説明

バルーン拡張式心臓弁を配置するためのシステム

望ましい操作形状をとるように、バルーン拡張式(すなわち、塑性的に拡張可能な)人工心臓弁(20)を配置するためのシステムおよび方法。該システムは、その望ましい管状または他の形状へ拡張するように、該心臓弁の不均一な拡張抵抗を適応させるバルーン(40)を含む。該心臓弁は、1つの端部、通常、流入端部(22)に隣接する実質的により多くの構造要素を有していてもよく、該バルーンは、該弁が管状形状となるように、流出端部の前に該流入端部を拡張するためにテーパがつけられている。代替的に、該弁の該流入端部に隣接する、より大きな直径の近位区間を有する段付きバルーンを使用してもよい。方法は、塑性的拡張式人工心臓弁の内部へ強制される非線形な拡張を適用し、拡張に対しより大きな抵抗の領域を克服し、均一な拡張をもたらすステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張式人工心臓弁を移植するシステムに関し、具体的には、そのような心臓弁を配置するための形状をした拡張部材に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁の置換は、一般に狭窄と呼ばれる、生来の心臓弁の狭小化がある際、あるいは、弁尖が石灰化するなど、生来の弁が漏出するまたは逆流する際に示されることがある。1つの治療による解決では、生来の弁は切除され、生物学的または機械的弁のいずれかで置換することができる。人工弁は患者の線維性心臓弁環に付着し、弁尖は存在する場合と存在しない場合がある。
【0003】
従来の心臓弁操作は、かなり侵襲的な心臓切開法であり、突然死だけでなく、出血、感染、脳卒中、心臓発作、不整脈、腎不全,麻酔処方に対する副作用をも含む著しい危険性の結果をもたらす。全体で患者の2〜5%が、外科手術中に死亡する。平均的な入院期間は、1週間から2週間の間で、完全な回復にはさらに数週間から数ヶ月が必要である。
【0004】
近年、「低侵襲」外科手術および介入心臓病学における進歩により、研究者は、胸を開かず、または患者に心肺バイパス術を施すことなく、遠隔移植拡張式弁を使用して、心臓弁の置換を追及することを奨励されてきた。例えば、Fort Lee,N.J.and Edwards Lifesciences of Irvine,CAの経皮弁技術(Percutaneous Valve Technoligies、「PVT」)は、柔軟な弁尖を有する生体弁と一体化されたバルーン拡張式ステントを開発してきた。Cribier−EdwardsTMの大動脈経皮人工弁(Aortic Percutaneous Heart Valve)の名称で市販されるステント/弁装置は、生来の疾患を持つ弁全体に配置され、弁を永久に開くように維持し、それによって生来の弁を切除する必要性を軽減する。装置は、蛍光透視を使用した局所麻酔下での、心臓カテーテル検査室における経皮送達用に設計され、それによって、全身麻酔および心臓切開操作を回避する。その他の経皮的または外科的送達拡張式弁もまた、試験途上である。包括的目的のため、全分野を拡張式弁の送達および移植として本願に表示する。
【0005】
拡張式心臓弁は、アンカーとしてバルーンまたは自己拡張ステントのいずれかを使用する。拡張式弁と周囲の弁輪との間の接触の均一性は、弁尖があってもなくても、弁傍の漏出が発生しないほどであるべきで、それゆえ適切な拡張は非常に重要である。おそらく、弁を所定の位置へ拡張させての、弁尖の接合の質がより問題である。接合は、個々の柔軟な弁尖が弁開口部内で一緒になり、流出を閉鎖する度合いを指す。柔軟な弁が適切に拡張しないと起こりうるのだが、弁尖がよく合致しない場合、逆流が発生することがある。これらおよびその他の問題により、弁の適切な移植は非常に重大である。しかしながら、心臓切開操作とは異なり、移植部位は直接には到達できない場所にあり、弁は間接的な可視化(例えば、蛍光透視画像)の下、カテーテルまたはカニューレの端部に、遠隔で移植されなくてはならない。成功する移植の割合を向上させるいずれのシステムも望ましいのは言うまでもない。
【0006】
バルーン拡張式心臓弁は、通常、透明なナイロンの円筒状バルーンでの拡張が必要とされる。膨張流体は、種々の造影剤と混合された食塩水から成る。混合物の固有の粘度により膨張/収縮時間は増加するが、これは使用の際バルーンが標的弁輪を閉鎖し、オフポンプ、または心臓を鼓動させたままの手順がますます増えることになるために望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
