説明

バルブ用アクチュエータ

【課題】コンパクト性を維持しつつ大減速比により得られる高出力の回転トルクを確実に伝達でき、また、優れた耐久性能や耐食性能を発揮できるバルブ用アクチュエータを提供する。
【解決手段】モータ等の回転駆動源23に連動して偏心回転する偏心体30からの偏心回転を受けて揺動回転する外歯歯車31の自転成分を、外歯歯車31に遊嵌された内ピン32を介してキャリア部33から出力可能な減速歯車機構25を用いたアクチュエータである。このアクチュエータは、偏心体30を貫通する貫通位置に軸受46を介して偏心揺動回転による反力を受ける基軸35を設け、この基軸35の下部をキャリア部33と連動した出力軸27に固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ボールバルブ、バタフライバルブ等の回転弁に搭載され、コンパクトで大減速比が得られるバルブ用アクチュエータに関し、特に、大型で高出力のバルブへの搭載に適したバルブ用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボールバルブやバタフライバルブ等の回転弁に搭載され、コンパクトで大減速比が得られるバルブ用アクチュエータとして、内接式遊星歯車機構を搭載したアクチュエータがある。このアクチュエータは、噛合い点が多く、ショックロードに強いなどの利点もある。
【0003】
この種のバルブ用アクチュエータには、内接式遊星歯車機構として、例えば、特許文献1や図6の減速装置1が搭載されている。この減速装置1は、通常、図6に示すように、電動モータ2と入力ギア3とが偏心した位置に設けられている。電動モータ2からの回転は、入力ギア3を介して偏心軸4に伝達され、この偏心軸4の偏心回転がトロコイド歯車5の揺動回転により内ピン6から略環状のキャリア7に伝達され、このキャリア7と一体に設けられた出力軸8が回転する。出力軸8とキャリア7とは、加工時の材料の無駄を少なくし、加工を容易にするために、別体に形成されたものが組み合わせて一体化されている。そして、これらを一体化する際には、出力軸8に対する偏心軸4の偏心量、装着位置、傾き等の取付け精度を確保するために、キャリア7に対して出力軸8を垂直度などの組付け精度を保った状態で接続する必要がある。この組付け精度を確保するために、通常は、出力軸8は、キャリア7に対して圧入固定される。
【0004】
また、この減速装置1は、出力軸8の上方側に偏心軸4を支持する偏心軸支持軸9が設けられている。偏心軸支持軸9は、偏心軸4を貫通するように出力軸8と一体に形成される。この偏心軸支持軸9の上方には制御軸10が接続され、この制御軸10に取付けたカムにより弁開度検出用のリミットスイッチをオンオフして駆動軸11に接続された弁体の回転角度を検出できるようになっている(図示せず)。この減速装置1を搭載したアクチュエータは、制御軸10によりキャリア7と同軸の出力軸8の回転を検出するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特許第3975141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や図6の減速装置を搭載したアクチュエータは、上述したように出力軸8をキャリア7に圧入して両者を一体化しているため、高出力の回転トルク伝達時や、バルブに異物が噛み込む等の過負荷が加わった時にこのキャリア7と出力軸8とが回転方向にずれるおそれがあり、回転伝達が正確に行なわれない場合がある。これを回避するために、両者のはめあい軸径を大きくするか、又は、はめあい長さを長くして両者をずれないようにすることが考えられるが、はめあい軸径を大きくすると、出力軸8の外径が大きくなって材料の無駄が多くなり、出力軸8とキャリア7とを別体構造にすることの利点が失われることになる。一方、はめあい長さを長くすると、減速機構1の高さが高くなり、延いては、アクチュエータ全体の大型化に繋がることになる。また、出力軸8とキャリア7とをより強固に固定するために、接着剤が必要になることがあった。
【0007】
また、出力軸8をキャリア7に圧入するためには、出力軸8とキャリア7との間に硬度差を設ける必要があり、出力軸8をキャリア7よりも硬い材料で成形する必要がある。出力軸8を高硬度にするためには焼入れが必要になるが、焼入れを実施するために鋼系の材料を使うと鋼系材料の特性により耐食性が悪くなる。この耐食性の悪化は、腐食環境下において使用したり、腐食性流体を流すためのアクチュエータにとって望ましいことではない。この理由により、耐食性を確保しつつ出力軸8とキャリア7とを一体に形成することが難しくなっていた。
