ20は進角する。これにより、進角補正保持デューティ比D2を入力した時刻t7において所定時間が経過する前にベーンロータ20は進角する。したがって、第1実施形態の効果(A)に加えて、所定時間の経過後に進角する第1実施形態に比べてベーンロータ20を早く進角することができる。ベーンロータ20の進角を早めることで、ベーンロータ20の目標位相に早く到達することができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図10および図11に基づいて説明する。第3実施形態は、第1実施形態に対して、ベーンロータのロックを解除する手順が一部異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、S105でのYes判定の次にS306において、ECU91は油圧制御弁92での油圧の立ち上がり遅れを算出する。油圧制御弁92では、ECU91からの所定の圧力を発生するデューティ比の入力に対して所定の圧力を発生するまでに時間を要する。S306では、ECU91で所定の圧力を発生するデューティ比を入力する時刻である入力時刻から実際に油圧制御弁92で指令された油圧が発生する時刻である圧力発生時刻までの時間を算出する。ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第4判定手段」、および「第5判定手段」に相当する。
【0051】
次にS307において、ベーンロータ20にかかるカムトルクの作用方向が負であるか否かを判定する。前述したようにカムトルクの作用方向は吸気弁8の作動状態によって周期的に正または負となる。ここでは、カム角センサ4aで検出したカム角よりカムトルクの作用方向が負であるか否かを判定する。カムトルクの作用方向が負であると判定されたとき、S308に移行する。カムトルクの作用方向が正であると判定されたとき、S106に移行する。
【0052】
次にS308において、ECU91は油圧制御弁92に対して遅角補正保持デューティ比D3を入力する。遅角補正保持デューティ比D3とは、前述の保持デューティ比に比べてベーンロータ20が遅角方向に位相を保持するデューティ比である。具体的には、図11(c)に示すように、遅角補正保持デューティ比D3が入力されることにより、遅角油圧トルクTrtdが進角油圧トルクTadvより高い値となる。これにより、ベーンロータ20はカムトルクの作用方向が負の場合にのみ、遅角方向に位相を変更する。
【0053】
次にS309において、S106での保持デューティ比D1、またはS308での遅角補正保持デューティ比D3のいずれかが最初に油圧制御弁92に入力された時刻t8から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間として、クランクシャフト2の2回転がカムシャフト4の1回転に相当することから、クランクシャフト2が720度回転するのに要する時間以上とする。時刻t8から所定時間が経過している場合、S108に移行する。時刻t8から所定時間が経過していない場合、S306に戻り油圧の立ち上がり遅れを算出する。時刻t8は、特許請求の範囲に記載の「第3時刻」に相当する。
【0054】
第3実施形態のバルブタイミング調整装置では、ベーンロータ20に作用するカムトルクの作用方向が負であるとき、ECU91は油圧制御弁92にベーンロータ20の位相を遅角方向に変更する遅角補正保持デューティ比D3を入力する。遅角補正保持デューティ比D3が入力されると、進角油圧トルクTrtdに対して遅角油圧トルクTadvが大きくなる。これにより、カムトルクが負方向に作用してベーンロータ20の位相を進角方向に変化することを防止する。これにより、時刻t8から所定時間が経過するまでの間にベーンロータ20のロックが解除された場合でのベーンロータ20の予期せぬ動きを防止する。したがって、第1実施形態の効果(A)に加えて、ベーンロータ20による異音の発生を防止することができる。
【0055】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図12および図13に基づいて説明する。第4実施形態は、第2実施形態および第3実施形態に対して、ベーンロータのロックを解除する手順が一部異なる。なお、第2実施形態および第3実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図12に示すようにS105でのYes判定の次にS406において、エンジン1の回転数が低回転であるか否かを判定する。エンジン1の回転数が低回転であると判定するとき、S306に移行する。エンジン1の回転数が低回転でないと判定するとき、S206に移行する。このとき、ECU91は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「第6判定手段」、「第7判定手段」、「第8判定手段」、「第9判定手段」および「第10判定手段」に相当する。
【0057】
第4実施形態のバルブタイミング調整装置10では、エンジン1の回転数に合わせてベーンロータ20のロック解除の手順を使い分ける。図13にエンジン1の回転数と油温との関係から示されるロック解除制御実施領域を示す。ロック解除制御実施領域において、エンジン1の回転数が低い領域では第3実施形態におけるバルブタイミング調整装置10での手順でベーンロータ20のロックを解除する。第3実施形態におけるベーンロータ20のロック解除手順では、カムトルクの作用によるベーンロータ20での異音発生を防止することができる。すなわち、エンジン1の回転数が低い領域では異音が発生しない静音性を重視した手順でベーンロータ20のロックを解除する。一方、エンジン1の回転数が高い領域では第2実施形態のバルブタイミング調整装置10における手順でベーンロータ20のロックを解除する。第2実施形態におけるベーンロータ20のロック解除手順では、進角補正保持デューティ比D2が入力されてから所定時間が経過する前にストッパピン30の嵌合が解除されている場合、ベーンロータ20は進角を開始する。すなわち、エンジン1の回転数が高い領域では早くベーンロータ20の進角を開始することができる。これにより、エンジン1の回転数にあわせた最適な手順でベーンロータ20のロックを解除することができる。
【0058】
(他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、バルブタイミング調整装置は吸気弁に適用するとした。しかしながら、本発明のバルブタイミング調整装置を適用する弁はこれに限定されない。排気弁に適用してもよいし、吸気弁および排気弁の両方に同時に適用してもよい。本発明のバルブタイミング調整装置を排気弁に適用したとき、ストッパピンがブッシュに嵌合しているか否かを判定する場合、ベーンロータが最進角の位置にあるか否かで判定する。また、最遅角でも最進角でもない中間位置にあるか否かで判定してもよい。
【0059】
(イ)上述の第3実施形態では、遅角補正保持デューティ比が入力されると図11に示すように変化しない進角油圧トルクに対して遅角油圧トルクが大きくなるとした。しかしながら、トルクの変化の関係はこれに限定されない。遅角油圧トルクは変化しないが進角油圧トルクが小さくなってもよいし、また遅角油圧トルクが大きくなり、かつ進角油圧トルクが小さくなってもよい。
【0060】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ・・・エンジン(内燃機関)、
2 ・・・クランクシャフト(駆動軸)、
2a ・・・クランク角センサ(駆動軸角度検出手段)、
4、5 ・・・カムシャフト(従動軸)、
4a ・・・カム角センサ(従動軸角度検出手段)、
8 ・・・吸気弁、
9 ・・・排気弁、
10 ・・・バルブタイミング調整装置、
11 ・・・ハウジング、
20 ・・・ベーンロータ、
221 ・・・収容孔、
30 ・・・ストッパピン(規制部材)、
31 ・・・嵌合孔、
51、52、53、54・・・遅角室、
55、56、57、58・・・進角室、
92 ・・・油圧制御弁(圧力発生手段)、
91 ・・・ECU(制御手段、第1判定手段、第2判定手段、第3判定手段、第4判定手段、第5判定手段、第6判定手段、第7判定手段、第8判定手段、第9判定手段、第10判定手段)、
D1 ・・・保持デューティ比、
D2 ・・・進角補正保持デューティ比、
D3 ・・・遅角補正保持デューティ比、
t1 ・・・時刻(第1時刻)、
t6 ・・・時刻(第2時刻)、
t8 ・・・時刻(第3時刻)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記制御手段が前記進角室内の作動油の圧力と前記遅角室内の作動油の圧力とを同じにする保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力する時刻である第1時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第1判定手段と、
を備え、
前記第1判定手段により前記第1時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項2】
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段を備え、
