説明

バルブ駆動用アクチュエータ

【課題】増締め操作領域を確保しつつバルブとの取付け部分をコンパクトに形成してバルブ取付け後の全体高さを低くでき、しかも、部品点数を少なくしてバルブ取付け時の作業工数を小さくできるバルブ駆動用アクチュエータを提供する。
【解決手段】往復動するピストンロッド7の直線運動を回転運動に変換する回転変換機構6を内蔵したハウジング1の少なくとも一方側にシリンダユニット2を設けたバルブ駆動用アクチュエータである。このバルブ駆動用アクチュエータは、ハウジング1の下部とシリンダユニット2の内方端面2aで形成される空間領域Sにおいて、バルブ取付面13と増締め操作領域Tを有するブラケット12とがハウジング下面1aに一体に垂下形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、単作動型のみならず複作動型の空気圧式アクチュエータに好適で、バルブ用グランド部の増締め機能も有効に発揮されるバルブ駆動用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスプラント等の大流量のガス供給ラインの大型のボールバルブやバタフライバルブ等の回転弁を操作する場合、一般的には単作動型や複作動型の空気圧式アクチュエータが用いられることが多い。単作動型のアクチュエータは、ピストンを内蔵したシリンダ部、スコッチヨーク等の変換装置を内蔵したハウジング、スプリングを内蔵したスプリングスプリングユニットを有し、シリンダ部によりピストンロッドを往運動させ、スプリングスプリングユニットによりピストンロッドを復運動させて、このピストンロッドの往復動をハウジングの変換装置で出力軸の回転運動に変換するようになっている。一方、複作動型の空気圧式アクチュエータは、圧縮空気でピストンロッドの往復動の双方の動作を行うことにより出力軸の回転運動に変換するようになっている。何れのアクチュエータの場合にも、回転弁との組付け後にはこの回転弁の内部に装着されているグランドパッキンを増締めする必要が生じる。このため、通常、ハウジングと回転弁とは、増締め操作空間を確保するためにブラケットを介して固定され、更に、アクチュエータの出力軸と回転弁のステムとはコネクタ部材を介して接続されている。
【0003】
この種の空気圧式アクチュエータとして、例えば、特許文献1に圧力空気作動式の駆動装置が開示され、この駆動装置を用いて回転弁の弁体を回動する場合が記載されている。
同文献1においては、駆動装置と回転弁とが断面略コ字形のブラケット部材を介して固定され、このブラケット部材の内方に回転弁のステムが挿入され、このステムは、コネクタ部材を介して駆動装置の出力軸と接続されている。ステムと弁本体との間にはパッキンが挿入されており、このパッキンによりステム周りのシール状態が保たれている。パッキンは、グランドボルトによりグランド部材を介して増締め可能になっている。グランドボルトやグランド部材は、ブラケット部材の下方からアクチュエータ側に内挿され、このブラケット部材の内方に配置される。このようなブラケット部材としては、断面ロ字形のものが使用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3020133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構造のアクチュエータにおいて、増締め空間用のブラケット部材は、その上部にアクチュエータを取付けるためのアクチュエータ取付面を有し、また、その下部には回転弁(バルブ)を取付けるためのバルブ取付面を有する形状であるため高さ寸法が大きくなり、これらの取付面を設けたことにより重量も重くなっていた。更に、各取付面にアクチュエータ本体並びにバルブを取付けるためのボルト・ナットが必要になるために部品点数が多くなり、このボルト・ナットを用いてアクチュエータをバルブに取付けるときの作業工数も大になっていた。
【0006】
しかも、この空気圧式アクチュエータは、ブラケット部材の内方にコネクタ部材を配置して回転弁のステムとアクチュエータの出力軸とを接続する構造であるため、コネクタ部材の配置を考慮してブラケット部材の高さを大きく設定しなければならず、その結果、このアクチュエータとバルブとを組合わせたときの高さがより大きくなっていた。このコネクタ部材を用いてアクチュエータをバルブに取付ける場合、先ず、ブラケット部材を回転弁に取付け、この回転弁のステムにコネクタ部材を装着した上で駆動装置をブラケット部材の上面に取付けなければならないために作業工数が大きくなる。