【0008】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、コンパクト性を維持しつつ大減速比により得られる高出力の回転トルクを高効率で伝達でき、また、優れた耐久性能や耐食性能を発揮できるバルブ用アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、モータ等の回転駆動源に連動して偏心回転する偏心体からの偏心回転を受けて揺動回転する外歯歯車の自転成分を、外歯歯車に遊嵌された内ピンを介してキャリア部から出力可能な減速歯車機構を用いたアクチュエータにおいて、偏心体を貫通する貫通位置に軸受を介して偏心揺動回転による反力を受ける基軸を設け、この基軸の下部をキャリア部と連動した出力軸に固定したバルブ用アクチュエータである。
【0010】
請求項2に係る発明は、基軸の上部に、リミットスイッチ等の弁開度検出部材を制御する制御軸取付用の取付部を設けたバルブ用アクチュエータである。
【0011】
請求項3に係る発明は、基軸を高硬度材料で形成し、この基軸は、キャリア部又は出力軸或は双方に対して硬度差を設けたバルブ用アクチュエータである。
【0012】
請求項4に係る発明は、キャリア部と出力軸とを一体に設け、このキャリア部に基軸の下部を圧入固定したバルブ用アクチュエータである。
【0013】
請求項5に係る発明は、キャリア部を分割して上下キャリア部とし、下キャリア部と出力軸とを一体に設け、かつ、上キャリア部に基軸の下部を圧入固定したバルブ用アクチュエータである。
【0014】
請求項6に係る発明は、基軸の下部に縮径圧入部を形成し、この縮径圧入部をキャリア部又は上キャリア部に圧入固定したバルブ用アクチュエータである。
【0015】
請求項7に係る発明は、内ピン下部の途中を上キャリア部に圧入固定し、かつ、内ピンの下部を下キャリア部に着脱可能に嵌合したバルブ用アクチュエータである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、コンパクト性を維持しつつ大減速比により得られる高出力の回転トルクを、軸心が振れることなく高効率で伝達できるバルブ用アクチュエータである。この場合、減速歯車機構には、偏心体の偏心回転と平歯歯車の揺動回転とによるラジアル荷重と、出力軸の回転によるラジアル荷重とが加わって共振が発生しようとするが、この減速歯車機構全体に発生しようとする共振を出力軸に固定された基軸によって抑えることができ、安定した回転を出力できることによりバルブを正確に回転制御できる。
特に、本発明のバルブ用アクチュエータは、複数枚の外歯歯車が縦に配列された状態で偏心体の軸心に対して等角度で偏心された減速歯車に好適であり、この場合、各外歯歯車の揺動回転によるラジアル荷重が打ち消し合うため、基軸がより偏心揺動回転による反力を受け難くなる。
また、耐久性や耐食性にも優れ、出力軸が破損したり腐食したりすることも防がれる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、リミットスイッチ等の弁開度検出部材を設け、この弁開度検出部材を制御する制御軸を取付部に取付けることで出力軸の回転角度を検出して弁体を制御できる。しかも、この場合、基軸の振れが抑えられていることにより制御軸の振れも抑えられ、弁開度検出部材を誤作動させることなく正確にオンオフしてバルブを回転制御できる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、基軸をキャリア部又は出力軸或は双方に対して高精度に圧入でき、また、基軸による偏心体の支持機能を向上させて偏心体の耐久性向上も図られる。
【0019】
請求項4に係る発明によると、キャリア部と出力軸との回転方向のずれを無くして高出力の回転トルクを確実に伝達することができる。更に、キャリア部と基軸とが一体に回転して基軸の振れが抑えられるため、減速歯車機構の動作が安定する。また、キャリアに対して基軸を圧入することで簡単に取付けでき、基軸に複雑な加工を施すこともない。
【0020】