拡張式人工心臓弁へ現在関心が高まっていることから、移植成功のため時間を減少させ、可能性を増大させる移植システムおよび技術への必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、望ましい操作形状をとるように、バルーン拡張式(すなわち、塑性的に拡張可能な)人工心臓弁を配置するシステムおよび方法を提供する。該システムは、その望ましい管状または他の形状へ拡張するように、該心臓弁で不均一な拡張抵抗に適応する拡張部材を含む。該心臓弁は、1つの端部、通常、流入端部に隣接するより多くの構造要素を実質的に有していてもよく、該拡張部材は、該弁が管状形状となるように、流出端部の前に該流入端部を拡張するようにテーパがつけられてもよい。
【0009】
本発明の一側面は、収縮状態および拡張状態、ならびにその軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する構成を有するバルーン拡張式人工心臓弁を備える、人工心臓弁移植システムである。拡張部材は、収縮状態である該人工心臓弁内に位置付けられ、拡張状態に変換するために、該心臓弁に放射状に外側へ向かう力を印加することができる。該拡張部材は、その軸長に沿って、該心臓弁に不均一に放射状に外側に向かう力を印加するように構成される。好ましくは、最も大きな拡張能力のある該拡張部材の区間が、該人工心臓弁の最も剛性の高い部分内に位置することができるように、該拡張部材は、該拡張部材を該人工心臓弁内に位置合わせするための、少なくとも1つの外部マーカを含む。
【0010】
一実施形態では、該拡張部材は、他の区間より直径が大きく拡張した少なくとも1つの区間を有するバルーンである。例えば、該バルーンは、円錐または段付き直径弁の接触部分を有する。望ましくは、該バルーンは、造影剤でドープされた材料から成る。
【0011】
本発明の別の側面は、流入端部および流出端部を有するバルーン拡張式人工心臓弁であって、外側ステントと、該ステントに付着する柔軟な内側弁尖とを含み、その軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する、人工心臓弁を備える人工心臓弁移植システムである。該人工心臓弁は、該心臓弁の該流出端部より該流入端部に隣接してより集中する該弁尖とステントとの間の付着構造を有する等、その流出端部よりその流入端部でより剛性が高くてもよい。該人工心臓弁内に配置されるバルーンは、該心臓弁のより剛性の高い部分内に位置するより大きな直径の区間と、該心臓弁のより柔軟な部分内に位置するより小さな直径の区間とを有する、非円筒状拡張プロファイルを有する。例えば、該バルーンは、円錐または段付き直径の弁接触部分を有する。望ましくは、該バルーンは、造影剤でドープされた材料から成る。また、該バルーンは、最も大きな拡張能力のある該バルーンの区間が、該人工心臓弁の最も剛性の高い部分内に位置することができるように、該バルーンを該人工心臓弁内に位置合わせするための、少なくとも1つの外部マーカを含んでもよい。
【0012】
人工心臓弁を移植する方法も開示する。該方法は、収縮状態および拡張状態、ならびにその軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する構成を有する、バルーン拡張式人工心臓弁を提供するステップを含む。拡張部材は、収縮状態の該人工心臓弁内に提供される。該組み合わされた人工心臓弁および拡張部材は標的弁輪へ送達され、不均一に放射状に外側へ向かう力は、その軸長に沿って該心臓弁へ該拡張部材により提供され、拡張状態へ該心臓弁を転換する。
【0013】
該拡張部材は、他の区間より大きな拡張した直径の、少なくとも1つの区間を有するバルーンであってもよい。好ましくは、該バルーンは、造影剤でドープされた材料から成り、その場合、該心臓弁へ不均一に放射状に外側へ向かう力を提供するステップは、どんな造影剤も含まない食塩水で該バルーンを満たすステップから成る。該拡張部材は、少なくとも1つの外部マーカを含んでもよく、該方法は、最も大きな拡張能力のある該拡張部材の区間が、該人工心臓弁の最も剛性の高い部分内に位置することができるように、該拡張部材を該人工心臓弁内に位置合わせするステップをさらに含む。好ましくは、該拡張部材はバルーンであり、該人工心臓弁のために、該バルーンの軸方向の位置を示す2つのマーカがある。さらに、該マーカは、該弁が該バルーン上でどの向きに位置すべきかを示してもよい。
【0014】
本発明の本質および利点のさらなる理解は、続く説明および請求項で説明され、特に付随する図面と併せて考慮する際には、似た部分は似た参照番号を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、その中に弁尖を有する概ね円筒状外側ステントで形成される、典型的な拡張式人工心臓弁の斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの人工心臓弁の拡張された側面図である。