上述したブラケット部材及びコネクタ部材を用いた場合、アクチュエータが大型、例えば、出力5000N−m(約500kg−m)以上のアクチュエータであるときにより上記の傾向が顕著になる。
【0007】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、増締め操作領域を確保しつつバルブとの取付け部分をコンパクトに形成してバルブ取付け後の全体高さを低くでき、しかも、部品点数を少なくしてバルブ取付け時の作業工数を小さくできるバルブ駆動用アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、往復動するピストンロッドの直線運動を回転運動に変換する回転変換機構を内蔵したハウジングの少なくとも一方側にシリンダユニットを設けたバルブ駆動用アクチュエータであって、ハウジングの下部とシリンダユニットの内方端面で形成される空間領域に、バルブ取付面と増締め操作領域を有するブラケットをハウジングの下面に一体に垂下形成したバルブ駆動用アクチュエータである。
【0009】
請求項2に係る発明は、ハウジングの両側に空気圧シリンダユニットとスプリングユニットを配設するバルブ駆動用アクチュエータで、ピストンロッドの軸心位置で、かつハウジングの下面には、シリンダユニットとスプリングユニットの内方端面に固定する一対の脚部を垂下形成したバルブ駆動用アクチュエータである。
【0010】
請求項3に係る発明は、脚部の下端にバルブ取付面を連設してブラケットを上向き断面コ次形状に形成し、このバルブ取付面をピストンロッド側の位置とは反対方向に突設形成したバルブ駆動用アクチュエータである。
【0011】
請求項4に係る発明は、バルブ取付面には、脚部側より偏心した位置にバルブグランド挿入用の挿入口を形成して増締め操作領域を広くしたバルブ駆動用アクチュエータである。
【0012】
請求項5に係る発明は、脚部側のハウジングの底部角部にテーパ部を形成して増締め操作領域を確保したバルブ駆動用アクチュエータである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、バルブの取付け部分をコンパクトに形成できることで増締め操作領域を確保しつつバルブ取付け後の全体高さを低くでき、大型のバルブ駆動用アクチュエータであってもコンパクトなブラケットを一体に製作できることで全体高さを低く抑えることができる。しかも、部品点数を少なくできるため、バルブ取付け時における作業工数を小さく抑えてバルブを容易に取付けることが可能になる。更に、バルブに対してアクチュエータの向きを90°振り配置させてバルブの回転方向を変えて配置することも容易であり、また、単作動型、複作動型の何れの形式の空圧式アクチュエータにも好適である。アクチュエータ内の回転変換機構としては、スコッチヨーク機構以外にも、ラック・ピニオン機構、ギア機構などの各種の変換機構も採用することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、脚部をハウジングの下面に垂下形成し、この脚部にシリンダユニットとスプリングユニットの内方端面を固定することで、ハウジングの高さを抑制したコンパクトな大きさに設けることができる。これにより、ブラケットをアクチュエータのうち最も大径であるシリンダユニットから下方側に突出することも抑え、バルブ取付け後の全体高さを低く抑えることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、ブラケットの内方に挿入されたバルブの弁軸に対して、非ピストンロッド側には脚部が無いことからバルブ取付け用の増締め操作領域を確保でき、この増締め操作領域から増締め機能を有効に発揮できる。更に、バルブに対してアクチュエータの向きを90°回転させた状態で配置した場合にも、増締め作業を円滑に行うこともできる。
また、ピストンロッドの下方に脚部を形成していることで、アクチュエータの出力軸を中心とする回転モーメントを支持し、ブラケットの強度の確保と、増締め操作領域の確保とのバランスを最適な状態に確保できる。
【0016】
