説明

バルブタイミング調整装置

【課題】 リードバルブの欠落を抑制し、部品点数が少なく、且つ、ベーンロータ内部の油路の形状が制限され難いバルブタイミング調整装置を提供する。
【解決手段】 バルブタイミング調整装置42では、スプロケット44は、通孔52の内径よりも大きい内径をもつ凹部56をベーンロータ74側に形成する。ベーンロータ74のボス部76は、凹部56内に突き出す凸部110を形成する。リードバルブ178は、凹部56と凸部110との間に設けられ、スプロケット44の通孔52の内径よりも大きい外径をもつ。そのため、ベーンロータ74をカムシャフト28に固定することなしにリードバルブ178の脱落を防止可能である。また、リードバルブ178を固定する押さえ部材及びボルトが不要であるので部品点数が少なくなり、ベーンロータ74にねじ穴が不要であるのでベーンロータ74内部の油路の形状が制限され難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気弁または排気弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのクランクシャフトとカムシャフトとの回転位相を変化させることで吸気弁または排気弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置が公知である。特許文献1に開示されたバルブタイミング調整装置は、クランクシャフトと一体に回転するハウジング内の進角室または遅角室に作動油を供給することで、カムシャフトと一体に回転するベーンロータを相対回動させ、開閉タイミングを調整する。
【0003】
ここで、進角室および遅角室に作動油を供給する油路に逆止弁を設けることがある。特許文献1に開示されたバルブタイミング調整装置は、上記逆止弁として、ベーンロータとリードバルブカバーとの間に設けられた板状のリードバルブを備える。このリードバルブは、ベーンロータとリードバルブカバーとをボルトで締結するときベーンロータの端面とリードバルブカバーの端面との間に挟み込まれることで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−222025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたバルブタイミング調整装置では、リードバルブは、ベーンロータの端面とリードバルブカバーの端面との間に配置した段階ではどこにも固定されず、ボルトを締め込むまでの間に脱落するおそれがある。また、リードバルブが脱落してもボルトを締め込み可能であるため、リードバルブが欠落するおそれがある。
また、リードバルブを固定するのにリードバルブカバーおよびボルトが必要であり、部品点数が多いという問題がある。
【0006】
また、ボルトを締め込むためのねじ穴をベーンロータに形成する必要があり、ベーンロータ内部の油路の形状が制限されるという問題がある。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、リードバルブの欠落を抑制し、部品点数が少なく、且つ、ベーンロータ内部の油路の形状が制限され難いバルブタイミング調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、エンジンの駆動軸と従動軸との回転位相を変化させることにより、従動軸が開閉駆動する吸気弁または排気弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置である。このバルブタイミング調整装置は、第1ハウジング、第2ハウジング、ベーンロータ、第2供給油路、スリーブ、スプールおよびリードバルブを備える。
第1ハウジングは、従動軸の端部が挿通する第1通孔を有し、駆動軸と一体に回転する。第2ハウジングは、第1ハウジングに一端が塞がれる筒部、及び、筒部の他端を塞ぐ底部を有し、駆動軸および第1ハウジングと一体に回転する。ベーンロータは、第2ハウジング内部に設けられるボス部、及び、第2ハウジング内部を進角室および遅角室に仕切るベーン部から一体に形成され、従動軸と一体に回転する。このベーンロータは、進角室および遅角室の作動油の圧力に応じて第2ハウジングに対し進角側または遅角側に相対回動する。
【0008】
第2供給油路は、ベーンロータ内部に形成され、ベーンロータの第1ハウジング側の第1端面に開口する。この第2供給油路は、従動軸のベーンロータ側の第2端面に開口する第1供給油路に連通可能である。
スリーブは、ベーンロータのボス部の径内方向に設けられる筒状部材からなる。このスリーブは、第2供給油路に連通する供給ポート、進角室に連通する進角ポート、及び、遅角室に連通する遅角ポートを有する。スプールは、スリーブの径内方向でスリーブに対し軸方向に摺動可能に設けられる。このスプールは、供給ポートと進角ポートとを接続する進角位置、供給ポートと遅角ポートとを接続する遅角位置、及び、供給ポートと進角ポートおよび遅角ポートとの接続を遮断する遮断位置に作動可能である。
【0009】
リードバルブは、ベーンロータと従動軸との間に挟み込まれる固定部と、第2端面が有する第1供給油路の開口を開閉可能な可動弁部とからなる。固定部は、第1供給油路と第2供給油路とを接続可能な第2通孔を有する。可動弁部は、固定部の第2通孔の縁から第2通孔内に延びるよう形成される。リードバルブは、第1供給油路から第2供給油路への作動油の流通を許容し、第2供給油路から第1供給油路への作動油の流通を禁止する。
ここで、請求項1に記載の発明は、特に、第1ハウジング、ベーンロータおよびリードバルブの構成に特徴がある。第1ハウジングは、ベーンロータ側に第1通孔の内径よりも大きい内径をもつ第1凹部を形成する。ベーンロータのボス部は、第1ハウジングの第1凹部内に突き出し、先端部に前記第1端面を有する第1凸部を形成する。リードバルブは、第1凸部の第1端面と第1凹部の底面との間に設けられ、第1通孔の内径よりも大きい外径をもつ。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、リードバルブを第1ハウジングの第1凹部内に配置し、この第1凹部内にベーンロータの第1凸部を嵌め入れると、ベーンロータを例えば従動軸等の他の部材に固定することなしにリードバルブの脱落を防止することができる。そのため、組み付け時のリードバルブの脱落を抑制することができ、リードバルブの欠落を抑制可能である。また、リードバルブを固定するために従来用いていたリードバルブカバー等の押さえ部材とボルトとが不要であるので、部品点数が少なくなる。そのため、組み付け工数が減り、製造コストを削減可能である。また、ボルトが不要であることに伴いベーンロータにねじ穴を形成する必要がなくなるので、ベーンロータ内部の油路の形状が制限され難い。
【0011】
また、請求項1に記載の発明では、ベーンロータにリードバルブカバー等の押さえ部材を圧入することによりリードバルブを固定するような構成を採用していないので、押さえ部材をベーンロータに圧入することでベーンロータが変形することを回避可能である。押さえ部材の圧入によりベーンロータが変形すると作動油の漏れが発生するという問題があるが、請求項1に記載の発明によれば上記ベーンロータの変形による作動油の漏れが発生しない。
【0012】
請求項2に記載の発明では、ベーンロータと一体に回転するとともに第1ハウジングに対し相対回動可能なリードバルブは、第1ハウジングの第1凹部の内径よりも小さい外径をもつ。そのため、リードバルブの径外壁と第1ハウジングの第1凹部の内壁との間に隙間が形成される。したがって、リードバルブが第1ハウジングに対し相対回動するとき、リードバルブが第1ハウジングの第1凹部の内壁に傷を付けることを回避可能である。
【0013】