【図1C】図1Cは、図1Aの人工心臓弁の収縮した側面図である。
【図2A】図2Aは、カテーテル上の円筒状バルーン周囲に取り付けられた、収縮状態にある典型的な拡張式人工心臓弁の側面図である。
【図2B】図2B、図2Cは、円筒状バルーンがその1つの端部をどのように有害に膨らませることができるかを図示する、図2Aの人工心臓弁の拡張における2段階である。
【図2C】図2B、図2Cは、円筒状バルーンがその1つの端部をどのように有害に膨らませることができるかを図示する、図2Aの人工心臓弁の拡張における2段階である。
【図3A】図3Aは、本発明に従う、典型的な人工心臓弁拡張バルーンの側面図である。
【図3B】図3Bは、本発明に従う、典型的な人工心臓弁拡張バルーンの側面図である。
【図3C】図3Cは、本発明に従う、典型的な人工心臓弁拡張バルーンの側面図である。
【図3D】図3Dは、本発明に従う、典型的な人工心臓弁拡張バルーンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の特徴および利点は、明細書、請求項、および添付の図面を参照することで、それらがよりよく理解されるにつれ、認識されるであろう。
【0017】
本発明は、意図される操作形状をとるように、塑性的に拡張可能な人工心臓弁を配置するための、改善されたシステムおよび方法を提供する。拡張式心臓弁は、流体閉鎖表面を提供する内側の柔軟な弁尖を支持する、外側フレームまたはステントを有する。弁は、送達用の収縮状態から、弁尖の優れた接合を確実なものとする操作形状へ拡張するように設計される。すなわち、弁尖は、血液のバックフロー、すなわち逆流を避けるために一体とならなくてはならず、配置されたステントのどんな不整列によっても、弁の有効性が落ち得る。他の最終形状も本発明により含まれるが、ほとんどの拡張式人工心臓弁は、管状の操作形状を実質的にとるステントを有する。
【0018】
本願に記載される本発明は、「塑性的に拡張可能な」人工心臓弁の適切な配置を確実にする解決法を提供する。この用語はバルーン拡張式人工心臓弁を含むが、バルーンでのみ拡張される弁に制限するとみなされるべきではない。バルーンは一般に認められたそのような心臓弁の拡張方法であるが、放射状に拡張可能な機械式フィンガまたはその他の装置等、他の配置機構を使用することも可能である。それゆえこの意味では、「塑性的拡張式」は、1つのサイズからより大きなサイズへの塑性的変形を実行する心臓弁のフレームの材料を指す。塑性的に拡張可能なフレーム材の例は、ステンレス鋼、エルジロイ(Elgiloy、主にコバルト、クロム、およびニッケルから成る合金)、チタン合金、ならびに特定の金属である。しかしながら、便宜上、用語「バルーン拡張式」人工心臓弁を本願では主に使用するが、そのような用語は「塑性的に拡張可能な」心臓弁を表すとみなされるべきである。
【0019】
本発明は、一定でない拡張抵抗の弁を適応させる。すなわち、バルーン拡張式人工心臓弁構成の詳細は、通常、流入端部である1つの端部が、縫い目など多くの構造的構成要素を所持するようなものである。弁は拡張バルーン上部に取り付けられ、移植部位に送達され、バルーンが膨張する。ほとんどの弁の軸方向の構造的不均一のため、バルーンの拡張により、弁のどの部分が最も少ない拡張抵抗を表そうとも、より多くのまたはより早い放射状拡張が引き起こされるであろう。通常、流入端部は、拡張に対してより大きな抵抗を表し、流出端部がより多く、またはより早く拡張する。本発明は、多くの異なる形状のバルーンを提供し、弁がその設計された操作形状に拡張するように、この構造上の不均一性を適応させる。弁のステントの最終形状は管状であってもよいが、同様にわずかに円錐であるか、または非直線状のプロファイルを有することもできる。当業者は、弁の性質および望ましい最終形状を所与として、適切な拡張部材(バルーン)が任意の数の弁に対して選択され得ることを理解するであろう。
【0020】
図1〜3は、流入端部22および流出端部24を有する、典型的なバルーン拡張式人工心臓弁20を図示する。弁は、内部で複数の柔軟な弁尖28を支持する、外側フレームまたはステント26を含む。図1Aは、拡張または操作形状にある弁20を示し、外側ステント26は、概して管を画定し、そこに付着し、内部で画定される円柱状空間へ延在し、お互いに接合する(coapt)3つの弁尖28がある。典型的な弁20では、3つの分離した弁尖28が各々、ステント26およびその他2つの弁尖へ、並置の線または交連に沿って固定される。もちろん、ブタの弁等、全生体弁もまた使用され得る。この意味では、「弁尖」は分離した弁尖、または全異種移植弁内の弁尖を意味する。