請求項4に係る発明によると、脚部からバルブグランド挿入用の挿入口を偏心させることで増締め操作領域を広く確保でき、狭い作業空間であっても増締め作業を容易に実施できる。
【0017】
請求項5に係る発明によると、ハウジングの底部角部に設けたテーパ部により増締め操作領域を上下方向に広く確保することができ、この増締め操作領域により増締めを容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のバルブ駆動用アクチュエータを示した一部切欠き正面図である。
【図2】図1のA−A拡大断面図である。
【図3】図1のB−B拡大断面図である。
【図4】図1のバルブ駆動用アクチュエータを90°振り配置した一部切欠き正面図である。
【図5】図4のC−C拡大断面図である。
【図6】図4のD−D拡大断面図である。
【図7】(a)はブラケットの斜視図である。(b)はブラケットの側面図である。
【図8】バルブ本体を示した一部省略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明におけるバルブ駆動用アクチュエータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のバルブ駆動用アクチュエータの一部切欠き正面図、図2は、図1のA−A拡大断面図、図3は、図1のB−B拡大断面図を示している。図8においては、バルブ駆動用アクチュエータが取付けられるバルブ本体を示している。
【0020】
本発明のバルブ駆動用アクチュエータ(以下、アクチュエータ)は、図8に示したバルブ本体4に搭載され、このバルブ本体4の弁軸5を回動させて図示しない弁体を制御可能になっている。このアクチュエータは、単作動型、複作動型の何れの作動型式であってもよいが、本実施形態ではアクチュエータをスプリングリターン型の単作動型アクチュエータとする場合を述べる。この単作動型アクチュエータは、図に示すように、ハウジング1、空気圧シリンダユニット2、スプリングユニット3を有し、これらが一体化された構造になっている。
【0021】
アクチュエータのハウジング1において、その内部には後述する回転変換機構6が内蔵され、この回転変換機構6により往復動するピストンロッド7の直線運動が回転運動に変換される。ハウジング1の少なくとも一方側にはシリンダユニット2が設けられ、ハウジング1の他方側にはスプリングユニット3が設けられている。このように本実施形態では、アクチュエータの両側に空気圧シリンダユニット2、スプリングユニット3が配設されているが、スプリングユニット3を省略した構造の複作動型とすることもできる。
【0022】
ハウジング1の下部とシリンダユニット2の内方端面2aとの間には空間領域Sが形成され、この空間領域Sにはブラケット12が設けられている。ブラケット12は、ハウジング1の下面1aに一体に垂下形成され、バルブ取付面13、脚部14を有する中空凹状を呈しており、この形状により増締め操作領域Tが形成されている。
【0023】
図2に示すように、バルブ取付面13は、脚部14の下端に連設するようにブラケット12の底面側に設けられ、このバルブ取付面13と脚部14とによりブラケット12が上向き断面コ字形状に形成される。図5に示すように、バルブ取付面13は、環状部15、脚部との接続部16とにより構成され、このうち環状部15がピストンロッド7側(脚部形成側)の位置とは反対方向に突設形成されている。この環状部15にはバルブ取付け用ボルト50のボルト孔17、バルブ本体4に形成されたグランド部20挿入用の挿入口19がそれぞれ形成されている。
【0024】
ここで、バルブ本体4のグランド部20とは、図8におけるバルブ本体4と弁軸5との間をシールする図示しないグランドパッキンを押圧するバルブグランド21、このバルブグランド21を押圧するためにバルブ本体4にねじ込まれるグランドボルト・ナット22、弁軸5の頭部23を合わせたものを対象とする。このようにバルブ本体4は、グランドパッキン構造の弁軸シール部位を有し、このバルブ本体4の上面側にはバルブ取付面13に取付け可能な取付座24が弁軸5を中心に形成されている。このバルブ本体4は、ボールバルブやバタフライバルブ等の回転弁の態様を呈している。
【0025】
図5において、挿入口19は、バルブ取付面13の脚部14側より環状部15側に偏心した位置に形成されている。この挿入口19からバルブグランド21を挿入してバルブ本体4を取付ける場合、固着用ボルト50を締付ける。
