説明

バルブ用アクチュエータ

【課題】全体の小型化と部品点数の削減とを図りつつバルブを作動させる推力を高めてシール性を向上させ、高圧流体用のバルブにも適用でき、可動時にかかる荷重を分散させて耐久性を向上させ、内部構造を単純化して部品点数を削減し、バルブへの組付けや調整も容易なバルブ用アクチュエータを提供する。
【解決手段】エアー駆動のアクチュエータでピストン25の推力を拡大して弁35を締め切る推力拡大機構30を内蔵するバルブ用アクチュエータである。推力拡大機構30は、弁駆動用出力軸部26の上部のディスク面38上に複数のボール28が配置され、ボール28は、シャフト43下端の固定ディスク面50と、円錐形状のテーパ面状部31を有するテーパ面状部面48との間に挟持される。ピストン25の作動により、ボール28がディスク面38と固定ディスク面50との間を移動して、ピストン25の推力が出力軸部26に拡大して出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体が流れる管路に使用されるバルブに適したバルブ用アクチュエータに関し、特に、半導体製造装置等の配管系に使用されるメタルダイヤフラム弁用のアクチュエータに適したバルブ用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体製造装置等で用いられるメタルダイヤフラム弁は、金属製ダイヤフラムと、樹脂製シートパッキンとを有し、このバルブの上部側にアクチュエータが搭載されている。このアクチュエータは、ダイヤフラムの上部に配設されたダイヤフラム押圧体を直接押圧して上下動させるステムを有し、このステムによりダイヤフラム押圧体を介してダイヤフラムを押圧又は押圧解除することで、ダイヤフラムとパッキンとの間の流路を開閉させる構造になっている。
更に、ダイヤフラム弁を高圧流体用として用いる場合には、弁体による密閉性を高めるためにアクチュエータによるダイヤフラム動作時の推力を高める必要が生じる。この場合、一般的に、高圧流体用のアクチュエータは、ピストンとシリンダとを有する機構を備え、このピストン・シリンダ機構により押圧体の推力を高めるようになっている。更に、ピストンの推力をより高めるために、シリンダ構造を二段や三段などの複数段に設ける場合もある。
【0003】
一方、アクチュエータ内にエアシリンダの推力を増大するための機構が内部に設けられたメタルダイヤフラム弁が知られている。この種のダイヤフラム弁として、例えば、特許文献1のメタルダイヤフラム弁が知られている。このダイヤフラム弁は、硬球とテーパ付押圧部材とを有し、押圧部材をくさびとして硬球に作用させてダイヤフラムを押圧する力を増大させるようにしたものである。
【0004】
図14、図15においては、同文献1のダイヤフラム弁と同様の内部構造を有する従来のバルブ用アクチュエータを示している。このアクチュエータ装置1は、ボール体2、略円錐状の傾斜面3を有する小径のニードル4、すり鉢状の傾斜面部5を有する筒状部材6、ダイヤフラム押え7を押圧する押圧部材8を有している。このアクチュエータ装置1は、通常時にボデー部9内部に設けられたスプリング部材10の弾発力によってダイヤフラム弁11内のダイヤフラム弁体12の閉状態を維持しようとする、いわゆるノーマリークローズ(NC)タイプになっている。アクチュエータ装置1のボデー部9内に圧縮エアが流入すると、図15(b)の状態からボデー部9内に設けられたピストン部13が上昇し、このピストン部13とともにニードル4も図15(a)の状態まで上昇する。ニードル4が上昇すると、このニードル外周の傾斜面3に沿ってボール体2が縮径方向に移動し、このボール体2が筒状部材6の傾斜面部5にガイドされるように上方向にも移動して押圧部材8による押圧が解除され、ダイヤフラム弁体12が上昇して弁開状態になる。このとき、ニードル4が上下移動するときの図示しないストロークは、押圧部材が上下動するときのストロークの5〜6倍程度になっている。
【0005】
このアクチュエータ装置1とダイヤフラム弁11とを一体に組み込む場合には、筒状部材6、ニードル4が組み込まれたアクチュエータ装置1とダイヤフラム弁11との間にボール体2を装着した状態で、このアクチュエータ装置1とダイヤフラム弁11とを螺着によって固着する。この螺着位置を調節することでニードル4、ボール体2、押圧部材8の位置関係を決定する。そして、アクチュエータ装置1とダイヤフラム弁11との螺着を調整して位置関係を合わせ、ダイヤフラム弁体12を弁閉位置に合わせた状態で、固定用に設けた調節ネジ14により一体化して弁閉状態に設定するようになっている。
【0006】
ところで、半導体製造用の高圧用メタルダイヤフラム弁は、高圧流体への対応に加えて小型化やコストダウンも望まれている。この場合、アクチュエータのシリンダ形状を従来の四角から丸形に形成することで、小型化と材料の削減によるコストダウンに対応させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平8−6828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ステムでダイヤフラム押圧体を直接押圧して上下動させる構造のアクチュエータは、高圧流体用を流す場合にダイヤフラム押圧体による推力を高めることが必要になり、この場合、シリンダを複数段の構造に設けると、高さ方向の寸法の増加により小型化が難しくなるとともに、部品点数が増加して内部構造も複雑化していた。
【0009】
一方、特許文献1のメタルダイヤフラム弁や図14、15のアクチュエータに関しては、図14に示すように、押圧部材8の上面側にボール体2をガイドするニードル4が設けられている。このため、ニードル4の移動方向において押圧部材8が邪魔になり、ニードル4の上下動時のストロークが限られることで傾斜面3の長さも限られる。そして、ニードル4のストロークを大きく確保することが難しくなり、傾斜面3によるボール体2の作動範囲が狭くなっていた。これにより、ニードル4の上下移動時のストロークは、押圧部材8の上下動時のストロークの5〜6倍程度に限られ、ピストン部13による推力の拡大も5〜6倍程度が限界になっていた。