【0021】
典型的な弁20では、弁尖28を形成する柔軟な材料が、繊維媒介物30および複数の縫合32を介して、外側ステント28に付着する。図1Bを参照すると、ステント26は、複数の軸方向に向けられた円周方向に角度を成す支柱34によって形成される。ステント26周辺の3つの等間隔の点では、軸方向に向けられた支柱が、より実質的軸棒36によって置換される。棒36は、弁尖28の交連を適正位置に維持する縫合32を受ける一連の通し穴を含む。加えて、2列のジグザグ縫合線38は、流入端部22に最も近い、2列の角度を成す支柱34に付着する。類似型の典型的な人工心臓弁に関するさらなる詳細は、米国特許第6,730,118号に見ることができ、参照することで本願に明示的に援用される。加えて、カリフォルニア州IrvineのEdwards Lifesciencesから市販されるCribier−EdwardsTM Aortic Percutaneous Haert Valveは、類似の性質を持つもう1つのバルーン拡張式人工心臓弁であり、その構成もまた、参照することで本願に明示的に援用される。
【0022】
図面によって理解されるように、外側ステント26と内側弁尖28との間の付着構造の大部分は、流入端部22の近くに位置する。弁尖28の各々は、望ましくは、流出端部24で2点の間の弓状線に沿って接続する。この弓状線は、流入端部22の近くまで通り、従って、より多くの縫合およびその端部が必要となる。結果として、弁20は、不均一な拡張プロファイルを有する。より特定的には、弁20の流入端部22は、内部から膨張するバルーン上の拡張に対し、流出端部24よりかなり大きな抵抗を発現する。従って、流出端部は、抵抗が最も少ない通り道を成すため、弁20内から膨張する円筒状バルーンは、流入端部22よりも流出端部24でより速く、またはより大きく拡張する。図1Cは、部分的に膨張されているバルーンに、取り付けられる弁20を示す。
【0023】
この点では、軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する典型的な心臓弁20が、バルーン拡張式心臓弁の代表であることを強調することが重要である。図示する実施形態では、弁20は、その流出端部24より、その流入端部22でより剛性が高い。しかしながら、その他の弁は、外側フレーム、およびフレームの流出端部の近くに取り付けられる内側弁または弁尖構造を含むこともあり、従ってその流出端部の近くではより剛性が高い。これらの異なる構成およびその他の弁を含む用語が、「軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する弁」である。
【0024】
この不均一弁の拡張の模式図は、図2A〜2Cに見られる。図2Aは、弁20およびその収縮状態を示し、標準的な円筒状バルーン40の上にクリンプされる。バルーン40は、通常、移植位置へのガイドワイヤ44の上を通過する、カテーテル本体42上に取り付けられる。
【0025】
移植位置で、バルーン40は膨張して、弁20を配置する。図2Bは、1つの可能な成果を図示している。弁は円錐形状に拡張し、流出端部では拡張への抵抗がより小さいため、流出端部24は、流入端部22より速くより大きく拡張している。代替的に、図2Cは、流出端部24が、バルーン40の初期拡張によって弁の端部を越えて、張り出すかまたは冠状になる状況を図示する。これらのシナリオのうちのいずれかでは、弁20は、その意図される円筒形状までには拡張せず、それゆえ、内部の柔軟な弁尖の接合は損なわれる。例えば、図2Bにおける弁20の円錐形状は、棒36および弁尖交連の流出端部を、弁尖がもはや、弁開口部の中間で合致しない程度にまで分離させ得る。
【0026】
上記の通り、本発明は、異なる形状の拡張部材、またはバルーンを提供し、人工心臓弁の設計された拡張を確実にする。上記の通り、バルーンはほとんど普遍的に、拡張式心臓弁を配置させるために使用される。しかしながら、伸長したフィンガまたは水圧操作の拡張部材(すなわち、バルーンでないもの)等機械式拡張部材が利用される可能性があると考えうる。従って、拡張部材という用語は、バルーンおよびその他の変形物を含むことを意図している。
【0027】
図3Aでは、バルーン50は、カテーテル52上に取り付けられ、第1の近位テーパ54、中央弁接触部分56、および第2の遠位テーパ58を含む。弁接触部分56は、近位ショルダ60が遠位ショルダ62より大きな直径になるような、わずかに円錐上のテーパを有する。バルーン50は、バルーンとの人工心臓弁の位置合わせを容易にするために、その周囲に複数のマーカバンド64を含む。
【0028】