【0026】
図7(a)、図7(b)において、ブラケットの脚部14は、ピストンロッド7の軸心位置におけるハウジング1の下面1aに一対に垂下形成されて対向配置され、この脚部14によりブラケット12がシリンダユニット2とスプリングユニット3の内方端面2a、3aに固定される。図7に示すように、脚部14におけるシリンダユニット2、スプリングユニット3への各当接端面側には加工面を有する取付座部51が形成され、この取付座部51に各ユニット2、3をボルト50で固定するためのボルト孔52が形成されている。このようにボルト孔52は、ハウジング1の回転変換機構6を収納する収納部位よりも外側の下方側に形成されている。一方、ハウジング1の収納部位よりも外側の上方側には突起状の頂部53が形成され、この頂部53にもボルト孔51と平行にボルト孔54が形成されている。ブラケット12は、これらのボルト孔52、54を介してシリンダユニット2、スプリングユニット3にボルト50で固定可能になっている。
【0027】
脚部14は、図2、図7に示すように、バルブ取付面13の環状部15、より具体的には挿入口19に対してピストンロッド7側に偏心配置されている。これによりブラケット12の内方に挿入された弁軸5に対して、非ピストンロッド側には脚部14が形成されないようになっている。
【0028】
また、図6、図7(a)、図7(b)に示すように、ハウジング1の脚部14側の底部角部にはテーパ部55が形成されている。このテーパ部55により、グランドボルト・ナット22の増締め操作領域Tがより広く確保される。
【0029】
図3において、上述したハウジング1内部に設けられる回転変換機構6は、ピストンロッド7に固定されたピン8、スコッチヨーク9、出力軸10を有するスコッチヨーク機構からなり、また、ハウジング1内には、ストッパボルト11が設けられている。
【0030】
ピストンロッド7は、ハウジング1に対して往復動可能に取付けられ、このピストンロッド7の所定位置には、その往復動の方向と直交する向きにピン8が突出して装着されている。本実施形態において、ピストンロッド7が後述するスプリング18の弾性力に抗する向きに作動する場合を往動、スプリング18の弾性力の向きに作動する場合を復動とする。
【0031】
出力軸10は、ピストンロッド7と直交する方向に回動自在で、ピストンロッド7に対してスコッチヨーク9の作動に必要な長さの分、側方に配置されている。この出力軸10には、バルブ本体4の弁軸5を接続可能なステム嵌合部56が形成されており、このステム嵌合部56は、弁軸5の径に応じて予め加工することが可能になっている。ステム嵌合部56には図示しないキーが装着可能になっており、このキーを介してステム嵌合部56に弁軸5が固定される。出力軸10は、スコッチヨーク9に挿着により固着されてこのスコッチヨーク9と一体に回転可能になっている。
【0032】
スコッチヨーク9には凹状の係合部9aが形成され、この係合部9aはピン8に係合可能になっており、このピン8と係合部9aとの係合によりピストンロッド7が往復動したときにスコッチヨーク9がピン8に押されて回転し、この回転によりスコッチヨーク9と一体に出力軸10が回動するようになっている。このようにして、ピストンロッド7の往復動が回転変換機構6により出力軸10の回動に変換される。
【0033】
ストッパボルト11は、回転時のスコッチヨーク9が当接可能な位置に螺合によってハウジング1に取付けられ、スコッチヨーク9の回転時にこのスコッチヨーク9がストッパボルト11に当接して出力軸10の回転範囲が規制される。ストッパボルト11は、ハウジング1に対して螺入量が調節可能であり、これによってスコッチヨーク9の回転範囲を細かく調節できる。
【0034】
図6に示すように、ハウジング1の底部側と出力軸10との間にはベアリング57、Oリングからなるシール部材58が配設されている。ハウジング1におけるベアリング57やシール部材58の収納領域は下方に突出され、一方、ハウジング下面1aはこの突出部位から底上げした位置に設けられている。このような構造に設けることで、ハウジング1をコンパクト化しつつブラケット12の内方にシリンダユニット2やスプリングユニット3の締付け作業に必要な中空凹状部位が確保される。
【0035】