この推力を上げるためにはシリンダを複数段に設ける必要が生じるが、この場合、全体が大型化すると共に、部品点数も増加してコストアップにつながっていた。
【0010】
上記のようにテーパ付きの小径ニードル4の傾斜面3の外周側にボール体2を配置した構造であるため、配置可能なボール体2の数が限られ、例えば、3〜4個程度の少数個しか配置することができない。ボールが少数個であると、可動時に1個当たりのボール体2にかかる荷重が大きくなる。この場合には、摩擦が増加してボール体2がより激しく消耗したり、このボール体2からの強い押圧力で筒状部材6や押圧部材8が陥没することなどにより耐久性が乏しくなっていた。
【0011】
アクチュエータ装置1とダイヤフラム弁11とを組み込む場合、アクチュエータ装置1とダイヤフラム弁11とを螺着により一体化し、この螺着位置によってニードル4、ボール体2、押圧部材8の位置関係を調節してダイヤフラム弁体12の弁閉位置を合わせることになる。そのため調整が面倒になり、所定の調整位置に固定するための調整ネジ14が必要になって部品点数も増加していた。
【0012】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、全体の小型化と部品点数の削減とを図りつつ、バルブを作動させる推力を高めることによりシール性を向上させて高圧流体用のバルブに適用でき、しかも、可動時にかかる荷重を分散させて耐久性を向上させ、内部構造を単純化して部品点数を削減し、バルブへの組付けや調整も容易なバルブ用アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ピストンで作動するエアー駆動のアクチュエータでピストンの推力を拡大して弁を締め切る推力拡大機構を内蔵するバルブ用アクチュエータにおいて、推力拡大機構は、弁駆動用出力軸部の上部に設けたディスク面上に移動部材である複数個のボールを配置し、これらのボールをアクチュエータ本体に固定したシャフト下端の固定ディスク面とピストンの内側をくり抜いてピストンの内周開口側に沿って広がった円錐形状のテーパ面状部を形成したテーパ面状部面との間に挟持して構成されており、ピストンの作動によりディスク面に載置されたボールがディスク面と固定ディスク面との間を移動することによって、ピストンの推力を出力軸部に拡大して出力するようにしたバルブ用アクチュエータである。
【0014】
請求項2に係る発明は、ピストンで作動するエアー駆動のアクチュエータでピストンの推力を拡大して弁を締め切る推力拡大機構を内蔵するバルブ用アクチュエータにおいて、推力拡大機構は、アクチュエータ本体に固定したシャフト下端の固定部材に移動部材であるローラカムを軸着し、このローラカムの上端に設けた第1ローラ部材を、ピストンの内側をくり抜いてピストンの内周開口側に沿って広がった円錐形状のテーパ面状部を形成したテーパ面状部面に移動自在に当接し、ローラカムの下端に設けた第2ローラ部材を弁軸駆動用出力軸部のディスク面に押圧してピストンの推力を出力軸部に拡大して出力するようにしたバルブ用アクチュエータである。
【0015】
請求項3に係る発明は、弁を駆動する推力拡大機構の出力推力を弁開から弁閉に向かって全ストロークで増加させるようにしたバルブ用アクチュエータである。
【0016】
請求項4に係る発明は、テーパ面状部面、固定ディスク面及びディスク面の何れかを、二段のテーパ又は円弧部或は曲面部に形成したバルブ用アクチュエータである。
【0017】
請求項5に係る発明は、シャフトをアクチュエータ本体の上部に螺着して固定し、この螺着構造によってシャフトを上下に調整可能に設けて固定ディスクまたはローラカムの位置を調整可能に設けたバルブ用アクチュエータである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、出力軸部上部のディスク面上に複数個のボールを配置し、これらのボールをシャフト下端の固定ディスク面と、ピストン内周開口側の円錐形状のテーパ面状部面との間に挟持する推力拡大機構を有しているため、例えば、ダイヤフラムバルブにおいては弁開から弁閉に移動するとダイヤフラムの受圧面積と共に締め切り推力が増加するが、この締め切りに必要な推力に合わせた効率的な出力推力を得ることができ、弁締切りのための高推力と大流量のための高ストローク化ができる。
このとき、テーパ面状部を直線とした場合にはこの直線部でのボールによる拡大率が一定になり、二段テーパとした場合には二段の拡大率に変化するだけであるため、スプリング荷重の減少とともに出力推力も減少するおそれがあるが、テーパ面状部面、固定ディスク面、或はディスク面の何れか一つを曲面に形成することで、スプリング荷重が減少した場合でも弁開から弁閉まで連続的に出力推力を増加させることが可能になる。
複数段のシリンダを必要とすることなく全体の小型化と内部構造を単純化し、部品点数の削減を図りつつバルブ作動用の推力を高めてバルブのシール性を向上できる。このため、高圧流体用のバルブに好適であり、テーパ面状部により荷重を分散させているため、ボールやピストン、固定ディスク面の消耗を抑えて耐久性を向上できる。ピストン、出力軸部、ボール、シャフト下端の固定ディスク面を本体内に一体に組み込んでユニット化できるため、バルブへの取付けや取付け後の調整等も容易になる。
【0019】
請求項2に係る発明によると、固定部材に軸着したローラカムの第1ローラ部材がテーパ面状部面に移動自在に当接し、第2ローラ部材が出力軸部のディスク面を押圧してピストンの推力を出力軸部に拡大して出力する推力拡大機構を有しているため、ローラカムが円弧運動することでピストン内面のテーパ面状部面が直線、或は曲面の何れの場合でも、弁開から弁閉まで連続的に出力推力を増加できる。この場合、効率的な出力推力を得ることで弁締切りのための高推力と大流量のための高ストローク化ができる。