バルーンテーパの点で、用語「近位および遠位」は、心臓弁の弁輪への送達方向に依存するということは重要である。なぜなら心臓弁先端、および従って、カテーテルの上のバルーンの向きは、左心室の心尖部を通って進入する手順と比較して、大腿動脈から始まる心臓弁置換手順では逆となるであろうからである。図3Aのバルーン50は、本実施形態では、心臓弁20の流入端部と関連する端部である、より大きな近位ショルダ60を有し、バルーン50は、「近位」ショルダが弁の流出端部に一致するであろう経皮的手順とは反対の、先端方向の送達用に向けられていること示している。
【0029】
例えば、上記の拡張式心臓弁20は、収縮バルーン50の周囲で拡張状態に位置する。マーカバンド64は、適切な膨張のため、弁を軸方向にバルーン54上に位置させるために使用される。バルーン50の不均一な拡張プロファイルのため、弁20の軸方向の位置は、最も大きな初期の放射状に外側へ向かう力を印加することができるバルーン部分の位置が、弁のより剛性の高い領域と位置が合うことを確実にするために、最も重要である。特に、弁20は、流入端部22が第1のショルダ60により近く、その流出端部24が第2のショルダ62により近くなるように、バルーン50上に位置される。続いて、人工弁20は、体内への送達、および標的移植部位への接近のために、バルーン50の周囲にクリンプされる。バルーン50が膨張する際、第1のショルダ60は初め、第2のショルダ62より速く、極度により大きく拡張し、従って、人工心臓弁20およびその流入端部22の拡張に対して増加した抵抗を補う。拡張に対する人工心臓弁の不均一抵抗の注意深い計算によって、テーパのついたバルーン50は、弁がその完全な直径および適切な操作形状(通常、シリンダまたは浅い円錐台形状)にまで拡張するように、選択されることができる。
【0030】
図3Bは、近位テーパ72、中央弁接触部分74、および遠位テーパ76を有する、本発明の代替の心臓弁拡張バルーン70を示す。また、弁接触部分74は、第1のショルダ78から第2の端部80へ、内側へテーパがついている。それからさらにテーパがつく代わりに、バルーンの遠位端部は、遠位テーパ76へ導く、外方向へ形成されるフランジ82を画定する。また、マーカバンド84は、その周辺の人工弁の適切な位置付けのため、弁接触部分74内のバルーン70の外周周辺に提供される。フランジ82は、さらに、弁20の流出端部24が当接し得る、明確な隆線および触覚的マーカを提供することによって、弁の位置決めを援助する。
【0031】
図3Cはさらに、近位区間92およびより小さな遠位区間94を含む、本発明のバルーン90を提供する。テーパのついた段付き減少部96は、近位区間92と遠位区間94とを接続する。バルーン90上のマーカバンド98は、概して、その周辺の人工心臓弁の設置限界を示す。それゆえ、流出端部24は、より小さな遠位区間94に隣接し、流入端部22は、より大きな近位区間92の周辺に位置するであろう。このように、バルーンの拡張によって、流出端部24より、流入端部22のより迅速でより大きな拡張が引き起こされる。近位および遠位区間92、94の相対的な直径を制御することによって、特定の人工心臓弁は、設計された円筒形状へ拡張されることができる。
【0032】
最後に、図3Dは、小さな段106によって分離された、近位区間112および遠位区間104を有するバルーン100を図示する。マーカ108は、弁がどこに位置すべきかを示す。段付きバルーン100は、図3Cのバルーン90に類似しているが、2つの区間102、104は直径において互いにより近い。
【0033】
当業者によって理解されるように、本願に記載される拡張部材/バルーンの特定の形状は、弁の構成により異なるであろう。典型的な人工心臓弁20を使用する際、弁の最も剛性の高い部分(例えば、流入端部)に接触する、バルーンの最も大きな部分の直径は、弁の最も柔軟な部分(例えば、流出端部)に接触する最も小さな部分の直径より大きくなるべきである。例えば、図3Cの近位区間92は直径25mmであってもよく、一方、遠位区間94は直径21mmであってもよい。あるいは、相対的には、弁に接触する拡張部材の最大区間は、最小区間より約20〜30%大きい。
【0034】
図3A〜3Dで開示される種々のマーカまたはマーカバンドは、弁の両端部の設置を表示するための、バルーンの周りに描かれた均一な輪状線であってもよい。代替的に、マーカは、弁がバルーン上でどの向きに位置されるべきかをより明確に示すために、異なるサイズまたは構成であってもよい。INFLOW(流入)およびOUTFLOW(流出)という言葉を含む、より明示的なシステムもまた、さらなる明確性のために使用される場合がある。さらに、マーカは、バルーンの周りで軸対象でないこともあり、しかし、その代わり、弁が位置合わせするであろうバルーンの周りの交連点、またはその他の場所を示してもよい。実際、拡張部材/バルーンが、外周の周りに不均一プロファイルで拡張するように構成されてもよいこともまた、企図される。例えば、拡張式人工心臓弁は、非円形の拡張形状へ導かれることがある、外周の周りで不均一な拡張プロファイルを有してもよい。より剛性の高い領域での、より大きな外側への圧力が必要とされる場合があり、従って、弁とバルーンとの間で特定の周囲方向での位置合わせをも必要とする。