請求項5に係る発明によると、下キャリア部に出力軸、上キャリア部に基軸をそれぞれ設けることでキャリア部を分割して構成でき、出力軸をアクチュエータ本体から取り外し可能に設けることができる。
【0021】
請求項6に係る発明によると、キャリア部又は上キャリア部に対して、圧入時の力を抑えながら基軸を一体化できる。
【0022】
請求項7に係る発明によると、接続するバルブの種類やバルブ内を流れる流体の種類等に応じて出力軸の接続形態や材質の異なる下キャリア部に交換でき、あらゆるバルブや流体に対応できるバルブ用アクチュエータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明におけるバルブ用アクチュエータの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1ないし図3において、本発明におけるバルブ用アクチュエータ本体20は、ケーシング21とベース体22との内部に、モータ等の回転駆動源23と、この回転駆動源23からの動力を減速回転する中間平歯車列24と、この中間平歯車列24に噛合する内接式遊星歯車機構からなる減速歯車機構25とを有している。
【0024】
モータ23は、双方向回転又は一方向に回転可能であり、図示しないボルト等の固着手段によりベース体22の上面に固定されている。このモータ23の出力側には駆動軸(ピニオンギア)26が設けられ、この駆動軸26からの動力が中間平歯車列24に伝達可能になっている。中間平歯車列24は、中間歯車24aと入力歯車24bとからなっており、中間歯車24aの入力側には駆動軸26が噛合し、中間歯車24aの出力側には入力歯車24bが噛合している。この入力歯車24bは、後述する出力軸27と同軸に設けられている。このような構成により、モータ23からの回転は、駆動軸26、中間平歯車列24を介して減速歯車機構25に入力される。
【0025】
図3に示すように、減速歯車機構25は、偏心体30、外歯歯車31、内ピン32、キャリア部33、出力軸27、基軸35を有している。偏心体30は、略円筒状を呈し、内周側には貫通孔36を有している。また、偏心体30は、図4において、出力軸27の軸心に対して偏心量eで偏心する2列の偏心部37を軸方向に有している。偏心体30は、入力歯車24bと同軸に一体に固着され、これにより、駆動軸26が回転したときに、入力歯車24bの回転に連動して2つの偏心部37、37が偏心回転するようになっている。
【0026】
外歯歯車31は、偏心体30の偏心部37にベアリング38を介して装着され、偏心体30が回転したときに偏心部37とともに偏心回転するようになっている。この外歯歯車31は、外周側にエピトロコイド平行曲線からなる外歯31aを有し、この外歯31aは、ベース体22の内歯歯車39の内歯39aにその一部が噛合している。
【0027】
一方、内歯歯車39は、ベース体22に固定されるように形成されている。内歯39aは、外ピンをベース体22に装着することにより設けられているが、ベース体22に直接形成されたものであってもよい。
内歯歯車39と外歯歯車31との間には歯数差があり、外歯歯車31は、偏心体30から偏心回転を受けて揺動回転し、この歯数差により自転成分が出力される。例えば、内歯歯車39の歯数をn、外歯歯車31の歯数をn−αとすると、減速比は−α(n−α)となり、この減速比により外歯歯車31の自転成分が抽出される。
また、外歯歯車31には複数の内ピン孔40が設けられ、この内ピン孔40に内ピン32が遊嵌されている。内ピン32は、高硬度の材料により高精度に形成されてキャリア部33に取付けられている。
【0028】
キャリア部33は、内ピン32を取付け可能な装着孔33aを有し、この装着孔33aに内ピン32の下端側が圧入固定されて取付けられている。これにより、外歯歯車31の揺動回転は、内ピン32を介してキャリア部33に自転成分として出力される。また、キャリア部33の上面側には圧入孔41が形成され、この圧入穴41には、後述する基軸35の縮径圧入部42が圧入可能になっている。
キャリア部33の下部には、このキャリア部33と連動した出力軸27が一体に設けられている。この出力軸27には、バルブ弁軸43が接続可能に設けられ、この弁軸43は、キャリア部33が回転したときに出力軸27とともに回転するようになっている。本実施形態においてはキャリア部33と出力軸27とを一体に形成しているが、これらは別体であってもよい。
【0029】