一方、図3において、アクチュエータにおけるシリンダユニット2は、筒状のシリンダケース25、円板状のピストン26、エンドカバー27、シリンダロッドガイド28を有している。シリンダケース25の開口両端にはエンドカバー27、シリンダロッドガイド28がそれぞれ取付けられ、これらの間にピストン26が内蔵されている。
【0036】
ピストン26には、ナット部材29により前記ピストンロッド7が固定され、このピストンロッド7は、シリンダロッドガイド28に形成された貫通穴28aに装着されたベアリング30、Oリング31を介してシリンダユニット2に装着される。ピストン26には2つの連通穴26a、26aが形成され、この連通穴26aにもベアリング30、Oリング31が装着されている。シリンダロッドガイド28には図示しない給排気口が設けられ、この給排気口から圧縮エアを給排気することでピストン26がシリンダケース25内を往復動し、この往復動によりピストン26に一体に固定されたピストンロッド7が往復動するようになっている。なお、アクチュエータを複作動型とする場合には、給排気口からの圧縮エアの給排気によりピストンロッド25を往復動させるようにすればよい。
【0037】
シリンダユニット2の内部には2本のセンターバー33、33が設けられ、このセンターバー33は、ピストンロッド7と平行に、エンドカバー27側のセンターバー33に形成された雄螺子33aとエンドカバー27に形成された雌螺子27aとの螺着と、シリンダロッドガイド28側の固着ナット34の螺着により固着されている。前記ピストン26は、このセンターバー33に装着されて支持された状態でシリンダケース25内を往復動する。
【0038】
図3において、アクチュエータの他方側のスプリングユニット3は、筒状のスプリングケース35と、円板状のスプリングロッドガイド36、スプリングカバー37を有し、スプリングケース35の開口両端にスプリングロッドガイド36、スプリングカバー37がそれぞれ取付けられている。このスプリングユニット3内にはスプリングロッドガイド36に形成された貫通穴36aに装着されたベアリング30、Oリング31を介してピストンロッド7が装入され、また、2つの略円板状のスプリングリテーナ38である第1リテーナ39、第2リテーナ40を介してスプリング18が内蔵されている。
【0039】
第1リテーナ39、第2リテーナ40にはピストン26と同様に2つの貫通穴39a、40aがそれぞれ形成され、この貫通穴39a、40aにはベアリング30が装着されている。さらに、第1リテーナ39の中央には取付穴39b、第2リテーナ40の中央にはピストンロッド7の外径よりもやや大きい内径の穴部40bが設けられ、第1リテーナ39は、取付穴39bより突出させたピストンロッド7端部に固定ナット41により固定され、第2リテーナ40は、第1リテーナ39とスプリングロッドガイド36との間に穴部40bを介してピストンロッド7に摺動自在に装着されている。この装着構造により、第1リテーナ39は、ピストンロッド7と一体にスプリングユニット3内を往復動自在になり、第2リテーナ40は、第1リテーナ39の往復動に応じてスプリング18を拡縮しながらピストンロッド7を摺動する。何れのリテーナ39、40も、ベアリング30を介してセンターバー43に装着され、このセンターバー43に対して摺動自在になっている。
【0040】
スプリング18は、大径スプリング44、小径スプリング45からなり、各スプリング44、45は2分割に分割されている。これによってスプリング18(大径スプリング44、小径スプリング45)は、ピストンロッド7の往復動方向に直列に2組配置される。分割スプリング18は、第1リテーナ39と第2リテーナ40との間、第2リテーナ40とスプリングロッドガイド36との間にそれぞれ装着され、この分割スプリング18の間に第2リテーナ40が配設される。この場合、4本のスプリング18は、スプリングリテーナ38で芯出しされながら保持されて倒れが防止された状態で設置されるため、ピストンロッド7のスムーズな作動が可能になっている。
【0041】
これにより、スプリング18は、スプリングリテーナ38に外端面が当接した状態でこのスプリングリテーナ38とハウジング1取付け側との間に弾発した状態で保持されている。