【0035】
典型的な操作順序では、その上に生物組織を有する人工心臓弁は、バルーンから分離された無菌の容器内に包装される。操作室で、弁およびバルーンは、移植のため結合される。この手順は、バルーンの周りに拡張状態にある弁を注意深く位置付け、事前に決められた最大直径へ、弁をバルーン上へクリンプさせることが必要とされる。それゆえ、上記のマーカバンドは、適切な拡張を確実にするために、弁をバルーンの上部に位置付けるステップを非常に容易にする。それから、弁およびバルーンの組み合わせは、体内へ挿入され、標的移植部位にまで進入させる。送達路は、比較的長い経皮ルートであってもよく、または胸の直接ポートまたはチャネルを介し、実質的により短くてもよい。心肺バイパス術を利用する従来の心臓切開操作が、手順の時間を減少することにより、拡張式弁の配置の恩恵を受ける場合があることさえも、企図される。
【0036】
本発明の代替使用は、標的移植部位で部分的に配置されている人工心臓弁を、塑性的に拡張させることである。幾つかの自己拡張人工心臓弁は、それらの支持フレームを塑性的に変形させ、周囲の組織との適切な係合を確実にするために、さらなるバルーン拡張を必要とする。それゆえ、本発明は、初期は弾性的に拡張可能なフレームの最終塑性変形を含む。別の状況では、純粋に塑性的に拡張可能な心臓弁は、第1のバルーンによって部分的に拡張してもよく、それから第2のバルーンを使用して、その最終移植状態にまで弁を完全に拡張させる。この型の手順では、上記のマーカバンドは、部分的に配置される弁内に、不均一バルーンを位置付けるために重要である。
【0037】
人工心臓弁を配置するために使用される従来のバルーンは、透明なナイロンから成る。ナイロンバルーンは、過膨張および破裂を防止するために重要である、最大の拡張直径を有する。従来の技術では、膨張流体は、食塩水、および通常、粘性の半放射線不透過性液体である造影剤の混合物から成る。この流体の固有の粘度により、バルーンの膨張/収縮時間が増加するが、長い時間、バルーンが大動脈弁輪を閉鎖し得るため、有害である。
【0038】
本発明は、放射線不透過性材料でドープされる膨張バルーンを提供する。ドーピングは、通常、ドープ剤の均一な分配を確実にするため、バルーンの押出しより前に行われる。結果、バルーン自体が放射線不透過性であるため、食塩水は、粘性造影剤を追加せずに、バルーンを膨張させるために使用することができる。食塩水の粘度はより低いため、膨張/収縮時間は著しく減少する。
【0039】
本発明はその好ましい実施形態で記載されているが、使用されている言葉は、説明の言葉であって、制限のためではないことは理解されるものとする。それゆえ、本発明の真の範囲から逸脱することなく、添付の請求項の範囲内で変更が行われる場合がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮状態および拡張状態、ならびにその軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する構成を有する、バルーン拡張式人工心臓弁と、
収縮状態にある該人工心臓弁内に配置され、該人工弁を拡張状態に変換するために、該心臓弁に放射状に外側に向かう力を印加することができる拡張部材であって、その軸長に沿って、該心臓弁に不均一に放射状に外側に向かう力を印加するように構成されている、拡張部材と
を備える、人工心臓弁移植システム。
【請求項2】
前記拡張部材は、別の区間より直径が大きく拡張した少なくとも1つの区間を有するバルーンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バルーンは、造影剤でドープされた材料から成る、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記バルーンは、円錐形の弁接触部分を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記バルーンは、段付き直径弁接触部分を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