請求項3に記載の発明では、ベーンロータのボス部は、スリーブの径外壁に嵌合する第1嵌合孔を有し、リードバルブの固定部は、スリーブの径外壁に嵌合する第2嵌合孔を有する。第2嵌合孔は、第1嵌合孔の内径と同等の内径をもち、スリーブの径外壁に嵌合するときリードバルブの芯をベーンロータの芯と合わせる調芯機能を有する。そのため、スリーブをベーンロータに組み付けると同時にリードバルブとベーンロータとの調芯が完了する。したがって、リードバルブの組み付けを簡易にし、組み付け工数を減らすことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によるバルブタイミング調整装置は、ベーンロータに固定され、第1凸部の第1端面から第1ハウジング側に突き出す規制部材を備える。この規制部材は、リードバルブと係合することでベーンロータに対するリードバルブの相対回動を規制する。そのため、ベーンロータの可動弁部と従動軸の第2端面の第1供給油路との周方向位置が一致するようベーンロータに対するリードバルブの相対回転を規制することで、可動弁部が第1供給油路を確実に開閉可能なようにリードバルブを設置することができる。したがって、リードバルブの弁としての機能を確実に確保することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付ける段階でベーンロータとリードバルブの可動弁部との周方向位置が合っていれば、ベーンロータと従動軸とを所定の周方向位置で組み付けると同時にリードバルブの可動弁部と従動軸の第1供給油路との周方向の位置合わせが完了する。そのため、リードバルブの可動弁部と従動軸の第1供給油路との周方向位置を合わせるための特別な作業が不要であり、バルブタイミング調整装置の組み付けを簡易にし、組み付け工数を減らすことができる。
また、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるときリードバルブの可動弁部等に従動軸およびそれに固定されたノックピン等の部材が接触することを抑制可能である。したがって、リードバルブの可動弁部等にノックピン等の部材が接触することでリードバルブが変形しリードバルブの弁としての機能が損なわれることを回避可能である。
【0016】
請求項5に記載の発明では、規制部材は、従動軸の第2端面に開口する第1収容穴に挿入可能である。また、規制部材は、第2端面の第1供給油路の開口に対し径外方向または径内方向にずれた位置に設けられる。そのため、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるときに規制部材が誤って第2端面の第1供給油路に挿入されることを回避することができ、誤組み付けを防止可能である。
【0017】
請求項6に記載の発明では、規制部材と第1供給油路との径方向のずれ量は、第1通孔の内径と従動軸の外径との差の半分よりも大きい。そのため、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるとき、従動軸に対し第1ハウジングが径方向に移動することに起因し規制部材が誤って第2端面の第1供給油路に挿入されることを回避することができ、誤組み付けを防止可能である。
【0018】
請求項7に記載の発明では、ベーンロータのボス部は、従動軸の第2端面からベーンロータ側に突き出すノックピンが挿入可能な第2収容穴を有する。また、規制部材の第1ハウジング側への飛び出し長さは、ノックピンのベーンロータ側への飛び出し長さよりも大きい。そのため、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるとき、規制部材と第1収容穴との周方向位置が一致しない間、規制部材が従動軸の第2端面に当接し、ノックピンがリードバルブと接触するのを回避することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同様にバルブタイミング調整装置であって、ベーンロータ、第1ハウジングおよびリードバルブの構成に特徴がある。ベーンロータのボス部は、第1ハウジング側に第1通孔の内径よりも大きい内径をもち、第1端面を底部に有する第2凹部を形成する。第1ハウジングは、第1通孔の内径よりも大きい外径をもち、ベーンロータの第2凹部内に突き出す第2凸部を形成する。リードバルブは、ベーンロータの第2凹部の第1端面と第2凸部の先端面との間に設けられ、第1通孔の内径よりも大きい外径をもつ。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、リードバルブをベーンロータの第2凹部内に配置し、この第2凹部内に第1ハウジングの第2凸部を嵌め入れると、ベーンロータを例えば従動軸等の他の部材に固定することなしにリードバルブの脱落を防止することができる。そのため、組み付け時のリードバルブの脱落を抑制することができ、リードバルブの欠落を抑制可能である。
また、リードバルブを固定するために従来用いていたリードバルブカバー等の押さえ部材とボルトとが不要であるので、部品点数が少なくなる。そのため、組み付け工数が減り、製造コストを削減可能である。また、ボルトが不要であることに伴いベーンロータにねじ穴を形成する必要がなくなるので、ベーンロータ内部の油路の形状が制限され難い。
また、リードバルブカバー等の押さえ部材をベーンロータに圧入する構成ではないため、ベーンロータの変形に起因する作動油の漏れを回避可能である。
【0021】
請求項9に記載の発明では、ベーンロータのボス部は、スリーブの径外壁に嵌合する第1嵌合孔を有する。また、リードバルブの固定部は、スリーブの径外壁に嵌合する第2嵌合孔を有する。この第2嵌合孔は、第1嵌合孔の内径と同等の内径をもち、スリーブの径外壁に嵌合するときリードバルブの芯をベーンロータの芯と合わせる調芯機能を有する。そのため、スリーブをベーンロータに組み付けると同時にリードバルブとベーンロータとの調芯が完了する。したがって、リードバルブの組み付けを簡易にするとともに組み付け工数を減らすことができる。
【0022】
請求項10に記載の発明によるバルブタイミング調整装置は、ベーンロータに固定され、第2凹部の前記第1端面から第1ハウジング側に突き出す規制部材を備える。この規制部材は、リードバルブと係合することでベーンロータに対するリードバルブの相対回動を規制する。そのため、ベーンロータの可動弁部と従動軸の第2端面の第1供給油路との周方向位置が一致するようベーンロータに対するリードバルブの相対回転を規制することで、可動弁部が第1供給油路を確実に開閉可能なようにリードバルブを設置することができる。したがって、リードバルブの弁としての機能を確実に確保することができる。
【0023】
また、請求項10に記載の発明では、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付ける段階でベーンロータとリードバルブの可動弁部との周方向位置が合っていれば、ベーンロータと従動軸とを所定の周方向位置で組み付けると同時にリードバルブの可動弁部と従動軸の第1供給油路との周方向の位置合わせが完了する。そのため、リードバルブの可動弁部と従動軸の第1供給油路との周方向位置を合わせるための特別な作業が不要であり、バルブタイミング調整装置の組み付けを簡易にし、組み付け工数を減らすことができる。
また、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるときリードバルブの可動弁部等に従動軸およびそれに固定されたノックピン等の部材が接触することを抑制可能である。したがって、リードバルブの可動弁部等にノックピン等の部材が接触することでリードバルブが変形しリードバルブの弁としての機能が損なわれることを回避可能である。
【0024】
請求項11に記載の発明では、規制部材は、従動軸の第2端面に開口する第1収容穴に挿入可能である。また、規制部材は、第2端面が有する第1供給油路の開口に対し径外方向または径内方向にずれた位置に設けられる。そのため、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるときに規制部材が誤って第2端面の第1供給油路に挿入されることを回避することができ、誤組み付けを防止可能である。