前記所定時間は、前記第1時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項3】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記制御手段が前記遅角室内の作動油の圧力に比べて前記進角室内の作動油の圧力が高くなる進角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力する時刻である第2時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段により前記第2時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第3判定手段と、
を備え、
前記第3判定手段により前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項4】
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段を備え、
前記所定時間は、前記第2時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項3に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項5】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記従動軸の回転角度を検出する従動軸角度検出手段と、
前記従動軸角度検出手段により検出される前記従動軸の角度から前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方の開閉によって前記従動軸に作用するカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第4判定手段と、
を備え、
前記第4判定手段によりカムトルクの作用方向が進角方向であると判定するとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力に比べて前記遅角室内の作動油の圧力が高くなる遅角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力し、
前記第4判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定するとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力と前記遅角室内の作動油の圧力とを同じにする保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項6】
前記制御手段により前記保持デューティ比、または前記遅角補正保持デューティ比が前記圧力発生手段に最初に入力される時刻である第3時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第5判定手段を備え、
前記第5判定手段により前記第3時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項5に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項7】
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段を備え、
前記所定時間は、前記第3時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項6に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項8】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段と、
前記従動軸の回転角度を検出する従動軸角度検出手段と、
前記駆動軸角度検出手段により検出される前記内燃機関の回転数が低回転か否かを判定する第6判定手段と、
前記従動軸角度検出手段により検出される前記従動軸の角度から前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方の開閉によって前記従動軸に作用するカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第7判定手段と、
を備え、
前記第6判定手段により前記内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ前記第7判定手段によりカムトルクの作用方向が進角方向であると判定したとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力に比べて前記遅角室内の作動油の圧力が高くなる遅角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力し、
前記第6判定手段により前記内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ前記第7判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定したとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力と前記遅角室内の作動油の圧力とを同じにする保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項9】
前記制御手段により前記保持デューティ比、または前記遅角補正保持デューティ比が最初に前記圧力発生手段に入力される時刻である第4時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第8判定手段を備え、
前記第8判定手段により前記第4時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項8に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項10】
前記第6判定手段により前記内燃機関の回転数が高回転であると判定したとき、前記制御手段は前記遅角室内の作動油の圧力に比べて前記進角室内の作動油の圧力が高くなる進角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項8または9に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項11】
前記制御手段により前記進角補正保持デューティ比が最初に前記圧力発生手段に入力される時刻である第5時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第9判定手段を備え、
前記第9判定手段により前記第5時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項10に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項12】
前記第9判定手段により前記第5時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第10判定手段を備え、
前記第10判定手段により前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項11に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項13】
前記所定時間は、前記第4時刻または前記第5時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記制御手段が前記圧力発生手段に所定のデューティ比を入力する入力時刻から前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力が前記所定の圧力値となる時刻までの時間を前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力を前記所定の圧力値に制御する時刻から遡って所定のデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項5から13のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項1】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記制御手段が前記進角室内の作動油の圧力と前記遅角室内の作動油の圧力とを同じにする保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力する時刻である第1時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第1判定手段と、
を備え、
前記第1判定手段により前記第1時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項2】
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段を備え、