最も大きな拡張能力のある前記拡張部材の区間が、前記人工心臓弁の最も剛性の高い部分内に位置されることができるように、該拡張部材は、該拡張部材を該人工心臓弁内に位置合わせするための、少なくとも1つの外部マーカを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
流入端部および流出端部を有するバルーン拡張式人工心臓弁であって、外側ステントと、該ステントに付着される内側の柔軟な弁尖とを含み、その軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する人工心臓弁と、
該人工心臓弁内に配置されたバルーンであって、該心臓弁のより剛性の高い部分内に位置されるより大きな直径の区間と、該心臓弁のより柔軟な部分内に位置されるより小さな直径の区間とを有する、非円筒状拡張プロファイルを有するバルーンと
を備える、人工心臓弁移植システム。
【請求項8】
前記バルーンは、造影剤でドープされた材料から成る、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記バルーンは、円錐形の弁接触部分を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記バルーンは、段付き直径弁接触部分を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
最も大きな拡張能力のある前記バルーンの区間が、前記人工心臓弁の最も剛性の高い部分内に位置されることができるように、該バルーンは、該バルーンを該人工心臓弁内に位置合わせするための、少なくとも1つの外部マーカを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記人工心臓弁は、その流出端部より、その流入端部の方が剛性が高い、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記心臓弁の前記流出端部より前記流入端部に隣接してより集中された、前記弁尖とステントとの間の付着構造をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
収縮状態および拡張状態、ならびにその軸長に沿って不均一な拡張抵抗プロファイルを有する構成を有する、バルーン拡張式人工心臓弁を提供するステップと、
収縮状態にある該人工心臓弁内に、拡張部材を提供するステップと、
該組み合わされた人工心臓弁および拡張部材を、標的弁輪へ送達するステップと、
該拡張部材で、不均一に放射状に外側へ向かう力を、その軸長に沿って該心臓弁に印加し、該心臓弁を拡張状態に転換するステップと
を包含する、人工心臓弁を移植する方法。
【請求項15】
前記拡張部材は、別の区間より直径が大きく拡張した少なくとも1つの区間を有するバルーンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バルーンは、造影剤でドープされた材料から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
不均一に放射状に外側へ向かう力を、前記心臓弁に印加するステップは、どんな造影剤も用いずに、前記バルーンを食塩水で満たすステップから成る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記拡張部材が少なくとも1つの外部マーカを含み、前記方法は、最も大きな拡張能力のある該拡張部材の区間が、前記人工心臓弁の最も剛性の高い部分内に位置されることができるように、該拡張部材を該人工心臓弁内に位置合わせするステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記拡張部材はバルーンであり、前記人工心臓弁のために、該バルーン上に軸方向の位置を示す2つのマーカがある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マーカは、前記弁が前記バルーン上で配置されるべき向きを示す、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2009−543667(P2009−543667A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520881(P2009−520881)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/072549
【国際公開番号】WO2008/011261
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】