一方、内ピン32の上端側は、基軸35と同軸に設けた補助フランジ44の装入孔44aに圧入固定されている。補助フランジ44は、上側に位置する外歯歯車31の上面側にベアリング45を介してベース体22に対して回転自在に取付けられている。この構成によって、内ピン32の上下端側は、補助フランジ44とキャリア部33とにより両持ち支持されている。
【0030】
貫通孔36は、偏心体30を貫通する貫通位置に設けられており、この貫通孔36には、軸受46を介して基軸35が設けられ、この基軸35が当該偏心体30を支持している。基軸35は、その取付け下部に縮径圧入部42が形成され、この縮径圧入部42は、出力軸27(キャリア部33)の圧入孔41に圧入固定されている。これにより、基軸35は出力軸27と一体に回転し、偏心体30の偏心揺動回転による反力を受けるようになっている。縮径圧入部42は、出力軸27に比して小径に設定されることにより、圧入に必要な力がより小さくなっている。また、縮径圧入部42の段差部分には、キャリア部33の上面33bに当接可能な当接部47が形成され、縮径圧入部42の圧入後には、この当接部47が上面33bに当接した状態となる。
【0031】
軸受46は、基軸35と出力軸27間との間に生じるラジアル荷重を受けることが可能な負荷容量の大きいニードルローラベアリングであることが望ましい。この場合、基軸35のニードルローラベアリング46の図示しないニードルローラが転動する部分は、十分な硬度と面粗さとを有することが必要である。
【0032】
また、基軸35は、縮径圧入部42の圧入孔41への圧入を容易にし、かつ、偏心体30に対して回転をスムーズにするためには、高硬度材料で形成され、キャリア部33(又は出力軸27或は双方)に対して硬度差を設けることが要求される。この場合、基軸35のHRC硬度は、50〜65程度に設定され、基軸35の材料としては、例えば、クロムモリブデン鋼(SCM435、SCM415)、軸受鋼(SUJ2)、炭素工具鋼(SK4)、合金工具鋼(SKS3)、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS440C)などがある。更に、これらの材料には、熱処理(焼入れ)を施して硬化させることが好ましい。一方、出力軸27のHRC硬度は、15〜30程度に設定するようにし、出力軸27の材料としては、炭素鋼(S45C)、球状黒鉛鋳鉄(FCD450)、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316)、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)、析出硬化系ステンレス鋼(SUS630)などがある。
【0033】
更に、図1に示すように、基軸35の上部には、制御軸48取付用の取付部35aが設けられ、この取付部35aに制御軸48が取付けられている。制御軸48は、カム部材50が取付けられ、その回転時には、このカム部材50がリミットスイッチ等の弁開度検出部材49をオンオフすることで、弁軸43を回転制御できるようになっている。弁開度検出部材49は、ケーシング21内において、カム部材50のカム部位が離接できる位置に取付けられている。
【0034】
次いで、本発明のバルブ用アクチュエータの上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
モータ23を動作させ、駆動軸26が回転すると、この回転は、中間平歯車列24によって減速された後に、中間平歯車列24の入力歯車24bから偏心体30に伝達する。この伝達により、偏心体30が回転すると、この回転によって外歯歯車31が内歯歯車39に内接しながら揺動回転する。
【0035】
そして、外歯歯車31の揺動回転時には、内歯歯車39と外歯歯車31との歯数差によって外歯歯車31の自転成分が抽出され、内ピン孔40と内ピン32との間に設けられた隙間により外歯歯車31の揺動成分が吸収されて、自転成分のみが内ピン32を介してキャリア部33に伝達される。キャリア部33が回転すると、このキャリア部33と一体に出力軸27が回転し、この出力軸27に接続された弁軸43が回転する。
【0036】
その際、内歯歯車39と外歯歯車31との噛合い動力の伝達により、噛合する内歯39aと外歯31aとの図示しない圧力角により噛合い荷重の回転中心方向に力のベクトルが発生し、このベクトルにより偏心体30にはラジアル方向の荷重が発生する。