複数段のシリンダを要することなく全体の小型化と内部構造を単純化し、部品点数の削減を図りつつバルブ作動用の推力を高めてバルブのシール性を向上できる。このため、高圧流体用のバルブに好適であり、テーパ面状部により荷重を分散させて耐久性を向上でき、バルブへの組付けや調整も容易になる。
【0020】
請求項3に係る発明によると、推力拡大機構の出力推力を弁開から弁閉に向かって全スロトークで増加させることにより、複数段のシリンダを要することなく全体をコンパクト化しながら弁開から弁閉時への締め切りに要する出力推力を確実に発揮でき、高圧流体の場合でも高シール性を発揮できる。ローラカムを有する推力拡大機構とした場合には、ローラカムが円弧運動することで弁閉側に作動するほど拡大率が大きくなり、かつ、テーパ面状部の曲面等と併用して弁開から弁閉側に作動すると、更に出力推力が拡大しながら作動する。ピストン、出力軸部、ローラカム、出力軸部のディスク面を本体内に一体に組み込んでユニット化できるため、バルブへの取付けや取付け後の調整等も容易になる。
【0021】
請求項4に係る発明によると、テーパ面状部面、固定ディスク及びディスク面の何れかを二段のテーパ又は円弧部或は曲面部に設け、そのテーパ角度を変えることでピストン作動時の推力の増加割合を変えることができる。この場合、開口側を奥側よりも緩やかなテーパ角度とすることで弁開側では出力推力が小さく弁閉側の近傍では出力推力を大きくして同じスプリングを使用した場合でも高推力と高ストロークが得られる。
【0022】
請求項5に係る発明によると、シャフトを螺着構造に設けていることにより、このシャフトを回転させることで上下動させて固定ディスクまたはローラカムを位置調整することで、個々のバルブのシール位置のバラツキに応じて弁閉位置を調整できる。この場合、アクチュエータの上部にシャフトを取付けていることで、所定トルクでシャフトを回転させて簡単にシール位置を調整しながら固定ディスクまたはローラカムを推力の拡大開始位置まで締め付けでき、別の締付け用のネジ部材等を必要としないため部品点数を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のバルブ用アクチュエータの第1実施形態を示した断面図である。
【図2】図1のバルブ用アクチュエータの弁開状態を示した断面図である。
【図3】図1の要部を示した拡大断面図である。(a)は、弁閉状態を示した要部拡大断面図である。(b)は、弁開状態を示した要部拡大断面図である。
【図4】バルブ用アクチュエータの特性を示したグラフである。
【図5】本発明のバルブ用アクチュエータの第2実施形態を示した断面図である。
【図6】図5のバルブ用アクチュエータの弁開状態を示した断面図である。
【図7】バルブ用アクチュエータの要部を示した拡大断面図である。(a)は、弁閉状態を示した要部拡大断面図である。(b)は、弁開状態を示した要部拡大断面図である。
【図8】弁体付近を示した拡大断面図である。(a)は、弁閉状態を示した拡大断面図である。(b)は、弁開状態を示した拡大断面図である。
【図9】本発明のバルブ用アクチュエータの第3実施形態を示した断面図である。
【図10】図9のバルブ用アクチュエータの弁閉状態を示した断面図である。
【図11】本発明のバルブ用アクチュエータの第4実施形態を示した断面図である。
【図12】図11のバルブ用アクチュエータの弁開状態を示した断面図である。
【図13】本発明のバルブ用アクチュエータの第5実施形態を示した断面図である。
【図14】従来のバルブ用アクチュエータを示した断面図である。
【図15】(a)は、図14の要部拡大断面図である。(b)は、(a)が弁閉動作した状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明におけるバルブ用アクチュエータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1、2においては、本発明のバルブ用アクチュエータの第1実施形態を示しており、図1に弁閉状態、図2に弁開状態をそれぞれ示している。図3においては、弁の開閉状態における要部拡大断面図を示している。
【0025】
図において、バルブ用アクチュエータ本体(以下、アクチュエータ本体という)20は、シリンダ21とこのシリンダ21を被蓋するためのベース体22とを有するボデー23を備え、このボデー23内に、テーパ面状部31を形成したテーパ面状部面48、固定ディスク27に形成されたテーパ面からなる固定ディスク面50、移動部材であるボール28を有する推力拡大機構30を備えている。さらに、アクチュエータ本体20には、弁駆動用出力軸部26、ディスク29が設けられ、このアクチュエータ本体20により、外部のバルブ(弁)35を駆動可能になっている。
【0026】
テーパ面状部31は、アクチュエータ本体20内に設けたピストン25に形成されている。このテーパ面状部31は、ピストン25の内側のピストン内周面25aをくり抜いてピストン25の内周開口側に沿って広がった円錐形状に形成され、ピストン内周面25aにはこのテーパ面状部31を含んだ前記テーパ面状部面48が形成されている。本実施形態において、テーパ面状部31は、開口部側の第1テーパ面状部31aと、この第1テーパ面状部31aに続く第2テーパ面状部31bとからなるテーパ角度の異なる二段に設けられている。図示しないが、第1テーパ面状部31aのテーパ角度は、第2テーパ面状部31bのテーパ角度よりも緩やかになっている。
【0027】