前記所定時間は、前記第1時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項3】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記制御手段が前記遅角室内の作動油の圧力に比べて前記進角室内の作動油の圧力が高くなる進角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力する時刻である第2時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段により前記第2時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第3判定手段と、
を備え、
前記第3判定手段により前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項4】
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段を備え、
前記所定時間は、前記第2時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項3に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項5】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記従動軸の回転角度を検出する従動軸角度検出手段と、
前記従動軸角度検出手段により検出される前記従動軸の角度から前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方の開閉によって前記従動軸に作用するカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第4判定手段と、
を備え、
前記第4判定手段によりカムトルクの作用方向が進角方向であると判定するとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力に比べて前記遅角室内の作動油の圧力が高くなる遅角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力し、
前記第4判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定するとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力と前記遅角室内の作動油の圧力とを同じにする保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項6】
前記制御手段により前記保持デューティ比、または前記遅角補正保持デューティ比が前記圧力発生手段に最初に入力される時刻である第3時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第5判定手段を備え、
前記第5判定手段により前記第3時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項5に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項7】
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段を備え、
前記所定時間は、前記第3時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項6に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項8】
内燃機関の駆動軸の駆動力を従動軸に伝達するとともに前記駆動軸と前記従動軸との回転位相を可変にし、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転するハウジングと、
前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記ハウジング内部を遅角室および進角室に仕切るベーンを有し、前記ハウジングに対して相対回動可能なベーンロータと、
前記進角室または前記遅角室に供給する作動油の圧力を発生する圧力発生手段と、
前記ベーンロータに形成される収容孔に摺動可能に収容され、前記ハウジングの回転軸方向の一方の内壁に形成された嵌合孔に嵌合することで前記ハウジングに対する前記ベーンロータの相対回動を拘束する規制部材と、
前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力値を制御する制御手段と、
前記駆動軸の回転角度を検出する駆動軸角度検出手段と、
前記従動軸の回転角度を検出する従動軸角度検出手段と、
前記駆動軸角度検出手段により検出される前記内燃機関の回転数が低回転か否かを判定する第6判定手段と、
前記従動軸角度検出手段により検出される前記従動軸の角度から前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方の開閉によって前記従動軸に作用するカムトルクの作用方向が進角方向であるか否かを判定する第7判定手段と、
を備え、
前記第6判定手段により前記内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ前記第7判定手段によりカムトルクの作用方向が進角方向であると判定したとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力に比べて前記遅角室内の作動油の圧力が高くなる遅角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力し、
前記第6判定手段により前記内燃機関の回転数が低回転であると判定し、かつ前記第7判定手段によりカムトルクの作用方向が遅角方向である、またはカムトルクが作用していないと判定したとき、前記制御手段は前記進角室内の作動油の圧力と前記遅角室内の作動油の圧力とを同じにする保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項9】
前記制御手段により前記保持デューティ比、または前記遅角補正保持デューティ比が最初に前記圧力発生手段に入力される時刻である第4時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第8判定手段を備え、
前記第8判定手段により前記第4時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項8に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項10】
前記第6判定手段により前記内燃機関の回転数が高回転であると判定したとき、前記制御手段は前記遅角室内の作動油の圧力に比べて前記進角室内の作動油の圧力が高くなる進角補正保持デューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項8または9に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項11】
前記制御手段により前記進角補正保持デューティ比が最初に前記圧力発生手段に入力される時刻である第5時刻から所定時間を経過したか否かを判定する第9判定手段を備え、
前記第9判定手段により前記第5時刻から所定時間が経過したと判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項10に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項12】
前記第9判定手段により前記第5時刻からの経過時間が所定時間未満であると判定するとき、前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化しているか否かを判定する第10判定手段を備え、
前記第10判定手段により前記ベーンロータの位相が最遅角位置または最進角位置より変化していると判定するとき、前記制御手段は前記ベーンロータが目標位相となる作動油の圧力を前記進角室および前記遅角室の少なくとも1つに供給するデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項11に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項13】
前記所定時間は、前記第4時刻または前記第5時刻から前記駆動軸角度検出手段により検出される前記駆動軸の回転角度が720度となる時刻までの時間より長いことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記制御手段が前記圧力発生手段に所定のデューティ比を入力する入力時刻から前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力が前記所定の圧力値となる時刻までの時間を前記圧力発生手段が発生する作動油の圧力を前記所定の圧力値に制御する時刻から遡って所定のデューティ比を前記圧力発生手段に入力することを特徴とする請求項5から13のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−219767(P2012−219767A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88998(P2011−88998)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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