【0025】
請求項12に記載の発明では、規制部材と第1供給油路との径方向のずれ量は、第1通孔の内径と従動軸の外径との差の半分よりも大きい。そのため、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるとき、従動軸に対し第1ハウジングが径方向に移動することに起因し規制部材が誤って第2端面の第1供給油路に挿入されることを回避することができ、誤組み付けを防止可能である。
【0026】
請求項13に記載の発明では、ベーンロータのボス部は、従動軸の第2端面からベーンロータ側に突き出すノックピンが挿入可能な第2収容穴を有する。また、規制部材の第1ハウジング側への飛び出し長さは、ノックピンのベーンロータ側への飛び出し長さよりも大きい。そのため、バルブタイミング調整装置を従動軸に取り付けるとき、規制部材と第1収容穴との周方向位置が一致しない間、規制部材が従動軸の第2端面に当接し、ノックピンがリードバルブと接触するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置を示す図である。
【図2】図1のバルブタイミング調整装置が適用されたエンジンを示す図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図3のA−P1―P2―P3―P4―P5―P6―P7―P8―P9―B断面図である。
【図5】図1の矢印V部の拡大図であって、油圧切換弁のスプールが進角位置に位置する状態を示す断面図である。
【図6】図1の油圧切換弁のスプールが遮断位置に位置する状態を示す拡大断面図である。
【図7】図1の油圧切換弁のスプールが遅角位置に位置する状態を示す拡大断面図である。
【図8】図1の矢印VIII部の拡大断面図である。
【図9】図1のリードバルブおよびカムシャフトの端面をベーンロータ側から見た図である。
【図10】図1のバルブタイミング調整装置の構成部材同士の組み付け途中を示す図であって、スプロケットの凹部にベーンロータの凸部を嵌め入れ、スプロケット、シューハウジングおよびフロントプレートをボルトで締結した状態を示す図である。
【図11】図1のバルブタイミング調整装置をエンジンのカムシャフトに取り付けている途中を示す図であって、規制ピンがカムシャフトの端面に当接している状態を示す図である。
【図12】図1のバルブタイミング調整装置をエンジンのカムシャフトに取り付けている途中を示す図であって、規制ピンがカムシャフトの端面の第1収容穴に挿入された状態を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置を示す断面図であって、第1実施形態における図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置42は、図1に示すバルブタイミング調整システム40で使用される。このバルブタイミング調整システム40は、図2に示すエンジン10の吸気弁12の開閉タイミングを調整するためのものである。図2に示すように、エンジン10のクランクシャフト16のギヤ18の回転は、ギヤ18、20、22に巻き掛けられるチェーン24とギヤ20、22とを介しカムシャフト26、28に伝達される。カムシャフト26は排気弁14を回転駆動し、カムシャフト28は吸気弁12を回転駆動する。
【0029】
バルブタイミング調整システム40は、クランクシャフト16と一体に回転するギヤ22に対しカムシャフト28を回転方向前方に相対回動させることにより吸気弁12の開閉タイミングを早くする。このように吸気弁12の開閉タイミングが早くなるようにカムシャフト28を相対回動させることを「進角させる」という。
また、バルブタイミング調整システム40は、ギヤ22に対しカムシャフト28を回転方向後方に相対回動させることにより吸気弁12の開閉タイミングを遅くする。このように吸気弁12の開閉タイミングが遅くなるようにカムシャフト28を相対回動させることを「遅角させる」という。
【0030】
先ず、バルブタイミング調整システム40を図1および図3に基づき説明する。図1は、図3のA−P1―P2―P3―P4―P5―P6―P7―A断面図である。図1および図3に示すように、バルブタイミング調整システム40は、バルブタイミング調整装置42、オイルポンプ166、電動シリンダ172および電子制御装置176等から構成されている。
バルブタイミング調整装置42は、主に、スプロケット44、シューハウジング58、フロントプレート70、ベーンロータ74および油路切換弁130等を備えている。スプロケット44は、特許請求の範囲に記載の「第1ハウジング」に相当する。また、シューハウジング58は、特許請求の範囲に記載の「筒部」に相当する。また、フロントプレート70は、特許請求の範囲に記載の「底部」に相当する。シューハウジング58およびフロントプレート70は、特許請求の範囲に記載の「第2ハウジング」を構成する。
【0031】
スプロケット44のギヤ22には、クランクシャフト16の回転がチェーン24を介し伝達される。スプロケット44、シューハウジング58およびフロントプレート70は、互いに一体に結合し、クランクシャフト16と一体に回転する。スプロケット44、シューハウジング58およびフロントプレート70は、ロータ収容空間を区画形成し、このロータ収容空間にベーンロータ74を収容している。
【0032】
ベーンロータ74は、カムシャフト28と一体に結合し、カムシャフト28と一体に回転する。ベーンロータ74は、ロータ収容空間の進角室90〜96または遅角室98〜104に供給される作動油の圧力を受けシューハウジング58に対し進角側または遅角側に相対回動する。
油路切換弁130は、ベーンロータ74内部の供給油路106と進角室90〜96および遅角室98〜104との接続を切り換える。供給油路106は、特許請求の範囲に記載の「第2供給油路」に相当する。油路切換弁130は、電動シリンダ172により作動させられる。
【0033】
オイルポンプ166は、オイルパン170から汲み上げた作動油を供給油路168、30、106を経由し油路切換弁130に供給する。カムシャフト28内部に形成される供給油路30は、特許請求の範囲に記載の「第1供給油路」に相当する。
電動シリンダ172は、例えば電磁式であり、図1に示すようにエンジンカバー32に取り付けられている。この電動シリンダ172は、油路切換弁130のスプール156と同軸上に配置され、軸方向に往復移動可能なロッド174と、ロッド174の径外方向に設けられる図示しないソレノイドとを有している。ロッド174は、ソレノイドが通電させられることで発生する磁界に応じ軸方向に移動し、油路切換弁130のスプール156を軸方向に押圧可能である。
【0034】
電子制御装置176は、シューハウジング58に対するベーンロータ74の回転位相が目標回転位相に一致するよう電動シリンダ172を駆動する。具体的には、電子制御装置176は、回転位相が目標回転位相よりも遅角側である場合、バルブタイミング調整装置42の進角室90〜96に作動油が供給されるよう油路切換弁130のスプール156の軸方向位置を制御する。また、電子制御装置176は、回転位相が目標回転位相よりも進角側である場合、バルブタイミング調整装置42の遅角室98〜104に作動油が供給されるよう油路切換弁130のスプール156の軸方向位置を制御する。また、電子制御装置176は、回転位相が目標回転位相と一致する場合、バルブタイミング調整装置42の進角室90〜96および遅角室98〜104が供給油路106と排出油路とから切り離されるよう油路切換弁130のスプール156の軸方向位置を制御する。
【0035】
次に、バルブタイミング調整装置42を図1、図3〜図7に基づき更に詳しく説明する。