テーパ面状部面48はテーパに限ることなく、これを二段のテーパ又は円弧部或は曲面部に形成するようにしてもよい。さらには、テーパ面状部面48に限らず、固定ディスク面50或は後述するディスク面であるボール載置部38を二段のテーパ又は円弧部或は曲面部に形成することもできる。何れの場合にも、テーパ角度を適宜の角度に設けることができる。この場合、上記したように作動方向に向けてより緩やかな傾斜となるようなテーパ角度とすることが望ましい。
【0028】
ピストン25は略円筒状に形成され、この1個のピストンがシリンダ21内に往復移動可能に収納されている。ピストン25の内外周側には、Oリング32、33が装着されている。ピストン25の先端側には当接部34が形成され、この当接部34は、作動時にベース体22に当接可能になっている。
【0029】
弁駆動用出力軸部26は、押え部材37の上部に配設され、この押え部材37はアクチュエータ本体20に取付けたバルブ35の弁体36に直接接触して駆動させるために設けられている。出力軸部26の固定ディスク27との対向側にはディスク29が設けられ、このディスク29面上にはボール載置部38が形成されている。出力軸部26の下部には軸部39が形成され、この軸部39は、ベース体22に形成された取付穴40に挿入されており、これにより出力軸部26全体がベース体22に対して上下動自在になっている。出力軸部26とベース体22との間にはコイルスプリング41が装着されている。出力軸部26は、コイルスプリング41により、図1において上方向に弾発付勢されている。軸部39の外周にはOリング42が装着され、このOリング42により軸部39とベース体22との間がシールされる。
【0030】
固定ディスク27は、シャフト43を介してアクチュエータ本体20の上部に固定される。その際、固定ディスク27は、シャフト43に形成された雄ねじ部44とシリンダ21に形成された雌ねじ部45との螺着により出力軸部26と対向するように配置される。この螺着構造によりシャフト43を上下に移動してその位置を調整でき、固定ディスク27の位置を調整可能になっている。この固定ディスク27の位置調節により後述するように弁閉位置調整が可能になり、バルブ35とアクチュエータ本体20との位置合わせ用の別体の調整ネジ等を必要としないため部品点数が抑えられ、アクチュエータ本体全体を回転して位置合わせをおこなう必要もない。
【0031】
シャフト43の内部には、アクチュエータ本体20の外部と、ピストン25とベース体22との間を連通する流入口46が形成されている。この流入口46を介してアクチュエータ本体20の外部よりピストン25とベース体22との間のシリンダ21内に圧縮エアが供給可能になっている。シャフト43が螺着されるシリンダ21の上部付近には、圧縮エアの流出口47が形成されている。この流出口47よりシリンダ21とピストン25との間に残ったエアが排気可能になっている。
【0032】
アクチュエータ本体20に固定されたシャフト43下端の固定ディスク27には、ディスク29と対向して外径方向に傾斜した前述の固定ディスク面50が形成されている。固定ディスク面50は、例えば、図1において水平方向に対して30°の角度に形成されている。
【0033】
ボール28は、例えば、鋼球よりなり、推力拡大機構30の内部に複数個配置される。ボール28は適宜数であればよいが、少なくとも3個以上設けることが好ましく、例えば、8〜12個程度とするとよい。この場合、出力軸部26と固定ディスク27とが安定した状態になる。
【0034】
ベース体22には、前述したように出力軸部26の軸部39が挿入可能な取付穴40が形成され、この取付穴40により、出力軸部26を作動方向に案内可能となる。ベース体22のシリンダ側外周にはオネジ部51が形成され、このオネジ部51は、シリンダ21に形成されたメネジ部52とシール部材51aを介して密封シール可能に螺着接合されている。ベース体22のバルブ装着側には雄螺子53が形成され、この雄螺子53を介してアクチュエータ本体20がバルブ35に着脱される。
【0035】
アクチュエータ本体20は、ピストン25で作動するエアー駆動のアクチュエータでピストン25の推力を拡大して弁35を締め切る推力拡大機構30が内蔵されている。推力拡大機構30内には、ピストン25のストローク中にテーパ面状部面48に当接して移動する前記ボール28が配置される。
【0036】
推力拡大機構30は、テーパ面状部面48の内側に設けられている。この推力拡大機構30は、出力軸部26の上部に設けたディスク29面上のボール載置部38に複数個のボール28が配置され、これらのボール28が固定ディスク面50とテーパ面状部面48との間に挟持されることで構成されている。シリンダ21とベース体22とは、密封状態で螺着されてアクチュエータ本体20として一体化される。ピストン25は、上下動自在に取付けられ、このピストン25とシリンダ21との間にスプリング55が配設されている。このスプリング55により押え部材37を押圧する方向にピストン25が弾発されている。
【0037】
アクチュエータ本体20のピストン25を作動させた場合には、この作動によりディスク29面上のボール載置部38に載置されたボール28がディスク面であるボール載置部38と固定ディスク面50との間を移動する。この移動により、ピストン25の推力が出力軸部26に拡大して出力可能になっている。このアクチュエータ本体20の推力拡大機構30による弁の駆動時には、推力拡大機構30の出力推力を弁開から弁閉に向かって全ストロークで増加させるようにしてもよい。
【0038】
アクチュエータ本体20は、1個で構成したピストン25の背面に取付けたスプリング55により弁35を閉止する構造であって、スプリング55の推力を推力拡大機構30により出力軸部26に拡大して出力する構造のノーマリークローズタイプの空気圧作動アクチュエータとして構成されている。ピストンは1個に限られることがなく、後述するようにピストンを複数段重ねて構成することもできる。
【0039】