シリンダユニット2のシリンダ室に圧縮エアが給気された場合には、この圧縮エアによりピストン26が往動し、ピストン26と一体のピストンロッド7の往動によってスプリング18が引き縮められてその弾性力が蓄勢される。このように、スプリング18は、ピストンロッド7のシリンダユニット2との他側にピストンロッド7の往復動により拡縮可能な状態で内蔵されている。
【0042】
センターバー43は、スプリングユニット3の内部にピストンロッド7と平行に少なくとも2本配置され、このセンターバー43、43は、このセンターバー43に形成された雄螺子43aとスプリングカバー37に形成された雌螺子37aとの螺着と、スプリングロッドガイド36側の固着ナット34の螺着により固着されている。
【0043】
上記のシリンダユニットやスプリングユニットは、上記以外の構造であってもよく、ハウジングの一方側或は双方側の脚部に固定可能であれば各種の構造を採用できる。
【0044】
続いて、上述したアクチュエータをバルブ本体4に取付ける場合を説明する。ここで、アクチュエータをバルブ本体4に取付ける場合、バルブ本体4の流路の軸心P方向にピストンロッド7の軸心Oが平行になる向きと、軸心Pと軸心Oとが互いに直交する向きになる取付けが考えられる。このため、前者を正規の配置、後者を90°振り配置とし、それぞれの場合について述べる。
【0045】
アクチュエータを正規の配置に取付ける場合、シリンダユニット2やスプリングユニット3が接続されたアクチュエータのハウジング1を図8に示したバルブ本体4に上方から組み入れるようにする。具体的には、図6において、バルブ本体4のグランド部20を、アクチュエータのハウジング1に一体に設けられたブラケット12に形成した挿入口19から内挿するように組み入れる。
【0046】
このとき、ブラケット12の内方に挿入された弁軸5を出力軸10の下方から挿入して接続する。本実施形態では、前述したとおりキーにより弁軸5と出力軸10とを接続することで、弁軸5の軸方向に対してアクチュエータを移動可能にしつつこの弁軸5と出力軸10との回転方向の移動を規制するようになっているため、アクチュエータによる回転力が出力軸10から弁軸5に確実に伝達される。
【0047】
この状態で図1に示すようにピストンロッド7の軸心Oがバルブ本体4の流路の軸心Pに平行になるようにアクチュエータの向きを調整してバルブ本体4に装着し、ブラケット12のバルブ取付面13をバルブ本体4の取付座24に載置させ、ボルト孔17にボルト50を螺着してアクチュエータをバルブ本体4に取付ける。
【0048】
アクチュエータが正規配置によってバルブ本体4に取付けられた場合、このバルブ本体4のグランドボルト・ナット22は、図2に示すように脚部14と平行に配置された状態になる。従って、グランドボルト・ナット22の増締め作業をレンチ等の工具59を用いて脚部14に干渉することなく行うことができる。
【0049】
アクチュエータを90°振り配置によりバルブ本体4に取付ける場合には、図4に示すように、バルブ本体4の流路軸心P方向に対してピストンロッド7が直交する向きになるように弁軸5と出力軸10及びアクチュエータとバルブ本体4とを組付け、この状態で正規の配置と同様にバルブ取付面13を取付座24に載置させ、ボルト孔17にボルト50を螺着してアクチュエータをバルブ本体4に取付ける。
【0050】
この90°振り配置時には、図5に示すようにバルブ本体4のグランドボルト・ナット22が脚部14との対向位置に配置されることになる。このような配置の場合には、グランドボルト・ナット22の増締め作業が脚部14の干渉を受け易くなる。
【0051】
しかし、本実施形態におけるアクチュエータでは、脚部14がバルブ取付面の環状部15、より具体的には、グランド挿入口19に挿入されたバルブ本体4のグランド部20に対して偏心配置し、脚部14側より偏心した位置にバルブグランド挿入口19を形成して増締め操作領域Tを広くしているので、弁軸5に対して非ピストンロッド側では平面視における角度αが約180°の範囲に亘って形成される。このため、この角度αをグランドボルト・ナット22の増締め操作領域として確保して増締め作業を円滑に行うことができる。
【0052】
また、図5において、弁軸5に対してピストンロッド7側におけるグランドボルト・ナット22の増締め操作領域Tは、脚部14が存在しているために平面視における角度βが約40°程度の範囲に制限される。しかし、本実施形態においては、図6、図7に示すように、脚部14側のハウジング1の底部角部にテーパ部55を形成して増締め操作領域Tを広く確保しているので、このテーパ部55を設けた開口側の斜め上方から増締め用の工具をグランドボルト・ナット22に向けて挿入してこのグランドボルト・ナット22を簡単に増締めできる。