スプロケット44は、カムシャフト28の一端部の径外壁に嵌合する径内筒部46、径内筒部46から径外方向へ突き出すフランジ部48、及び、フランジ部48の径外部からカムシャフト28の他端部側に延びる径外筒部50から一体に形成されている。径内筒部46はカムシャフト28が挿通する通孔52を有している。通孔52は、特許請求の範囲に記載の「第1通孔」に相当する。径外筒部50にはギヤ18が形成されている。
【0036】
シューハウジング58は、スプロケット44に一端が塞がれる筒部60、及び、筒部60から径内方向に突き出す複数のシュー部62、64、66、68を有している。各シュー部62、64、66、68は筒部60の周方向で互いに離間するよう配置されている。
フロントプレート70は、シューハウジング58の筒部60の他端を塞ぐ環状かつ板状の部材である。スプロケット44、シューハウジング58およびフロントプレート70は、複数のボルト72により互いに一体に結合されている。
【0037】
ベーンロータ74は、シューハウジング58の各シューの径内方向に設けられるボス部76、及び、ボス部76から径外方向へ突き出す複数のベーン部78、80、82、84を有している。ベーンロータ74は、スプロケット44、シューハウジング58およびフロントプレート70に対し相対回転可能である。ボス部76は、スリーブボルト132のスリーブ部134が嵌合する第1嵌合孔86を有している。ボス部76のフロントプレート70側にはセンターワッシャ88が嵌合している。ベーンロータ74およびカムシャフト28は、センターワッシャ88およびベーンロータ74を挿通しカムシャフト28にねじ込まれるスリーブボルト132により互いに一体に結合されている。
【0038】
ベーンロータ74のボス部76とシューハウジング58の筒部60との間には、各シュー部62、64、66、68で仕切られた4つのベーン収容室が形成されている。各ベーン収容室は、各ベーン部78、80、82、84を所定角度範囲内で相対回動可能に収容している。ここで、図3の時計まわり方向が進角方向であり、反時計まわり方向が遅角方向である。各ベーン収容室は、各ベーン部78、80、82、84によって進角室90、92、94、96と遅角室98、100、102、104とに仕切られている。
【0039】
ベーンロータ74のベーン部78は、回転軸方向に貫通する収容孔108を有している。収容孔108は、フロントプレート70側がスプロケット44側よりも内径が大きくなるよう段付状に形成されている。この収容孔108には、ロックピン116が回転軸方向に往復移動可能に収容されている。ロックピン116は、収容孔108の小径部の内壁に摺動可能に設けられ、収容孔108の大径部内で径外方向に突き出す鍔部118を有している。ロックピン116は、フロントプレート70側に配置された第1スプリング120によりスプロケット44側に付勢されている。
【0040】
ロックピン116は、ベーンロータ74がエンジン始動最適位置に位置するとき、スプロケット44のベーンロータ74側に形成された嵌合凹部54に嵌合可能である。ロックピン116は、嵌合凹部54に嵌合することによって、シューハウジング58に対するベーンロータ74の相対回動をエンジン始動最適位置で規制する。第1実施形態では、エンジン始動最適位置はベーンロータ74の最進角位置に設定され、嵌合凹部54は、ベーンロータ74が最遅角位置に位置するときのロックピン116に対応するよう形成されている。
【0041】
ロックピン116の鍔部118に対するスプロケット44側には第1規制解除室122が形成されている。この第1規制解除室122は、図示しない通路を経由し進角室90と連通している。また、ロックピン116に対するスプロケット44側には第2規制解除室126が形成されている。この第2規制解除室126は、図示しない通路を経由し遅角室98と連通している。
【0042】
進角室90を経て第1規制解除室122に供給される作動油の圧力、及び、遅角室98を経て第2規制解除室126に供給される作動油の圧力は、ロックピン116が嵌合凹部54から抜け出すよう作用する。ベーンロータ74がロックピン116によりエンジン始動最適位置で保持されるか否かは、第1スプリング120の付勢力と、第1規制解除室122及び第2規制解除室126の作動油の圧力による力とのバランスで決まる。
【0043】
油路切換弁130は、スリーブボルト132およびスプール156を有している。
スリーブボルト132は、「スリーブ」としてのスリーブ部134、ねじ部136および頭部138から一体に形成されている。スリーブ部134は、筒状に形成され、センターワッシャ88を挿通し、ベーンロータ74のボス部76の第1嵌合孔86に嵌合している。スリーブ部134は、供給油路106に連通する供給ポート140、ベーンロータ74内部の進角油路142を経由し進角室90〜96に連通する進角ポート144、及び、ベーンロータ74内部の遅角油路146を経由し遅角室98〜104に連通する遅角ポート148を有している。
【0044】
供給ポート140は、例えば周方向の4箇所に形成され、第1嵌合孔86の内壁に形成された第1環状溝150を経由し供給油路106に連通している。また進角ポート144は、例えば周方向の4箇所に形成され、第1嵌合孔86の内壁に形成された第2環状溝152を経由し進角油路142に連通している。また遅角ポート148は、例えば周方向の4箇所に形成され、センターワッシャ88の径内方向の環状油路154を経由し遅角油路146に連通している。
【0045】
ねじ部136は、スリーブ部134からカムシャフト28側に延び、カムシャフト28の一端部の端面34に開口するねじ穴36に螺合している。端面34は、特許請求の範囲に記載の「第2端面」に相当する。頭部138は、スリーブ部134と同軸の筒状に形成され、スリーブ部134に対しねじ部136とは反対側に設けられ、スリーブ部134の外径より大きい外径をもつ。
【0046】
スプール156は、スリーブ部134および頭部138の径内方向に位置し、スリーブ部134と同軸の筒状に形成され、スリーブ部134の内壁に軸方向に摺動可能に設けられている。スプール156は、スプロケット44側に配置された第2スプリング157によりフロントプレート70側に付勢されている。スプール156の軸方向位置は、第2スプリング157の付勢力と、電動シリンダ172のロッド174の押圧力とのバランスにより決まる。
【0047】
図5は、進角位置に位置するスプール156を示す。スプール156は、スリーブボルト132の頭部138の内壁に嵌め付けられたストッパプレート158に当接させられている。この進角位置では、スプール156は、スリーブ部134の供給ポート140と進角ポート144とを接続し、供給ポート140と遅角ポート148との接続を遮断する。また進角位置では、遅角室98〜104の作動油は、遅角油路146、遅角ポート148、及び、スリーブボルト132とスプール156との間の通路160を経由し外部に排出可能である。通路160は前記排出油路に相当する。
【0048】
図6は、遮断位置に位置するスプール156を示す。この遮断位置では、スプール156は、径外面で各進角ポート144および各遅角ポート148を塞ぎ、スリーブ部134の供給ポート140と進角ポート144および遅角ポート148との接続を遮断する。
図7は、遅角位置に位置するスプール156を示す。スプール156は、スリーブボルト132のねじ部136に当接させられている。この遅角位置では、スプール156は、スリーブ部134の供給ポート140と遅角ポート148とを接続し、供給ポート140と進角ポート144との接続を遮断する。また遅角位置では、進角室90〜96の作動油は、進角油路142、進角ポート144、及び、スプール156が有する通孔162、及び、スプール156の径内方向の通路164を経由し外部に排出可能である。通孔162および通路164は前記排出油路に相当する。
【0049】