バルブ35は、一般的な構造のダイヤフラム弁であり、例えば、図1に示した構造になっている。このバルブ35は、一次側流路60、二次側流路61を有する弁箱62、弁体36、弁座64、押え部材37、ボンネット65を有している。弁体36は、弁箱62の所定位置に配設され、その上部に押圧用の押え部材37が上下動自在にボンネット65により取り付けられている。バルブ35のアクチュエータ本体20との接続側には、雄螺子53と螺合可能な雌螺子66が形成され、この雌螺子66と雄螺子53とを螺合させることにより、内部に推力拡大機構30を組み込んだアクチュエータ本体20とバルブ35とをワンタッチで着脱できる。
【0040】
押え部材37は、アクチュエータ本体20の出力軸部26の軸方向への出力により上下動する。この押え部材37の上下動によって弁体36が弁座64に接離し、一次側流路60と二次側流路61とが開閉可能になる。
【0041】
上記実施形態においては、固定ディスク27側に固定ディスク面50を形成しているが、出力軸部26のボール載置部38に中心から放射状に図示しないテーパ面を形成することも可能である。このように固定ディスク27或はディスク29の何れか又は双方にテーパ面を形成し、このテーパ面とテーパ面状部面48との間にボール28を挟持してピストン25の推力を出力軸部26に拡大して出力することが可能である。これは、後述する第2、第3実施形態についても同様である。
【0042】
図1、図3(a)において、前述したようにアクチュエータ本体20は、常時においてはピストン25とシリンダ21との間に配置されたスプリング55の弾発力によりピストン25が軸方向の図における下方向に付勢されている。このとき当接部34がベース体22に当接してピストン25の下方向への移動量が規制され、推力拡大機構30に過大な力が加わることが防がれている。
【0043】
ピストン25が下降すると、複数個配置されたボール28がピストン内周面25aに形成されたテーパ面状部31に沿って内側(内径方向)に押し込まれ、固定ディスク27の固定ディスク面50に沿って移動する。このとき、固定ディスク27がシャフト43を介してアクチュエータ本体20内の所定位置に固定されているため、ボール28がディスク29のボール載置部38を半径方向の内径側に移動しながらこの出力軸部26を押し下げる。
【0044】
ボール28の軸方向の移動成分は、ディスク29を介して推力が拡大されて出力軸部26から出力される。推力拡大機構30の固定ディスク面50とボール28とは、ピストン25のテーパ面状部面48の内側に配設されているため、ピストン25と出力軸部26とが接触することなくピストン25のストロークやテーパ面状部31を長く確保できる。この機構によってピストン25のストロークを長くでき、例えばスプリング55の弾発力を10〜20倍程度の推力に拡大しながら押え部材37に伝達し、この押え部材37により弁体36を弁座64方向に強く押圧して弁閉状態を維持できる。そのため、高圧流体に適した高いシール性を確保できる。
【0045】
図3(a)において、弁開動作時においてピストン25からの下向きの力F1yがピストン25とボール28との接点Cに伝達されるときには、テーパ面状部31の作用により力の方向と大きさが分力の法則で分力となって、水平方向の力F1xとなってボール28に働く。この力F1xは接点Cでボール28から固定ディスク27に伝達されるため、この力F1xと相反する力が固定ディスク27から反力F´1xとして働く。反力F´1xは、分力の法則により接点Cにおいて下向きの力F´1yとなり、この力F´1yは、テーパ面状部31、固定ディスク面50のテーパの作用により、図3の矢印の方向に弁開から弁閉に向かって全ストロークで増加しながら10〜20倍の推力に拡大されて出力推力として出力される。
【0046】
一方、外部からシャフト43の流入口46を介してピストン25とベース体22との間に圧縮空気を供給すると、ピストン25がスプリング55を圧縮する方向(図1における上方向)に移動する。このため、固定ディスク面50により外径方向に移動する力が働いているボール28がテーパ面状部面48に沿って外径方向に移動し、出力軸部26がコイルスプリング41の弾発力で上方に移動し、弁体36と押え部材37とは流路内を流れる高圧流体の圧力で上方に移動して図2、図3(b)の弁開状態になる。その際、シリンダ21とピストン25との間のエアが流出口47を介して排気される。
【0047】
ここで、アクチュエータ本体20でバルブ35を開閉操作する前には、出力軸部26の弁閉位置(図1における最下位の状態)と、弁体36の弁閉位置を合わせておく必要がある。位置合わせ時には、ピストン25を最下位にした状態でアクチュエータ本体20とバルブ35とを固定する。次いで、シャフト43を回転させ、このシャフト43先端に設けられた固定ディスク27を上下動させてこの固定ディスク27と出力軸部26との間隔を調整しつつ、出力軸部26で弁体36を閉状態に押圧させる。このときスプリング55の弾発力で弁閉状態を維持する強さにするように所定のトルクでシャフト43を締め付ける。これによってアクチュエータ本体20の出力軸部26と弁体36との位置を合わせできる。
【0048】
このように、シリンダ21に螺合したシャフト43を回転させることで出力軸部26と固定ディスク27との間隔を簡単に調整して弁体36のシール位置を正確に調整できる。この場合、上記したようにスプリング55の弾発力を10〜20倍程度の推力に拡大して出力軸部26から出力できる。例えば、推力を10倍に拡大する場合、出力軸部26の移動量が0.1mmで推力拡大機構30の摩擦抵抗を50%とすると、ピストン25の移動量が2mmになる。このように、推力の拡大率からシャフト43の移動量に対して弁体36の移動量を把握できるため、シャフト43の所定量の移動より容易に出力軸部26を微調整してこの出力軸部26と弁体36との位置を合わせできる。
【0049】