【0037】
この荷重により、出力軸27には軸の振れが生じようとするが、アクチュエータ本体20は、偏心体30を貫通する貫通位置に軸受46を介して偏心体30を支持する基軸35を設け、この基軸35の下部をキャリア部33と一体に形成しているので、ラジアル荷重により偏心体30が振れようとすることを基軸35により抑えることができ、出力軸27の軸振れが防がれる。
【0038】
更に、基軸35を高硬度材料で形成し、この基軸35は、出力軸27(キャリア部33)に対して硬度差を設けているため、縮径圧入部42を容易にキャリア部33に圧入でき、両部品間にかじり現象が生じることを防いで精度の高い圧入を行なうことができる。このため、基軸35と出力軸27とを別体で簡単に形成できつつも、両者の一体化後には、出力軸27に対して基軸35の振れが防がれた状態で偏心体30を支持し、出力軸27、キャリア部33、基軸35の全体で減速歯車機構25の作動時の振れが抑えられる。
このとき、特に、偏心体30の揺動回転に伴うラジアル荷重を、縮径圧入部42の段差部に形成された当接部47により受けることで、ラジアル荷重が縮径圧入部42に及ぶことを低減することができる。
【0039】
また、キャリア部33と出力軸27とを一体に設けているので、これらが回転方向にずれることがなく、内ピン32を介して抽出された自転成分が出力軸27からキャリア部33を介してそのまま伝達される。よって、これらの材料強度と形状寸法から減速歯車機構25の許容伝達トルクを決定でき、この許容伝達トルクを大きく設定できる。また、動作時の伝達トルクの低下が極力抑えられ、減速回転が正確に伝達される。更に、高さ方向と径方向の寸法を抑えつつ許容伝達トルクを向上できるため、アクチュエータ本体20のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0040】
また、このキャリア部33と出力軸27との一体化により、焼入れ等の処理を施すことなく容易にこの部品を形成加工でき、また、内ピン32からキャリア部33、出力軸27という動力が伝達される経路の強度を高めることができる。その際、キャリア部33全体が低硬度であってもよいため、このキャリア部33を耐食性に優れたステンレス等によって成形でき、優れた耐食性を発揮できる。
【0041】
また、基軸35の上部に、弁開度検出部材49を制御する制御軸48を取付けているので、基軸35による振れの少ない回転を制御軸48に正確に伝達することができ、制御軸48に取付けたカム部材50により弁開度検出部材49を正確にオンオフすることができる。この場合、弁開度検出部材49を作動させるために大きいトルクを必要とすることがなく、制御軸48の回転トルクによって十分に弁開度検出部材49を作動させることが可能になっている。このように、制御軸48に大きいトルクを伝達する必要が無いため、上述した圧入縮径部42を小径に形成することもできる。
【0042】
図5においては、本発明におけるバルブ用アクチュエータの他の実施形態を示したものである。なお、この実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表わし、その説明を省略する。
この実施形態における減速歯車機構51は、キャリア部52を分割して、上キャリア部53と下キャリア部54とを設けたものである。
上キャリア部53は、略円板状を呈し、この上キャリア部53には装着孔53aが形成されている。この装着孔53aには、内ピン32下部の途中が圧入固定されている。また、上キャリア部53の中央部位には圧入孔55が貫通して形成され、この圧入穴55には、基軸57の下部が圧入固定されている。この基軸57の下部は、上記実施形態と同様に縮径した圧入部であってもよい。
【0043】
下キャリア部54は、その下部に出力軸56が一体に設けられ、この出力軸56にバルブ弁軸43が取付け可能になっている。また、上キャリア部53の装着孔53aに対応する位置には、嵌合孔54aが貫通して形成され、この嵌合孔54aに対して、内ピン32の下部が着脱可能に嵌合している。この構成により、アクチュエータ本体51は、外歯歯車31の自転成分を、内ピン32を介してキャリア部52から出力軸56に伝達可能になっている。
【0044】