ここで、第1実施形態によるバルブタイミング調整装置42は、特に、ベーンロータ74およびスプロケット44の構成と、リードバルブ178および規制ピン194を備えている点とに特徴がある。以下、これらの特徴を図1、図3〜図9に基づき詳しく説明する。
図5および図8に示すように、スプロケット44は、通孔52の内径D1よりも大きい内径D2をもつ凹部56をベーンロータ74側に有している。凹部56の横断面すなわち回転軸に直交する断面の形状は円形である。凹部56は、特許請求の範囲に記載の「第1凹部」に相当する。
ベーンロータ74のボス部76は、スプロケット44の凹部56内に突き出し、凹部56に対し相対回動可能な凸部110を有している。凸部110の横断面すなわち回転軸に直交する断面の形状は円形である。凸部110は、特許請求の範囲に記載の「第1凸部」に相当する。
【0050】
スプロケット44の凹部56とベーンロータ74の凸部110との間には、回転軸方向に厚みをもつ板状のリードバルブ178が設けられている。リードバルブ178は、ベーンロータ74の凸部110の先端面112とカムシャフト28の端面34との間に配置され、第1供給油路168と第2供給油路168とを接続可能な通孔180を有する固定部182と、通孔180の縁から当該通孔180内に延びる可動弁部184とからなる。先端面112は、特許請求の範囲に記載の「第1端面」に相当し、通孔180は、特許請求の範囲に記載の「第2通孔」に相当する。
可動弁部184は、図9に示すように、端面34に開口する供給油路30を閉塞可能な蓋部186と、この蓋部186と固定部182とを接続し、供給油路30内の作動油の圧力が蓋部186に作用すると蓋部186が供給油路30の開口から離間するよう撓む可撓部188とから一体に形成されている。リードバルブ178は、供給油路30から供給油路106への作動油の流通を許容し、供給油路106から供給油路30への作動油の流通を禁止する逆止弁である。
【0051】
図1、図5および図8に示すように、リードバルブ178は、ベーンロータ74の凸部110の先端面112とカムシャフト28の端面34との間に挟み込まれ、ベーンロータ74およびカムシャフト28に一体に固定されている。リードバルブ178の固定部182は、図8に示すように通孔52の内径D1よりも大きく、且つ、スプロケット44の凹部56の内径D2よりも小さい外径D3をもつ。リードバルブ178の径外壁とスプロケット44の凹部56の内壁との間には隙間が形成されている。
リードバルブ178の固定部182は、スリーブ部134の径外壁に嵌合する第2嵌合孔190を有している。第2嵌合孔190は、第1嵌合孔86の内径D4と同等の内径D5をもち、リードバルブ178とベーンロータ74との芯を合わせる調芯機能をもつ。上記「同等」とは、第1嵌合孔86の内径D4と第2嵌合孔190の内径D5との差が例えば100μm未満であることを意味する。
【0052】
図4に示すように、ベーンロータ74には「規制部材」としての規制ピン194が固定されている。規制ピン194は、ベーンロータ74を回転軸方向に貫通している。規制ピン194のフロントプレート70側の端部はセンターワッシャ88に嵌合している。また、規制ピン194のスプロケット44側の端部は、凸部110の先端面112からカムシャフト28側に突き出し、カムシャフト28の端面34に開口する第1収容穴38に挿入されている。リードバルブ178の固定部182は、規制ピン194が挿通する通孔192を有している。規制ピン194は、リードバルブ178の通孔192の内壁と係合することでベーンロータ74に対するリードバルブ178の相対回動を規制する。
【0053】
図9に示すように、規制ピン194は、カムシャフト28の端面34が有する供給油路30の開口に対し径外方向にずれた位置に設けられる。この規制ピン194と供給油路30との径方向のずれ量dは、図8に示す通孔52の内径D1とカムシャフト28の外径D6との差の半分より大きい。すなわち、スプロケット44がカムシャフト28に対し隙間の分だけ径方向に移動したとしても規制ピン194は供給油路30に挿入不可能である。
図4に示すように、ベーンロータ74の凸部110は、カムシャフト28の端面34からベーンロータ74側に突き出すノックピン195が挿入可能な第2収容穴114を有している。規制ピン194のリードバルブ178からカムシャフト28側への飛び出し長さL1は、ノックピン195のベーンロータ74側への飛び出し長さL2よりも大きい。すなわち、規制ピン194がカムシャフト28の端面34に当接するとノックピン195はリードバルブ178に接触不可能である。
【0054】
次に、バルブタイミング調整装置42の構成部材同士の組付手順、およびバルブタイミング調整装置42のエンジン10への組付手順を説明する。なお、便宜上、バルブタイミング調整装置42の構成部材同士の組付手順は、完成品を示す図1および図4を参照し説明する。
図1に示すように、先ず、ベーンロータ74にロックピン116と第1スプリング120とばね受け部材196とを組み付ける。ばね受け部材196は例えばベーンロータ74に圧入される。
続いて、スプロケット44の凹部56内にリードバルブ178を配置する。
続いて、スプロケット44の凹部56内にベーンロータ74の凸部110が嵌まるようスプロケット44上にベーンロータ74、シューハウジング58およびフロントプレート70を配置し、ボルト72で締結する。この直後の状態を示す図10のように、凸部110が凹部56内に嵌入した状態であれば、ベーンロータ74をカムシャフト28に固定しなくてもリードバルブ178が凹部56内から抜け出ることがない。
【0055】
続いて、図4に示すように、センターワッシャ88をベーンロータ74の中央部に嵌め入れ、規制ピン194を例えば圧入する。
続いて、スリーブボルト132内に第2スプリング157とスプール156とストッパプレート158を配置し、頭部138の内壁にスナップリング198を嵌め付け、スプール156等の部材の抜け止めをする。
ここまでがバルブタイミング調整装置42の構成部材同士の組付手順である。この構成部材同士の組み付けは、例えばバルブタイミング調整装置42の製造工場で行われる。組み付けたバルブタイミング調整装置42は、この後、車両組立工場に運ばれ、車両組立工場でエンジン10に組み付けられる。バルブタイミング調整装置42の運搬中、例えば振動等に起因しリードバルブ178がベーンロータ74に対し相対的に回転しようとする場合、その回転が規制ピン194により防止される。
【0056】
バルブタイミング調整装置42のエンジン10への組み付けに際し、先ず、スプロケット44の通孔52内にカムシャフト28の端部が挿入される。このとき、規制ピン194と第1収容穴38との周方向の位置が一致しない間、図11に示すように規制ピン194はカムシャフト28の端面34に当接するが、ノックピン195はリードバルブ178に接触しない。そして、規制ピン194と第1収容穴38との周方向の位置が一致すると、図12に示すように規制ピン194が第1収容穴38に挿入されるとともにノックピン195が第2収容穴114に挿入される。
続いて、図1に示すように、スリーブボルト132によりバルブタイミング調整装置42をカムシャフト28に固定し、バルブタイミング調整装置42のエンジン10への組み付けが完了する。
【0057】
次に、バルブタイミング調整装置42の作動を説明する。
シューハウジング58に対するベーンロータ74の回転位相が目標回転位相よりも遅角側である場合、油路切換弁130のスプール156が進角位置に移動させられる。このとき、図1および図5に示すように、オイルポンプ166から供給油路168、供給油路30、通孔180、供給油路106および第1環状溝150を経由して供給ポート140に供給される作動油は、進角ポート144および進角油路142を経由して進角室90、92、94、96に流入する。一方、遅角室98、100、102、104の作動油は、遅角油路146、遅角ポート148および通路160を経由し外部に排出される。これにより、ベーンロータ74はシューハウジング58に対し進角側に相対回動する。