アクチュエータ本体20による推力を、例えば10倍に拡大している場合には、弁座締め切りの移動量が0.1mmに対してピストン25の移動量は1mmとなり、弁座のシール位置に合わせて弁閉位置調整を実施する必要がある。その際には、上記のようにピストン25を最下位にした状態でシャフト43を回転調節し、固定ディスクをピストン推力程度が発生するトルクで締付けることで簡単にシール位置を調整できる。
【0050】
図4においては、図1のアクチュエータ本体20の弁開から弁閉動作時のピストン25の移動時のストローク(シリンダストローク)SLに対する、ダイヤフラム反力DF、スプリング荷重SF、アクチュエータ出力推力AFの変化を示している。弁の全開状態では、ダイヤフラム反力DF1と、図3(b)に示したスプリング荷重SF1が加わりつつアクチュエータ出力推力AF1が得られる。弁の全閉状態では、ダイヤフラム反力DF2と、図3(a)に示したスプリング荷重SF2が加わりつつアクチュエータ出力推力AF2が得られる。
【0051】
ダイヤフラム反力DFについて、ダイヤフラム弁体36はいわゆるドーム形状に形成され、このドーム部位で圧力を受圧して推力を伝達するため、図3(b)の弁開時におけるダイヤフラム反力DF1はゼロになる。弁開状態から弁閉状態に動作させると、弁体36の変形に伴って流体からの受圧面積が徐々に増加する。そして、図3(a)の弁閉時においては流体から弁体36が受ける受圧面積が最大となり、この弁体36を閉止するために要するダイヤフラム反力DF2が最大になる。
【0052】
スプリング荷重SFについては、弁開状態ではピストン25でスプリング55が圧縮されて大きくなり、全開時においてスプリング荷重SF1が最大となる。弁開状態から弁閉状態に動作させるとスプリング荷重SFは減少し、これによって伝達効率が悪くなり、弁体36を弁閉方向に作動させる力が弱くなる。図8における全閉時においては、シリンダストロークSLにおけるスプリング荷重SF2が最小となる。
【0053】
本発明のバルブ用アクチュエータの推力拡大機構30は、弁体36が全開から全閉まで動作するときの弁ストロークLにおいて、弁閉方向の出力推力AFを全ストロークで増加させるようにしているため、スプリング荷重SF1が最大の全開側では弁ストロークLを増加し、全閉側では最大の出力推力AF2を出力することが可能になる。
このように効率よく推力を拡大して伝達できることで、アクチュエータ本体20を小型化した場合でも高圧弁の高推力や大流量のための高ストローク化に対応できる。この場合、例えば、アクチュエータ本体を一般的なアクチュエータ径の70%程度の大きさに設けた場合であっても、一般的なアクチュエータと同等の圧力・流量に対応可能になる。
【0054】
上記したように、本発明のバルブ用アクチュエータは、本体20内に設けたピストン25の内周開口側に沿って広がる円錐形状のテーパ面状部31を形成したテーパ面状部面48を形成し、ピストン25のストローク中にテーパ面状部31に当接して移動する移動部材28を配置し、この移動部材28を有する推力拡大機構30を介して弁35を閉止するための出力推力を弁開から弁閉に向かって全ストロークで増加させているので、複数段のシリンダ構造を設けることなく高さ寸法を抑えて小型化しつつ高圧流体に対応できる。
【0055】
この場合、推力拡大機構30が、ピストン25の作動によりボール28がテーパ面状部面48と固定ディスク面50との間を移動してピストン25の推力を出力軸部26に拡大して出力する機構であるので、ピストン25のストロークやテーパ面状部面48を長くできる。そのため、例えば、ピストン25がニードル状である場合と比較して出力軸部26からの出力推力を大きくでき、10〜20倍の推力に拡大してより高圧の流体にも対応できる。更に、このようなシリンダ構造の単純化により、部品点数も削減できる。しかも、テーパ面状部面48、固定ディスク面50の角度を調整することで、出力推力の拡大倍率を任意に設定することも可能になる。
【0056】
テーパ面状部面48を二段のテーパに設けていることにより、このテーパ面状部面48の角度を変えてピストン作動時の推力の増加割合を調節できる。この調節により、例えば、バルブの弁閉状態の近傍では出力軸部の移動量を少なくして微流量を調整でき、バルブが弁開状態になるときには出力軸部の移動量を大きくして弁開速度を速めて弁閉から弁開への切換えを迅速に実施できる。
【0057】
テーパ面状部面48の内側に固定ディスク面50とボール28とが配設されているので、ボール28の個数を増やすことができ、ボール28の個数を増やすことでピストン25からの力を分散して出力軸部26に伝達できる。そのため、ボール28の消耗を抑えて出力軸部26の陥没や傷付きを防ぎ、耐久性を向上できる。
【0058】
アクチュエータ本体20を構成する場合には、ピストン25、出力軸部26、固定ディスク27、ボール28を有する推力拡大機構30をシリンダ21とベース体22内に組み込んだ状態で一体化できる。このため、予めアクチュエータ本体20をバルブ35と別体に設け、このバルブ35との組み込みや弁体36の調整を容易に実施可能となる。
【0059】
図5、図6においては、本発明のバルブ用アクチュエータの第2実施形態を示している。なお、以降の実施形態において、上述した実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0060】
この実施形態におけるアクチュエータは、前述の実施形態のアクチュエータ本体20と同様に、ダイヤフラム弁体36をボール28を有する推力拡大機構30で推力拡大しながらスプリング55の荷重で図8(a)の弁閉状態に作動し、密封された本体90内においてエア圧力で図8(b)の弁開状態に作動させるノーマリークローズタイプの機構を有する空気圧作動のバルブ用アクチュエータである。
【0061】