【0053】
本発明のバルブ駆動用アクチュエータは、上記したようにハウジング1の下部とシリンダユニット2の内方端面2aで形成される空間領域Sに、バルブ取付面13と増締め操作領域Tを有するブラケット12をハウジング下面1aに一体に垂下形成しているので、増締め操作領域Tを確保しつつ、アクチュエータ全体の高さ寸法を抑えてその重量も軽減できる。更に、ブラケット12を一体化していることで部品点数を削減でき、バルブ本体4への取付けも容易になるため作業工数も少なくできる。
このとき、スコッチヨーク9に挿着された出力軸10のステム嵌合部56に弁軸5をキーで固定していることで、この出力軸10と弁軸5とを接続するためのコネクタ等を用いる必要がないためバルブ本体4取付け後のアクチュエータの高さをより低く抑えることができると共に、ステム嵌合部56に嵌合することで弁軸5を容易に接続できる。
【0054】
しかも、このアクチュエータは、ピストンロッド7の軸心Oの位置でかつハウジング下面1aに、シリンダユニット2とスプリングユニット3の内方端面2a、3aへのボルト固定用の一対の脚部14が垂下形成され、ハウジング1の収納部位よりも外側の脚部14と頂部53とを介してハウジング1にシリンダユニット2、スプリングユニット3をボルト50で取付けているため、ハウジング1の高さをより低く抑制して一層コンパクトな大きさにできる。
【0055】
更に、脚部14を少なくともピストンロッド7の下方に形成することで、スコッチヨーク構造によって出力軸10を中心にピストンロッド7に沿って生じる回転モーメントを支持することができる。この脚部14の偏心構造により、ブラケット12の強度の確保と、グランドボルト・ナット22の増締め操作領域Tの確保とのバランスを最適な状態に保つ形状に設けることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ハウジング
1a 下面
2 シリンダユニット
2a 内方端面
3 スプリングユニット
3a 内方端面
6 回転変換機構
7 ピストンロッド
12 ブラケット
13 バルブ取付面
14 脚部
19 挿入口
55 テーパ部
S 空間領域
T 増締め操作領域
P、O 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動するピストンロッドの直線運動を回転運動に変換する回転変換機構を内蔵したハウジングの少なくとも一方側にシリンダユニットを設けたバルブ駆動用アクチュエータであって、前記ハウジングの下部と前記シリンダユニットの内方端面で形成される空間領域に、バルブ取付面と増締め操作領域を有するブラケットを前記ハウジングの下面に一体に垂下形成したことを特徴とするバルブ駆動用アクチュエータ。
【請求項2】
前記ハウジングの両側に空気圧シリンダユニットとスプリングユニットを配設するバルブ駆動用アクチュエータで、前記ピストンロッドの軸心位置で、かつ前記ハウジングの下面には、前記シリンダユニットとスプリングユニットの内方端面に固定する一対の脚部を垂下形成した請求項1に記載のバルブ駆動用アクチュエータ。
【請求項3】
前記脚部の下端にバルブ取付面を連設して前記ブラケットを上向き断面コ次形状に形成し、このバルブ取付面を前記ピストンロッド側の位置とは反対方向に突設形成した請求項1又は2に記載のバルブ駆動用アクチュエータ。
【請求項4】
前記バルブ取付面には、脚部側より偏心した位置にバルブグランド挿入用の挿入口を形成して増締め操作領域を広くした請求項3に記載のバルブ駆動用アクチュエータ。
【請求項5】
前記脚部側の前記ハウジングの底部角部にテーパ部を形成して増締め操作領域を確保した請求項3に記載のバルブ駆動用アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−92927(P2012−92927A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241991(P2010−241991)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】