【0058】
また、シューハウジング58に対するベーンロータ74の回転位相が目標回転位相よりも進角側である場合、油路切換弁130のスプール156が遅角位置に移動させられる。このとき、図7に示すように、オイルポンプ166から供給油路168、供給油路30、通孔180、供給油路106および第1環状溝150を経由して供給ポート140に供給される作動油は、遅角ポート148および遅角油路146を経由して遅角室98、100、102、104に流入する。一方、進角室90、92、94、96の作動油は、進角油路142、進角ポート144、通孔162および通路164を経由し外部に排出される。これにより、ベーンロータ74はシューハウジング58に対し遅角側に相対回動する。
【0059】
また、シューハウジング58に対するベーンロータ74の回転位相が目標回転位相に一致する場合、油路切換弁130のスプール156が遮断位置に移動させられる。このとき、図6に示すように、進角室90、92、94、96が供給ポート140および通路164から切り離され、遅角室98、100、102、104が供給ポート140および通路160から切り離される。これにより、進角室90、92、94、96および遅角室98、100、102、104の作動油は増減せず、その結果、ベーンロータ74はシューハウジング58に対し相対位置が変化しない。
【0060】
ここで、オイルポンプ166の吐出流量が周期的に増減することに起因し、供給油路30が供給油路106に供給する作動油の流量は増減する。リードバルブ178は、供給油路106から供給油路30に作動油が逆流することを防ぐことによって、各室への作動油の供給中に供給油路106の作動油の圧力が低下することを抑制する。これにより、各室の作動油の圧力が速やかに上昇する。
【0061】
以上説明したように、第1実施形態では、スプロケット44は、ベーンロータ74側に通孔52の内径よりも大きい内径をもつ凹部56を形成する。ベーンロータ74のボス部76は、スプロケット44の凹部56内に突き出す凸部110を形成する。リードバルブ178は、スプロケット44の凹部56とベーンロータ74の凸部110との間に設けられている。リードバルブ178の固定部182は、スプロケット44の通孔52の内径よりも大きい外径をもつ。
そのため、リードバルブ178をスプロケット44の凹部56内に配置し、この凹部56内にベーンロータ74の凸部110を嵌め入れると、ベーンロータ74を例えばカムシャフト28に固定することなしにリードバルブ178の脱落を防止することができる。そのため、組み付け時のリードバルブ178の脱落を抑制することができ、リードバルブ178の欠落を抑制可能である。
【0062】
また、第1実施形態では、リードバルブ178を固定するために従来用いていたリードバルブカバー等の押さえ部材とボルトとが不要であるので、部品点数が少なくなる。そのため、組み付け工数が減り、製造コストを削減可能である。また、ボルトが不要であることに伴いベーンロータ74にねじ穴を形成する必要がなくなるので、ねじ穴があることでベーンロータ74内部の油路の形状が制限されるという欠点が無くなる。
また、リードバルブカバー等の押さえ部材をベーンロータに圧入する構成ではないため、ベーンロータの変形に起因する作動油の漏れを回避可能である。
【0063】
また、第1実施形態では、リードバルブ178の外径は、スプロケット44の凹部56の内径よりも小さい。そのため、リードバルブ178の径外壁とスプロケット44の凹部56の内壁との間に隙間が形成される。そのため、リードバルブ178がスプロケット44に対し相対回動するとき、リードバルブ178がスプロケット44の凹部56の内壁に傷を付けることを回避可能である。
【0064】
また、第1実施形態では、ベーンロータ74のボス部76は、スリーブボルト132のスリーブ部134の径外壁に嵌合する第1嵌合孔86を有し、リードバルブ178の固定部182は、スリーブ部134の径外壁に嵌合する第2嵌合孔190を有する。第2嵌合孔190は、第1嵌合孔86の内径と同等の内径をもち、スリーブボルト132のスリーブ部134の径外壁に嵌合するときリードバルブ178とベーンロータ74との芯合わせを行う調芯機能を有する。そのため、スリーブボルト132をベーンロータ74に組み付けると同時にリードバルブ178とベーンロータ74との調芯が完了する。したがって、リードバルブ178の組み付けを簡易にし、組み付け工数を減らすことができる。
【0065】
また、第1実施形態によるバルブタイミング調整装置42は、ベーンロータ74に固定され、凸部110の先端面112からスプロケット44側に突き出す規制ピン194を備える。この規制ピン194は、リードバルブ178と係合することでベーンロータ74に対するリードバルブ178の相対回動を規制する。そのため、ベーンロータ74の可動弁部184の蓋部186とカムシャフト28の端面34の供給油路30との周方向位置が一致するようベーンロータ74に対するリードバルブ178の相対回転を規制することで、可動弁部184の蓋部186が供給油路30を確実に開閉可能なようにリードバルブ178を設置することができる。したがって、リードバルブ178の弁としての機能を確実に確保することができる。
【0066】
また、バルブタイミング調整装置42をカムシャフト28に取り付ける段階でベーンロータ74とリードバルブ178の可動弁部184の蓋部186との周方向位置が合っていれば、ベーンロータ74とカムシャフト28とを所定の周方向位置で組み付けると同時にリードバルブ178の可動弁部184の蓋部186とカムシャフト28の端面34の供給油路30との周方向の位置合わせが完了する。そのため、リードバルブ178の可動弁部184の蓋部186とカムシャフト28の端面34の供給油路30との周方向位置を合わせるための特別な作業が不要であり、バルブタイミング調整装置42の組み付けを簡易にし、組み付け工数を減らすことができる。
【0067】
また、バルブタイミング調整装置42をカムシャフト28に取り付けるときリードバルブ178の可動弁部184等にカムシャフト28およびそれに固定されたノックピン195等が接触することを抑制可能である。したがって、リードバルブ178の可動弁部184等にノックピン195等が接触することでリードバルブ178が変形しリードバルブ178の弁としての機能が損なわれることを回避可能である。
【0068】
また、第1実施形態では、規制ピン194は、カムシャフト28の端面34に開口する第1収容穴38に挿入可能である。また、規制ピン194は、カムシャフト28の端面34の供給油路30の開口に対し径外方向または径内方向にずれた位置に設けられる。そのため、バルブタイミング調整装置42をカムシャフト28に取り付けるときに規制ピン194が誤って供給油路30に挿入されることを回避することができ、誤組み付けを防止可能である。
【0069】
また、第1実施形態では、規制ピン194と供給油路30との径方向のずれ量は、通孔52の内径とカムシャフト28の外径との差の半分よりも大きい。そのため、バルブタイミング調整装置42をカムシャフト28に取り付けるとき、カムシャフト28に対しスプロケット44が径方向に移動することに起因し規制ピン194が誤って供給油路30に挿入されることを回避することができ、誤組み付けを防止可能である。
【0070】
また、第1実施形態では、ベーンロータ74のボス部76は、カムシャフト28の端面34からベーンロータ74側に突き出すノックピン195が挿入可能な第2収容穴114を有する。また、規制ピン194のスプロケット44側への飛び出し長さは、ノックピン195のベーンロータ74側への飛び出し長さよりも大きい。そのため、バルブタイミング調整装置42をカムシャフト28に取り付けるとき、規制ピン194と第1収容穴38との周方向位置が一致しない間、規制ピン194がカムシャフト28の端面34に当接し、ノックピン195がリードバルブ178と接触するのを回避することができる。