図7(a)、図7(b)に示すように、このアクチュエータ本体90では、ピストン93のテーパ面状部面48のテーパ面状部91が円弧部により形成されている。この円弧部91にボール28が当接することにより、ピストン93をスムーズに動作させることができる。さらに、ボール28とこの円弧部91との接触領域が長くなることで、ピストン93を緩やかに動作させて弁開度の微調整が可能になる。
【0062】
さらに、円弧部91は、開口部側の第1円弧部91aと、この第1円弧部91aに続く第2円弧部91bとからなる二段の異なるテーパ角度になっている。このテーパ角度は開口側が奥側よりも緩やかになっており、すなわち、図7(a)において、第1円弧部91aのテーパ角度θ<第2円弧部91bのテーパ角度θの関係になっている。これによって、第1実施形態の場合と同様に、円弧部91の角度を変えてピストン93作動時の推力の増加割合を調節できる。
【0063】
また、この実施形態におけるアクチュエータ本体90は、ピストン93の上方側に別の形状のピストン96とシリンダ部94とが設けられて3段のピストン構造に設けられている。シャフト43の内部には流入口46から分岐する分岐口95が形成されており、この分岐口95を介してピストン93とシリンダ部94との間に圧縮エアが供給される。
【0064】
ピストンを複数段に構成した場合、ピストンから1個の場合よりも推力を高めつつシリンダ外径を小さくして幅方向のサイズをコンパクト化できる。この省スペース化により、狭い場所に対してもフットプリントを小さくして集積化が可能になる。ピストンを3段以上に設ける場合には、同じ形状のピストン96とシリンダ部94とを兼用でき、これらを上下に重ねることで部品の種類の増加を防ぎつつ簡単に組立てできる。
【0065】
図9、図10においては、本発明のバルブ用アクチュエータの第3実施形態を示している。
このアクチュエータ本体70は、1個のピストン71と固定ディスク27との間にスプリング55を配置してピストン71の背面からのエア圧力を供給して弁35を閉止する構造になっている。これにより、このアクチュエータ本体70は、ピストン71の推力を推力拡大機構30により出力軸部26に拡大して出力する構造のノーマリーオープンタイプになっている。図示しないが、このノーマリーオープンタイプの場合にも、ノーマリークローズの場合と同様に複数段のピストンを重ねて構成できる。
【0066】
シャフト21の内部には、アクチュエータ本体70の外部と、ピストン25と、ボデー23を構成するシリンダ21との間を連通するエア流路72が形成され、このエア流路72を介して外部からピストン71とシリンダ21との間に圧縮空気を供給することが可能になっている。
【0067】
ピストン71とシリンダ21との間に外部より圧縮エアを供給すると、ピストン71がスプリング55の弾発力に抗してこのスプリング55を圧縮する方向(図9における下方向)に作動し、ボール28がテーパ面状部31を有するテーパ面状部面48に沿うように内径方向に移動して、出力軸部26がコイルスプリング41の弾発力に抗して下方に移動することで出力軸部26が下方に移動し、この出力軸部26が押え部材37を下方に押圧して図10の弁閉状態になる。図10から図9の弁開状態にするときには、流出口47よりエアを外部に逃すようにすればよい。
【0068】
図11、図12においては、本発明のバルブ用アクチュエータの第4実施形態を示している。この実施形態のアクチュエータ本体100は、推力を拡大するための2つのローラカム102を有する推力拡大機構101を備えている。各ローラカム102、102は、本体100に固定したシャフト43の下端のシリンダ21内に固定された固定部材105に軸着されている。固定部材105は、シャフト43の先端側にナット107で取付けられ、取付後には固定部材105がシリンダ21内の所定位置に配設される。
【0069】
シャフト43は、アクチュエータ本体100の上部に前記実施形態と同様に螺着して固定されている。この螺着構造により、シャフト43が上下に調整可能に設けられ、ローラカム102の上下位置を調整可能になっている。
【0070】
ローラカム102の上端には第1ローラ部材103が設けられ、この第1ローラ部材103は、テーパ面状部91を形成したテーパ面状部面97に移動自在に当接した状態に配設されている。テーパ面状部91は、ピストン108の内側のピストン内周面108aをくり抜いてピストン108の内周開口側に沿って広がった円錐形状に形成され、ピストン内周面108aには、このテーパ面状部91を有するテーパ面状部面97が形成されている。
【0071】
一方、ローラカム103の下端には第2ローラ部材104が設けられている。ピストン108から推力が伝達された場合には、テーパ面状部面97に当接した第1ローラ103によりローラカム102が軸着部106を中心に回転し、このローラカム102の回転によって第2ローラ部材104が出力軸部26のディスク29に押圧され、ピストン108の推力が出力軸部26に拡大して出力される。
【0072】
ピストン108とシリンダ21との間には2本のスプリング109、110が設けられており、これらのスプリング109、110のバネ定数は、例えば、第2実施形態のスプリング55のバネ定数よりも小さく設けられている。この場合、弁開から弁閉になるときのスプリングの荷重の減少が抑えられる。
【0073】
アクチュエータ本体100は、前述の推力拡大装置30と同様にバルブ35に取付け可能になっている。バルブ35への取付け時には、雄螺子53と雌螺子66とを螺合することで、内部に推力拡大機構101を組み込んだアクチュエータ本体100と、バルブ35とをワンタッチで着脱できる。
【0074】