従って、予め減速歯車機構51をベース体22から着脱可能に設けた状態で、下キャリア部54を内ピン32に対して着脱自在に嵌合した場合、この下キャリア部54(出力軸56)の交換等が可能になる。これにより、例えば、下キャリア部54を耐食性に優れたステンレスによって形成したり、下キャリア部54の弁軸43の着脱部位を図5のような凹状以外の凸状に設けて、この下キャリア部54を簡易的に組み替えることも可能となる。
【0045】
ここで、外歯歯車31と内歯歯車39とは、これらの歯数差が1つである場合に理論上全体の半分程度の歯が噛合して強度が確保されている。これに比較して、内ピン32と内ピン孔40との接触部分は、内ピン32の本数が少ないことに加えて、この内ピン32と出力軸27との距離が近くなっていることで強度が不足している。
特に、この実施形態では、下キャリア部54の厚さが、キャリア部52全体に対して半分程度の厚さになるため、内ピン32の下キャリア部54への圧入深さが浅くなり、動力伝達時の強度がより不足することになる。
【0046】
しかし、内ピン32の下端側がキャリア部33に圧入固定され、かつ、内ピン32の上端側が補助フランジ44に圧入固定されて、内ピン32の上下端側が両持ち支持されているので、この構造が有効に働いて揺動回転時の反力が抑えられ、剛性・強度が確保される。このため、全体のコンパクト性が保たれながら、減速機としての負荷能力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のバルブ用アクチュエータの一実施形態を示した一部切欠き正面図である。
【図2】図1における要部断面図である。
【図3】減速歯車機構の分離斜視図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】本発明のバルブ用アクチュエータの他の実施形態を示した一部切欠き正面図である。
【図6】従来のバルブ用アクチュエータを示した要部断面図である。
【符号の説明】
【0048】
20 アクチュエータ本体
23 モータ(回転駆動源)
25 減速歯車機構
27 出力軸
30 偏心体
31 外歯歯車
32 内ピン
33 キャリア部
35 基軸
40 内ピン孔
42 圧入部
44 補助フランジ
46 軸受
47 当接部
48 制御軸
49 リミットスイッチ(弁開度検出部材)
52 キャリア部
53 上キャリア部
54 下キャリア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ等の回転駆動源に連動して偏心回転する偏心体からの偏心回転を受けて揺動回転する外歯歯車の自転成分を、外歯歯車に遊嵌された内ピンを介してキャリア部から出力可能な減速歯車機構を用いたアクチュエータにおいて、前記偏心体を貫通する貫通位置に軸受を介して偏心揺動回転による反力を受ける基軸を設け、この基軸の下部を前記キャリア部と連動した出力軸に固定したことを特徴とするバルブ用アクチュエータ。
【請求項2】
前記基軸の上部に、リミットスイッチ等の弁開度検出部材を制御する制御軸取付用の取付部を設けた請求項1に記載のバルブ用アクチュエータ。
【請求項3】
前記基軸を高硬度材料で形成し、この基軸は、キャリア部又は出力軸或は双方に対して硬度差を設けた請求項1又は2に記載のバルブ用アクチュエータ。
【請求項4】
前記キャリア部と出力軸とを一体に設け、このキャリア部に前記基軸の下部を圧入固定した請求項1乃至3の何れか1項に記載のバルブ用アクチュエータ。
【請求項5】
前記キャリア部を分割して上下キャリア部とし、前記下キャリア部と前記出力軸とを一体に設け、かつ、前記上キャリア部に前記基軸の下部を圧入固定した請求項1乃至3の何れか1項に記載のバルブ用アクチュエータ。
【請求項6】
前記基軸の下部に縮径圧入部を形成し、この縮径圧入部を前記キャリア部又は上キャリア部に圧入固定した請求項4又は5に記載のバルブ用アクチュエータ。
【請求項7】
請求項5において、前記内ピン下部の途中を上キャリア部に圧入固定し、かつ、内ピンの下部を下キャリア部に着脱可能に嵌合したバルブ用アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−91097(P2010−91097A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264484(P2008−264484)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】