【0071】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置を図13に基づき説明する。図13に示すように、第2実施形態では、ベーンロータ200はスプロケット204側に凹部202を形成し、スプロケット204はベーンロータ200側に凸部206を形成する。凹部202は、スプロケット204の通孔52の内径よりも大きい内径をもつ。凹部202の横断面の形状は円形である。凸部206は、凹部202内に突き出し、凹部202に対し相対回動可能である。凸部206の横断面の形状は円形である。凹部202は、特許請求の範囲に記載の「第2凹部」に相当する。また、凸部206は、特許請求の範囲に記載の「第2凸部」に相当する。
【0072】
リードバルブ178は、ベーンロータ200の凹部202とスプロケット204の凸部206との間に設けられている。リードバルブ178の固定部182は、スプロケット204の通孔52の内径よりも大きい外径をもつ。リードバルブ178は、ベーンロータ200の凹部202の底面203とカムシャフト28の端面34との間に挟み込まれ、ベーンロータ200およびカムシャフト28に一体に固定されている。ベーンロータ200の凹部202の底面203は、特許請求の範囲に記載の「第1端面」に相当する。
【0073】
以上説明したように、第2実施形態によるバルブタイミング調整装置では、リードバルブ178をベーンロータ200の凹部202内に配置し、この凹部202内にスプロケット204の凸部206を嵌め入れると、ベーンロータ200を例えばカムシャフト28に固定することなしにリードバルブ178の脱落を防止することができる。そのため、第1実施形態と同様に組み付け時のリードバルブ178の脱落を抑制することができ、リードバルブ178の欠落を抑制可能である。
また、リードバルブ178を固定するために従来用いていたリードバルブカバー等の押さえ部材とボルトとが不要であるので部品点数が少なくなること、および、ベーンロータ74にねじ穴が不要であるのでベーンロータ74内部の油路の形状の自由度が高まることも第1実施形態と同様である。
【0074】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、バルブタイミング調整装置は、排気弁の開閉タイミングを調整するものであってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、リードバルブの第2嵌合孔の内径は、ベーンロータの第1嵌合孔の内径と同等でなくてもよい。リードバルブの第2嵌合孔の内径とベーンロータの第1嵌合孔の内径との差は100μm以上であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、凸部および凹部の回転軸に直交する断面の形状は、円形に限らず、他の形状であってもよい。
【0075】
また、本発明の他の実施形態では、規制ピンが設けられなくてもよい。また、規制ピンが設けられる場合、その規制ピンは、カムシャフトの端面の供給油路に対し径方向にずれた位置に配置されなくてもよい。また、規制ピンがカムシャフトの端面の供給油路に対し径方向にずれた位置に配置される場合、その方向は径内方向であってもよい。また、規制ピンのスプロケット側への飛び出し長さは、ノックピンのベーンロータ側への飛び出し長さ以下であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ベーンロータのベーン部およびハウジングのシュー部の数は、3つ以下あるいは5つ以上であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、シューハウジングと一体に回転可能であり且つチェーンを介しクランクシャフトに駆動されるギヤは、シューハウジングまたはフロントプレートに設けられてもよい。それに伴い、スプロケットに代えて、シューハウジングの一端部を塞ぐカバーが設けられてもよい。
【0076】
また、本発明の他の実施形態では、シューハウジングおよびフロントプレートを同一部材で構成してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、クランシャフトのギヤや各カムシャフトのギヤに巻き掛けられるのは、チェーンに限らず、例えばベルト等の他の伝達部材であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、油路切換弁は、電動シリンダ以外の駆動部に駆動されるよう構成してもよい。また、油路切換弁は、直動形に限らず、パイロット作動形でもよい。また、油路切換弁は、スリーブボルトのねじ部以外の固定手段で固定されてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0077】
10・・・エンジン
12・・・吸気弁
14・・・排気弁
16・・・クランクシャフト(駆動軸)
28・・・カムシャフト(従動軸)
30・・・供給油路(第1供給油路)
34・・・端面(第2端面)
42・・・バルブタイミング調整装置
44、204・・・スプロケット(第1ハウジング)
52・・・通孔(第1通孔)
56・・・凹部(第1凹部)
58・・・シューハウジング(筒部、第2ハウジング)
70・・・フロントプレート(底部、第2ハウジング)
74、200・・・ベーンロータ
76・・・ボス部
78、80、82、84・・・ベーン部
90、92、94、96・・・進角室
98、100、102、104・・・遅角室
106・・・供給油路(第2供給油路)
110・・・凸部(第1凸部)
112・・・先端面(第1端面)
134・・・スリーブ部(スリーブ)
140・・・供給ポート
144・・・進角ポート
148・・・遅角ポート
156・・・スプール
178・・・リードバルブ
180・・・通孔(第2通孔)
182・・・固定部
184・・・可動弁部
186・・・蓋部
188・・・可撓部
202・・・凹部(第2凹部)
203・・・底面(第1端面)
206・・・凸部(第2凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動軸と従動軸との回転位相を変化させることにより、前記従動軸が開閉駆動する吸気弁または排気弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記従動軸の端部が挿通する第1通孔を有し、前記駆動軸と一体に回転する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに一端が塞がれる筒部、及び、当該筒部の他端を塞ぐ底部を有し、前記駆動軸および前記第1ハウジングと一体に回転する第2ハウジングと、
前記第2ハウジング内部に設けられるボス部、及び、前記第2ハウジング内部を進角室および遅角室に仕切るベーン部から一体に形成され、前記従動軸と一体に回転し、前記進角室および前記遅角室の作動油の圧力に応じて前記第2ハウジングに対し進角側または遅角側に相対回動するベーンロータと、
前記ベーンロータ内部に形成され、前記ベーンロータの前記第1ハウジング側の第1端面に開口し、前記従動軸の前記ベーンロータ側の第2端面に開口する第1供給油路に連通可能な第2供給油路と、
前記ベーンロータの前記ボス部の径内方向に設けられる筒状部材からなり、前記第2供給油路に連通する供給ポート、前記進角室に連通する進角ポート、及び、前記遅角室に連通する遅角ポートを有するスリーブと、
前記スリーブの径内方向で当該スリーブに対し軸方向に摺動可能に設けられ、前記供給ポートと前記進角ポートとを接続する進角位置、前記供給ポートと前記遅角ポートとを接続する遅角位置、及び、前記供給ポートと前記進角ポートおよび前記遅角ポートとの接続を遮断する遮断位置に作動可能なスプールと、