図11のアクチュエータ本体100において、常時においてはスプリング55の弾発力によりピストン108が下方向に付勢される。このピストン108の下降により上部側のローラ103がテーパ面状部面97に沿って回転しながら、ローラカム102が軸着部106を中心に回転する。このときローラカム102は、軸着部106を中心として立設する方向に回転するため、下部側のローラ104が回転しながらディスク29を下方に押すことでこのローラ104により出力軸部26が押し下げられる。その際、ピストン108からの推力が拡大しながら伝達される。ローラカム102を用いた推力拡大機構101の場合には動力変換効率を高めることが可能になり、図に示した1個のピストンによって十分な推力を得ることができる。さらに、このときにもボールを移動部材とした場合と同様に、ピストンを複数段重ねて構成することでさらに推力を高めつつコンパクト化することができる。
【0075】
図12において、流入口46からピストン108とベース体22との間に圧縮エアを供給したときにはピストン108がスプリング109、110を圧縮しながら上昇し、これに伴って上部側のローラ103がテーパ面状部面97に対して回転しながらローラカム102が軸着部106を中心に左右に傾倒する方向に回転する。これにより下部側のローラ104の位置が図11の場合よりも上方側に移動し、この移動に伴って出力軸部26がコイルスプリング41の弾発力で上方に移動して弁開状態になる。
このように、ボール28の代わりにローラカム102を用いて推力拡大機構101を設けることができ、さらには、推力拡大機構をこれら以外の構造に設けることもできる。このアクチュエータ本体100の場合にも、前述したアクチュエータ本体20の場合と同様に、弁を駆動する推力拡大機構101の出力推力を弁開から弁閉に向かって全ストロークで増加させることができる。
【0076】
また、アクチュエータ本体100はノーマリークローズタイプであるが、ボール28を利用した推力拡大機構の場合と同様にノーマリーオープンタイプに構成することもできる。何れの場合にも、全開から全閉までの弁体36の弁閉方向の出力推力を流体圧による反力よりも常に大きい状態で増加させることができる。
【0077】
図13においては、本発明のバルブ用アクチュエータの第5実施形態を示している。
このアクチュエータ本体80は、内部に推力拡大機構を有しない一段のシリンダ構造を有するアクチュエータ構造になっており、前述したアクチュエータ本体20、70と同一のベース体22を共通化して利用したものである。
このように、ベース体22を共通化して、内部構造の異なるアクチュエータ本体20、70、80を構成することができるため、バルブの用途や使用箇所などに応じて内部構造や大きさの異なるアクチュエータとして製品の付加価値を高めることができる。更には、例えば、メタルダイヤフラムバルブ以外の上下動により作動する構造のバルブを取付けることも可能であり、何れの場合においても、ベース体の雄螺子とバルブの雌螺子とを螺合することにより簡単に着脱可能な構成に設けることができる。
【符号の説明】
【0078】
20 アクチュエータ本体
25 ピストン
26 出力軸部
27 固定ディスク
28 ボール(移動部材)
29 ディスク
30 推力拡大機構
31 テーパ面状部
35 バルブ(弁)
43 シャフト
48、97 テーパ面状部面
50 テーパ面
55 スプリング
102 ローラカム
103 第1ローラ部材
104 第2ローラ部材
105 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンで作動するエアー駆動のアクチュエータでピストンの推力を拡大して弁を締め切る推力拡大機構を内蔵するバルブ用アクチュエータにおいて、前記推力拡大機構は、弁駆動用出力軸部の上部に設けたディスク面上に移動部材である複数個のボールを配置し、これらのボールをアクチュエータ本体に固定したシャフト下端の固定ディスク面とピストンの内側をくり抜いてピストンの内周開口側に沿って広がった円錐形状のテーパ面状部を形成したテーパ面状部面との間に挟持して構成されており、前記ピストンの作動により前記ディスク面に載置された前記ボールが前記ディスク面と固定ディスク面との間を移動することによって、前記ピストンの推力を前記出力軸部に拡大して出力するようにしたことを特徴とするバルブ用アクチュエータ。
【請求項2】
ピストンで作動するエアー駆動のアクチュエータでピストンの推力を拡大して弁を締め切る推力拡大機構を内蔵するバルブ用アクチュエータにおいて、前記推力拡大機構は、アクチュエータ本体に固定したシャフト下端の固定部材に移動部材であるローラカムを軸着し、このローラカムの上端に設けた第1ローラ部材を、ピストンの内側をくり抜いてピストンの内周開口側に沿って広がった円錐形状のテーパ面状部を形成したテーパ面状部面に移動自在に当接し、ローラカムの下端に設けた第2ローラ部材を弁軸駆動用出力軸部のディスク面に押圧して前記ピストンの推力を前記出力軸部に拡大して出力するようにしたことを特徴とするバルブ用アクチュエータ。
【請求項3】
弁を駆動する前記推力拡大機構の出力推力を弁開から弁閉に向かって全ストロークで増加させるようにした請求項1又は2に記載のバルブ用アクチュエータ。
【請求項4】
前記テーパ面状部面、固定ディスク面及びディスク面の何れかを、二段のテーパ又は円弧部或は曲面部に形成した請求項1乃至3の何れか1項に記載のバルブ用アクチュエータ。
【請求項5】
前記シャフトを前記アクチュエータ本体の上部に螺着して固定し、この螺着構造によって前記シャフトを上下に調整可能に設けて前記固定ディスクまたはローラカムの位置を調整可能に設けた請求項1乃至4の何れか1項に記載のバルブ用アクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−37048(P2012−37048A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118179(P2011−118179)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(501417929)株式会社キッツエスシーティー (22)
【Fターム(参考)】