前記ベーンロータと前記従動軸との間に挟み込まれ、前記第1供給油路と前記第2供給油路とを接続可能な第2通孔を有する固定部、及び、前記第2通孔の縁から当該第2通孔内に延びるよう形成され、前記第2端面が有する前記第1供給油路の開口を開閉可能な可動弁部からなり、前記第1供給油路から前記第2供給油路への作動油の流通を許容し、前記第2供給油路から前記第1供給油路への作動油の流通を禁止するリードバルブと、
を備え、
前記第1ハウジングは、前記ベーンロータ側に前記第1通孔の内径よりも大きい内径をもつ第1凹部を形成し、
前記ベーンロータの前記ボス部は、前記第1ハウジングの前記第1凹部内に突き出し、先端部に前記第1端面を有する第1凸部を形成し、
前記リードバルブは、前記第1凸部の前記第1端面と前記第1凹部の底面との間に設けられ、前記第1通孔の内径よりも大きい外径をもつことを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項2】
前記リードバルブは、前記ベーンロータと一体に回転するとともに前記第1ハウジングに対し相対回動可能であり、前記第1ハウジングの前記第1凹部の内径よりも小さい外径をもつことを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項3】
前記ベーンロータの前記ボス部は、前記スリーブの径外壁に嵌合する第1嵌合孔を有し、
前記リードバルブの前記固定部は、前記スリーブの径外壁に嵌合する第2嵌合孔を有し、
前記第2嵌合孔は、前記第1嵌合孔の内径と同等の内径をもち、前記スリーブの径外壁に嵌合するとき前記リードバルブの芯を前記ベーンロータの芯と合わせる調芯機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項4】
前記ベーンロータに固定され、前記第1凸部の前記第1端面から前記第1ハウジング側に突き出し、前記リードバルブと係合することで前記ベーンロータに対する前記リードバルブの相対回動を規制する規制部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項5】
前記規制部材は、前記従動軸の前記第2端面に開口する第1収容穴に挿入可能であり、前記第2端面が有する前記第1供給油路の開口に対し径外方向または径内方向にずれた位置に設けられることを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項6】
前記規制部材と前記第1供給油路との径方向のずれ量は、前記第1通孔の内径と前記従動軸の外径との差の半分よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項7】
前記ベーンロータの前記ボス部は、前記従動軸の前記第2端面から前記ベーンロータ側に突き出すノックピンが挿入可能な第2収容穴を有し、
前記規制部材の前記第1ハウジング側への飛び出し長さは、前記ノックピンの前記ベーンロータ側への飛び出し長さよりも大きいことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項8】
エンジンの駆動軸と従動軸との回転位相を変化させることにより、前記従動軸が開閉駆動する吸気弁または排気弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
前記従動軸の端部が挿通する第1通孔を有し、前記駆動軸と一体に回転する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに一端が塞がれる筒部、及び、当該筒部の他端を塞ぐ底部を有し、前記駆動軸および前記第1ハウジングと一体に回転する第2ハウジングと、
前記第2ハウジング内部に設けられるボス部、及び、前記第2ハウジング内部を進角室および遅角室に仕切るベーン部から一体に形成され、前記従動軸と一体に回転し、前記進角室および前記遅角室の作動油の圧力に応じて前記第2ハウジングに対し進角側または遅角側に相対回動するベーンロータと、
前記ベーンロータ内部に形成され、前記ベーンロータの前記第1ハウジング側の第1端面に開口し、前記従動軸の前記ベーンロータ側の第2端面に開口する第1供給油路に連通可能な第2供給油路と、
前記ベーンロータの前記ボス部の径内方向に設けられる筒状部材からなり、前記第2供給油路に連通する供給ポート、前記進角室に連通する進角ポート、及び、前記遅角室に連通する遅角ポートを有するスリーブと、
前記スリーブの径内方向で当該スリーブに対し軸方向に摺動可能に設けられ、前記供給ポートと前記進角ポートとを接続する進角位置、前記供給ポートと前記遅角ポートとを接続する遅角位置、及び、前記供給ポートと前記進角ポートおよび前記遅角ポートとの接続を遮断する遮断位置に作動可能なスプールと、
前記ベーンロータと前記従動軸との間に挟み込まれ、前記第1供給油路と前記第2供給油路とを接続可能な第2通孔を有する固定部、及び、前記第2通孔の縁から当該第2通孔内に延びるよう形成され、前記第1供給油路を開閉可能な可動弁部からなり、前記第1供給油路から前記第2供給油路への作動油の流通を許容し、前記第2供給油路から前記第1供給油路への作動油の流通を禁止するリードバルブと、
を備え、
前記ベーンロータの前記ボス部は、前記第1ハウジング側に前記第1通孔の内径よりも大きい内径をもち、前記第1端面を底部に有する第2凹部を形成し、
前記第1ハウジングは、前記第1通孔の内径よりも大きい外径をもち、前記ベーンロータの前記第2凹部内に突き出す第2凸部を形成し、
前記リードバルブは、前記第2凹部の前記第1端面と前記第2凸部の先端面との間に設けられ、前記第1通孔の内径よりも大きい外径をもつことを特徴とするバルブタイミング調整装置。
【請求項9】
前記ベーンロータの前記ボス部は、前記スリーブの径外壁に嵌合する第1嵌合孔を有し、
前記リードバルブの前記固定部は、前記スリーブの径外壁に嵌合する第2嵌合孔を有し、
前記第2嵌合孔は、前記第1嵌合孔の内径と同等の内径をもち、前記スリーブの径外壁に嵌合するとき前記リードバルブの芯を前記ベーンロータの芯と合わせる調芯機能を有することを特徴とする請求項8に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項10】
前記ベーンロータに固定され、前記第2凹部の前記第1端面から前記第1ハウジング側に突き出し、前記リードバルブと係合することで前記ベーンロータに対する前記リードバルブの相対回動を規制する規制部材をさらに備えることを特徴とする請求項8または9に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項11】
前記規制部材は、前記従動軸の前記第2端面に開口する第1収容穴に挿入可能であり、前記第2端面が有する前記第1供給油路の開口に対し径外方向または径内方向にずれた位置に設けられることを特徴とする請求項10に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項12】
前記規制部材と前記第1供給油路との径方向のずれ量は、前記第1通孔の内径と前記従動軸の外径との差の半分よりも大きいことを特徴とする請求項11に記載のバルブタイミング調整装置。
【請求項13】
前記ベーンロータの前記ボス部は、前記従動軸の前記第2端面から前記ベーンロータ側に突き出すノックピンが挿入可能な第2収容穴を有し、
前記規制部材の前記第1ハウジング側への飛び出し長さは、前記ノックピンの前記ベーンロータ側への飛び出し長さよりも大きいことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−113207(P2013−113207A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259928(P2011−259928)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】